【解決手段】本発明の一形態に係る積層セラミック電子部品は、セラミック素体と、外部電極と、を具備する。上記セラミック素体は、第1方向に向いた端面と、上記端面から露出し上記第1方向に直交する第2方向に積層された内部電極と、を有する。上記外部電極は、上記第1方向及び上記第2方向に直交する第3方向における2つの周縁部に沿ってそれぞれ形成され上記第1方向に突出した2つの凸部を有し、上記端面に設けられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、積層セラミック電子部品は、基板上に高密度に実装されることがある。実装密度が高まると、隣り合う積層セラミック電子部品の外部電極上に形成された半田同士が融合し、ショート等の不具合を生じる可能性がある。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、不具合なく高密度に実装されることが可能な積層セラミック電子部品、それを高密度に実装した回路基板、及び積層セラミック電子部品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る積層セラミック電子部品は、セラミック素体と、外部電極と、を具備する。
上記セラミック素体は、第1方向に向いた端面と、上記端面から露出し上記第1方向に直交する第2方向に積層された内部電極と、を有する。
上記外部電極は、上記第1方向及び上記第2方向に直交する第3方向における2つの周縁部に沿ってそれぞれ形成され上記第1方向に突出した2つの凸部を有し、上記端面に設けられる。
【0007】
積層セラミック電子部品は、外部電極が基板に半田付けされることで基板に実装される。上記構成では、外部電極が第3方向における2つの周縁部に沿ってそれぞれ凸部を有するため、中央部が凸状の構成と比較して、外部電極の表面積が大きくなる。半田は、外部電極の表面に沿って濡れ広がるため、半田が2つの凸部の表面を濡れ広がることにより、中央部が凸状の構成と比較して、半田の厚みを薄くすることができる。したがって、第1方向に複数の積層セラミック電子部品の外部電極が近接した状態で半田付けされる場合にも、双方の外部電極上の半田の厚みを規制でき、半田同士が融合することを防止することができる。これにより、不具合なく高密度な実装が可能となる。
【0008】
本発明の他の形態に係る回路基板は、実装面を有する実装基板と、2つの積層セラミック電子部品と、半田と、を具備する。
上記2つの積層セラミック電子部品は、第1方向に向いた端面と上記端面から露出し上記第1方向に直交する第2方向に積層された内部電極とを含むセラミック素体と、上記実装面に接続され上記端面に設けられた外部電極と、をそれぞれ有し、上記第1方向に並んで配置される。
上記半田は、上記外部電極の表面と上記実装面とを接合する。
上記外部電極は、周縁部に沿って形成され上記第1方向に突出した凸部を有する。
上記2つの積層セラミック電子部品の上記外部電極間の上記第1方向における距離が、100μm以下である。
【0009】
上記構成では、外部電極が周縁部に沿って凸部を有するため、中央部が凸状の構成と比較して、外部電極の表面積が大きくなる。半田は、外部電極の表面に沿って濡れ広がるため、半田が凸部の表面を濡れ広がることにより、中央部が凸状の構成と比較して、半田の厚みを薄くすることができる。したがって、2つの積層セラミック電子部品の外部電極が第1方向に100μm以下の距離で半田付けされる場合にも、双方の外部電極上の半田の厚みを規制でき、半田同士が接合することを防止することができる。これにより、高密度な実装が可能となる。
【0010】
例えば、上記外部電極は、上記第1方向及び上記第2方向に直交する第3方向における2つの周縁部に沿ってそれぞれ形成され上記第1方向に突出した2つの凸部を有していてもよい。
【0011】
本発明のさらに他の形態に係る積層セラミック電子部品の製造方法は、第1方向に向いた端面と、上記端面から露出し上記第1方向に直交する第2方向に積層された内部電極と、を有するセラミック素体を作製する工程を含む。
上記第1方向及び上記第2方向に直交する第3方向における2つの周縁部に沿ってそれぞれ形成され上記第1方向に突出した2つの凸部を有する外部電極が、上記端面に形成される。
【0012】
