【解決手段】物体側より順に、負の屈折力を有する第1レンズ群、正の屈折力を有する第2レンズ群、正の屈折力を有する第3レンズ群、及び負の屈折力を有する第4レンズ群を有し、無限遠物体から近距離物体への合焦に際して、少なくとも第2レンズ群が物体側へ光軸上を移動し、第3レンズ群が物体側へ光軸上を移動し、全系の焦点距離をf、第4レンズ群の焦点距離をf4として、条件式0.7<|f4/f|<2.0を満足する。
無限遠物体合焦時の前記第1レンズ群の最も物体側のレンズ面から結像面までの光軸上の距離(バックフォーカスは空気換算長とする)をTL、最大像高をYとして、条件式
2.4 < TL / Y < 3.6
を満足する請求項1又は2に記載のレンズ系。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。以下の実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0014】
特許請求の範囲、明細書、図面、及び要約書には、著作権による保護の対象となる事項が含まれる。著作権者は、これらの書類の何人による複製に対しても、特許庁のファイルまたはレコードに表示される通りであれば異議を唱えない。ただし、それ以外の場合、一切の著作権を留保する。
【0015】
図1から
図6に関連してレンズ系の実施例が開示されている。各実施例で開示されているように、一実施形態のレンズ系は、物体側より順に、負の屈折力を有する第1レンズ群、正の屈折力を有する第2レンズ群、正の屈折力を有する第3レンズ群、及び負の屈折力を有する第4レンズ群を有する。レンズ系は、無限遠物体から近距離物体への合焦に際して、少なくとも第2レンズ群が物体側へ光軸上を移動し、第3レンズ群が物体側へ光軸上を移動する。レンズ系はインナーフォーカス式レンズである。全系の焦点距離をf、第4レンズ群の焦点距離をf4として、次の条件式(1)を満足する。
0.7 < |f4/f| < 2.0 ・・・(1)
【0016】
上記構成をとることで、第4レンズ群f4にて光線を跳ね上げることにより、イメージセンサのサイズに対してより短いバックフォーカスを維持したまま、各面での軸上収差及び軸外収差の補正を効率よく分担することができる。また、バックフォーカスの短いレンズ構成では、各レンズ面への入射角が大きくなり、レンズ入射・出射でおこる偏角差により収差発生量が大きくなり各所収差が大きくなり易い。これに対し、固定群である第1レンズ群と第4レンズ群に非球面レンズを設置することで、各収差を抑えつつ、非球面における収差補正を効率よく実施することができる。
【0017】
条件式(1)は第4レンズ群とレンズ全体の屈折力の比を規定している。条件式(1)の上限以上になると、第4レンズ群の屈折力が相対的に弱くなり、レンズ系の大型化を招いてしまう。レンズ系を小型にしつつ性能を高めようとすると、各レンズの敏感度が高くなり、製造難易度が高くなってしまう。一方、条件式(1)の下限以下になると第4レンズ群の屈折力が相対的に強くなり小型化に寄与するが軸外収差の補正が難しくなる。
【0018】
さらに、次の条件式(1―1)を満足することで上述の効果がより顕著となる。
0.9 < |f4 / f| < 1.6 ・・・(1―1)
【0019】
フォーカスレンズ群の選択において、第1レンズ群をフォーカスレンズ群にするとフォーカスレンズ群の重量が増加する。最終の第4レンズ群をフォーカスレンズ群にすると、第4レンズ群はイメージセンサの前群であるため、イメージセンサのサイズに比例してフォーカスレンズ群のサイズが大きくなる。そのため、本レンズ系では、レンズ内部の群をフォーカス群としている。また、無限から近距離まで高いフォーカス性能を維持するために、フォーカス方式はフローティングフォーカスとしている。フォーカス群の構成は、絞りを挟み正の屈折力を有する第2レンズ群、正の屈折力を有する第3レンズ群と対称的に配置することで、高いフォーカス性能を維持することができる。
【0020】
第2レンズ群及び第3レンズ群に接合レンズが配置され、第2レンズ群の焦点距離をf2、第3レンズ群の焦点距離をf3として、次の条件式(2)及び(3)を満足する。
0.9 < f2/f < 2.0 ・・・(2)
