【解決手段】骨材(M2)と同程度の比重或いは粒径を有する粒状の造粒固化材(M1)を用いている。そして、加水システム(100)と、水以外の混合材料(造粒固化材M1と骨材M2の混合物)を圧送する圧送システム(200)と、水と水以外の混合材料を混合する接続システムを含み、圧送システム(200)は、水以外の混合材料を接続システムに圧送する吹付機(25)と、吹付機(25)からの混合材料吐出量を計測する計測装置(3)と、前記混合材料吐出量に対して適正な配合となる水の添加量及び流量を演算する制御装置(2)を含み、前記加水システム(100)は、前記制御装置(2)で演算された流量の水を圧送する送水ポンプ(32)を有する。
【背景技術】
【0002】
一般的な吹付プラント構成で、現在主流の湿式吹付方式により粉末セメントを用いて吹付作業を実施すると、吹付圧送ホース延長100m、揚程45mという狭い範囲に限定され、市場単価により規定されることになる。
通常の湿式吹付方式では、吹付機吐出口や圧送ホース内での吹付材料の閉塞を頻繁に引き起こすため、施工性が著しく低下する。また、吹付距離と揚程が大きくなるほどスムーズな圧送が困難になり、圧送ホース内での脈動や突発的な突出が発生し、吹付作業の施工性のみならず、品質・安全性の低下を惹起する。
上述した吹付範囲の限定、閉塞、脈動、突出が発生する原因としては、第1に、吹付材料であるセメントと砂の比重の違いにより吹付材料が分離することで(材料分離が生じ)、これにともない配合の均一性が失われ、品質低下を招く。
第2に、吹付材料であるセメントが粉状であるのに対して砂は粒状であり、両者の形状が相違し、また、大きさも相違するため、圧送ホース内の材料密度が高くなるため圧送ホース内壁との摩擦抵抗が上昇する。その結果、閉塞が頻繁に発生し、施工性が著しく低下する。
第3に、セメントは粉末であるため、砂の表面水と反応して圧送される吹付材料の粘性が高くなる。そのため、圧送ホース内壁との摩擦抵抗が上昇し、圧送ホース内壁への付着が惹起されて、圧送時において脈動、突発的な突出の発生、閉塞が頻繁に起こり、施工性、安全性が著しく低下する。
【0003】
一方、セメントと骨材の混合物を水と分離して圧送する方式(乾式モルタル又はコンクリート吹付方法)が提案されており、乾式モルタル又はコンクリート吹付方法は、近年あまり実施はされていないが、吹付可能範囲が若干延びる。しかし、現場条件により安定しないため、明確な適用範囲が規定されていない。また、標準適用外の高圧コンプレッサーを使用した場合には、吹付圧送ホース延長が100〜300m、揚程が45〜80m程度と吹付可能範囲が広がるものの、長距離、高揚程には至っていない。
そして、粉末セメントを用いた一般的な乾式吹付方法では、先端ノズル近傍の加水箇所に至るほとんどの施工区間において乾燥した混合材料を圧送するため、粉塵が発生しやすいため環境負荷の増大及び作業の安全性が低下するという問題がある。
さらに、通常の乾式吹付方法では、先端ノズル近傍で加水する際に、十分な混練が為されていないため、混合材料と水との配合(水セメント比W/C)が適正化されることなく、吹付の際におけるリバウンド量が増加し、環境負荷の増大及び造成した吹付モルタルの品質低下を惹起してしまう。
【0004】
ここで、粒状化したセメントを用いた吹付工法及びそれに用いられる装置と造粒セメント製造方法が提案されている(特許文献2、3、4、5、8参照)。例えば特許文献4の吹付工法では、現場製造における湿式造粒により粒状化したコンクリートを用いた湿式吹付方法であることを特徴としており、配合の適正化により品質の向上が図れる。
しかし、圧送ホース内における閉塞や脈動の発生については改善されていない。
そして一般的な湿式吹付方法と同等以下の狭い施工範囲についてしか適用できないという問題を有している。
【0005】
粒状化したセメントを用いた吹付工法及びそれに用いられる装置と造粒セメント製造方法については、工場で乾式にて粒状化された固化材(セメント等)を用いた乾式吹付工法及びそれに用いられる装置と造粒固化材(セメント等)製造方法が提案されている(特許文献2、3、5、8参照)。係る吹付方法(特許文献2、3、5、8)では、吹付方法およびそれに用いられる装置ないし造粒セメント製造法が開示されており、配合の適正化により品質の向上が図れるとしている。
しかし、係る従来技術(特許文献2、3、5、8)における乾式造粒により粒状化した造粒固化材(セメント等)を用いた乾式吹付方法および造粒固化材製造法では、造粒固化材の粒径、比重、形状が適正に規定されていないため、圧送ホース内での摩擦抵抗の増大による流動性の低下や材料分離が生じ、ホース内閉塞、配合品質の低下および粉塵の発生を惹起し、以て、環境負荷の増大や作業の安全性の低下を招いていた。
【0006】
接続システムにおける装置に関する従来技術(特許文献2、5、8参照)にも多数の課題が確認されている。
係る従来技術(特許文献5、8)における脱気装置は、高圧で圧送される圧縮空気と材料のうち余剰エアのみを除去するために設けられているが、所定圧まで一気に脱気する構造および方法を採用しているため、一部粉体化した固化材(セメント等)が余剰エアに追従して流出してしまう。そして、固化材が流出することで、吹付造成された吹付モルタル又はコンクリートにおける固化材の含有量が減少し、配合品質の低下及び強度特性の不足を招いていた。また、脱気時に余剰エアと共に排出される固化材が粉塵化されてしまうため、環境負荷の増大及び作業の安全性の低下をも招いていた。
また、前記従来技術(特許文献2、5、8)における粉砕混練装置では、造粒固化材(セメント等)の粉砕及び混練効果が不足しており、吹付造成された吹付モルタル・コンクリート内に粉砕しきれなかった造粒固化材が粒状を保持しつつ残留しており、係る粒状の固化材の存在により強度低下や配合の不均一といった課題が発生していた。
さらに前記従来技術(特許文献2、5、8)における加水混合装置では、加水時において、圧送されてきた混合材料の進行方向に対して直角に加水噴射していたため、混合材料と水との配合が不均一であり、且つ、十分な混練もなされずにノズルから吹き付けられているので、適正な混練および配合が為されていなかった。そのため、吹付の際のリバウンド量が増加し、環境負荷の増大及び造成した吹付モルタルの品質低下を惹起していた。
【0007】
工場で乾式にて粒状化された固化材(セメント等)を用いた乾式吹付工法及びそれに用いられる加水システムが提案されている(特許文献2参照)が、このシステムでは、吹付機から吐出する混合材料が随時変動しているのに対して、加水システムで設定した一定流量の送水しかできない。そのため、ノズル近傍で加水する際に、圧送されてきた混合材料の変動量に適合した加水量を正確に調整することが不可能であり、ノズルマン(職人)の感覚(或いは勘)によって加水流量を手元において感覚で調整するか、又は、送水ポンプからの送水量を随時手動でオペレーター(職人)の感覚により操作しなければならなかった。そのため、吹付モルタル又はコンクリートの適正な配合(水セメント比W/C)に対する適正流量が確保されず、品質の低下を招いていた。係る問題は、通常の乾式吹付方法(段落[0003]参照)でも同様に最大の問題点として存在しており、現在においても未だに解決されていない重要な課題となっている。
【0008】
その他の従来技術として、長距離、高揚程に特化した特殊な工法も提案されている(特許文献1、6、7参照)。
しかし、当該従来技術(特許文献1、6、7)は特殊技術であり、材料圧送に際しては熟練技術が要求される。
法面(傾斜面)等の施工対象にモルタル又はコンクリートを吹き付ける吹付工法を実施するための吹付装置として、セメントと水を混合したセメントミルクと、少量の水を添加した砂や砕石(又は砂利等)から成る骨材とを別々に圧送し、それらを吹付ノズルの手前で合流させて吹付ノズルから吐出させる別圧送方式を採用する装置が知られている(特許文献1、7)。そして、セメントと水と骨材を混ぜ合わせた状態でポンプ圧送する方式(ポンプ圧送併用湿式モルタル又はコンクリート吹付方法)が存在する(特許文献6参照)。しかし、別圧送方式の従来技術においても、圧送ホース内における閉塞、脈動の発生の問題は解決されていない。さらに、セメントミルクが圧送中に閉塞すると、作業の危険性や、材料ロス及び周辺環境への影響が増大する。
また、生モルタル又はコンクリートを圧送する技術(特許文献6)では鉄管の配管及び移動再設置に多くの時間と労力が必要であり、作業自体に危険性を有する。
さらに、前記従来技術(特許文献1、6、7)は材料閉塞の抑制を意図しておらず、材料閉塞時の復旧のため多くの時間を要し、材料の廃棄ロスが大きくなってしまい、環境負荷が増大するという問題を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたもので、造粒固化材、骨材、水の配合を均一にして、吹付工法の品質を向上することを目的としたモルタル又はコンクリート吹付方法及び吹付装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の吹付装置(10)は、造粒固化材(M1)、骨材(M2)、水(M3)を含むモルタル又はコンクリートを吹付ノズル(61)から(法面1に)噴射する吹付装置(10)において、
加水システム(100)と、水(M3)以外の混合材料(例えば、造粒固化材M1と骨材M2の混合物)を圧送する圧送システム(200)と、加水システム(100)と圧送システム(200)を接続して水と水以外の混合材料を混合する接続システム(300)を含み、
圧送システム(200)は、水以外の混合材料を接続システム(300)に圧送する吹付機(25)と、吹付機(25)からの混合材料吐出量を計測する計測装置(3:検出センサ)と、吹付機(25)からの混合材料吐出量に対して所定の配合(吹付モルタル又はコンクリートとしての適正な配合)となる水(M3)の添加量及び当該添加量に対応する水(M3)の流量を演算する制御装置(2)を含み、
前記加水システム(100)は、前記制御装置(2)で演算された流量の水(M3)を圧送する送水ポンプ(32:流量制御インバータ一体型送水ポンプ)を有することを特徴としている。
【0012】
本発明において、前記計測装置(3:検出センサ)は、吹付機(25)の重量を計測する吹付機重量計測器(4:4個のロードセル)と、吹付機(25)への(上部圧力釜251への水以外の)混合材料投入量を計測する材料投入量計測器(5:材料投入量検出センサ)を含み、
