【解決手段】このレーザー装置は、レーザー光源と、前記レーザー光源から出力された光をコリメートするコリメートレンズと、前記レーザー光源からの光をコリメートする前に拡散する拡散板と、を備える。
請求項1〜5のいずれか一項に記載のレーザー装置と、前記レーザー装置からの光を物体に照射する光学系と、前記物体からの光を検知するセンサーと、を備える、センシング装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本実施形態について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0019】
「レーザー装置」
図1は、第1実施形態にかかるレーザー装置100の模式図である。レーザー装置100は、レーザー光源10と拡散板20とコリメートレンズ30とを有する。レーザー装置100は、少なくともレーザー光源10をカバーするキャップ40を有してもよい。またレーザー装置100は、拡散板20とコリメートレンズ30との間に、図示略の波長板等を有してもよい。
【0020】
まず方向について定義する。拡散板20が広がる面をxy平面とし、xy平面の任意の方向をx方向、x方向と直交する方向をy方向とする。x方向は、第1方向の一例である。y方向は、第2方向の一例である。また拡散板20に対して直交する方向をz方向とする。
【0021】
レーザー光源10は、特に問わない。レーザー光源10は、例えば、半導体レーザー、ビクセル(VCSEL)レーザー、半導体励起固体(DPSS)レーザー等である。レーザー光源10の出力帯域は、用途に合わせて選択でき、例えば、可視域から赤外領域である。可視域から赤外領域の光の波長は、例えば、400nm以上2500nm以下である。
【0022】
コリメートレンズ30は、発散したレーザー光をコリメートするレンズである。コリメートレンズ30は、公知のものを用いることができる。コリメートレンズ30は、後述する拡散板20で拡散した光をコリメートし、レーザー装置100から出力される光の指向性を高める。
【0023】
拡散板20は、レーザー光源10から出射した光の光路において、レーザー光源10とコリメートレンズ30との間にある。拡散板20は、x方向及びy方向に広がる。拡散板20の第1面に光が入射し、第1面に入射した光は第2面から出射する。拡散板20は、レーザー光源10からの光をコリメートする前に拡散する。
【0024】
図2は、第1実施形態に係るレーザー装置100の特徴部分を拡大した断面図である。拡散板20は、例えば、レーザー光源10と一体化されている。レーザー光源10は、例えば、光源10Aと支持体10Bとを有する。支持体10Bは、光を一方向に出射するための湾曲面10cを有する。湾曲面10cの中央部に光源10Aがマウントされている。拡散板20は、支持体10Bに接続されている。支持体10Bと拡散板20とを合わせて、光源10Aを保護するカバー部材(キャップ40)とみなしてもよい。支持体10Bの湾曲面10cと拡散板20との間の空間は、樹脂で封止されていてもよい。拡散板20は、必ずしもレーザー光源10と一体化されている必要はなく、拡散板はレーザー光源10と離間していてもよい。
【0025】
拡散板20は、例えば、フロスト型拡散板、マイクロレンズ型拡散板である。以下、拡散板の一例としてマイクロレンズ型拡散板の場合を例にして説明する。
【0026】
図3は、第1実施形態に係る拡散板20の平面図である。
図4は、第1実施形態に係る拡散板20の断面図である。
図4は、
図3におけるA−A線に沿って拡散板20を切断した断面である。
【0027】
拡散板20は、例えば、z方向からの平面視で、複数のマイクロレンズ21が行列状に配列している。マイクロレンズ21のそれぞれは、例えば、略矩形である。マイクロレンズ21は、略矩形の場合に限られず、円形、楕円形、略六角形、略三角形でもよい。マイクロレンズ21の配列は、六方最密配列でも、ランダム配列でもよい。マイクロレンズ21のサイズは、例えば、100μm程度である。
【0028】
拡散板20においてマイクロレンズ21は、密に存在する。すなわち、マイクロレンズ21の間に非レンズ領域が存在しない。そのため、マイクロレンズ21同士の間は稜線となる。稜線の高さ、方向が不規則であると、拡散板20による回折が抑制される。隣接する稜線は、互いに平行ではないことが好ましい。