0.5 < f3/f < 1.4 ・・・(3)
【0021】
条件式(2)および(3)はレンズ系全体の焦点距離とフォーカス群の焦点距離の関係を規定している。条件式(2)及び(3)において、条件式の上限以上になると、収差補正には有利だが、フォーカス敏感度が弱くなり、オートフォーカス時のスピードが遅く、素早い合焦を行う事が難しくなる。また、全長を小型化することも難しくなる。条件式の下限以下になると、屈折力が強くなりすぎるために、軸外で発生する収差を補正するのが難しくなるとともに、偏芯誤差による性能劣化が大きくなる。
【0022】
第1レンズ群及び第4レンズ群に負の屈折力を有する非球面レンズが配置され、第1レンズ群の非球面レンズの焦点距離をf_1asp、第4レンズ群の非球面レンズの焦点距離をf_4aspとして、次の条件式(4)及び(5)を満足する。
1.0 < |f_1asp/f| < 2.5 ・・・(4)
0.6 < |f_4asp/f| < 2.2 ・・・(5)
【0023】
条件式(4)及び(5)は、レンズ系全体の焦点距離と固定群に配置された非球面レンズの焦点距離の関係を規定している。条件式(4)及び(5)において、条件式の上限以上になると、収差補正には有利だが、各群の屈折力が相対的に弱くなり、レンズの大型化を招いてしまう。一方、条件式の下限以下になると各群での非球面レンズの屈折力が強くなりすぎ、収差補正が難しくなる。また、非球面レンズの敏感度が高くなり、製造難易度が上がってしまう。
【0024】
第1レンズ群及び第4レンズ群に負の屈折力を有する非球面レンズが配置され、第1レンズ群の非球面レンズの絞りからの距離をd_1asp、第4レンズ群の非球面レンズの絞りからの距離をd_4aspとして、条件式(6)及び(7)を満足する。
0.5 < d_1asp / f < 0.95 ・・・(6)
0.4 < d_4asp / f < 0.95 ・・・(7)
【0025】
条件式(6)及び(7)は、絞り位置と固定群に配置される非球面レンズの位置関係を規定している。条件式の上限以上になると、周辺像高の収差補正には有利だが、レンズの直径が大きくなり、レンズ系全体の大型化と製造コストアップの要因となる。一方、条件式の下限以下になると周辺像高の収差補正に不利となり収差性能を維持することが難しくなる。
【0026】
無限遠物体合焦時の第1レンズ群の最も物体側のレンズ面から結像面までの光軸上の距離(バックフォーカスは空気換算長とする)をTL、最大像高をYとして、次の条件式(8)を満足する。
2.4 < TL / Y < 3.6 ・・・(8)
【0027】
条件式(8)は無限遠被写体に合焦時のレンズ全長と最大像高の関係を規定している。条件式の上限以上になると、収差補正には有利だが、系の全長を短くすることが難しくなる。一方、条件式の下限以下になると最大像高に対して系の全長が短くなり、収差性能を維持することが難しくなる。
【0028】
さらに、下記条件式(8―1)を満足することで上述の効果がより顕著となる。
2.7 < TL / Y < 3.1 ・・・ (8―1)
【0029】
射出瞳距離をEPD、最大像高条件式をYとして、次の条件式(9)を満足する。
1.0 < EPD / Y < 1.7 ・・・(9)
【0030】
条件式(9)は無限遠被写体に合焦時の射出瞳位置と最大像高の関係を規定している。条件式の上限以上になると、射出瞳位置が撮像面から遠くなるために、レンズ系の全長を短くすることが難しくなる。一方、条件式の下限以下になると、最大像高に対して射出瞳位置が小さくなりすぎるため、軸外光線の入射角が大きくなってしまい、軸外収差が発生し易くなる。また、イメージセンサーの入射角制限から外れてしまうため、周辺の減光を招く。
【0031】
さらに、下記条件式(9―1)を満足することで上述の効果がより顕著となる。
1.3 < EPD / Y < 1.5 ・・・ (9―1)
【0032】
以上に説明したように、上記のレンズ系によれば、大型のイメージサークルを有し、全長が短く、高性能なレンズ系を提供することができる。また、可動レンズ群が軽量であり高速にフォーカシングが可能なレンズ系を提供することができる。
【0033】
