特開2021-175418(P2021-175418A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ クラリオン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2021175418-眠気判定装置および眠気判定方法 図000003
  • 特開2021175418-眠気判定装置および眠気判定方法 図000004
  • 特開2021175418-眠気判定装置および眠気判定方法 図000005
  • 特開2021175418-眠気判定装置および眠気判定方法 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-175418(P2021-175418A)
(43)【公開日】2021年11月4日
(54)【発明の名称】眠気判定装置および眠気判定方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 21/00 20060101AFI20211008BHJP
   B60H 1/00 20060101ALI20211008BHJP
【FI】
   A61M21/00 B
   B60H1/00 101Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-80896(P2020-80896)
(22)【出願日】2020年5月1日
(71)【出願人】
【識別番号】000001487
【氏名又は名称】フォルシアクラリオン・エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】特許業務法人湘洋内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長島 孝信
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA08
3L211BA44
3L211EA04
(57)【要約】
【課題】より的確に運転者の眠気を判定し、車内空調を制御して運転者を眠気から覚醒させることができる。
【解決手段】 車両の乗員の体温に影響を与える所定の事象が登録された事象定義情報を記憶した記憶部と、事象の発生を検知する事象検知部と、前記乗員の体温を計測し、所定の計測時間内における体温の変化に基づき前記乗員に眠気が生じているか否かを判定する眠気判定部と、前記判定結果に応じた空調制御指示を生成する空調制御指示部と、前記空調制御指示を外部装置に送信する送信部と、を備え、前記眠気判定部は、前記事象が検知されると、当該事象の検知から所定時間の経過後に前記体温の計測を開始する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の乗員の体温に影響を与える所定の事象が登録された事象定義情報を記憶した記憶部と、
事象の発生を検知する事象検知部と、
前記乗員の体温を計測し、所定の計測時間内における体温の変化に基づき前記乗員に眠気が生じているか否かを判定する眠気判定部と、
前記判定結果に応じた空調制御指示を生成する空調制御指示部と、
前記空調制御指示を外部装置に送信する送信部と、を備え、
前記眠気判定部は、
前記事象が検知されると、当該事象の検知から所定時間の経過後に前記体温の計測を開始する
ことを特徴とする眠気判定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の眠気判定装置であって、
前記事象には、前記車両の窓の開閉、前記車両のドアの開閉、前記車両が飲食店のドライブスルーに立ち寄ったこと、前記乗員が前記車内で所定範囲以上動いたこと、および、前記車両のエンジンの始動が含まれ、
前記眠気判定部は、
前記事象のいずれか一つが検知されると、当該事象の検知から所定時間の経過後に前記体温の計測を開始する
ことを特徴とする眠気判定装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の眠気判定装置であって、
前記事象の検知から前記体温の計測を開始するまでの前記所定時間は、
前記事象に応じて異なり、前記事象が体温に与える影響がなくなるまでの時間が設定される
ことを特徴とする眠気判定装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の眠気判定装置であって、
前記眠気判定部は、
前記計測時間内における皮膚温度および深部体温の変化に基づき前記乗員の眠気を判定する
ことを特徴とする眠気判定装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の眠気判定装置であって、
前記空調制御指示部は、
前記車両の運転者に眠気があると判定された場合、運転席付近の温度を下げる空調制御指示を生成し、
前記運転者以外の前記乗員に眠気があると判定された場合、当該乗員の座る座席付近の温度を所定の温度に近づける空調制御指示を生成する
