【解決手段】移動体通信の基地局を擬似して移動体通信端末2を試験する移動端末試験装置1であって、移動体通信端末との通信により該移動体通信端末の能力に関する情報である端末能力情報を取得する端末能力情報取得部141と、端末能力情報に基づいて、試験パラメータに設定されるパラメータ設定値の組合せとしてテストケースを生成するテストケース生成部144と、テストケースを逐次実行する実行部132と、実行されたテストケースのうちエラーの発生したテストケースの集合から、エラーの発生するパラメータ条件を特定するエラー条件特定部136と、特定されたパラメータ条件に適合する未実施のテストケースを以降の実行対象から除外するテストケース管理部134とを備える。
前記特定部は、前記テストケースの実行時の前記移動体通信端末での受信レベル又は送信レベルを基に、前記エラーが発生したか否かを判定する判定部(1361)を備える、請求項1に記載の移動端末試験装置。
前記特定部は、前記パラメータ条件として、前記エラーの発生したテストケースの集合から共通するパラメータ設定値をサーチするサーチ部(1363)を更に備える、請求項1又は2に記載の移動端末試験装置。
前記生成部により生成された前記テストケースの実行順のリストを生成するリスト生成部(145)と、前記リストを前記テストケースの実行結果及び実行除外の有無と共に表示する表示部(12)とを更に備える、請求項1〜5のいずれか一項に記載の移動端末試験装置。
前記第1の無線通信方式は5G NR(New Radio)通信方式であり、前記第2の無線通信方式はLTE(Long Term Evolution)又はLTE−A(Long Term Evolution Advanced)通信方式である、請求項4〜6のいずれか一項に記載の移動端末試験装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
LTEや5G NRの高度化により移動体通信端末が対応する周波数バンド、帯域幅、CC数、MIMO次数などのパラメータ(試験パラメータともいう)は増加の一途を辿り、これらパラメータを組合せた動作パターンは数万通りにも達する。
【0008】
ユーザは、移動体通信端末を試験する際、試験パラメータの設定値(パラメータ設定値ともいう)の組合せである「テストケース」を予め用意する必要がある。試験パラメータの増加に伴い、動作パターンと同様に用意すべきテストケースの数も激増している。
【0009】
また、試験の種類も、スループット試験、セルモビリティ試験など複数あり、ユーザは試験の種類に応じて異なる試験パラメータの構成を基にテストケースを用意する必要がある。
【0010】
さらに、5G NRの運用形態には、非スタンドアローン(non-standalone(NSA))モードと、スタンドアローン(standalone(SA))モードとがある。NSAモードは、5G NRの無線通信方式とLTE/LTE−A(Long Term Evolution-Advanced)の通信方式を組合せて使う運用形態である。SAモードは、5G NR単独で基地局と移動体通信端末間の制御からデータ送受信までを行う運用形態である。運用形態の違いに応じて試験パラメータの構成も変わり、このこともテストケース数の増大の一因になっている。
【0011】
このように運用形態や試験の種類を含めて試験パラメータが増大する状況下、ソフトウェアインテグレーションやソフトウェアリグレッションの観点からもこれらの試験パラメータの組合せの全パターンを網羅的に試験・評価する必要があり、ユーザは多大な労力と膨大なコストをかけて全テストケースを実施していた。
【0012】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであって、テストケース数の膨大な、5G NRに対応した移動体通信端末の試験であっても、効率的かつ低コストで実施することができる移動端末試験装置及び移動端末試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明に係る移動端末試験装置は、移動体通信の基地局を擬似して移動体通信端末(2)を試験する移動端末試験装置(1)であって、前記移動体通信端末との通信により該移動体通信端末の能力に関する情報である端末能力情報を取得する取得部(141)と、前記端末能力情報に基づいて、試験パラメータに設定されるパラメータ設定値の組合せとしてテストケースを生成する生成部(144)と、前記テストケースを逐次実行する実行部(132)と、前記実行された前記テストケースのうちエラーの発生したテストケースの集合から、前記エラーの発生するパラメータ条件を特定する特定部(136)と、前記特定された前記パラメータ条件に適合する未実施のテストケースを以降の実行対象から除外する管理部(134)と、を備えるものである。
【0014】
上記のように、本発明に係る移動端末試験装置は、特定部が、実行されたテストケースのうちエラーの発生したテストケースの集合から、エラーの発生するパラメータ条件を特定し、管理部が、特定されたパラメータ条件に適合する未実施のテストケースを以降の実行対象から除外するようになっている。この構成により、エラーの発生が確実に予想されるテストケースの実施を試験中に回避することができ、それにより、テストケース数の膨大な例えば5G NRに対応した移動体通信端末の試験であっても、効率的かつ低コストで実施することができる。
