【課題】配管等の任意の箇所を含む熱画像を表示可能であり、且つ、当該箇所とその周囲とに大きな温度差が生じた場合でも熱画像に当該箇所における僅かな温度差を表示可能である。
【解決手段】内部に流体が流れる配管等を含む被写体の温度分布を色で示す熱画像を表示する表示部(13)と、表示部(13)を制御する制御部(11)とを備え、制御部(11)は、上限値及び下限値を設定可能な温度範囲において被写体の温度分布を色で示すように熱画像を表示部(13)に表示させる画像表示装置(10)である。
前記制御部は、前記被写体の温度分布を色相、彩度又は明度の少なくとも1つの変化で示すように前記熱画像を前記表示部に表示させることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
前記制御部は、前記温度範囲の前記上限値又は前記下限値の少なくとも1つが変更される毎に、変更後の前記温度範囲において前記被写体の温度分布を色で示すように前記熱画像を前記表示部に表示させることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像表示装置。
前記制御部は、前記温度範囲の前記上限値及び前記下限値を設定するためのユーザインターフェースであるスライドバーを前記熱画像に重畳するように前記表示部に表示させ、
前記スライドバーのスライド量に応じて前記温度範囲の前記上限値及び前記下限値の各変化量が決定され、
前記スライドバーのスライド方向に応じて前記温度範囲の前記上限値及び前記下限値の各増減方向が決定されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の画像表示装置。
前記制御部は、前記周囲環境の温度として、前記熱画像のうちの前記周囲環境に対応する画像から得られる温度の平均値を用いることを特徴とする請求項5に記載の画像表示装置。
請求項1から9のいずれか1項に記載の画像表示装置としてコンピュータを機能させるための制御プログラムであって、上記制御部としてコンピュータを機能させるための制御プログラム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の診断方法では、診断箇所が赤外線カメラ等の温度センサが設置された箇所だけである。このため、ユーザは、温度センサが設置された箇所以外の任意の箇所を診断できない。
【0005】
また、特許文献1の診断方法では、診断箇所の周囲に、当該診断箇所と大きな温度差が生じた物体が存在すると、診断箇所及び当該診断箇所の周囲の物体を含む熱画像では、当該物体の温度を含む広い温度範囲が設定されてしまう。この場合、当該熱画像には診断箇所における僅かな温度差は表示されず、それゆえ、診断箇所における僅かな温度差から診断することはできない。
【0006】
本発明の一態様は、配管等の任意の箇所を含む熱画像を表示可能であり、且つ、当該箇所とその周囲とに大きな温度差が生じた場合でも熱画像に当該箇所における僅かな温度差を表示可能な画像表示装置、画像表示方法及び制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の態様1に係る画像表示装置は、ユーザが持ち運び可能な画像表示装置であって、内部に流体が流れる配管等を含む被写体の温度分布を色で示す熱画像を表示する表示部と、前記表示部を制御する制御部とを備え、前記制御部は、上限値及び下限値を設定可能な温度範囲において前記被写体の温度分布を色で示すように前記熱画像を前記表示部に表示させることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、ユーザが画像表示装置を持ち運び可能であるので、配管等の任意の箇所を含む熱画像を画像表示装置に表示可能となる。また、上記構成によれば、当該箇所とその周囲とに大きな温度差が生じた場合でも、温度範囲の上限値及び下限値を設定することで、熱画像に当該箇所における僅かな温度差が表示可能となる。
【0009】
本発明の態様2に係る画像表示装置は、前記態様1において、前記制御部は、前記被写体の温度分布を色相、彩度又は明度の少なくとも1つの変化で示すように前記熱画像を前記表示部に表示させることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、ユーザに、被写体の温度分布を色相、彩度又は明度の少なくとも1つの変化で示すことができる。
【0011】