前記制御装置(2)は、吹付機重量計測器(4)で計測した吹付機の全重量から混合材料投入量計測器(5)で計測した(上部圧力釜251への)混合材料投入量を減算し、さらに、予め設定した混合材料が投入されていない状態の吹付機重量(「空」の状態の吹付機重量)を減算して、投入された水以外の原料の減少した量を混合材料吐出量として演算する機能を有しているのが好ましい。
【0013】
また本発明において、前記接続システム(300)は混合装置(40)を備え、混合装置(40)は混合撹拌促進加水装置(41)及び混練促進管(42)を備えており、
混合撹拌促進加水装置(41)は全体が円筒形状であり、半径方向内方の内部空間(S1)に圧送システム(200)から圧送された水以外の混合材料が流過し、
内部空間(S1)の円周方向には複数の噴射孔(内壁孔部414A)が設けられ、噴射孔(414A)は加水システム(100)に連通しており、噴射孔(414A)の噴射方向は内部空間(S1)の中心に向かう仮想線(仮想の半径)に対して(15°〜45°の範囲で)傾斜しており、
混合撹拌促進加水装置(41)の下流側(吹付ノズル61側)に設けられた混練促進管(42)は全体が円筒形状であり、内壁面には長手方向に対して傾斜した複数の混練促進翼(421)が形成されているのが好ましい。
ここで、混練促進翼(421)が2〜4枚設けられている長手方向の所定範囲(段)が、1〜5段設けられているのが好ましい。
【0014】
そして本発明において、前記接続システム(300)は粉砕混練装置(43、43−1:多段式粉砕混練装置)を備え、
粉砕混練装置(43、43−1)は全体が管状であり、内周面に複数の突起(43A、43−1A)が設けられ、
当該複数の突起(43A、43−1A)が長手方向に間隔をあけて内周面円周方向に等間隔に配置され、且つ、長手方向について隣接する突起(43A、43−1A)とは内周面円周方向の位置が異なる様に配置(所謂「千鳥」状に配置)されており、内周面に突起(43A、43−1A)が配置されている領域が長手方向に複数(例えば2段〜5段)設けられているのが好ましい。
ここで、前記突起は半球状或いは円柱状(43A)に構成しても良いし、角柱形状(43−1A)に構成しても良い。
【0015】
或いは本発明において、前記接続システム(300)は粉砕混練装置(43−2:機械式粉砕混練装置)を備え、
粉砕混練装置(43−2)は全体が管状であり、内部空間に配置された造粒固化材(M1)破砕用の回転破砕翼(43−21:造粒セメント破砕用回転切羽)と、回転破砕翼(43−21)の駆動源(43−22:モータ)と、駆動源(43−22)からの駆動力を伝達する駆動力伝達機構(モータ回転軸43−23、ギヤボックス43−24)と、駆動力伝達機構の上流側(圧送システム200側)に配置されて圧送される水以外の混合材料(造粒固化材M1と骨材M2の混合物)が駆動力伝達機構(モータ回転軸43−23、ギヤボックス43−24)に衝突するのを防止する防護装置(43−25:ギヤボックス保護板)を有しているのが好ましい。
【0016】
或いは本発明において、前記接続システム(300)は脱気装置(44:多段式脱気装置)を備え、
脱気装置(44)は全体が管状であり、内部空間の圧力を部分的に減圧して外部に逃がす(脱気量を調整可能な)減圧機構(441)が長手方向に複数段(2〜5段)設けられており、各段の減圧機構(441)は内管(44A)及び外管(44B)を有し、
外管(44B)に対する内管(44A)の長手方向位置を調整し、外管(44B)内表面と内管(44A)外表面の間の隙間を調整するため、内管(44A)の上流側端部には雄ネジ(T44)が形成されており、雄ネジ(T44)は外管(44B)の内周面に形成された雌ネジと螺合していることが好ましい。
ここで、(内管44A及び)外管(44B)の下流側先端にはテーパーが形成されていることが好ましい。或いは、外管(44B)下流側先端のテーパーを長手方向に対して5〜15°に(緩やかなテーパーとなる様に)構成することで、内管44Aの下流側先端にはテーパーを形成しない(内管44Aの下流側先端を直管状に形成する)ことも可能である。
【0017】
また本発明において、吹付機(25)は上部圧力釜(251)と下部圧力釜(252)を備えており、
前記圧送システム(200)は吹付機(25)に高圧空気を供給する空気圧縮機(26)と、空気圧縮機(26)と吹付機(25)を連通する配管(27)に介装された圧力貯留槽(29:リザーバータンク)を含み、
圧力貯留槽(29)の容量は下部圧力釜(252)の容量の1/2以上であるのが好ましい。
ここで圧力貯留槽(29)の容量は、設置に悪影響を及ぼさない大きさであることが好適である。
【0018】
本発明のモルタル又はコンクリート吹付方法は、上述した吹付装置の何れか(請求項1〜7の何れか1項の吹付装置)を用いることを特徴としている。
また本発明のモルタル又はコンクリート吹付方法は、骨材(M2:細骨材例えば砂)と同程度の比重を有する粒状の造粒固化材(M1:例えば造粒セメント)を用いたことを特徴としている。
さらに本発明のモルタル又はコンクリート吹付方法は、骨材(M2:細骨材例えば砂)と同程度の粒径を有する粒状の造粒固化材(M1)を用いたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明において、粒状の造粒固化材(M1:例えば造粒セメント)の比重を骨材(M2:細骨材例えば砂)と同程度に設定することにより、材料分離が発生せず、吹付モルタルの品質が向上する。
また、粒状の造粒固化材(M1:例えば造粒セメント)の粒径を骨材(M2:細骨材例えば砂)と同程度に設定することにより、造粒固化材(M1)と骨材(M2)の形状及び大きさが同程度になるため、圧送ホース内におけるホース内壁との摩擦抵抗が大幅に低減し、ホースの閉塞が防止され、安定した混合材料圧送性能が確保され、吹付作業の施工性が改善される。
そして、造粒固化材(M1)の様な粒状の材料は同一質量の粉末に比較して表面積が著しく小さくなるため、骨材(M2)の表面水との反応が最小限に抑制される。そのため、圧送ホース内壁との摩擦抵抗や付着の発生が大幅に減少し、ホースの閉塞、ホース内における脈動やホース先端部ノズル付近における突発的な突出の発生が防止される。そのため、従来技術に比較して、吹付作業の施工性及び安全性が向上する。
【0020】
さらに、比重が骨材(M2:細骨材例えば砂)と同程度に設定され、或いは、粒径が骨材(M2:細骨材例えば砂)と同程度に設定された粒状の造粒固化材(M1)を用いることにより、乾式吹付方法で施工しても粉塵の発生を防止することが可能となり、環境負荷の低減及び作業の安全性が向上する。そのため、乾式モルタル又はコンクリート吹付方法における粉塵の発生に伴う環境負荷の増大や作業の安全性低下という問題が解消される。
そして乾式吹付方法で施工することにより、ホースを用いた圧送における性能が飛躍的に向上し、長距離、高揚程の圧送が可能になる。発明者の実験によれば、吹付圧送ホース延長560m、揚程155mの圧送が容易に実行された。また、水平に配置されたホースであれば、ホース延長800mの圧送を容易に実行することができた。
係る長距離、高揚程の圧送は一般的なプラント構成で実現することができるので、材料圧送に際して特別な熟練技術は不要であり、作業の安全性及び施工性が著しく向上する。
また、ホースの閉塞、ホース内における脈動やホース先端部ノズル付近における突発的な突出の発生が防止されるので、本発明によれば一般的な吹付プラントで使用されているものと同様な圧送ホース(公知の圧送ホース)をそのまま使用することができる。そのため、吹付装置の設置に格別の労力は不要となることで作業の安全性が確保され、長距離、高揚程の圧送性能及び施工性が向上し、長距離、高揚程の圧送が容易に実行可能となる。
【0021】
ここで、例えばモルタルの配合は、「セメント:細骨材(砂)=1:4」というのが一般的な配合であり、吹付機(25)から圧送される造粒固化材(造粒セメント)と骨材の配合は、係る一般的な配合に維持することが可能である。ここで、水セメント比W/Cはモルタルの強度やその他品質に大きく影響し、通常、のり面の吹付においては、W/C=45〜55%の間に設定する。
しかし、吹付機(25)から圧送される造粒セメント(M1)と骨材(M2)の混合物の吐出量を一定値にすることは困難であり、そのため、モルタルの配合を均一にするためには、時々刻々変動する造粒セメント(M1)と骨材(M2)の混合物の吐出量に対応して、加水システム(100)から圧送される水(M3)の流量を常時調節しなければならないが、従来技術ではその様な水の流量調節は不可能であった。
これに対して本発明によれば、吹付機(25)からの混合材料(水M3以外の混合材料:例えば造粒固化材M1と骨材M2の混合物)の吐出量を計測する計測装置(3:検出センサ)と、当該吐出量に対して所定の配合(吹付モルタルとしての適正な配合)となる水(M3)の添加量とそれに対応する水(M3)の流量を演算する制御装置(2)と、制御装置(2)で演算された流量の水(M3)を圧送する送水ポンプ(32:流量制御インバータ一体型送水ポンプ)を有している。そのため、吹付機(25)からの造粒固化材(M1)と骨材(M2)の混合物の吐出量が均一でなくても、混合物の吐出量を計測装置(3)で計測し、その計測結果に基づいて制御装置(2)で適正な配合となる様に水(M3)の添加量及び流量を演算し、その演算結果に従って送水ポンプ(32)から水(M3)を圧送するので、接続システム(300)で混合された水(M3)と造粒固化材(M1)と骨材(M2)は常に吹付モルタルとして適正なW/Cの配合を確保できる。
そのため、法面(1)に吹き付けられる吹付モルタルの配合が適正な配合から外れてしまうことが防止され、乾式吹付方法における最大の欠点を補い、安定した品質を確保することが出来る。
発明者の実験によれば、モルタルの配合を「セメント:細骨材(砂)=1:3」という高強度モルタルの吹付についても、同等の吹付性能及び品質を確保できることが確認されている。
【0022】
本発明において、前記接続システム(300)は混合装置(40)を備え、混合装置(40)は混合撹拌促進加水装置(41)及び混練促進管(42)を備えており、混合撹拌促進加水装置(41)は全体が円筒形状であり、半径方向内方の内部空間(S1)に圧送システム(200)から圧送された水以外の混合材料が流過し、内部空間(S1)の円周方向には複数の噴射孔(内壁孔部414A)が設けられ、噴射孔(414A)は加水システム(100)に連通しており、噴射孔(414A)の噴射方向は内部空間(S1)の中心に向かう仮想線(仮想の半径)に対して(15°〜45°の範囲で)傾斜していれば、噴射孔(414A)の噴射から噴射される水(M3)に旋回方向の成分を生じ、当該旋回方向の成分により、多段式ないし機械式粉砕混練装置(43、43−1、43−2)により粉砕された造粒固化材(M1)と骨材(M2)の混合物に水(M3)が添加された際に強制的に混合物及び水を回転して、混合効率を向上することが出来る。