【0015】
また、本発明の移動端末試験装置において、前記特定部は、前記テストケースの実行時の前記移動体通信端末での受信レベル又は送信レベルを基に、前記エラーが発生したか否かを判定する判定部(1361)を備える構成であってもよい。
【0016】
この構成により、本発明に係る移動端末試験装置は、テストケースの合否とは別に、テストケースのエラーを確実に判定することができる。
【0017】
また、本発明の移動端末試験装置において、前記特定部は、前記パラメータ条件として、前記エラーの発生したテストケースの集合から共通するパラメータ設定値をサーチするサーチ部(1363)を更に備える構成であってもよい。
【0018】
この構成により、本発明に係る移動端末試験装置は、エラーの発生するパラメータ条件を迅速かつ確実に取得することができる。
【0019】
また、本発明の移動端末試験装置は、前記端末能力情報から、第1の無線通信方式に関連した第1の能力情報を抽出する抽出部(142)を更に備え、前記生成部は、前記第1の能力情報に基づいて、前記第1の無線通信方式における試験パラメータに設定されるパラメータ設定値の組合せとしてテストケースを生成する構成であってもよい。
【0020】
この構成により、本発明に係る移動端末試験装置は、第1の無線通信方式単独で基地局と移動体通信端末間の制御からデータ送受信までを行う運用形態(スタンドアローン)において、各種試験に対して全てのテストケースを漏れなく確実かつ容易に生成することができる。
【0021】
また、本発明の移動端末試験装置において、前記抽出部は、前記端末能力情報から第2の無線通信方式に関連した第2の能力情報を更に抽出し、前記生成部は、前記第1の無線通信方式における試験パラメータに設定されるパラメータ設定値の組合せと、前記第2の能力情報に基づいて、前記第2の無線通信方式における試験パラメータに設定されるパラメータ設定値の組合せとの組合せとしてテストケースを更に生成する構成であってもよい。
【0022】
この構成により、本発明に係る移動端末試験装置は、第1の無線通信方式と第2の無線通信方式とを組合せて使う運用形態(非スタンドアローン)での各種試験に対して、全てのテストケースを漏れなく確実かつ容易に生成することができる。
【0023】
また、本発明の移動端末試験装置は、前記生成部により生成された前記テストケースの実行順のリストを生成するリスト生成部(145)と、前記リストを前記テストケースの実行結果及び実行除外の有無と共に表示する表示部(12)とを更に備える構成であってもよい。
【0024】
この構成により、本発明に係る移動端末試験装置は、実行除外の有無も含めて、生成されたテストケース及びその実行結果を実行順にユーザが容易に確認することができる。
【0025】
また、本発明の移動端末試験装置において、前記第1の無線通信方式は5G NR(New Radio)通信方式であり、前記第2の無線通信方式はLTE(Long Term Evolution)又はLTE−A(Long Term Evolution Advanced)通信方式であってもよい。
【0026】
この構成により、本発明に係る移動端末試験装置は、5G NR通信方式とLTE通信方式とを組合せて使う運用形態(非スタンドアローン)での各種試験を効率的かつ低コストで実施することができる。
【0027】
また、本発明の移動端末試験方法は、移動体通信の基地局を擬似して移動体通信端末(2)を試験する移動端末試験方法であって、前記移動体通信端末との通信により該移動体通信端末の能力に関する情報である端末能力情報を取得する取得ステップと、前記端末能力情報に基づいて、試験パラメータに設定されるパラメータ設定値の組合せとしてテストケースを生成する生成ステップと、前記テストケースを逐次実行する実行ステップと、前記実行された前記テストケースのうちエラーの発生したテストケースの集合から、前記エラーの発生するパラメータ条件を特定する特定ステップと、前記特定された前記パラメータ条件に適合する未実施のテストケースを以降の実行対象から除外する管理ステップと、を含んでいる。
【0028】
上記のように、本発明に係る移動端末試験方法は、特定ステップにおいて、実行されたたテストケースのうちエラーの発生したテストケースの集合から、エラーの発生するパラメータ条件を特定し、管理ステップにおいて、特定されたパラメータ条件に適合する未実施のテストケースを以降の実行対象から除外するようになっている。この構成により、エラーの発生が確実に予想されるテストケースの実施を試験中に回避することができ、それにより、テストケース数の膨大な例えば5G NRに対応した移動体通信端末の試験であっても、効率的かつ低コストで実施することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、テストケース数の膨大な、5G NRに対応した移動体通信端末の試験であっても、効率的かつ低コストで実施することができる移動端末試験装置及び移動端末試験方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態に係る移動端末試験装置について、図面を参照して詳細に説明する。
