【実施例】
【0076】
次いで、保護素子1の実施例について説明する。本実施例では、
図1に示す保護素子1(実施例)と、
図27に示す保護素子(比較例)を用意し、それぞれ50V、100V、200Vの電圧を印加した際のスパークの有無を判定した。また、低電力(43W)及び高電力(180W)を印加した際のヒューズエレメントの溶断時間のばらつき(標準偏差σ)を求め(サンプル数50)、対比した。
【0077】
実施例に係る保護素子の寸法を
図7に示し、比較例に係る保護素子の寸法を
図8に示す。
図7及び
図8に示す各サイズの数値は絶縁基板の長さを1とした際の割合を示す相対値である。
【0078】
[実施例]
実施例に係る保護素子のサイズは以下の通りである。
絶縁基板:1×0.65
中間電極:0.65×0.21
発熱体給電電極と中間電極との距離:0.026
第2の引出電極と中間電極との重畳幅:0.04
第1の引出電極と第2の引出電極の間の発熱体幅:0.12
【0079】
[比較例]
比較例に係る保護素子のサイズは以下の通りである。
絶縁基板:1×0.65
中間電極:0.65×0.21
発熱体給電電極と中間電極との距離:0.026
【0080】
【表1】
【0081】
発熱体給電電極と中間電極との距離は、実施例及び比較例とも0.026である。表1に示すように、実施例では、50V、100V、200Vのいずれの電圧を印加した場合もスパークの発生がなかった。一方、比較例では、50Vの電圧を印加した場合にはスパークが発生しなかったが、100V及び200Vの電圧を印加した場合にはスパークが発生した。
【0082】
これより、
図1に示す保護素子1のごとく、高電圧が印加される発熱体給電電極5から第1の引出電極6を引き出すと共に、平面視において、中間電極8が第1の引出電極6と重畳せず、且つ第2の引出電極10と重畳することにより、中間電極8が第1の引出電極6から離間された位置に形成することができる。したがって、保護素子1は、高電位部となる第1の引出電極6と低電位部となる中間電極8との間の放電経路が形成されにくくなり、高電力を印加した場合にスパークの発生を防止する上で効果を発揮する構成であることが分かる。
【0083】
【表2】
【0084】
表2に示すように、実施例に係る保護素子を43Wで動作させた場合、溶断時間(秒)の最大値が12.34秒、最小値が8.84秒、サンプル数50の平均値が10.37秒であり、標準偏差σ=0.74であった。一方、比較例に係る保護素子を43Wで動作させた場合、溶断時間(秒)の最大値が25.31秒、最小値が11.21秒、サンプル数50の平均値が17.36秒であり、標準偏差σ=1.59であった。
【0085】
【表3】
【0086】
表3に示すように、実施例に係る保護素子を180Wで動作させた場合、溶断時間(秒)の最大値が1.29秒、最小値が1.07秒、サンプル数50の平均値が1.18秒であり、標準偏差σ=0.045であった。一方、比較例に係る保護素子を180Wで動作させた場合、溶断時間(秒)の最大値が1.71秒、最小値が1.18秒、サンプル数50の平均値が1.35秒であり、標準偏差σ=0.079であった。
【0087】
表2及び表3に示すように、
図1に示す保護素子1のごとく、中間電極8が第2の引出電極10と重畳することにより、第2の引出電極10及び絶縁層7を介して中間電極8と発熱体4とが熱的に接続されることとなり、効率よく中間電極8及びこれに搭載されたヒューズエレメント3を加熱し、速やかにヒューズエレメント3を溶断できるとともに、低電力下においても製品ごとの溶断時間のばらつきを抑制できることが分かる。一方、比較例に係る保護素子では、溶断時間も長く、ばらつきも大きくなった。
【0088】
[第2の実施の形態]
次いで、本技術が適用された保護素子の第2の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、上述した保護素子1と同一の構成については同一の符号を付してその詳細を省略することがある。第2の実施の形態に係る保護素子30は、
