【解決手段】本明細書において、被験体におけるがんを処置する方法を記載する。特に、エンチノスタット、および抗PD−1抗体または抗PD−L1抗体からなる組合せを用いて非小細胞肺がんおよびメラノーマを処置するための方法が提供される。一局面において、上記抗PD−1抗体はペンブロリズマブである。一局面において、上記がんは、PD−L1の過剰発現により特徴付けられる。一局面において、上記がんは、PD−L1の低発現により特徴付けられる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
がん療法、特に、現在公知の方法で処置しても、満足の行く進行を有さない切除不能または転移性のメラノーマ、および非小細胞肺がんに対して、新規の戦略が必要とされている。驚くべきことには、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、例えばエンチノスタットと、免疫チェックポイント阻害剤、例えば抗PD−1抗体または抗PD−L1抗体とを用いたエピジェネティックなモジュレーションを使用する併用療法が、がん、特にメラノーマおよび非小細胞肺がんの処置に対して有効な戦略となることが判明した。
【0009】
本明細書では、HDAC阻害剤、および抗PD−1抗体または抗PD−L1抗体の投与に基づいてがんを処置する方法が提供される。一部の実施形態では、HDAC阻害剤はエンチノスタットである。一部の実施形態では、抗PD−1抗体はペンブロリズマブである。方法は、組合せに1つまたは複数の治療剤または療法が補充される、処置をさらに含み得る。
【0010】
本明細書に記載されている開示を理解しやすくするために、いくつかの用語を以下に定義する。
【0011】
本明細書で使用する場合、「異常な細胞増殖」とは、正常細胞の異常増殖および異常細胞の増殖を含む、正常な調節機構と独立した細胞増殖(例えば、接触阻害の喪失)を意味する。
【0012】
「新生物」とは、本明細書に記載されている場合、自律的増殖および体細胞変異により、正常な細胞とは区別される、異常な、未調節の、および無秩序な細胞の増殖である。腫瘍性細胞が増殖および分裂する際には、その遺伝子変異および増殖特性が子孫細胞に受け継がれる。新生物または腫瘍は、腫瘍性細胞の蓄積である。一部の実施形態では、新生物は、良性である場合もあれば、悪性である場合もある。
【0013】
「転移」とは、本明細書で使用する場合、リンパ管または血管を経由する腫瘍細胞の拡散を指す。また、転移は、漿膜腔(serous cavity)、またはクモ膜下腔もしくは他の腔を通じて、直接広がることによる腫瘍細胞の移動を指す。転移プロセスを通じて、腫瘍細胞が身体の他の部位に移動すると、当初の出現部位から離れた領域に新生物がもたらされる。
【0014】
本明細書で議論される場合、「血管形成」が腫瘍形成および転移において顕著である。血管新生因子が、いくつかの固形腫瘍、例えば横紋筋肉腫、網膜芽細胞腫、ユーイング肉腫、神経芽細胞腫、および骨肉腫と関連することが判明した。腫瘍は、栄養分を提供し、細胞の老廃物を取り除く血液供給無くして増殖することはできない。血管形成が重要である腫瘍として、固形腫瘍、例えば腎細胞癌、肝細胞癌、および良性腫瘍、例えば聴神経腫瘍、および神経線維腫が挙げられる。血管形成は、血液由来の腫瘍、例えば白血病と関連している。血管形成は、白血病を起こす骨髄の異常において役割を果たすと考えられている。血管形成を防止すれば、がん性腫瘍の増殖や腫瘍の存在に起因して生じた被験体への損傷を止め得る。
【0015】
用語「被験体」とは、霊長類(例えば、ヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、またはマウスを含むがこれらに限定されない動物を指す。用語「被験体」および「患者」は、例えば哺乳動物被験体、例えばヒト被験体と関連して、本明細書で交換可能に使用される。
【0016】
用語「処置する(treat)」、「処置すること(treating)」、および「処置(treatment)」は、障害、疾患、もしくは状態;または障害、疾患、もしくは状態と関連した1つもしくは複数の症状の緩和または抑制;あるいは障害、疾患、または状態そのものの原因(複数可)の緩和または根絶を含むことを意味する。
【0017】
用語「治療有効量」とは、投与したとき、処置される障害、疾患、または状態の1つまたは複数の症状の発症を防止する、またはそのような症状をある程度緩和するのに十分である化合物の量を指す。また、用語「治療有効量」は、研究者、獣医師、医師、または臨床医によって求められる細胞、組織、システム、動物、またはヒトの生物学的または医学的応答を誘発するのに十分である化合物の量を指す。
【0018】
用語「薬学的に許容される担体」、「薬学的に許容される賦形剤」、「生理学的に許容される担体」、または「生理学的に許容される賦形剤」とは、薬学的に許容される物質、組成物、またはビヒクル、例えば液体もしくは固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、または被包材料を指す。各成分は、医薬製剤の他の成分との適合性の意味で、「薬学的に許容され」なければならない。また、過剰の毒性、刺激、アレルギー反応、免疫原性、または他の問題もしくは合併症を引き起こすことなく、ヒトおよび動物の組織または臓器との接触した使用に適し、合理的な利益/リスク比と釣り合わなければならない。Remington: The Science and Practice of Pharmacy、第21版; Lippincott Williams & Wilkins: Philadelphia、PA、2005年;Handbook of Pharmaceutical Excipients、第5版;Roweら編、The Pharmaceutical Press and the American Pharmaceutical Association:2005年;およびHandbook of
Pharmaceutical Additives、第3版;AshおよびAsh編、Gower Publishing Company:2007年;Pharmaceutical Preformulation and Formulation、Gibson編、CRC Press LLC: Boca Raton、FL、2004年を参照。
【0019】
用語「医薬組成物」とは、本明細書に開示の化合物と、他の化学成分、例えば希釈剤または担体との混合物を指す。医薬組成物は、生物への化合物の投与を促進する。化合物を投与する複数の技法が、経口、注射、エアゾール、非経口、および局所投与を含め、当技術分野に存在するが、これらに限定されない。また、医薬組成物は、化合物を、無機酸または有機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸等と反応させることによって得ることができる。
【0020】
がん、腫瘍、腫瘍関連障害、および腫瘍性疾患の状態は重篤であり、また多くの場合、生命を脅かす状態である。これらの疾患および障害は、急速増殖性の細胞増殖により特徴付けられ、その処置に有効である治療剤の同定に向けられた研究努力の対象としてなおも存続している。そのような薬剤は、患者の生存を延ばし、新生物と関連した急速増殖性の細胞増殖を阻害するか、または新生物の退縮をもたらす。
【0021】
