前記スパンボンド不織布は、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリスチレンからなる群から選択された1種類、又は2種類以上の混合で形成されている、ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の複合型不織布。
前記パルプ繊維ウエブは、ラジアータパイン、スラッシュパイン、サザンパイン、ロッジポールパイン、スプルース及びダグラスファーからなる群から選択された針葉樹晒クラフトパルプの繊維からなる、ことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の複合型不織布。
前記熱エンボス工程では、式(ロール相当径)=(エンボスロール径)×(受けロール径)/{(エンボスロール径)+(受けロール径)}によって算出されるロール相当径が75〜300mmであるエンボスロールと受けロールとを用い、搬送スピードを150〜280m/min、ロール間のギャップを0〜0.3mm、ロールニップ圧を1.0〜6.0MPa、エンボスロールの温度を80〜150℃に設定してある、ことを特徴とする請求項8に記載の複合型不織布の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、スパンボンド不織布の上に、乾式あるいは湿式にてパルプ繊維ウエブを供給した後、水流交絡処理を行うと、スパンボンド不織布上のパルプ繊維は水流の影響で様々な方向(3次元ランダム)に配向される。そして、その後に乾燥処理され製品としての複合型不織布となる。このような複合型不織布は厚さ方向に配列したパルプ繊維の一部が飛び出したような状態となっていることが散見されている。このような複合型不織布を乾燥状態で例えばワイパーとして使用すると、飛び出したパルプ繊維が部分的に摩耗されて細かい紙粉を発生させてしまう。このような不織布は製品としての価値が劣ることになる。
しかし、従来にあっては、上記の紙粉を効果的に抑制できる技術は未だ確立されていない状況にある。
【0006】
なお、従来技術の応用で、パルプ繊維側に熱カレンダー処理を施し、一部飛び出した状態のパルプ繊維を均すことも考えられるが、熱を伝えるために熱カレンダーを複合型不織布に密着させると複合型不織布の厚さが低下していわゆるペラペラの状態となって使用感が劣ると共に、吸水量が低下する等のデメリットが大きいことが確認された。
【0007】
よって、本発明の目的は、乾燥した環境で使用しても紙粉の発生を抑制でき、また使用感においても優れている複合型不織布を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、スパンボンド不織布上にパルプ繊維ウエブを積層し一体化してある複合型の不織布であって、坪量が52.0〜88.0g/m
2および厚さが0.28〜0.47mmであり、且つ、前記パルプ繊維ウエブ側の柔らかさを示すTS7値が12.0〜20.0dBV
2rmsおよび滑らかさを示すTS750値が33.0〜71.0dBV
2rmsである、ことを特徴とする複合型不織布により達成できる。
【0009】
そして、点滴吸水度が0.5〜3.0秒、および吸水量(T.W.A.)が300〜490g/m
2であるものが好ましい。
また、ウエットテーバー値が5回以上であるものが望ましい。
【0010】
また、前記パルプ繊維ウエブの坪量が40.0〜70.0g/m
2、且つ、前記スパンボンド不織布と前記パルプ繊維ウエブとの重量構成比が40/60〜10/90(wt%)であるものが好ましい。
【0011】
また、前記スパンボンド不織布の坪量が7.0〜20.0g/m
2であると共に、当該スパンボンド不織布が紡糸された樹脂繊維を接合する複数の融着点を含んで形成されており、前記融着点1個の面積が0.10〜0.50mm
2、前記融着点の単位面積当たりの面積率が7〜20%、個数が10〜150個/cm
2であるものが好ましい。
【0012】
前記スパンボンド不織布は、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリスチレンからなる群から選択された1種類、又は2種類以上の混合で形成されているものが好ましい。
