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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-174937(P2021-174937A)
(43)【公開日】2021年11月1日
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/04 20060101AFI20211004BHJP
   H01F 1/26 20060101ALI20211004BHJP
   H01F 27/29 20060101ALN20211004BHJP
【FI】
   H01F17/04 F
   H01F1/26
   H01F27/29 123
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2020-79655(P2020-79655)
(22)【出願日】2020年4月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 智史
(72)【発明者】
【氏名】小城 真一
(72)【発明者】
【氏名】柏 智男
(72)【発明者】
【氏名】大野 俊一
【テーマコード(参考)】
5E041
5E070
【Fターム(参考)】
5E041AA00
5E041BB03
5E041CA01
5E070AA01
5E070AB03
5E070BA12
5E070BB03
5E070CB02
5E070CB12
5E070CB13
5E070EA01
5E070EB04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】外部から基体内への異物の侵入ならびに、外部電極と内部導体との導通不良を十分に防ぐことができ、製造過程において他のコイル部品が付着しないコイル部品を提供する。
【解決手段】コイル部品は、基体と、基体内に設けられた内部導体(コイル導体25)と、内部導体の一端と電気的に接続される第1外部電極と、内部導体の他端と電気的に接続される第2外部電極と、を備える。基体は、複数の金属磁性粒子31、41と、複数の金属磁性粒子の間にある樹脂部32、42と、空隙33、43と、を含む。基体は、第1領域10Aと、第1領域の周囲に設けられており第1領域の第1面積空隙率よりも大きな第2面積空隙率を有する第2領域10Bと、を有する。内部導体は、基体の第1領域内に設けられる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の金属磁性粒子(31、41)と、前記複数の金属磁性粒子の間にある樹脂部(32、42)と、空隙(33、43)と、を含み、第1領域(10A)と、前記第1領域の周囲に設けられており前記第1領域の第1面積空隙率よりも大きな第2面積空隙率を有する第2領域(10B)と、を有する基体(10)と、
前記基体の前記第1領域内に設けられた内部導体(25)と、
前記内部導体の一端と電気的に接続される第1外部電極(21)と、
前記内部導体の他端と電気的に接続される第2外部電極(22)と、
を備えるコイル部品(1)。
【請求項2】
コイル軸の周りに延びており、第1導体パターン(C11〜C14)と、前記コイル軸に沿う方向において前記第1導体パターンと対向する第2導体パターン(C11〜C14)と、を有する内部導体(125)と、
複数の金属磁性粒子(31、41)と、前記複数の金属磁性粒子の間にある樹脂部(32、42)と、空隙(33、43)と、を含み、前記第1導体パターンと前記第2導体パターンとの間にある導体間領域(10D)を含み前記内部導体を覆う第1領域(10A)と、前記第1領域の周囲に設けられており前記導体間領域の第1面積空隙率よりも大きな第2面積空隙率を有する第2領域(10B)と、を有する基体(10)と、
前記内部導体の一端と電気的に接続される第1外部電極(21)と、
前記内部導体の他端と電気的に接続される第2外部電極(22)と、
を備えるコイル部品。
【請求項3】
前記第1領域の前記内部導体を通過する断面における前記複数の金属磁性粒子の間の空間の面積は、前記第2領域の前記断面における前記複数の金属磁性粒子の間の空間の面積よりも小さい
請求項1又は2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記基体は、前記第2面積空隙率よりも大きな第3面積空隙率を有しており前記基体の外表面の少なくとも一部を画定する第3領域(10C)を有する、
請求項1から3のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記基体は、前記第1面積空隙率よりも大きく前記第2面積空隙率よりも小さな第3面積空隙率を有しており前記基体の外表面の少なくとも一部を画定する第3領域を有する、
請求項1から3のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記金属磁性粒子は、前記金属磁性粒子を構成する元素の酸化物を含む、
請求項1から5のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記第1領域における単位体積当たりの樹脂量は、前記第2領域における単位体積当たりの樹脂量よりも大きい、
請求項1から6のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のコイル部品を備える回路基板(2)。
【請求項9】
請求項8に記載の回路基板を備える電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
磁性材料から形成された磁性基体と、当該磁性基体の表面に設けられた外部電極と、当該磁性基体内に設けられており外部電極と電気的に接続される内部導体と、を備えるコイル部品が従来から知られている。
【0003】
コイル部品の磁性基体の材料として様々な磁性材料が用いられている。例えば、コイル部品用の磁性材料としてフェライトが広く用いられている。フェライトは、透磁率が高いことから、コイル部品の基体用の磁性材料として適している。
【0004】
フェライト以外の電子部品用の磁性材料として、金属磁性粒子を含む金属磁性材料が知られている。金属磁性材料はフェライトよりも飽和磁束密度が高いため、金属磁性粒子を含む基体を備えるコイル部品は、優れた直流重畳特性を示す。フェライト材料から作成された基体においては、フェライト粒子が焼結した粒界に隙間が存在するため、外部から水などの異物が侵入する可能性がある。金属磁性材料から作製された基体においては、隣接する金属磁性粒子の間にフェライト材料から作成された基体の数倍の大きさの隙間が存在する。このため、金属磁性粒子を含む基体においては、フェライトから作製される基体に比べて、基体内の隙間に外部から水などの異物が非常に多く侵入する。金属磁性粒子間の隙間に多くの異物が侵入すると、基体の絶縁信頼性や磁気特性に悪影響を与える可能性がある。また、基体に含まれる隙間が大きくなると、基体の強度低下の原因となる。
【0005】
基体内への異物の侵入防止や基体の強度向上のために、金属磁性粒子の間の隙間に樹脂を充填したコイル部品が知られている。かかるコイル部品は、特開2007−027354号公報及び特開2012−238840号公報に開示されている。樹脂は、典型的には、含浸処理により基体内の金属磁性粒子間の間隙に充填される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−027354号公報