そして、混合撹拌促進加水装置(41)の下流側(吹付ノズル61側)に設けられた混練促進管(42)は全体が円筒形状であり、長手方向に対して傾斜した複数の混練促進翼(421)を内壁面に形成すれば、加水された粉砕済みの造粒固化材(M1)と骨材(M2)の混合物が混練促進翼(421)を通過することで強制的に回転力が付与され、渦流が発生する。係る渦流により、粉砕済みの造粒固化材(M1)と骨材(M2)と水(M3)との混練効果が向上する。
従来の乾式吹付においては、混合材料が加水直後に吹付ノズルから吹き付けられるためモルタルの混練りが不足し、配合品質が低下するという問題が存在したが、混練促進管(42)により強制的に回転力が付与され渦流が発生し、渦流により粉砕済みの造粒固化材(M1)と骨材(M2)と水(M3)とが効率良く混練され、適正な配合の吹付モルタル又はコンクリートを造成することが可能となる。
【0023】
ここで、造粒固化材(M1)を構成する造粒セメントは、砕ければ砕けるほど、吹付モルタルの圧縮強度は向上する。換言すれば、粒状である造粒セメントの残留混合率が高いほど吹付モルタルの圧縮強度は小さくなる。残留した粒状の造粒セメントを混合した吹付モルタルの圧縮強度が低下するのは、造粒セメントを粉体セメントに粉砕する効果が不十分であることに起因する。
本発明において、前記接続システム(300)が粉砕混練装置(43、43−1:多段式粉砕混練装置)を備え、粉砕混練装置(43、43−1)は全体が管状であり、内周面に複数の突起(43A、43−1A)が設けられ、当該複数の突起(43A、43−1A)が長手方向に間隔をあけて内周面円周方向に等間隔に配置され、且つ、長手方向について隣接する突起(43A、43−1A)とは内周面円周方向の位置が異なる様に配置(所謂「千鳥」状に配置)されており、内周面に突起(43A、43−1A)が配置されている領域が長手方向に複数(例えば2段〜5段)設けられていれば、従来技術(例えば特許文献2、5、8)の様な単一段の粉砕混練装置に比較して、圧送システム(200)から圧送された造粒固化材(M1)及び骨材(M2)の混合物が粉砕混練装置(43、43−1)を通過する際に突起(431)と衝突する確率が遥かに高くなり、その結果、造粒固化材(M1)は効率良く粉砕されて、通常の粉末状の固化材(例えばセメント)となる。これに伴い造粒固化材(M1)の粉砕される確率が遥かに向上して混練されるため、吹付モルタル内に粒状の造粒セメントが残留することが抑制され、吹付モルタルの圧縮強度が向上し、以て、吹付モルタルの品質を確保することが出来る。
【0024】
或いは本発明において、前記接続システム(300)は粉砕混練装置(43−2:機械式粉砕混練装置)を備え、粉砕混練装置(43−2)は全体が管状であり、内部空間に配置された造粒固化材(M1)破砕用の回転破砕翼(43−21:造粒セメント破砕用回転切羽)と、回転破砕翼の駆動源(43−22:モータ)と、駆動源(43−22)からの駆動力を伝達する駆動力伝達機構(モータ回転軸43−23、ギヤボックス43−24
)を有していれば、回転破砕翼(43−21)により造粒固化材(M1)を破砕して、撹拌することが出来る。これにより、吹付モルタル内に粒状の造粒セメントが残留することが抑制され、吹付モルタルの圧縮強度が向上する。
ここで、駆動力伝達機構の上流側(圧送システム200側)に防護装置(43−25:ギヤボックス保護板)を配置すれば、圧送される水以外の混合材料(造粒固化材M1と骨材M2の混合物)が駆動力伝達機構(モータ回転軸43−23、ギヤボックス43−24)に衝突するのを防止し、駆動力伝達機構の摩耗及び劣化を防止して、回転破砕翼(43−21)による造粒固化材(M1)の破砕を続行することが出来る。
【0025】
前記接続システム(300)は脱気装置(44:多段式脱気装置)を備えているが、従来技術(例えば特許文献2)の様に脱気装置が単一段のみ設けられている場合には、減圧の際に大量の高圧空気を脱気装置から一度に脱気するため、接続システムに接続されている圧送ホース内の摩擦により或いは骨材(M2)との衝突により一部粉体化したセメント分が、脱気装置から脱気する大量の高圧空気に連行されて脱気装置から漏出し、作業現場でセメント粉塵が漏出するため環境負荷の増大や作業の安全性低下という問題が判明した。同時に、吹付ノズル方向へ圧送される混合材料の単位セメント量が減少し、配合品質の低下を招いていた。
本発明において、前記接続システム(300)は脱気装置(44:多段式脱気装置)を備え、脱気装置(44)は全体が管状であり、内部空間の圧力を部分的に減圧して外部に逃がす脱気量を調整可能な減圧機構(441)が長手方向に複数段(2〜5段)設けられていれば、各段の減圧機構(441)毎に少量ずつ減圧して脱気することにより、最終的に従来技術に係る脱気装置と同程度まで減圧、脱気することが出来る。そして、各減圧機構(441)における減圧の程度は、従来の脱気装置における減圧に比較するとはるかに小さいので、脱気される高圧空気の量も少ない。そのため、一部粉体化した固化材(セメント等)が脱気される高圧空気に連行されて脱気装置(44)から漏出することはなく、脱気装置(44)からの粉塵の漏出が防止され、環境負荷が低減し、作業の安全性が確保される。加えて、配合品質の安定化を確保できる。
そして、各段の減圧機構(441)は内管(44A)及び外管(44B)を有し、内管(44A)の上流側端部には雄ネジ(T44)が形成されており、雄ネジ(T44)は外管(44B)の内周面に形成された雌ネジと螺合していれば、外管(44B)に対する内管(44A)の長手方向位置を調整し、外管(44B)内表面と内管(44A)外表面の間の隙間を調整することが出来るので、減圧機構441の各々における減圧量を調整できる。
また、(内管44A及び)外管(44B)の下流側先端にテーパーが形成されていれば、テーパー状の先端形状により、一部紛体化した固化材(造粒固化材M1の一部が紛体化したもの)の直進性が向上し、下流方向に逆流することが防止されて余剰の高圧空気のみが脱気される。それによって、粉塵の発生が防止される。ここで、外管(44B)下流側先端のテーパーを長手方向に対して5〜15°に(緩やかなテーパーとなる様に)構成することで、内管44Aの下流側先端にはテーパーを形成しない場合でも(内管44Aの下流側先端を直管状に形成すれば)、高圧空気に連行されて粉体化したセメントが逆流することが抑制され、粉塵が減圧機構(44)の外部に漏出することが防止され、環境負荷が低減し、作業の安全性が確保されると共に、安定した配合品質を確保できる。
【0026】
ここで、吹付機(25)が上部圧力釜(251)と下部圧力釜(252)を備えている場合には、上部圧力釜(251)へ高圧空気を供給する際に、下部圧力釜(252)への高圧空気が上部圧力釜(251)に供給されるため、下部圧力釜(252)の圧力が一時的に降圧する。その結果、上部圧力釜(251)と下部圧力釜(252)に圧力差が生じ、混合材料を吐出する圧力が降圧し、水以外の混合材料の吐出量が不安定になり、場合によっては吹付機(25)の吐出口或いはホース内での閉塞等を招くこともある。
本発明において、吹付機(25)は上部圧力釜(251)と下部圧力釜(252)を備えており、前記圧送システム(200)は吹付機(25)に高圧空気を供給する空気圧縮機(26)と、空気圧縮機(26)と吹付機(25)を連通する配管(27)に介装された圧力貯留槽(29:リザーバータンク)を含んでいれば(空気圧縮機26と吹付機25を連通する配管27に圧力貯留槽29を介装すれば)、上部圧力釜(251)に高圧空気を供給する際に、圧力貯留槽(29)に貯留された高圧空気を吹付機(25)に供給することにより、上下の圧力釜(251、252)における圧力の不均衡をなくし、空気圧縮機(26)単体及び吹付機(25)の能力だけでは困難だった前記圧力差の発生防止が可能となる。
発明者の実験では、圧力貯留槽(29)の容量が下部圧力釜(252)の容量の1/2以上であれば、前記圧力差の発生を防止できることが確認されている。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1において全体を符号10で示す図示の実施形態に係る吹付装置は、加水システム100と、モルタル等を圧送する圧送システム200と、加水システム100及び圧送システム200と接続して水と水以外の混合材料を混合撹拌する接続システム300を含む。
圧送システム200により圧送されるモルタル等の固化材は、例えば、造粒固化材M1、骨材M2を混合したものからなる。図示の実施形態では、固化材としては、適切に粉砕された場合に固化能力を維持した状態となるように粒状化された造粒固化材M1(例えば、セメント系造粒固化材:特許文献3参照)が利用される。
図示はされていないが、以下の実施形態において、造粒固化材M1としては、骨材M2(細骨材例えば砂)と同程度の比重、形状、大きさに設定された粒状固化材が用いられる。
例えば、骨材M2として絶乾密度が2.5g/cm
3前後あるいはそれ以上の細骨材が用いられ、造粒固化材M1として見掛密度が2.5g/cm
3前後の造粒セメントが用いられる。1例として、 造粒固化材M1の見掛密度≒骨材M2の絶乾密度 となる様に選択することが望ましい。
ここで、造粒固化材M1として造粒セメントを選択し、骨材M2として山砂、砕砂、川砂、海砂を使用した場合、山砂、砕砂は角礫ないし亜角礫状であり、川砂、海砂は球状であるため、造粒固化材も角礫ないし亜角礫状を主体として扁平球状も製造、使用可能であり、細骨材と造粒セメントとは形状は同じと考えて良い。
さらに、造粒固化材M1として造粒セメントを選択し、骨材M2として細骨材を選択した場合には、造粒セメントも細骨材も、共にφ5mm以下と規定するのが望ましい。
【0029】
造粒固化材M1は、例えば、少なくとも固化材(セメント等)及び油脂類を含む複合材料の混練材の圧縮造粒体からなる。造粒固化材M1の粒径等については特に制限はないが、例えば、細骨材、粗骨材等の骨材M2と同程度の大きさを標準として設定される。