【0032】
図1は、本実施形態に係る移動端末試験装置1の構成を示すブロック図である。移動端末試験装置1は、テストケースに従って移動体通信の基地局を擬似して移動体通信端末2を試験するものである。
図1に示すように、移動端末試験装置1は、操作部11と、表示部12と、制御部13と、処理部14と、基地局シミュレータ15と、記憶部16とを備えている。以下、各構成要素について説明する。
【0033】
操作部11は、キーボード、マウス、タッチパネルなどの入力機器を備え、例えば、ユーザにより操作入力された移動端末試験装置1への指示情報を制御部13に出力する。例えば、ユーザが操作部11を操作して、実施する試験の種類(スループット試験、セルモビリティ試験など)を選択するようにしてもよい。
【0034】
表示部12は、液晶ディスプレイなどの画像表示機器を備え、テストケースの実行順のリスト(テストケース実行順リスト)をテストケースの実行結果及び実行除外の有無と共に表示するようになっている。具体的には、表示部12は、例えば、後で説明するエラー条件特定部136により特定されたエラー条件を基に判断された、テストケースごとの実行除外の有無の情報を表示する。また、表示部12は、試験中の各種状態なども表示する。
【0035】
制御部13は、テストケースの管理、実行、実行結果の評価などを行うものであり、試験制御部131と、実行部132と、結果取得部133とを備えている。
【0036】
試験制御部131は、処理部14により生成されたテストケース及びその実行順のリスト(テストケース実行順リスト)に基づき、テストケースの実行を制御し、テストケースの実行結果を評価するとともに、エラー処理を実施するものである。評価は、テストケースごと、一群のテストケースごと、あるいは試験ごとに設けられた評価基準に基づいて行われる。試験制御部131は、テストケース管理部134、送信情報生成部135、及びエラー条件特定部136を備えている。
【0037】
テストケース管理部134は、テストケースの実行順、実行の有無、実行結果、実行除外などの管理処理を行うものである。例えば、実行除外の管理処理として、テストケース管理部134は、エラー条件特定部136により特定されたパラメータ条件に適合する未実施のテストケースを以降の実行対象から除外するようになっている。別言すれば、テストケース管理部134は、試験の実行中に、エラー条件特定部136により特定されたエラー要因を考慮して試験の実行対象を絞り込むものである。
【0038】
送信情報生成部135は、テストケースの情報に基づいて、実行部132を介して第1擬似基地局部151及び第2擬似基地局部152から送信する送信情報を生成するようになっている。具体的には、送信情報生成部135は、テストケースの情報に基づいて第1擬似基地局部151及び第2擬似基地局部152の報知情報や位置登録処理における送信情報などを生成する。例えば、送信情報生成部135は、個別に設定された、第1擬似基地局部151及び第2擬似基地局部152のそれぞれが擬似する基地局の動作の設定情報に基づいて、報知情報を生成する。
【0039】
エラー条件特定部136は、後で詳細に説明するように、実行したテストケースのうちエラーの発生したテストケースの集合から、エラーの発生するパラメータ条件を推定し特定するようになっている。
【0040】
実行部132は、テストケースを逐次実行するようになっている。具体的には、実行部132は、試験制御部131の制御下で記憶部16に格納されたテストケース及びテストケース実行順リストの情報(シナリオ)に基づいて基地局シミュレータ15に送信情報や設定情報などの指示情報を送り、例えば報知情報を移動体通信端末2へ送信させたり、基地局シミュレータ15と移動体通信端末2との通信シーケンスを実行させたりして、試験を実施するようになっている。
【0041】
結果取得部133は、基地局シミュレータ15と移動体通信端末2との通信の結果の情報を基地局シミュレータ15から取得し、その情報を試験制御部131に送るようになっている。
【0042】
基地局シミュレータ15は、実行部132からの指示を受け、基地局を擬似して移動体通信端末2との間で通信を行うものであり、第1擬似基地局部151及び第2擬似基地局部152を備えている。第1擬似基地局部151及び第2擬似基地局部152は、5G NR通信規格又は4G(LTE又はLTE−A)通信規格に従って動作する基地局を擬似するようになっている。以下、「5G NR」を単にNRと記載することもあり、「LTE又はLTE−A」を単にLTEと記載するものとする。本実施形態の基地局シミュレータ15は、2個の擬似基地局部を有しているが、試験の内容によっては1個あるいは3個以上であってもよい。
【0043】
第1擬似基地局部151及び第2擬似基地局部152の送信する信号は、不図示の結合器により結合されて移動体通信端末2に送信される。また、移動体通信端末2から受信した信号は、該結合器を介して第1擬似基地局部151及び第2擬似基地局部152それぞれに送られる。