【特許文献2】特開2012−238840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
含浸処理において基体内に注入された樹脂は、金属磁性粒子の表面に沿って濡れ拡がるので、基体内において金属磁性粒子の表面に樹脂膜が形成される。従来の含浸処理においては、樹脂の注入量が少ないと樹脂膜によって金属磁性粒子間の間隙が十分に閉塞されず、外部から基体内への異物の侵入を十分に防ぐことができないという問題がある。他方、外部からの異物の侵入を防止するのに十分な量の樹脂を注入すると、基体の外表面付近で樹脂が過剰となるため、基体の外表面にも樹脂が付着してしまうという問題がある。基体の外表面に付着した樹脂は、外部電極と内部導体との導通不良の原因となり得る。また、コイル部品の基体表面に付着した樹脂により、製造過程において当該コイル部品に他のコイル部品が付着してしまうおそれがある。
【0008】
本発明の目的の一つは、上記の従来のコイル部品における問題を解決又は緩和することである。本発明のより具体的な目的の一つは、基体の外表面への樹脂の付着を抑制しつつ、金属磁性粒子の間への異物の侵入を抑制することが可能なコイル部品を提供することである。本発明のこれ以外の目的は、本明細書全体の記載を通じて明らかにされる。本明細書に開示される発明は、前記の課題に代えて又は前記の課題に加えて、本明細書全体の記載から把握される課題を解決するものであってもよい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一又は複数の実施形態によるコイル部品は、基体と、前記基体内に設けられた内部導体と、前記内部導体の一端と電気的に接続される第1外部電極と、前記内部導体の他端と電気的に接続される第2外部電極と、を備える。本発明の一又は複数の実施形態において、基体は、複数の金属磁性粒子と、前記複数の金属磁性粒子の間にある樹脂部と、空隙と、を含む。本発明の一又は複数の実施形態において、基体は、第1領域と、前記第1領域の周囲に設けられており前記第1領域の第1面積空隙率よりも大きな第2面積空隙率を有する第2領域と、を有する。本発明の一又は複数の実施形態において、内部導体は、基体の第1領域内に設けられている。
【0010】
本発明の一又は複数の実施形態によるコイル部品において、内部導体は、コイル軸の周りに延びている。この内部導体は、第1導体パターンと、コイル軸に沿う方向において前記第1導体パターンと対向する第2導体パターンとを有する。本発明の一又は複数の実施形態において、基体の第1領域は、前記第1導体パターンと前記第2導体パターンとの間にある導体間領域を含む。本発明の一又は複数の実施形態において、基体の第2領域の第2面積空隙率は、導体間領域の第1面積空隙率よりも大きい。
【0011】
本発明の一又は複数の実施形態において、前記第1領域の前記内部導体を通過する断面における前記複数の金属磁性粒子の間の空間の面積は、前記第2領域の前記断面における前記複数の金属磁性粒子の間の空間の面積よりも小さい。
【0012】
本発明の一又は複数の実施形態において、前記基体は、前記第2面積空隙率よりも大きな第3面積空隙率を有しており前記基体の外表面の少なくとも一部を画定する第3領域を有する。
【0013】
本発明の一又は複数の実施形態において、前記基体は、前記第1面積空隙率よりも大きく前記第2面積空隙率よりも小さな第3面積空隙率を有する第3領域を有する。
【0014】
本発明の一又は複数の実施形態において、前記金属磁性粒子は、前記金属磁性粒子を構成する元素の酸化物を含む。
【0015】
本発明の一又は複数の実施形態において、前記第1領域における単位体積当たりの樹脂量は、前記第2領域における単位体積当たりの樹脂量よりも大きい。
【0016】
本発明の一又は複数の実施形態による回路基板は、上記のコイル部品の少なくとも一つを備える。
【0017】
本発明の一又は複数の実施形態による電子機器は、上記の回路基板を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一又は複数の実施形態によれば、基体の外表面への樹脂の付着を抑制しつつ、金属磁性粒子の間への異物の侵入を抑制することが可能なコイル部品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態によるコイル部品の斜視図である。
図2図1のI−I線に沿ったコイル部品の断面を模式的に示す図である。
図3図1のII−II線に沿ったコイル部品の断面を模式的に示す図である。
図4】基体10の領域Aを拡大して示す拡大断面図である。
図5】本発明の別の実施形態によるコイル部品のI−I線に沿った断面を模式的に示す図である。
図6図5のコイル部品のII−II線に沿って切断した断面を模式的に示す図である。
図7】本発明の別の実施形態によるコイル部品のI−I線に沿った断面を模式的に示す図である。
図8図7のコイル部品のII−II線に沿って切断した断面を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、適宜図面を参照し、本発明の様々な実施形態を説明する。なお、複数の図面において共通する構成要素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。
【0021】
まず、図1から図4を参照して、本発明の一実施形態によるコイル部品1について説明する。図1は、本発明の一実施形態によるコイル部品1の斜視図であり、図2及び図3はそれぞれ、図1のI−I線及びII−II線に沿ったコイル部品1の断面をそれぞれ模式的に示す図である。図4は、図2に示されているコイル部品1の断面の一部を拡大して示す拡大断面図である。
【0022】
これらの図には、コイル部品1の一例として、ビーズインダクタが示されている。本発明を適用可能なコイル部品1は、図示されているビーズインダクタに限られない。本発明を適用可能なコイル部品1は、例えば、ビーズインダクタ以外の各種インダクタ、トランス、フィルタ、リアクトル及びこれら以外の様々なコイル部品が含まれる。コイル部品1は、カップルドインダクタ、チョークコイル及びこれら以外の様々な磁気結合型コイル部品として使用され得る。コイル部品1は、例えば、DC/DCコンバータに用いられるインダクタであってもよい。コイル部品1の用途は、本明細書で明示されるものには限定されない。
【0023】
コイル部品1は、実装基板2aに実装されている。このコイル部品1及び実装基板2aは、回路基板2の一部である。つまり、回路基板2は、コイル部品1と、このコイル部品1が実装される実装基板2aと、を備える。実装基板2aには、2つのランド部3が設けられている。コイル部品1は、外部電極21、22のそれぞれと実装基板2aの対応するランド部3とを接合することで実装基板2aに実装されている。回路基板2は、様々な電子機器に搭載され得る。回路基板2が搭載され得る電子機器には、スマートフォン、タブレット、ゲームコンソール、自動車の電装品及びこれら以外の様々な電子機器が含まれる。
【0024】