【0029】
マイクロレンズ21は、例えば、拡散板20の基準面Rpに対して凹む凹レンズである。マイクロレンズ21は、例えば、基準面Rpに対して突出する凸レンズでもよい。基準面Rpは、xy平面と平行な面であり、第1面20aの最も突出した部分と接する面である。基準面Rpは、例えば、拡散板20のマイクロレンズ21となる凹部を加工する前の基板の表面である。
図4では、マイクロレンズ21が拡散板20の第1面20aのみにある例を示したが、マイクロレンズ21は第1面20aと第2面20bの両面にあってもよい。マイクロレンズ21のそれぞれの曲率半径は、ランダムでもよい。
【0030】
拡散板20は、例えば、入射する波長帯域の光を透過できる材料からなる。拡散板20は、例えば、光学ガラス、水晶、サファイア、樹脂板、樹脂フィルムである。光学ガラスは、例えば、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、白板ガラス等である。樹脂は、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、環状オレフィン・コポリマー(COC)等である。光学ガラス、水晶及びサファイアの無機材料は、耐光性に優れる。また水晶、サファイアは放熱性に優れる。
【0031】
拡散板20による光の拡散は、例えば、所定の範囲内である。拡散板20による光の拡散の程度は、拡散板の拡散角θ
d、レーザー光源10から拡散板20に入射する光の広がり角L
x、L
y、拡散板20から出射する光の広がり角θ
x、θ
yによって規定される。
【0032】
図5は、第1実施形態に係る拡散板の拡散角の定義を説明するための模式図である。拡散板20の拡散角θ
dは、マイクロレンズの曲率半径R、拡散板20の屈折率n、隣接するマイクロレンズ21の平均間隔pに対して以下の関係を満たす。
θ
d=2sin
−1{(p(n−1)/2R)
拡散板20の拡散角θ
dは、平行光を入射した際に、拡散板20から出射される光の広がり角と定義することもできる。
【0033】
図6は、第1実施形態に係るレーザー光源10及び拡散板20からの光の広がり角の定義を説明するための模式図である。
図6に示すように、レーザー光源10から出射した光は拡散板20に広がりながら入射する。
【0034】
レーザー光源10から拡散板20に入射する光の広がり角L
x、L
yは、レーザー光源10から拡散板20に向かう光の広がりの程度である。広がり角L
xは、x方向の指向角半値全幅(FWHM)であり、広がり角L
yは、y方向の指向角半値全幅(FWHM)である。指向角半値全幅は、相対放射強度がピーク値の50%以上である角度である。
【0035】
また拡散板20から出射する光の広がり角θ
x、θ
yは、拡散板20からスクリーンScに向かう光の広がりの程度である。広がり角θ
xは、x方向の指向角半値全幅(FWHM)であり、広がり角θ
yは、y方向の指向角半値全幅(FWHM)である。拡散板20に入射する光が平行光の場合、広がり角θ
x、θ
yは、x方向、y方向のそれぞれの拡散角θ
dと一致する。
【0036】
拡散板20は、例えば、θ
x/L
x<1.55、かつ、θ
y/L
y<1.55を満たす。またθ
x/L
x及びθ
y/L
yの範囲は、好ましくはθ
x/L
x<1.50、かつ、θ
y/L
y<1.50を満たし、より好ましくはθ
x/L
x<1.40、かつ、θ
y/L
y<1.40を満たし、さらに好ましくはθ
x/L
x<1.3、かつ、θ
y/L
y<1.3を満たす。拡散板20は、例えば、0.9<θ
x/L
x、かつ、0.9<θ
y/L
yを満たしてもよく、1.0<θ
x/L
x、かつ、1.0<θ
y/L
yを満たしてもよい。拡散板20がこの条件を満たすと、拡散板20を通過後の光が広がりすぎることを抑制できる。拡散板20を通過後の光が広がりすぎると、コリメートレンズ30に入射する光の入射角の角度範囲が広くなり、コリメートレンズ30による光のコリメートの精度が低下する。
【0037】
また拡散板20は、θ
d/L
xをa、θ
x/L
xをb、θ
d/L
yをc、θ
y/L
yをdとした際に、以下の関係式(1)、(2)を共に満たす。
0.0641×a
2+0.0321×a+0.9<b<0.0641×a
2+0.0321×a+1.09 …(1)
