【解決手段】熱輸送装置11は、メイン基板20におけるチップ34の実装面20aに沿って広がり、平面視でチップ34を含む部分にシート取付孔42が形成されたサブ放熱板40と、実装面20aと逆の裏面20bに沿って広がり、裏面20bにおけるチップ34に対応する位置に熱接触するメイン放熱板38と、サブ放熱板40に対してシート取付孔42を塞ぐように取り付けられた熱伝導性を有するシート部材44と、メイン基板20に固定されてシート取付孔42を覆うブラケット48と、シート部材44とブラケット48とによって弾性圧縮されながら挟持される樹脂弾性体50とを備える。シート部材44は、チップ34の表面に熱接触し、サブ放熱板40よりも低剛性である。シート部材44はグラファイトシートである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載の発明では、下層サブパッケージの電子部品に放熱部材を接触させているが、該放熱部材は下層サブパッケージと上層サブパッケージとの狭い隙間に介在させなければならず製造が困難である。また、既存のPoP構造に対してはこのような放熱部材を後付けで取り付けることはできない。
【0007】
特許文献1に記載のような放熱板を適用する場合、該放熱板を発熱体の表面に接触させるが、両者の間で良好な熱伝達を行うためにはある程度強く接触させる必要がある。しかしながら、あまり強く接触させると発熱体が損傷してしまう懸念がある。
【0008】
特に、PoP構造パッケージは下層サブパッケージと上層サブパッケージとの間はハンダボールでつながっているだけであり、機械的には必ずしも高強度ではなく、表面に放熱板を強く押し付けるとストレスによりハンダボールなどに損傷の懸念がある。
【0009】
さらに、発熱体と放熱板との間で良好な熱伝達を行うためには、両者が面接触していることが望ましい。しかしながら小さい面積の発熱体に対して大きい面積の放熱板を面同士で接触させるには、相当に精度よく位置決めまたは調整を行う必要がある。
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、良好な放熱性を有し、しかも発熱体に対してストレスを与えることのない熱輸送装置および電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の第1態様に係る熱輸送装置は、メイン基板上に実装された発熱体の熱を輸送する熱輸送装置であって、前記メイン基板における前記発熱体の実装面に沿って広がり、平面視で前記発熱体を含む部分にシート取付孔が形成された第1放熱板と、前記第1放熱板に対して前記シート取付孔を塞ぐように取り付けられた熱伝導性を有するシート部材と、を備え、前記シート部材は、前記発熱体の表面に熱接触し、前記第1放熱板よりも低剛性である。
【0012】
このような熱輸送装置では、第1放熱板にシート取付孔が形成され、該シート取付孔を塞ぐように取り付けられた低剛性のシート部材が発熱隊の表面に当接することから、第1放熱板に起因する外力や振動はシート部材によって吸収され、発熱体にストレスを与えることがない。また、発熱体が発生する熱はシート部材を介して第1放熱板に伝熱し、該第1放熱板によって拡散および放熱されるため、熱輸送装置は良好な放熱性を有する。
【0013】
前記メイン基板に固定されて前記シート取付孔を覆うブラケットと、前記ブラケットから押圧されて弾性圧縮されながら前記シート部材を介して前記発熱体を押圧する樹脂弾性体と、を備えてもよい。このように、樹脂弾性体がシート部材とブラケットとによって弾性圧縮されながら挟持されていると、シート部材は低剛性で弾性変形可能であることから、樹脂弾性体から下方向押圧されることで適度に変形して発熱体に一層確実に密着する。これにより、発熱体とシート部材との伝熱性がさらに向上する。
【0014】
前記メイン基板における前記発熱体の実装面と逆の裏面に沿って広がり、前記裏面における前記発熱体に対応する位置に熱接触する第2放熱板と、前記第2放熱板から立設して前記メイン基板のスルーホールを通って設けられるスタッドと、を備え、前記ブラケットは前記スタッドに固定されていてもよい。