【0044】
記憶部16は、ハードディスク装置やフラッシュメモリなどで構成され、処理部14により生成されたテストケースの情報、テストケース実行順リストの情報、各テストケースの試験結果の情報、実行除外されたテストケースの情報などを格納する。
【0045】
次に、処理部14について説明する。
以下では、移動体通信端末2が5G NR通信方式に対応しているものとして説明するが、通信方式はこれに限定されない。
【0046】
図1に示すように、処理部14は、試験を行うために必要とされるデータや情報を生成するものであり、端末能力情報取得部141と、能力情報抽出部142と、テストケース生成部144と、テストケース実行順リスト生成部145とを備えている。
【0047】
端末能力情報取得部141は、移動体通信端末2との通信により、該移動体通信端末2が対応している能力、性能あるいは機能を示す端末能力情報を取得するようになっている。具体的には、端末能力情報取得部141は、例えば、移動体通信端末2にインストールされているUE Capability Informationを取得する。なお、端末能力情報取得部141は、本発明の取得部に対応する。
【0048】
能力情報抽出部142は、端末能力情報から、5G NR通信方式に関連した第1の能力情報及びLTE通信方式に関連した第2の能力情報をそれぞれ抽出するようになっている。具体的には、能力情報抽出部142は、UE Capability Informationから、例えば、5G NR及びLTEそれぞれにおけるキャリアアグリゲーション構成、周波数バンド、帯域幅、MIMOなどの試験パラメータに設定可能な設定値(パラメータ設定値)に関する能力情報を抽出する。なお、能力情報抽出部142は、本発明の抽出部に対応する。
【0049】
テストケース生成部144は、端末能力情報に基づいて、試験パラメータに設定されるパラメータ設定値の組合せとしてテストケースを生成するようになっている。具体的には、テストケース生成部144は、第1の能力情報及び第2の能力情報に基づいて、5G NR通信方式における試験パラメータに設定されるパラメータ設定値の組合せと、LTE通信方式における試験パラメータに設定されるパラメータ設定値の組合せと、を組合せたものとして、テストケースを自動で生成するようになっている。なお、テストケース生成部144は、本発明の生成部に対応する。
【0050】
また、テストケース生成部144は、第1の能力情報に基づいて、5G NR通信方式における試験パラメータに設定されるパラメータ設定値の組合せとしてテストケースを生成する。
【0051】
具体的には、テストケース生成部144は、5G NR通信方式に関連した周波数バンド、帯域幅、キャリアアグリゲーション構成、MIMOなどの主要な試験パラメータの情報(第1の能力情報)に基づいて、5G NR通信方式におけるパラメータ設定値の組合せとしてテストケースを生成する。このテストケースは、例えば、5G NRスタンドアローンでの試験に用いることができる。
【0052】
次に、テストケースについて説明する。
【0053】
図2は、試験パラメータに設定されるパラメータ設定値の組合せであるテストケースの一例を示す図である。本例は、移動体通信端末2が5G NRの非スタンドアローン方式におけるEN−DC(LTE/NR dual connectivity)に対応している場合のテストケースである。このテストケースは、5G NRに対応したセル又は基地局に課される条件(5G NRセル条件)とLTEに対応したセル又は基地局に課される条件(LTEセル条件)との組合せにより構成される。5G NRセル条件とLTEセル条件は、各々、試験パラメータ(例えば、キャリアアグリゲーション構成、周波数バンド、バンド幅、MIMO)に課される条件の組合せにより構成される。
【0054】
例えば、
図2において、5G NRセル条件を構成する試験パラメータとして、CCの個数、周波数バンドの個数、キャリアアグリゲーション構成、MIMO構成、搬送波などが、そのパラメータ設定値と共に示されている。また、LTEセル条件を構成する試験パラメータとして、CCの個数、周波数バンドの個数、キャリアアグリゲーション構成、MIMO構成、搬送波などが、そのパラメータ設定値と共に示されている。図中、DL(DownLink)はダウンリンク、UL(UpLink)はアップリンクを示し、BCS(Bandwidth Combination Set)はバンド幅の組合せを示す。
【0055】
テストケース240は、5G NRセル条件を規定する試験パラメータに設定されるパラメータ設定値の組合せ210−1、210−2と、LTEセル条件を規定する試験パラメータに設定されるパラメータ設定値の組合せ220−1、220−2との組合せとして構成される。図中、符号230で示す部分は、5G NR及びLTEに関連する共通のパラメータ設定値の組合せであるが、5G NRとLTEに分離して欄を設けることもできる。すなわち、EN−DCに対応する移動体通信端末2に対するテストケースは、5G NRセル条件とLTEセル条件との組合せとして生成することができる。