また、上記端面には、上記第3方向における中央部に形成された凹部と、上記凹部の上記第3方向外側にそれぞれ位置し上記第1方向に突出した2つの凸部と、が形成され、
上記外部電極の上記2つの凸部は、上記端面の上記2つの凸部上にそれぞれ形成されてもよい。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、不具合なく高密度に実装されることが可能な積層セラミック電子部品、それを高密度に実装した回路基板及び積層セラミック電子部品の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
図面には、相互に直交するX軸、Y軸、及びZ軸が適宜示されている。X軸、Y軸、及びZ軸は全図において共通である。
【0016】
[積層セラミックコンデンサ10の構成]
図1〜3は、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10を示す図である。
図1は、積層セラミックコンデンサ10の斜視図である。
図2は、積層セラミックコンデンサ10の
図1のA−A'線に沿った断面図である。
図3は、積層セラミックコンデンサ10の
図1のB−B'線に沿った断面図である。
【0017】
積層セラミックコンデンサ10は、セラミック素体11と、外部電極14とを具備する。
セラミック素体11は、X軸方向を向いた2つの端面11aと、Y軸方向を向いた2つの側面11bと、Z軸方向を向いた2つの主面11cと、を有する。端面11aには、外部電極14が設けられる。セラミック素体11の各面を接続する稜部は面取りされていてもよい。セラミック素体11の各面は平坦な面に限定されず、曲面や凹凸のある面であってもよい。例えば、端面11aは、後述するように、Y軸方向周縁部がX軸方向に突出した形状であってもよい。
【0018】
セラミック素体11は、容量形成部16と、保護部17と、を有する。容量形成部16は、複数の第1内部電極12と、複数の第2内部電極13と、を有し、これらが複数のセラミック層15を介してZ軸方向に交互に積層された構成を有する。保護部17は、容量形成部16のZ軸方向を向いた主面11c側の面と、Y軸方向を向いた側面11b側の面とをそれぞれ覆っている。
【0019】
第1内部電極12は、一方の端面11aに引き出され、他方の端面11aから離間している。第2内部電極13は、第1内部電極12が引き出されている端面11aからは離間し、他方の端面11aに引き出されている。
内部電極12,13は、典型的にはニッケル(Ni)を主成分として構成され、積層セラミックコンデンサ10の内部電極として機能する。なお、内部電極12,13は、ニッケル以外に、銅(Cu)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)等を主成分としてもよい。
【0020】
セラミック層15は、誘電体セラミックスによって形成されている。セラミック層15は、容量形成部16における容量を大きくするために、高誘電率の誘電体セラミックスで形成される。
上記高誘電率の誘電体セラミックスとして、チタン酸バリウム(BaTiO
3)系材料の多結晶体、つまりバリウム(Ba)及びチタン(Ti)を含むペロブスカイト構造の多結晶体が用いられる。これにより、大容量の積層セラミックコンデンサ10が得られる。
なお、セラミック層15は、チタン酸ストロンチウム(SrTiO
3)系、チタン酸カルシウム(CaTiO
3)系、チタン酸マグネシウム(MgTiO
3)系、ジルコン酸カルシウム(CaZrO
3)系、チタン酸ジルコン酸カルシウム(Ca(Zr,Ti)O
3)系、ジルコン酸バリウム(BaZrO
3)系、酸化チタン(TiO
2)系などで形成されてもよい。
【0021】
保護部17も、誘電体セラミックスで形成されている。保護部17を形成する材料は、絶縁性セラミックスであればよいが、セラミック層15と同様の誘電体セラミックスを用いることにより、セラミック素体11における内部応力が抑制される。
保護部17は、容量形成部16における端面11a以外の面を被覆する。保護部17は、主に、容量形成部16の周囲を保護し、内部電極12,13の絶縁性を確保する機能を有する。以下、保護部17の主面11c側の領域をカバー領域、側面11b側の領域をサイドマージン領域と称する。