ことを特徴とする眠気判定装置。
【請求項6】
眠気判定装置が行う眠気判定方法であって、
前記眠気判定装置は、
車両の乗員の体温に影響を与える所定の事象が登録された事象定義情報を用いて、事象の発生を検知する事象検知ステップと、
前記乗員の体温を計測し、所定の計測時間内における体温の変化に基づき前記乗員に眠気が生じているか否かを判定する眠気判定ステップと、
前記判定結果に応じた空調制御指示を生成する空調制御指示ステップと、
前記空調制御指示を外部装置に送信する送信ステップと、を行い、
前記眠気判定ステップでは、
前記事象が検知されると、当該事象の検知から所定時間の経過後に前記体温の計測を開始する
ことを特徴とする眠気判定方法。
【請求項7】
請求項6に記載の眠気判定方法であって、
前記事象には、前記車両の窓の開閉、前記車両のドアの開閉、前記車両が飲食店のドライブスルーに立ち寄ったこと、前記乗員が前記車内で所定範囲以上動いたこと、および、前記車両のエンジンの始動が含まれ、
前記眠気判定ステップでは、
前記事象のいずれか一つが検知されると、当該事象の検知から所定時間の経過後に前記体温の計測を開始する
ことを特徴とする眠気判定方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載の眠気判定方法であって、
前記事象の検知から前記体温の計測を開始するまでの前記所定時間は、
前記事象に応じて異なり、前記事象が体温に与える影響がなくなるまでの時間が設定される
ことを特徴とする眠気判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眠気判定装置および眠気判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、環境制御装置に関し、「ユーザの覚醒に関する要望を判定するニーズ判定部と、ユーザの生体情報からユーザが覚醒しているか否か判定を行う覚醒状態判定部と、ニーズ判定部の判定結果と、覚醒状態判定部の判定結果とから、室内環境の制御条件を決定する制御条件決定部と、決定した制御条件で室内環境を調整する機器を制御する機器制御部とを備える。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6279157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の装置は、ユーザの生体情報を用いて、ユーザが覚醒しているか眠い状態であるかを判定し、判定結果に応じて室内環境を調整する。しかしながら、同文献の装置は、生体情報に影響するユーザの行動や室内環境などを考慮せずにユーザの覚醒状態を判定している。そのため、判定前におけるユーザの行動等が生体情報に影響し、精度の高い判定結果を得ることが難しいという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、より的確に運転者の眠気を判定し、車内空調を制御して運転者を眠気から覚醒させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願は、上記課題の少なくとも一部を解決する手段を複数含んでいるが、その例を挙げるならば、以下のとおりである。上記の課題を解決する本発明の一態様に係る眠気判定装置は、車両の乗員の体温に影響を与える所定の事象が登録された事象定義情報を記憶した記憶部と、事象の発生を検知する事象検知部と、前記乗員の体温を計測し、所定の計測時間内における体温の変化に基づき前記乗員に眠気が生じているか否かを判定する眠気判定部と、前記判定結果に応じた空調制御指示を生成する空調制御指示部と、前記空調制御指示を外部装置に送信する送信部と、を備え、前記眠気判定部は、前記事象が検知されると、当該事象の検知から所定時間の経過後に前記体温の計測を開始する。
【0007】
また、前記事象には、前記車両の窓の開閉、前記車両ドアの開閉、前記車両が飲食店のドライブスルーに立ち寄ったこと、前記乗員が前記車内で所定範囲以上動いたこと、および、前記車両のエンジンの始動が含まれ、前記眠気判定部は、前記事象のいずれか一つが検知されると、当該事象の検知から所定時間の経過後に前記体温の計測を開始しても良い。
【0008】
また、前記事象の検知から前記体温の計測を開始するまでの前記所定時間は、前記事象に応じて異なり、前記事象が体温に与える影響がなくなるまでの時間が設定されても良い。
【0009】
また、前記眠気判定部は、前記計測時間内における皮膚温度および深部体温の変化に基づき前記乗員の眠気を判定しても良い。
【0010】
また、前記空調制御指示部は、前記車両の運転者に眠気があると判定された場合、運転席付近の温度を下げる空調制御指示を生成し、前記運転者以外の前記乗員に眠気があると判定された場合、当該乗員の座る座席付近の温度を所定の温度に近づける空調制御指示を生成しても良い。
【0011】