【0015】
前記第2放熱板は、前記裏面における前記発熱体に対応する位置に熱接触し、前記スタッドが設けられる第1厚み部分と、前記第1厚み部分の側面に固定され、前記第1厚み部分よりも薄い第2厚み部分と、を備えてもよい。第1厚み部分は第2厚み部分よりも厚く、スタッドの立設に好適である。
【0016】
前記シート部材はグラファイトシートであると、熱伝導性が良好であり、発熱体の発熱量が大きい場合に有効である。
【0017】
前記第1放熱板は、前記シート取付孔の周囲が前記基板に向かって凸形状になっていると良好な熱接触状態となる。
【0018】
前記発熱体はPoP構造であっても、好適な放熱性が得られる。
【0019】
本発明の第2態様に係る電子機器は、発熱体を備える電子機器であって、前記発熱体が実装されたメイン基板と、前記メイン基板における前記発熱体の実装面に沿って広がり、平面視で前記発熱体を含む部分にシート取付孔が形成された第1放熱板と、前記第1放熱板に対して前記シート取付孔を塞ぐように取り付けられた熱伝導性を有するシート部材と、を備え、前記シート部材は、前記発熱体の表面に熱接触し、前記放熱板よりも低剛性である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の上記態様にかかる熱輸送装置および電子機器では、第1放熱板に対してシート取付孔を塞ぐように取り付けられた熱伝導性を有するシート部材を備えており、該シート部材は、発熱体の表面に熱接触して良好な放熱性を有する。また、シート部材は第1放熱板よりも低剛性であることから、発熱体に対してストレスを与えることがない。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明にかかる熱輸送装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係る電子機器10を閉じて収納形態とした状態を示した斜視図である。
図2は、
図1に示す電子機器10を開いて使用形態とした状態を模式的に示した斜視図である。
図3は、
図2に示す電子機器10の内部構造を模式的に示した平面図である。電子機器10は、本発明の一実施形態にかかる熱輸送装置11を内部に備えている。
【0024】
図1及び
図2に示すように、電子機器10は、2つの筐体部材12A及び12Bと、背表紙部材14と、ディスプレイ16とを備える。筐体部材12A及び12Bは、カバー18で覆われている。カバー18は、例えばポリウレタンである。本実施形態では電子機器10として本のように二つ折りに折り畳み可能なタブレット型PCを例示する。電子機器10は携帯電話、スマートフォン又は電子手帳等であってもよい。
【0025】
ディスプレイ16は、例えばタッチパネル式である。ディスプレイ16は、筐体部材12A,12Bを折り畳んだ際に一緒に折り畳み可能な構造である。ディスプレイ16は、例えば柔軟性の高いペーパー構造を持った有機EL(Electro Luminescence)等のフレキシブルディスプレイであり、筐体部材12A,12Bの開閉動作に伴って開閉する。すなわち、電子機器10はいわゆるフォルダブル式である。ディスプレイ16は、折り畳み構造ではない液晶型で筐体部材12A,12Bのいずれか一方に設けられていてもよい。
【0026】
各筐体部材12A,12Bは、それぞれ背表紙部材14に対応する辺以外の3辺に側壁を起立形成した矩形の板状部材である。各筐体部材12A,12Bは、例えばステンレスやマグネシウム、アルミニウム等の金属板や炭素繊維等の強化繊維を含む繊維強化樹脂板で構成される。筐体部材12A,12Bの内面側には、支持プレートを介してディスプレイ16が固定される。筐体部材12A,12B間は、一対のヒンジ機構19,19を介して連結される。ヒンジ機構19は、筐体部材12A,12B間を
図1に示す収納形態と
図2に示す使用形態とに折り畳み可能に連結している。