図示の実施形態におけるコイル部品1は、複数の金属磁性粒子を含む基体10と、この基体10内に設けられた内部導体25と、内部導体25の一端と電気的に接続された外部電極21と、内部導体25の他端と電気的に接続された外部電極22と、を備える。
【0025】
本明細書においては、文脈上別に解される場合を除き、コイル部品1の「長さ」方向、「幅」方向及び「厚さ」方向はそれぞれ、図1の「L軸」方向、「W軸」方向及び「T軸」方向とする。
【0026】
基体10は、磁性材料で構成され、概ね直方体形状を有する。本発明の一の実施形態の基体10は、長さ寸法(L軸方向の寸法)が1.6mm〜4.5mm、幅寸法(W軸方向の寸法)が0.8mm〜3.2mm、厚さ寸法(T軸方向の寸法)が0.8mm〜5.0mmとなるように形成されている。基体10の寸法は、本明細書で具体的に説明される寸法には限定されない。本明細書において「直方体」又は「直方体形状」という場合には、数学的に厳密な意味での「直方体」のみを意味するものではない。
【0027】
基体10は、第1の主面10a、第2の主面10b、第1の端面10c、第2の端面10d、第1の側面10e及び第2の側面10fを有する。基体10は、これらの6つの面によってその外面が画定されている。第1の主面10aと第2の主面10bとはそれぞれ厚さ方向両端の面を成し、第1の端面10cと第2の端面10dとはそれぞれ長さ方向両端の面を成し、第1の側面10eと第2の側面10fとはそれぞれ幅方向両端の面を成している。
【0028】
図1に示されるように、第1の主面10aは基体10の上側にあるため、第1の主面10aを「上面」と呼ぶことがある。同様に、第2の主面10bを「下面」と呼ぶことがある。コイル部品1は、第2の主面10bが基板2と対向するように配置されるので、第2の主面10bを「実装面」と呼ぶこともある。コイル部品1の上下方向に言及する際には、図1の上下方向を基準とすることがある。
【0029】
本発明の一又は複数の実施形態において、外部電極21及び外部電極22は、基体10の表面に設けられている。外部電極21と外部電極22とは、長さ方向において互いに離間して配置されている。具体的には、外部電極21は、基体10の第1の主面10a、第2の主面10b、第1の端面10c、第1の側面10e、及び第2の側面10fに設けられており、外部電極22は、基体10の第1の主面10a、第2の主面10b、第2の端面10d、第1の側面10e、及び第2の側面10fに設けられている。各外部電極21、22の形状及び配置は、図示された例には限定されない。例えば、外部電極21及び外部電極22の少なくとも一方は、基体10の第1の側面10e及び第2の側面10fに沿って延びるフランジ部を有していなくてもよい。
【0030】
一又は複数の実施形態において、基体10は、複数の金属磁性粒子及びこの金属磁性粒子の間の間隙に設けられた樹脂部を含む。一又は複数の実施形態において、基体10は、複数の金属磁性粒子及びバインダー樹脂を含む複合磁性材料から作成される。金属磁性粒子は、互いに異なる平均粒径を有する複数の種類の金属磁性粒子を含む混合粒子であってもよい。金属磁性粒子が大径の金属磁性粒子と小径の金属磁性粒子を含む場合、大径の金属磁性粒子の平均粒径は例えば10μmであり、小径の金属磁性粒子の平均粒径は例えば1μmである。バインダー樹脂は、複数の金属磁性粒子同士を結着させる。バインダー樹脂は、例えば、絶縁性に優れた熱硬化性樹脂である。基体10は、バインダー樹脂を介さずに金属磁性粒子同士が結合している圧粉体であってもよい。
【0031】
図2及び図3に示されているように、一又は複数の実施形態において、基体10は、第1領域10Aと、第2領域10Bと、第3領域10Cと、を有する。一又は複数の実施形態において、第2領域10Bは、第1領域10Aの周囲に設けられている。つまり第2領域10Bは、第1領域10Aの外側に配置されている。一又は複数の実施形態において、第2領域10Bの内表面は、第1領域10Aの外表面に接している。一又は複数の実施形態において、第3領域10Cは、第2領域10Bを覆っている。つまり第3領域10Cは、第2領域10Bの外側に配置されている。一又は複数の実施形態において、第3領域10Cの内表面は、第2領域10Bの外表面に接している。図示の実施形態において、第3領域10Cは、基体10の外表面の大部分を画定している。図示の実施形態において、第1領域10Aの一部は、第2領域10B及び第3領域10Cを貫通して、第3領域10Cから露出している。
【0032】
一又は複数の実施形態において、内部導体25は、磁性基体10内に設けられている。図示の実施形態においては、内部導体25は、基体10の第1領域10A内に配置されている。内部導体25は、その一端が第1端面10cから磁性基体10の外側に向かって露出しており、当該一端において外部電極21と接続されている。また、内部導体25の他端は、第2端面10dから磁性基体10の外側に向かって露出しており、当該他端において外部電極22と接続されている。このように、内部導体25は、その一端が外部電極21に接続され、その他端が外部電極22に接続されている。
【0033】
一又は複数の実施形態において、内部電極25は、平面視において(L軸から見た視点において)外部電極21から第2外部電極22に向かって直線状に延びている。つまり、内部導体25は、平面視したときに、磁性基体10内で互いに対向して配置される部分を有していない。本明細書においては、内部導体25が磁性基体10内において平面視で互いに対向する部分を有しないときに、当該内部導体25は、外部電極21から外部電極22に向かって直線状に延びるということができる。図示の実施形態において、内部導体25は、直方体形状を有している。内部導体25は、単一の導体パターンのみを有していてもよいし、基体10内では互いから電気的に絶縁されている複数の導体パターンを有していてもよい。内部導体25が複数の導体パターンを有する場合には、各導体パターン同士は同一の形状を有しており、隣接する導体パターン同士は、基体10の第1領域10Aの一部によって隔てられている。
【0034】
上述したとおり、基体10は、複数の金属磁性粒子を含む。一又は複数の実施形態において、基体10は、金属磁性粒子をバインダー樹脂及び溶剤と混練して得られる磁性体ペーストをシート状に成型して磁性体シートを作製し、この磁性体シートを積層して積層体を作製し、この積層体を加熱して得られる素体に樹脂を含浸させることで作製される。よって、基体10は、樹脂から成る樹脂部を含む。
【0035】
図4を参照して、基体10についてさらに説明する。図4は、コイル部品1の領域Aを拡大して示す拡大断面図である。領域Aは、コイル部品1の断面の一部を占める領域であり、内部導体25の一部、基体10の第1領域10Aの一部、及び基体10の第2領域10Bの一部を含んでいる。図4に示されている実施形態では、基体10は、複数の金属磁性粒子31及び複数の金属磁性粒子41を含む。金属磁性粒子31は第1領域10Aに含まれており、金属磁性粒子41は第2領域10Bに含まれている。金属磁性粒子31と金属磁性粒子41とは、同一種類の粒子であってもよく、互いに異なる種類の粒子であってもよい。一又は複数の実施形態において、金属磁性粒子31の平均粒径は、金属磁性粒子41の平均粒径よりも小さい。基体10に含まれる金属磁性粒子(金属磁性粒子31、41を含む)の平均粒径は、当該磁性基体10をその厚さ方向(T方向)に沿って切断して断面を露出させ、当該断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により2000倍〜5000倍の倍率で撮影した写真に基づいて粒度分布を求め、この粒度分布に基づいて定められる。例えば、SEM写真に基づいて求められた粒度分布の50%値を金属磁性粒子30の平均粒径とすることができる。