HDAC阻害剤は、クロマチンリモデリングおよび遺伝子発現調節を通じて、血液学的悪性疾患および固形悪性疾患における分化およびアポトーシスを促進する新たなクラスの治療剤である。いくつかのHDAC阻害剤が同定されており、これには、ベンズアミド(エンチノスタット)、短鎖脂肪酸(すなわち、フェニル酪酸ナトリウム);ヒドロキサム酸(すなわち、スベロイルアニリドヒドロキサミン酸およびトリコスタチン(thrichostatin)A);2−アミノ−8−オキソ−9,10−エポキシ−デカノイル部分を含有する環状テトラペプチド(すなわち、トラポキシンA)、および2−アミノ−8−オキソ−9,10−エポキシ−デカノイル部分を有さない環状ペプチド(すなわち、FK228)が含まれる。エンチノスタットは、複数種の固形腫瘍および血液のがんにおいて臨床試験が実施されたベンズアミドHDAC阻害剤である。エンチノスタットは、急速に吸収され、約100時間の半減期を有し、重要なこととして、ヒストンアセチル化の変化が、エンチノスタット投与後の数週間にわたり持続する。
【0022】
腫瘍細胞上でPD−L1が多量に発現すると、それと相関して様々な他の固形腫瘍型において、予後および生存が不良となることが判明した。いずれの理論にも拘束されるものではないが、PD−1/PD−L1経路は、腫瘍免疫回避において重要な役割を果たすと考えられ、いくつかの実質臓器型における治療介入にとって魅力的な標的であると考えられ得る。
【0023】
いくつかのPD−1抗体およびPD−L1抗体が臨床開発段階にある。全体として、それらの抗体は良好な忍容性を示すことが報告されており、そのほとんどが、フェーズI試験において用量制限性の毒性に到達しなかった。
【0024】
ヒストンデアセチラーゼ
HDACは、少なくとも18種類の酵素を含むファミリーであり、3クラスにグループ化される(クラスI、II、およびIII)。クラスIのHDACには、HADC1、2、3、および8が含まれるが、これらに限定されない。クラスIのHDACは核に見出され得るが、転写制御リプレッサーと関係すると考えられている。クラスIIのHDACには、HDAC4、5、6、7、および9が非限定的に含まれ、細胞質および核の両方に見出され得る。クラスIIIのHDACは、NAD依存性タンパク質であると考えられており、サーチュインファミリーのタンパク質のメンバーが含まれるが、これらに限定されない。サーチュインタンパク質の非限定的な事例として、SIRT1〜7が挙げられる。本明細書で使用する場合、用語「選択的HDAC」とは、HDACの3クラスすべてとは相互作用しないHDAC阻害剤を指す。
【0025】
HDAC阻害剤
HDAC阻害剤は、汎HDAC阻害剤と選択的HDAC阻害剤とに、おおむね分類され得る。公知のHDAC阻害剤には多くの構造的多様性が認められるものの、共通した特徴も共有する:酵素活性部位と相互作用する部分、および活性部位に至るチャネル内側に位置する側鎖。これは、ヒドロキサメート基が活性部位と相互作用すると考えられているヒドロキサメート、例えばSAHAと共に認められ得る。デプシペプチドの場合、ジスルフィド結合が細胞内で還元されると、4−炭素アルケニル鎖に結合した遊離型チオール基(活性部位と相互作用する)が作り出されると考えられている。HDAC阻害剤間の差異は、活性部位に対して反対側のチャネル端部にあるHDACチャネルの縁と相互作用するという点にある。HDAC阻害剤とチャネルの縁との間のこの相互作用こそが、SAHA等の汎HDAC阻害剤とデプシペプチド等の選択的HDAC阻害剤との間で、HDACの選択性について認められた一部の差異を、少なくともある程度説明すると考えられている。特に好ましいHDAC阻害剤は、エンチノスタットである。エンチノスタットは、化学名N−(2−アミノフェニル)−4−[N−(ピリジン−3−イル)メトキシカルボニルアミノ−メチル]−ベンズアミド、および以下に示す化学構造を有する。
【化1】
【0026】
プログラム細胞死−1(PD−1)
PD−1は、受容体の免疫グロブリンスーパーファミリーに属するT細胞調節因子のCD28ファミリーのメンバーである細胞表面受容体である。ヒトPD−1遺伝子は、染色体2q37に位置し、また完全長PD−1cDNAは、288個のアミノ酸残基を有するタンパク質をコードし、マウスPD−1と60%の相同性を有する。同遺伝子は、胸腺の発生中にCD4
−CD8
−(ダブルネガティブ)胸腺細胞上に存在し、長期抗原曝露後に、TおよびB細胞等の成熟した造血細胞、NKT細胞、および単球における活性化の際に発現する。
【0027】
PD−L1は、いくつかのマウスおよびヒト腫瘍上で発現される(また、大部分のPD−L1陰性腫瘍細胞系統上で、IFNガンマにより誘導可能である)ことが示されており、免疫回避を媒介すると仮定される(Iwai Y.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 99巻:12293〜12297頁(2002年);Strome S. E.ら、Cancer Res.、63巻:6501〜6505頁(2003年))。ヒトでは、PD−1および/またはPD−L1の発現が、肺、肝臓、卵巣、子宮頚部、皮膚、結腸、神経膠腫、膀胱、乳房、腎臓、食道、胃、口腔扁平上皮細胞、尿路上皮細胞、および膵臓のがん、ならびに頭頸部の腫瘍に由来するいくつかの原発腫瘍生検に見出されている(Brown J. A.ら、J. Immunol.、170巻:1257〜1266頁(2003年);Dong H.ら、Nat. Med.、8巻:793〜800頁(2002年);Wintterleら、Cancer Res.、63巻:7462〜7467頁(2003年);Strome S. E.ら、Cancer Res.、63巻:6501〜6505頁(2003年);Thompson
R. H.ら、Cancer Res.、66巻:3381〜5頁(2006年);Thompsonら、Clin. Cancer Res.、13巻:1757〜61頁(2007年);Nomi T.ら、Clin. Cancer Res.、13巻:2151〜7頁(2007年))。腫瘍細胞上でPD−リガンドが発現すると、それと相関して複数の腫瘍型にわたって、がん患者の予後が不良となる(OkazakiおよびHonjo、Int. Immunol.、19巻:813〜824頁(2007年)において概説される)。
【0028】
一部の試験より、PD−1がそのリガンド(PD−L1およびPD−L2)と相互作用すると、in vitroおよびin vivoでのリンパ球増殖阻害を引き起こすことが示された。したがって、いずれの理論にも拘束されるものではないが、リガンドPD−L1がPD−1と結合すると、エフェクター抗腫瘍T細胞活性を下方調節し、免疫回避を促進するものと考えられる。
【0029】
PD−1/PD−L1相互作用が破綻すると、T細胞増殖およびサイトカイン産生が増加し、ならびに細胞周期の進行が遮断されることが示されている。PD−1−特異的抗体によりPD−1を遮断するin vitro試験では、IFN−γ−分泌性抗原特異的細胞の頻度の増加を含む、メラノーマ特異抗原に対する細胞傷害性T細胞応答が増強することが示された。
【0030】
いずれの理論にも拘束されるものではないが、PD−1を標的とすれば、がんに対する有効な治療戦略として作用し得るものと考えられる。
【0031】
PD−1を臨床的に標的とする主たる方法は、PD−1またはPD−L1の機能を阻害する遺伝子工学的に作出されたモノクロナール抗体の開発によるものであった。
【0032】
本開示の方法は、PD−1(抗PD−1抗体)およびその抗原結合性部分に対する完全長抗体の使用を含む。用語「その抗原結合性部分」に包含される結合性断片の例として、(i)Vi、V//、CL、およびCドメインからなる一価の断片であるFab断片;(ii)ヒンジ領域においてジスルフィド架橋により連結した2つのFab断片を含む2価の断片であるF(ab’)2断片;(iii)\lHおよびCmドメインからなるFd断片;ならびに(iv)Abの単一アームのViおよびV//ドメインからなるFv断片が挙げられる。
【0033】