図3中に1点鎖線で示す線Oは、筐体部材12A,12Bの折り畳み動作の中心となる折曲中心Oを示している。
【0027】
図3に示すように、筐体部材12Aの内面12Aaには、熱輸送装置11、メイン基板20、通信モジュール22およびSSD(Solid State Drive)24などが取付固定される。メイン基板20および熱輸送装置11は筐体部材12Aの内面12Aaにおいて広い面積を占めている。筐体部材12Aの隅には冷却ファン26が設けられている。筐体部材12Bの内面12Baには、サブ基板28、アンテナ30及びバッテリ装置32等が取付固定される。
【0028】
図4は、筐体部材12Aとその内部に設けられる構成部品との分解斜視図である。
図5は、筐体部材12Aとその内部に設けられる構成部品との斜視図である。以下の説明において、
図4、
図5におけるメイン基板20が配置される方向を上、筐体部材12Aが配置される方向を下とする。
【0029】
図4および
図5に示すように、メイン基板20の上面である実装面20aにはPoP構造のチップ34、チップセット36などが実装されている。チップ34は電子機器10に搭載された電子部品のうちで熱量が最大の発熱体である。熱輸送装置11はメイン基板20上に実装されたチップ34の熱を輸送するものであるが、メイン基板20に実装された他の発熱体(PoP構造に限らない)に対しても適用可能である。
【0030】
図6は、PoP構造であるチップ34の断面側面図である。チップ34は下層サブパッケージ34aと、上層サブパッケージ34bとから構成されている。下層サブパッケージ34aと上層サブパッケージ34bとの間の隙間は狭く、チップ34の高さ方向寸法は十分に小さい。
【0031】
下層サブパッケージ34aは、下層基板34aaと、半導体部品34abとを備える。下層基板34aaの下面には複数のハンダボール34acが設けられており、該ハンダボール34acがメイン基板20のパターンに対して電気的に接続される。半導体部品34abは、例えばCPU(Central Processing Unit)である。下層基板34aaと半導体部品34abとの間は複数のワイヤー34adによって接続されており信号伝達が行われる。半導体部品34abおよびワイヤー34adは樹脂34aeによって封止されている。
【0032】
上層サブパッケージ34bは、上層基板34baと、半導体部品34bbとを備える。上層基板34baの下面にはハンダボール34bcが設けられており、該ハンダボール34bcが下層基板34aaのパターンに対して電気的に接続される。半導体部品34bbは、例えばメモリである。上層基板34baと半導体部品34bbとの間は複数のワイヤー34bdによって接続されており信号伝達が行われる。半導体部品34bbおよびワイヤー34bdは樹脂34bedによって封止されている。このようなチップ34は、下層サブパッケージ34aと上層サブパッケージ34bとが積層構造となっていることにより、メイン基板20を小型化することができる。PoP構造のチップ34は実装効率が高いため、スペース上の制約があるフォルダブル式の電子機器10に好適である。
【0033】
図4および
図5に戻り、熱輸送装置11は、実装面20aと逆の裏面20bに沿って広がり、裏面20bにおけるチップ34の裏側に対応する位置に熱接触するメイン放熱板(第2放熱板)38と、実装面20aに沿って広がるサブ放熱板(第1放熱板)40とを備える。ここでいう放熱板の「メイン」と「サブ」という呼称は識別を容易にするためのものであり、放熱能力の優劣を限定するものではない。なお、熱接触とは伝熱可能なように接触することであり、直接的な接触以外にも伝熱体や伝熱用グリースなどを介して接触することを含む。サブ放熱板40には、平面視でチップ34を含む部分にシート取付孔42が形成されている。
【0034】