【0056】
テストケース240は、その識別番号330、実行除外の有無を示す実施予定チェックボックス370、及びテストケースの実行結果340と共に表示部12に表示され、また、それらのデータは記憶部16に格納される。
【0057】
テストケース実行順リスト生成部145は、テストケース生成部144により生成されたテストケースの実行順のリストを生成するようになっている。なお、テストケース実行順リスト生成部145は、本発明のリスト生成部に対応する。
【0058】
ここで、移動端末試験装置1は、移動体通信端末2と通信を行なうための通信モジュールが設けられた図示しないコンピュータ装置によって構成される。このコンピュータ装置は、それぞれ図示しないCPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、ハードディスク装置と、入出力ポートと、タッチパネルとを有する。
【0059】
このコンピュータ装置のROM及びハードディスク装置には、コンピュータ装置を移動端末試験装置1として機能させるためのプログラムが格納されている。すなわち、CPUがRAMを作業領域としてROMに格納されたプログラムを実行することにより、当該コンピュータ装置は、移動端末試験装置1として機能する。
【0060】
このように、本実施形態において、記憶部16は、RAM又はハードディスク装置によって構成され、制御部13、処理部14は、CPUによって構成され、基地局シミュレータ15は、通信モジュールによって構成される。基地局シミュレータ15は、制御部13や処理部14などを構成するコンピュータ装置とは別機器として構成してもよい。
【0061】
次に、試験制御部131によるエラー処理について更に詳細に説明する。
【0062】
図3は、エラー条件特定部136の構成を示すブロック図である。エラー条件特定部136は、試験の実行中に発生したエラーの要因を特定するものであり、具体的には、テストケースのエラーが発生するパラメータ条件を特定するものである。このため、エラー条件特定部136は、エラー判定部1361、エラー条件サーチ部1363、及びエラーケース記憶部1362を備えている。
【0063】
エラー判定部1361は、テストケースの実行時の移動体通信端末2での受信レベルを基に、通信上のエラーが発生したか否かを判定するようになっている。具体的には、エラー判定部1361は、例えば、基地局シミュレータ15から送られた参照信号の移動体通信端末2での受信レベルを所定の基準値と比較することにより、通信上のエラーが発生したか否かを判定する。エラー判定部1361は、移動体通信端末2での送信レベルを基にエラーが発生したか否かを判定してもよい。
【0064】
エラー判定部1361によるエラーの判定に用いる情報は、通信における信号レベルに限定されず、応答の遅延時間、符号誤り率など他の情報であってもよく、あるいは他の情報を加味してもよい。エラーの具体的な原因としては、移動体通信端末2のアンテナなどの部品の故障、ソフトウェアの欠陥、インストールされているUE Capabilityの誤りなど、種々の原因が存在し得る。エラー判定部1361は、移動体通信端末2側のこれらの原因から生じるエラー(通信エラーともいう)の発生の有無を判定するものである。
【0065】
エラーケース記憶部1362は、エラー判定部1361により通信エラーの発生が確認されたテストケース(テストケースの集合)の情報を記憶するようになっている。具体的には、エラーケース記憶部1362は、試験中に通信エラーが発生したテストケースのパラメータ設定値の組合せの情報を記憶部16から取得して、テストケースの識別番号とともに蓄積していくようになっている。あるいは、エラーケース記憶部1362は、通信エラーが発生したテストケースの識別番号のみを蓄積するようにしてもよい。
【0066】
エラー条件サーチ部1363は、エラーケース記憶部1362に格納された、通信エラーの発生したテストケースの集合から、エラーの発生するパラメータ条件として、各テストケースに共通するパラメータ設定値をサーチするようになっている。
【0067】
エラー条件サーチ部1363は、サーチ精度を高めるため、エラーリストに含まれるテストケースの個数が所定の一定数に達するまで、サーチ処理を行わないようにするのが好ましい。また、エラー条件サーチ部1363は、サーチ効率を高めるため、エラーリストに含まれる全テストケースのうち、所定の割合以上のテストケースに共通するパラメータ設定値をサーチするようにしてもよい。
【0068】
エラー条件サーチ部1363は、エラーリストに含まれるテストケースに共通する1のパラメータ設定値を特定することに限定されず、複数のパラメータ設定値を特定するようにしてもよい。例えば、エラー条件サーチ部1363は、サーチ処理により、同一の試験パラメータの複数のパラメータ設定値、又は複数の試験パラメータのパラメータ設定値を共通のパラメータ設定値として特定するようにしてもよい。
【0069】
エラー条件サーチ部1363は、特定のパラメータ設定値が必ずエラーリストに入っているならば、そのパラメータ設定値を、エラーの発生するパラメータ条件と見なすようにしてもよい。