また、本発明の一形態に係る眠気判定方法は、眠気判定装置が行う眠気判定方法であって、前記眠気判定装置は、車両の乗員の体温に影響を与える所定の事象が登録された事象定義情報を用いて、事象の発生を検知する事象検知ステップと、前記乗員の体温を計測し、所定の計測時間内における体温の変化に基づき前記乗員に眠気が生じているか否かを判定する眠気判定ステップと、前記判定結果に応じた空調制御指示を生成する空調制御指示ステップと、前記空調制御指示を外部装置に送信する送信ステップと、を行い、前記眠気判定ステップでは、前記事象が検知されると、当該事象の検知から所定時間の経過後に前記体温の計測を開始する。
【0012】
また、前記事象には、前記車両の窓の開閉、前記車両ドアの開閉、前記車両が飲食店のドライブスルーに立ち寄ったこと、前記乗員が車内で所定範囲以上動いたこと、および、前記車両のエンジンの始動が含まれ、前記眠気判定ステップでは、前記事象のいずれか一つが検知されると、当該事象の検知から所定時間の経過後に前記体温の計測を開始しても良い。
【0013】
また、前記事象の検知から前記体温の計測を開始するまでの前記所定時間は、前記事象に応じて異なり、前記事象が体温に与える影響がなくなるまでの時間が設定されても良い。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、より的確に運転者の眠気を判定し、車内空調を制御して運転者を眠気から覚醒させることができる。
【0015】
なお、上記以外の課題、構成および効果等は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】眠気防止システムが有する眠気判定装置およびHVAC制御装置の概略構成の一例を示した図である。
図2】事象定義情報の一例を示した図である。
図3】眠気判定装置およびHVAC制御装置のハードウェア構成の一例を示した図である。
図4】眠気判定処理の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の各実施形態について図面を用いて説明する。
【0018】
図1は、眠気防止システム1000が有する眠気判定装置100およびHVAC(Heating Ventilation and Air Conditioning)制御装置200の概略構成の一例を示した図である。図示するように、眠気判定装置100と、HVAC制御装置200とは、有線の通信ケーブルにより相互通信可能に接続されている。なお、これらの両装置は、例えば近距離無線通信規格の一つであるBluetooth(登録商標)によって相互通信可能に接続されていても良い。
【0019】
眠気防止システム1000は、車両に搭載され、運転者や同乗者(以下、乗員という場合がある)の眠気を判定し、判定結果に応じてHVAC制御装置200を介して車内の空調を制御することで、運転者を眠気から覚醒させる車両システムである。なお、眠気判定装置100は、車内の所定の場所に設置されていれば良く、例えば地図情報や交通情報の表示および経路探索などいわゆるナビゲーション機能を備えた車載器(ナビゲーション装置またはディスプレイオーディオ)に搭載(内蔵)されていても良い。また、HVAC制御装置200は、車両エアコンを制御する装置として車両に搭載されている。
【0020】
眠気判定装置100は、乗員の眠気を判定する装置である。具体的には、眠気判定装置100は、制御部110と、記憶部120と、通信部130とを有している。
【0021】
制御部110は、眠気判定装置100の動作を制御する機能部であって、事象検知部111と、眠気判定部112と、空調制御指示部113とを有している。
【0022】
事象検知部111は、所定の事象を検知する機能部である。具体的には、事象検知部111は、記憶部に格納された事象定義情報121に登録されている内容に従って、所定の事象を検知する。
【0023】
ここで、事象定義情報121について説明する。
【0024】
図2は、事象定義情報121の一例を示した図である。図示するように、事象定義情報121は、所定の事象が登録された情報である。具体的には、事象定義情報121は、事象121aと、事象による体温への影響がなくなるまでの時間(以下、「影響時間」という場合がある)121bと、が対応付けられたレコードを有している。
【0025】
事象121aには、一時的に乗員の体温の変化に影響を与える所定の行動などが登録されている。具体的には、事象121aには、「ドアの開閉」、「窓の開閉」、「エアコンの操作」、「飲食店のドライブスルーの利用」、「車内で所定範囲以上動いた」および「エンジンの始動」などの具体的な事象内容が登録されている。なお、これらの事象は一例であって、乗員の体温を一時的に変化させる様々な事象が含まれるものとする。
【0026】
例えば、ドアの開閉は、乗員が車両に乗り込む際に発生する事象である。すなわち、歩いて車両まで来た行動の直後に生じる事象であるため、一時的に乗員の体温の変化に影響を与える事象に該当する。また、窓の開閉は、窓の開閉操作によって外気が車内に入るため、一時的に乗員の体温の変化に影響を与える事象に該当する。また、エアコンの操作は、車内の温度を変化させるため、一時的に乗員の体温の変化に影響を与える事象に該当する。