【0022】
外部電極14は、端面11aに設けられ、主面11c及び側面11bに延出している。一方の外部電極14は、一方の端面11aにおいて第1内部電極12と接続され、他方の外部電極14は、他方の端面11aにおいて第2内部電極13と接続される。
以下、外部電極14の詳細な構成について、説明する。
【0023】
[外部電極14の詳細な構成]
図4は、Z軸方向から見た積層セラミックコンデンサ10の平面図である。
図1及び4に示すように、外部電極14は、X軸方向に向いた第1の面14aと、Y軸方向に向いた第2の面14bと、Z軸方向に向いた第3の面14cと、を有する。第1の面14aは、端面11a上に形成される。第2の面14bは、本実施形態において、側面11b上に形成される。第3の面14cは、本実施形態において、主面11c上に形成される。
【0024】
図1及び4に示すように、外部電極14は、Y軸方向における2つの周縁部に沿ってそれぞれ形成され、X軸方向に突出した2つの凸部18を有する。外部電極14のY軸方向における周縁部は、第1の面14aのY軸方向における周縁に位置し、かつ第1の面14aの外縁に沿ってZ軸方向に延びる部分とする。2つの凸部18も、第1の面14a上でZ軸方向に延びるように構成される。
【0025】
各凸部18は、Z軸方向から見た断面においてX軸方向に最も突出している頂部18aをそれぞれ含む。各頂部18aも、Z軸方向に延びるように構成される。頂部18aの形状は特に限定されず、例えば頂部18aが凸な曲面状でもよいし、頂部18aが鋭く突出していてもよい。また、頂部18aの位置は凸部18のY軸方向中央に限定されず、Y軸方向に偏っていてもよい。
【0026】
本実施形態において、外部電極14は、さらに、第1の面14aにおいて、Y軸方向に離間した2つの凸部18の間に位置する中央部19を有する。中央部19は、本実施形態において略平坦な構成を有するが、例えばX軸方向における突出量が1μm以下の微小な凹凸を有していてもよい。
【0027】
外部電極14がY軸方向に相互に離間した2つの凸部18を有することで、外部電極14の表面積を増加させることができる。これにより、後述するように、実装基板への実装時に、外部電極14の表面を覆う半田の厚みを低減させることができる。
【0028】
各凸部18のY軸方向における幅寸法D1は、例えば15μm以上とすることができる。これにより、各凸部18の幅寸法D1を十分確保でき、凸部18の表面積を十分に確保することができる。各凸部18の幅寸法D1は、各凸部18のY軸方向に最も大きい部分の寸法とする。
積層セラミックコンデンサ10の幅寸法Wに対する幅寸法D1の比D1/Wは、例えば0.02以上とすることができる。積層セラミックコンデンサ10の幅寸法Wは、積層セラミックコンデンサ10のY軸方向において最も大きい部分の寸法とする。
また、幅寸法D1は、例えば60μm以下とすることができ、積層セラミックコンデンサ10の幅寸法Wに対する幅寸法D1の比D1/Wは、例えば0.20以下とすることができる。
【0029】
また、2つの凸部18の頂部18a間のY軸方向における距離D2は、例えば250μm以上とすることができる。これにより、凸部18の頂部18a間をY軸方向に十分に離間させ、半田の局所的な集中を抑制することができる。距離D2は、2つの凸部18の頂部18a間の、Y軸方向に最も離間した部分の距離とする。
積層セラミックコンデンサ10の幅寸法Wに対する距離D2の比D2/Wは、例えば0.30以上とすることができる。また、距離D2は、例えば285μm以下とすることができ、積層セラミックコンデンサ10の幅寸法Wに対する距離D2の比D2/Wは、例えば0.95以下とすることができる。
【0030】
頂部18aのX軸方向における高さ寸法D3は、例えば10μm以上とすることができる。これにより、凸部18を十分に突出させ、凸部18の表面積を十分確保することができる。頂部18aの高さ寸法D3は、中央部19のX軸方向における厚みが最も薄い部分から頂部18aまでのX軸方向における高さ寸法とする。
中央部19の厚み寸法D4に対する高さ寸法D3の比D3/D4は、例えば0.25以上とすることができる。中央部19の厚み寸法D4は、
図2を参照し、中央部19のX軸方向における厚みが最も薄い部分の厚み寸法とする。