0.0641×c
2+0.0321×c+0.9<d<0.0641×c
2+0.0321×c+1.09 …(2)
拡散板20が上記関係式を満たすと光源10の広がり角と、拡散板20の拡散角とを決めれば、コリメートレンズに入射する光の広がりを容易に見積もることができ、光学系の設計が容易になる。
【0038】
また拡散板20は、例えば、0<θ
d/L
x<2.95、かつ、0<θ
d/L
y<2.95を満たす。またθ
d/L
x及びθ
d/L
yは、好ましくは0<θ
d/L
x<2.83、かつ、0<θ
d/L
y<2.83を満たし、より好ましくは0<θ
d/L
x<2.56、かつ、0<θ
d/L
y<2.56を満たし、さらに好ましくは0<θ
d/L
x<2.27、かつ、0<θ
d/L
y<2.27を満たす。拡散板20がこの条件を満たすと、スペックルノイズをより低減できる。また拡散板20がこの条件を満たすと、市販されているレーザー装置のレーザー光源とコリメートレンズの間に配置するだけで、スペックルノイズを低減でき、汎用性に優れる。
【0039】
拡散板20は、第1面20aと第2面20bとのうち少なくとも一面を被覆する反射防止膜を有してもよい。反射防止膜は、例えば、低屈折率層と高屈折率層とが積層された積層膜である。低屈折率層は、例えばSiO
2、MgF
2、CaF
2である。高屈折率層は、例えば、Nb
2O
5、TiO
2、Ta
2O
5、Al
2O
3、HfO
2、ZrO
2である。SiO
2、Nb
2O
5及びTa
2O
5は、耐光性に優れ、高出力レーザー等によって出射される高い光密度の光が照射されても劣化しにくい。また反射防止膜は、数百nmピッチの微細な凹凸が配列したモスアイ構造でもよい。
【0040】
拡散板20は、レジスト塗布工程、露光・現像工程、エッチング工程を順に行うことで作製できる。
【0041】
レジスト塗布工程では、基板上にレジストを塗布する。基板は、加工後に拡散板20となるものであり、拡散板20と同様の材料である。後述するエッチング工程では、エッチングガスとしてフッ素系エッチングガス(CF
4、SF
6、CHF
3等)を用いる場合がある。基板に含まれるAl
2O
3及びアルカリ金属等は、フッ素系エッチングガスと反応して不揮発性物質となる場合がある。例えば、アルカリ金属は含有しないがAl
2O
3を27%含有するガラス基板(例えば、コーニング社製のイーグルXG)をフッ素系エッチングガスでエッチングすると、エッチングされにくいAl
2O
3が残り、表面に微小突起が発生し、ガラス基板の透過率が低下する。基板は、アルカリ成分の含有量が20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。基板は、例えば、石英ガラス、ホウケイ酸ガラスが好ましい。レジストは、公知のものを適用できる。
【0042】
次いで、露光工程では、グレースケールマスクを介してレジストに光を照射し、レジストを露光する。露光は、例えば、グレースケールマスクを動かしながら繰り返し露光するステップアンドリピート露光を行う。ステッピングの位置精度によっては、1回の露光で形成される基本セルの間に最大で数μm程度の幅の繋ぎ目が生じる場合がある。このような問題を避けるために、基本セル同士が重なるように露光することが好ましい。基本セル同士を大きく重ねる場合は、複数回の露光で所望の露光量となるように調整してもよい。
【0043】
次いで、現像工程では、露光したレジストパターンを現像する。現像によりレジストの一部が除去され、表面にレジストパターンを有するレジストとなる。レジストの表面には、所望のマイクロレンズアレイと同様のレジストパターンが形成される。
【0044】
次いで、エッチング工程では、レジストを介して基板をドライエッチングする。ドライエッチングは、例えば、反応性のガスを用いて行う。ガスは、例えば、上述のフッ素系エッチングガスである。ドライエッチングによりレジストの表面に形成されたマイクロレンズアレイのパターンが、基板に転写される。基板は、第1面20aに複数のマイクロレンズ21が形成された拡散板20となる。拡散板20の両面にマイクロレンズ21を形成する場合は、同様の手順を、第1面20aと反対側の第2面20bに対して行う。
【0045】