抗PD−1抗体およびその抗原結合性部分は、高い特異性および親和性でPD−1に結合し、PD−L1および/またはPD−L2の結合を遮断し、PD−1シグナル伝達経路の免疫抑制効果を阻害する。一部の実施形態では、併用療法は、エンチノスタット、および抗PD−1抗体またはその抗原結合性部分を投与することを含み、抗体またはその抗原結合性部分は、キメラ抗体、ヒト化抗体、もしくはヒトモノクロナール抗体またはその一部分である。ある特定の実施形態では、抗PD−1抗体またはその抗原結合性部分は、ヒト化抗体である。一部の実施形態では、抗PD−1抗体またはその抗原結合性部分は、ヒト抗体である。一部の実施形態では、抗PD−1抗体またはその抗原結合性部分は、モノクロナール抗体またはその抗原結合性部分である。
いずれの理論にも拘束されるものではないが、抗PD−L1抗体は、PD−1とPD−L1の間の相互作用を防止し、これによりPD−1のシグナル伝達経路に対して類似した効果を発揮するものと考えられる。したがって、一部の実施形態では、併用療法は、エンチノスタット、および抗PD−L1抗体を投与することを含む。一部の実施形態では、抗PD−L1抗体またはその抗原結合性部分は、プログラム死−リガンド1(PD−L1)受容体と特異的に結合し、PD−L1活性を阻害する。
【0034】
ペンブロリズマブ
ペンブロリズマブは、ヒトIgG4免疫グロブリン分子上にグラフト化された高親和性マウス抗PD−1由来の可変領域から構成される、ヒト化モノクロナールIgG4抗PD−1抗体であり、安定化させるために工学的に作出されたFc領域を有する。ペンブロリズマブは、切除不能または転移性のメラノーマ、および転移性の非小細胞肺がん(NSCLC)の処置用として、FDAにより認可されている。
【0035】
肺がん
肺がんは、米国内および世界全体のいずれにおいても、女性および男性の主たるがん死亡原因である。肺がんは、女性の主たるがん死亡原因として、乳がんを凌駕する。2014年の米国内では、158,040名が肺がんによって死亡すると予測され、結腸および直腸のがん、乳がん、ならびに前立腺がんによる死亡数の合計を上回る。最初期段階において診断された肺がんの生存率は高めで、およそ49%が5年またはそれより長く生存するものの、身体の他の部位に広がった肺がんと診断された者では、約2%が診断から5年後に生存するに過ぎない。
【0036】
正常細胞が制御無しにその成長および増殖を引き起こす変換を受けたときに、がんが生ずる。細胞は、それが発生した周辺組織と異なる塊または腫瘍を形成する。腫瘍は、健常細胞から酸素、栄養分、および空間を奪うので、かつ浸潤し、正常組織が機能する能力を破綻または低下させるので危険である。
【0037】
大半の肺腫瘍は悪性である。これは、腫瘍がその周辺の健康な組織に浸潤し、それを破壊し、身体全体を通じて広がる可能性があることを意味する。腫瘍は、近隣のリンパ節に、または血流を通じて他の臓器に広がる可能性がある。このプロセスは転移と呼ばれる。肺がんが転移したとき、肺内の腫瘍は原発腫瘍と呼ばれ、身体の他の部分の腫瘍は、続発性腫瘍または転移性腫瘍と呼ばれる。
【0038】
一部の肺内の腫瘍は、身体内の別の場所にあるがんからの転移である。肺は、転移の一般的な部位である。この場合には、がんは、肺がんとはみなされない。例えば、前立腺がんが血流により肺に広がった場合には、それは肺内の転移性前立腺がん(続発性のがん)であり、肺がんとは呼ばれない。
【0039】
肺がんは、異なる種類の腫瘍の群を含む。肺がんは、全症例の約95%を占める2つの主要な群に通常分割される。群への分割は、がんを構成する細胞の種類に基づく。2つの主要な種類の肺がんが、顕微鏡下で観察したときの腫瘍の細胞サイズにより特徴付けられる。それらは、小細胞肺がん(SCLC)および非小細胞肺がん(NSCLC)と呼ばれる。NSCLCには、いくつかの腫瘍のサブタイプが含まれる。SCLCはあまり一般的ではないが、より急速に増殖し、NSCLCよりも転移する可能性が高い。多くの場合、SCLCは、がんと診断されたときに身体の他の部分にすでに広がっている。約5%の肺がんが、カルチノイド腫瘍、リンパ腫等を含む稀な細胞型を有する。本明細書で使用する場合、用語「肺がん」には、SCLC、NSCLC、カルチノイド腫瘍、リンパ腫、およびその様々なサブタイプが含まれるが、これらに限定されない。
【0040】
非小細胞肺がん
NSCLCは、小細胞癌(燕麦細胞癌)型に該当しない肺のがんである。用語「非小細胞肺がん」は、様々な種類の気管支原性癌(気管支の内層に起因する癌)に適用される。特別な種類のNSCLCの例として、非扁平上皮癌、例えば腺癌、大細胞がん(すなわち、大細胞未分化癌)、および扁平上皮癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
腺癌は、臓器の内層または内面に発現するがんである。腺癌は、最も一般的な種類の肺がんであり、肺がんの全症例の30%〜40%を占める。腺癌のサブタイプは、気管支肺胞細胞癌と呼ばれ、胸部X線では肺炎様の外観を呈する。
【0042】
扁平上皮癌は、扁平上皮細胞において始まるがんである。扁平上皮細胞(squamos cell)は、顕微鏡下では魚鱗のように見える、薄く扁平な細胞である。扁平上皮細胞は、身体の中空臓器の内層である皮膚の表面、および気道および消化管の通路を形成する組織内に見出される。扁平上皮癌は、これらの組織のいずれにも発生し得る。扁平上皮癌は、2番目に最も一般的な種類の肺がんであり、全症例の約30%を占める。
【0043】
大細胞癌は、扁平上皮または腺の成熟のエビデンスを示さない。したがって、これらの腫瘍では、多くの場合、すべての他の可能性が排除される場合、既定により診断が下される。これらの腫瘍は、生検前には、その診断を示唆するようなあらゆる診断上の特徴を欠く。これらは、急速に増殖し、早期に転移する傾向を有し、喫煙と強く関連する。大細胞腫瘍は、通常、大型で、かさ高く、境界明瞭な、灰色がかったピンク色の塊であり、広範な出血および壊死を伴う。これらは、一般的に中心壊死を有するが、稀に空洞形成する。これらは、中央から末梢の肺領域中に存在する傾向を有する。これらは、区域気管支または亜区域気管支を含めて局所的に広がる場合もある。大細胞癌の改変体として、巨細胞癌がある。このサブタイプは特に侵襲的であり、予後も極めて不良である。これらの腫瘍は、大型の末梢性の塊として一般的に存在し、局所的な壊死性成分を有する。これらの腫瘍は、直接広がらない限り、太い気道とは関係しない。大細胞がんは、肺がんの全症例の10%〜20%を占める。
【0044】
一部の実施形態では、本明細書に記載されている方法は、NSCLC患者にエンチノスタット、および抗PD−1抗体または抗PD−L1抗体を含む併用療法を投与することを含み、前記患者は、扁平上皮または非扁平上皮(nonquamous)腫瘍組織試料中で、PD−L1を高レベルで発現する。一部の実施形態では、本明細書に記載されている方法は、NSCLC患者にエンチノスタット、および抗PD−1抗体または抗PD−L1抗体を含む併用療法を投与することを含み、前記患者は、扁平上皮または非扁平上皮腫瘍組織試料中で、1%から50%の間のPD−L1腫瘍比率スコア(PD−L1 TPS)を有する。一部の実施形態では、本明細書に記載されている方法は、NSCLC患者にエンチノスタット、および抗PD−1抗体または抗PD−L1抗体を含む併用療法を投与することを含み、前記患者は、扁平上皮または非扁平上皮腫瘍組織試料中で、50%またはそれ超のPD−L1腫瘍比率スコア(PD−L1 TPS)を有する。PD−L1 TPSは、免疫組織化学を使用して決定したときに、PD−L1の発現について陽性染色される腫瘍組織試料中の細胞の割合(%)の尺度である。一部の実施形態では、PD−L1 TPSは、PD−L1 IHC22C3 pharmDxキットを使用して決定される。