【0013】
また、前記パルプ繊維ウエブは、ラジアータパイン、スラッシュパイン、サザンパイン、ロッジポールパイン、スプルース及びダグラスファーからなる群から選択された針葉樹晒クラフトパルプの繊維からなるものが好ましい。
【0014】
上記の目的は、スパンボンド不織布上にパルプ繊維ウエブを積層し一体化してある複合型不織布の製造方法であって、前記パルプ繊維ウエブと前記スパンボンド不織布との一体化を促進して積層体を得る水流交絡工程と、前記水流交絡工程の後に前記積層体を乾燥する乾燥工程とを少なくとも含み、前記乾燥工程の後に前記パルプ繊維ウエブ側に熱エンボス処理を施す熱エンボス工程を更に含み、前記熱エンボス工程では、エンボス部の面積率が2.0〜15.0%、およびエンボスの高さが0.2〜1.0mmであるエンボスロールを用いて製造する、ことを特徴とする複合型不織布の製造方法によっても達成できる。
【0015】
そして、前記熱エンボス工程では、式(ロール相当径)=(エンボスロール径)×(受けロール径)/{(エンボスロール径)+(受けロール径)}によって算出されるロール相当径が75〜300mmであるエンボスロールと受けロールとを用い、搬送スピードを150〜280m/min、ロール間のギャップを0〜0.3mm、ロールニップ圧を1.0〜6.0MPa、エンボスロールの温度を80〜150℃に設定してあることが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明による坪量、厚さ、並びに、パルプ繊維ウエブ側の柔らかさ及び滑らかさが所定の範囲に設定されている複合型不織布は、紙粉の発生が抑制され、また使用感においても優れている不織布製品として提供できる。また、本発明の製造方法によると、上記複合型不織布を効率よく製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係る複合型不織布について説明する。
本願の発明者等は、複合型不織布について鋭意に検討を行い、坪量(g/m
2)および厚さ(mm)、そして、パルプ繊維ウエブ側の柔らかさ(TS7値(dBV
2rms))および滑らかさ(TS750値(dBV
2rms))について所定範囲内にあるように設計した複合型不織布は紙粉の発生が少なく、使用感においても優れることを確認して本発明に至ったものである。このような複合型不織布は、乾燥工程後に所定条件での熱エンボス処理を施すことにより製造することができる。
【0019】
本発明に係る複合型不織布の坪量は52.0〜88.0g/m
2、好ましくは62.0〜77.0g/m
2であり、厚さは0.28〜0.47mm、好ましくは0.34〜0.43mmに設定されている。そして、複合型不織布にとって重要なファクターであるパルプ繊維ウエブ側の柔らかさを示すTS7値が12.0〜20.0、好ましくは14.5〜18.2であり、また同様に重要なファクターである滑らかさを示すTS750値が33.0〜71.0、好ましくは44.5〜62.5に設定されている。
【0020】
上記TS7値、TS750値はティシューソフトネス測定装置TSA(Tissue Softness Analyzer)を用いて測定されたものである。ティシューソフトネス測定装置TSAでは、試料台上にパルプ面側を上に向け載置した複合型不織布(サンプル)の上からブレード付ローターを押し付け回転させたとき、各種センサーで検知した振動データを振動解析してパラメータ化(TS値)することにより、不織布等のソフトネス(手触り感)を定量評価するものであり、ドイツのEmtec Electronic GmbH社(日本代理店は日本ルフト株式会社)製の商品名である。
上記ティシューソフトネス測定装置TSAによる測定では、例えば試料台の振動を、試料台内部に設置した振動センサーで測定し、振動周波数を解析して、パラメータ化(
TS値)する。振動周波数は、クリープ加工やエンボス加工といった構造的な寸法及びブレードの回転数に依存する。ブレード自身の水平振動の誘発(共振周波数:例えば6500Hz)は、サンプルの表面を進むとき、サンプルの凸部による瞬間的な遮断とブレードの振動に起因して起こる。低周波数側からの最初のスペクトルの極大ピークの強度をTS750値(dBV