本発明の態様3に係る画像表示装置は、前記態様1又は2において、前記制御部は、前記温度範囲の前記上限値又は前記下限値の少なくとも1つが変更される毎に、変更後の前記温度範囲において前記被写体の温度分布を色で示すように前記熱画像を前記表示部に表示させることを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、ユーザに、変更後の温度範囲において被写体の温度分布を色で示すことができる。
【0013】
本発明の態様4に係る画像表示装置は、前記態様1〜3において、前記表示部は、前記熱画像を表示する画面を有し、前記制御部は、前記画面の所定の位置において前記熱画像から得られる温度を基準温度として、前記温度範囲の前記上限値及び前記下限値を設定することを特徴とする。
【0014】
上記構成によれば、画面の所定の位置の温度から上限値及び下限値を設定できる。
【0015】
本発明の態様5に係る画像表示装置は、前記態様4において、前記被写体は、前記配管等が配置された周囲環境を含み、前記制御部は、前記配管等の表面温度と前記周囲環境の温度との間の関係性を示す関係性情報であって、予め前記画像表示装置に記憶された前記関係性情報に基づいて、前記温度範囲の前記上限値及び下限値を設定することを特徴とする。
【0016】
上記構成によれば、配管等の表面温度と周囲環境の温度とから上限値及び下限値を設定できる。
【0017】
本発明の態様6に係る画像表示装置は、前記態様1〜5において、前記制御部は、前記温度範囲の前記上限値及び前記下限値を設定するためのユーザインターフェースであるスライドバーを前記熱画像に重畳するように前記表示部に表示させ、前記スライドバーのスライド量に応じて前記温度範囲の前記上限値及び前記下限値の各変化量が決定され、前記スライドバーのスライド方向に応じて前記温度範囲の前記上限値及び前記下限値の各増減方向が決定されることを特徴とする。
【0018】
上記構成によれば、上限値及び下限値の各変化量、並びに、上限値及び下限値の各増減方向を、ユーザは直観的な操作で変更できる。
【0019】
本発明の態様7に係る画像表示装置は、前記態様5において、前記周囲環境の温度を測定する測定部を備えることを特徴とする。
【0020】
本発明の態様8に係る画像表示装置は、前記態様5において、前記制御部は、前記周囲環境の温度として、前記熱画像のうちの前記周囲環境に対応する画像から得られる温度の平均値を用いることを特徴とする。
【0021】
本発明の態様9に係る画像表示装置は、前記態様1〜8において、前記表示部はさらに、前記被写体の可視光画像を表示し、前記制御部は、前記熱画像に前記可視光画像を重畳させて前記表示部に表示させることを特徴とする。
【0022】
上記構成によれば、可視光画像と熱画像とが重ね合わされているので、ユーザは配管等の位置を特定し易くなる。
【0023】
本発明の態様10に係る画像表示方法は、内部に流体が流れる配管等を含む被写体の温度分布を色で示す熱画像を画像表示装置に表示させる画像表示方法であって、前記画像表示装置は、ユーザが持ち運び可能であり、赤外線カメラで前記被写体を撮像した赤外線画像を取得するステップと、前記赤外線画像から、上限値及び下限値が設定された温度範囲において前記被写体の温度分布を色で示すように前記熱画像を生成するステップと、前記熱画像を前記画像表示装置に表示させるステップとを含むことを特徴とする。
【0024】
なお、本発明の各態様に係る画像表示装置(特に、制御部)は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記画像表示装置が備える各部として動作させることにより上記画像表示装置をコンピュータにて実現させる画像表示装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。さらに、本発明の態様に係る画像表示装置は集積回路(ICチップ)として実現してもよく、この場合には、上記集積回路を備えるチップ等も本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一態様によれば、配管等の任意の箇所を含む熱画像を表示可能であり、且つ、当該箇所とその周囲とに大きな温度差が生じた場合でも熱画像に当該箇所における僅かな温度差を表示可能である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
〔実施形態1〕
(1−1.概要)
図1及び
図2は、本発明の実施形態1に係る画像表示装置10の外観を示す図である。
図1は、画像表示装置10を表面側から見た図である。
図2は、画像表示装置10を背面側から見た図である。
図1及び
図2に示すとおり、画像表示装置10は、ユーザが持ち運び可能な無線端末である。画像表示装置10は、例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、ノート型パーソナルコンピュータである。また、画像表示装置10は、
