【解決手段】基板2に実装される基板側コネクタ1であって、絶縁性材料で形成された絶縁座10と、導電性材料で形成されたシェル20であって、絶縁座10の少なくとも一部を覆うシェル20と、絶縁座10によって保持される複数の端子と、を備え、複数の端子の各端子は、ケーブル側コネクタの端子と接触する接点部と、基板上の回路に接続される基板接続部32と、を備え、絶縁座10は、基板2と対面する底面において、基板接続部32と接点部との間に、底面に沿ってコーティング剤が流入するのを止めるための空隙部13を有する。
前記絶縁座は、前記基板と対面する面において、前記基板接続部と前記空隙部との間に、前記コーティング剤を付着させるための凸状又は凹状のトラップを有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気コネクタ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0015】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらは互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0016】
図1は、本発明に係る電気コネクタの構成を示す斜視図である。
図2は、本発明に係る電気コネクタの構成を示す正面図であり、
図3は、
図2のA−A切断面における断面図、
図4は部分拡大図である。
図1〜
図4は、基板に実装(接続)された状態を示す。
図5は、本発明に係る電気コネクタの分解斜視図であり、絶縁座及びシェルの詳細構成を示す。
図5において、シェルは展開されており、電気コネクタを組み立てる前の状態を示す。
図6は、本発明に係る電気コネクタ及び相手側コネクタの構成を示す斜視図であり、嵌合前の状態を示す。
【0017】
まず、
図1により、本実施形態による電気コネクタの構成の一例を説明する。
図1に示すように、本実施形態による電気コネクタは、例えば基板側コネクタ(レセプタクル)1とされ、プリント配線基板等の基板2に実装される。基板側コネクタ1は、樹脂等の絶縁性材料で形成された絶縁座10と、絶縁座10の少なくとも一部を覆う金属等の導電性材料で形成されたシェル20と、絶縁座10によって保持される複数(
図1では10個)の端子30などから構成される。シェル20は、金属板が打ち抜き加工され、折り曲げられて形成される。絶縁座10は、端子30とともに一体成形やインサート成形などによって形成される。
【0018】
絶縁座10は、嵌合方向前部(Y
2方向)の嵌合凸部11、嵌合方向後部(Y
1方向)の底部でコネクタ幅方向(X
1X
2方向)に広がった形状の台座部12などを備えている。嵌合凸部11は、シェル20に囲まれた空間内(嵌合空間21)に存在し、嵌合凸部11の側面に沿って複数の端子30の接点部31が整列して設けられている。
図1では、嵌合凸部11の両側面に合計10個の端子が設けられている。
【0019】
シェル20は、嵌合方向前部(Y
2方向)の内側の嵌合空間(嵌合凹部)21、嵌合空間21の上部及び下部のロック孔22、嵌合方向後部(Y
1方向)の固定部23、嵌合方向後部(Y
1方向)の底部でコネクタ幅方向(X
1X
2方向)に広がった形状の台座部支持部24、下部において基板方向(Z
2方向)に伸長する4つの実装部25,26などを備えている。嵌合空間(嵌合凹部)21は、ケーブル側コネクタ5のシェルが嵌合する空間であるとともに、相手側コネクタの端子が挿入される空間である。ロック孔22は、ケーブル側コネクタ5との嵌合時に、ケーブル側コネクタ5の係止片と係合し、ロックするための孔である。固定部23は、絶縁座10とシェル20を組み立てる際、絶縁座10をシェル20内に挿入した後、固定部23の根元44を折り曲げて、絶縁座10が抜けないように固定するものである。
【0020】
嵌合方向後部(Y
1方向)の台座部支持部24は、絶縁座10の台座部12を保持する形状を有し、その先端部からは、実装部25が基板2に向けて伸長している。また、シェル20の嵌合側(Y
2方向)の先端部の両側が、それぞれ外側に折り曲げられ折り曲げ部28を形成し、その先端部からは、実装部26が基板2に向けて伸長している。実装部26と折り曲げ部28との間には、コネクタ幅方向外側(X
1方向、X
2方向)に突出するように湾曲した屈曲部(凸部)27が形成されている。後部(Y
1方向)に位置する2つの実装部25及び嵌合側(Y
2方向)に位置する2つの実装部26は、それぞれ、基板2に形成された対応する4つのスルーホール3に挿入され、スルーホール3にハンダが注入され、基板2に固定されるとともに電気的に接続される。
【0021】
コネクタを基板に実装する際、実装部26が基板2のスルーホール3に挿入され、スルーホール3にハンダが注入され、コネクタが基板に固定される。このとき、シェル20の外壁45と実装部26との間の隙間が狭い場合、毛細管現象により、実装部26に沿って熔融ハンダが上昇する場合がある。すると、スルーホール内のハンダが減って実装強度が低下してしまう。また、ハンダが浪費することにもなる。そこで、実装部26と折り曲げ部28との間に、熔融ハンダの上昇を防止する屈曲部(凸部)27を設けている。屈曲部(凸部)27により、シェル20の外壁45との間に空間ができ、毛細管現象が遮断され、熔融ハンダの上昇が防止される。