熱輸送装置11は、さらにサブ放熱板40に対してシート取付孔42を塞ぐように取り付けられた熱伝導性を有するシート部材44と、メイン基板20に固定されてシート取付孔42を覆うブラケット48と、ブラケット48から押圧されて弾性圧縮されながらシート部材44を介してチップ34を押圧する樹脂弾性体50とを備える。すなわち、樹脂弾性体50は、シート部材44とブラケット48とによって弾性圧縮されながら挟持されている。樹脂弾性体50は、平面視でチップ34とほぼ同形状である。樹脂弾性体50は、例えばスポンジおよびラバーなどであり、弾性を有する。シート取付孔42およびシート部材44については後述する。
【0035】
熱輸送装置11には、サブ放熱板38およびメイン放熱板40とメイン基板20とを接続する3つの接続具52が設けられている。3つの接続具52は、チップ34の周囲に3つがほぼ等間隔で設けられている。接続具52の詳細については後述する。
【0036】
熱輸送装置11のメイン放熱板38およびサブ放熱板40は、平面視でメイン基板20よりも大きく設定されている。なお、メイン基板20では、チップ34を含む多くの部品が実装面20aに実装されているが、設計条件により裏面20bにもある程度の部品が実装されていてもよい。
【0037】
メイン放熱板38は、メイン基板20を介してチップ34と熱接触するヒートパイプ53と、ヒートパイプ53と熱接触して熱を放熱させるヒートスプレッダー54とを備えている。
【0038】
ヒートパイプ53は、例えば両端部を接合して内側に密閉空間を形成した金属管を潰した構成であり、その密閉空間内に封入した作動流体の相変化を利用して熱を高効率に輸送可能な熱輸送装置である。ヒートパイプ53は、一部がメイン基板20の裏面20bにおけるチップ34の裏側と熱接触するように配置され、端部53aが冷却ファン26の送風口に接続された冷却ファン26と熱伝達可能に接続されている。ヒートパイプ53は、伝熱板55を介してメイン基板20と熱接触するが、メイン基板20と直接的に接していてもよい。
【0039】
冷却ファン26は、端部53aの近傍に配置され、筐体部材12Aの一側面における通気孔12Acおよび他の側面における通気孔12Adのいずれか一方から吸気して他方に排気し、ヒートパイプ53の熱を放出させる。
【0040】
ヒートスプレッダー54は、ヒートパイプ53における端部53a以外の部分を囲って固定されている第1厚み部分54aと、該第1厚み部分54aのほぼ全周を囲ってその側面に固定されている第2厚み部分54bとを有する。ヒートパイプ53と第1厚み部分54aとは同じ厚みである(
図9参照)。第2厚み部分54bは第1厚み部分54aよりも薄い(
図9参照)。
【0041】
第1厚み部分54aは第2厚み部分54bよりも厚いため、突出する端部53aを安定して支持可能である。ヒートパイプ53、第1厚み部分54aおよび第2厚み部分54bは内面12Aaに沿って広がっており、上下方向には重ならない。第1厚み部分54aはヒートパイプ53と同等の面積を有する。第2厚み部分54bは、第1厚み部分54aよりも面積が広い。
【0042】
ヒートパイプ53と第1厚み部分54aとは、例えばプレスや圧入によって固定され、接触している。ヒートパイプ53と第1厚み部分54aとの圧入は、例えば金属管と第1厚み部分54aの母材とをローラの転動によって同時に加圧し、金属管を潰してヒートパイプ53を形成するのと同時にその側面に対して第1厚み部分54aを圧入することができる。
【0043】
第1厚み部分54aと第2厚み部分54bとは、例えばプレスや圧入によって固定され、接触している。第1厚み部分54aと第2厚み部分54bとの境界は、ほぼ全周に亘って連続的に設けられた櫛歯状の噛み合い部で結合していてもよい。第2厚み部分54bの隅には、冷却ファン26を避ける切欠きが形成されている。
【0044】
伝熱板55およびヒートスプレッダー54は伝熱性の高い金属板であって、例えばアルミニウム、銅、ステンレスまたはこれらの合金である。ヒートスプレッダー54の第1厚み部分54aと第2厚み部分54bとは、同じ材質でもよいし異なる材質でもよい。第2厚み部分54bよりも厚い第1厚み部分54aをアルミニウムにすると軽量化を図ることができる。第1厚み部分54aよりも薄い第2厚み部分54bを銅にすると高い伝熱性によって熱を広く拡散することができる。