図1に示すとおり、その表面側に画面10aを有する。また、画像表示装置10は、
図2に示すとおり、その背面側に可視光カメラ17と赤外線カメラ19とを有する。
【0028】
可視光カメラ17は、可視光の波長領域に感度を持ち、被写体からの可視光を検出して可視光画像を撮像するカメラである。赤外線カメラ19は、赤外線の波長領域に感度を持ち、被写体からの赤外線を検出して赤外線画像を撮像するカメラである。可視光カメラ17の撮像範囲と赤外線カメラ19の撮像範囲とは略一致している。
図1の例では、可視光カメラ17の撮像範囲と赤外線カメラ19の撮像範囲とは共に撮像範囲FAである。画像表示装置10はユーザが持ち運び可能な無線端末であるので、ユーザは任意の場所に移動し、可視光カメラ17及び赤外線カメラ19の撮像範囲FAを任意の方向に向けることができる。
【0029】
また、
図1の例では、画像表示装置10がダクトD1を撮像する様子が示されている。ダクトD1は、例えば、その内部を流れる流体を運ぶ配管等である。流体は液体と気体の総称である。配管等は、例えば、ダクト、ダンパ、流体エネルギーを利用する装置である。ダクトD1は、例えば、鉄鋼プラント等の建築物内で空調、換気、排煙等の目的で設備される。ダクトD1が配管等の一例である。また、ダクトD1の外観のうち、上述の撮像範囲FAに含まれる部分が、画像表示装置10の被写体の一例である。なお、撮像範囲FAには、ダクトD1に加え、ダクトD1の周囲環境も含まれてもよい。周囲環境は、例えば、ダクトD1を支持する支持部材、画像表示装置10から見てダクトD1の周囲に配置された装置である。この場合、被写体にはそれら周囲環境も含まれることになる。
【0030】
また、
図1の例では、ダクトD1の内部に、ダクトD1の内壁に粉塵が付着し、堆積された堆積物X1が存在する。ダクトD1の内部を流れる流体からの、堆積物X1とダクトD1の内壁への熱伝達の違いにより、堆積物X1とダクトD1の内壁に対する熱の抜け方が異なる。このため、ダクトD1の表面では、堆積物X1が堆積した内壁に対向する表面部分及び当該表面部分の周辺と、それらを除く残余の表面部分との間で、温度差が生じる。この温度差を、赤外線カメラ19で観察することで、画像表示装置10は、それら2つの境界を検出する。ユーザは、この検出される境界の存在により、堆積物X1の存在を特定する。
【0031】
図1の例では、画像表示装置10は、可視光カメラ17で撮像された可視光画像と、赤外線カメラ19で撮像された赤外線画像に基づく熱画像と、を画面10aに重畳して表示させる。画面10aには、ダクトD1に対応する画像である、可視光画像に含まれるダクト画像D1aと、堆積物X1に対応する画像である、熱画像に含まれる堆積物画像X1aとが表示される。ユーザは、熱画像に含まれる堆積物画像X1aと可視光画像に含まれるダクト画像D1aとを合わせて見ることができるので、ユーザは堆積物画像X1aの存在位置を容易に認識できる。
【0032】
(1−2.構成)
図3は、画像表示装置10の内部構成を示すブロック図である。画像表示装置10は、その全体動作を制御する制御部11と、種々の情報を表示する表示部13と、ユーザが操作を行うタッチパネル15と、データやプログラムを記憶する記憶部16と、ネットワークに接続するための通信部21と、外部機器を接続するためのインターフェース部23とを備える。さらに、画像表示装置10は、上述のとおり、可視光カメラ17と、赤外線カメラ19とを備える。また、画像表示装置10は、温度センサ25を備えてもよい。
【0033】
ここで、本実施形態では、可視光カメラ17で撮像される可視光画像は画像表示装置10に必須ではない。本実施形態では、画像表示装置10は、可視光カメラ17で撮像される可視光画像を必ずしも用いる必要はない。また、本実施形態では、画像表示装置10は、可視光カメラ17を有さず、赤外線カメラ19だけを有していても良い。
【0034】
表示部13は、例えば、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイで構成される。タッチパネル15は、例えば、ユーザの指又はスタイラスペンによるタッチ操作を検出する入力デバイスである。タッチパネル15は、その操作領域が表示部13の表示領域と重畳するように配置されている。
図1の画面10aは、表示部13とタッチパネル15とを含む。
【0035】
通信部21は、図示しないネットワークに接続するための装置であり、3G、4G、LTE等の通信規格に従い、ネットワークと通信を行う。インターフェース部23は、図示しない外部機器と接続するための装置であり、USB(登録商標)、HDMI(登録商標)、Bluetooth(登録商標)等の通信規格に従い通信を行う。