【0027】
また、飲食店のドライブスルーの利用は、飲食により乗員の体温が一時的に上昇(または低下)するため、一時的に乗員の体温の変化に影響を与える事象に該当する。また、車内で所定範囲以上動いた場合すなわち車内でストレッチなどをして体を大きく動かした場合は、その行動によって一時的に乗員の体温が変化するため、かかる事象に該当する。また、エンジンの始動は、運転者が車両に乗り込んだ直後に発生する事象である。すなわち、歩いて車両まで来た行動の直後に生じる事象であるため、一時的に乗員の体温の変化に影響を与える事象に該当する。
【0028】
また、事象による体温への影響がなくなるまでの時間121bは、各事象の発生から一時的に変化した乗員の体温が元の状態すなわち乗車時の座っている姿勢を維持している際の体温に戻るまでの時間を示している。各時間は、事象に応じて異なる時間が対応付けられている。
【0029】
事象検知部111は、このような事象定義情報121に登録されている所定事象の発生を検知する。具体的には、事象検知部111は、車両に搭載されているドア開閉検知センサ320から出力された信号を通信部130を介して取得することにより、ドアが開閉されたことを検知する。また、事象検知部111は、車両に搭載されているパワーウィンドウECU330(Electronic Control Unit)から出力された信号を通信部130を介して取得することにより、窓が開閉されたことを検知する。また、事象検知部111は、HVAC制御装置200から出力されたエアコン操作が行われたことを示す信号を通信部130を介して取得することによりエアコンが操作されたことを検知する。
【0030】
また、事象検知部111は、定期的に(例えば、1分ごと)に車両に搭載されている車載器から通信部130を介して現在地情報と地図情報とを取得し、車両がドライブスルーのある飲食店付近に所定時間以上(例えば、3分以上)滞在している場合に、飲食店のドライブスルーの利用を検知する。なお、地図情報には、店舗にドライブスルーが併設されているか否かの情報が含まれるものとする。また、眠気判定装置100が車載器に搭載されている場合であっても同様の方法で検知を行う。
【0031】
また、事象検知部111は、通信部130を介して、車内の様子を撮像する車内カメラ340から映像情報を取得し、乗員の頭部や腕、胸部および腹部などの所定箇所に複数割り当てた測定点が所定の検出閾エリア内に所定時間以上(例えば、30秒以上)存在し続けていない場合に、乗員が車内で所定範囲以上動いたことを検知する。また、事象検知部111は、イグニッションキーがON状態になることにより眠気判定装置100が起動すると、エンジンの始動を検知する。
【0032】
また、事象検知部111は、事象の発生を検知した場合、検知した事象と、それに対応付けられている影響時間とをセットにして眠気判定部112に出力する。
【0033】
眠気判定部112は、乗員の眠気を判定する機能部である。具体的には、眠気判定部112は、車両に搭載されている赤外線カメラ(赤外線サーモグラフィー)310で撮像された乗員の体温の変化に基づき乗員の眠気を判定する。より具体的には、眠気判定部112は、通信部130を介して、赤外線カメラ310で撮像された乗員の体温を示す画像(あるいは映像)情報を取得し、所定時間(例えば、10分)の間における乗員の皮膚温度(皮膚表面の体温)および深部体温(身体の深部における体温)の変化を解析する。そして、皮膚温度が所定範囲(例えば、1℃〜3℃)で上昇し、深部温度が所定範囲(例えば、1℃〜3℃)で低下した場合、眠気判定部112は、乗員が眠気を感じていると判定する。
【0034】
なお、眠気判定部112は、赤外線カメラ310から取得した画像情報あるいは車内カメラ340から取得した映像情報と、予め記憶されている座席の位置情報(図示せず)とにより、乗員が座っている座席位置(運転席、助手席および後部座席)を特定する。また、眠気判定部112は、例えば乗員の胸部付近や頭部付近などの所定箇所における皮膚温度および深部体温を用いて眠気を判定する。なお、乗員の皮膚温度の平均値と深部体温の平均値とを用いて眠気の判定を行っても良い。
【0035】
空調制御指示部113は、HVAC制御装置200に室内温度の変更を指示する空調制御指示を生成する機能部である。具体的には、空調制御指示部113は、通信部130を介して、眠気判定部112により眠気があると判定された乗員の座席付近の温度を変更するための空調制御指示を生成し、通信部130を介してHVAC制御装置200に送信する。
【0036】
記憶部120は、様々な情報を記憶する機能部である。具体的には、記憶部120は、事象定義情報121を記憶している。
【0037】