造粒固化材M1は、固化材(セメント等)及び油脂類の他に、増粘材、崩壊材、その他必要に応じて混和材を含んでもよい。増粘材としては、前記複合材料の粘性を向上させて粒状化させ易くする性質を有するものが使用される。崩壊材としては、水を吸収すると、造粒固化材の崩壊を促進させる性質を有するものが使用される。造粒固化材M1は、例えば、少なくとも固化材(セメント等)及び油脂類を含む複合材料の混合攪拌工程と、前記混合攪拌工程による1次処理材料の粉砕・解砕工程と、必要に応じて前記粉砕・解砕工程による2次処理材料の圧縮造粒工程を含む方法により製造され(特許文献3参照)、前記圧縮造粒工程で製造された造粒固化材M1は、必要に応じて焼成されても良い。
ただし、図示の実施形態において、粒状化しない同様の複合材料の粉末状の固化材も適用することも可能である。
【0030】
吹付装置10において、水M3と、水M3(液体)以外の原材料(造粒固化材M1、骨材M2等の吹付原材料)は、別々のホース34、28により施工対象である法面1近傍まで圧送される。
ホース28、34は法面1近傍に配置された接続システム300に連通しており、別々に圧送された水M3と、水M3以外の原材料(造粒固化材M1、骨材M2等の吹付原材料)は、接続システム300で合流して混合され、吹付ノズル61から噴射されて法面1に吹き付けられる(M10)。
【0031】
造粒固化材M1及び骨材M2を混合撹拌促進加水装置41へ圧送する圧送システム200は、ホッパー21、第1ベルトコンベア22、計量器23、第2ベルトコンベア24、吹付機25、空気圧縮機26、リザーバータンク29(圧力貯留槽)を備えており、発電機(
図2、
図4参照:
図1では図示せず)により、吹付機25、第1ベルトコンベア22、計量器23、第2ベルトコンベア24、ホッパー21を作動する。それと共に、当該発電機は、加水システム100における送水装置32(流量制御インバータ一体型送水ポンプ)、水タンク31内の水中ポンプ311に対して電力を供給する。
【0032】
骨材M2は、図示しないユニック車等によりホッパー21近傍まで運搬され、ホッパー21の受入口に投入される。ホッパー21は隣接する第1ベルトコンベア22に適量の骨材M2を排出する。第1ベルトコンベア22はホッパー21と計量器23の間に設置されており、ホッパー21から排出された骨材M2を計量器23へ搬送する。
計量器23は、ベルトコンベア22で搬送された骨材M2を、篩(ふるい)を用いて粒径で選別し、判別された適当な大きさの骨材M2のみを所定量ずつ計量して、隣接する第2ベルトコンベア24に排出する。第2ベルトコンベア24は計量器23と吹付機25の間に設置されており、計量器23から排出された骨材M2を吹付機25へ搬送する。
骨材M2が第2ベルトコンベア24上を搬送されている間に、適量の造粒固化材M1が、例えば作業者により第2ベルトコンベア24上に供給され、その結果、第2ベルトコンベア24は、適量の骨材M2と適量の造粒固化材M1を吹付機25へ搬送する。
【0033】
吹付機25は、第2ベルトコンベア24で搬送された造粒固化材M1及び骨材M2を攪拌し、造粒固化材M1及び骨材M2の混合物を第1耐圧ホース28に吐出する。
明確に図示されてはいないが、吹付機25は撹拌機を内蔵する攪拌槽を備えており、当該撹拌槽により、造粒固化材M1及び骨材M2を混合、撹拌する。また吹付機25は、エアホース27を介して空気圧縮機26と接続しており、空気圧縮機26から高圧の圧縮空気が供給される。
造粒固化材M1及び骨材M2の混合物は、吹付機25から、耐圧ホース28を介して接続システム300に供給される。図示の簡略化のため、
図1では耐圧ホース28は符号αを経由して接続システム300に到達している。
高圧圧縮空気供給源である空気圧縮機26と吹付機25を連通するエアホース27には、リザーバータンク29が介装されている。リザーバータンク29については後述する。
【0034】
吹付機25には、第1耐圧ホース28に供給される(吐出される)造粒固化材M1及び骨材M2の混合物の吐出量を検出する検出センサ3が取り付けられており、検出センサ3の検出結果は制御装置2に送信される。制御装置2は、検出センサ3による検出結果に基づいて、接続システム300において混合される造粒固化材M1、骨材M2、水M3の配合(水セメント比W/C)を適正にするべく水M3の流量を決定して、制御信号を加水システム100の流量制御インバータ一体型送水ポンプ32(送水装置)のデータ受信部32Aに発信する機能を有している。
流量制御インバータ一体型送水ポンプ32では、制御装置2から送信された前記制御信号により、接続システム300において混合されるモルタルの配合が適正な数値となる流量の水M3を、第2耐圧ホース34に圧送(吐出)する。
【0035】
図1では示されていないが、吹付機25には上部圧力釜251と下部圧力釜252が設けられており(
図2、
図4)、上部圧力釜251と下部圧力釜252は上下圧力釜隔壁253により分離されている(
図2、
図4)。
上部圧力釜251に造粒固化材M1、骨材M2の混合材料が投入されたならば、上蓋254を閉鎖した後に、上部圧力釜251に高圧空気が注入され、下部圧力釜252と同等まで加圧される。そして上下圧力釜隔壁253が開放されると下部圧力釜252へ混合材料が投下される。
下部圧力釜252は稼働時には常時高圧空気の圧力が作用しており、混合材料が投下された後に上下圧力釜隔壁253が閉鎖され、下部圧力釜252へ追加エアが注入されてさらに強い圧力が付加されると、下部圧力釜252の圧力が昇圧し、第1耐圧ホース28に混合材料が吐出される。
以下、上述の作業をバッチ作業として繰り返し、混合材料を吐出する。
【0036】
図1において、加水システム100は、水タンク31、水タンク31内の水中ポンプ311、流量制御インバータ一体型送水ポンプ32(送水装置)を備えている。
図1では明示されていないが、流量制御インバータ一体型送水ポンプ32は流量計を内蔵している。
水タンク31に収容された水M3は、水タンク31内の水中ポンプ311によって吸入され、流量制御インバータ一体型送水ポンプ32へと送水され、さらに流量制御インバータ一体型送水ポンプ32から第2耐圧ホース34に圧送(吐出)される。水M3の吐出流量は、接続システム300においてモルタルが適正な配合(水セメント比W/C)となる流量に随時制御されている。
第2耐圧ホース34は接続システム300に連通している。
図1では、図示の簡略化のため、第2耐圧ホース34は符号βを経由して、接続システム300に接続している。
吹付機25、検出センサ3、制御装置2、流量制御インバータ一体型送水ポンプ32等による制御(圧送システム200と加水システム100の制御)については、
図2〜
図6を参照して後述する。
【0037】
接続システム300は、混合撹拌促進加水装置41、混練促進管42、多段式粉砕混練装置43、43−1(或いは機械式粉砕混練装置43−2)、多段式脱気装置44を備えている。混合撹拌促進加水装置41と混練促進管42は混合装置40を構成する。
接続システム300には、第1耐圧ホース28の下流側の端部28aと、第2耐圧ホース34の下流側の端部34aが接続しており、第1耐圧ホース28内を流過する造粒固化材M1と骨材M2の混合物と第2耐圧ホース34内を流過する水M3は、接続システム300で合流する。
混合撹拌促進加水装置41の下流側には第3耐圧ホース51が接続され、造粒固化材M1、骨材M2、水M3の混合物は第3耐圧ホース51内を流過して、吹付ノズル61から法面1に噴射される(M10が吹き付けられる)。
接続システム300の混合撹拌促進加水装置41、混練促進管42については
図11、
図12を参照して後述し、多段式粉砕混練装置43、43−1及び機械式粉砕混練装置43−2については
図8〜
図10を参照して後述し、多段式脱気装置44については
図7を参照して後述する。
【0038】
図1を参照して、空気圧縮機26と吹付機25を連通するエアホース27に介装されているリザーバータンク29(外付けリザーバータンク)について説明する。
上述した様に、吹付機25は
図1では図示しない上部圧力釜251(
図2、
図4参照)と下部圧力釜252(
図2、
図4参照)を備えているが、上部圧力釜251へ高圧空気を供給する際に、下部圧力釜252に供給されるべき高圧空気が減少し、上部圧力釜251に供給されてしまうため、下部圧力釜252の圧力が一時的に降圧する。その結果、上部圧力釜251と下部圧力釜252に圧力差が生じ、同時に第1耐圧ホース28に混合材料を吐出する圧力が降圧し、造粒固化材M1及び骨材M2の混合材料吐出量が不安定になり、場合によっては吹付機25の吐出口或いはホース内における閉塞や脈動等を招くこともある。
図示の実施形態では、リザーバータンク29をエアホース27に介装することにより、空気圧縮機26単体及び吹付機25の能力だけでは限界であった前記圧力差の発生を防止している。すなわち、上部圧力釜251に高圧空気を供給する際に、リザーバータンク29内の高圧空気を加えることにより、上下の圧力釜251、252における圧力の不均衡を未然に防止して、前記圧力差の発生を予防している。これにより混合材料を安定して吐出することが出来て、作業性が向上し(効率が改善され)、閉塞や脈動等による不安定要因が抑制できることにより作業員の安全性の向上を図ることが出来る。
【0039】
リザーバータンク29の容量は、下部圧力釜252の容量の1/2以上に設定するのが好適である。発明者の実験では、下部圧力釜252の容量の1/2以上であれば、上部圧力釜251に高圧空気を供給する際に、上下の圧力釜251、252において圧力差が生じることを防止出来た。
ここで、リザーバータンク29の容量が大き過ぎると設置が困難になり、各種作業性や搬出搬入の積み込み等に悪影響が生じる。換言すれば、リザーバータンク29の寸法は下部圧力釜の容量の1/2以上で、設置に悪影響を及ぼさない範囲であることが好ましい。
【0040】
図1における吹付機25、検出センサ3、制御装置2、流量制御インバータ一体型送水ポンプ32について、
図2、
図3を参照して説明する。
図2において、粉粒体質量流量計3A及びデータ送信器3B(トランスミッター)は、
図1における検出センサ3を構成している。粉粒体質量流量計3Aは、吹付機25(の下部圧力釜252)の吐出部25Aから第1耐圧ホース28に供給(吐出)された造粒固化材M1及び骨材M2の混合物の吐出量を検出(計測)している。粉粒体質量流量計3Aの検出結果(吐出量)は、データ送信器3B(トランスミッター)により制御装置2に送信される。上述した様に、吹付機25から吐出された造粒固化材M1及び骨材M2の混合物は、第1耐圧ホース28を介して接続システム300に供給される。