【0036】
記憶部16は、所定の機能を実現するために必要なパラメータ、データ及び制御プログラム等を記憶する記録媒体である。記憶部16は、例えばハードディスク、半導体記憶装置、半導体メモリで構成される。
【0037】
記憶部16は、画像表示装置10の後述の機能を実現するための画像表示プログラム16aと、温度範囲データ16bとを記憶する。画像表示プログラム16aは、制御プログラムの一例である。温度範囲データ16bは、赤外線カメラ19で撮像された赤外線画像から熱画像を生成する際に用いられる温度範囲の上限値及び下限値を設定するためのデータである。
【0038】
制御部11は、CPUを含み、画像表示プログラム16aを実行することにより以下に説明する画像表示装置10の機能を実現する。なお、制御部11は、所定の機能を実現するように専用に設計されたハードウェア回路のみで実現してもよい。制御部11は、CPU以外に、MPU、GPU、DSP、FPGA、ASIC等の種々の回路で構成してもよい。
【0039】
(1−3.動作)
上述のとおり、本実施形態では、可視光カメラ17で撮像される可視光画像は画像表示装置10に必須ではない。以下では、まず、画像表示装置10が、可視光カメラ17で撮像される可視光画像を用いない構成を例として本実施形態を説明する。次に、画像表示装置10が、可視光カメラ17で撮像される可視光画像を用いる構成を例として本実施形態を説明する。
【0040】
図4は、制御部11の機能的な構成を示す図である。
図4の例は、画像表示装置10が、可視光カメラ17で撮像される可視光画像を用いない構成である。制御部11は、第1画像処理部11aと、第2画像処理部11bと、表示処理部11dとを含む。制御部11に含まれる上記の各処理部11a、11b、及び11dは、制御部11が画像表示プログラム16aを実行することにより実現される。
【0042】
画像表示装置10は、赤外線カメラ19で撮像した赤外線画像に基づく熱画像を表示部13に表示させる画像表示機能を有する。ここで、熱画像とは、赤外線画像において、各画素の色をその画素に含まれる被写体の温度を示す温度情報に応じて設定して生成した画像である。また、各画素の色は、上限値及び下限値が設定された温度範囲で設定される。これにより、上述の温度範囲において被写体の温度分布を色で示す熱画像が生成される。この画像表示機能は、画像表示プログラム16aにより実現される。
【0043】
なお、各画素の色は、色の3属性である「色相」、「彩度」又は「明度」のうちの少なくとも1つを各画素の温度に応じて変化させて設定すれば良い。例えば、「色相」を固定し、「彩度」及び「明度」を変化させても良いし、「彩度」及び「明度」を固定し、「色相」を変化させても良い。以下、本実施形態では、「彩度」及び「明度」を固定し、「色相」を変化させる例を実施形態として説明する。
【0044】
図7は、画像表示装置10が可視光画像及び熱画像を表示させた画面10aの一例を示す図である。
図7に示すとおり、画面10aの一例である画面例70には、ダクトD7及びダクトD7の周囲環境の可視光画像と、ダクトD7及びダクトD7の周囲環境の赤外線画像から生成された熱画像とが重畳して表示されている。熱画像は、赤外線画像において、赤外線画像に含まれる各画素の温度情報に応じて各画素の色相を変化させた画像である。なお、ダクトD7は配管等の一例である。また、ダクトD7及びダクトD7の周囲環境は被写体の一例である。また、流体は、ダクトD7の内部をA1で示す矢印の方向に流れるものとする。
【0045】
ここで、
図7の例では、ダクトD7及びダクトD7の周囲環境の可視光画像と熱画像とが重畳して表示されているが、以下では、
図7には、ダクトD7及びダクトD7の周囲環境の熱画像のみが表示されているものとして説明を続ける。
【0046】
図7の画面例70の領域71には、カラーバー71aが熱画像に重畳するように表示されている。また、
図7の画面例70の領域73には、スライドバー73aが熱画像に重畳するように表示されている。特に、スライドバー73aは、タッチ操作であるスワイプ操作等を行うためのユーザインターフェースである。これにより、ユーザに直観的な操作を提供できる。
【0047】
また、
図7の画面例70には、基準位置マーク72が熱画像に重畳するように表示されている。基準位置マーク72は、例えば、画面10aの中心部に配置される。例えば、基準位置マーク72を、ダクトD7の内部の中心付近上に位置させるためには、ユーザは、画像表示装置10の撮像範囲FAの中心をダクトD7の内部の中心付近方向に向ければ良い。なお、基準位置マーク72は、必ずしも、画面10aの中心部に配置される必要はない。基準位置マーク72は、画面10aの右上端付近、左下端付近等であっても良い。また、基準位置マーク72の位置は、予め設定されていても良いし、ユーザが任意に設定しても良い。
