(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-173503(P2021-173503A)
(43)【公開日】2021年11月1日
(54)【発明の名称】ダクト
(51)【国際特許分類】
F24F 13/02 20060101AFI20211004BHJP
B60H 1/00 20060101ALI20211004BHJP
【FI】
F24F13/02 Z
B60H1/00 102L
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2020-80028(P2020-80028)
(22)【出願日】2020年4月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】大野 慶詞
(72)【発明者】
【氏名】太田 成将
【テーマコード(参考)】
3L080
3L211
【Fターム(参考)】
3L080AD02
3L080AE05
3L211BA23
3L211DA14
(57)【要約】
【課題】外周面に生じた結露水による悪影響を抑制することの可能なダクトを提供する。
【解決手段】本発明によれば、筒部を備えるとともに、当該筒部の外周面に生じた結露水を案内する結露水案内路を備えており、前記結露水案内路は、結露水の滴下が許容される滴下可能箇所に接続される、ダクトが提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒部を備えるとともに、当該筒部の外周面に生じた結露水を案内する結露水案内路を備えており、
前記結露水案内路は、結露水の滴下が許容される滴下可能箇所に接続される、ダクト。
【請求項2】
請求項1に記載のダクトであって、
結露水案内路は、前記外周面の側方に突出し且つ前記ダクトの流路方向に延びる樋を備える、ダクト。
【請求項3】
請求項2に記載のダクトであって、
前記樋は、前記結露水が流通する溝部を備え、当該溝部の幅は、前記筒部の厚みの10倍以下である、ダクト。
【請求項4】
請求項3に記載のダクトであって、
前記滴下可能箇所が前記溝部に形成される、ダクト。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載のダクトであって、
前記結露水案内路の少なくとも一部が前記外周面に形成される、ダクト。
【請求項6】
請求項5に記載のダクトであって、
前記外周面に格子状の突条部を備え、前記結露水案内路の少なくとも一部を、前記突条部の一部を欠損させることで形成する、ダクト。
【請求項7】
請求項6に記載のダクトであって、
前記結露水案内路を形成する一対の突条部の間隔は、前記筒部の厚みの10倍以下である、ダクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等に用いられる空調用のダクトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エアコンユニットより供給される空調エアを所望の場所へ送風する、自動車等の空調ダクトがある。例えば、特許文献1には、ダクトの外周面に格子状の突条部を形成することで、発生した結露水を保持し、結露水の滴下を抑制することの可能な空調ダクトが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−257149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ダクトの外周面に保持できる結露水には限界があり、電装系部材等の他部材に液滴が接触するおそれがあった。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、外周面に生じた結露水による悪影響を抑制することの可能なダクトを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、筒部を備えるとともに、当該筒部の外周面に生じた結露水を案内する結露水案内路を備えており、前記結露水案内路は、結露水の滴下が許容される滴下可能箇所に接続される、ダクトが提供される。
【0007】
本発明によれば、結露水案内路が筒部の外周面に生じた結露水を滴下可能箇所に案内することで、結露水が他部材に滴下することを抑制することが可能となっている。
【0008】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