2rms)とし、共振周波数:6500Hzを含む(6500Hzの前後の)スペクトルの極大ピークの強度をTS7値(dBV
2rms)とする。
【0021】
なお、振動解析してパラメータ化(TS値)するソフトウェアは、emtec measurement systemを用いることができる。本ソフトウェアには、各種アルゴリズム(例えば、Base Tissue、Facial、TP等)が備えられ、TS7値及びTS750値をソフトウェア上で自動的に取得し、これらTS7値及びTS750値あるいは坪量、厚さ、プライ数等から各種アルゴリズムの種類によって、HF(ハンドフィール)値が計算される。本発明では、HF値ではなく、TS7値及びTS750値を規定しており、測定条件を満たせば、アルゴリズムは何を使用してもよく、TS7値、及びTS750値は、アルゴリズムの種類によって変わることはない。
【0022】
上記のように坪量(g/m
2)、厚さ(mm)、並びに、パルプ繊維ウエブ側の柔らかさ(TS7値(dBV
2rms))および滑らかさ(TS750値(dBV
2rms))について、所定の好適範囲にあるように設計してある本発明の複合型不織布は、紙粉の発生が少なく、手持ち感が確りしていてゴワゴワせず、使用感においても優れており、吸水性の点でも良好な複合型不織布とすることができる。なお、複合型不織布の厚さは、例えばピーコック紙厚計にて、37.85g/cm
2加重下で測定することができる。
そして、更に、吸水性能の指標である点滴吸水度については0.5〜3.0秒、吸水量(T.W.A.:Total Water Absorbency)については300〜490g/m
2に設定してあるものが好ましい。上記点滴吸水度は、JIS L 1907に規定された吸水速度試験に準拠し、0.1mlの水滴が試験片の表面に達したときから、試験片の鏡面反射が消えるまでの時間(秒)を測定して得ることができる。また、上記T.W.A.は次のように求めることができる。まず、不織布を75×75mmの正方形に切断して試料片を作製し、乾燥重量を測定する。次に、この試料片を蒸留水中に2分間浸漬した後、水蒸気飽和状態の容器中で、試料片の1つの角部が上側の頂部となるようにし、この頂部と隣接する2つの角部とを支持して展伸した状態(100%RH)で吊るし、30分放置して水切り後の重量を測定する。水切りには、ペーパータオルを3×38mmにカットして使用する。そして、測定値を試料片1m
2当たりの保水量(g/m
2)に換算して得ることできる。
また、更に、耐久性の指標であるウエットテーバー値が5回以上であるように設計してあるのが好ましい。JISで規定されたテーバ試験機を用いて、回転する水平円盤に水で湿潤させた試料を取り付けて、砥粒結合体で成形された一対の摩擦輪を規定荷重のもとに加えて、ウエットテーバー値が少なくとも5回である耐摩耗性を備えているのが好ましい。
【0023】
そして、上記パルプ繊維ウエブの坪量は40.0〜70.0g/m
2とし、スパンボンド不織布とパルプ繊維ウエブとの重量構成比を40/60〜10/90(wt%)とされているのが好ましい。この範囲にあるものは、吸水性能や手持ち感に優れ、複合型不織布の形状安定性にも優れる。
また、前記スパンボンド不織布の坪量は7.0〜20.0g/m
2とするのが好ましい。また、スパンボンド不織布は紡糸された樹脂繊維を接合する複数の融着点を含んで形成されており、前記融着点1個の面積が0.10〜0.50mm
2、融着点の単位面積当たりの面積率が7〜20%、個数が10〜150個/cm
2であるものが好ましい。このようなスパンボンド不織布は適度の剛性を備えており、パルプ繊維ウエブと組み合わせて複合型不織布に採用するスパンボンド不織布として好適である。なお、上記融着点の形状については、特に限定はなく円形、楕円形、多角形等とすることができる。
【0024】
前記スパンボンド不織布は、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリスチレンからなる群から選択された1種類、又は2種類以上の混合で形成するのが望ましい。この中で、ポリプロピレンを用いるのが好適である。