【0048】
以下、
図7の画面例70を参照しつつ、
図5を用いて、画像表示装置10の動作を説明する。また、
図3及び
図4についても適宜参照する。
【0049】
図5は、
図4の例の動作を示すフローチャートである。
図5のフローチャートは、画像表示装置10が、可視光カメラ17で撮像される可視光画像を用いない構成のフローチャートである。
【0050】
ステップS101:
制御部11は、赤外線カメラ19で撮像したダクトD7及びその周囲環境の赤外線画像19aを取得する。制御部11は、赤外線カメラ19から取得した赤外線画像19aを記憶部16に記憶させる。
【0051】
ステップS102:
制御部11の第1画像処理部11aは、記憶部16に記憶された赤外線画像19aを読み出し、読み出した赤外線画像19aに含まれる各画素の温度情報を取得する。第1画像処理部11aは、赤外線画像19aの各画素のうち、基準位置マーク72及び基準位置マーク72の周囲と重なることになる各画素の温度を用いて、基準温度を設定する。各画素の温度が異なる場合、基準温度は各画素の温度の平均値とすればよい。
【0052】
第1画像処理部11aは、この基準温度と、予め設定されたレンジ値とを用いて、上述の温度範囲の上限値及び下限値を設定する。
図7の画像例70では、基準位置マーク72の基準温度は「17.5℃」である。また、レンジ値は「±5℃」である。また、レンジ値である「±5℃」はデフォルト値である。「±5℃」のうちの「+5℃」が上限レンジ値である。「±5℃」のうちの「−5℃」が下限レンジ値である。レンジ値はスライドバー73aで表現されており、ユーザはタッチ操作であるスワイプ操作等で任意にレンジ値を変更できる。
【0053】
第1画像処理部11aは、以下の式により、温度範囲の上限値及び下限値を設定する。
上限値=17.5℃+5℃=22.5℃
下限値=17.5℃−5℃=12.5℃
第1画像処理部11aは、上限値及び下限値が設定された温度範囲において、各温度に各色相を割当てる。第1画像処理部11aは、各温度に割り当てられた色相が反映されたカラーバー71aの画像を生成する。カラーバー71aの画像は、例えば、下限値から上限値に向かうにつれて「青」、「緑」、「赤」と変化する画像である。第1画像処理部11aは、記憶部16に記憶された温度範囲データ16bを参照して、各温度に割り当てられる色相を決定する。各温度に割り当てられる色相は、例えば、温度範囲データ16bとして、記憶部16に記憶されている。また、各温度に割り当てられる色相は、ユーザにより随時書き換え可能である。
【0054】
なお、
図7に示すとおり、基準位置マーク72の上部に「17.5℃」と記載された温度表示欄72aが表示されている。
図7に示すとおり、スライドバー73aの上部に「−5」と記載された下限レンジ値表示欄73bと「+5」と記載された上限レンジ値表示欄73cとが表示されている。レンジ値の上限である上限レンジ値と下限である下限レンジ値は、例えば、温度範囲データ16bとして、記憶部16に記憶されている。また、レンジ値は、ユーザにより随時書き換え可能である。
【0055】
また、
図7に示すとおり、カラーバー71aの上端部付近に「22.5」と記載された上限値表示欄71bが表示されている。カラーバー71aの下端部付近に「12.5」と記載された下限値表示欄71cが表示されている。カラーバー71aの中央部付近に「17.5」と記載された基準温度表示欄71dが表示されている。
【0056】
なお、
図7に示した各表示欄71b、71c、71d、72a、73b及び73cの表示位置はあくまでも一例であり、
図7に示した位置に限られるものではない。また、各表示欄71b、71c、71d、72a、73b及び73cは必ずしも表示しなければならないものでもない。
【0057】
第1画像処理部11aは、カラーバー71a、基準位置マーク72、スライドバー73a、各表示欄71b、71c、71d、72a、73b及び73cを画面10aに表示させるための各画像を生成する。
【0058】
ステップS103:
制御部11の第2画像処理部11bは、基準温度、上限値及び下限値を設定する。それらの設定処理については、第1画像処理部11aの場合と同様であるので、ここでは説明を繰り返さない。
【0059】