【0045】
メラノーマ
メラノーマは、メラニン色素を作製する細胞であり、神経堤に由来するメラニン形成細胞の悪性腫瘍である。大半のメラノーマは皮膚に発生するが、粘膜表面またはぶどう膜を含む、神経堤細胞が移動する他の部位にも生ずる可能性がある。ぶどう膜メラノーマは、発生数、予後因子、分子的特徴、および処置において、皮膚のメラノーマとは顕著に異なる。
【0046】
2014年の米国内では、9,710名がメラノーマにより死亡すると予測され、新規症例数は76,100例に登ると見積もられた。皮膚がんは、米国内で診断が下された最も一般的な悪性疾患であり、毎年、2百万人において3.5百万個のがんが診断されている。メラノーマは、皮膚がんのうち5%未満を占めるに過ぎないが、最も多くの死亡を引き起こす。発生数は、過去40年間にわたり増加している。高齢の男性が最も高いリスクに晒されている;ただし、メラノーマが25〜29歳の若年成人における最も一般的ながんであり、15〜29歳の若年者における2番目に最も一般的ながんである。眼のメラノーマが、最も一般的な眼のがんであり、毎年、およそ2,000症例が診断を下される。
【0047】
メラノーマは、主として成人に生ずるが、症例の50%超が、皮膚の見かけ上正常な領域に発生する。メラノーマは粘膜表面やぶどう膜を含む、あらゆる場所に生ずる可能性があるが、女性では、メラノーマは、四肢により一般的に生じ、また男性では、体幹または頭頸部上に最も一般的に生ずる。
【0048】
メラノーマの予後は、原発性および転移性の腫瘍の特徴により影響を受ける。最も重要な予後因子として、メラノーマの厚さおよび/または浸潤レベル、1ミリメーター当たりの有糸分裂として定義された分裂指数、原発部位における潰瘍形成または出血、マクロ転移およびミクロ転移の特質を備えた関係する局部リンパ節の数、全身転移、部位−非内蔵
対 肺 対 他のすべての内臓部位、血清乳酸脱水素酵素レベルの上昇が挙げられるが、これらに限定されない。いずれの理論にも拘束されるものではないが、腫瘍浸潤リンパ球の存在は、潜在的な予後因子であり得ると考えられる。メラノーマでは、PD−1が腫瘍浸潤Tリンパ球により主として発現されることが報告されている。
【0049】
非小細胞肺がんおよびメラノーマの処置のための方法
一実施形態は、患者にエンチノスタット、および抗PD−1抗体または抗PD−L1抗体を含む組合せを投与することを含む、患者におけるがんを処置する方法を提供する。別の実施形態は、患者にエンチノスタットおよび抗PD−1抗体を含む組合せを投与することを含む、患者におけるがんを処置する方法を提供する。別の実施形態は、抗PD−1抗体がペンブロリズマブである方法を提供する。
【0050】
別の実施形態は、がんがPD−L1の過剰発現により特徴付けられる方法を提供する。別の実施形態は、がんがPD−L1の低発現により特徴付けられる方法を提供する。別の実施形態は、がんが肺がんまたはメラノーマである方法を提供する。別の実施形態は、がんが肺がんである方法を提供する。別の実施形態は、肺がんが非小細胞肺がんである方法を提供する。別の実施形態は、非小細胞肺がんが腺癌である方法を提供する。別の実施形態は、非小細胞肺がんが扁平上皮癌である方法を提供する。別の実施形態は、非小細胞肺がんが大細胞癌である方法を提供する。別の実施形態は、がんがメラノーマである方法を提供する。
【0051】
別の実施形態は、患者が、少なくとも1つの事前療法を受けた患者である方法を提供する。別の実施形態は、事前療法ががんの処置のためのものである方法を提供する。別の実施形態は、がんが局所進行性である方法を提供する。別の実施形態は、がんが転移性である方法を提供する。別の実施形態は、事前療法が抗PD−1抗体を用いるものであった方法を提供する。
【0052】
別の実施形態は、エンチノスタット、および抗PD−1抗体または抗PD−L1抗体が、いずれかの順番で逐次的に、または同時に投与される方法を提供する。別の実施形態は、エンチノスタットおよび抗PD−1抗体が、いずれかの順番で逐次的に、または同時に投与される方法を提供する。別の実施形態は、エンチノスタットおよび抗PD−1抗体が、21日の処置サイクル中に、いずれかの順番で逐次的に、または同時に投与される方法を提供する。別の実施形態は、抗PD−1抗体が処置サイクルの1日目に投与される方法を提供する。別の実施形態は、抗PD−1抗体が0.1〜10mg/kgの用量で投与される方法を提供する。別の実施形態は、抗PD−1抗体が2mg/kgの用量で投与される方法を提供する。別の実施形態は、抗PD−1抗体が静脈内輸液として投与される方法を提供する。別の実施形態は、抗PD−1抗体が15分〜60分間にわたり静脈内輸液として投与される方法を提供する。別の実施形態は、抗PD−1抗体が15分〜60分間にわたり静脈内輸液として2mg/kgの用量で投与される方法を提供する。別の実施形態は、抗PD−1抗体が30分間にわたり静脈内輸液として2mg/kgの用量で投与される方法を提供する。別の実施形態は、抗PD−1抗体が2週間毎に1回、15分〜60分間にわたり静脈内輸液として2mg/kgの用量で投与される方法を提供する。別の実施形態は、抗PD−1抗体が3週間毎に1回、15分〜60分間にわたり静脈内輸液として2mg/kgの用量で投与される方法を提供する。別の実施形態は、抗PD−1抗体が4週間毎に1回、15分〜60分間にわたり静脈内輸液として2mg/kgの用量で投与される方法を提供する。別の実施形態は、抗PD−1抗体が200mgの固定用量で投与される方法を提供する。別の実施形態は、抗PD−1抗体が静脈内輸液により3週間毎に200mgの固定用量で投与される方法を提供する。別の実施形態は、エンチノスタットが処置サイクル中に定期的に投与される方法を提供する。別の実施形態は、エンチノスタットが処置サイクルの1日目に投与される方法を提供する。別の実施形態は、エンチノスタットが処置サイクルの8日目に投与される方法を提供する。別の実施形態は、エンチノスタットが処置サイクルの15日目に投与される方法を提供する。別の実施形態は、エンチノスタットが3mg/kgの用量で投与される方法を提供する。別の実施形態は、エンチノスタットが5mg/kgの用量で投与される方法を提供する。別の実施形態は、エンチノスタットが10mg/kgの用量で投与される方法を提供する。別の実施形態は、エンチノスタットが最初に投与される方法を提供する。別の実施形態は、エンチノスタットが定期的に投与される方法を提供する。別の実施形態は、エンチノスタットが毎週投与される方法を提供する。別の実施形態は、エンチノスタットが2週間毎に投与される方法を提供する。別の実施形態は、エンチノスタットが2週間毎に10mg/kgの用量で投与される方法を提供する。別の実施形態は、エンチノスタット、および抗PD−1抗体または抗PD−L1抗体が同時に投与される方法を提供する。別の実施形態は、エンチノスタットおよび抗PD−1抗体が同時に投与される方法を提供する。
【0053】
一部の実施形態では、エンチノスタット、および抗PD−1抗体または抗PD−L1抗体を含む組合せを患者に投与することを含み、組合せが、いかなる追加の治療剤も含まない、患者におけるがんを処置する方法が提供される。一部の実施形態では、エンチノスタット、および抗PD−1抗体または抗PD−L1抗体を含む組合せを患者に投与することを含み、組合せが、いかなる追加の免疫チェックポイント阻害剤も含まない、患者におけるがんを処置する方法が提供される。一部の実施形態では、エンチノスタット、および抗PD−1抗体または抗PD−L1抗体を含む組合せを患者に投与することを含み、組合せが抗CTLA4阻害剤を含まない、患者におけるがんを処置する方法が提供される。一部の実施形態では、エンチノスタット、および抗PD−1抗体または抗PD−L1抗体を含む組合せを患者に投与することを含み、組合せが5−アザシチジンを含まない、患者におけるがんを処置する方法が提供される。