また、上記パルプ繊維ウエブに関しては、ラジアータパイン、スラッシュパイン、サザンパイン、ロッジポールパイン、スプルース及びダグラスファーからなる群から選択された針葉樹晒クラフトパルプの繊維で形成されたものを採用するのが好ましい。
【0025】
以下では、上述した本発明の複合型不織布を製造する工程について説明する。本発明の複合型不織布は乾燥工程後に所定のエンボス処理を施すことにより効率よく製造することができる。ここでは、先ず平坦な複合型不織布WPを製造する製造装置の主要構成について説明をした後に、エンボス装置について説明する。
【0026】
図1に示す複合型不織布の製造装置1は、上流側にエアレイド装置2、スパンボンド不織布を供給するスパンボンド供給装置3、そしてサクション装置4が配設されている。サクション装置4はエアレイド装置2の下側に対向するように配置されている。
ウエブの搬送方向TDで、これらの装置2、3、4よりも下流には、上流側から順に、水流交絡処理を行うためのウォータジェットを噴射する水流交絡装置5、サクション装置6、乾燥装置7が配置されている。上記乾燥装置7の下流には連続して製造される複合型不織布WPを巻き取るための巻取装置8が更に設けてある。
【0027】
上記エアレイド装置2は、繊維同士が密集しシート状となっている原料パルプRPをパルプ繊維に解繊する解繊機21や、図示しない送風機を備えて解繊されたパルプ繊維PFをエアレイドホッパ23へと搬送するダクト22を有している。
【0028】
また、上記ダクト22よりも下流側にはエアレイドホッパ23が配置されている。このエアレイドホッパ23の内部では、解繊状態にあるパルプ繊維が分散しながら降下し、下面に設定した積層位置24に徐々に積み上りパルプ繊維ウエブPFWが形成されるように設計してある。
上記積層位置24の下側にはサクション装置4が対向配備してある。より詳細には、サクション装置4は装置本体41の上面にサクション部42を有しており、サクション部42が上記パルプ繊維ウエブPFWに吸引力(負圧)を作用させるべく積層位置24に対して設定してある。
なお、
図1では、エアレイドホッパ23とサクション装置本体41とを1つずつ一段での配置として、パルプ繊維ウエブPFWを形成する場合を例示している。しかし、これに限らず、上記パルプ繊維ウエブPFWの目付(坪量)や製造速度に応じて、上記エアレイドホッパ23とサクション装置本体41を2つ以上の多段とする配置に変更してもよい。
【0029】
また、サクション装置4の周囲にはウエブ搬送用の搬送ワイヤ43が配設してある。搬送ワイヤ43は、積層位置24においてパルプ繊維PFが堆積したパルプ繊維ウエブPFWが載置可能で、これを下流側に搬送するように配置されている。ただし、パルプ繊維ウエブPFWは直接、搬送ワイヤ43上に載置されない。これについては、後述の説明で明らかとなる。
搬送ワイヤ43はサクション部42の吸引力が、反対側(上側)に及ぶような目開き形態(メッシュ)で形成されている。
【0030】
上記エアレイド装置2の下側で、サクション装置4よりも上流側に、スパンボンド供給装置3が配置してある。このスパンボンド供給装置3には、予め準備されたスパンボンド不織布SWがロール状とされてセットされている。スパンボンド供給装置3からスパンボンド不織布SWが引出され、上述した搬送ワイヤ43に乗って上記積層位置24へと搬送されるようになっている。スパンボンド不織布SWとしては、スパンボンド法により形成された合成樹脂の連続フィラメントのウエブを用いるのが好ましい。
【0031】
積層位置24に位置した、スパンボンド不織布SWの上に、前述したパルプ繊維ウエブPFWが載置される。その際に、積層位置24ではサクション装置4のサクション部42による吸引力が搬送ワイヤ43を通過し、その上のスパンボンド不織布SWおよびパルプ繊維ウエブPFWに作用する。よって、スパンボンド不織布SWとパルプ繊維ウエブPFWとが積層された状態となっている予備的積層体PWebが下流側へと搬送される。
【0032】