【0041】
制御装置2は、検出センサ3(粉粒体質量流量計3A及びトランスミッター3B)から送信された検出結果(造粒固化材M1及び骨材M2の混合物の吹付機25からの吐出量)を受信して、当該吐出量に対して所定の配合となる水M3の添加量(吹付モルタルが適正な配合となる水の添加量)及び当該添加量に対応する水M3の流量(換算流量)を演算する機能を有している。適正な水M3の添加量は、後述する様に、例えば、水セメント比W/C=45〜55%の範囲に設定される。
制御装置2で演算された混合物に添加する水M3の換算流量のデータは、加水システム100側のデータ受信機32Aを介して流量制御インバータ一体型送水ポンプ32に送信される。
加水システム100の流量制御インバータ一体型送水ポンプ32は、水タンク31内に貯蔵されている水M3を水中ポンプ311により吸入し、制御装置2で演算された換算流量の水M3を第2耐圧ホース34に圧送(吐出)する。第2耐圧ホース34に吐出された水M3は、接続システム300(
図1参照)に供給される。
明確には表示されていないが、発電機6は、吹付機25、流量制御インバータ一体型送水ポンプ32、水タンク31内の水中ポンプ311等に電力を供給している。
【0042】
例えば、モルタルの配合は、「セメント:細骨材(砂)=1:4」というのが一般的な配合であり、これに対してどれだけの水を加えるかというのが「水セメント比W/C」である。水セメント比W/Cは、モルタルの強度やその他品質に大きく影響する。
通常、吹付モルタルにおいては、水セメント比W/C=45〜55%の間に設定される。一般的な配合のモルタルであれば、W/C=50%とすれば、セメントが100kgであれば、砂は400kg、水は50kgとなる。ここで、砂には表面水という余剰水が付着しており、余剰水については、毎日午前午後の2回測定し、測定された余剰水の分を差し引いた水の量を添加する。
図2、
図3では明示されていないが、制御装置2には係わるモルタルの配合を事前に設定或いは記録しており、接続システム300に到達した時点で混合物の配合が適正な水セメント比W/Cとなるように、混合材料(造粒固化材M1及び骨材M2の混合物)の吐出量(質量流量)に対して必要な水M3の比率から、送水すべき流量が演算できる。
流量指定式送水ポンプを用いれば、造粒固化材M1及び骨材M2の混合物の吐出量が変化しても、対応した必要配合水量を常時確認することが出来る。そのため、流量指定式送水ポンプの流量を自動調整することにより、常時W/C=50%となる様に水M3を送水し、吹付ノズル61手前の接続システム300において、適正な水量を、多段式ないし機械式粉砕混練装置43、43−1、43−2により粉砕された造粒固化材M1及び骨材M2の混合物に添加することが出来る。
【0043】
第1耐圧ホース28により造粒固化材M1と骨材M2の混合物をエア圧により圧送するのと、第2耐圧ホース34により水M1をポンプ圧送するのでは、圧送時間にタイムラグが生じる。耐圧ホースの長さが同一であっても、水M1の方が、エア圧送された造粒固化材M1と骨材M2の混合物よりも早く接続システム300に到達する。
係るタイムラグは、ホース径の違い、各耐圧ホースの圧送素材の摩擦損失の違い、固形物のエア圧送か液体のポンプ圧送かの違い等に起因すると推定される。発明者の実験では、例えば耐圧ホース28、34の長さが共に560mで、揚程(高低差)が155mの場合、造粒固化材M1と骨材M2の混合物をエア圧により圧送した場合と、水M1をポンプ圧送した場合のタイムラグは、約30秒であった。
図2、
図3では明示されていないが、制御装置2には係るタイムラグを事前に設定或いは記録しており、接続システム300に到達した時点で混合物の配合が適正な水セメント比W/Cとなるように、当該タイムラグを考慮したうえで、加水量及び対応する換算流量を演算する機能を有している。
【0044】
従来技術においては吹付機25からの混合材料吐出量は一定でなかったため、従来の乾式吹付工において加水量はノズルマン(職人)まかせとなり、吹付装置(10)において水、固化材、骨材を適正に配合することは困難であった。
図2、
図3を参照して上述した制御を行うことにより、材料吐出量の変化を把握し、材料吐出量の変化に追従して適正加水量の換算流量とするための制御信号を流量制御インバータ一体型送水ポンプ32へ送信し、流量制御自動化システムを構築したので、モルタル配合において最も重要な水セメント比W/Cを安定させ且つ正確に実現することが可能となり、吹付モルタルを適正な品質に維持することが可能となった。
【0045】
次に、
図3を参照して、
図2で示す態様における圧送システム200、加水システム100の制御を説明する。
図3において、ステップS1では、粉粒体質量流量計3A(検出センサ3)により、吹付機25から第1耐圧ホース28に吐出される造粒固化材M1及び骨材M2の混合物の吐出量を計測する。計測された混合物の吐出量は、データ送信器3B(トランスミッター)により制御装置2に送信される(制御装置2に入力される)。そしてステップS2に進む。
ステップS2では、制御装置2は、検出センサ3から送信された混合物吐出量(材料吐出量)のデータに基づき、吹付モルタルとしての適正な配合となる様に、造粒固化材M1及び骨材M2の混合物の吐出量に対する水M3の所定の配合量(添加量)を演算する。そしてステップS3に進む。
ここで、例えば水セメント比W/C=50%であれば、セメント(造粒固化材M1に含有されるセメント分)100kgに対して水M3の配合量は50kgである。その際、「セメント:骨材=1:4」であれば、骨材M2は400kgである。
【0046】
ステップS3では、制御装置2は、ステップS2で演算した適正な水M3の配合量に対応する換算流量を演算する。そしてステップS4で、制御装置2は、ステップS3で演算した換算流量を制御信号として、データ受信機32Aを介して加水システム100における流量制御インバータ一体型送水ポンプ32に送信する。そしてステップS5に進む。
ステップS5では、制御を終了するか否かを制御装置2が判断する。例えば、吹付作業が終了した場合、「終了」と判断されるが、その他、施工状況により中断する場合を含めて、制御装置2は「終了」するか否かを判断する。明確には図示されていないが、作業者により制御を終了するか否かを判断したり、リセットする場合がある。
ステップS5において、「Yes」であれば制御を終了し、「No」であればステップS1に戻り、本制御を継続する。
【0047】
次に、
図4、
図5、
図6を参照して、
図2、
図3を参照して説明したのとは異なる態様について説明する。
図4において、
図1における検出センサ3を構成する機器は、吹付機重量計測器4及び材料投入量検出センサ5(材料投入量計測器)である。
吹付機重量計測器4は、吹付機25の底部近傍の脚部4箇所に配置されるロードセルであり、4箇所のロードセルで吹付機25の全重量を計測する。
図4では2箇所のロードセル4が図示されている。稼働中の吹付機25には、造粒固化材M1及び骨材M2の混合物が上部圧力釜251に)投入され、下部圧力釜252から混練された造粒固化材M1及び骨材M2の混合物が第1耐圧ホース28に吐出される。
吹付機重量計測器4が計測する吹付機25の全重量は、刻々と変動する吹付機25内の造粒固化材M1及び骨材M2の混合物の重量に、吹付機25自体の重量(吹付機25の「空」の重量)を加えた重量である。当該計測結果(吹付機25の全重量)は、トランスミッター4A(データ送信器)を介して制御装置2に送信される。
材料投入量検出センサ5(材料投入量計測器)は、吹付機25の上部圧力釜251における混合物投入口25B近傍に配置され、上部圧力釜251へ投入される造粒固化材M1及び骨材M2の混合物(水以外の混合物)の投入量を計測する。吹付機25への混合物の投入量は、トランスミッター5A(データ送信器)を介して制御装置2に送信される。
【0048】
制御装置2は、材料投入量検出センサ5による計測結果を受信し、そして、吹付機重量計測器4(ロードセル)で計測した「吹付機25の全重量」から材料投入量検出センサ5で計測した「材料投入量(バッチ毎累積データ)」を減算し、さらに、予め計測された混合物が投入されていない「空の状態の吹付機25の重量(定数)」を減算する。この様な演算により、原料減少量すなわち吹付機25から吐出口25Aを通過して第1耐圧ホース28に吐出される混合物吐出量を求めることが出来る。
「混合物吐出量」=「吹付機25の全重量(常時データ)」
−「材料投入量(バッチ毎累積データ)」−「空の吹付機25の重量」・・・(式1)
【0049】
上述の式(1)(吹付機25からの混合物吐出量の計算式)について、
図5を参照して説明する。
図5において、上部圧力釜251内の混合物(造粒固化材M1及び骨材M2の混合物)重量の変動を特性線Aで示し、下部圧力釜252内の混合物重量の変動を特性線Bで示し、上部及び下部圧力釜25内の混合物全重量の変動を特性線Cで示しており、特性線Dは、上部及び下部圧力釜25内の混合物減少量、すなわち吐出量を示している。
図5において、縦軸は重量(混合物重量の増減、混合物の吐出量)を示し、横軸は時間経過を示す。
図5において、上部圧力釜251内の混合物重量(特性線A)は混合物が投入されると重量増加し(領域A1)、下部圧力釜252への混合物投下により重量がゼロになる(領域A2)。すなわち、上部圧力釜251内の混合物供給は(特性線Aで示す)は、バッチ作業である。上部圧力釜251内の混合物重量の変動は、材料投入量検出センサ5で計測される。
下部圧力釜252内の混合物重量(特性線B)は、バッチ毎の上部圧力釜251からの混合物投下により一瞬で一定値まで重量が増加し(領域B1)、その後、混合物吐出により連続的に重量が減少し、これを(バッチ毎に)繰り返す。そして、連続的に減少する重量を累積データとして求めれば、吹付機25からの混合物吐出量を求めることが出来る。
【0050】
上部及び下部圧力釜25内の混合物全重量(特性線)は、上部圧力釜251内の混合物重量(グラフA)と下部圧力釜252内の混合物重量(グラフB)を合算したものであり、混合物の投入、下部圧力釜への投下(特性線A)と混合物吐出(特性線B)で示す様に、常時変動している。ここで、上部及び下部圧力釜25内の混合物全重量は、吹付機重量計測器4(4箇所のロードセル)で計測した「吹付機25の全重量(混合物も含まれる)」から、予め計測された定数である「空の吹付機25の重量」を減算することにより求められる。