【0036】
金属磁性粒子31は、互いに平均粒径の異なる複数種類の粒子を混合した混合粒子であってもよい。つまり、第1領域10Aは、互いに平均粒径の異なる複数種類の金属磁性粒子を含んでもよい。同様に、金属磁性粒子41は、互いに平均粒径の異なる複数種類の粒子を混合した混合粒子であってもよい。つまり、第2領域10Bは、互いに平均粒径の異なる複数種類の金属磁性粒子を含んでもよい。
【0037】
領域Aには含まれていないが、第3領域10Cも第1領域10A及び第2領域10Bと同様に、複数の金属磁性粒子を含んでもよい。
【0038】
基体10に含まれる金属磁性粒子(金属磁性粒子31,41を含む。)は、様々な軟磁性材料から成る。金属磁性粒子は、例えば、Feを主成分とする。具体的には、基体10に含まれる金属磁性粒子は、(1)Fe、Ni等の金属粒子、(2)Fe−Si−Cr合金、Fe−Si−Al合金、Fe−Ni合金等の結晶合金粒子、(3)Fe−Si−Cr−B−C合金、Fe−Si−Cr−B合金等の非晶質合金粒子又は(4)これらが混合された混合粒子である。磁性基体10に含まれる金属磁性粒子の組成は、前記のものに限られない。
【0039】
金属磁性粒子の各々は、その表面に設けられた酸化膜(不図示)を含んでもよい。金属磁性粒子の表面の酸化膜は、当該金属磁性粒子の構成元素の酸化物を含む。例えば、当該酸化膜は、例えば、Fe23、SiO2、CrO、又はこれら以外の酸化物を含むことができる。金属磁性粒子の各々は、その表面に設けられた絶縁性のコーティング膜(不図示)を含んでもよい。このコーティング膜は、ガラス、樹脂又はこれら以外の絶縁性に優れた材料から成る絶縁膜である。
【0040】
図4には、第1領域10Aに含まれる単位領域10A1の拡大断面及び第2領域10Bに含まれる単位領域10B1の拡大断面が拡大して示されている。これらの拡大断面図に示されているように、基体10において、複数の金属磁性粒子同士の間には間隙が存在し、この間隙には樹脂が設けられている。単位領域10A1と単位領域10B1は、同じ形状及び大きさの領域である。単位領域10A1及び単位領域10B1は、例えば、10μm四方の正方形の領域である。単位領域10A1の拡大図に示されているように、第1領域10Aにおいて、複数の金属磁性粒子31の間には間隙34が存在し、この間隙34には樹脂部32が設けられている。同様に、第2領域10Bにおいて、複数の金属磁性粒子41同士の間には間隙44が存在し、この間隙44には樹脂部42が設けられている。図示は省略されているが、第3領域10Cにおいても、金属磁性粒子同士の間の間隙に樹脂部が設けられる。本明細書において、金属磁性粒子の間の間隙は、樹脂が充填可能な金属磁性粒子の間の空間を意味する。
【0041】
一又は複数の実施形態においては、基体10を厚さ方向に沿って内部導体25を通過するように切断した断面において、第1領域10Aにおける金属磁性粒子31間の間隙34の各々の面積は、第2領域10Bにおける金属磁性粒子41間の間隙44の各々の面積よりも小さい。同様に、基体10を厚さ方向に沿って切断して露出させた断面において、第1領域10Aにおける金属磁性粒子31間の間隙34の面積は、第3領域10Cにおける金属磁性粒子間の不図示の間隙の面積よりも小さい。第1領域10Aにおける金属磁性粒子31間の間隙34の面積と第2領域10Bにおける金属磁性粒子41間の間隙44の面積とを比較する場合には、第1領域10Aにおいて単位領域10A1に相当する複数(例えば、5つ)の単位領域を定めてその複数の単位領域における間隙34の面積の平均値を求め、また、第2領域10Bにおいて単位領域10B1に相当する複数(例えば、5つ)の単位領域を定めてその複数の単位領域における間隙44の面積の平均値を求め、この両方の面積の平均値を比較して両者の大小を判定することができる。第1領域10Aにおける金属磁性粒子31間の間隙34の面積と第3領域10Cにおける金属磁性粒子間の間隙の面積とを比較する場合も同様の手法で比較される。
【0042】
第1領域10Aにおける金属磁性粒子31間の間隙34の面積を第2領域10Bにおける金属磁性粒子41間の間隙44の面積よりも小さくするためには、様々な手法を用いることができる。この手法の例を以下で説明する。
【0043】
第1に、第1領域10Aの作製に用いられる磁性体ペーストにおけるバインダー樹脂の含有比率を、第2領域10Bの作製に用いられる磁性体ペーストにおけるバインダー樹脂の含有比率よりも小さくすることにより、第1領域10Aにおける金属磁性粒子31間の間隙34の面積を第2領域10Bにおける金属磁性粒子41間の間隙44の面積よりも小さくすることができる。基体10は主に金属磁性粒子で構成されており、この金属磁性粒子は、フェライトなどの従来からの材料とは異なり、熱処理の前後でその粒径がほとんど変化しない。このため、磁性体ペースト中のバインダー樹脂の含有比率を小さくすることにより熱処理前の時点で第1領域10Aにおける金属磁性粒子31間の間隙を第2領域10Bにおける金属磁性粒子41間の間隔より小さくしておくことで、熱処理後の第1領域10Aにおける金属磁性粒子31間の間隙34の面積を第2領域10Bにおける金属磁性粒子41間の間隙44の面積よりも小さくすることができる。一又は複数の実施形態においては、第1領域10Aに用いられる金属磁性粒子31の平均粒径と、第2領域10Bに用いられる金属磁性粒子41の平均粒径とを同一とすることにより、バインダー樹脂の含有比率によって第1領域10Aにおける金属磁性粒子31間の間隙34と第2領域10Bにおける金属磁性粒子41間の間隙44とを決定することができる。
【0044】
第2に、第1領域10A(又は第1領域10Aを構成する磁性体シート)の成型時に加えられる成型圧力を第2領域10B(又は第2領域10Bを構成する磁性体シート)の成型時に加えられる成型圧力よりも大きくすることで、第1領域10Aにおける金属磁性粒子31間の間隙34の面積を第2領域10Bにおける金属磁性粒子41間の間隙44の面積よりも小さくすることができる。例えば、基体10の成型プロセスを複数の段階に分けて行うことで、間隙34を間隙44よりも小さくすることができる。より具体的には、第1領域10Aの原料(例えば、磁性体ペースト)を第1の成型圧力で成型し、次に、この第1の成型圧力で成型された第1領域10Aに相当する成型体の周囲に第2領域10Bの原料(例えば、磁性体ペースト)を配置して第1の成型圧力よりも小さい第2の成型圧力で成型することにより、第1領域10Aにおける金属磁性粒子31間の間隙34の面積を第2領域10Bにおける金属磁性粒子41間の間隙44の面積よりも小さくすることができる。基体10を複数の磁性体シートから作製する場合には、第1領域10Aを構成する磁性体シートを第1の成型圧力で成型し、第2領域10Bを構成する磁性体シートを第1の成型圧力よりも小さな第2の成型圧力で成型し、このように異なる成型圧力により作製された磁性体シートを積層して基体10を作製することで、第1領域10Aにおける金属磁性粒子31間の間隙34の面積を第2領域10Bにおける金属磁性粒子41間の間隙44の面積よりも小さくすることができる。上記のとおり、金属磁性粒子の粒径は、熱処理の前後でほとんど変化しないので、熱処理前に異なる成型圧力によって第1領域10Aにおける金属磁性粒子31間の間隙の面積を金属磁性粒子41間の間隙の面積より小さくしておくことで、熱処理後においても第1領域10Aにおける金属磁性粒子31間の間隙34の面積を第2領域10Bにおける金属磁性粒子41間の間隙44の面積よりも小さくすることができる。