上記した予備的積層体PWebは、サクション装置4の吸引力によって、吸引圧縮されたことにより積層状態が維持されている。このとき上側のパルプ繊維ウエブPFWの繊維が密にされた状態ではある。しかし、このまま予備的積層体PWebを下流側の水流交絡装置5内に搬送投入すると、ウォータジェット(高圧の水流)によってパルプ繊維PFの一部が舞い上がるおそれがある。
そこで、本製造装置1では、予備的積層体PWebを上下から挟んでスパンボンド不織布SW上でのパルプ繊維ウエブPFWの載置状態を安定化させる為の挟持ローラ28、そして水流交絡装置5の上流側に繊維飛散防止用に水分を付与するプレウエット装置30が配備してある。プレウエット装置30は、好適には、予備的積層体PWebの上方からウォータミストを吹き付ける噴霧ノズル31と予備的積層体PWebの下側(すなわち、パルプ繊維ウエブPFWの下面)から吸引力を印加するサクション装置32とを含んで構成されている。
なお、
図1では、上記のように水流交絡装置5前にプレウエット装置30を新たな装置として設ける場合を例示しているが、これに限らない。水流交絡装置5に含まれる後述するウォータジェットヘッド51とサクション装置52とからなるセットの複数について、先頭に位置するセットを上記プレウエット装置30として流用するような設計変更をしてもよい。この場合には先頭のウォータジェットヘッド51から低圧のウォータミストが噴霧されるように調整すればよい。
水流交絡処理を行うのに十分な、ウォータジェットヘッド51とサクション装置52とのセット数が確保されている水流交絡装置5の場合、上記のように先頭のウォータジェットヘッド51とサクション装置52をプレウエット装置として活用することは、装置設備コストの抑制に効果的である。
【0033】
そして、水流交絡装置5では、前処理部となる挟持ローラ28およびプレウエット装置30の処理を受けた予備的積層体PWebに高圧のウォータジェットを吹き付けることによりパルプ繊維同士の交絡を促進する。これにより上側に位置するパルプ繊維ウエブPFW層と下側に位置するスパンボンド不織布SW層との一体化が促進される。
図1で例示的に示している水流交絡装置5は、搬送方向TDに沿って多段(
図1では例示しているのは4段)にウォータジェットヘッド51が配置されている。
なお、
図1では、搬送方向TDに対して直角な方向(ウエブの幅方向)において延在しているウォータジェットヘッド51に設けたノズルの様子は図示していないが、幅方向において複数のウォータジェットノズルが適宜の位置に配置してある。このウォータジェットノズルの穴直径φは、好ましくは0.06〜0.15mmである。また、ウォータジェットノズルの間隔は0.4〜1.0mmとするのが好ましい。
【0034】
上記水流交絡処理をする際の水圧は、パルプ繊維ウエブPFWとスパンボンドウエブSWとの坪量を勘案して設定するのが望ましい。例えば、1〜30MPaの範囲において選択するのが好ましい。
【0035】
そして、上記ウォータジェットヘッド51と対向するように、サクション装置52が配設してある。ウォータジェットヘッド51から出る高圧のウォータジェットを上側に位置しているパルプ繊維ウエブPFWに吹き付けつつ、下側に位置しているスパンボンド不織布SWの下側にサクション装置52の吸引力を作用させる。ウォータジェットヘッド51とサクション装置52との協働作用によって、パルプ繊維ウエブPFW側のパルプ繊維が下側のスパンボンド不織布SWに入り込んだ状態や、スパンボンド不織布SWを貫通して反対側にまで至った状態などが形成されると推定される。その作用により2つの層の一体化が促進される。
【0036】
水流交絡装置5にも、搬送ワイヤ55が配設してある。搬送ワイヤ55は前処理部28、30の下流で予備的積層体PWebを受けて、水流交絡装置5内へと搬送する。搬送ワイヤ55は水流交絡装置5のウォータジェットヘッド51とサクション装置52との間を、上流側から下流に向かって通過するように配設されている。
よって、搬送ワイヤ55上を搬送される予備的積層体PWebは、搬送方向TDで下流に向かう程に、より多くの水流交絡処理を受けることになり、水流交絡装置5を出るときには上側のパルプ繊維ウエブPFW層と下側のスパンボンド不織布SW層との十分な交絡処理が実現される。