そのため、上述した式(1)において、「混合物吐出量」は、下部圧力釜252内の混合物重量の変動(グラフB)におけるバッチ毎の減少した重量の累積値であり、
図5の特性線Dで表すことが出来る。ここで、特戦線Dの(混合物の減少を示す)勾配は、特性線Bにおけるバッチ毎に断続的に減少する勾配と同じである。
【0051】
再び
図4において、制御装置2は、前記式(1)により吹付機25から吐出される混合物(造粒固化材M1及び骨材M2)の量(混合物吐出量)を演算した後、演算された混合物吐出量に対して、吹付モルタルとしての適正な配合となる様に、水M3の添加量及び当該添加量に対応する水M3の流量(換算流量)を演算する(例えば、吹付モルタルの水セメント比W/C=45〜55%の範囲内の指定した値となる様に、水M3の換算流量を演算する)。
図4、
図5の態様におけるその他の制御は、
図2、
図3の態様の制御と同様である。すなわち、制御装置2で演算された混合物に添加する水M3の流量のデータは、加水システム100側のデータ受信機32Aを介して流量制御インバータ一体型送水ポンプ32に送信される。そして加水システム100の流量制御インバータ一体型送水ポンプ32では、水タンク31内に収容される水M3を水中ポンプ311により吸入し、制御装置2で演算された換算流量で水M3を第2耐圧ホース34に圧送(吐出)する。第2耐圧ホース34に吐出された水M3は、接続システム300に供給される。
【0052】
図6を参照して、
図4、
図5で説明した態様における制御の手順を説明する。
ステップS11では、吹付機重量計測器4により、吹付機25内の造粒固化材M1及び骨材M2の混合物(材料)の重量に、吹付機25自体の「空」の重量を加えた重量である「吹付機25の全重量」を計測する。計測された「吹付機25の全重量」はトランスミッター4Aにより制御装置に入力される。
また、ステップS1では、材料投入量検出センサ5(材料投入量計測器)により、吹付機25の上部圧力釜251へ投入された造粒固化材M1及び骨材M2の混合物の投入量を計測する。吹付機25への混合物の投入量も、トランスミッター5Aを介して制御装置2に入力される。そしてステップS12に進む。
【0053】
ステップS12では、制御装置2は、吹付機重量計測器4の計測結果、材料投入量検出センサ5の計測結果、予め計測した空の状態の吹付機25の重量(定数)に基づき、前記式(1)により、混合物吐出量(材料吐出量)を演算する。そしてステップS13に進む。
ステップS13では、制御装置2は、吹付モルタルが適正な配合となる様に、ステップS12で演算した混合物吐出量に対する水M3の添加量を演算する。そしてステップS14に進む。
【0054】
ステップS14では、制御装置2は、ステップS13で演算した適正な水M3の配合量に対応する換算流量を演算する。そしてステップS15では、制御装置2は、ステップS14で演算した換算流量を制御信号として、データ受信機32Aを介して加水システム100における流量制御インバータ一体型送水ポンプ32に送信する。そしてステップS16に進む。
ステップS16では、制御を終了するか否かを判断する。例えば、吹付作業が終了した場合、制御を終了するが、その他、施工状況により中断する場合を含めて制御を終了するか否か判断する。この判断は制御装置2で行うが、作業員が判断する場合もある。
ステップS16が「Yes」であれば制御を終了し、「No」であればステップS11に戻り、制御を継続する。
【0055】
図4〜
図6で説明した制御においても、
図2、
図3の制御と同様、材料吐出量の変化を把握し、材料吐出量の変化に追従して適正加水量の換算流量とするための制御信号を流量制御インバータ一体型送水ポンプ32へ送信し、流量制御自動化システムを構築する。
図4〜
図6の制御では、混合物吐出量を吹付機25の全重量と吹付機25への材料投入量により演算しているが、発明者の実験では、誤差の微小な制御が実行できている。
図4〜
図6で示す態様におけるその他の構成及び作用効果については、
図2、
図3の態様と同様である。
【0056】
図2〜
図6で示す態様以外に、吹付機25、検出センサ3、制御装置2、流量制御インバータ一体型送水ポンプ32に関する制御の態様が可能である。
例えば、吹付機25の下部圧力釜内252に造粒固化材M1及び骨材M2の混合材料が満タンに充満されている場合には、混練用電動モータ(図示せず)には最大の負荷がかかるが、吹付機25から混合材料が吐出されるに連れて混練用電動モータの負荷も減少する。係る現象に基づき、吹付機25の混練用電動モータの負荷の変化に伴い変動する電流値を計測して、制御装置により混合材料の吐出量を演算し、適正な配合とするための水量を演算して、流量制御インバータ一体型送水ポンプに制御信号を発信することも可能である。
【0057】
次に、接続システム300(
図1)における多段式脱気装置44について、
図7を参照して説明する。
図7において、多段式脱気装置44は全体的には管状であり、多段式脱気装置44には、内部空間の圧力を部分的に減圧して外部に逃がす機能を有し、脱気量を調整可能な減圧機構441(脱気調整機構)が、長手方向に複数段(
図7の例では2段)設けられている。そして、2段以上(多段式)の減圧機構441は、それぞれ分岐部441A及び排出部441Bを備えている。
第1耐圧ホース28(
図1参照:
図7では図示せず)を介して圧送システム200から送られてきた造粒固化材M1及び骨材M2の混合物を含む高圧空気は、多段式脱気装置44の流入部44Cから流入し(矢印F1)、内管44Aを流れ、減圧機構441毎に段階的に減圧されて脱気され(1段階減圧及び2段階減圧)、流出部44Dから多段式粉砕混練装置43(
図1、
図8から
図10参照:
図7では図示せず)側に流出する(矢印F2)。
高圧空気が多段式脱気装置44を通過する際、各段では、高圧空気の一部は減圧機構441において、分岐部441Aより外管44B内面と内管44A外面の間の円環状中空部に流出し(矢印F3)、排出部441Bから余剰エアとして外部に排出される(矢印F4)。そして、外管44Bの下流側(
図7では左側)先端であって、分岐部441を構成する部分は、減圧機構441の長手方向(
図7では左右方向)に対してテーパーが形成されている。
【0058】
ここで、
図7で示す多段式(例えば2段)の減圧機構441の各々において、内管44Aの上流側(
図7では右側)端部には雄ネジT44が形成されており、雄ネジT44は外管44Bの内周面に形成された雌ネジ(図示せず)と螺合して、外管44Bに対する内管44Aの長手方向位置(
図7における左右方向位置)を調整し、以て、外管44B内表面と内管44A外表面の間の隙間を調整することが出来る。これにより、減圧機構441の各々における減圧量を調整している。
また、外管44Bの下流側(
図7では左側)先端と内管44Aの下流側先端S44はテーパー状に加工されており、外管44B及び内管44Aのテーパー状の先端形状により、一部紛体化した固化材(造粒固化材M1の一部が紛体化したもの)の直進性が向上し、下流方向に逆流することが防止されて余剰の高圧空気のみが脱気される。それによって、粉塵の発生が防止され、環境負荷の低減および作業の安全性も確保される。
図7において、内管44A、外管44Bの下流側先端はテーパー状に形成されているが、外管44Bのテーパーを減圧機構441の長手方向に対して5〜15°になる様に(緩やかなテーパーとなる様に)構成した場合には、内管44Aの下流側先端はテーパーを形成せず、いわゆる直管に構成しても良い(図示せず)。係る構成にした場合には、高圧空気に連行される際に一部粉体化した固化材(セメント等)の逆流が抑制され、粉塵が減圧機構44の外部に漏出することが防止され、環境負荷が低減及び作業の安全性が確保されると共に、配合品質の低下が防止される。
【0059】
高圧空気が減圧機構441の各段毎に段階的に(少量ずつ)減圧、脱気されるため、各段の減圧機構441における減圧量は、従来の単段のみの脱気装置に比較して遥かに小さく、各々の減圧機構441で脱気される高圧空気量も少量である。そのため、脱気される高圧空気に連行されて一部粉体化した固化材(セメント等)が多段式脱気装置44から漏出することはなく、粉塵漏出の問題が発生することも防止される。
発明者の実験によれば、多段式脱気装置44の流入口近傍で0.8〜1.45Mpaであった造粒固化材M1及び骨材M2の混合物を含む高圧空気の圧力は、流出口近傍では0.8MPa未満まで低下し、作業員が容易且つ安全に吹付作業を行うことが出来る圧力となった。
なお、多段式脱気装置44の段数は、圧送圧力に応じて、例えば2段〜5段に設定することが出来る。
【0060】
次に、接続システム300(
図1)における多段式粉砕混練装置43について、
図8を参照して説明する。多段式粉砕混練装置43は、多段式脱気装置44の下流側に隣接置されている。
図8において、多段式粉砕混練装置43は全体的に管状であり、その内周面には、中心に向かって突出する複数の突起43Aが設けられている。当該複数の突起43Aは半球状、円錐状或いは円柱状に構成され、多段式粉砕混練装置43の長手方向に間隔をあけて内周面円周方向に等間隔に配置され、且つ、長手方向について隣接する突起43Aとは、内周面円周方向の位置が異なる様に(所謂「千鳥」に)配置されている。
【0061】
図8において、造粒固化材M1及び骨材M2の混合物の多段式粉砕混練装置43への流入は矢印F5、流出は矢印F6で示されており、多段式粉砕混練装置43を通過する際に造粒固化材M1は多数の突起43Aと衝突して、粉末状に粉砕及び攪拌される。換言すれば、造粒固化材M1は、多段式粉砕混練装置43を通過することにより、通常の粉末状の固化材(セメント等)となり、骨材M2と適正に混練される。
発明者の実験では、粉砕混練装置を1段のみ設けたのでは造粒固化材M1の粉砕効果が低く、吐出造成した吹付モルタル内に粉砕しきれなかった粒状の造粒セメントが残留し、圧縮強度が低下する場合がある。一方、
図8で示す様に、突起43Aが設けられた管部分を2段以上にすることにより、造粒固化材M1の粉砕混練効果を向上し、吹付モルタル内に粒状の造粒セメントが残留することを抑制し、吹付モルタルの圧縮強度を向上して品質を確保できることか確認された。ここで、粉砕混練装置43において、突起43Aが設けられた管部分を何段設けるのかについては、造粒セメントの硬度や圧送距離に応じて異なるが、例えば2段〜5段に設定することが出来る。
【0062】