【0045】
第3に、第1領域10Aに含まれる金属磁性粒子31として第2領域10bに含まれる金属磁性粒子41よりも変形しやすい粒子を用いることで、第1領域10Aにおける金属磁性粒子31間の間隙34の面積を第2領域10Bにおける金属磁性粒子41間の間隙44の面積よりも小さくすることができる。これは、加圧時に、金属磁性粒子31がより大きく変形することで、金属磁性粒子31間の間隙が埋められるためである。例えば、ケイ素(Si)の含有比率が高い金属磁性粒子は、Siの含有比率が低い金属磁性粒子と比べて一般に高硬度であり、変形しにくい。金属磁性粒子31における鉄(Fe)に対するケイ素(Si)の含有比率を、金属磁性粒子41における鉄(Fe)に対するケイ素(Si)の含有比率よりも小さくすることで、金属磁性粒子31が金属磁性粒子41よりも変形しやすくなる。上記のとおり、金属磁性粒子の粒径は、熱処理の前後でほとんど変化しない。よって、熱処理前の加圧成形時に金属磁性粒子31を金属磁性粒子41に比べて大きく変形させることで、第1領域10Aにおける金属磁性粒子31間の間隙の面積を第2領域10Bにおける金属磁性粒子41間の間隙の面積より小さくすることにより、熱処理後の基体10の第1領域10Aにおける金属磁性粒子31間の間隙34の面積を第2領域10Bにおける金属磁性粒子41間の間隙44の面積よりも小さくすることができる。
【0046】
第4に、第1領域10Aに含まれる金属磁性粒子31として第2領域10bに含まれる金属磁性粒子41よりも酸化しやすい組成の粒子を用いることで、第1領域10Aにおける金属磁性粒子31間の間隙34の面積を第2領域10Bにおける金属磁性粒子41間の間隙44の面積よりも小さくすることができる。これは、コイル部品1の作製工程において、金属磁性粒子31が熱処理により加熱されたときに、金属磁性粒子31の表面により多くの酸化物が形成され、この酸化物によって金属磁性粒子31間の熱処理前にあった間隙が充填されるためである。例えば、鉄(Fe)の含有比率が高い金属磁性粒子は一般に酸化しやすい。また、ケイ素(Si)、ジルコニウム(Zr)、クロム(Cr)、アルムニウム(Al)、又はこれら以外の鉄より酸化しやすい金属元素の含有比率が低い金属磁性粒子においては、鉄(Fe)の酸化が進みやすい。したがって、金属磁性粒子31よりも金属磁性粒子41における鉄(Fe)の含有比率を小さくすることにより、及び/又は、金属磁性粒子31よりも金属磁性粒子41におけるケイ素(Si)、ジルコニウム(Zr)、クロム(Cr)、アルムニウム(Al)、又はこれら以外の鉄より酸化しやすい金属元素の含有比率を大きくすることにより、金属磁性粒子31は、金属磁性粒子41よりも酸化しやすいといえる。
【0047】
第5に、第1領域10Aに含まれる金属磁性粒子31の間にフィラー粒子を配置することにより、第1領域10Aにおける金属磁性粒子31間の間隙34の面積を第2領域10Bにおける金属磁性粒子41間の間隙44の面積よりも小さくすることができる。フィラー粒子を金属磁性粒子31間に配置することにより、金属磁性粒子31間における樹脂が充填可能な空間が減少するので、フィラー粒子によって金属磁性粒子31の間隙34の面積を小さくすることができる。フィラー粒子は、磁性材料または非磁性材料から成る粒子である。金属磁性粒子31の間だけでなく、金属磁性粒子41の間にもフィラー粒子を配置してもよい。この場合、断面視において、金属磁性粒子41の間に配置されるフィラー粒子の面積は、金属磁性粒子31の間に配置されるフィラー粒子の面積よりも小さい。第1領域10Aにおける金属磁性粒子31の間にフィラー粒子を配置するためには、第1領域10Aの原料(例えば、磁性体ペースト)にフィラー粒子を混合させればよい。同様に、第2領域10Bにおける金属磁性粒子41の間にフィラー粒子を配置するためには、第2領域10Bの原料(例えば、磁性体ペースト)にフィラー粒子を混合させればよい。第1領域10A及び第2領域10Bの各々の原料におけるフィラー粒子の混合量を調整することにより、金属磁性粒子41の間に配置されるフィラー粒子の面積を金属磁性粒子31の間に配置されるフィラー粒子の面積よりも小さくすることができる。
【0048】
次に、金属磁性粒子の間の間隙に設けられる樹脂部について説明する。上記のとおり、金属磁性粒子31の間隙34には樹脂部32が設けられ、金属磁性粒子41の間の間隙44には樹脂部42が設けられている。一又は複数の実施形態において、樹脂部32、42を含む基体10内の樹脂部は、含浸処理により樹脂を金属磁性粒子の間の間隙に導入することにより形成される。基体10内の樹脂部は、例えば、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、イミド系樹脂、アミド系樹脂、シリケート系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、及びポリエチレン系樹脂のうち少なくとも1種から形成される。
【0049】
金属磁性粒子31の間及び金属磁性粒子41の間に導入された樹脂は、金属磁性粒子31の間及び金属磁性粒子41の表面に沿って濡れ拡がり、金属磁性粒子31の間の間隙34及び金属磁性粒子41の間の間隙44を充填する。樹脂部32、42は、注入される樹脂の粘度及びそれ以外の要素に応じた厚さで金属磁性粒子31、41の表面に形成される。硬化前の樹脂の溶液の粘度が低すぎると、濡れ性が高いため金属磁性粒子31及び金属磁性粒子41の表面に付着する樹脂部32、42の厚さが薄くなってしまい、その結果、金属磁性粒子31の間の間隙34における樹脂部32の充填率及び金属磁性粒子41の間の間隙44における樹脂部42の充填率が低くなる。逆に、硬化前の樹脂の溶液の粘度が高すぎると、濡れ性が劣化することにより金属磁性粒子31の間の間隙34及び金属磁性粒子41の間の間隙44に樹脂が濡れ拡がりにくくなり、間隙34における樹脂部32の充填率及び金属磁性粒子41の間の間隙44における樹脂部42の充填率が低くなる。したがって、金属磁性粒子31の間及び金属磁性粒子41の間に導入される樹脂として、金属磁性粒子31の間の間隙34及び金属磁性粒子41の間の間隙44を十分に充填できる程度の粘度を有するものが選択される。
【0050】
一又は複数の実施形態において、金属磁性粒子の間の間隙のうち樹脂部で閉塞されない領域は空隙となる。図4に示されている実施形態では、第1領域10Aにおいて金属磁性粒子31の間の間隙34には樹脂部32で閉塞されていない空隙33が存在し、第2領域10Bにおいて金属磁性粒子41の間の間隙44には樹脂部42で閉塞されていない空隙43が存在している。第1領域10Aに含まれる複数の間隙34のうちの一部又は全部は、その全てが樹脂部32により閉塞されていてもよい。つまり、第1領域10Aに含まれる複数の間隙34のうちの一部又は全部には、空隙33が存在しなくともよい。同様に、第2領域10Bに含まれる複数の間隙44のうちの一部は、その全てが樹脂部42により閉塞されていてもよい。つまり、第2領域10Bに含まれる複数の間隙44のうちの一部には、空隙43が存在しなくともよい。同様に、第3領域10Cにおいても、金属磁性粒子の間の間隙に樹脂で閉塞されていない空隙が存在する。このように、基体10は、空隙33、43等の空隙を含んでいる。