水流交絡装置5を出た直後の不織布にあっては、ウエット状態にあり、パルプ繊維同士などの結合は十分に確立されてはいない。
【0037】
そこで、
図1で示すように、水流交絡装置5の下流側にはウエブに残留する水分を吸引除去し、その後に乾燥を行って、複合型不織布WPの製造を完了するためのサクション装置6および乾燥装置7が配備してある。このように複合型不織布WPの製造の後段で、サクション装置6および乾燥装置7による脱水、乾燥を行うと効率よく不織布を製造でき、また、製造される水流交絡後の不織布に大きな外圧を掛けることなく乾燥した不織布を製造できるので、嵩高感のある製品に仕上げることができる。
サクション装置6は、例えばバキューム式で水流交絡後の不織布を脱水する。乾燥装置7は非圧縮型のドライヤ、好適にエアスルードライヤを採用することが好ましい。
図1で、エアスルードライヤの回転可能なドライヤ本体71は筒状体であり、その周表面には多数の貫通孔が設けてあり、図示しない熱源で加熱された熱風がドライヤ本体の外周から中心部側に向かって吸い込む構成とするのがよい。
このように連続的に製造される複合型の複合型不織布WPは巻取装置8のローラ81に巻取られて一連の工程が完了する。
【0038】
以上の工程により、一般的な複合型不織布を製造することができるが、本発明に係る複合型不織布は紙粉の発生が抑制され、使用感においても優れた不織布となっている。そのために、上記乾燥装置7による乾燥工程後にパルプ繊維ウエブPFW側に所定条件でエンボス処理を施す熱エンボス工程を含んでいる。乾燥装置7の下流側に追加配置されるエンボス装置EAについて説明する。
【0039】
図2は左側にエンボス装置EAの概略構成を示し、右側にエンボス処理された複合型不織布WPの様子を模式的に示している。
図2のエンボス装置EAは、パルプ繊維ウエブPFW側に接触する上側のエンボスロールa1と下側のプレーンな受けロールa2とを備えている。エンボスロールa1の外周面にはパルプ繊維ウエブPFWに形成する凹凸部パターンが刻設してある。一方、受けロールa2は外周面が平坦に形成されている。
上記エンボスロールa1と受けロールa2とは、式(ロール相当径)=(エンボスロール径)×(受けロール径)/{(エンボスロール径)+(受けロール径)}によって算出されるロール相当径が75〜300mm、より好ましくは100〜250mmであるように設計しておくのが望ましい。ここでのロール相当径とは、A. V. Lyons らが示した文献 (1990 TAPPI Finishing and Converting, P5) に基づくものであり、複合型不織布に施すエンボスの強さの指標となるものである。例えば、ロール相当径が75mm未満であると複合型不織布に施されるエンボスが入り難くなり、その一方で、ロール相当径が300mmより大きいと、エンボスが強くなり過ぎてしまう。また、設備上ランニングコストが大きくなり、さらに設置スペースが大きくなる等の問題も生じる。
【0040】
そして、上記エンボスロールa1と受けロールa2とはロールニップ圧が1.0〜6.0MPa、より好ましくは2.0〜5.0MPaに設定されている。ロール間のギャップは0〜0.3mmに設定し、また、エンボスロールa1とプレーンロールa2との少なくとも一方に加熱手段(例えば、ヒータ)を設けて、エンボスロールa1の温度が80〜150℃、より好ましくは100〜135℃に設定されている。また、ロールの搬送スピードは、150〜280m/min、より好ましくは190〜260m/minとなるように設定してあるのが望ましい。
エンボスの運転条件を上記範囲とすることで、複合型不織布のパルプ面に適切なエンボスが施され、複合型不織布使用時に発生する紙粉を確実に抑制することができる。これに関して、ロールニップ圧が低くすぎる、ロール間ギャップが広すぎる、エンボスロールの温度が低くすぎる、搬送スピードが速すぎると、複合型不織布に施されるエンボスが弱くなり、その結果として紙粉抑制の効果が小さくなる(使用時の紙粉が多くなる)。その一方で、ロールニップ圧が高すぎる、エンボスロールの温度が高すぎる、搬送スピードが遅すぎると、複合型不織布に施されるエンボスが強すぎとなり、複合型不織布を構成するスパンボンド不織布を傷め、またパルプ繊維ウエブ表面を荒らしてしまうことがあり、この場合も結果として使用時の紙粉が多くなってしまう。よって、上記した好適な範囲に設定することが肝要となる。