また、高さ寸法D3は、例えば20μm以下とすることができ、中央部19の厚み寸法D4に対する高さ寸法D3の比D3/D4は、例えば0.50以下とすることができる。
【0031】
以上の構成の外部電極14が半田によって実装基板に接続されることで、積層セラミックコンデンサ10を備えた回路基板が構成される。
【0032】
[回路基板100の構成]
図5及び6は、本実施形態に係る回路基板100を示す図である。
図5は、
図2に対応する位置における回路基板100の断面図である。
図6は、Z軸方向から見た回路基板100の平面図である。
【0033】
回路基板100は、実装面51を有する実装基板50と、少なくとも2つの積層セラミックコンデンサ10と、半田60と、を備える。なお、
図5は、回路基板100のうち、1つの積層セラミックコンデンサ10が実装されている部分の断面図を示す。
図6は、2つの積層セラミックコンデンサ10が並んでいる態様を示すが、回路基板100は、3以上の積層セラミックコンデンサ10を備えていてもよい。
【0034】
実装面51は、外部電極14に接続されたランド52を含む。ランド52は、実装面51に配置されたパッド状の金属端子であって、例えば矩形に構成される。ランド52は、例えば各外部電極14に対して1つずつ設けられる。実装面51のランド52以外の部分は、図示はしないが、例えば絶縁性のソルダレジストで覆われている。
【0035】
積層セラミックコンデンサ10は、例えば一方の主面11cを実装面51に対向させた姿勢で、実装面51上に配置される。
図6に示すように、2つの積層セラミックコンデンサ10は、X軸方向に並んで配置される。2つの積層セラミックコンデンサ10の外部電極14間のX軸方向における距離D5は、例えば100μm以下であり、より好ましくは80μm以下である。なお、距離D5は、隣り合う2つの積層セラミックコンデンサ10の外部電極14間の、X軸方向において最も狭い部分の距離とする。
【0036】
半田60は、外部電極14の表面と実装面51とを接合する。半田60は、ランド52と外部電極14の第3の面14cとの間に配置されるとともに、外部電極14の第2の面14b及び凸部18を有する第1の面14aまで延びるように形成される。
【0037】
回路基板100は、例えば以下のように製造される。まず、実装基板50のランド52上に半田ペーストが塗布され、当該半田ペースト上に積層セラミックコンデンサ10が配置される。この状態でリフロー炉において加熱され、半田ペーストが加熱されて溶融する。半田ペーストの溶融に伴い、積層セラミックコンデンサ10がランド52側に沈み込む。これにより、半田ペーストは、外部電極14の第3の面14cから第1の面14a及び第2の面14bに濡れ上がる。その後、半田ペーストが冷却されて固化することで、外部電極14と実装基板50とを接続する半田60が形成され、
図5及び
図6に示す回路基板100が製造される。
【0038】
ここで、溶融した半田ペーストは、第1の面14aに到達した場合、X軸方向における起伏の小さい部分から凸状の部分へと流動する。つまり、半田ペーストは、中央部19から2つの凸部18へ向かって分流し、各凸部18を覆う。これにより、積層セラミックコンデンサ10では、半田ペーストの局所的な集中を抑制することができる。加えて、2つの凸部18により、外部電極14上の表面積を増大させることができる。したがって、第1の面14aにおける半田60の厚みを抑制することができる。
【0039】
図7は、本実施形態の比較例に係る回路基板300を示す図であり、Z軸方向から見た回路基板300の平面図である。なお、回路基板300において、上述の回路基板100と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
回路基板300は、実装面51を有する実装基板50と、少なくとも2つの積層セラミックコンデンサ30と、半田70と、を備える。回路基板300は、回路基板100と同様の実装基板50を有するが、積層セラミックコンデンサ30の構成が回路基板100と異なる。
【0040】
積層セラミックコンデンサ30は、セラミック素体31と、2つの外部電極34と、を備える。外部電極34は、X軸方向に向いた第1の面34aと、Y軸方向に向いた第2の面34bと、Z軸方向に向いた第3の面34cと、を有する。第1の面34aは、Y軸方向中央部がX軸方向に凸状に構成される。