【0070】
次に、移動端末試験方法について、
図5を参照してスループット試験を例に説明する。スループット試験は、通信速度の試験であり、具体的には、移動体通信端末2が通信速度の仕様値を満たしているか否かを調べる試験である。
【0071】
まず、ユーザは、移動端末試験装置1と移動体通信端末2とを有線又は無線で接続し、移動体通信端末2の電源を入れるなどして移動体通信端末2に位置登録を行なわせる。
【0072】
結果取得部133は、位置登録のシーケンス中に基地局シミュレータ15を介して移動体通信端末2からUE Capabilityを受信すると、該UE Capabilityを試験制御部131に送る。なお、位置登録時に限らず、試験制御部131からの要求により実行部132が、基地局シミュレータ15を介して移動体通信端末2にUE Capabilityの送信を要求し、移動体通信端末2から受信したUE Capabilityを結果取得部133が試験制御部131に送るようにしてもよい。
【0073】
試験制御部131は、UE Capabilityを結果取得部133から受け取ると、該UE Capabilityを記憶部16に格納する。処理部14の端末能力情報取得部141は、試験制御部131あるいは記憶部16から移動体通信端末2のUE Capability Informationを取得する(ステップS1)。取得したUE Capability Informationは、コンピュータ装置のRAM又は記憶部16に格納される。
【0074】
UE Capability Informationは、UE-NR-CapabilityとUE-MRDC-Capabilityとを含む。UE-NR-Capabilityは、5G NRスタンドアローンモードにおけるUE Capabilityである。UE-MRDC-Capabilityは、5G NR非スタンドアローンモードにおけるUE Capabilityであり、LTE搬送波及び5G NR搬送波のsupportedBandListなどが定義されている。これらは、TS 38.306、TS 38.331などに規定されている。
【0075】
処理部14の能力情報抽出部142は、5G NR及びLTEそれぞれについて、RAM又は記憶部16に格納されたUE Capability Informationからスループット試験に関連する情報(能力情報)を抽出する(ステップS2)。抽出した能力情報は、コンピュータ装置のRAM又は記憶部16に格納される。
【0076】
例えば、能力情報抽出部142は、UE Capability Informationからスループットに関連した能力情報である、supportedBandListEUTRA、supportedBandListNR、ca-BandwidthClassDL-EUTRA、ca-BandwidthClassUL-EUTRA、ca-BandwidthClassDL-NR、ca-BandwidthClassUL-NR、MIMO-ParametersPerBand、channelBWs-DL、及びchannel BWs-ULを抽出する。なお、同様の情報がこれらとは異なる名称で定義されている場合もある。
【0077】
supportedBandListNR、及びMIMO-ParametersPerBandは、移動体通信端末2がサポートしている周波数バンドの情報、及び各周波数バンドのMIMO次数に関する情報である。これらは、TS 38.101-1、TS 38.101-2などに規定されている。
【0078】
supportedBandListEUTRAは、移動体通信端末2がサポートしているNSA時に使用する4G周波数バンドの情報である。これは、TS 36.306などに規定されている。
【0079】
ca-BandwidthClassDL-EUTRA、ca-BandwidthClassUL-EUTRA、ca-BandwidthClassDL-NR、ca-BandwidthClassUL-NRは、移動体通信端末2がサポートしているSAモード及びNSAモードにおける周波数バンドの組合せ、並びに各搬送波の帯域幅に関する情報である。これらは、TS 38.101-1、TS 38.101-2などに規定されている。
【0080】
channelBWs-DL、channelBWs-ULは、移動体通信端末2がサポートしているSAモードにおける搬送波のサブキャリア間隔に関する情報である。これらは、TS 38.101-1、TS 38.101-2などに規定されている。
【0081】
能力情報抽出部142は、UE Capability Informationから5G NR無線通信方式に関連した第1の能力情報と、LTE無線通信方式に関連した第2の能力情報とをそれぞれ抽出する。具体的には、能力情報抽出部142は、5G NR無線通信方式及びLTE無線通信方式のそれぞれについて、キャリアアグリゲーション、周波数バンド、帯域幅、MIMOなどの試験パラメータの取り得るパラメータ設定値に関する情報を抽出する。
【0082】
