(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-173143(P2021-173143A)
(43)【公開日】2021年11月1日
(54)【発明の名称】除雪用テント又は屋根乃至建築物
(51)【国際特許分類】
E04H 9/16 20060101AFI20211004BHJP
E04D 13/00 20060101ALI20211004BHJP
【FI】
E04H9/16 C
E04D13/00 F
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2020-80452(P2020-80452)
(22)【出願日】2020年4月30日
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ゴアテックス
(71)【出願人】
【識別番号】504260782
【氏名又は名称】アメリカンテント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】藤島 力
【テーマコード(参考)】
2E139
【Fターム(参考)】
2E139AA03
2E139DA51
2E139DA53
(57)【要約】
【課題】多大な労力と費用を要することなく、容易に設置でき、積雪の自重を利用してテント屋根の傾斜角度を変動させ確実かつ効率良く除雪をおこなう、除雪用テント又は屋根乃至建築物を提供する。
【解決手段】被積雪箇所を覆うように設置する除雪テント又は屋根乃至建築物であって、該除雪テントを長手方向の両端部で支える支柱と、この支柱間を通して設けられた蝶番状の金属製棟木を一辺として、両軒方向へ略長方形を構成する枠材と、この枠材の傾斜方向下端で除雪テントを支えるために設けられた固定具と、テント材及びテント材を枠材に固着する紐材とからなり、固定具は弾性力を有することを特徴とする、除雪用テント又は屋根乃至建築物。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被積雪箇所を覆うように設置する除雪用テントであって、該除雪用テントを長手方向の両端部で支える支柱と、この支柱間を通して設けられた蝶番状の棟木を一辺として、両軒方向へ略長方形を構成する枠材と、この枠材の傾斜方向下端で除雪用テントを支えるために設けられた固定具と、テント材及びテント材を枠材に固着する紐材とからなり、固定具は弾性力を有することを特徴とする、除雪用テント。
【請求項2】
前記弾性力を有する固定具が、コイルスプリング(ばね)、ガススプリング、ガスダンパー、ゴムのうちいずれかであることを特徴とする、請求項1に記載の除雪用テント。
【請求項3】
前記弾性力を有する固定具が、前記枠材の傾斜方向下端に上向きの力を付勢するように滑車と錘を備えることを特徴とする、請求項1に記載の除雪用テント。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の除雪用テントを備える屋根。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の除雪用テント、又は請求項4に記載の除雪用テントを備える屋根を備える建築物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除雪用テント又は屋根乃至建築物に関する。
【背景技術】
【0002】
雪国では、積雪の加重による建築物の崩壊を未然に防ぐために冬季の除雪作業は必要不可欠である。しかしながら、この作業には多大な労力や費用を伴う上、毎年のように除雪中の事故が多発しているのが現状である。雪による事故の死者の多くは除雪中の事故によるものであり、雪降ろし中に屋根から転落したり、軒下で落雪の直撃を受け埋もれたりして、多くの人が犠牲になっている。高齢化が進んだ過疎化地域においては、高齢者が除雪作業にあたることも多く、寒い屋外での重労働により倒れて死亡する事故が起こる等深刻な問題となっている。この状況に鑑み、従前から人手によらず建築物の積雪を除去する、或いは積雪を防止する試みがなされてきた。
【0003】
これらの試みの一部として、建築物の屋根上に傾斜の大きな覆い板等を設置する方法(特許文献1参照)や、エアーチューブを設置する方法(特許文献3参照)が公知である。
【0004】
また、傾斜面上にピストン機構を上下両端部に備えた上板を設置し、積雪の自重を利用してピストンを働かせることで上板の勾配を変動させ、除雪をおこなう装置(特許文献2参照)も公知となっている。
【0005】