【0045】
ヒートパイプ53は一部が伝熱板55を介してメイン基板20の裏面20bと熱接触してヒートスプレッダー54および冷却ファン26に伝熱する。ヒートスプレッダー54は十分に広い面積であり、ヒートパイプ53から受熱して放熱させる。また、ヒートパイプ53の端部53aが冷却ファン26から風を受けることにより、さらに冷却効果が高まる。ただし、熱条件によっては冷却ファン26を省略してもよい。
【0046】
サブ放熱板40はヒートスプレッダーであり、例えばメイン放熱板38の第2厚み部分54bと同厚で同材を適用することができる。サブ放熱板40は、平面視でメイン放熱板38とほぼ同じ形状となっており適度に広い面積を有する。サブ放熱板40はメイン基板40に向かって凸形状の凸部56を備える。凸部56は、例えばプレス成型によって形成され、上方に開口する緩やかな略円錐台形状であって、底部56aおよびテーパ部54bを備える。凸部56の下面である底部56aには上記のシート取付孔42が形成されている。シート取付孔42は、チップ34よりもやや大きい矩形である。
【0047】
サブ放熱板40には3つのやや長尺なアーム孔57が設けられている。アーム孔57は後述するアーム62が挿入される孔である。3つのアーム孔は凸部56の周囲に等間隔で放射状に設けられており、その一部はテーパ部56bにかかっている。
【0048】
サブ放熱板40は内面12Aaに設けられた複数のボス58aに対してビス59によって固定される。メイン基板20は内面12Aaに設けられた複数のボス58bに対して図示しないビスによって固定される。
【0049】
図7は、ブラケット48の斜視図である。ブラケット48は円盤60と、3つのアーム62とを備える。ブラケット48は、例えばステンレス板をカットしてプレス成型することにより構成され、薄型でありながら適度な剛性を有する。アーム62の途中部分には下向き段差62aがあり、該アーム62の先端部に設けられたボルト座62bは円盤60よりもやや下がっている。3つのアーム62は等間隔で放射状に形成されている。
【0050】
ボルト座62bには、ボルト64(
図9参照)が回転可能に設けられている。ボルト座62bの上面にはヘッド部64aが設けられ、雄ネジ部64bは孔62d(
図9参照)を通ってボルト座62bよりも下方に突出している。雄ネジ部64bにはワッシャ66(
図9参照)が脱落しないように嵌め込まれている。
【0051】
図8は、シート部材44の斜視図である。シート部材44は外周側のフランジ部44aと内周側の丸い底部44bと、フランジ部44aと底部44bとの間をつなぐテーパ部44cとを有する。テーパ部44cはメイン基板20に向かって凸形状であり、上記のテーパ部56bに嵌り合うような傾斜となっている。シート部材44には3つのやや深いアーム切欠44dが形成されている。アーム切欠44dは、アーム62が挿入される切り欠きである。3つのアーム切欠44dは底部44bの周囲でテーパ部44cからフランジ部44aにかけて、等間隔で放射状に設けられている。
【0052】
図9は、熱輸送装置11の断面側面図である。
図9では、3本のアーム62のうち2本の中心に沿った断面を示している。
【0053】
図9に示すように、接続具52はスペーサ68と、スタッド70と、上記のボルト64とから構成されている。スタッド70は、第1厚み部分54aに設けられた圧入孔38aに対して圧入・固定されて上方に向かって立設している。
【0054】
スタッド70はメイン基板20のスルーホール72を貫通している。なお、スタッド70が貫通するスルーホール72は、メイン基板20における回路パターンの一部として銅メッキ処理されていてもよいし、あるいは銅メッキ処理のない単なるスタッド70を通すだけの孔としてもよい。スルーホール72に銅メッキ処理がなされている場合には、スルーホール72およびスタッド70の少なくとも一方に絶縁被膜が設けられていてもよい。実装面20aおよび裏面20bにおけるスルーホール72の周囲にはグランドパッド72aが設けられている。
【0055】