なお、上記エンボスロールa1および受けロールa2の材質については特に限定はないが、いずれについても金属ロールを採用するのが好ましい。
上記の条件を満たすように設定してあるエンボス装置EAで、加熱圧着する熱エンボス処理することでパルプ繊維ウエブPFW上に好適な凹凸部パターンを形成できる。下側に位置しているスパンボンド不織布SWの表面(複合型不織布WPの裏側)は、受けロールa2に接するので平坦状となる。
【0041】
更に
図3は、上記エンボス装置EAで採用するのが好ましいエンボスロールの形態を説明するために示した図である。
図3(a)或いは
図3(b)はエンボスロールa1の表面faの一部を拡大して示した断面図であり、表面fa上にはエンボスを形成するための複数のエンボス凸部EPが存在している。
図3(a)で示すように根本部の面積と先端部の面積が同じもの、
図3(b)で示すように根本部の面積と先端部の面積とが異なるもの、いずれを用いることができる。なお、表面faから先端部までのエンボス凸部の高さEHは0.2〜1.0mm、好ましくは0.4〜0.8mmに設定するのが望ましい。
図3(c)はエンボスロールa1の表面faの一部を拡大して示した平面図である。
図3(c)において、表面faの全面積(ここでは矩形の面積で示している)に対する、凸部EPが存在している面積(根本部を合計した面積)の割合であるエンボス部の面積率は2.0〜15.0%、より好ましくは4.0〜12.0%に設定しておくのが望ましい。
エンボスの高さ、面積率を上記範囲とすることで、複合型不織布のパルプ面に適切なエンボスが施され、複合型不織布使用時に発生する紙粉が抑制される。
また、エンボス凸部EPの形状(横断面形状)や配列の仕方については特に限定はないが、形状については
図3(c)で示すような丸形としてもよいし、他に多角形、星形などを採用できる。配列について
図3(c)で示すような整列型でもよいし、他に互い違い型としてもよい。
【0042】
図1に示した複合型不織布製造装置では、乾燥装置7の下流側に上記した条件に沿って設計したエンボス装置EAで、パルプ繊維ウエブPFW上にエンボス処理を施すことで、前述した構成の複合型不織布を効率良く製造でき、製造された複合型不織布は紙粉が少なく、また使用感に優れた複合型不織布とすることができる。
本発明に係る複合型不織布WPはエンボス処理が施されることにより、表面から飛び出す繊維を均す(寝かせる)事ができこれにより紙粉の発生を抑制できる。また、パルプ繊維ウエブPFWに加わる押圧力はカレンダー装置を用いて処理した場合と比較して格段に低いので、複合型不織布の表面に与えるダメージを低減できる。より詳細には、カレンダー装置を用いて処理した場合と比較して、
図2で示したようなエンボス装置EAを採用すると、非エンボス部分の厚さはほとんど潰されずに残る(すなわち、非エンボス部の高さはエンボス処理前とほとんど変わらない)ことにより、手持ち感(しっかり感)や吸水性が損なわれないという特徴を有する、本発明の複合型不織布を得ることができる。
【0043】
なお、
図1は、
図2及び
図3に示したエンボス装置EAをオンラインで付加する場合を好適として例示しており、このように不織布ワイパー製造装置に一体的にエンボス装置EAを設けるのが好ましいが、いったん不織布ワイパーWPをローラ81に巻き取り、別に設けたエンボス装置EAでオフラインによりエンボス処理をするようにすることも可能である。
【0044】
(実施例)
以下、上記製造装置でエンボス処理をして製造した実施例の複合型不織布について説明する。
坪量、厚さ、柔らかさを示すTS7値、滑らかさを示すTS750値が表1に示す通りになるように製造された、実施例1〜5の複合型不織布、並びにその比較例1〜7について、下記に示す基準により、複合型不織布使用時(乾燥状態)での脱落繊維の少なさ、手持ち感(しっかり感)、手持ち感(ゴワゴワしない)および吸水性についての官能評価をした。