ここで、造粒固化材M1を構成する造粒セメントが砕ければ砕けるほど、吹付モルタルの圧縮強度は向上する。換言すれば、残留した粒状の造粒セメントを混合した吹付モルタルの圧縮強度は小さい。残留した粒状の造粒セメントを混合した吹付モルタルの圧縮強度が低下する理由は、造粒セメントが十分に粉砕されず、粉体セメントとなっていないことに起因する。
本来、粉体セメント、砂、水を均等に混練することで健全なモルタルが造成できる。しかし、粒状の造粒セメントが残留し混在すれば、その分だけモルタル中の粉体セメント量が減少し、モルタルとしての適正配合がなされない。また、粒状の造粒セメントは、砂同士を接合・硬化(水和)する機能を失っている。さらに、高加圧で圧縮凝集した造粒セメントは急速に十分な吸水・水和反応に至ることができないため、固化材としての機能を発揮することが出来ない。セメントは粉末状で水和反応を行うことにより初めて強固な固化材としての硬化機能を発揮するからである。例えば粒状のセメントが吸水しても、粒状のセメントが単独で超高強度の硬化セメント粒を形成するだけで、砂を含めたモルタルとしての強度確保に貢献できない。そして硬化したセメント粒が多数できるほど、砂を含めたモルタル硬化に必要な粉体セメントが不足する。
すなわち、セメントは粒子が小さいほど、高強度材料として適しており、凝集した造粒セメント粒は強度低下の要因となってしまう。ここで、セメントの粒子が小さいほど高強度となるのは、粉体粒子は粒子径が小さいほど表面積が大きくなり、セメント粒子が水に取り囲まれ、接触する面積が増えて、水和反応に至る機会が増加し、水和反応が促進されるからである。
【0063】
図8において、当該複数の突起43Aは半球状、円錐状或いは円柱状に構成されているが、
図9で示す様に、突起の形状を角柱形状(三角柱形状或いは四角柱形状)、多角柱形状(横断面が五角以上の多角柱状)、角錐形状(三角錐形状或いは四角錐形状)或いは多角錐形状(横断面が五角以上の多角錐柱状)とすることが可能である。
図9に示す多段式粉砕混練装置43−1は、
図8の多段式粉砕混練装置43とは突起の形状が異なっており、角柱形状の突起43−1Aを多数配置している。
図9に示す多段式粉砕混練装置43−1においても、角柱形状の突起43−1Aは、
図8の多段式粉砕混練装置43と同様に、内周面において中心に向かって突出しており、長手方向に間隔をあけて内周面円周方向に等間隔に配置され、且つ、長手方向について隣接する突起43−1Aとは内周面円周方向の位置が異なる様に(所謂「千鳥」に)配置されている。さらに、角柱状の突起43−1Aは、断面形状である長方の長辺の方向が、長手方向に隣接する突起同士で直交する様に交互に向きを変えて配置されている。
【0064】
図9において、造粒固化材M1及び骨材M2の混合物の多段式粉砕混練装置43−1への流入を矢印F7、流出を矢印F8で示しており、造粒固化材M1は多段式粉砕混練装置43−1を通過する際に多数の突起43−1Aと衝突し、粉砕されて粉末状の固化材(セメント等)となる。
図9の多段式粉砕混練装置43−1におけるその他の構成及び作用効果は、
図8の多段式粉砕混練装置43と同様である。
【0065】
図8、
図9では多段式粉砕混練装置43、43−1の内部に多数配置された突起43A、43−1Aにより造粒固化材M1を粉砕しているが、
図10で示す機械式粉砕混練装置43−2では突起は配置しておらず、造粒固化材M1を破砕するための機構(回転切羽)を内部に設けている。
図10において、機械式粉砕混練装置43−2は全体が管状であり、その内部空間には造粒固化材M1を破砕するための回転破砕翼43−21(造粒セメント破砕用回転切羽)が設けられている。
機械式粉砕混練装置43−2の管状の部材の外側にはモータ43−22(駆動源)が取り付けられており、モータ43−22(駆動源)の駆動力は、モータ回転軸43−23及びギヤボックス43−24(駆動力伝達機構)により回転破砕翼43−21に伝達される。図示の実施形態では回転破砕翼43−21として2段設けられている。
図10おいて、符号43−26は、モータ43−22に電力を供給する発電機(小型発電機)である。
なお、モータ43−22は機械式粉砕混練装置43−2の管状の部材にフランジ取り付けされており、モータ43−22、回転破砕翼43−21、ギヤボックス43−24、モータ43−22のメンテナンスを容易にしている。
【0066】
機械式粉砕混練装置43−2の内部空間において、モータ回転軸43−23及びギヤボックス43−24の上流側(圧送システム200側:
図10では右側)には防護装置43−25(ギヤボックス保護板)が配置され、圧送される造粒固化材M1と骨材M2の混合物がモータ回転軸43−23及び/又はギヤボックス43−24に衝突するのを防止している。
機械式粉砕混練装置43−2は、ギヤボックス43−24を収容できるように、又、流入する混合材料の管内における密度が大きく変化しないように管径を増大させており、ギヤボックス43−24の取り付け部を中心に膨らんだ管状になっている。管径が増大することにより、機械式粉砕混練装置43−2を流れる造粒固化材M1と骨材M2の混合物の流れが乱れ、効率よく回転破砕翼43−21に接触する。
【0067】
図10において、造粒固化材M1及び骨材M2の混合物の多段式粉砕混練装置43−2への流入を矢印F9、流出を矢印F10で示しており、混合物の造粒固化材M1は回転破砕翼43−21により破砕されるため、吹付モルタル内に粒状の造粒セメントが残留することが抑制され、吹付モルタルの圧縮強度が向上する。
また、モータ回転軸43−23及びギヤボックス43−24の上流側にギヤボックス保護板43−25(防護装置)が配置されているので、圧送される造粒固化材M1骨材M2の混合物がモータ回転軸43−23及びギヤボックス43−24に衝突するのを防止して、伝達機構の摩耗及び劣化を防止し、以て、回転破砕翼43−21による造粒固化材M1の破砕を継続することが出来る。
【0068】
次に、
図11、
図12を参照して、接続システム300(
図1)における混合撹拌促進加水装置41と、混練促進管42について説明する。
図1で示す様に、混合撹拌促進加水装置41は粉砕混練装置43の下流側(吹付ノズル61側)に隣接して配置され、混練促進管42は混合撹拌促進加水装置41の下流側に隣接して配置され、混合撹拌促進加水装置41と混練促進管42は混合装置40を構成する。
図11において、混合撹拌促進加水装置41は全体が円環状に構成され、内壁体411、外壁体412、水供給部413、及び噴出部414を備えている。
内壁体411の内側には通路空間S1が形成され、粉砕混練装置43側(上流側)で粉砕されて粉末状になった固化材M1と骨材M2の混合物が通路空間S1を流過する。
【0069】
外壁体412は内壁体411を包囲しており、内壁体411との間に環状空間S2を形成している。外壁体412の内周面の一部には半径方向外側に凹んだ円環状の凹溝412Aが形成されている。
内壁体411の下流側(
図11の左側)の端部411Aは外壁体412の内周面に当接しており、内壁体411の上流側(
図11の右側)の端部411Bは円筒状の固定壁体417の下流側端部417Aと当接している。
内壁体411と外壁体412との間に形成された環状空間S2は、通路空間S1を包囲するように配置され、環状空間S2の内側に通路空間S1が設けられている。
【0070】
環状空間S2には水供給部413が連通しており、外壁体412の外部より水供給部413に水が圧送される。水供給部413は、外壁体412を貫通する外壁孔部413Aを備えている。
図11では、図示しない雌ネジが形成された水供給部413の外壁孔部413Aに円筒型の第1接続パイプ415が螺合しており、第1接続パイプ415には概略L字状の第2接続パイプ416が接続されている。
図11では図示されていないが、第2接続パイプ416には第2耐圧ホース34(
図1)の下流側端部34a(
図1)が接続されている。
加水システム100より第2耐圧ホース34aを介して圧送された水M3は、第2接続パイプ416から流入し(矢印F11)、第1接続パイプ415、水供給部413を通過して環状空間S2内に供給される(
図12の破線F11A)。図示はされていないが、必要に応じて、水M3の流量を調節する調節弁等を第2接続パイプ416に介装することが可能である。
【0071】
図12において、環状空間S2内に圧送された水M3は、噴出部414に形成された内壁孔部414Aから通路空間S1内に噴射される。内壁孔部414Aの各々は内壁体411を貫通して、環状空間S2と通路空間S1を連通している。複数の噴出部414(図示の実施形態では5個)及び内壁孔部414Aは、内壁体411(通路空間S1)の内周面において円周方向に等間隔に配置されている。
図12で示す様に、内壁孔部414Aの噴射方向(矢印J1)は、内壁孔部414Aから通路空間S1の中心に向かう仮想線(仮想の半径:矢印J0)に対して、15°〜45°、
図12では30°だけ傾斜している。傾斜する方向は、
図12では仮想半径に対して反時計回りの方向であるが、時計回りの方向に傾斜させても良い。
発明者の実験では、内壁孔部414Aの噴射方向を、内壁孔部414Aから通路空間S1の中心に向かう仮想線(仮想の半径)に対して15°〜45°の範囲で傾斜させると、水M3の噴流に旋回方向の成分が生じ、粉砕された造粒固化材M1と骨材M2の混合物と水M3の混合効率が向上し、混合撹拌促進効果が得られる。
【0072】
図11において、外壁体412には、内壁体411を固定する円筒状の固定壁体417が設けられている。固定壁体417は上流側(
図11では右側)から外壁体412内に挿入されている。固定壁体417の端部417Aは、外壁体412の係止部412Bと共に内壁体411を挟み付けて固定しており、外壁体412の係止部412Bは、内壁体411の下流側端部411Aと当接している。
混合撹拌促進加水装置41の下流側(
図11では左側)は、混練促進管42を介して第3耐圧ホース51(
図1:
図11では図示せず)と接続され、混合撹拌促進加水装置41の上流側は粉砕混練装置43と接続されている。
【0073】
上流側から圧送されてきた粉砕された造粒固化材M1及び骨材M2の混合物が、混合撹拌促進加水装置41に流入し(矢印F12)、通路空間S1を通過する際に、第2接続パイプ416から供給された水M3(矢印F11)が内壁孔部414Aから通路空間S1に向けて噴出する(
図12の矢印J1)。