第2画像処理部11bは、記憶部16に記憶された赤外線画像19aを読み出し、読み出した赤外線画像19aから、上限値及び下限値が設定された温度範囲において、ダクトD7及びダクトD7の周囲環境の温度分布を色で示す熱画像を生成する。より詳細には、第2画像処理部11bは、記憶部16に記憶された温度範囲データ16bを参照して、赤外線画像19aの各画素の温度に基づき各画素の色を決定し、温度に応じて各画素を色付けした熱画像を生成する。
【0060】
図7の例では、ダクトD7の表面のうち、堆積物X7の存在により周囲と温度差が生じた表面部分が、その周囲と異なる色付けがなされている。
【0061】
ステップS104:
第1画像処理部11aは、カラーバー71a、基準位置マーク72、スライドバー73a、各表示欄71b、71c、71d、72a、73b及び73cを画面10aに表示させるための各画像を表示処理部11dに出力する。第2画像処理部11bは、熱画像を表示処理部11dに出力する。
【0062】
表示処理部11dは、第1画像処理部11a及び第2画像処理部11bから入力された各画像を画面10aに重畳して表示させる。
【0063】
ステップS105:
画像表示装置10は、タッチパネル15からのユーザ操作が無ければ(ステップS105にてNO)、その動作を終了する。
【0064】
一方、制御部11は、タッチパネル15からのユーザ操作が有れば(ステップS105にてYES)、再び、ステップS102の処理を実行する。
【0065】
より具体的には、
図7に示すとおり、ユーザは、A21及びA22で示す矢印の方向に、ユーザの指又はスタイラスペンでスライドバー73aをスライドさせる。タッチパネル15は、ユーザの指又はスタイラスペンによるスライド量及びスライド方向を検出する。第1画像処理部11a及び第2画像処理部11bは、タッチパネル15により検出されたスライド量に応じて、現在設定されている上限レンジ値及び下限レンジ値の各変化量を決定する。また、第1画像処理部11a及び第2画像処理部11bは、タッチパネル15により検出されたスライド方向に応じて、上限レンジ値及び下限レンジ値の各増減方向を決定する。第1画像処理部11a及び第2画像処理部11bは、決定した各変化量及び各増減方向に基づき、現在設定されている上限レンジ値及び下限レンジ値を変更する。
【0066】
なお、ユーザは、A21又はA22で示す矢印のいずれか一方の方向に、ユーザの指又はスタイラスペンでスライドバー73aをスライドさせることにより、現在設定されている上限レンジ値又は下限レンジ値のいずれか一方のみを変更することが可能である。
【0067】
そして、第1画像処理部11a及び第2画像処理部11bは、変更した上限レンジ値及び下限レンジ値に基づき、温度範囲の上限値及び下限値を設定する。以降は、上述のステップS102〜ステップS105の処理が実行される。
【0068】
ユーザは、画面10aに表示された熱画像を見ながら、上述の上限値及び下限値を簡単な操作で変更することができる。ユーザにより自由に設定された上限値及び下限値の温度範囲で熱画像を表示することにより、ユーザにとって使い勝手のよい方法を提供している。
【0069】
また、一般的な赤外線カメラは、撮像された画像における温度の最小値及び最大値を自動的に認識し、認識した最小値と最大値の間の温度範囲において、各温度に各色相を割当てる。例えば、撮像された画像内に、周囲と大きな温度差が生じた物体が存在すると、赤外線カメラは当該物体の温度を最小値又は最大値として自動的に認識する。このため、ユーザが確認したい箇所における僅かな温度差に対する色相の変化は粗くなり、当該温度差をユーザは色相の変化で認識することができない。
【0070】
画像表示装置10によれば、ユーザは、このような場合であれば、上述の上限値及び下限値を簡単な操作で変更し、上述の物体の温度を温度範囲から外せばよい。これにより、ユーザは、変更した上限値及び下限値の温度範囲で生成された熱画像にユーザが確認したい箇所における僅かな温度差を表示させることができる。
【0071】
次に、画像表示装置10が、可視光カメラ17で撮像される可視光画像を用いる構成を例として本実施形態を説明する。
【0072】
図6は、制御部11の他の機能的な構成を示す図である。
図6の例は、画像表示装置10が、可視光カメラ17で撮像される可視光画像を用いる構成である。制御部11は、第1画像処理部11aと、第2画像処理部11bと、第3画像処理部11cと、表示処理部11dとを含む。制御部11に含まれる上記の各処理部11a、11b、11c及び11dは、制御部11が画像表示プログラム16aを実行することにより実現される。
【0073】
図6の例の動作を以下に説明する。なお、
図4の例で説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0074】