図9(A)〜(C)に示すように、絶縁基板2と、絶縁基板2の表面2a側に設けられたヒューズエレメント3と、絶縁基板2に形成され、発熱によりヒューズエレメント3を溶断する複数の発熱体4と、各発熱体4への給電端子となる発熱体給電電極5と、発熱体給電電極5から引き出され、各発熱体4の一端部4aと接続された複数の第1の引出電極6と、発熱体4を被覆する絶縁層7と、絶縁層7上に形成され、ヒューズエレメント3が搭載された中間電極8と、絶縁基板2の表面2a側の、各発熱体4及び中間電極8との間に形成され、各発熱体4及び中間電極8を接続する発熱体接続電極9と、発熱体接続電極9から引き出され、各発熱体4の他端部4bと接続された第2の引出電極10を有する。
【0089】
そして、保護素子30は、複数の発熱体4が絶縁基板2の表面2a上に離間して並列して設けられている。各発熱体4は、一端部4aが第1の引出電極6を介して発熱体給電電極5と接続され、他端部4bが第2の引出電極10を介して発熱体接続電極9と接続されている。発熱体接続電極9は中間電極8と接続されている。各発熱体4は、発熱体給電電極5を介して通電されると、発熱体給電電極5及び第1の引出電極6側が高電位部とされ、第2の引出電極10、発熱体接続電極9及び中間電極8側が低電位部とされる。そして、保護素子30は、平面視において、中間電極8が各第1の引出電極6と重畳せず且つ各第2の引出電極10と重畳する。
【0090】
これにより、保護素子30は、中間電極8が各第1の引出電極6から離間された位置に形成され、高電位部となる第1の引出電極6と低電位部となる中間電極8との間の放電経路が形成されにくくなり、高電圧が印加された場合でもスパーク(放電)が発生しにくく安全かつ速やかに電流経路を遮断できる。
【0091】
また、保護素子30は、中間電極8が各第2の引出電極10と重畳することにより、絶縁層7を介して中間電極8と第2の引出電極10とが熱的に接続されることとなり、効率よく中間電極8及びこれに搭載されたヒューズエレメント3を加熱することができる。したがって、各発熱体4に通電後、速やかにヒューズエレメント3を溶断することができる。
【0092】
図10は、保護素子30の回路図である。保護素子30は、複数の発熱体4の各一端が絶縁基板2に形成された発熱体給電電極5を介して発熱体4を発熱させるための電源に接続され、各発熱体4の他端が中間電極8を介してヒューズエレメント3と接続されている。
【0093】
[保持電極]
また、保護素子30は、
図11に示すように、絶縁基板2の裏面2bに、ヒューズエレメント3の溶融導体3aを保持する保持電極32を形成し、中間電極8と保持電極32とを、絶縁基板2を貫通する貫通孔33を介して連続させ、溶融したヒューズエレメント3の溶融導体3aを、貫通孔33を介して保持電極32側に吸引するようにしてもよい。
【0094】
貫通孔33は、ヒューズエレメント3が溶融すると、毛管現象によってこの溶融導体3aを吸引し、中間電極8上で保持する溶融導体3aの体積を減少させることができる。これにより、
図12(A)(B)に示すように、保護素子の高定格化、高容量化に伴いヒューズエレメント3が大型化することにより溶融量が増大した場合にも、大量の溶融導体3aを保持電極32、中間電極8及び第1、第2の電極11,12によって保持することができ、ヒューズエレメント3を確実に溶断することができる。
【0095】
保持電極32は、中間電極8と同様に、AgやCuあるいはAgやCuを主成分とする合金材料等の公知の電極材料を用いて印刷等の公知の方法により形成することができる。
【0096】
貫通孔33は、内面に導電層34が形成されている。導電層34が形成されることにより、貫通孔33は、溶融導体3aを吸引しやすくすることができる。導電層34は、例えば銅、銀、金、鉄、ニッケル、パラジウム、鉛、錫のいずれか、又はいずれかを主成分とする合金によって形成され、貫通孔33の内面を電解メッキや導電ペーストの印刷等の公知の方法により形成することができる。また、導電層34は、複数の金属線や、導電性を有するリボンの集合体を貫通孔33内に挿入することにより形成してもよい。
【0097】
貫通孔33の導電層34は、絶縁基板2の表面2aに形成された中間電極8と連続されている。中間電極8は、ヒューズエレメント3を支持するとともに溶断時には溶融導体3aが凝集するため、中間電極8と導電層34とが連続することにより、溶融導体3aを貫通孔33内に導きやすくすることができる。
【0098】
また、貫通孔33の導電層34は、絶縁基板2の裏面2bに形成された保持電極32と連続されている。これにより、ヒューズエレメント3が溶融すると、貫通孔33を介して吸引された溶融導体3aを保持電極32に凝集させることができ(