1)脱落繊維の少なさ:複合型不織布使用時(乾燥状態)での脱落繊維
脱落繊維がほぼ見られない(優◎)、脱落繊維がややみられるものの、問題なく使用できるレベル(良○)、脱落繊維が多く使いづらい(不可×)
2)手持ち感(しっかり感):複合型不織布使用時の手持ち感
しっかり拭き心地が良い(優◎)、問題なく使用できるレベル(良○)、ペラペラと感じ、拭き心地が悪い(不可×)
3)手持ち感(ゴワゴワしない):複合型不織布使用時の手持ち感
適度にしなやかで拭き心地が良い(優◎)、問題なく使用できるレベル(良○)、ゴワゴワと固く感じ、拭き心地が悪い(不可×)
4)吸水性:複合型不織布使用時の吸水性を官能評価
水の吸い方、吸う量が特に優れたもの(優◎)、問題のないレベル(良○)、水の吸いが悪く使用感の劣るもの(不可×)
【0047】
上記表1に示すように実施例1〜5は製品として提供できるものであるが、上記表2に示すように比較例1〜7では、脱落繊維の少なさ、手持ち感(しっかり感)、手持ち感(ゴワゴワしない)、および吸水性のいずれかで不可であった。
【0048】
上記実施例1〜5は、坪量が52.0〜88.0g/m
2、厚さが0.28〜0.47mm、柔らかさを示すTS7値が12.0〜20.0dBV
2rms及び滑らかさを示すTS750値が33.0〜71.0dBV
2rmsの好適範囲内にある。
【0049】
一方、比較例1はカレンダー処理によるもので厚さ、滑らかさ(TS750値)が好適範囲外にあるだけでなく、吸水性および耐久性も低いことが確認でき、これに応じた官能評価となっている。
また、比較例2は、坪量と厚さが好適範囲未満であり、吸水性および耐久性も低いことが確認でき、これに応じた官能評価となっている。
また、比較例3は、坪量と厚さが好適範囲を超えている。これにより、手持ち感(ゴワゴワしない)の官能評価が劣ることが確認できる。
【0050】
更に、比較例4〜7は坪量および厚さが上記好適範囲にあっても、エンボス処理での条件が好適でないと、柔らかさ(TS7値)或いは滑らかさ(TS750値)が好適範囲とならず、これに対応して脱落する繊維(紙粉)を確実に抑制できていないことが確認できる。
エンボス処理でのエンボスロールはエンボス部の面積率が2.0〜15.0%、エンボスの高さが0.2〜1.0mm、ロール相当径75〜300mmであり、また搬送スピード150〜280m/minであるのが好適範囲である。しかし、比較例4のエンボスロールは上記好適範囲未満であるか上記好適範囲を超えている。比較例5ついても、エンボスロールは上記好適範囲を超えているか上記好適範囲未満である。
【0051】
更に、エンボス処理では、ロール間のギャップ0〜0.3mm、ロールニップ圧1.0〜6.0MPaそしてエンボスロールの温度80〜150℃とするのが好適範囲である。しかし、比較例6では上記好適範囲未満でエンボス処理されている、比較例7では上記好適範囲を超えてエンボス処理されている。
【0052】
表1、表2に示された内容を全体的に考察すると、エンボス処理でのロール相当径が小さ過ぎる、搬送スピードが速すぎる、ロール間ギャップ(Gap)が大き過ぎる、ロールニップ圧が小さ過ぎる、温度が低く過ぎる等であると、複合型不織布の表面に加わる力が小さいので、飛び出したパルプ繊維を均す効果が不十分となり紙粉抑制の効果が小さいことが確認できる。複合型不織布の表面に飛び出した状況をTS7値で評価することができ、飛び出した繊維が多い場合にはTS7値が好適範囲を超えて大きくなり、使用時の紙粉が多くなる。
【0053】
一方、エンボス処理でのロール相当径が大き過ぎる、搬送スピードが遅すぎる、ロールニップ圧が大き過ぎる、温度が高過ぎる等であると、複合型不織布の表面に加わる力が大きくなり過ぎてしまい、パルプ繊維が痛んでしまい(熱等の影響で硬化傾向となる)。この場合も、紙粉が出易くなるというデメリットがある。硬化した繊維の評価にはTS750値で評価できる。繊維が固く表面性が悪い場合は、TS750値が好適範囲を超えて大きくなり、使用時の紙粉が多くなる。
【0054】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施することができることは言うまでもない。