【0054】
一実施形態では、患者にエンチノスタット、および抗PD−1抗体または抗PD−L1抗体から本質的になる組合せを投与することを含む、患者におけるがんを処置する方法が提供される。一部の実施形態では、患者にエンチノスタット、および抗PD−1抗体または抗PD−L1抗体から本質的になる組合せを投与することを含み、エンチノスタットが固体剤形として提供される、患者におけるがんを処置する方法が提供される。一部の実施形態では、患者にエンチノスタット、および抗PD−1抗体または抗PD−L1抗体から本質的になる組合せを投与することを含み、抗PD−1抗体または抗PD−L1抗体が静脈内輸液の形態で提供される、患者におけるがんを処置する方法が提供される。一部の実施形態では、患者にエンチノスタット、および抗PD−1抗体または抗PD−L1抗体から本質的になる組合せを投与することを含み、エンチノスタットが固体剤形で提供され、抗PD−1抗体または抗PD−L1抗体が静脈内輸液の形態で提供される、患者におけるがんを処置する方法が提供される。一部の実施形態では、患者にエンチノスタット、および抗PD−1抗体または抗PD−L1抗体から本質的になる組合せを投与することを含み、エンチノスタットが固体剤形で提供され、抗PD−1抗体が静脈内輸液の形態で提供される、患者におけるがんを処置する方法が提供される。一部の実施形態では、患者にエンチノスタットおよびペンブロリズマブから本質的になる組合せを投与することを含み、エンチノスタットが固体剤形で提供され、ペンブロリズマブが静脈内輸液の形態で提供される、患者におけるがんを処置する方法が提供される。
【0055】
一実施形態では、患者にエンチノスタット、および抗PD−1抗体または抗PD−L1抗体から本質的になる組合せを投与することを含み、組合せが、いかなる追加の治療剤も含まない患者におけるがんを処置する方法が提供される。一部の実施形態では、患者にエンチノスタット、および抗PD−1抗体または抗PD−L1抗体から本質的になる組合せを投与することを含み、組合せが、いかなる追加の免疫チェックポイント阻害剤も含まない、患者におけるがんを処置する方法が提供される。一部の実施形態では、患者にエンチノスタット、および抗PD−1抗体または抗PD−L1抗体から本質的になる組合せを投与することを含み、組合せが抗CTLA4阻害剤を含まない、患者におけるがんを処置する方法が提供される。一部の実施形態では、患者にエンチノスタット、および抗PD−1抗体または抗PD−L1抗体から本質的になる組合せを投与することを含み、組合せが5−アザシチジンを含まない、患者におけるがんを処置する方法が提供される。
【0056】
一部の実施形態では、患者にエンチノスタットおよびペンブロリズマブから本質的になる組合せを投与することを含む、患者におけるがんを処置する方法が提供される。一部の実施形態では、患者にエンチノスタットおよびペンブロリズマブから本質的になる組合せを投与することを含み、前記組合せが抗CTLA4阻害剤を含まない、患者におけるがんを処置する方法が提供される。一部の実施形態では、患者にエンチノスタットおよびペンブロリズマブから本質的になる組合せを投与することを含み、前記組合せが5−アザシチジンを含まない、患者におけるがんを処置する方法が提供される。
【0057】
併用療法について患者を選択する方法
本明細書におけるさらなる実施形態では、エンチノスタット、および抗PD−1抗体または抗PD−L1抗体の投与を含む併用療法について患者を選択する方法であって、選択が、腫瘍内のPD−L1発現レベルに基づく方法が提供される。
【0058】
本明細書におけるさらなる実施形態では、エンチノスタット、および抗PD−1抗体または抗PD−L1抗体の投与を含む併用療法について患者を選択する方法であって、選択が、PD−L1発現に関する腫瘍比率スコア(TPS)に基づく方法が提供される。腫瘍比率スコアは、免疫組織化学(immuhistochemistry)を使用して決定されるように、PD−L1の発現について陽性染色される腫瘍組織試料中の細胞の割合(%)の尺度である。一部の実施形態では、TPSは、PD−L1 IHC22C3pharmDxキットを使用して決定される。
一部の実施形態では、方法は、腫瘍内で上昇したレベルのPD−L1を発現している患者に、エンチノスタット、および抗PD−1抗体または抗PD−L1抗体を含む併用療法を投与することをさらに含む。一部の実施形態では、方法は、患者にエンチノスタット、および抗PD−1抗体または抗PD−L1抗体を含む併用療法を投与することをさらに含み、TPSが1%から50%の間である。一部の実施形態では、方法は、患者にエンチノスタット、および抗PD−1抗体または抗PD−L1抗体を含む併用療法を投与することをさらに含み、TPSが50%を超える、または50%に等しい。一部の実施形態では、PD−L1発現が測定される腫瘍組織試料は、非小細胞肺がん患者から得られる。一部の実施形態では、非小細胞肺がんは、扁平上皮癌または非扁平上皮癌である。一部の実施形態では、PD−L1発現が測定される腫瘍試料は、メラノーマ患者から得られる。一部の実施形態では、併用療法で使用される抗PD−L1抗体または抗PD−L1抗体の投薬量は、腫瘍試料中のPD−L1発現に基づいて決定される。
【0059】
処置の過程で患者を評価する方法
本明細書におけるさらなる実施形態では、エンチノスタット、および抗PD−1抗体または抗PD−L1抗体を含む組合せを投与することにより、患者におけるがんを処置する方法であって、併用療法の過程で患者から得られる生体試料中のバイオマーカーを評価するためのステップをさらに含む方法が提供される。一部の実施形態では、生体試料は血液試料である。一部の実施形態では、バイオマーカーは、Lin(CD3、CD14、CD19、CD56)陰性、HLA−DR−、CD33+骨髄(Myleoid)由来のサプレッサー(suppresor)細胞(MDSC)である。一部の実施形態では、バイオマーカーは、CD11b+CD14−CD33+MDSCである。一部の実施形態では、バイオマーカーは、CD11b+;CD14−;CD33+;CD15+多形核−MDSCである。一部の実施形態では、バイオマーカーは、CD11b+;CD14−;CD33+;CD15−単球性MDSCである。一部の実施形態では、バイオマーカーは、CD14+;HLA−DR−/lo単球性MDSCである。一部の実施形態では、バイオマーカーは、古典的CD14hiCD16、中間のCD14hiCD16+、および非古典的CD14+CD16hiのサブセットを含む、CD14+CD16+CD66b−HLA−DR+単球である。一部の実施形態では、バイオマーカーはLin−HLA−DR+CD303+(BDCA2)形質細胞様樹状細胞である。一部の実施形態では、バイオマーカーはLin−HLA−DR+CD1c+(BDCA1)骨髄性樹状細胞である。一部の実施形態では、バイオマーカーはLin−HLA−DR+CD141+(BDCA3)樹状細胞である。一部の実施形態では、バイオマーカーは高密度画分内のCD11b+CD14−CD15+/CD66b+好中球である。一部の実施形態では、バイオマーカーはCD3+CD4+;CD3+CD8+T細胞である。一部の実施形態では、バイオマーカーはCD4+CD25+FoxP3+調節性T細胞である。一部の実施形態では、バイオマーカーはCD19+B細胞である。
【0060】