通信部130は、外部装置との間で情報通信を行う機能部である。例えば、通信部130は、HVAC制御装置200に空調制御指示を送信する。また、通信部130は、車両に搭載されている赤外線カメラ310から乗員の体温を示す画像情報を取得する。また、通信部130は、車両に搭載されているドア開閉検知センサ320が出力したドアの開閉を示す信号を取得する。また、通信部130は、車両に搭載されているパワーウィンドウECU330が出力したパワーウィンドウの操作が行われたことを示す信号を取得する。また、通信部130は、エアコン操作が行われたことを示す信号をHVAC制御装置200から取得する。また、通信部130は、車両に搭載されている車内カメラ340から乗員を撮像した映像情報を取得する。
【0038】
以上、眠気判定装置100の機能構成について説明した。
【0039】
HVAC制御装置200は、車両の空調(エアコン)を制御する装置である。具体的には、入力受付部210と、空調制御部220と、通信部230とを有している。
【0040】
入力受付部210は、HVAC制御装置200が備える入力装置(タッチパネルやボリュームつまみなどのハードスイッチなど)を介して様々な指示入力を受け付ける機能部である。例えば、入力受付部210は、入力装置を介してエアコンの温度や風量の変更指示を乗員から受け付ける。
【0041】
空調制御部220は、所定の設定内容あるいは入力受付部210が乗員から受け付けた変更指示に基づいて、エアコンの空調を制御する機能部である。また、空調制御部220は、眠気判定装置100から取得した空調制御指示に基づいて、運転者や同乗者など特定の乗員の座席付近の温度を変更するようエアコンの空調を制御する。また、空調制御部220は、入力受付部210を介してエアコン操作が行われたことを検知すると、通信部230を介して、かかる操作が行われたことを示す信号を眠気判定装置100に送信する。
【0042】
通信部230は、外部装置との間で情報通信を行う機能部である。例えば、通信部230は、眠気判定装置100から空調制御指示を取得する。また、通信部230は、エアコン操作が行われたことを示す信号を眠気判定装置100に送信する。
【0043】
以上、HVAC制御装置200の機能構成について説明した。
【0044】
図3は、眠気判定装置100およびHVAC制御装置200のハードウェア構成の一例を示した図である。図示するように、眠気判定装置100は、演算装置401と、主記憶装置402と、補助記憶装置403と、通信装置404と、これらの装置を相互に電気的に接続するバス405と、を有している。
【0045】
演算装置401は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。主記憶装置402は、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などのメモリ装置である。補助記憶装置403は、デジタル情報を記憶可能ないわゆるハードディスク(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)あるいはフラッシュメモリなどの不揮発性記憶装置である。
【0046】
通信装置404は、CAN(Controller Area Network)バスケーブルといったネットワークケーブルや通信ケーブルを介して他の装置およびセンサと有線通信を行う通信モジュールである。例えば、通信装置404は、CANに接続されているドア開閉検知センサ320やパワーウィンドウECU330との間で情報通信を行う。また、通信装置404は、通信ケーブルを介して接続されている赤外線カメラ310、車内カメラ340およびHVAC制御装置200との間で情報通信を行う。なお、赤外線カメラ310、車内カメラ340およびHVAC制御装置200との通信は、CANを介して行われていても良く、各装置間の接続方式は特に限定されるものではない。
【0047】
また、HVAC制御装置200は、入力装置501と、演算装置502と、主記憶装置503と、通信装置504と、これらの装置を相互に電気的に接続するバス505と、を有している。
【0048】
入力装置501は、タッチパネルやボリュームつまみ等のハードスイッチである。
【0049】
演算装置502は、例えばMPU(Micro Processing Unit)あるいはCPUである。主記憶装置503は、RAMやROMなどのメモリ装置である。
【0050】
通信装置504は、通信ケーブルを介して他の装置およびセンサと有線通信を行う通信モジュールである。例えば、通信装置504は、通信ケーブルを介して接続されている眠気判定装置100との間で情報通信を行う。
【0051】
なお、眠気判定装置100の制御部110は、演算装置401に処理を行わせるプログラムによって実現される。このプログラムは、主記憶装置402あるいは補助記憶装置403に記憶され、プログラムの実行にあたって主記憶装置402上にロードされ、演算装置401により実行される。また、記憶部120は、主記憶装置402または補助記憶装置403あるいはこれらの組合せにより実現される。また、通信部130は、通信装置404により実現される。