第1実施形態にかかるレーザー装置は、コリメートする前の光を先に拡散させることで、スペックルノイズを低減することができる。スペックルノイズは、被照射物(例えばスクリーン)における拡散作用と、コヒーレントなレーザー光との干渉によりランダムな細かい干渉パターンがノイズとして生じたものであり、照射される光がコヒーレント光の場合に特徴的に生じる問題である。
【0046】
第1実施形態にかかる拡散板20は、レーザー光源10とコリメートレンズ30の間に配置されている。そのため、レーザー光源10から出射した光は、拡散板20で一度拡散された光がコリメートレンズ30に入射する。拡散板20を通過することで、レーザー光源10から出射した光のコヒーレンスが低下し、スペックルノイズが低下する。
【0047】
また拡散板20の拡散の程度を所定の範囲にすることで、スペックルノイズの低下及び光の指向性を維持することができる。レーザー光は、その指向性、直進性が特徴の一つであり、レーザー装置100から出力される光にはこれらの特徴が求められる。一方で、指向性、直進性が高い光は、コヒーレンスが高く、スペックルノイズを生じやすい。拡散板の拡散の程度を所定の範囲にすることで、レーザー光の指向性、直進性という特徴を維持しつつ、スペックルノイズを低減することができる。
【0048】
以上、第1実施形態について詳述したが、当該例に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0049】
図7は、第1変形例に係るレーザー装置101の模式図である。レーザー装置101は、レーザー光源11と拡散板20とコリメートレンズ30とを有する。レーザー装置101は、レーザー光源11の構造が、レーザー装置100と異なる。第1変形例においてレーザー装置100と同様の構成については、同様の符号を付し、説明を省く。
【0050】
レーザー光源11は、複数のダイオード11Aを有する。ダイオード11Aは、例えば、x方向及びy方向に配列する。ダイオード11Aのそれぞれは光を出射する。レーザー光源11は、複数のダイオード11Aが集まったダイオード群からの光を出射する。拡散板20は、ダイオード群を覆うカバー部材でもよい。
【0051】
第1変形例に係るレーザー装置101のように光源が複数の場合でも、同様にスペックルノイズを低減できる。またそれぞれのダイオード11Aから出射される光の波長等にばらつきを与えると、よりスペックルノイズを低減できる。
【0052】
また上述のレーザー装置100、101は、投射型画像表示装置、センシング装置に適用できる。
【0053】
図8は、第1適用例に係る投射型画像表示装置200の模式図である。投射型画像表示装置200は、例えば、レーザーテレビ、DLPプロジェクタである。投射型画像表示装置200は、複数のレーザー装置100と光学系Op1とを有する。
【0054】
複数のレーザー装置100はそれぞれ、例えば、赤色Rと緑色Gと青色Bのいずれかを出力する。レーザー装置100のそれぞれは、第1実施形態にかかるレーザー装置である。レーザー装置100から出力された光のs偏波Spとp偏波Ppとを重ねてもよい。
【0055】
光学系Op1は、例えば、ダイクロイックミラーDMと、拡散板Dと、回転拡散板DRと、インテグレートレンズILと、複数のレンズLと、デジタルマイクロデバイスDLDと、プリズムTIRと、を有する。レーザー装置100から出力された光は、ダイクロイックミラーDM及び拡散板Dで重ねられ、インテグレートレンズIL及び複数のレンズLで集光する。集光された光は、プリズムTIRを介してデジタルマイクロデバイスDLDに至る。デジタルマイクロデバイスDLDは、光のON、OFFを制御し、プリズムTIRと介して外部に光を出力する。
【0056】
第1適用例に係る投射型画像表示装置200は、レーザー装置100から出力される光のコヒーレンスが抑えられており、スペックルノイズが生じにくい。
【0057】
図9は、第2適用例に係る投射型画像表示装置201の模式図である。投射型画像表示装置201は、例えば、LCOSプロジェクタである。投射型画像表示装置201は、複数のレーザー装置100と光学系Op2とを有する。第2適用例は、デジタルマイクロデバイスDLDが反射型液晶LCDと置き換わっている点が異なる。第1適用例と同様の構成については、説明を省く。
【0058】