しかしながら、特許文献1や特許文献3のような積雪を予防しようとする方法では、確実かつ効率良く除雪をおこなうことができず、また特許文献2に記載の装置では設置の際にも多大な労力と費用を要する上、容易に取り外すことができない等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016−156201号公報
【特許文献2】特開2008−2162号公報
【特許文献3】実用新案登録第3203989号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、多大な労力と費用を要することなく、容易に設置でき、積雪の自重を利用してテント屋根の傾斜角度を変動させ確実かつ効率良く除雪をおこなう、除雪用テント又は屋根乃至建築物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、被積雪箇所を覆うように設置する除雪用テントであって、該除雪用テントを長手方向の両端部で支える支柱と、この支柱間を通して設けられた蝶番状の金属製棟木を一辺として、両軒方向へ略長方形を構成する枠材と、この枠材の傾斜方向下端で除雪用テントを支えるために設けられた固定具と、テント材及びテント材を枠材に固着する紐材とからなり、固定具は弾性力を有することを特徴とする、除雪用テントに関する。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記弾性力を有する固定具が、コイルスプリング(ばね)、ガススプリング、ガスダンパー、ゴムのうちいずれかであることを特徴とする、請求項1に記載の除雪用テントに関する。
【0010】
請求項3に係る発明は、前記弾性力を有する固定具が、前記枠材の傾斜方向下端に上向きの力を付勢するように滑車と錘を備えることを特徴とする、請求項1に記載の除雪用テントに関する。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の除雪用テントを備える屋根に関する。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の除雪用テント、又は請求項4に記載の除雪用テントを備える屋根を備える建築物に関する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、固定具が弾性力を有しているため、降雪時に積雪の自重を利用し、人手を要することなく半自動的にテント屋根の傾斜角度を変動させ滑雪を起こし、確実かつ効率良く除雪をおこなうことができる。
また、該除雪用テントは設置や取り外しが容易であり、多大な労力や費用を要しない。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、弾性力を有する多様な固定具を用いることができ、その場の環境や状況に応じて、確実かつ効率良く除雪をおこなうことができる。
また、該除雪用テントは設置や取り外しが容易であり、多大な労力や費用を要しない。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、滑車と錘を用いることで、固定具の設置が困難である形状、あるいは固定具の設置面が軟質である等で弾性材が上手く機能しないような被積雪箇所においても、除雪用テントを容易に設置することができる。
【0016】
請求項4に係る発明によれば、降雪時に屋根の被積雪箇所を覆うことで、多大な労力や費用を要することなく、確実かつ効率良く除雪をおこなうことができる。
【0017】
請求項5に係る発明によれば、降雪時に建築物の被積雪箇所を覆うことで、多大な労力や費用を要することなく、確実かつ効率良く除雪をおこなうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】除雪用テントを設けた屋根及び建築物の斜視図である。
【
図4】除雪時のテント動作(積雪を除雪するまでの流れ)を示す概略図である。(I)積雪の自重により固定具(4)が収縮し傾斜角度が大きくなる。(II)撥水性のテント材(5)を伝って積雪が滑落する。(III)積雪が概ね滑落し、傾斜角度が元に戻る。
【
図5】滑車と錘を備える除雪用テントの支柱側側面から見た概略図である。
【
図6】蝶番状の棟木構造を上面と支柱側側面からみた概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る除雪用テント又は屋根乃至建築物について図面を参照しながら説明する。
【0020】
<除雪用テントの構成>
図1は、本発明の除雪用テントの斜視図である。除雪用テント単体で、積雪がない状態を示す。
該除雪用テントは、長手方向の両端部に備えられた支柱(1)で支えられ、この支柱間を通して設けられた蝶番状の棟木(2)を一辺として、両軒方向へ略長方形を構成する枠材(3)と、この枠材の傾斜方向下端で除雪テントを支えるために設けられた固定具(4)と、テント材(5)及びテント材を枠材に固着する紐材(6)とからなり、固定具は弾性力を有することを特徴としている。