なお、本明細書等において「〜から構成され」、「〜からなり」、「〜からなる」という用語が用いられる場合、列挙された構成要素に加えて、実質的に屈折力を有さないレンズ、絞り、フィルタ及びカバーガラス等の、実質的に屈折力を有するレンズ以外の光学要素、及び/又は、レンズフランジ、イメージセンサ及び振れ補正機構等の機構要素を含み得る。例えば、「Xから構成され」、「Xからなり」、「Xからなる」という用語が用いられる場合、Xに加えて、実質的に屈折力を有するレンズ以外の光学要素、及び/又は、機構要素を含み得る。
【0034】
次に、レンズ系の具体的な実施形態に具体的な数値を適用した実施例を説明する。まず、レンズ系の各実施例の説明で用いられる記号等の意味を説明する。
【0035】
レンズデータとして面番号、曲率半径、面間隔、屈折率及びアッベ数を示す表が開示される。レンズデータの表において、面番号の欄には、最も物体側の面を第1面とし像側に向かうに従い1つずつ番号を増加させたときの面番号が示される。Rの欄には、各面の曲率半径が示される。Dの欄には、各面とその像側に隣接する面との光軸上の面間隔が示される。また、Ndの欄には、各光学要素のd線(波長587.6nm(ナノメートル))に対する屈折率が示され、νdの欄には、各光学要素のd線基準のアッベ数が示される。ここで、曲率半径の符号は、面形状が物体側に凸の場合を正とし、像面側に凸の場合を負とする。曲率半径における「INF」は、当該面が平面であることを示す。
【0036】
レンズデータには、開口絞りSも含めて示す。開口絞りSに相当する面の面番号の欄には「STO」という語句を示す。
【0037】
レンズデータにおいて、非球面の面番号には*印を付すとともに、曲率半径の欄には近軸の曲率半径の数値を示す。また、非球面を有するレンズ系の実施例については、非球面の面番号と、各非球面に関する非球面係数、及び、円錐定数を含む非球面データの表を付す。非球面データの表において、非球面係数の数値の「E±n」(n:自然数)は10を底とする指数表現である。すなわち、「E±n」は、「×10
±n」を意味している。例えば、「0.12345E−05」は、「0.12345×10
−5」を意味している。非球面形状は、「zd」をレンズ面の頂点からの光軸方向における距離(サグ量)、「h」を光軸方向に垂直な方向における距離(高さ)、「c」をレンズの頂点における近軸曲率(曲率半径の逆数)、「κ」を円錐定数(コーニック定数)、「Am」をm次の非球面係数とすると、次の式によって定義される。
zd=ch
2/(1+(1−(1+κ)c
2h
2)
1/2)+ΣAm×h
m
なお、Σはmについての和を示す。
【0038】
また、各実施例のレンズ系の諸元データの表を付す。諸元データの表において、「f」は焦点距離を示す。「Fno」はFナンバーを示す。「ω」は半画角(最大半画角)を示す。「Y」は最大像高を示す。「Dex」は無限遠被写体に合焦時の射出瞳距離を示す。
【0039】
レンズデータ、変化する面間隔データ、及びレンズ系の諸元データの表において、角度の単位としては「度」を用い、長さの単位としては「mm」を用いる。しかし、レンズ系は比例拡大又は比例縮小しても使用可能なため、他の任意の単位を用いることもできる。
【0040】
なお、レンズ系が撮像レンズとして撮像装置に搭載される際には、撮像装置の仕様に応じたローパスフィルタ等の各種フィルタ及び保護用のカバーガラス等の光学要素を備えることが好ましい。本実施形態のレンズ系として、係る光学要素を備える形態も備えない形態も採用できる。係る光学要素を備えるレンズ系と光学要素を備えないレンズ系とは等価なレンズ系といえる。
【0041】
「Gi」はレンズ群を示す。「Gi」において文字Gに続くiは、各実施例においてレンズ系が備えるレンズ群を識別することを目的とした自然数である。レンズ群は、1つ以上のレンズを備えて構成される。「Lj」は1つのレンズを示す。「Lj」において文字Lに続くjは、各実施例においてレンズ系が備えるレンズを識別することを目的とした自然数である。各実施例の説明において、記号Ljが割り当てられたレンズと、他の実施例における同じ記号Ljが割り当てられたレンズとが同じレンズであることを意味するものではない。同様に、ある実施例で特定の記号が割り当てられたレンズ又はレンズ群と、他の実施例において同じ記号が割り当てられたレンズ又はレンズ群とが同じレンズ又はレンズ群であることを意味するものではない。