一部の実施形態では、エンチノスタット、および抗PD−1または抗PD−L1療法を含む併用療法を投与することにより、末梢血液試料中のMDSC細胞が減少する。一部の実施形態では、処置の過程における末梢血液試料中のMDSC細胞の減少は、併用療法の良好な転帰と相関する。
【0061】
一部の実施形態では、バイオマーカーは、腫瘍試料中のタンパク質のリジンアセチル化レベルである。一部の実施形態では、バイオマーカーは、腫瘍試料中のPD−L1発現レベルである。一部の実施形態では、バイオマーカーは、PD−L1発現に関する腫瘍比率スコア(TPS)である。一部の実施形態では、TPSは、PD−L1 IHC22C3
pharmDxキットを使用して決定される。一部の実施形態では、バイオマーカーは、腫瘍試料中のe−カドヘリンレベルである。一部の実施形態では、バイオマーカーは、腫瘍試料中のCD33
+およびS100A9
+骨髄由来のサプレッサー細胞(MDSC)である。一部の実施形態では、バイオマーカーは、末梢血液試料中のCD33
+およびS100A9
+骨髄由来のサプレッサー細胞(MDSC)である。一部の実施形態では、バイオマーカーは、腫瘍試料中のCD163
+またはCD68
+マクロファージである。一部の実施形態では、バイオマーカーは、末梢血液試料中のCD163
+またはCD68
+マクロファージである。一部の実施形態では、バイオマーカーは、腫瘍試料中の好中球エラスターゼである。一部の実施形態では、バイオマーカーは、血清試料中の好中球エラスターゼである。一部の実施形態では、バイオマーカーは、II型のC型レクチンDC−SIGN(CD209)を発現する樹状細胞(DC)である。一部の実施形態では、DC−SIGN(CD209)は、血清中で検出される。一部の実施形態では、DC−SIGN(CD209)は、腫瘍試料中で検出される。一部の実施形態では、バイオマーカーは、腫瘍試料中のCD4、CD8、グランザイムB、およびFoxP3陽性細胞である。
【0062】
さらなる療法
肺がんおよびメラノーマのための、本明細書に開示の療法と併用して有利に採用され得る、利用可能なさらなる処置として、非限定的に、アジュバント療法としての放射線療法、化学療法、抗体療法、およびチロシンキナーゼ阻害剤が挙げられる。
【0063】
放射線療法は、がん細胞を殺傷するかまたはがん細胞が増殖するのを防ぐために、高エネルギーX線または他の種類の放射線を使用するがん処置である。化学療法は、細胞を殺傷することにより、または細胞が分裂するのを停止させることにより、がん細胞の増殖を停止させる薬物を使用するがん処置である。化学療法が、経口により摂取されるか、または血管もしくは筋肉に注射される場合、薬物は血流に進入し、全身にわたり、がん細胞に到達することができる(全身化学療法)。化学療法が、脊柱、臓器、または体腔、例えば腹部に直接施される場合、薬物は、そのような領域内のがん細胞に主に影響を及ぼす(局所化学療法)。化学療法を与える方法は、処置されるがんの型および病期に依存する。
【0064】
肺がんを処置するために、異なる化学療法剤が当技術分野において公知である。肺がんを処置するために使用される細胞毒性剤(cytoxic agent)として、カルボプラチン(例えば、Paraplatin(登録商標)、Paraplat(登録商標))、シスプラチン(例えば、Platinol(登録商標)、Platinol−Aq(登録商標))、クリゾチニブ(例えば、Xalkori(登録商標))、エトポシド(例えば、Toposar(登録商標)、VePesid(登録商標))、リン酸エトポシド(例えば、Etopophos(登録商標))、塩酸ゲムシタビン(例えば、Gemzar(登録商標))、ゲムシタビン−シスプラチン、メトトレキサート(例えば、Abitrexate(登録商標)、Folex(登録商標)、Folex Pfs(登録商標)、Methotrexate Lpf(登録商標)、Mexate(登録商標)、Mexate−Aq(登録商標))、パクリタキセル(例えば、Taxol(登録商標))、ペメトレキセド二ナトリウム(例えば、Alimta(登録商標))、および塩酸トポテカン(例えば、Hycamtin(登録商標))が挙げられる。
【0065】
メラノーマを処置するために、アルデスロイキン(例えば、Proleukin(登録商標))、ダブラフェニブ(例えば、Tafinlar(登録商標))、ダカルバジン(例えば、DTIC−Dome(登録商標))、組換えインターフェロンアルファ−2b(例えば、Intron(登録商標)A)、イピリムマブ(例えば、Yervoy(登録商標))、ペンブロリズマブ(例えば、Keytruda(登録商標))、トラメチニブ(例えば、Mekinist(登録商標))、ニボルマブ(例えば、Opdivo(登録商標))、ペグインターフェロンアルファ−2b(例えば、Pegintron(登録商標)、Sylatron(登録商標))、ベムラフェニブ(例えば、Zelboraf(登録商標))を含む、異なる薬剤が当技術分野において公知である。
【0066】
モノクロナール抗体療法は、一種類の免疫系細胞から、研究室内で作成された抗体を使用するがん処置である。これらの抗体は、がん細胞が増殖するのを支援し得るがん細胞上の物質、または正常な物質を同定することができる。抗体は、物質に結合するか、がん細胞を殺傷するか、がん細胞が増殖するのを遮断するか、またはがん細胞が広がるのを防ぐ。モノクロナール抗体は、輸液により与えられる。モノクロナール抗体は、単独で、または薬物、毒素、もしくは放射性物質をがん細胞に直接運ぶために使用することができる。また、モノクロナール抗体は、アジュバント療法として、化学療法と組み合わせても使用される。
【0067】
本明細書に開示の組成物および療法と有利に組み合わせることができる、さらなる実例的な処置として、ラパチニブ単独、あるいはカペシタビン、ドセタキセル、エピルビシン、エポチロンA、B、もしくはD、酢酸ゴセレリン、パクリタキセル、パミドロネート、ベバシズマブ、またはトラスツズマブと組み合わせたラパチニブを含むが、これらに限定されない薬剤の投与を非限定的に挙げることができる。
【0068】
一部の実施形態では、さらなる療法は、ドキソルビシン、シクロホスファミド、パクリタキセル、ラパチニブ、カペシタビン、トラスツズマブ、ベバシズマブ、ゲムシタビン、エリブリン、またはnab−パクリタキセルのうちの1つまたは複数を、被験体に投与することを含む化学療法を含む。
【0069】
経口製剤
本明細書に記載されている薬学的な有効成分を含有する経口製剤は、錠剤、カプセル剤、丸剤、トローチ、ロゼンジ、香錠、カシェ剤、ペレット、薬用チューインガム、顆粒、バルク粉末、発泡性または非発泡性の粉末または顆粒、液剤、エマルジョン、懸濁剤、液剤、オブラート、散布剤(sprinkle)、エリキシル剤、シロップ剤、口腔用形態(buccal form)、および経口液体を含む、任意の慣習的に使用される経口形態を含み得る。カプセル剤は、活性化合物(複数可)と、不活性な充填剤および/または希釈剤、例えば薬学的に許容されるデンプン(例えば、トウモロコシ、ジャガイモ、またはタピオカのデンプン)、糖、人工甘味料、粉末化セルロース、例えば結晶および微結晶セルロース、フラワー、ゼラチン、ガム等との混合物を含有してよい。有用な錠剤製剤は、従来の圧縮法、湿式造粒法または乾式造粒法により作製され得るが、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク、ラウリル硫酸ナトリウム、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、アルギン酸、アカシアガム、キサンタンガム、クエン酸ナトリウム、複合ケイ酸塩、炭酸カルシウム、グリシン、デキストリン、スクロース、ソルビトール、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、ラクトース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、タルク、乾燥デンプン、および粉末化された糖を含むが、これらに限定されない、薬学的に許容される希釈剤、結着剤(binding agent)、滑沢剤、崩壊剤、表面改質剤(surface modifying agent)(界面活性剤を含む)、懸濁化剤または安定化剤を利用する。