【0009】
好ましくは、結露水案内路は、前記外周面の側方に突出し且つ前記ダクトの流路方向に延びる樋を備える。
【0010】
好ましくは、前記樋は、前記結露水が流通する溝部を備え、当該溝部の幅は、前記筒部の厚みの10倍以下である。
【0011】
好ましくは、前記滴下可能箇所が前記溝部に形成される。
【0012】
好ましくは、前記結露水案内路の少なくとも一部が前記外周面に形成される。
【0013】
好ましくは、前記外周面に格子状の突条部を備え、前記結露水案内路の少なくとも一部を、前記突条部の一部を欠損させることで形成する。
【0014】
好ましくは、前記結露水案内路を形成する一対の突条部の間隔は、前記筒部の厚みの10倍以下である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るダクト1を示す斜視図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係るダクト1を示す斜視図である。
【
図6】本発明の第3実施形態に係るダクト1を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴について独立して発明が成立する。
【0017】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係るダクト1は、自動車等の空調に用いられる樹脂製の空調ダクトである。ダクト1は、例えば、発泡樹脂をブロー成形することにより製造される。ただし、発泡樹脂であることは必須ではなく、また、射出成形、シート貼り合わせ成形によって製造することも可能である。
【0018】
本実施形態のダクト1は、
図1に示すように、筒部2と、突条部3と、一対の樋4とを備える。筒部2、突条部3及び樋4は、ブロー成形により一体的に成形される。
【0019】
筒部2は、その内部に空調エアが流通する。筒部2は、
図1では円筒状に示しているが、適用する自動車等の設備に応じて、角筒状とすることや、折れ曲がりを設けること等、筒状であれば任意の形状とすることが可能である。
【0020】
突条部3は、筒部2の外周面20に格子状に形成される。格子状の突条部3は、ダクト1の流路方向(長手方向)に延びる複数の第1突条31と、当該第1突条31に対して交差するように設けられる複数の第2突条32とから構成される。本実施形態において、突条部3は、
図2A及び
図2Bの側面図に示すように、筒部2の上面20aのみに形成される。突条部3は、ダクト1の表面に発生した結露水を第1突条31と第2突条32に囲まれた凹状領域Sに保持することで、結露水がダクト下方に滴下されることを抑制する。
【0021】
突条部3の隣り合う第1突条31間の間隔t1(
図3A参照)及び隣り合う第2突条32間の間隔t2(
図2B参照)は、それぞれ筒部2の厚みt3(
図3A参照)の20倍以下とすることが好ましく、10倍以下とすることがより好ましい。また、隣り合う第1突条31間の間隔t1及び、隣り合う第2突条32間の間隔t2は、それぞれ筒部2の厚みt3の0.1倍〜20倍とすることが好ましく、1倍〜20倍とすることがより好ましく、2倍〜10倍とすることがより好ましく、3.0倍〜6.0倍とすることがさらに好ましい。t1/t3の値は、具体的には例えば、1.0,1.5,2.0,2.5,3.0,3.5,4.0,4.5,5.0,5.5,6.0,6.5,7.0,7.5,8.0,8.5,9.0,9.5,10,11,12,13,14,15,20であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。また、t2/t3の値は、具体的には例えば、1.0,1.5,2.0,2.5,3.0,3.5,4.0,4.5,5.0,5.5,6.0,6.5,7.0,7.5,8.0,8.5,9.0,9.5,10,11,12,13,14,15,20であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。なお、第1突条31間の間隔t1と隣り合う第2突条32間の間隔t2とは同一であっても異なっていても良い。また、外周面20上の各位置の第1突条31間の間隔t1、第2突条32間の間隔t2は、全て同じであってもよく、位置によって異ならせても良い。
【0022】
また、本実施形態の突条部3は、
図1に示すように、一部の第1突条31及び/又は第2突条32を欠損させた第1欠損領域33〜第3欠損領域35を備える。第1欠損領域33は、樋4の近傍において第1突条31を欠損させた領域である(