【0042】
図1は、第1実施例におけるレンズ系100のレンズ構成を光学部材P及び像面IMとともに示す。
【0043】
レンズ系100は、物体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、開口絞りSと、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、負の屈折力を有する第4レンズ群G4とからなる。
【0044】
第2レンズ群G2及び第3レンズ群G3が可動群として可動することによりフォーカシングを行う。第2レンズ群G2及び第3レンズ群G3に対応づけられた矢印は、無限遠被写体から近距離被写体に合焦するときの可動群となる第2レンズ群G2及び第3レンズ群G3の移動を表す。
【0045】
第1レンズ群G1は、物体側に凸面を向けた負のメニスカスレンズL1と、両凹形状の負レンズL2及び両凸形状の正レンズL3の正の屈折力の接合レンズとからなる。広角化に必要な負の屈折力を少なくとも2つの負成分のレンズで分担することで、軸外収差を良好に補正している。
【0046】
第2レンズ群G2は、物体側に凸面を向けた負のメニスカスレンズL4及び正レンズL5の正の屈折力の接合レンズからなる。第2レンズ群G2に必要な屈折力を一つのレンズ群で賄い、軸上収差及び軸外収差の補正を良好なバランスで実現できる。
【0047】
第3レンズ群G3は、両凸形状の正レンズL6、両凹形状の負レンズL7及び両凸形状の正レンズL8の3枚張合わせレンズからなる。第3レンズ群G3を3枚張合わせレンズで構成することで、可動時の偏芯誤差感度の軽減を実現できる。
【0048】
第4レンズ群G4は、物体側に凸面を向けた負のメニスカスレンズL9と、物体面に凹面を向けた負のメニスカスレンズL10と、物体側に凹面を向けた正のメニスカスレンズL11とからなる。
【0049】
表1は、レンズ系100のレンズデータを示す。表2は、レンズ系100の非球面データを示す表である。
【0052】
表3は、レンズ系100の無限遠被写体に合焦時の全系の焦点距離f、FナンバーFno、半画角ω、像高Y、及び射出瞳距離Dexを示す諸元データの表である。
【0054】
図2は、無限遠被写体に合焦した状態のレンズ系100の球面収差、非点収差、及び歪曲収差を示す。球面収差において、一点鎖線はC線(656.27nm)、実線はd線(587.56nm)、破線はg線(435.84nm)の値を示す。非点収差において、実線はd線のサジタル像面、破線はd線のメリディオナル像面の値を示す。歪曲収差においてはd線の値を示す。各収差図から、レンズ系100は、諸収差が良好に補正され、優れた結像性能を有していることが明らかである。
【0055】
図3は、第2実施例におけるレンズ系200のレンズ構成を、光学部材P及び像面IMとともに示す。
【0056】
レンズ系200は、物体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、開口絞りSと、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、負の屈折力を有する第4レンズ群G4とからなる。
【0057】
第2レンズ群G2及び第3レンズ群G3が可動群として可動することによりフォーカシングを行う。第2レンズ群G2及び第3レンズ群G3に対応づけられた矢印は、無限遠被写体から近距離被写体に合焦するときの可動群となる第2レンズ群G2及び第3レンズ群G3の移動を表す。
【0058】
第1レンズ群G1は、物体側に凸面を向けた負のメニスカスレンズL1と、物体側に凸面を向けた負のメニスカスレンズL2及び正レンズL3の正の屈折力の接合レンズとからなる。広角化に必要な負の屈折力を少なくとも2つの負成分のレンズで分担することで、軸外収差を良好に補正している。
【0059】
第2レンズ群G2は、物体面に凸面を向けた負のメニスカスレンズL4、両凸形状の正レンズL5、及び物体面に凹面を向けた負のメニスカスレンズL6の3枚張合わせレンズからなる。第2レンズ群G2を3枚張合わせレンズで構成することで、可動時の偏芯誤差感度の軽減を実現できる。