噴出した水M3は粉砕された造粒固化材M1及び骨材M2の混合物と合流し、混合される。ここで、水M3の噴射方向が仮想の半径に対して傾斜しており、旋回流としての成分を有しているため、水M3は、粉砕された造粒固化材M1及び骨材M2の混合物に対して回転力を加え、偏りなく且つ高い効率で混合することで撹拌促進効果が得られる。
【0074】
図11において、混合撹拌促進加水装置41の下流側(
図1における第3耐圧ホース51側、吹付ノズル61側)に隣接して、混練促進管42が設けられている。混練促進管42は全体が円筒形状であり、内壁面には長手方向に対して傾斜した複数の混練促進翼421が形成されている。
図11では、混練促進管42の長手方向の所定範囲に3枚の混練促進翼421が示されている。ここで、混練促進翼421の長手方向の所定範囲に混練促進翼421を2〜4枚設けた領域である「段」を、1〜5段設けることが出来るが、
図11では1段のみ示されている。
上流の混合撹拌促進加水装置41から粉砕された造粒固化材M1と骨材M2と水M3の混合物が混練促進翼421を通過すると(矢印F13)、強制的に回転力が付与され、渦流が発生する。係る渦流により、粉砕された造粒固化材M1と骨材M2と水M3との混練効果が向上する。
混練促進管42を流過した粉砕された造粒固化材M1、骨材M2、水M3の混合物は、第3耐圧ホース51(
図1)により吹付ノズル61(
図1)に送られ、吹付ノズル61により施工対象である法面1(
図1)に吹き付けられる。
【0075】
図示の実施形態によれば、固化材として、造粒固化材(セメント系造粒固化材等)M1を使用することで、長距離・高揚程であっても、造粒固化材M1及び骨材M2の混合物を、第1耐圧ホース28を閉塞せずに、目的箇所まで圧送することができる。
その際、圧送システム200の吹付機25から圧送される造粒固化材M1と骨材M2の混合物の吐出量を一定値にすることは困難であり、そのため、モルタルの配合を均一にするためには、時々刻々変動する造粒固化材M1と骨材M2の混合物の吐出量に対応して、加水システム100から圧送される水M3の流量を常時調節しなければならない。
図2、
図3に示す実施形態では、吹付機25からの材料(造粒固化材M1と骨材M2の混合物)の吐出量を計測する粉粒体質量流量計3Aと、吹付モルタルとして適正な配合となる様に水M3の添加量及び対応する水M3の流量を演算する制御装置2と、制御装置2で演算された換算流量の水M3を圧送する流量制御インバータ一体型送水ポンプ32を有している。そして、吹付機25からの造粒固化材M1と骨材M2の混合物の吐出量が均一でなくても、混合物の吐出量を粉粒体質量流量計3Aで計測し、その計測結果に基づいて、制御装置2で、吹付モルタルが適正な配合となる様に水M3の添加量及び換算流量を演算し、その演算結果に従って流量制御インバータ一体型送水ポンプ32から水M3を接続システム300に圧送する。そのため、接続システム300で混合された水M3と造粒固化材M1と骨材M2は常に吹付モルタルとして適正な配合、特に適正な水セメント比W/Cの配合を維持可能となる。
その結果、法面1に吹き付けられる吹付モルタルが適正な配合から外れてしまうことが防止され、乾式吹付工法における最大の欠点を補い、品質を向上することが出来る。
【0076】
また、
図4〜
図6に示す実施形態によれば、造粒固化材M1と骨材M2の混合物の吐出量を決定するに際して、吹付機重量計測器4による吹付機25の全重量の計測値、材料投入量検出センサ5による吹付機25への混合材料投入量、予め計測した吹付機25の空の重量に基づき、制御装置2で演算することが出来る。そして、吹付モルタルが適正な配合となる様に、水M3の添加量及び流量を演算し、流量制御インバータ一体型送水ポンプ32により水M3を接続システム300に圧送する。
そのため、
図4〜
図6の実施形態でも、造粒固化材M1と骨材M2と水M3の適正な配合を維持することが出来る。
【0077】
ここで、吹付機25は上部圧力釜251と下部圧力釜252を備えているが、空気圧縮機26から上部圧力釜251へ高圧空気を供給する際に、下部圧力釜252への高圧空気が減少し、上部圧力釜251に供給されるため、下部圧力釜252の圧力が一時的に降圧し、上部圧力釜251と下部圧力釜252に圧力差が生じ、同時に第1耐圧ホース28に混合材料を吐出する圧力が降圧して、造粒固化材M1及び骨材M2の混合材料吐出量が不安定になり、場合によっては吹付機25の吐出口或いはホース内における閉塞や脈動等を招く恐れがある。
それに対して図示の実施形態によれば、空気圧縮機26と吹付機25を連通するエアホース27にリザーバータンク29を介装しているので、上部圧力釜251に高圧空気を供給する際に、リザーバータンク29内の高圧空気を加えることにより、上下の圧力釜251、252における圧力の不均衡をなくし、前記圧力差の発生を予防することが出来る。そのため、混合材料の吐出の安定化を図ることが出来る。
図示の実施形態において、リザーバータンク29の容量を下部圧力釜252の容量の1/2以上として、且つ作業者や搬出搬入の積み込み等の障害にならない程度の大きさとすれば、前記圧力差の発生を防止できることが、発明者の実験で確認されている。
【0078】
さらに図示の実施形態によれば、接続システム300は多段式脱気装置44を備えており、脱気装置44は複数(2段以上)の脱気量を調整可能な減圧機構441を有しており、圧送システム200から送られてきた造粒固化材M1及び骨材M2の混合物を含む高圧空気は、多段式脱気装置44を通過する際、減圧機構441毎に段階的に(少しずつ)減圧、脱気されるので、各段の減圧機構441における減圧量は、従来の1段のみの脱気装置に比較して遥かに小さく、各減圧機構441で脱気される高圧空気の量も少ない。
そのため、一部粉体化した固化材(セメント等)が脱気される高圧空気に連行されて多段式脱気装置44から漏出することが防止され、多段式脱気装置44から粉塵が漏出することも防止され、環境負荷の低減および作業の安全性も確保される。
【0079】
加えて、図示の実施形態によれば、接続システム300は多段式粉砕混練装置43を備えており、管状をなした多段式粉砕混練装置43の内周面には、中心に向かって突出する複数の突起43Aが設けられている。当該複数の突起43Aは、多段式粉砕混練装置43の長手方向に間隔をあけて内周面円周方向に等間隔に配置され、且つ、長手方向について隣接する突起43Aとは、内周面円周方向の位置が異なる様に配置されている(所謂「千鳥」状に配置される)。そして粉砕混練手段(突起群)を複数段(例えば2段)設けている。
第1耐圧ホース28から送られてきた造粒固化材M1は、多段式粉砕混練装置43を通過する際に、多数の突起43Aと衝突することで、適宜、粉砕及び攪拌され、粉末状の固化材(セメント等)となり、骨材M2と適正に混練される。そして長手方向で多段(2段)に複数の突起43Aを配置した図示の実施形態では、突起を単段に配置した従来技術に比較して造粒固化材M1の粉砕効果が高いことが、発明者により確認されている。
【0080】
また、
図10の実施形態によれば、機械式粉砕混練装置43−2は回転破砕翼43−21を設けているので、第1耐圧ホース28から送られてきた造粒固化材M1は回転破砕翼43−21により破砕され、撹拌される。そのため、吹付モルタル内に粒状の造粒固化材(セメント等)が残留することが抑制され、吹付モルタルの圧縮強度が向上する。
また、機械式粉砕混練装置43−2の内部空間に防護装置43−14(ギヤボックス保護板)を設けたので、圧送される造粒固化材M1と骨材M2の混合物が伝達機構(モータ回転軸43−23及びギヤボックス43−24)に衝突するのを防止できる。
【0081】
さらに、図示の実施形態によれば、接続システム300は混合装置40を備え、混合装置40は混合撹拌促進加水装置41及び混練促進管42を備えている。そして混合撹拌促進加水装置41は内部空間S1の円周方向に複数の内壁孔部414Aから水M3を噴射し、その噴射方向は内部空間S1の中心に向かう仮想線(仮想の半径)に対して(15°〜45°の範囲で)傾斜している。
そのため、上流側から圧送されてきた粉砕された造粒固化材M1及び骨材M2の混合物が、混合撹拌促進加水装置41の通路空間S1を通過する際に、内壁孔部414Aから噴射される水M3と合流し、混合される。そして、水M3の噴射方向が仮想の半径に対して反時計回りの方向に傾斜しているため、水M3は、多段式ないし機械式粉砕混練装置43、43−1、43−2により粉砕された造粒固化材M1及び骨材M2の混合物に対して回転力を加え、偏りなく且つ高い効率で混合することで撹拌促進効果が得られる。
【0082】
そして、図示の実施形態によれば、混合装置40において、混合撹拌促進加水装置41の下流側(吹付ノズル61側)に隣接して混練促進管42を備えており、混練促進管42の内壁面には長手方向に対して傾斜した複数の混練促進翼421が形成されている。
上流の混合撹拌促進加水装置41から流入する粉砕された造粒固化材M1、骨材M2、水M3の混合物が混練促進翼421を通過する際に回転力が付与され、渦流が発生する。係る渦流により、粉砕され粉末状となった造粒固化材M1と骨材M2と水M3との混練効果が向上し、加水直後に吹付ノズルからモルタルが吹き付けられても、モルタルの混練りが不足することが防止され、モルタルの配合品質が向上する。
【0083】
それに加えて図示の実施形態によれば、比重が骨材(M2:細骨材例えば砂)と同程度に設定され、或いは、粒径が骨材(M2:細骨材例えば砂)と同程度に設定された粒状の造粒固化材(M1)を用いることにより、材料の分離が発生せず、吹付モルタルの品質が向上する。また、造粒固化材(M1)と骨材(M2)の形状及び大きさが同程度になるため、圧送ホース内におけるホース内壁との摩擦抵抗が大幅に低減することで、ホース内閉塞が防止され、吹付作業の施工性が改善される。
そして、造粒固化材(M1)の様な粒状の材料は同一質量の粉末に比較して表面積が著しく小さくなるため、骨材(M2)の表面水との反応が最小限に抑制され、圧送ホース内壁との摩擦抵抗や付着の発生が大幅に減少する。
さらに、乾式吹付方法で施工しても粉塵の発生を防止することができて、環境負荷を低減し、作業の安全性が向上する。そして乾式吹付方法で施工することにより、ホースを用いた圧送性能が飛躍的に向上し、長距離、高揚程の圧送が可能になる。また、一般的な吹付プラントで使用されているものと同様な圧送ホース(公知の圧送ホース)をそのまま使用することができるので、吹付装置の設置や移動に格別の労力は不要となる。
【0084】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。