図12参照)、より多くの溶融導体3aを吸引し、中間電極8及び第1、第2の電極11,12によって保持されるヒューズエレメント3の溶断部位における溶融導体3aの体積を減少させることができる。
【0099】
なお、保護素子30は、貫通孔33を複数形成することにより、ヒューズエレメント3の溶融導体3aを吸引する経路を増やし、より多くの溶融導体3aを吸引することで、溶断部位における溶融導体3aの体積を減少させるようにしてもよい。
【0100】
また、保護素子30は、発熱体4を貫通孔33の両側に形成することが、保持電極32及び中間電極8を加熱し、またより多くの溶融導体3aを凝集、吸引するうえで好ましい。
【0101】
[第3の実施の形態]
次いで、本技術が適用された保護素子の第3の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、上述した保護素子1,30と同一の構成については同一の符号を付してその詳細を省略することがある。第3の実施の形態に係る保護素子40は、
図13に示すように、平面視において、第1の引出電極6、発熱体4、第2の引出電極10、中間電極8の順に配置されている。そして、保護素子40は、第2の引出電極10と中間電極8は、平面視において重畳されていない。
【0102】
保護素子40では、中間電極8が第2の引出電極10と重畳しないため、保護素子1に比して、中間電極8と第2の引出電極10との熱的な接続が弱い。そのため、保護素子40は、保護素子1に比して、ヒューズエレメント3の速溶断性には劣ることがある。
【0103】
しかし、保護素子40は、中間電極8を発熱体4の発熱電流が通電する第1の引出電極6、発熱体8、及び第2の引出電極10と重畳させず、且つ保護素子1に比して、中間電極8が第1の引出電極6からさらに離間された位置に形成される。これにより、高電位部となる第1の引出電極6と低電位部となる中間電極8との間の放電経路がより形成されにくくなり、スパークの発生を防止することができる。したがって、絶縁層7や中間電極8が破損することなく、ヒューズエレメント3への熱伝導率を維持し、ヒューズエレメント3を速やかに溶断させることができ、安全に電流経路を遮断することができる。
【0104】
なお、保護素子40においても、保護素子30と同様に、複数の発熱体4及び複数の第1、第2の引出電極6,10を形成してもよい。この場合も、中間電極8は、各第2の引出電極10と重畳せず、且つ各第1の引出電極6から、より離間した位置に配置されるため、高電圧が印加された場合にもスパークの発生を防止することが出来る。
【0105】
[第4の実施の形態]
次いで、本技術が適用された保護素子の第4の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、上述した保護素子1,30,40と同一の構成については同一の符号を付してその詳細を省略することがある。第4の実施の形態に係る保護素子50は、
図14(A)〜(C)、
図15及び
図16(A)(B)に示すように、絶縁基板2の表面2aと反対側の裏面2bに、発熱体4、発熱体給電電極5、第1の引出電極6、発熱体接続電極9、第2の引出電極10及びこれらを被覆する絶縁層7が形成されている。また、保護素子50は、絶縁基板2の表面2aに、ヒューズエレメント3が搭載される中間電極8と、中間電極8と発熱体接続電極9とを接続する第1の接続電極51と、発熱体給電電極5とキャスタレーションを介して接続された第2の接続電極52と、第1の電極11と、第2の電極12が形成されている。
【0106】
第1の接続電極51及び第2の接続電極52は、上述した発熱体給電電極5や発熱体接続電極9と同様の材料、同様の工程によって形成することができる。
【0107】
発熱体接続電極9と第1の接続電極51とは、絶縁基板2を貫通する貫通孔53によって連続されている。貫通孔53は、内部に導電層が形成された導電スルーホールであり、貫通孔53を介して発熱体接続電極9と第1の接続電極51とが電気的、熱的に接続される。すなわち、保護素子50は、発熱体4が絶縁基板2を介して中間電極8を加熱するとともに、熱伝導性に優れる発熱体接続電極9、貫通孔53及び第1の接続電極51を介して発熱体4の熱が中間電極8に伝わり、ヒューズエレメント3を加熱、溶断することができる(