スタッド70は圧入孔38aに対して、例えばセレーション構造で結合されており、上下動不能でかつ回転不能に固定されている。スタッド70は、第2厚み部分54bと比較して厚い第1厚み部分54aに固定されていることから、固定しやすくかつ安定している。スタッド70には雌ネジ部70aが形成されている。
【0056】
ボルト64の雄ネジ部64bは、スペーサ68の中空部を通ってスタッド70の雌ネジ部70aに螺合している。スペーサ68はブラケット48のアーム62とメイン基板20とによって挟持される。メイン基板20はスペーサ68とメイン放熱板38とによって挟持されている。このような接続具52により、ブラケット48はボルト64、スペーサ66およびスタッド70によってメイン基板20およびメイン放熱板38に固定されている。なお、接続具52はサブ放熱板40は対しては接続されていない。
【0057】
アーム62はサブ放熱板40のアーム孔57に挿入されており、該サブ放熱板40とは干渉しない。アーム62はシート部材44のアーム切欠44dに嵌り込んでおり、該シート部材44とは干渉しない。凸部56のテーパ部56bが下向きに凸形状であるとともに、アーム62の段差62aが下向きであることから、ヘッド部64aはサブ放熱板40よりも下側に奥まった位置に配置されており、熱輸送装置11が薄型化されている。
【0058】
シート部材44はサブ放熱板40の下面に固定されている。具体的には、シート部材44におけるフランジ部44aの上面が凸部56の周辺部に固定され、シート部材44におけるテーパ部44cの上面が凸部56におけるテーパ部56bに固定され、シート部材44における底部44bの縁が凸部56の底部56aに固定されている。凸部56の底部56aにはシート取付孔42が形成されていることから、シート部材44における底部44bの中央部分はブラケット48に対しては固定されずに弾性変形が可能となっている。すなわち、シート部材44は、サブ放熱板40に対してシート取付孔42を塞ぐように取り付けられている。シート部材44とサブ放熱板40との固定は、例えば熱伝導性のある接着剤により接着する。
【0059】
シート部材44は、サブ放熱板40よりも薄く、低剛性である。シート部材44はサブ放熱板40とは別に製造されるものであり、サブ放熱板40の材質や板厚等に影響を受けずに十分低剛性に製造可能である。シート部材44は、例えば0.1mm程度である。サブ放熱板40は、例えば0.2mm程度である。
【0060】
シート部材44は、例えば電熱性の接着剤によってサブ放熱板40に固定されている。シート部材44は、例えばグラファイトシート、銅箔およびアルミ箔などである。グラファイトシートは熱伝導性が良好であり、チップ34の発熱量が大きい場合にはシート部材44の材質として好適である。
【0061】
シート部材44における上面がシート取付孔42の開口部で露呈している箇所は、その下面がチップ34の表面に熱接触している。シート部材44とチップ34とは、例えば熱伝導性のある接着剤により接着する。これにより、チップ34が発生する熱はシート部材44を介してサブ放熱板40に伝熱し、サブ放熱板40によって拡散および放熱される。このように、本実施形態にかかる熱輸送装置11および電子機器10は良好な放熱性を有する。
【0062】
シート部材44はチップ34に接することから、チップ34に直接的に接することのないサブ放熱板40よりも熱伝達性が高いことが望ましい。チップ34とシート取付孔42との横方向の幅Wは適度に狭く設定することが望ましい。幅Wを狭くすることにより、それだけサブ放熱板40の面積および体積が大きくなり熱容量を確保することができる。また、シート取付孔42が小さくなりサブ放熱板40の形状が安定する。さらにシート部材44の使用面積を抑制することができ、比較的高価なグラファイトシートを用いる場合にコスト削減効果がある。幅Wは、例えば0.5〜2mm程度とし、さらに好適には1mm程度にするとよい。
【0063】
サブ放熱板40は、シート部材44よりは厚く高剛性でありしかも広い面積を有することから、仮にシート部材44を介さずに直接的にチップ34に当接していると、組み立て精度によっては該チップ34に対してやや大きい外力を加えうる。