【0022】
複数の端子30は、それぞれ、ケーブル側コネクタ5の端子と接触する接点部31と、基板上の回路に接続される基板接続部32とを備えている。
図1では、端子の個数は、10個であるが、これは一例であり、この数に限定されるものではなく、端子の個数は、いくつであってもよい。絶縁座10の嵌合凸部11のコネクタ幅方向(X
1方向及びX
2方向)における両側において、基板垂直方向(Z
1方向及びZ
2方向)に所定の間隔で並んで接点部31が設けられている。接点部31は嵌合空間21内に存在する。ケーブル側コネクタ5との嵌合時に、端子30が、ケーブル側コネクタ5の端子と接触して、それぞれ電気的に接続される。また、端子30の嵌合方向後部(Y
1方向)には、端子ごとに基板接続部32が設けられており、基板接続部32は、絶縁座10から露出して嵌合方向後部(Y
1方向)に向けて伸長している。基板接続部32は、コネクタ幅方向(X
1方向及びX
2方向)において所定の間隔で配置されているとともに、基板2の回路パターンにハンダ付けされ、電気的に接続される。
【0023】
また、各端子の基板接続部32は密集しており、基板接続部32の間隔が狭いため、各端子のショート防止のために、基板接続部32上に、コーティング剤が塗布される。コーティング剤は、絶縁材料であり、スプレー、筆などによって塗布される。コーティング剤は、樹脂などを含み、塗布後に固形化する。従来、コーティング剤を基板接続部32上に塗布する際、基板表面とコネクタとの間の間隔が狭いため、その間隔に沿って、コーティング剤が移動し、コネクタの嵌合空間内にコーティング剤が流入してしまうことがあった。コーティング剤がコネクタの嵌合空間内に流入すると、コーティング剤が端子の接点部に付着したり、嵌合空間内に堆積したりして、接触不良又は嵌合不良などの問題が生じることがある。そこで、本実施形態の電気コネクタでは、コーティング剤が嵌合空間内に流入するのを防止する機構が設けられている。
【0024】
次に、
図2〜
図5により、コーティング剤が、嵌合空間(嵌合凹部)21に流入するのを防ぐ機構を説明する。
図2は、基板側コネクタ(レセプタクル)1の構成を示す正面図であり、
図3は、
図2のA−A切断面における断面図、
図4は部分拡大図である。
図5は、基板側コネクタ(レセプタクル)1の分解斜視図であり、絶縁座10及びシェル20の詳細な構成を示す。
図5において、シェルは展開されており、電気コネクタを組み立てる前の状態を示す。
【0025】
図3〜
図5に示すように、絶縁座10は、端子30の基板接続部32と接点部31との間に、嵌合空間21を構成する嵌合空間壁部16を有する。また、絶縁座10は、基板2と対面する底面17において、基板接続部32と嵌合空間壁部16との間に、底面17に沿ってコーティング剤が流入するのを止める(ブロック、遮断する)ための空隙部13を有する。空隙部13は、コネクタ幅方向(X
1X
2方向)に沿った切れ込み状の形状を有する。空隙部13の形状は、これに限定されるものではなく、半円柱状、多角柱状などの他の形状であってもよい。すなわち、基板2の表面2a(又はシェル20の基板側内面20a)と絶縁座10の底面17aとの間の距離が広くなっていればよい。
【0026】
空隙部13は、コーティング剤の流入を防止するため、コネクタ幅方向(X
1X
2方向)全体に設けられている。基板側コネクタ1を基板2に実装した後、端子間の絶縁性向上のため、液体状の樹脂などのコーティング剤を基板接続部32上に塗布する。このとき、基板2の表面に沿ってコーティング剤が矢印6方向に流れることがある。基板2の表面と底面17との間の間隔が狭いため、毛細管現象により、コーティング剤が、基板2の表面と底面17との間を通って、基板接続部32から嵌合空間(Y
2方向)の方へ移動することが考えられるが、空隙部13の存在により毛細管現象が遮断され、コーティング剤の嵌合空間21への流入を防ぐことができる。また、嵌合空間壁部16によっても、コーティング剤の流入が防止される。
図4に示すように、空隙部13は、毛細管現象を遮断するのに十分な広さの空間を有する。また、空隙部13は、コーティング剤を吸収するのに十分な広さを有する。
図4では、空隙部13の下に、シェル20の基板側内面20aが存在しているが、空隙部13の下に、シェル20の基板側内面20aが存在しなくてもよい。
【0027】
また、
図3〜
図5に示すように、絶縁座10は、基板2と対面する底面17において、基板接続部32と空隙部13との間に、コーティング剤を付着させるための凸状のトラップ14,15を有する。本実施形態では、トラップ14,15は、コネクタ幅方向(X
1X
2方向)に延びる凸状の形状として形成されており、嵌合方向(Y
1Y
2方向)において2か所に設けられている。コネクタ幅方向(X
1X
2方向)において、嵌合方向後部(Y