図16)。
【0108】
第2の接続電極52は、絶縁性の規制壁54が形成されている。規制壁54は、発熱体給電電極5を外部回路基板に接続する接続ハンダのフィレットが第2の接続電極52上に濡れひろがってきた際に、中間電極8やヒューズエレメント3に接触することを防止するためのものである。規制壁54は、例えばガラスペーストを第2の接続電極52上に塗布することにより形成することができる。
【0109】
保護素子50は、中間電極8が絶縁基板2を介して第2の引出電極10と重畳する。これにより、絶縁基板2を介して中間電極8と第2の引出電極10とが熱的に接続されることとなり、中間電極8及びこれに搭載されたヒューズエレメント3の加熱を補助することができる。
【0110】
また、保護素子50は、中間電極8が絶縁基板2を介して第1の引出電極6と重畳する。これにより、絶縁基板2を介して中間電極8と第1の引出電極6とが熱的に接続されることとなり、中間電極8及びこれに搭載されたヒューズエレメント3の加熱を補助することができる。なお、保護素子50は、中間電極8を、絶縁基板2を介して第1の引出電極6と重畳しない位置に形成してもよい。これにより、高電位部となる第1の引出電極6と低電位部となる中間電極8との間の放電経路がより形成されにくくなり、スパークの発生を防止することができる。
【0111】
[第5の実施の形態]
次いで、本技術が適用された保護素子の第5の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、上述した保護素子1,30,40,50と同一の構成については同一の符号を付してその詳細を省略することがある。第5の実施の形態に係る保護素子60は、保護素子50に対して、絶縁基板2の裏面2bに、発熱体4、第1の引出電極6及び第2の引出電極10、絶縁層7がそれぞれ複数形成されている点で相違する。
【0112】
図17(A)〜(C)、
図18及び
図19(A)(B)に示すように、保護素子60は、複数の発熱体4が絶縁基板2の裏面2b上に離間して並列して設けられている。各発熱体4は、一端部4aが第1の引出電極6を介して発熱体給電電極5と接続され、他端部4bが第2の引出電極10を介して発熱体接続電極9と接続されている。これら各発熱体4、各第1の引出電極6、各第2の引出電極10は、絶縁層7によって被覆されている。
【0113】
[保持電極]
また、保護素子60は、保護素子30と同様に、絶縁基板2の裏面2bに、ヒューズエレメント3の溶融導体3aを保持する保持電極32を形成し、表面2aに形成された中間電極8と保持電極32とを、絶縁基板2を貫通する貫通孔33を介して連続させ、溶融したヒューズエレメント3の溶融導体3aを、貫通孔33を介して保持電極32側に吸引させる。これにより、保護素子の高定格化、高容量化に伴いヒューズエレメント3が大型化することにより溶融量が増大した場合にも、大量の溶融導体3aを保持電極32、中間電極8及び第1、第2の電極11,12によって保持することができ、ヒューズエレメント3を確実に溶断することができる。
【0114】
保持電極32は、絶縁基板2の裏面2bに設けられた絶縁層7に重畳して形成される。また、保持電極32は、中間電極8と同様に、AgやCuあるいはAgやCuを主成分とする合金材料等の公知の電極材料を用いて印刷等の公知の方法により形成することができる。
【0115】
貫通孔33は、中間電極8、絶縁基板2、絶縁層7及び保持電極32を貫通する。また、貫通孔33は、内面に導電層34が形成されている。導電層34は、中間電極8及び保持電極32と連続されている。これにより、中間電極8に凝集した溶融導体3aを貫通孔33内に導きやすくするとともに、貫通孔33を介して吸引された溶融導体3aを保持電極32に凝集させることができ、より多くの溶融導体3aを吸引し、中間電極8及び第1、第2の電極11,12によって保持されるヒューズエレメント3の溶断部位における溶融導体3aの体積を減少させることができる。
【0116】
また、保護素子60では、保持電極32の貫通孔33内に形成された導電層34が中間電極8と接続されることにより、発熱体給電電極5から保持電極32及びヒューズエレメント3を経て第1の電極11に至る発熱体4への給電経路が構成される。また、保護素子60は、保持電極32の貫通孔33内に形成された導電層34が中間電極8と接続されることにより、発熱体4の熱が導電層34及び中間電極8を経てヒューズエレメント3へ伝達される熱経路が構成される。