【0052】
また、HVAC制御装置200の入力受付部210および空調制御部220は、演算装置502に処理を行わせるプログラムによって実現される。このプログラムは、主記憶装置503に記憶され、プログラムの実行にあたって主記憶装置503上にロードされ、演算装置502により実行される。また、通信部230は、通信装置504により実現される。
【0053】
また、眠気判定装置100およびHVAC制御装置200の上記の各構成、機能、処理部および処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現しても良い。また、上記構成、機能は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現しても良い。
【0054】
以上、眠気判定装置100およびHVAC制御装置200のハードウェア構成について説明した。
【0055】
[動作の説明]
車両のイグニッションキーがON状態になることで眠気判定装置100が起動すると、エンジンの始動を検知する。また、かかる事象が検知されると、眠気判定部112は、眠気判定処理を開始する。
【0056】
図4は、眠気判定装置100で実行される眠気判定処理の一例を示した図である。眠気判定部112は、事象定義情報121に登録されている事象のいずれかが検知されるたびに新たな眠気判定処理が開始する。通常、車両のイグニッションキーがON状態となり、エンジンが始動すると、かかる事象を検知して眠気判定処理が開始される。
【0057】
また、新たな事象が検知された時に乗員の体温を計測中の場合、眠気判定部112は、測定を中止し(後述のステップS001でNoの場合のステップS002)、処理をステップS001に戻す。また、ステップS005〜ステップS007(または、ステップS005〜ステップS006およびステップS008)の処理中に新たな事象が検知された場合、眠気判定部112は、これらの処理が終了した後で、処理をステップS001に戻す。
【0058】
すなわち、新たな事象が検知され、その事象による体温への影響がなくなる時間が経過すると体温の計測が行われ、計測結果に応じた処理の終了後は、新たな事象が検知されるまでの間、乗員の体温計測および空調制御が継続的に実行される。
【0059】
以下、眠気判定処理の詳細について説明する。
【0060】
事象の検知により眠気判定処理が開始されると、眠気判定部112は、体温変化に影響ある事象の発生から所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS001)。具体的には、眠気判定部112は、事象検知部111が事象を検知してから、かかる事象の影響時間が経過したか否かを判定する。なお、新たな事象が検知された直後にステップS001が開始されるため、最初に実行されるステップS001の処理ではNo判定になる。
【0061】
そして、所定時間が経過していないと判定した場合であって(ステップS001でNo)、乗員の体温を測定中の場合、眠気判定部112は、測定を中止して(ステップS002)、処理をステップS001に戻す。一方で、所定時間が経過したと判定した場合(ステップS001でYes)、眠気判定部112は、処理をステップS003に移行する。
【0062】
ステップS003では、眠気判定部112は、体温の計測を開始し、処理をステップS004に移行する。具体的には、眠気判定部112は、通信部130を介して赤外線カメラ310から取得した乗員の体温を示す画像情報を用いて、その時点における乗員の皮膚温度と深部体温とを一時的に記憶する。
【0063】
次に、眠気判定部112は、計測開始から所定時間(例えば、10分)が経過したか否かを判定する(ステップS004)。そして、所定時間を経過していないと判定した場合(ステップS004でNo)、眠気判定部112は、ステップS004の処理を繰り返し行い、所定時間が経過したと判定した場合(ステップS004でYes)、処理をステップS005に移行する。
【0064】
なお、眠気判定部112は、所定時間を経過した時点の乗員の皮膚温度および深部体温と、測定開始時の乗員の皮膚温度および深部体温とを用いて、測定時間内における体温の変化量を算出する。
【0065】
ステップS005では、眠気判定部112は、眠気のある乗員がいるか否かを判定する。具体的には、眠気判定部112は、測定開始から所定時間を経過するまでの間に皮膚温度が所定範囲で上昇し、深部体温が所定範囲で低下している乗員がいるか否かを判定する。
【0066】
そして、眠気のある乗員がいないと判定した場合(ステップS005でNo)、眠気判定部112は、処理をステップS003に戻す。一方で、眠気のある乗員がいると判定した場合(ステップS005でYes)、眠気判定部112は、処理をステップS006に移行する。
【0067】