図2A、
図2B及び
図3Aも参照)。第2欠損領域34は、筒部2の外周面20の上方から樋4の近傍までの第1突条31と、1つの第2突条32とを欠損させた領域である(
図2A及び
図3Bも参照)。また、第3欠損領域35は、筒部2の上面20aの上方において複数の第2突条32を欠損させるとともに、当該欠損させた位置の略中央から樋4の近傍までの第1突条31を欠損させ、略T字状をなす領域である(
図2Aも参照)。このように、一部の第1突条31及び/又は第2突条32を欠損させることで、欠損させた位置の周囲の第1突条31及び第2突条32により、筒部2の外周面20に生じた結露水が流通する結露水案内路が形成される。つまり、本実施形態では、第1欠損領域33〜第3欠損領域35が、筒部2の外周面20(上面20a)に生じた結露水を案内する結露水案内路の一部を構成している。結露水案内路としての第1欠損領域33〜第3欠損領域35は、それぞれ、筒部2の上面20aに生じた結露水がダクト1の長手方向と略垂直な方向に流れるよう構成される。つまり、第1欠損領域33〜第3欠損領域35は、それぞれ樋4に向かって傾斜しており、第1欠損領域33〜第3欠損領域35を流通した結露水は、樋4に流入する。
【0023】
一対の樋4は、それぞれ筒部2の外周面20の側方に突出し、且つダクト1の流路方向に延びるように形成される。具体的には、樋4は、
図3Aの断面図にも示すように、円筒状の筒部2の上下方向の略中央の位置から径方向外側に向かって突出するよう形成される。本実施形態の一対の樋4は、筒部2の外周面20を、突条部3が形成される上面20aと突条部3が形成されない下面20bとに分離する。
【0024】
樋4は、結露水が流通する溝部41を備える。溝部41は、樋4の上面に形成される。溝部41は、上方に向かって開口する略U字状をなしている。
図3Aに示すように、溝部41の幅t4は、筒部2の厚みt3の10倍以下とされる。また、溝部41の幅t4は、筒部2の厚みt3の0.1倍〜10倍とすることが好ましく、1.0倍〜7倍とすることがより好ましく、3.0倍〜5.0倍とすることがさらに好ましい。t4/t3の値は、具体的には例えば、0.1,0.5,1.0,1.5,2.0,2.2,2.4,2.6,2.8,3.0,3.2,3.4,3.6,3.8,4.0,4.2,4.4,4.6,4.8,5.0,5,5,6.0,6.5,7.0,7.5,8.0,8.5,9.0,9.5,10であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0025】
また、本実施形態のダクト1は一対の樋4のうち一方の樋4に、結露水の滴下が許容される滴下可能箇所として、切り欠き42が形成されている。切り欠き42は、樋4の一部を切り欠くことにより形成される。より具体的には、切り欠き42は、樋4の長手方向の一部の箇所(図面では2箇所)を、外側から筒部2側に向かって略U字状にえぐり取るように形成される。また、切り欠き42は、
図4の断面図に示すように、溝部41の最深部を超える位置まで達しているが、筒部2までは達していない。切り欠き42を設けることにより、樋4の溝部41を流通する結露水は切り欠き42の位置からダクト1の下方に滴下される。なお、切り欠き42と筒部2との間に樋4の一部を残すことで、切り欠き42から樋4の下方へ移動した結露水が筒部2を伝って筒部2の外周面20の最下部まで移動することを抑制することができる。なお、本実施形態では一対の樋4のうち他方の樋4には、切り欠き42は設けられていない。したがって、他方の樋4の溝部41を流通する結露水は、樋4の長手方向の端部43まで流れた後、下方に滴下される。つまり、他方の樋4においては、滴下可能箇所は樋4の長手方向の端部43である。切り欠き42及び樋4の長手方向の端部43は、適用する自動車等の設備のうち、電装部材等、液滴が接触すると不具合が生じる箇所を避けるよう、適宜設けることができる。
【0026】
以上のように、本実施形態のダクト1は、結露水案内路として、突条部3を欠損させた第1欠損領域33〜第3欠損領域35と、一対の樋4とを備えている。これにより、筒部2の外周面20に生じた結露水は、第1欠損領域33〜第3欠損領域35を通って樋4に滴下され、樋4に滴下された結露水は、溝部41を通って、滴下可能箇所としての切り欠き42又は樋4の長手方向の端部43から滴下される。このような構成により、本実施形態のダクト1では、滴下可能箇所以外の箇所からの結露水の滴下が抑制され、結露水が電装系部材等の他部材へ滴下することを抑制することが可能となっている。