【0117】
なお、保護素子60においても、貫通孔33を複数形成することにより、ヒューズエレメント3の溶融導体3aを吸引する経路を増やし、より多くの溶融導体3aを吸引することで、溶断部位における溶融導体3aの体積を減少させるようにしてもよい。
【0118】
各発熱体4は、発熱体給電電極5を介して通電されると、発熱体給電電極5及び第1の引出電極6側が高電位部とされ、第2の引出電極10、発熱体接続電極9及び中間電極8側が低電位部とされる。そして、保護素子60は、平面視において、中間電極8が各第1の引出電極6と重畳せず且つ各第2の引出電極10と重畳する。
【0119】
これにより、保護素子60は、平面視において中間電極8が各第1の引出電極6から離間された位置に形成され、高電位部となる第1の引出電極6と低電位部となる中間電極8との間の放電経路が形成されにくくなり、高電圧が印加された場合でもスパーク(放電)が発生しにくく安全かつ速やかに電流経路を遮断できる。
【0120】
また、保護素子60は、中間電極8が各第2の引出電極10と重畳することにより、絶縁基板2を介して中間電極8と第2の引出電極10とが熱的に接続されることとなり、効率よく中間電極8及びこれに搭載されたヒューズエレメント3を加熱することができる。したがって、各発熱体4に通電後、速やかにヒューズエレメント3を溶断することができる。
【0121】
なお、保護素子60は、発熱体4の通電方向下流側に位置する保持電極32も、第2の引出電極10と重畳し、第1の引出電極6と重畳させないことにより、高電位の第1の引出電極6と離間した位置に形成されることから、高電圧が印加された場合でもスパーク(放電)が発生しにくくなり、スパークによる破損を防止することができる。
【0122】
また、保護素子60は、発熱体4を貫通孔33の両側に形成することが、保持電極32及び中間電極8を加熱し、またより多くの溶融導体3aを凝集、吸引するうえで好ましい。
【0123】
[第6の実施の形態]
次いで、本技術が適用された保護素子の第6の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、上述した保護素子1,30,40,50,60と同一の構成については同一の符号を付してその詳細を省略することがある。
図20(A)(B)に示すように、第6の実施の形態に係る保護素子70は、絶縁基板2の表面2aに発熱体4及び中間電極8を形成し、絶縁基板2の裏面2bに保持電極32を形成することにより、絶縁基板2が中間電極8から貫通孔33を介してヒューズエレメント3の溶融導体3aを保持電極32側に吸引、保持させる溶断部材71を構成し、ヒューズエレメント3がこの溶断部材71に挟持されているものである。
【0124】
溶断部材71の絶縁基板2は、表面2aに、複数の発熱体4と、各発熱体4への給電端子となる発熱体給電電極5と、発熱体給電電極5から引き出され、各発熱体4の一端部4aと接続された複数の第1の引出電極6と、発熱体4を被覆する絶縁層7と、絶縁層7上に形成され、ヒューズエレメント3に接続される中間電極8と、絶縁基板2の表面2a側の、各発熱体4及び中間電極8との間に形成され、各発熱体4及び中間電極8を接続する発熱体接続電極9と、発熱体接続電極9から引き出され、各発熱体4の他端部4bと接続された第2の引出電極10が形成されている。これら各電極5,6,8,9,10、発熱体4及び絶縁層7の構成や効果は上述した保護素子30と同様であるため、詳細は省略する。
【0125】
また、溶断部材71の絶縁基板2は、裏面2bに、ヒューズエレメント3の溶融導体3aを保持する保持電極32が形成され、中間電極8と保持電極32とが、絶縁基板2を貫通し内面に導電層34が形成された貫通孔33を介して連続されている。これにより、絶縁基板2は、溶融したヒューズエレメント3の溶融導体3aを、貫通孔33を介して中間電極8から保持電極32側に吸引する。これら保持電極32、貫通孔33及び導電層34の構成や効果は上述した保護素子30と同様であるため、詳細は省略する。
【0126】