【0041】
回路基板300では、実装面51のランド52の配置が回路基板100と同様であるため、隣り合う外部電極34間のX軸方向における距離D6が回路基板100における距離D5とほぼ同一になる。また、半田70を形成する半田ペーストの塗布量は、半田60を形成する半田ペーストの塗布量とほぼ同一とする。
【0042】
回路基板300の製造時に、溶融した半田ペーストが第1の面34aに到達すると、当該半田ペーストは、第1の面34aのY軸方向周縁部から凸状のY軸方向中央部に向かって流動する。これにより、半田ペーストがY軸方向中央部に集中し易くなり、固化した半田70は、Y軸方向中央部で厚く盛り上がった形状となる。距離D6が100μm以下と小さい場合、
図7に示すように、隣り合う積層セラミックコンデンサ30に形成された半田70が、当該Y軸方向中央部において融合し易くなる。異なる積層セラミックコンデンサ30の半田70が融合した場合、外観上の不具合のみならず、ショート等の電気的な不具合も引き起こすことがある。
【0043】
一方で、本実施形態では、溶融した半田ペーストが2つの凸部18の表面を覆うように流動するため、半田ペーストの使用量が半田70とほぼ同一の場合、1つの凸部18における半田60の盛り上がり量が小さくなる。つまり、本実施形態では、第1の面14aの表面積を増大させるとともに、半田60が局所的に集中することを防止でき、半田60の厚みを抑制することができる。これにより、距離D5が100μm以下となるように積層セラミックコンデンサ10を高密度に実装した場合でも、隣り合う半田60の融合等の不具合を防止することができる。
【0044】
したがって、本実施形態では、隣り合う積層セラミックコンデンサ10に形成された半田60が融合する不具合を抑制でき、外観上及びショート等の電気的な不具合を抑制することができる。
このような積層セラミックコンデンサ10は、例えば以下のように製造することができる。
【0045】
[積層セラミックコンデンサ10の製造方法]
図8は、積層セラミックコンデンサ10の製造方法を示すフローチャートである。
図9〜12は、積層セラミックコンデンサ10の製造過程を示す図である。以下、積層セラミックコンデンサ10の製造方法について、
図8に沿って、
図9〜12を適宜参照しながら説明する。
【0046】
(ステップS01:セラミックシート積層)
ステップS01では、第1セラミックシート101、第2セラミックシート102及び第3セラミックシート103を
図9に示すように積層することで、積層シート104を形成する。
【0047】
セラミックシート101,102,103は、誘電体セラミックスを主成分とする未焼成の誘電体グリーンシートとして構成される。第1セラミックシート101には、未焼成の第1内部電極112が形成される。第2セラミックシート102には、未焼成の第2内部電極113が形成される。第3セラミックシート103には、内部電極が形成されていない。
【0048】
図10は、セラミックシート101,102の平面図である。この段階では、セラミックシート101,102が、個片化されていない大判のシートとして構成される。
図10には、積層セラミックコンデンサ10ごとに個片化する際の切断線Lx,Ly1,Ly2が示されている。切断線LxはX軸に平行であり、切断線Ly1及びLy2はY軸に平行である。
【0049】
内部電極112,113は、任意の導電性ペーストをセラミックシート101,102に塗布することによって形成することができる。導電性ペーストの塗布方法は、公知の技術から任意に選択可能である。例えば、導電性ペーストの塗布には、スクリーン印刷法やグラビア印刷法を用いることができる。
【0050】
セラミックシート101,102上の各内部電極112,113は、1本の切断線Ly1又はLy2を跨いでX軸方向に延びる略矩形に構成される。各内部電極112,113は、切断線Ly1、Ly2及びLxで切断されることにより、各積層セラミックコンデンサ10の内部電極12,13を形成する。切断線Ly1,Ly2は、各積層セラミックコンデンサ10の端面11aに対応する。切断線Lxは、各積層セラミックコンデンサ10の側面11bに対応する。
【0051】