【0051】
本明細書においては、基体10の断面の所定領域に占める空隙の面積の割合を面積空隙率と呼ぶ。基体10の断面における空隙の面積は、例えば以下のようにして求められる。面積空隙率を求める場合には、まず、基体10をその厚さ方向(T軸方向)に沿って切断して断面を露出させ、当該断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により所定の倍率(例えば、10000倍)で撮影して、基体10の断面の一部を観察視野とするSEM像を得る。次に、この撮影により得られたSEM像に例えば2値化処理などの画像処理を行って、空隙と空隙以外の領域とを区別し、空隙に分類された領域の面積を求める。2値化処理ではなく多値化処理を行ってもよい。そして、このようにして求められた観察視野内での空隙の面積を合計し、この観察視野における空隙の合計の面積を観察視野の面積で除することで面積空隙率が算出される。百分率で表される面積空隙率は、以下の式で表される。
面積空隙率(%)=(観察視野内の空隙の面積の合計/観察視野の総面積)x100
【0052】
一又は複数の実施形態において、第1領域10Aの面積空隙率は、第2領域10Bの面積空隙率よりも小さい。上述のとおり、一又は複数の実施形態において、第1領域10Aにおける金属磁性粒子31の間の間隙34の面積は、第2領域10Bにおける金属磁性粒子31の間の間隙34の面積よりも小さい。この場合、金属磁性粒子31の間及び金属磁性粒子41の間に樹脂を導入することにより、金属磁性粒子31の間及び金属磁性粒子41の間に樹脂が濡れ拡がり、金属磁性粒子31及び金属磁性粒子41の表面に概ね均一な厚さの樹脂膜を形成することができる。この樹脂膜のうち金属磁性粒子31の表面に形成されたものが樹脂部32であり、金属磁性粒子41の表面に形成されたものが樹脂部42である。このように、金属磁性粒子31の間の間隙34に樹脂部32を形成し、金属磁性粒子41の間の間隙44に樹脂部32と同じ又はほぼ同じ厚さの樹脂部42を形成することで、間隙34に占める空隙33の割合を間隙44に占める空隙43の割合よりも小さくすることができる。第1領域10Aにおいて、金属磁性粒子31の間にある複数の間隙34が全て樹脂部32で閉塞される場合には、第1領域10Aの面積空隙率はゼロとなる。第1領域10Aにおける面積空隙率は、ゼロであってもよい。
【0053】
一又は複数の実施形態において、第3領域10Cの面積空隙率は、第2領域10Bの面積空隙率よりも大きい。一又は複数の実施形態において、第3領域10Cの面積空隙率は、第2領域10Bの面積空隙率よりも小さく、第1領域10Aの面積空隙率よりも大きい。
【0054】
一又は複数の実施形態において、第1領域10Aの面積空隙率を第2領域10Bの面積空隙率よりも小さくすることで、第1領域10Aにおける単位体積当たりの樹脂量を第2領域10Bにおける単位体積当たりの樹脂量よりも大きくすることができる。
【0055】
図示の実施形態では、厚さ方向に沿って基体10を切断した断面において面積空隙率及び間隙33、43の面積を求めているが、面積空隙率及び間隙33、43は、内部導体25を通り厚さ方向以外の方向に沿って延びる断面において求められてもよい。また、面積空隙率や間隙33、34の面積以外の各種寸法も、内部導体25を通る切断面で基体10を切断した断面において求められる。
【0056】
続いて、一又は複数の実施形態によるコイル部品1の製造方法について説明する。まず、金属磁性粒子31とバインダー樹脂とを混練して第1磁性体ペーストを作成する。バインダー樹脂として、熱分解性に優れ脱バインダー処理が容易な樹脂、例えばブチラール樹脂やアクリル樹脂を使用することができる。次に、第1磁性体ペーストをプラスチック製のベースフィルムの表面の一部にドクターブレード法、スクリーン印刷法などの公知の方法で塗布し、この塗布された第1磁性体ペーストを乾燥させて第1磁性体ペーストからなるペースト体を得る。この第1磁性体ペーストから作製されたペースト体は、焼成後に第1領域10Aの一部となる。
【0057】
次に、上記のようにして作製されたペースト体の上に導体金属を含む導体ペーストをスクリーン印刷法等により印刷し、未焼成導体パターンを形成する。導体ペーストに含まれる導体金属は、例えば、Ag、Ag合金、Cu、及びCu合金のうちの少なくとも一つである。この未焼成導体パターンは、焼成後に内部導体25となる。
【0058】
次に、上記のように作製された未焼成導体パターンの上面及び上記の第1磁性体ペーストからなるペースト体の上面のうち未焼成導体パターンの周囲の領域に第1磁性体ペーストをスクリーン印刷等の公知の手法により塗布して乾燥させる。このようにして塗布された第1磁性体ペーストは、焼成後に第1領域10Aの一部となる。これにより、未焼成導体パターンを内部に含む第1磁性体ペーストの積層体が得られる。
【0059】
次に、金属磁性粒子41とバインダー樹脂とを混練して第2磁性体ペーストを作成し、この第2磁性体ペーストを、ベースフィルム上に塗布する。第2磁性体ペーストは、ベースフィルムの上面のうち第1磁性体ペーストの積層体の周囲にスクリーン印刷等の公知の手法で塗布される。この塗布された第2磁性体ペーストを乾燥させることで、第2の磁性体ペーストからなるペースト体が得られる。このようにして第2磁性体ペーストから作製されたペースト体は、焼成後に第2領域10Bの一部となる。以上により、未焼成導体パターンを内部に含む第1磁性体ペーストの積層体の周囲に第2磁性体ペーストが設けられた第1中間体が得られる。
【0060】
次に、金属磁性粒子とバインダー樹脂とを混練して第3磁性体ペーストを作成する。第3磁性体ペーストに含まれる金属磁性粒子は、金属磁性粒子41と同じものであってもよいし、組成及び粒径の面で異なるものであってもよい。次に、この第3磁性体ペーストを、上記のようにして作製されたベースフィルム上に塗布する。第3磁性体ペーストは、ベースフィルムの上面のうち第1中間体の周囲にスクリーン印刷等の公知の手法で塗布される。この塗布された第3磁性体ペーストを乾燥させることで、第3磁性体ペーストからなるペースト体が得られる。この第3磁性体ペーストから作製されたペースト体は、完成品であるコイル部品1において第3領域10Cの一部、より具体的には、第3領域10Cのうち基体の側面10e、10fおよび基体の端面10c、10dの一部を画定する部位となる。一又は複数の実施形態においては、基体10は、第3領域10Cを有しなくてもよいし、第3領域10Cは、基体の上面10a及び下面10bにのみ設けられ、端面10c、10d及び側面10e、10fには設けられなくともよい。一又は複数の実施形態において、第3領域10Cは、端面10c、10d及び側面10e、10fの一部のみに設けられてもよい。かかる場合には、第1中間体の周囲の領域のうち、第3領域10Cが設けられない領域には、第3磁性体ペーストを塗布せずに、第3領域10Cが設けられる面に相当する領域にのみ第3磁性体ペーストが塗布される。以上により、未焼成導体パターンを内部に含む第1磁性体ペーストの積層体の周囲に第2磁性体ペーストの積層体が設けられ、その外側に第3磁性体ペーストが設けられた第2中間体が得られる。次に、第2中間体からベースフィルムを剥離する。