【0060】
第3レンズ群G3は、両凸形状の正レンズL7、両凹形状の負レンズL8、両凸形状の正レンズL9の3枚張合わせレンズからなる。第3レンズ群G3を3枚張合わせレンズで構成することで、可動時の偏芯誤差感度の軽減が実現できる。
【0061】
第4レンズ群G4は、物体側に凸面を向けた負のメニスカスレンズ L10と、物体面に凹面を向けた負のメニスカスレンズL11と、物体側に凹面を向けた正のメニスカスレンズ L12とからなる。
【0062】
表4は、レンズ系200のレンズデータを示す。表5は、レンズ系200の非球面データを示す表である。
【0065】
表6は、レンズ系200の無限遠被写体に合焦時の全系の焦点距離f、FナンバーFno、半画角ω、像高Y、及び射出瞳距離Dexを示す諸元データの表である。
【0067】
図4は、無限遠被写体に合焦した状態のレンズ系200の球面収差、非点収差、及び歪曲収差を示す。球面収差において、一点鎖線はC線(656.27nm)、実線はd線(587.56nm)、破線はg線(435.84nm)の値を示す。非点収差において、実線はd線のサジタル像面、破線はd線のメリディオナル像面の値を示す。歪曲収差においてはd線の値を示す。各収差図から、レンズ系200は、諸収差が良好に補正され、優れた結像性能を有していることが明らかである。
【0068】
図5は、第3実施例におけるレンズ系300のレンズ構成を、光学部材P及び像面IMとともに示す。
【0069】
レンズ系300は、物体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、開口絞りSと、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、負の屈折力を有する第4レンズ群G4とからなる。
【0070】
第2レンズ群G2及び第3レンズ群G3が可動群として可動することによりフォーカシングを行う。第2レンズ群G2及び第3レンズ群G3に対応づけられた矢印は、無限遠被写体から近距離被写体に合焦するときの可動群となる第2レンズ群G2及び第3レンズ群G3の移動を表す。
【0071】
第1レンズ群G1は、物体側に凸面を向けた負のメニスカスレンズ L1と、両凹形状の負レンズL2及び両凸形状の正レンズL3の正の屈折力の接合レンズとからなる。広角化に必要な負の屈折力を少なくとも2つの負成分のレンズで分担することで、軸外収差を良好に補正している。
【0072】
第2レンズ群G2は、物体面に凸面を向けた負のメニスカスレンズL4及び両凸面の正レンズL5の正の屈折力の接合レンズからなる。第2レンズ群G2に必要な屈折力を一つのレンズ群で賄い、軸上収差及び軸外収差の補正を良好なバランスで実現できる。
【0073】
第3レンズ群G3は、両凸形状の正レンズL6及び両凹形状の負レンズL7の張合わせレンズと、両凸形状の正レンズL8とからなる。第1実施例の第3レンズ群の3枚張合わせ構成から1枚のレンズを分離することで、軸外収差を良好に補正し、可動時の偏芯誤差感度の軽減を実現できる。
【0074】
第4レンズ群G4は、物体側に凸面を向けた負のメニスカスレンズL9と、物体面に凹面を向けた負のメニスカスレンズL10と、物体側に凹面を向けた正のメニスカスレンズL11とからなる。
【0075】
表7は、レンズ系300のレンズデータを示す。表8は、レンズ系300の非球面データを示す表である。
【0078】
表9は、レンズ系300の無限遠被写体に合焦時の全系の焦点距離f、FナンバーFno、半画角ω、像高Y、及び射出瞳距離Dexを示す諸元データの表である。
【0080】
図6は、無限遠被写体に合焦した状態のレンズ系300の球面収差、非点収差、及び歪曲収差を示す。球面収差において、一点鎖線はC線(656.27nm)、実線はd線(587.56nm)、破線はg線(435.84nm)の値を示す。非点収差において、実線はd線のサジタル像面、破線はd線のメリディオナル像面の値を示す。歪曲収差においてはd線の値を示す。各収差図から、レンズ系300は、諸収差が良好に補正され、優れた結像性能を有していることが明らかである。