画像表示装置10は、赤外線カメラ19で撮像した赤外線画像に基づく熱画像に、可視光カメラ17で撮像した可視光画像を重畳して表示部13に表示させる画像表示機能を有する。この画像表示機能は、画像表示プログラム16aにより実現される。
【0075】
以下、
図7の画面例70を参照しつつ、
図8を用いて、画像表示装置10の動作を説明する。また、
図3及び
図6についても適宜参照する。
【0076】
図8は、
図6の例の動作を示すフローチャートである。
図8のフローチャートは、画像表示装置10が、可視光カメラ17で撮像される可視光画像を用いる構成のフローチャートである。
【0077】
ステップS201:
制御部11は、可視光カメラ17で撮像したダクトD7及びその周囲環境の可視光画像17aを取得する。さらに、制御部11は、赤外線カメラ19で撮像したダクトD7及びその周囲環境の赤外線画像19aを取得する。制御部11は、可視光カメラ17から取得した可視光画像17aと、赤外線カメラ19から取得した赤外線画像19aとを、記憶部16に記憶させる。
【0078】
ステップS202:
図5のステップS102と同一の処理であるため、ここでは説明を繰り返さない。
【0079】
ステップS203:
図5のステップS203と同一の処理であるため、ここでは説明を繰り返さない。
【0080】
ステップS204:
第1画像処理部11aは、カラーバー71a、基準位置マーク72、スライドバー73a、各表示欄71b、71c、71d、72a、73b及び73cを画面10aに表示させるための各画像を表示処理部11dに出力する。第2画像処理部11bは、熱画像を表示処理部11dに出力する。第3画像処理部11cは、記憶部16に記憶された可視光画像17aを読み出し、読み出した可視光画像17aを表示処理部11dに出力する。
【0081】
表示処理部11dは、第1画像処理部11a、第2画像処理部11b及び第3画像処理部11cから入力された各画像を画面10aに重畳して表示させる。
図7の画面例70では、可視光画像に含まれるダクトD7の画像と、熱画像に含まれる堆積物X7の画像とが重ね合わされている。このため、ユーザは、堆積物X7の位置を特定し易くなる。
【0082】
ステップS205:
図5のステップS105と同一の処理であるため、ここでは説明を繰り返さない。
【0083】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0084】
本実施形態2が上記実施形態1と異なる点は、上述の上限値及び下限値を、基準温度とレンジ値とから設定することに代えて、ダクトの表面温度と周囲環境の温度とから自動的に設定する点である。以下、この異なる点につき説明する。
【0085】
本発明者らは、ダクトの表面温度と周囲温度との関係性から、上述の上限値及び下限値を設定可能であることを見出した。この関係性について、
図9及び
図10を用いて説明する。
図9は、ダクトD9内部を流体がBで示す方向に流れる場合において、ダクトD9の内部に堆積物X9が存在する様子を示す図である。
図9の例では、温度測定器90の測定部91をダクトD9の表面の測定点P1からP9のそれぞれに接触させ、各測定点の温度を測定した。
図10は、測定結果である。なお、ダクトD9の材質は鉄、堆積物X9は鉄ヒュームが堆積したものであった。また、測定は、周囲温度を18℃と30℃の2水準とし、ガス温度を40〜80℃の範囲で行った。
【0086】
図10の測定結果から、ダクトD9の表面の温度分布につき、以下の知見が得られた。
・堆積物X9が存在しない測定点:±5℃程度
・堆積物X9が存在する測定点:下限値側に拡大
それら2つの知見から以下の結論を得た。
・上限値側は変化無し
本実施形態2では、ダクトD9の表面温度と周囲温度とから、どの程度の温度範囲が生じたか、を示す実験的事実を予め記憶部16に記憶させておく。この実験的事実は、関係性情報の一例である。
図11の例では、ダクトD9の内部の中心付近の温度が60℃であり、ダクトD9の周囲温度が30℃であれば(
図11中、枠111で囲む記載を参照)、ダクトD9の表面の温度分布は最大で40〜65℃の範囲で拡がりを持っているといえる(
図11中、枠112で囲むグラフを参照)。
図11の例では、ダクトD9の内部の中心付近の温度が60℃であり、ダクトD9の周囲温度が30℃である場合、ダクトD9の表面の温度分布は最大で40〜65℃の範囲となる、という事実が実験的事実に相当する。なお、ダクトD9の内部の中心付近の温度とは、ダクトD9の内部の中心付近と重なる、赤外線画像の各画素の温度を用いて設定された温度である。また、
図10と