第2適用例に係る投射型画像表示装置201は、レーザー装置100から出力される光のコヒーレンスが抑えられており、スペックルノイズが生じにくい。
【0059】
図10は、第3適用例に係る投射型画像表示装置202の模式図である。投射型画像表示装置202は、例えば、ヘッドアップディスプレイである。投射型画像表示装置202は、複数のレーザー装置100と光学系Op3とを有する。光学系Op3は、ダイクロイックミラーDMとメムスミラーMEMSとを有する。メムスミラーMEMSは、微小な電気機械システムであり、複数のレーザー装置100のそれぞれからの光を制御する。
【0060】
第3適用例に係る投射型画像表示装置202は、レーザー装置100から出力される光のコヒーレンスが抑えられており、スペックルノイズが生じにくい。
【0061】
図11は、第4適用例に係るセンシング装置203の模式図である。センシング装置203は、例えば、車載用のTime of Flight (TOF)方式のセンサーである。センシング装置203は、例えば、物体Obとの距離を測定する。
【0062】
センシング装置203は、レーザー装置100と光学系Op4とセンサーSEとを有する。レーザー装置100は、例えば、赤外光を出射する。光学系Op4は、例えば、偏光ビームスプリッタPBSとメムスミラーMEMSとを有する。
【0063】
レーザー装置100から出射した光は、偏光ビームスプリッタPBSを透過し、メムスミラーMEMSで反射し、物体Obに照射される。物体Obで反射した光は、再度メムスミラーMEMSで反射し、偏光ビームスプリッタPBSを介してセンサーSEに入射する。センサーSEは、入射した光の情報から物体Obの3次元情報を検知する。
【0064】
第4適用例に係るセンシング装置203は、レーザー装置100から出力される光のコヒーレンスが抑えられており、スペックルノイズが生じにくい。波長が長い赤外光はスペックルノイズを生み出しやすいが、レーザー装置100を用いることで、スペックルノイズを低減できる。
【0065】
図12は、第5適用例に係るセンシング装置204の模式図である。センシング装置204は、例えば、イメージセンサーである。センシング装置204は、例えば、携帯の顔認識機能等に用いられる。
【0066】
センシング装置204は、レーザー装置100と光学系Op5とセンサーSEとを有する。レーザー装置100は、例えば、赤外光を出射する。光学系Op5は、例えば、回折光学素子DOEを有する。レーザー装置100から出射した光は、回折光学素子DOEで回折し、物体にObに照射される。物体Obで反射した光は、センサーSEに入射する。センサーSEは、入射した光の情報から物体Obの3次元情報を検知する。
【0067】
第5適用例に係るセンシング装置204は、レーザー装置100から出力される光のコヒーレンスが抑えられており、スペックルノイズが生じにくい。波長が長い赤外光はスペックルノイズを生み出しやすいが、レーザー装置100を用いることで、スペックルノイズを低減できる。
【0068】
ここで提示した適用例は、レーザー装置の用途の一例であり、これらの例に限られるわけではない。またレーザー装置100に変えて、レーザー装置101を用いてもよい。
【実施例】
【0069】
「実施例1」
図13は、実施例1〜8及び比較例1の評価に用いた光学系の模式図である。実施例1の光学系は、レーザー光源10と拡散板20とスクリーンScと測定機Mからなる。
【0070】
レーザー光源10は、波長532nmのコヒーレント光源を用いた。レーザー光源10から出射される光の広がり角L
x、L
yは共に12°とした。
【0071】
拡散板20は、レーザー光源10の出射面から85mm離した位置に、レーザー光源10からの光線の光軸と拡散板20が直交するように配置した。拡散板の拡散角は、1.0°とした。
【0072】
スクリーンScは、拡散板20から155mm離れた位置に設置した。スクリーンScと拡散板20とは略平行に配置した。スクリーンScは、標準反射散乱板(スペクトラロン)を用いた。
【0073】
測定機Mは、光軸から30°傾いた方向で、スクリーンScからの反射光を読み取れる位置に、スクリーンScと360mm離して配置した。測定機Mは、スペックルコントラスト測定機(株式会社オキサイド製)を用いた。
【0074】