【0081】
表10は、第1実施例から第3実施例のレンズ系における条件式(1)〜(9)の対応値を示す。
【0083】
以上に説明したとおり、上記実施例のレンズ系によれば、大型のイメージサークルを有し、全長が短く、高性能なレンズ系を提供することができる。また、可動レンズ群が軽量であり高速にフォーカシングが可能なレンズ系を提供することができる。上記実施例のレンズ系は、イメージサイズが大きい撮像レンズに適用可能でありながら、小型かつ高い光学性能を持つ。
【0084】
上述したレンズ系が備える構成は任意の組合せが可能であり、要求される仕様に応じて適宜選択的に採用され得る。例えば、上記実施例によるレンズ系は条件式(1)〜(9)、(1−1)、(8−1)及び(9−1)を満足するものとしているが、条件式(1)〜(9)、(1−1)、(8−1)及び(9−1)のいずれか1つを満足するものであってもよく、これらの条件式の任意の組合せを満足するものであってもよい。
【0085】
以上、実施形態及び実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施形態及び実施例に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、各レンズの曲率半径、面間隔、屈折率、及びアッベ数は、上記各実施例で示した値に限定されず、他の値をとり得る。
【0086】
本実施形態に係るレンズ系は、デジタルカメラ、ビデオカメラ等の撮像装置用のレンズ系に適用できる。本実施形態に係るレンズ系は、ズーム機構を有しないレンズ系に適用できる。本実施形態に係るレンズ系は、空撮用カメラ、監視用カメラ等のレンズ系に適用できる。本実施形態に係るレンズ系は、レンズ非交換式の撮像装置が備える撮像レンズに適用できる。本実施形態に係るレンズ系は、一眼レフレックスカメラ等のレンズ交換式カメラの交換レンズに適用できる。
【0087】
なお、例えば上記の特許文献1に記載の撮像レンズにおいて、レンズ系全体を光軸上移動させる方法を適用できる。しかし、フォーカスレンズ群の移動重量が重くなるため、近年主流となっているオートフォーカスのための電気的なフォーカスレンズ駆動が困難になる。またフォーカシングの際に光学全長が変化するので、撮影時の取り扱いに支障が生じる。そのため、無限遠から近距離撮影において高い光学性能を維持するためにフローティングフォーカスを採用している。上記の特許文献2に記載のレンズは、上記の特許文献1の問題の一部を解決しているが、正レンズ群を第1レンズ群としているので、広角化する場合はレンズの小型化や収差補正が難しくなる。また、前玉の重量が増すことにより、撮影時の重量バランスが悪化する。特許文献2のフローティング群の構成は負の屈折力と正の屈折力の群構成であるのに対し、上記実施形態に係るレンズ系は、正の屈折力のレンズ群と正の屈折力のレンズ群とを絞りに対し対称的に配置することで高いレンズ性能を維持することができる。
【0088】
図7は、本実施形態に係るレンズ系を備える撮像装置2000の外観斜視図の一例を示す。
図8は、撮像装置2000の機能ブロックを示す図である。
【0089】
撮像装置2000は、撮像部2100、レンズ部2200を備える。撮像部2100は、イメージセンサ2120、制御部2110、メモリ2130、指示部2162、表示部2160及び通信部2170を有する。
【0090】
イメージセンサ2120は、CCDまたはCMOSにより構成されてよい。イメージセンサ2120は、レンズ部2200が有する撮影レンズ系2210を介して光を受光する。イメージセンサ2120は、撮影レンズ系2210を介して結像された光学像の画像データを制御部2110に出力する。撮影レンズ系2210は、上述した実施形態に係るレンズ系を備える。
【0091】
制御部2110は、CPUまたはMPUなどのマイクロプロセッサ、MCUなどのマイクロコントローラなどにより構成されてよい。メモリ2130は、コンピュータ可読可能な記録媒体でよく、SRAM、DRAM、EPROM、EEPROM、及びUSBメモリなどのフラッシュメモリの少なくとも1つを含んでよい。制御部2110は回路に対応する。メモリ2130は、制御部2110がイメージセンサ2120などを制御するのに必要なプログラム等を格納する。メモリ2130は、撮像装置2000の筐体の内部に設けられてよい。メモリ2130は、撮像装置2000の筐体から取り外し可能に設けられてよい。