能力情報抽出部142により抽出された第1の能力情報は、5G NR無線通信方式がスタンドアローンで運用される場合に取り得るパラメータ設定値に関する情報であり、第1の能力情報及び第2の能力情報は、5G NR無線通信方式が非スタンドアローンで運用される場合に取り得るパラメータ設定値に関する情報である。
【0083】
次いで、処理部14のテストケース生成部144は、能力情報抽出部142により抽出された能力情報を基に、スループットに関連する試験パラメータに設定されるパラメータ設定値の組合せであるテストケースを生成する。パラメータ設定値とは、試験の条件(セルあるいは擬似基地局部の動作条件)を与える試験パラメータ(例えば、周波数バンド、帯域幅、キャリアアグリゲーション構成、MIMOアンテナ構成など)の設定値をいう。生成されたテストケースは、記憶部16に格納される。
【0084】
別言すれば、テストケース生成部144は、ステップS2で抽出した第1の能力情報及び第2の能力情報を基に、5G NR無線通信方式が非スタンドアローンで運用される場合あるいはEN−DC(LTE/NR dual connectivity)の場合のテストケース、及び5G NR無線通信方式がスタンドアローンで運用される場合のテストケースを自動で生成する。
【0085】
テストケースを構成する試験パラメータの組合せは、試験の種類によって変わる。例えば、セルモビリティ試験では、移動体通信端末2がサポートしているハンドオーバのタイプや、ハンドオーバの契機となるEventなども試験パラメータとなり得る。また、テストケースを構成する試験パラメータの組合せは、5G NR無線通信方式の運用モードによって変わる。例えば、スタンドアローンの場合は、5G NRに関連した試験パラメータの組合せによりテストケースが構成され、非スタンドアローンの場合は、5G NRに関連した試験パラメータの組合せとLTEに関連した試験パラメータの組合せとの組合せによりテストケースが構成されている。
【0086】
試験の種類は、ユーザが操作部11を操作して選択する。
【0087】
次いで、テストケース実行順リスト生成部145は、ステップS3で生成されたテストケースを基に、テストケース実行順リストを生成する(ステップS4)。テストケース実行順リストは、記憶部16に格納される。
【0088】
次いで、実行部132は、試験制御部131の制御下でテストケース実行順リストに従ってテストケースを順に実行していく(ステップS5)。具体的には、実行部132は、各テストケースに基づいて基地局シミュレータ15の第1擬似基地局部151及び第2擬似基地局部152の機能を設定し、これら第1及び第2擬似基地局部151、152に移動体通信端末2との通信を行わせる。
【0089】
結果取得部133は、基地局シミュレータ15と移動体通信端末2との通信の結果を取得し、試験制御部131に送る(ステップS6)。試験制御部131では、結果取得部133から送られた通信結果を分析し、スループット試験の結果を予め定められた基準に基づいて評価する。例えば、移動体通信端末2の通信速度が所定の基準通信速度に達しているか否かにより評価する。評価結果は表示部12に表示されるとともに、記憶部16に格納される。
【0090】
図4は、スループット試験時の表示部12の表示画像の例を示す。
図4に示すように、表示部12は、テストケース310を実行順に並べたテストケース実行順リスト320を表示するとともに、各テストケースの実行結果340をテストケース310と並べてリアルタイムで表示する。テストケース実行順リスト320の各行が1つのテストケースに対応する。各テストケース310には識別番号330が付与され、この識別番号330が、テストケース310に隣接して表示される。また、表示部12は、測定されたスループットのグラフ350や、所定の基準に基づくスループットの評価360などの情報も表示する。また、表示部12は、各テストケースの実施予定を示す実施予定チェックボックス370を表示し、例えば、レ点により実施・不実施の別が表示されるようになっている。テストケース管理部134により実行対象から除外されたテストケースは、実施除外が分かるように、例えばレ点が削除されるか、あるいは別のマークを表示するようになっている。
【0091】
エラー条件特定部136のエラー判定部1361は、結果取得部133からテストケースの実行結果の情報を受け取り、テストケースの実行時に通信等のエラーが発生したか否かを判定する(ステップS7)。例えば、エラー判定部1361は、テストケースの実行時の移動体通信端末2での受信レベル又は送信レベルを所定の基準値と比較することにより、通信エラーが発生したか否かを判定することができる。
【0092】
通信エラーが発生したと判定されなかった場合(ステップS7でNO)、試験制御部13はステップS5に戻って処理を継続する。
【0093】
エラー判定部1361は、通信エラーが発生したと判定された場合(ステップS7でYES)、通信エラーの発生したテストケースを、エラーケース記憶部1362に格納されたエラーリストに追加する(ステップS8)。エラーリストは、通信エラーの発生が確認されたテストケースのリスト(テストケースの集合)であり、具体的には、通信エラーの発生した各テストケースの識別番号、及びパラメータ設定値の組合せの情報を含むものである。
【0094】