【0061】
次に、第2中間体の上面に第2磁性体ペーストを塗布し、この塗布した第2磁性体ペーストを乾燥させてペースト体とする。次に、第2中間体の上面に設けられた第2磁性体ペーストのペースト体の周囲の領域に第3磁性体ペーストを塗布し、この塗布した第3磁性体ペーストを乾燥させてペースト体とする。この第3磁性体ペーストから作成されたペースト体は、焼成後に第3領域10Cのうち基体の側面10e、10fおよび基体の端面10c、10dに存在する部位の一部となる。次に、この第2中間体の上に塗布された第2磁性体ペーストのペースト体及び当該第2磁性体ペーストのペースト体の周囲に塗布された第3磁性体ペーストのペースト体の上にさらに第3磁性体ペーストを塗布し、この塗布した第3磁性体ペーストを乾燥させてペースト体とする。この第3磁性体ペーストから作成されたペースト体は、焼成後に第3領域10Cのうち基体の上面10aに存在する第3領域10Cとなる。一又は複数の実施形態においては、第3領域10Cは、上面10aには設けられなくともよい。一又は複数の実施形態において、第3領域10Cは、上面10aの一部のみに設けられてもよい。かかる場合には、基体10のうち第3領域10Cが設けられない領域には、第3磁性体ペーストを塗布せずに、第3領域10Cが設けられる領域にのみ第3磁性体ペーストが塗布される。
【0062】
次に、第2中間体の上下を逆転させて、上記の工程と同様に、第2中間体の上に第2磁性体ペーストを塗布して乾燥させ、この第2磁性体ペーストの周囲に第3磁性体ペーストを塗布して乾燥させてペースト体とする。この第3磁性体ペーストから作成されたペースト体は、焼成後に第3領域10Cのうち基体の側面10e、10fおよび基体の端面10c、10dに存在する部位の一部となる。そして、この上下逆転している第2中間体の上に塗布された第2磁性体ペースト及び第3磁性体ペーストの上にさらに第3磁性体ペーストを塗布し、この塗布した第3磁性体ペーストを乾燥させペースト体とする。この第3磁性体ペーストから作成されたペースト体は、焼成後に第3領域10Cのうち基体の下面10bに存在する第3領域10Cの一部を作製する。第3領域10Cは、下面10bには設けられなくともよい。一又は複数の実施形態において、第3領域10Cは、下面10bの一部のみに設けられてもよい。かかる場合には、基体10のうち第3領域10Cが設けられない領域には、第3磁性体ペーストを塗布せずに、第3領域10Cが設けられる領域にのみ第3磁性体ペーストが塗布される。以上のようにして、第3中間体が作製される。このようにして作製された第3中間体においては、内部導体25となる未焼成導体パターンの外側に第1磁性体ペーストから成るペースト体が設けられ、この第1磁性体ペーストから成るペースト体の外側に第2磁性体ペーストから成るペースト体が設けられている。一又は複数の実施例においては、この第2磁性体ペーストから成るペースト体の外側に第3磁性体ペーストから成るペースト体が設けられている。上記のとおり、第3磁性体ペーストから成るペースト体は、その全部又は一部が省略可能である。
【0063】
次に、ダイシング機やレーザー加工機等の切断機を用いて上記の第3中間体を個片化し、個片化された第3中間体に対して熱処理を行うことで焼成体が得られる。この熱処理は、例えば、酸素を含む雰囲気下で600℃〜900℃にて行われる。この熱処理工程により、第1磁性体ペースト〜第3磁性体ペーストの各々に含まれる金属磁性粒子の表面に金属磁性粒子の材料成分の酸化物である絶縁膜が形成され、この絶縁膜により隣接する金属磁性粒子同士が結合する。焼成体に含まれる金属磁性粒子の間には空間(間隙)が存在する。熱処理時に、熱処理工程とは別に脱脂工程を行ってもよいし、熱処理工程の過程で脱脂が行われてもよい。
【0064】
次に、以上のようにして作製された焼成体に含浸処理を行う。含浸処理においては、焼成体を樹脂材料から成る含浸液に浸漬する。含浸液は、例えば、熱硬化性樹脂を含む。焼結体を含浸液に浸漬することで、含浸液が焼成体内の金属磁性粒子の表面に濡れ拡がり、金属磁性粒子間の間隙に含浸液が充填される。含侵処理において、大気圧含浸の他に真空含侵や加圧含浸を行うこともできる。このように、金属磁性粒子間の間隙を含浸液により充填した後に含浸液に含まれる樹脂を硬化させることにより、金属磁性粒子の間の間隙に樹脂部32、42を含む樹脂部が形成される。以上のようにして、第1領域10A、第2領域10B、第3領域10Cを有する基体10が得られる。
【0065】
次に、上記のようにして得られた基体10の両端部に外部電極21及び外部電極22を形成する。外部電極21及び外部電極22は、例えば、Ag粒子を含む導体ペーストを塗布することにより下地電極を形成し、この下地電極の表面にめっき層を形成することにより形成される。めっき層は、例えば、ニッケルを含むニッケルめっき層と、スズを含むスズめっき層の2層構造とされてもよい。外部電極21及び外部電極22は、基体10内に設けられている内部導体25の両端とそれぞれ電気的に接続するように設けられる。以上により、コイル部品1が得られる。
【0066】
上記の製造方法においては、その工程の一部を省略すること、明示的に説明されていない工程を追加すること、及び/又は工程の順序を入れ替えることが可能であり、このような省略、追加、順序の変更がなされた処理手順も本発明の趣旨を逸脱しない限り本発明の範囲に含まれる。
【0067】
コイル部品1の製造方法は、上述したものには限られない。コイル部品1は、上記以外の積層プロセス、薄膜プロセス、又は圧縮成型プロセスにより作製されてもよい。
【0068】
続いて、図5及び図6を参照して本発明の別の実施形態によるコイル部品101について説明する。コイル部品101は、内部導体25に代えて内部導体125を備えている点でコイル部品1と異なっている。
【0069】
内部導体125は、厚さ方向(T軸方向)に沿って延びるコイル軸Axの周りに螺旋状に巻回されている周回部125aと、周回部125aの両端をそれぞれ外部電極21、22に接続するために当該両端からそれぞれ引き出されている引出導体部125bとを有する。
【0070】
周回部125aは、導体パターンC11〜C14を有する。導体パターンC11〜C14は、例えば、導電性に優れた金属又は合金から成る導電ペーストをスクリーン印刷法により磁性体シートに印刷し、この磁性体シートに印刷された導電ペーストを加熱することにより形成される。この導電ペーストは、Ag、Pd、Cu、Al又はこれらの合金及び樹脂を混練することで得られる。導電ペーストが塗布される磁性体シートには、ビアが形成される。ビアは、磁性体シートの所定の位置に磁性体シートをT軸方向に貫く貫通孔を形成し、当該貫通孔に導電ペーストを埋め込むことにより形成される。導体パターンC11〜C14の各々は、隣接する導体パターンとビアを介して電気的に接続される。このようにして接続された導体パターンC11〜C14が、スパイラル状の内部導体125を形成する。
【0071】
一又は複数の実施形態において、内部導体125は、基体10の第1領域10Aの内部に設けられている。言い換えると、第1領域10Aは、内部導体125を覆っている。