図11とは同一のグラフを示している。
【0087】
図12は、画像表示装置10が可視光画像及び熱画像を表示させた画面10aの一例を示す図である。
図12に示すとおり、画面10aの一例である画面例120には、ダクトD12及びダクトD12の周囲環境の可視光画像と、ダクトD12及びダクトD12の周囲環境の赤外線画像から生成された熱画像とが重畳して表示されている。熱画像は、赤外線画像において、赤外線画像に含まれる各画素の温度情報に応じて各画素の色相を変化させた画像である。なお、ダクトD12は配管等の一例である。また、ダクトD12及びダクトD12の周囲環境は被写体の一例である。また、流体は、ダクトD12の内部をCで示す矢印の方向に流れるものとする。
【0088】
また、
図12の画面例120の領域121には、カラーバー121aが可視光画像及び熱画像に重畳するように表示されている。
【0089】
また、
図12の画面例120には、基準位置マーク122が可視光画像及び熱画像に重畳するように表示されている。基準位置マーク122は、例えば、画面10aの中心部に配置される。例えば、基準位置マーク122を、ダクトD12の内部の中心付近に位置させるためには、ユーザは、画像表示装置10の撮像範囲FAの中心をダクトD12の内部の中心付近方向に向ければ良い。なお、基準位置マーク122は、必ずしも、画面10aの中心部に配置される必要はない。基準位置マーク122は、画面10aの右上端付近、左下端付近等であっても良い。また、基準位置マーク122の位置は、予め設定されていても良いし、ユーザが任意に設定しても良い。
【0090】
また、
図12に示すとおり、基準位置マーク122の上部に「60.0℃」と記載された温度表示欄122aが表示されている。
図12に示すとおり、画面例120の左下端部に「周囲温度:30.0℃」と記載された周囲温度欄123が表示されている。周囲温度は、例えば、温度センサ25から取得すれば良い。また、周囲温度は、赤外線カメラ19で撮像された赤外線画像のうち、ダクトD12を除く、ダクトD12の周囲環境の各画素の温度の平均値を用いても良い。
【0091】
また、
図12に示すとおり、カラーバー121aの上端部付近に「65.0」と記載された上限値表示欄121bが表示されている。カラーバー121aの下端部付近に「40.0」と記載された下限値表示欄121cが表示されている。上限値表示欄121bと下限値表示欄121cとの間に「60.0℃」と記載された基準温度表示欄121dが表示されている。上限値表示欄121bに記載された上限値「65.0」(℃)と下限値表示欄121cに記載された下限値「40.0」(℃)は、上述の実験的事実を参照し、温度表示欄122aに記載されたダクトD12の表面温度「60.0℃」と周囲温度欄123に記載された周囲温度「30.0℃」とから自動的に設定された値である。なお、
図12の例では、表面温度「60.0℃」はダクトD12の内部の中心付近の温度である。
【0092】
なお、
図12に示した各表示欄121b、121c、121d、122a及び123の各表示位置はあくまでも一例であり、
図12に示した位置に限られるものではない。また、各表示欄121b、121c、121d、122a及び123は必ずしも表示しなければならないものでもない。
【0093】
また、本実施形態においても、上記実施形態1と同様、予めレンジ値を設定しておいてもよい。この場合、
図12の例において、さらに、
図7に示したスライドバー73aを表示させる。ユーザは、ユーザの指又はスタイラスペンでスライドバー73aをスライドさせ、現在設定されている上限レンジ値及び下限レンジ値を変更できる。ユーザは、上限レンジ値及び下限レンジ値を変更することで、上記実施形態1と同様、温度範囲の上限値及び下限値を再設定できる。なお、
図12の例では、温度表示欄122aに記載されたダクトD12の表面温度「60.0℃」が上記実施形態1に係る基準温度である。また、
図12の例において、
図7のスライドバー73aを表示させる場合、その表示位置は必ずしも
図7の領域73に対応する領域とする必要はない。例えば、
図12に示した画面例120の左上端付近、中央下端付近であっても良い。
【0094】
〔ソフトウェアによる実現例〕
画像表示装置10の制御部11は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0095】
後者の場合、制御部11は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0096】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。