一部の実施形態では、表面改質剤として、非イオン性および陰イオン性の表面改質剤が挙げられる。例えば、表面改質剤として、ポロキサマー188、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ワックス、ソルビタンエステル、コロイド状二酸化ケイ素、ホスフェート、ドデシル硫酸ナトリウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、およびトリエタノールアミンが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書の経口製剤は、活性化合物(複数可)の吸収を変化させるために、標準的な遅延放出型または限時放出型(time release)の製剤を利用し得る。また、経口製剤は、必要に応じて、適する可溶化剤または乳化剤を含有する水または果汁中の有効成分を投与することから構成される場合もある。
【0070】
経口投与
本明細書に記載されているように、本明細書に記載されている併用療法は、同時に与えることができるか、または互い違いのレジメン(staggered regimen)で与えることができ、エンチノスタットが、化学療法の過程で、EGFR阻害剤とは異なる時期に与えられる。この時期的な相違は、2つの化合物の投与間で、数分間、数時間、数日間、数週間の範囲、またはそれより長い範囲に及ぶ可能性がある。したがって、併用という用語は、同時に、または単一の用量として投与されることを必ずしも意味しないが、各成分は、所望の処置期間内に投与される。また、薬剤は、異なる経路によって投与され得る。化学療法レジメンとして一般的なように、化学療法の過程は、数週間後に反復されてもよく、2つの化合物の投与について、同一の時間枠に従ってもよく、また患者の応答に基づき修正を加えてもよい。
【0071】
他の実施形態では、本明細書において提供される医薬組成物は、経口投与用の固体、半固体、または液体の剤形で提供され得る。本明細書で使用する場合、経口投与として、口腔、舌側、および舌下投与が挙げられる。適する経口剤形として、錠剤、カプセル剤、丸剤、トローチ、ロゼンジ、香錠、カシェ剤、ペレット、薬用チューインガム、顆粒、バルク粉末、発泡性または非発泡性の粉末、または顆粒、液剤、エマルジョン、懸濁剤、液剤、オブラート、散布剤、エリキシル剤、およびシロップ剤が挙げられるが、これらに限定されない。有効成分(複数可)に加えて、医薬組成物は、結合剤、充填剤、希釈剤、崩壊剤、湿潤剤、滑沢剤、流動促進剤(glidant)、着色剤、色素移動阻害剤(dye−migration inhibitor)、甘味料、および矯味矯臭剤を含むが、これらに限定されない1つまたは複数の薬学的に許容される担体または賦形剤を含有してよい。
【0072】
結合剤または造粒剤(granulator)は、錠剤に粘着性を付与し、圧縮後に錠剤が無傷のままであることを確実にする。適する結合剤または造粒剤として、デンプン、例えばトウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、およびアルファ化デンプン(例えば、STARCH 1500);ゼラチン;糖、例えばスクロース、グルコース、デキストロース、糖蜜、およびラクトース;天然および合成ガム、例えばアカシア、アルギン酸、アルギネート、トチャカの抽出物、パンワールガム、ガッチゴム、イサゴールハスク(isabgol husk)の漿剤、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン(PVP)、ビーガム、カラマツアラビノガラクタン(larch arabogalactan)、粉末化されたトラガント、およびグアーガム;セルロース、例えばエチルセルロース、セルロースアセテート、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC);微結晶セルロース、例えばAVICEL−PH−101、AVICEL−PH−103、AVICEL RC−581、AVICEL−PH−105(FMC Corp.、Marcus Hook、PA);およびその混合物が挙げられるが、これらに限定されない。適する充填剤として、タルク、炭酸カルシウム、微結晶セルロース、粉末化セルロース、デキストレート、カオリン、マンニトール、ケイ酸、ソルビトール、デンプン、アルファ化デンプン、およびその混合物が挙げられるが、これらに限定されない。結合剤または充填剤は、本明細書において提供される医薬組成物中に、約50重量%〜約99重量%存在し得る。
【0073】
適する希釈剤として、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、ラクトース、ソルビトール、スクロース、イノシトール、セルロース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、および粉末化された糖が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の希釈剤、例えばマンニトール、ラクトース、ソルビトール、スクロース、およびイノシトールは、十分な量で存在する場合、一部の圧縮錠剤に、咀嚼により口内で崩壊可能にする特性を付与し得る。そのような圧縮錠剤は、咀嚼可能な錠剤として使用することができる。
【0074】
適する崩壊剤として、寒天;ベントナイト;セルロース、例えばメチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロース;木質生成物(wood product);天然のスポンジ;陽イオン交換樹脂;アルギン酸;ガム、例えばグアーガムおよびビーガムHV;かんきつ類の髄質(citrus pulp);架橋セルロース、例えばクロスカルメロース;架橋ポリマー、例えばクロスポビドン;架橋デンプン;炭酸カルシウム;微結晶セルロース、例えばデンプングリコール酸ナトリウム;ポラクリリンカリウム(polacrilin potassium);デンプン、例えばトウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、タピオカデンプン、およびアルファ化デンプン;粘土;アライン(align);ならびにその混合物が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書において提供される医薬組成物内の崩壊剤の量は、製剤の種類によって変化し、当業者にとって容易に識別可能である。本明細書において提供される医薬組成物は、約0.5重量%〜約15重量%、または約1重量%〜約5重量%の崩壊剤を含有し得る。
【0075】
適する滑沢剤として、ステアリン酸カルシウム;ステアリン酸マグネシウム;鉱油;軽油(light mineral oil);グリセリン;ソルビトール;マンニトール;グリコール、例えばベヘン酸グリセリルおよびポリエチレングリコール(PEG);ステアリン酸;ラウリル硫酸ナトリウム;タルク;ピーナッツ油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、およびダイズ油を含む水添植物油;ステアリン酸亜鉛;オレイン酸エチル;ラウリン酸エチル;寒天;デンプン;リコポディウム(lycopodium);シリカまたはシリカゲル、例えばAEROSIL(登録商標)200(W.R.Grace Co.、Baltimore、MD)およびCAB−O−SIL(登録商標)(Cabot Co.of Boston、MA);ならびにその混合物が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書において提供される医薬組成物は、約0.1重量%〜約5重量%の滑沢剤を含有し得る。