ここで、溶断部材71の絶縁基板2は、表面2aに、中間電極8とともに、ヒューズエレメント3に接続されるとともに、溶融導体3aを保持する補助電極73を設けてもよい。また、ヒューズエレメント3は、絶縁基板2とは別に設けられ、外部回路と接続された第1、第2の外部端子74,75と接続ハンダ14等の接合材料を介して接続されている。すなわち、第1、第2の外部端子74,75は、ヒューズエレメント3を介して電気的に導通されている。また、各溶断部材71の発熱体給電電極5も、同様に絶縁基板2とは別に設けられ、外部回路と接続された第3の外部端子76と接続されている。
【0127】
なお、保護素子70は、溶断部材71、ヒューズエレメント3、及び第1〜第3の外部端子74〜76が絶縁性のケース77に収納される。ケース77は、ヒューズエレメント3の下側に接続される溶断部材71及び第1〜第3の外部端子74〜76が配置される下ケース77aと、下ケース77a上を覆うカバー77bとを有する。下ケース77aには、配置された溶断部材71の保持電極32が溶融導体3aを保持するために十分な大きさを有する収納凹部78が形成されている。また、カバー77bは、ヒューズエレメント3の上側に接続される溶断部材71を収納するとともに、この溶断部材71の保持電極32が溶融導体3aを保持するために十分な内部空間を有する。
【0128】
第1、第2の外部端子74,75は、一端がケース77内においてヒューズエレメント3と接続され、他端がケース77外へ導出され、外部回路と接続される。また、第3の外部端子76は、一端がケース77内において各溶断部材71の発熱体給電電極5と接続され、他端がケース77外へ導出され、外部回路と接続される。
【0129】
そして、保護素子70は、
図20に示すように、ヒューズエレメント3が複数の溶断部材71に挟持されている。
図20に示す保護素子70は、溶断部材71が、ヒューズエレメント3の一方の面及び他方の面にそれぞれ配設されている。
図21は、保護素子70の回路図である。ヒューズエレメント3の表面及び裏面に配設された各溶断部材71は、それぞれ発熱体4の一端が各絶縁基板2に形成された第1の引出電極6、発熱体給電電極5及び第3の外部端子76を介して発熱体4を発熱させるための電源に接続され、発熱体4の他端が各絶縁基板2に形成された第2の引出電極10、発熱体接続電極9及び中間電極8を介してヒューズエレメント3と接続されている。
【0130】
図22に示すように、保護素子70は、発熱体4の発熱によりヒューズエレメント3を溶断する際には、ヒューズエレメント3の両面に接続された各溶断部材71,71の発熱体4が発熱し、ヒューズエレメント3の両面から加熱する。したがって、保護素子70は、大電流用途に対応するためにヒューズエレメント3の断面積を増大させた場合にも、速やかにヒューズエレメント3を加熱し、溶断することができる。
【0131】
また、保護素子70は、ヒューズエレメント3の両面から溶融導体3aを、各溶断部材71の絶縁基板2に形成した各貫通孔33内に吸引するとともに保持電極32に凝集させる。したがって、保護素子70は、大電流用途に対応するためにヒューズエレメント3の断面積を増大させ、中間電極8による溶融導体3aの保持容量を超える溶融導体3aが発生した場合にも、中間電極8に加え、貫通孔33及び保持電極32で溶融導体3aを保持することにより、また、複数の溶断部材71によって溶融導体3aを吸引することにより、確実にヒューズエレメント3を溶断させることができる。また、保護素子70は、複数の溶断部材71によって溶融導体3aを吸引することにより、より速やかにヒューズエレメント3を溶断させることができる。
【0132】
保護素子70は、ヒューズエレメント3として、内層を構成する低融点金属を高融点金属で被覆する被覆構造を用いた場合にも、ヒューズエレメント3を速やかに溶断させることができる。すなわち、高融点金属で被覆されたヒューズエレメント3は、発熱体4が発熱した場合にも、外層の高融点金属が溶融する温度まで加熱するのに時間を要する。ここで、保護素子70は、複数の溶断部材71を備え、同時に各発熱体4を発熱させることで、外層の高融点金属を速やかに溶融温度まで加熱することができる。したがって、保護素子70によれば、外層を構成する高融点金属層の厚みを厚くすることができ、さらなる高定格化を図りつつ、速溶断特性を維持することができる。
【0133】