【0027】
なお、筒部2の外周面20に形成する結露水案内路として、突条部3を欠損させることなく、別体として案内路を設けることも可能である。しかしながら、本実施形態のダクト1では、ブロー成形により一体的に成形される突条部3の一部を欠損させて第1欠損領域33〜第3欠損領域35を形成することで、容易に結露水案内路を形成することが可能である。
【0028】
<第2実施形態>
次に、
図5を用いて、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態のダクト1は、第1実施形態のものと同様、筒部2と、結露水案内路としての一対の樋4とを備えているが、筒部2の外周面20に突条部3が設けられていない。本実施形態のダクト1において、筒部2の外周面20(上面20a)に生じた結露水は、樋4に向かって傾斜する外周面20(上面20a)に沿って移動し、樋4に流入する。樋4に流入した結露水は、第1実施形態と同様、滴下可能箇所としての切り欠き42又は樋4の長手方向の端部43から滴下される。第1実施形態と同様、本実施形態のダクト1も、滴下可能箇所以外の箇所からの結露水の滴下が抑制され、結露水が電装系部材等の他部材へ滴下することを抑制することが可能となっている。
【0029】
<第3実施形態>
次に、
図6を用いて、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態のダクト1は、第1実施形態のものと同様、筒部2と、突条部3とを備えているが、一対の樋4が設けられていない。本実施形態のダクト1は、第1実施形態と同様、一部の第1突条31及び/又は第2突条32を欠損させた第1欠損領域33〜第3欠損領域35を備えている。本実施形態では、これら第1欠損領域33〜第3欠損領域35により、筒部2の外周面20(上面20a)に生じた結露水を案内する結露水案内路が形成される。本実施形態では、第1欠損領域33〜第3欠損領域35の下端が、滴下可能箇所となる。すなわち、本実施形態のダクト1では、筒部2の上面20aに生じた結露水のうち、第1欠損領域33〜第3欠損領域35以外の箇所に生じた結露水は、突条部3により形成される各凹状領域Sに保持され、第1欠損領域33〜第3欠損領域35に生じた結露水は滴下可能箇所に滴下されることになる。本実施形態のダクト1は、滴下が許容される箇所の上方にのみ第1欠損領域33〜第3欠損領域35を設けることで、結露水が電装系部材等の他部材へ滴下することを抑制することが可能となっている。
【0030】
なお、本発明は、以下の態様でも実施可能である。
・上述した実施形態において、樋4は筒部2の側方に一対設けられていたが、筒部2の側方のうち一方にのみ設けることも可能である。
・上述した実施形態において、樋4はダクト1の長手方向に沿って略水平に設けられていたが、ダクト1の形状や滴下可能箇所の条件等に応じて、傾斜させて設けることも可能である。
・上述した実施形態において、樋4の途中の位置に設けられる滴下可能箇所は、樋4の一部を切り欠くことにより形成される切り欠き42であった。しかしながら、樋4に設ける滴下可能箇所として、樋4の溝部41に、上下方向に貫通する貫通孔を設けても良い。
・上述した実施形態においては、筒部2の外周面20に形成される結露水案内路として、第1欠損領域33〜第3欠損領域35が設けられていたが(
図1〜
図2B参照)、筒部2の外周面20に形成される結露水案内路の形状は、これに限定されない。つまり、結露水案内路を形成するために欠損させる第1突条31及び/又は第2突条32は任意であり、例えば、L字状とすることや、L字形状を連続させた階段状とすることも可能である。
・上述した実施形態においては、第1突条31はダクト1の流路方向に延び、第2突条32は流路方向とは垂直な方向に延びていたが、第1突条31及び第2突条32をそれぞれ流路に対して傾斜させて設けても良い。また、第1突条31と第2突条32がなす角度は、垂直でなくても良い。
【符号の説明】
【0031】
1 :ダクト
2 :筒部
3 :突条部
4 :樋
20 :外周面
20a :上面
20b :下面
31 :第1突条
32 :第2突条
33 :第1欠損領域
34 :第2欠損領域
35 :第3欠損領域
41 :溝部
42 :切り欠き
43 :端部
S :凹状領域
t1 :第1突条31の間隔
t2 :第2突条32の間隔
t3 :厚み
t4 :幅