エラー条件サーチ部1363は、エラー判定部1361から通信エラー発生の情報を受け取ると、エラーケース記憶部1362に格納された、通信エラーの発生したテストケースの集合から、通信エラーの発生するパラメータ条件として、各テストケースに共通するパラメータ設定値をサーチする(ステップS9)。
【0095】
エラーリストに含まれるテストケースに共通するパラメータ設定値が存在しない場合(ステップS9でNO)、試験制御部13はステップS5に戻って処理を継続する。エラー条件サーチ部1363は、エラーリストに含まれるテストケースに共通するパラメータ設定値が存在する場合(ステップS9でYES)、共通するパラメータ設定値の情報(除外情報)をテストケース管理部134に送る。
【0096】
エラー条件サーチ部1363は、サーチ精度を高めるため、エラーリストに含まれるテストケースの個数が所定の一定数に達するまで、サーチ処理を行わないようにするとよい。また、エラー条件サーチ部1363は、エラーリストに含まれる全てのテストケースに共通するパラメータ設定値をサーチするようにしてもよいし、あるいはエラーリストに含まれる少なくとも一部のテストケースに共通するパラメータ設定値をサーチするようにしてもよい。
【0097】
テストケース管理部134は、共通するパラメータ設定値を含むテストケースを、試験における実施対象から除外する(ステップS10)。具体的には、テストケース管理部134は、例えば、テストケース実行順リストから該当テストケースを外すか、あるいは不実施フラグを立てる等の処理を行う。
【0098】
次いで、試験制御部131は、全てのテストケースが実行されたか否かを確認する(ステップS11)。試験制御部131は、全てのテストケースが実行されたことが確認されない場合(ステップS11でNO)、ステップS5に戻って処理を継続する。試験制御部131は、全てのテストケースが実行されたことが確認された場合(ステップS11でYES)、試験を終了する。
【0099】
上記説明したように、本実施形態に係る移動端末試験装置1は、エラー条件特定部136が、実行したテストケースのうち通信エラーの発生したテストケースの集合から、通信エラーの発生するパラメータ条件を特定し、テストケース管理部134が、特定されたパラメータ条件に適合する未実施のテストケースを以降の実行対象から除外するようになっている。この構成により、通信エラーの発生が確実に予想されるテストケースの実施を試験中に回避することができ、それにより、テストケース数の膨大な、例えば5G NRに対応した移動体通信端末の試験であっても、効率的かつ低コストで実施することができる。
【0100】
また、本実施形態に係る移動端末試験装置1において、エラー条件特定部136は、テストケースの実行時の受信レベルを所定の基準値と比較することにより、通信エラーが発生したか否かを判定するエラー判定部1361を備えている。この構成により、本実施形態に係る移動端末試験装置1は、テストケースの合否とは別に、テストケースの通信エラーを確実に判定することができる。
【0101】
また、本実施形態に係る移動端末試験装置1において、エラー条件特定部136は、通信エラーの発生したテストケースの集合から、通信エラーの発生するパラメータ条件として、各テストケースに共通するパラメータ設定値をサーチするエラー条件サーチ部1363を備えている。この構成により、本実施形態に係る移動端末試験装置1は、通信エラーの発生するパラメータ条件を迅速かつ確実に取得することができる。
【0102】
また、本実施形態に係る移動端末試験装置1は、端末能力情報から、5G NR無線通信方式に関連した第1の能力情報及びLTE無線通信方式に関連した第2の能力情報をそれぞれ抽出する能力情報抽出部142を備え、テストケース生成部144は、第1の能力情報及び第2の能力情報に基づいて、5G NR無線通信方式における試験パラメータに設定されるパラメータ設定値の組合せとLTE無線通信方式における試験パラメータに設定されるパラメータ設定値の組合せとの組合せとしてテストケースを生成している。この構成により、本実施形態に係る移動端末試験装置1は、5G NR無線通信方式とLTE無線通信方式とを組合せて使う運用形態(非スタンドアローン)での各種試験に対して、全てのテストケースを漏れなく確実かつ容易に生成することができる。
【0103】
また、本実施形態に係る移動端末試験装置1において、テストケース生成部144は、第1の能力情報に基づいて、5G NR無線通信方式における試験パラメータに設定されるパラメータ設定値の組合せとしてテストケースを生成するようになっている。この構成により、本実施形態に係る移動端末試験装置1は、5G NR無線通信方式単独で基地局と移動体通信端末間の制御からデータ送受信までを行う運用形態(スタンドアローン)においても、各種試験に対して全てのテストケースを漏れなく確実かつ容易に生成することができる。
【0104】
以上述べたように、本発明は、テストケース数が膨大な、5G NRに対応した移動体通信端末の試験であっても、効率的かつ低コストで実施することができるという効果を有し、移動端末試験装置及び移動端末試験方法の全般に有用である。