また、保護素子70は、
図20に示すように、一対の溶断部材71,71が対向してヒューズエレメント3に接続されることが好ましい。これにより、保護素子70は、一対の溶断部材71,71で、ヒューズエレメント3の同一箇所を両面側から同時に加熱するとともに溶融導体3aを吸引することができ、より速やかにヒューズエレメント3を加熱、溶断することができる。
【0134】
また、保護素子70は、一対の溶断部材71,71の各絶縁基板2に形成された中間電極8及び補助電極73がヒューズエレメント3を介して互いに対向することが好ましい。これにより、一対の溶断部材71,71が対称に接続されることで、リフロー実装時等において、ヒューズエレメント3に対する負荷のかかり方がアンバランスとなることもなく、変形への耐性を向上させることができる。
【0135】
[第7の実施の形態]
次いで、本技術が適用された保護素子の第7の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、上述した保護素子1,30,40,50,60,70と同一の構成については同一の符号を付してその詳細を省略することがある。
図23(A)(B)、
図24に示すように、第7の実施の形態に係る保護素子80は、絶縁基板2の表面2aに中間電極8を形成し、絶縁基板2の裏面2bに発熱体4及び保持電極32を形成することにより、絶縁基板2が中間電極8から貫通孔33を介してヒューズエレメント3の溶融導体3aを保持電極32側に吸引、保持させる溶断部材81を構成し、ヒューズエレメント3がこの溶断部材81に挟持されているものである。
【0136】
溶断部材81の絶縁基板2は、表面2aに、ヒューズエレメント3に接続される中間電極8が形成されている。この中間電極8の構成や効果は上述した保護素子60と同様であるため、詳細は省略する。また、溶断部材81においても、絶縁基板2の表面2aに、中間電極8とともに、ヒューズエレメント3に接続されるとともに、溶融導体3aを保持する補助電極73を設けてもよい。
【0137】
また、溶断部材81の絶縁基板2は、裏面2bに、複数の発熱体4と、各発熱体4への給電端子となる発熱体給電電極5と、発熱体給電電極5から引き出され、各発熱体4の一端部4aと接続された複数の第1の引出電極6と、発熱体4を被覆する絶縁層7と、絶縁基板2の表面2a側の、各発熱体4及び中間電極8との間に形成され、各発熱体4及び中間電極8を接続する発熱体接続電極9と、発熱体接続電極9から引き出され、各発熱体4の他端部4bと接続された第2の引出電極10と、絶縁層7上に形成され、ヒューズエレメント3の溶融導体3aを保持する保持電極32が形成され、中間電極8と保持電極32とが、絶縁基板2を貫通し内面に導電層34が形成された貫通孔33を介して連続されている。これにより、絶縁基板2は、溶融したヒューズエレメント3の溶融導体3aを、貫通孔33を介して中間電極8から保持電極32側に吸引するとともに、発熱体4の通電経路及びヒューズエレメント3への熱経路を構成する。これら各電極5,6,9,10、発熱体4、絶縁層7、保持電極32、貫通孔33及び導電層34の構成や効果は上述した保護素子60と同様であるため、詳細は省略する。
【0138】
保護素子70と同様に、ヒューズエレメント3は、外部回路と接続された第1、第2の外部端子74,75と接続ハンダ14等の接合材料を介して接続されている。また、各溶断部材81の発熱体給電電極5も、外部回路と接続された第3の外部端子76と接続されている。
【0139】
保護素子80における発熱体4の通電、ヒューズエレメント3の溶断の作用等は、上述した保護素子70と同様であるため、詳細は省略する。
【0140】
なお、保護素子70、80において、発熱体4を絶縁基板2の表面2a、裏面2bに形成するいずれの場合においても、貫通孔33の両側に形成することが、保持電極32及び中間電極8を加熱し、またより多くの溶融導体3aを凝集、吸引するうえで好ましい。
【0141】
また、
図25(A)(B)、
図26(A)(B)に示すように、保護素子70、80は、絶縁基板2の表面2a又は裏面2bに絶縁層7を形成した後に、発熱体給電電極5、第1の引出電極6、第2の引出電極10、発熱体接続電極9及び発熱体4を形成し、さらにこれらの上に絶縁層7を形成することにより、絶縁層7内に発熱体4等を形成してもよい。