【0064】
これに対して、本実施形態にかかる熱輸送装置11および電子機器10においては、サブ放熱板40にシート取付孔42が形成され、該シート取付孔42を塞ぐように取り付けられた低剛性のシート部材44がチップ34の表面に当接することから、サブ放熱板40に起因する外力や振動はシート部材44によって吸収され、チップ34に加わる力が抑制される。したがって、チップ34に対してストレスを与えることがなく、チップ34が保護され、例えばハンダボール34ac,34bcなどが損傷する懸念(例えば、クラックなどに起因する接触不良)がなくなる。シート部材44の下面はチップ34から上向きの力を受けるためサブ放熱板40に対して外れにくい。ただし、設計条件によってはシート部材44をサブ放熱板40の上側に固定してもよい。
【0065】
シート部材44は低剛性であることからシート取付孔42で囲われた範囲で適度に弾性変形が可能である。したがって、サブ放熱板40が多少傾いていてもシート部材44はチップ34の表面に合うように弾性変形し、両者は面接触する。これにより、チップ34とシート部材44との接触面積が広く確保され、伝熱しやすくなる。
【0066】
また、熱輸送装置11では、樹脂弾性体50がシート部材44とブラケット48とによって弾性圧縮されながら挟持されている。シート部材44は低剛性で弾性変形可能であることから、樹脂弾性体50から下方向押圧されることで適度に変形してチップ34に一層確実に密着する。これにより、チップ34とシート部材44との伝熱性がさらに向上する。ブラケット48のアーム62は等間隔で3本設けられていることから、バランスよく底部56aおよび樹脂弾性体50を押圧することができる。
【0067】
ところで、PoP構造であるチップ34の下層サブパッケージ34a(
図6参照)は、発熱量の大きいCPUであるが、上層サブパッケージ34bに覆われていることから単体では放熱性に劣る。これに対して、本実施形態にかかる熱輸送装置11および電子機器10においては、メイン放熱板38およびサブ放熱板40によって良好な放熱性を実現し、チップ34が過度に昇温することを防止している。すなわち、メイン基板20に実装された発熱体であるチップ34に対して、上面側と下面側とから受熱および放熱することができ、チップ34が過度に昇温することを防止できる。したがって、チップ34として消費電力の大きい部品を適用することができる。
【0068】
シート部材44を介してチップ34に熱接触する部分である凸部56は下向きの凸形状になっていていることから、接続具52との干渉を回避しながらシート部材44をチップ34に接触しやすくなっている。また、サブ放熱板40はシート部材44よりは高剛性であるが、テーパ部56bはその形状に基づいて多少の弾性があり、シート部材44をチップ34に面接触させやすく、良好な熱接触状態となる。
【0069】
一方、メイン放熱板38はメイン基板20の裏面20bにおけるチップ34の裏側に対応する位置に熱接触し、チップ34の熱をハンダボール34ac、メイン基板20および伝熱板55を介して受熱して放熱する。メイン放熱板38は、チップ34の裏面部にヒートパイプ53が設けられており、しかもその回りには比較的厚い第1厚み部分54aが接続されていることから伝熱性が高い。さらに第1厚み部分54aの側面には広い第2厚み部分54bが接続されていることから放熱性が高い。
【0070】
上述したように、本実施の形態に係る熱輸送装置および電子機器10では、メイン放熱板38に対してシート取付孔42を塞ぐように取り付けられた熱伝導性を有するシート部材44を備えており、該シート部材44は、チップ34の表面に熱接触して良好な放熱性を有する。また、シート部材44はメイン放熱板38よりも低剛性であることから、チップ34に対してストレスを与えることがない。
【0071】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。