【0021】
図2は、本発明の除雪用テントの1つの実施形態に係る斜視図であり、除雪用テントを設けた屋根及び建築物の斜視図を示す。
本発明の除雪用テントは、建築物以外にも様々な被積雪箇所に適用可能である。また、棟木(2)、支柱(1)、及び枠材(3)については、鉄、ステンレス、アルミニウム、又はジュラルミン等の金属製やABS樹脂、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアセタール、およびポリプロピレン等の合成樹脂製、ガラス繊維強化プラスチック製、カーボン繊維強化プラスチック製等材質は問わない。
テント材(5)の材質は、撥水性のものであれば特に限定されないが、ナイロン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン、又はゴアテックス製のものを使用することが好ましい。撥水性とは、雨天時や降雪時に長時間使用しても内部に浸水しない性質のことであり、フッ素樹脂や酸化チタン等で生地の表面をコーティング加工したテント材(5)を使用してもよい。
紐材(6)の材質は特に限定されないが、ビニロン、ポリエチレン、ポリエステル、およびポリプロピレン製のもの等を使用することが好ましい。更には、ポリプロピレン製のものを使用することが好ましい。テント材(5)はこの紐材(6)により、枠材(3)にしっかりと張られ、固着されている。
【0022】
図3は、
図2を支柱側の側面から見た概略図を示す。
除雪用テントの弾性力を有する固定具(4)の種類は、特に限定されず、コイルスプリング(ばね)、ガススプリング、ガスダンパー、ゴム等が考えられるが、弾性的な付勢手段であれば何でも良い。例えば、タキゲン製スプリング付トルクヒンジ等が例示できる。
【0023】
図4は、除雪時におけるテントの動作を示す図である。
テント材(5)には撥水性がある上、設置面積にもよるが、複数枚の生地をつなぎ合わせて構成されており、略長方形の長辺方向と比較し、短辺方向の張り具合の方が強い。
テント材(5)は、長辺方向における張り具合に若干のたわみがあり、枠材(3)に固着された後も、風等によって常時僅かな揺れを生じるため、硬質な板材等とは異なり、降雪時等気温が低い時でも凍結しない。
(I)除雪用テント上に雪が降ると、積雪の自重により弾性力を有した固定具(4)が収縮し、次第に傾斜角度が大きくなる。
(II)テント屋根の傾斜角度がある程度まで大きくなると、撥水性のテント材(5)を伝って積雪が滑落する。
(III)テント屋根上の積雪が概ね滑落すると、弾性力を有した固定具(4)の収縮が緩和され、傾斜角度が元に戻る。
(I)−(III)を繰り返すことで、労力や費用を要せず、半自動的に確実かつ効率よく除雪をおこなうことが可能となる。
テント屋根の傾斜角度は、40乃至60度の範囲で変動可能である。除雪に適した傾斜角度は、雪の種類によっても異なるが、最も好ましくは50乃至60度である。
【0024】
図5は、弾性材の代わりに滑車と錘を備えた本発明の除雪用テントの一例を示した概略図であり、支柱側の側面から見た図である。
滑車の使用方法や設置場所は、特に限定されないが、固定具の設置が困難である形状、あるいは固定具の設置面が軟質である等で弾性材が上手く機能しないような被積雪箇所に設置する場合等に用いられる。
【0025】
図6は、蝶番状の棟木構造の概略図を示す。
上面図に示すように、除雪用テントの屋根は、棟木を軸とし両軒方向へ蝶番状に可動する構造となっている。これと弾性力を有する固定具と撥水性のテント材を組合わせ、積雪の自重を利用した半自動の除雪用テントとしての機能を発揮している。
【0026】
該除雪用テントは、冬季に限らず、夏季等においても建築物を太陽光の紫外線等から保護する効果があるため、雪解けの時期を迎えたとしても必ずしも取り外す必要はなく、年間を通じて利用可能である。台風到来時には、テントの屋根の傾斜を建築物の屋根の傾斜角度に沿う形にし、ピン等で傾斜の変動がないよう固定することで、強風による被害を防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、雪国において必要不可欠である建築物の屋根からの除雪作業を、人の手作業によらず半自動でおこなうことが可能な除雪用テントを提供するものであり、除雪作業に要する多大な労力や費用、及び危険性を大幅に軽減することが可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 支柱
2 棟木
3 枠材
4 固定具
5 テント材
6 紐材
7 滑車
8 錘
9 ロープ
10 ロープ通し
20 屋根
30 建築物
40 雪