ステップS006では、眠気判定部112は、眠気のある乗員は運転者か否かを判定する。具体的には、眠気判定部112は、かかる体温変化が認められた乗員の座席位置から、眠気のある乗員が運転者か否かを判定する。そして、眠気判定部112により眠気のある乗員が運転者と判定された場合(ステップS006でYes)、空調制御指示部113は、運転席付近の温度を下げる空調制御指示を生成し、通信部130を介してHVAC制御装置200に送信する(ステップS007)。また、空調制御指示部113は、かかる指示を送信すると、処理をステップS003に戻し、新たな事象が検知されるまで継続してステップS003〜ステップS007(またはステップS003〜、ステップS006およびステップS008)の処理が実行され続ける。
【0068】
一方で、眠気判定部112により眠気のある乗員が運転者ではないと判定された場合(ステップS006でNo)、空調制御指示部113は、眠気があると判定された乗員(運転者以外)の座席付近の温度を所定の温度(例えば、25℃)に近づける空調制御指示を生成する。例えば、眠気があると判定された乗員(運転者以外)の座席付近の現在の温度が15℃、所定の温度が25℃の場合、空調制御指示部113は、かかる乗員の座席付近の温度を上げる空調制御指示を生成する。また、この時、眠気があると判定された乗員(運転者以外)の座席付近の温度が30℃、所定の温度が25℃の場合は、かかる乗員(運転者以外)の座席付近の温度を下げる空調制御指示を生成する。また、空調制御指示部113は、通信部130を介して、生成した空調制御指示をHVAC制御装置200に送信する(ステップS008)。また、空調制御指示部113は、かかる指示を送信すると、処理をステップS003に戻し、新たな事象が検知されるまで継続してステップS003〜ステップS007(またはステップS003〜、ステップS006およびステップS008)の処理が実行され続ける。
【0069】
なお、HVAC制御装置200の空調制御部220は、通信部230を介して空調制御指示を取得すると、指示に応じた空調制御を行う。
【0070】
以上、本実施形態にかかる眠気防止システム1000について説明した。
【0071】
このような眠気防止システムによれば、より的確に運転者の眠気を判定し、車内環境を制御して運転者を眠気から覚醒させることができる。特に、眠気防止システムは、皮膚温度および深部体温の変化に基づき乗員の眠気を判定する。そのため、体温変化に影響する事象が発生した場合には、かかる事象による体温変化への影響がなくなるまで体温の計測を行わないようにすることで、眠気の判定精度を向上させることができる。
【0072】
また、運転者に眠気が生じていると判定した場合、眠気判定装置は、運転者の体温を低下させるように運転席付近の空調を制御する指示をHVAC制御装置に送信する。これにより、運転者の皮膚温度を低下させ、それに伴って身体の深部体温が上昇することで、運転者を眠気から覚醒させることができる。このような覚醒方法は、外的に音や振動を与えて眠気を防止する方法に比べて、より安全かつ適切に運転者を覚醒させることができる。例えば、運転中に音や振動を与えた場合、運転者は周囲への注意が散漫になってしまう。また、同乗者が眠い場合、音や振動は、運転に関係のない同乗者も起こしてしまう場合がある。これに対し、本実施形態に係る眠気防止システムは、運転席付近の温度を制御することで運転者を覚醒させるため、運転者の注意を妨げず、かつ、同乗者を起こしてしまうこともない。
【0073】
また、眠気防止システムによれば、運転者以外の同乗者が眠気を感じている場合には、同乗者の座席付近の温度を所定の温度に近づける空調制御が実施される。これによれば、同乗者の皮膚温度を上昇させ、それに伴って深部体温がより低下することで、同乗者がより眠りやすい温度環境にすることができる。また、同乗者にとって快適な所定の温度に近づけることで、同乗者がより快適に眠りやすい温度環境にすることができる。
【0074】
なお、本発明は、上記の実施形態や変形例などに限られるものではなく、これら以外にも様々な実施形態および変形例が含まれる。例えば、上記の実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態や変形例の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0075】
1000・・・眠気防止システム、100・・・眠気判定装置、110・・・制御部、111・・・事象検知部、112・・・眠気判定部、113・・・空調制御指示部、120・・・記憶部、121・・・事象定義情報、130・・・通信部、200・・・HVAC制御装置、210・・・入力受付部、220・・・空調制御部、230・・・通信部、310・・・赤外線カメラ(赤外線サーモグラフィー)、320・・・ドア開閉検知センサ、330・・・パワーウィンドウECU、340・・・車内カメラ、501・・・入力装置、401、502・・・演算装置、402、503・・・主記憶装置、403・・・補助記憶装置、404、504・・・通信装置、405、505・・・バス、
図1
図2
図3
図4