【0092】
指示部2162は、撮像装置2000に対する指示をユーザから受け付けるユーザインタフェースである。表示部2160は、イメージセンサ2120により撮像され、制御部2110により処理された画像、撮像装置2000の各種設定情報などを表示する。表示部2160は、タッチパネルで構成されてよい。
【0093】
制御部2110は、レンズ部2200及びイメージセンサ2120を制御する。例えば、制御部2110は、撮影レンズ系2210の焦点の位置や焦点距離を制御する。制御部2110は、ユーザからの指示を示す情報に基づいて、レンズ部2200が備えるレンズ制御部2220に制御命令を出力することにより、レンズ部2200を制御する。
【0094】
レンズ部2200は、撮影レンズ系2210、レンズ駆動部2212、レンズ制御部2220、及びメモリ2222を有する。撮影レンズ系2210が含むレンズのうちの少なくとも一部は、撮影レンズ系2210の光軸に沿って移動可能に配置される。レンズ部2200は、撮像部2100に対して着脱可能に設けられる交換レンズであってよい。
【0095】
レンズ駆動部2212は、撮影レンズ系2210が含むレンズの少なくとも一部のレンズを、撮影レンズ系2210の光軸に沿って移動させる。レンズ制御部2220は、撮像部2100からのレンズ制御命令に従って、レンズ駆動部2212を駆動して、撮影レンズ系2210が含む少なくとも一部のレンズを光軸方向に沿って移動させることで、ズーム動作やフォーカス動作の少なくとも一方を実行する。レンズ制御命令は、例えば、ズーム制御命令、及びフォーカス制御命令等である。
【0096】
レンズ駆動部2212は、複数の撮影レンズ系2210の少なくとも一部または全部を光軸方向に移動させるボイスコイルモータ(VCM)を含んでよい。レンズ駆動部2212は、DCモータ、コアレスモータ、または超音波モータ等の電動機を含んでよい。レンズ駆動部2212は、電動機からの動力をカム環、ガイド軸等の機構部材を介して複数の撮影レンズ系2210の少なくとも一部または全部に伝達して、撮影レンズ系2210が含む少なくとも一部のレンズを光軸に沿って移動させてよい。
【0097】
メモリ2222は、レンズ駆動部2212を介して移動するフォーカスレンズやズームレンズ用の制御値を記憶する。メモリ2222は、SRAM、DRAM、EPROM、EEPROM、及びUSBメモリなどのフラッシュメモリの少なくとも1つを含んでよい。
【0098】
制御部2110は、指示部2162等を通じて取得したユーザの指示を示す情報に基づいて、イメージセンサ2120に制御命令を出力することにより、イメージセンサ2120に撮像動作の制御を含む制御を実行する。制御部2110は、イメージセンサ2120により撮像された画像を取得する。制御部2110は、イメージセンサ2120から取得した画像に画像処理を施してメモリ2130に格納する。
【0099】
通信部2170は、外部との通信を担う。通信部2170は、制御部2110が生成した情報を通信ネットワークを通じて外部に送信する。通信部2170は、通信ネットワークを通じて外部から受信した情報を制御部2110に提供する。
【0100】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0101】
特許請求の範囲、明細書、及び図面中において示した装置、システム、プログラム、及び方法における動作、手順、ステップ、及び段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、及び図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
無限遠物体合焦時の前記第1レンズ群の最も物体側のレンズ面から結像面までの光軸上の距離(バックフォーカスは空気換算長とする)をTL、最大像高をYとして、条件式
2.4 < TL / Y < 3.6
を満足する請求項1から8のいずれか一項に記載のレンズ系。