第1セラミックシート101では、切断線Ly1を跨いで延びる内部電極112がX軸方向に沿って配置された第1列と、切断線Ly2を跨いで延びる内部電極112がX軸方向に沿って配置された第2列とが、Y軸方向に交互に並んでいる。第1列では、X軸方向に隣接する内部電極112同士が切断線Ly2を挟んで相互に対向する。第2列では、X軸方向に隣接する内部電極112同士が切断線Ly1を挟んで相互に対向する。つまり、Y軸方向に隣接する第1列と第2列では、内部電極112が、1チップ分ずつX軸方向にずれて配置されている。
【0052】
第2セラミックシート102上の内部電極113も、内部電極112と同様に構成される。但し、第2セラミックシート102では、第1セラミックシート101の第1列に対応する列の内部電極113が、切断線Ly2を跨いで延び、第1セラミックシート101の第2列に対応する列の内部電極113が、切断線Ly1を跨いで延びる。つまり、内部電極113は、内部電極112とはX軸方向又はY軸方向に1チップ分ずれて形成されている。
【0053】
図9に示すように、第1セラミックシート101及び第2セラミックシート102は、Z軸方向に交互に積層される。セラミックシート101,102の積層体は、未焼成の容量形成部16に対応する。セラミックシート101,102の積層体のZ軸方向上下面には、第3セラミックシート103が積層される。第3セラミックシート103の積層体は、未焼成の保護部17のカバー領域に対応する。
【0054】
積層されたセラミックシート101,102,103は、圧着され一体化される。これにより、大判の積層シート104が作製される。
【0055】
(ステップS02:貫通孔H形成)
ステップS02では、積層シート104の切断線Ly1及びLy2上に、Z軸方向に貫通する貫通孔Hを形成する。
図11は、積層シート104をZ軸方向から見た平面図である。
図11に示すように、貫通孔Hは、積層シート104の各切断線Ly1及びLy2上に延び、かつ切断線Lxを跨がないように形成される。つまり、貫通孔Hは、積層シート104の各積層セラミックコンデンサ10の端面11aに対応する領域の、Y軸方向中央部に形成される。
【0056】
貫通孔Hは、例えば、ドリル等による切削加工によって形成される。あるいは、貫通孔Hは、レーザ加工によって形成されてもよい。また、貫通孔Hの形状は、図示の長円形状に限定されず、後述する端面111aの凸部111dの形状等に応じて適宜調整される。
【0057】
(ステップS03:切断)
ステップS03では、ステップS02で得られた積層シート104を切断線Lx,Ly1,Ly2に沿って切断することにより、未焼成のセラミック素体111を作製する。
【0058】
図12は、ステップS03で得られるセラミック素体111の斜視図である。
同図に示すように、未焼成のセラミック素体111は、X軸方向を向いた2つの端面111aと、Y軸方向を向いた2つの側面111bと、Z軸方向を向いた2つの主面111cと、を有する。また、未焼成のセラミック素体111は、未焼成の内部電極112,113が交互にZ軸方向に積層された未焼成の容量形成部116と、容量形成部116の周囲の未焼成の保護部117と、を有する。
【0059】
端面111aは、本実施形態において、Y軸方向における中央部に形成された凹部111eと、凹部111eのY軸方向外側にそれぞれ位置しX軸方向に突出した2つの凸部111dと、を有する。凹部111eは、本実施形態において、貫通孔Hによって形成された凹状の部分である。凸部111dは、本実施形態において、貫通孔Hが形成されていない切断線Ly1,Ly2上の領域に対応し、凹部111eからX軸方向に突出した部分である。
【0060】
凸部111dの最も突出した頂部は、
図12に示すように略平坦な構成に限定されず、凸状の曲面でもよいし、鋭く突出していてもよい。また、凸部111dの各寸法は、外部電極14の凸部18の寸法に応じて適宜設定することができる。
【0061】
(ステップS04:焼成)
ステップS04では、ステップS02で得られた未焼成のセラミック素体111を焼結させることにより、
図1〜4に示すセラミック素体11を作製する。焼成は、例えば、還元雰囲気、又は低酸素分圧雰囲気で行うことができる。なお、焼成後のセラミック素体11は、バレル研磨等で面取りされてもよい。これにより、焼成後の端面11aの凸部も丸みを帯びた形状となる。