【0072】
コイル部品101は、コイル部品1と同様に、積層プロセス、薄膜プロセス、又は圧縮成型プロセスにより作製され得る。
【0073】
続いて、図7及び図8を参照して本発明の別の実施形態によるコイル部品201について説明する。コイル部品201は、基体10の第1領域10Aが、導体間領域10Dと、導体周辺領域10Eと、を含んでいる点で、コイル部品101と異なっている。
【0074】
基体10の第1領域10Aは、内部導体125を覆っている。図示の実施形態において、第1領域10Aは、内部導体125を構成する導体パターンC11〜C14のうちコイル軸Axに沿う方向において隣接するものの間にある導体間領域10Dと、導体間領域10D以外の導体周辺領域10Eと、を含む。図7及び図8においては、導体間領域10Dの少なくとも一部は、導体パターンC11と導体パターンC12との間、導体パターンC12と導体パターンC13との間、及び導体パターンC13と導体パターンC14との間に設けられている。導体パターンC11〜C14の各々は、コイル軸Axの周りに1ターン未満だけ巻回されている。したがって、導体パターンC11の一部は、導体パターンC11の一層下にある導体パターンC12ではなく、二層下にある導体パターンC13とコイル軸Axに沿う方向において対向している。つまり、導体パターンC11の一部は、導体パターンC13と隣接している。導体間領域10Dの一部は、導体パターンC11のうち導体パターンC13と隣接する部位と導体パターンC13との間に設けられてもよい。導体パターンC12〜C14もそれぞれ、それぞれから一層上又は一層下にある導体パターンとの間ではなく、二層上または二層下にある導体パターンと隣接する部位を有していてもよい。
【0075】
コイル部品201において、第1領域10Aの一部又は全部の面積空隙率は、第2領域10Bの面積空隙率よりも小さい。例えば、第1領域10Aのうち導体間領域10Dの面積空隙率は、第2領域10Bの面積空隙率よりも小さく、導体周辺領域10Dの面積空隙率は、第3領域10Cの面積空隙率よりも小さい。一又は複数の実施形態において、導体周辺領域10Eの面積空隙率は、第2領域10Bの面積空隙率よりも小さく、第3領域10Cの面積空隙率よりも小さい。別の実施形態において、導体周辺領域10Eの面積空隙率は、第2領域10Bの面積空隙率より大きくてもよい。
【0076】
コイル部品201は、コイル部品1と同様に、積層プロセス、薄膜プロセス、又は圧縮成型プロセスにより作製され得る。
【0077】
次に、上記の実施形態による作用効果について説明する。本発明の一又は複数の実施形態において、基体10のうち内部導体25を囲む第1領域10Aにおいては空隙33の占める割合が小さいため、第1領域10A内に基体10外からの異物が侵入しにくい。このため、第1領域10Aにおける透磁率等の磁気特性の劣化や抵抗率の低下を抑制することができる。
【0078】
本発明の一又は複数の実施形態によれば、基体10のうち第1領域10Aを覆う第2領域10Bにおける空隙43の割合は第1領域10Aにおける空隙33の割合よりも大きいため、第1領域10Aにおける金属磁性粒子31間の間隙34を充填するのに十分な量の樹脂が基体10内に導入された場合でも、第2領域10Bに含まれる金属磁性粒子41の間の間隙44に余剰の樹脂を収容できる。
【0079】
本発明の一又は複数の実施形態によれば、基体10の外表面を画定する第3領域10Cにおける空隙の割合は、第1領域10Aにおける空隙33の割合よりも大きいため、第1領域10Aにおける金属磁性粒子31間の間隙34を充填するのに十分な量の樹脂が基体10内に導入された場合でも、基体10の表面付近では第3領域10Cに含まれる金属磁性粒子の間の間隙に余剰の樹脂を収容できる。
【0080】
以上のように、本発明の一又は複数の実施形態によれば、基体10の外表面への樹脂の付着を抑制することができ、基体の外表面に樹脂が付着していることに起因する不具合を抑制することができる。したがって、本発明の一又は複数の実施形態によるコイル部品1、101によれば、コイル部品1、101の磁気特性及び絶縁信頼性への影響が大きい第1領域10Aへの異物の侵入を抑制しつつ、基体10の外表面への樹脂の付着を抑制することができる。
【0081】
本発明の一又は複数の実施形態によるコイル部品201によれば、コイル部品201の絶縁信頼性への影響が大きい導体間領域10Dへの異物の侵入を抑制しつつ、基体10の外表面への樹脂の付着を抑制することができる。
【0082】
本発明の一又は複数の実施形態によれば、基体10内の金属磁性粒子の間に樹脂を充填する前の段階で、第1領域10Aにおける金属磁性粒子31の間にある間隙34が、第2領域10Bにおける金属磁性粒子41間の間隙44よりも小さくなっている。よって、金属磁性粒子間に樹脂を導入する際に、第1領域10Aの金属磁性粒子31の間の間隙34の方が第2領域10の金属磁性粒子41の間の間隙44よりも導入された樹脂によって先に閉塞される。このため、基体10表面への樹脂の付着の原因となる過剰な量の樹脂を導入することなく、第1領域10Aにおける金属磁性粒子31の間の間隙34の多くを閉塞することができる。
【0083】
本発明の一又は複数の実施形態によれば、内部導体125の導体パターン間にある導体間領域10Dにおける面積空隙率が基体10内の他の領域(例えば、第2領域10B)の面積空隙率よりも小さいので、導体間領域10Dに異物が侵入しにくい。導体間領域10Dに異物が侵入すると、侵入した異物の種類によってはエレクトロイオンマイグレーションが発生し、内部導体125の導体間領域10Dにおける絶縁信頼性が劣化する要因となる。本発明の一又は複数の実施形態によって導体間領域10Dにおける面積空隙率を小さくすることにより、導体間領域10Dへの異物の侵入を防ぎ、これによりエレクトロイオンマイグレーションの発生を抑制することができる。
【0084】
本発明の一又は複数の実施形態によれば、基体10の表面に設けられている第3領域10Cの面積空隙率が第2領域10Bの面積空隙率よりも大きいので、第3領域10Cの空隙に余剰な樹脂をより多く収容することができる。
【0085】
本発明の一又は複数の実施形態によれば、基体10の表面に設けられている第3領域10Cの面積空隙率が第2領域10Bの面積空隙率よりも小さいので、外部電極21、22の作製時に基体10の表面に塗布される導体ペーストの基体10内への侵入量を抑制することができる。
【0086】
本明細書で説明された各構成要素の寸法、材料、及び配置は、実施形態中で明示的に説明されたものに限定されず、この各構成要素は、本発明の範囲に含まれ得る任意の寸法、材料、及び配置を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に説明していない構成要素を、説明した実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
【符号の説明】
【0087】
1、101、201 コイル部品
2 回路基板
10 基体
10A 第1領域
10B 第2領域
10C 第3領域
21、22 外部電極
31、32 金属磁性粒子
32、42 樹脂部
33、43 空隙
25、125 コイル導体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8