そして測定機Mで測定されるスペックルコントラストCsを求めた。スペックルコントラストCsは、人の網膜で発生するスペックルノイズを正確に反映し、明るい部分と暗い部分の標準偏差から求められる。スペックルコントラストCsが大きいほど、スペックルノイズは大きい。
【0075】
実施例1では、上記の方法でスペックルコントラストCsを測定したところ0.32であった。
【0076】
「実施例2〜8」
実施例2〜8は、拡散板20の拡散角を変えた点が実施例1と異なる。その他の条件は同じとして、スペックルコントラストCsを測定した。
【0077】
「比較例1」
比較例1は、拡散板20を用いなかった点が実施例1と異なる。その他の条件は同じとして、スペックルコントラストCsを測定した。
【0078】
実施例1〜8及び比較例1の結果を表1及び
図14にまとめた。
【0079】
【表1】
【0080】
実施例1〜8及び比較例1の結果を比較すると、レーザー光源10から出射した光を拡散板20で拡散することで、スペックルノイズが低減していることが分かる。
【0081】
「実施例9」
実施例9は、
図6に示す光学系を組み立てて、シミュレーションによりレーザー光源10の広がり角L
x、L
y、拡散板20の拡散角θ
d、拡散板20から出射する光の広がり角θ
x、θ
yの関係を求めた。シミュレーションは、Zemax社のOpticStudioを用いて行った。
【0082】
レーザー光源10は、波長635nmのコヒーレント光源を用いた。レーザー光源10から出射される光のx方向の広がり角L
xを3.55°、y方向の広がり角を32.61°とした。
【0083】
拡散板20は、レーザー光源10の出射面から30mm離した位置に、レーザー光源10からの光線の光軸と拡散板20が直交するように配置した。拡散板の屈折率は、1.47とした。拡散板の拡散角は、0.97とした。
【0084】
スクリーンScは、拡散板20から50mm離れた位置に設置した。スクリーンScと拡散板20とは略平行に配置した。スクリーンScに照射される光の相対放射強度がピーク値の50%以上である角度から拡散板20から出射される光の広がり角θ
x、θ
yを求めた。
【0085】
「実施例10〜17」
実施例10〜17は、レーザー光源10の広がり角L
x、L
yを固定して、拡散板20の拡散角θ
dを変えた。その他の条件は、実施例9と同じとして、拡散板20から出射される光の広がり角θ
x、θ
yを求めた。
【0086】
「比較例2」
比較例2は、拡散板20を配置しなかった点が実施例1と異なる。すなわち、拡散角θ
dを0°に設定した。その他の条件は、実施例9と同じとして、拡散板20から出射される光の広がり角θ
x、θ
yを求めた。
【0087】
実施例9〜17及び比較例2の結果を表2及び表3にまとめた。
【0088】
【表2】
【0089】
【表3】
【0090】
「実施例18〜27、比較例3」
実施例18〜27は、レーザー光源10の広がり角L
x、L
yを変えた点が実施例9〜17と異なる。実施例18〜27は、レーザー光源10から出射される光のx方向の広がり角L
xを7.9°、y方向の広がり角を32.85°とした。また実施例18〜27はそれぞれ、拡散板20の拡散角θ
dが異なる。比較例3は、拡散板20を配置せず、拡散角θ
dを0°とした。その他の条件は、実施例9と同じとして、拡散板20から出射される光の広がり角θ
x、θ
yを求めた。
【0091】
実施例18〜27及び比較例3の結果を表4及び表5にまとめた。
【0092】
【表4】
【0093】
【表5】
【0094】
「実施例28〜36、比較例4」
実施例28〜36は、レーザー光源10の広がり角L
x、L
yを変えた点が実施例9〜17と異なる。実施例28〜36は、レーザー光源10から出射される光のx方向の広がり角L
xを11.65°、y方向の広がり角を32.17°とした。また実施例28〜36はそれぞれ、拡散板20の拡散角θ
dが異なる。比較例4は、拡散板20を配置せず、拡散角θ
dを0°とした。その他の条件は、実施例9と同じとして、拡散板20から出射される光の広がり角θ
x、θ
yを求めた。
【0095】
実施例28〜36及び比較例4の結果を表6及び表7にまとめた。
【0096】
【表6】
【0097】
【表7】
【0098】
また実施例9〜36の結果を
図15にプロットした。その結果、上記の関係式(1)、(2)の間にすべての実施例の結果が当てはまった。