1方向)に位置するトラップ14は、嵌合側(Y
2方向)に位置するトラップ15よりコネクタ幅方向に大きく形成されている。このような構成により、基板接続部32から嵌合空間(Y
2方向)の方へ移動するコーティング剤の大部分をトラップ14に付着させることができる。トラップの形状は凸状に限定されるものではなく、凹状の形状であってもよい。また、本実施形態では、トラップ14,15は、直方体の形状であるが、これに限定されるものではなく、半円柱状、多角柱状などの他の形状であってもよい。また、トラップ14とトラップ15との間にもコーティング剤を蓄積することもできる。このように、凸状又は凹状のトラップ14,15を底面17に設けることにより、基板接続部32から嵌合空間21に至る途中の底面17の表面積が大きくなり、ここにコーティング剤が付着することにより、空隙部13へのコーティング剤の移動量を減らすことができる。また、トラップ14,15の個数は、本実施の形態では2個であるが、1個でもよく、3個以上であってもよい。
【0028】
次に、
図5により、絶縁座10及びシェル20の詳細な構成を説明する。
図5は、本発明に係る電気コネクタの分解斜視図であり、絶縁座10及びシェル20の詳細構成を示す。
図5において、シェル20は展開されており、電気コネクタを組み立てる前の状態を示す。
図5に示すように、絶縁座10は、嵌合方向後部(Y
1方向)の中央付近の両側に、圧入凸部18を備えている。圧入凸部18は、嵌合側(Y
2方向)の先端部に面取り部19を有する。また、シェル20は、圧入凸部18と対応する位置に被圧入凹部29を備えている。被圧入凹部29は、内側に向けて突出した圧入突起41を備えている。圧入突起41は、嵌合方向後方(Y
1方向)に傾斜面を有する。
【0029】
絶縁座10及びシェル20を組み立てる際、絶縁座10の嵌合凸部11を嵌合方向前方(Y
2方向)に移動してシェル20の嵌合空間21に挿入し、圧入凸部18を被圧入凹部29に圧入し、絶縁座10とシェル20とを合体する。このとき、圧入凸部18は、嵌合側(Y
2方向)の先端部に面取り部19を有し、圧入突起41はY
1側に傾斜を有するので、圧入が容易になる。絶縁座10とシェル20とが合体した後は、圧入突起41の先端部が圧入凸部18の側部に食い込むので外れにくくなる。また、圧入凸部18及び被圧入凹部29は、合体時の位置決め及びガイドにもなる。絶縁座10とシェル20とが合体した後、シェル20の固定部23を基板垂直方向下方(Z
2方向)に折り曲げて、絶縁座10は、シェル20に包囲されて固定される。このとき、シェル20側面の係合凸部42が、固定部23上の係合孔43に係合して、絶縁座10とシェル20との合体を強固なものとする。係合凸部42は、傾斜を有するため、係合は容易であるが、係合の解除は困難なものとなる。
【0030】
次に、
図6により、相手側コネクタの構成を説明する。
図6は、ケーブル側コネクタ(プラグ)の構成を示す斜視図である。
図6に示すように、相手側コネクタは、例えばケーブル側コネクタ(プラグ)5とされ、ケーブル4が接続される。ケーブル側コネクタ5は、金属等の導電性材料で形成されたシェル51、樹脂等の絶縁性材料で形成されたハウジング52、弾性的に上下移動が可能なロック操作部53、及び弾性的に上下移動が可能なロック片54などを備えている。シェル51は、嵌合側(Y
2方向)に設けられ、シェル51の内部には、基板側コネクタ1の端子30と同数の端子(図示せず)が設けられている。基板側コネクタ1とケーブル側コネクタ5との嵌合時に、基板側コネクタ1の端子30の接点部31と、ケーブル側コネクタ5の端子が、それぞれ接触することにより、お互いの端子が電気的に接続され、基板2上の回路と、ケーブル4の信号線が電気的に接続される。
【0031】
また、シェル51は、上面及び下面にロック片用孔55を有し、ロック片用孔55からロック片54が突き出ている。ロック片54は、嵌合側(Y
2方向)に傾斜を有する。基板側コネクタ1とケーブル側コネクタ5とを嵌合するとき、シェル20の嵌合空間21にシェル51を挿入して嵌合する。このとき、ロック片54は、嵌合側(Y
1方向)に傾斜を有するので、そのまま嵌合方向(Y
1方向)に押し込めば、弾性によりロック片54が内側に移動し、容易に嵌合することができる。そして、弾性によりロック片54が外側に戻り、ロック片54がロック孔22に係合してロックされる。ロックを解除するときは、ロック操作部53を内側(Z
1Z
2方向)に挟み込むことにより、それに連動してロック片54が内側に移動してロックが解除され、コネクタ間の嵌合解除が容易になる。
【0032】
したがって、本実施の形態の電気コネクタによれば、端子の基板接続部にコーティング剤を塗布する際、コーティング剤が、底面を伝わってコネクタの嵌合空間内に入り込むのを防止することが可能になる。それにより、コーティング剤の端子接点部への付着又は嵌合空間内への付着がなくなり、電気コネクタの信頼性が向上する。
【0033】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。