【0062】
(ステップS05:外部電極14形成)
ステップS05では、ステップS04で得られたセラミック素体11に外部電極14を形成することにより、
図1〜4に示す積層セラミックコンデンサ10を作製する。
【0063】
ステップS05では、まず、セラミック素体11の一方の端面11aを覆うように導電性ペーストを塗布し、セラミック素体11の他方の端面11aを覆うように導電性ペーストを塗布する。セラミック素体11に塗布された導電性ペーストに、例えば、還元雰囲気下、又は低酸素分圧雰囲気下において焼き付け処理を行って、セラミック素体11に下地膜を形成する。そして、セラミック素体11に焼き付けられた下地膜の上に、電解メッキなどのメッキ処理でメッキ膜を形成して、外部電極14が完成する。
【0064】
外部電極14形成用の導電性ペーストは、凸部を含む端面11aに倣った形状で塗布される。これにより、当該導電性ペーストが焼き付けられた下地膜も、Y軸方向における2つの周縁部に沿って形成された凸部を有する形状となる。また、下地膜上のメッキ膜も、下地膜に倣って凸部を有する形状となる。つまり、端面11aの2つの凸部上に、外部電極14の2つの凸部18がそれぞれ形成される。
【0065】
なお、上記のステップS05における処理の一部を、ステップS04の前に行ってもよい。例えば、ステップS04の前に未焼成のセラミック素体111の両端面111aに未焼成の電極材料を塗布し、ステップS04において、未焼成のセラミック素体111を焼成すると同時に、未焼成の電極材料を焼き付けて外部電極14の下地層を形成してもよい。また、脱バインダー処理したセラミック素体111に未焼成の電極材料を塗布して、これらを同時に焼成してもよい。
【0066】
[他の実施形態]
例えば外部電極14は、2つの凸部18を有する形状に限定されない。
図13は、本発明の他の実施形態に係る積層セラミックコンデンサ20を示す斜視図である。なお、積層セラミックコンデンサ20について、第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
積層セラミックコンデンサ20は、セラミック素体11と、外部電極24とを備え、外部電極24の構成が上記実施形態の外部電極14の構成と異なる。
【0067】
外部電極24は、周縁部に沿って形成されX軸方向に突出した凸部28を有する。具体的に、凸部28は、Y軸方向における2つの周縁部に沿って形成された第1凸部28aと、Z軸方向における2つの周縁部に沿って形成された第2凸部28bと、を含む。凸部28は、これらの第1凸部28a及び第2凸部28bが接続されて環状に構成される。
【0068】
このような外部電極24も、
図7に示す積層セラミックコンデンサ30の外部電極34と比較して、環状の凸部28によって表面積が大きくなる。これにより、実装基板への実装時に、半田ペーストが濡れ広がる面積を増大させ、半田の厚みを抑制することができる。したがって、積層セラミックコンデンサ30が実装基板上に高密度に実装された場合でも、隣り合う半田が融合するような不具合を防止することができる。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0070】
例えば、積層セラミックコンデンサ10の製造方法は上述の方法に限定されない。例えば、凸部111dを有さない略直方体形状のセラミック素体11を形成した後、端面11aのY軸方向周縁部にのみ導電性ペーストを塗布し、その後端面11a全体に導電性ペーストを塗布することによっても、
図1〜4に示す外部電極14を形成することができる。あるいは、凸部111dを有さない略直方体形状のセラミック素体11を形成した後、端面11a全体に導電ペーストを塗布し、その後端面11aのY軸方向周縁部にのみ導電ペーストを塗布することによっても、
図1〜4に示す外部電極14を形成することができる。
【0071】
また、上記各実施形態では積層セラミック電子部品の一例として積層セラミックコンデンサ10及び20について説明したが、本発明は一対の外部電極を有する積層セラミック電子部品全般に適用可能である。このような積層セラミック電子部品としては、例えば、チップバリスタ、チップサーミスタ、積層インダクタなどが挙げられる。