【0076】
適する流動促進剤として、コロイド状二酸化ケイ素、CAB−O−SIL(登録商標)(Cabot Co.of Boston、MA)、およびアスベストを含まないタルクが挙げられる。着色剤として、任意の承認済みの認可された水溶性FD&C色素、およびアルミナ水和物に懸濁した水不溶性FD&C色素、およびレーキ顔料、ならびにその混合物が挙げられる。レーキ顔料は、水溶性色素を重金属の水和酸化物に吸着させた組合せであり、その結果、不溶性形態の色素が生ずる。矯味矯臭剤として、植物、例えば果物から抽出される天然の着香剤、および口当たりのよい味覚を生じる化合物、例えばペパーミントおよびサルチル酸メチルの合成ブレンドが挙げられる。甘味料として、スクロース、ラクトース、マンニトール、シロップ、グリセリン、および人工甘味料、例えばサッカリンおよびアスパルテームが挙げられる。適する乳化剤として、ゼラチン、アカシア、トラガント、ベントナイト、および界面活性剤、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(TWEEN(登録商標)20)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート80(TWEEN(登録商標)80)、およびトリエタノールアミンオレエートが挙げられる。懸濁化剤および分散剤として、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ペクチン、トラガント、ビーガム、アカシア、カルボメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびポリビニルピロリドンが挙げられる。防腐剤として、グリセリン、メチルおよびプロピルパラベン、安息香酸(benzoic add)、安息香酸ナトリウム、ならびにアルコールが挙げられる。湿潤剤として、プロピレングリコールモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ジエチレングリコールモノラウレート、およびポリオキシエチレンラウリルエーテルが挙げられる。溶媒として、グリセリン、ソルビトール、エチルアルコール、およびシロップが挙げられる。エマルジョンで利用される非水性液体の例としては、鉱油および綿実油が挙げられる。有機酸として、クエン酸および酒石酸が挙げられる。二酸化炭素供給源としては、重炭酸ナトリウムおよび炭酸ナトリウムが挙げられる。
【0077】
多くの担体および賦形剤が、同一の製剤内であっても、いくつかの機能を担い得ると理解すべきである。
【0078】
さらなる実施形態では、本明細書において提供される医薬組成物は、圧縮錠剤、すりこみ錠剤、咀嚼可能なロゼンジ、速溶性錠剤、多重圧縮錠剤、または腸溶性コーティング錠剤、糖コーティングもしくはフィルムコーティングされた錠剤として提供され得る。腸溶性コーティング錠剤は、胃酸の作用に耐性であるが、腸内で溶解または崩壊し、したがって胃の酸性環境から有効成分を保護する物質でコーティングされた圧縮錠剤である。腸溶性コーティングとして、脂肪酸、脂肪、フェニルサリチレート、ワックス、シェラック、アンモニア含有シェラック、およびセルロースアセテートフタレートが挙げられるが、これらに限定されない。糖コーティング錠剤は、不快な味または臭気を隠蔽し、錠剤を酸化から保護する上で有益であり得る糖コーティングで囲まれた圧縮錠剤である。フィルムコーティング錠剤は、水溶性物質の薄層またはフィルムで覆われた圧縮錠剤である。フィルムコーティングとして、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエチレングリコール4000、およびセルロースアセテートフタレートが挙げられるが、これらに限定されない。フィルムコーティングは、糖コーティングと同じ一般的特徴を付与する。多重圧縮錠剤は、2以上の圧縮サイクルにより作製される圧縮錠剤であり、層状化錠剤、およびプレスコーティング錠剤または乾燥コーティング錠剤が含まれる。
【0079】
錠剤剤形は、粉末形態、結晶形態、または顆粒形態の有効成分を単独で、あるいは有効成分を結合剤、崩壊剤、制御放出型ポリマー、滑沢剤、希釈剤、および/または着色料を含む、本明細書に記載されている1つもしくは複数の担体または賦形剤と組み合わせて調製され得る。矯味矯臭剤および甘味料は、咀嚼可能な錠剤およびロゼンジを形成する上で特に有用である。
【0080】
本明細書で提供される医薬組成物は、ゼラチン、メチルセルロース、デンプン、またはアルギン酸カルシウムから作製可能な軟質カプセル剤または硬質カプセル剤として提供され得る。硬質ゼラチンカプセルは、乾燥充填カプセル(DFC)としても知られており、一方が他方の上をスライドする2つのセクションから構成され、したがって有効成分を完全に封入する。軟質弾性カプセル(SEC)は、柔らかく球形のシェル、例えばゼラチンシェルであり、グリセリン、ソルビトール、または類似するポリオールの添加により可塑化される。軟質ゼラチンシェルは、微生物の増殖を防止する防腐剤を含有してよい。適する防腐剤は、メチルおよびプロピルパラベン、ならびにソルビン酸を含む、本明細書に記載されているような防腐剤である。本明細書において提供される液体、半固体、および固体剤形は、カプセル内に被包され得る。適する液体および半固体剤形として、プロピレンカーボネート、植物油、またはトリグリセリドにおける液剤および懸濁剤が挙げられる。そのような液剤を含有するカプセル剤は、米国特許第4,328,245号、同第4,409,239号、および同第4,410,545号の記載に従い調製可能である。カプセル剤は、有効成分の溶解を改変または維持するために、当業者に公知であるようにコーティングすることも可能である。
【0081】
他の実施形態では、本明細書において提供される医薬組成物は、エマルジョン、液剤、懸濁剤、エリキシル剤、およびシロップ剤を含む、液体および半固体の剤形で提供され得る。エマルジョンは、一方の液体が他方の液体全体にわたり、小球体の形態で分散している二相系であり、水中油型または油中水型であり得る。エマルジョンは、薬学的に許容される非水性液体または溶媒、乳化剤、および防腐剤を含み得る。懸濁剤は、薬学的に許容される懸濁化剤および防腐剤を含み得る。アルコール水溶液は、薬学的に許容されるアセタール、例えば低級アルキルアルデヒド(用語「低級」とは、1から6個の間の炭素原子を有するアルキルを意味する)のジ(低級アルキル)アセタール、例えば、アセトアルデヒドジエチルアセタール;および1つまたは複数のヒドロキシル基、例えばプロピレングリコールおよびエタノールを有する水混和性溶媒を含み得る。エリキシル剤は、甘くされた透明な含水アルコール溶液である。シロップ剤は、糖、例えば、スクロースの濃縮水溶液であり、防腐剤を含有してもよい。液体剤形の場合、例えば、ポリエチレングリコールの溶液は、投与のための測定に便利なように、十分な量の薬学的に許容される液体担体、例えば、水で希釈され得る。
【0082】
他の有用な液体および半固体の剤形として、本明細書において提供される有効成分(複数可)、および1,2−ジメトキシメタン、ジグリム、トリグリム、テトラグリム、ポリエチレングリコール−350−ジメチルエーテル、ポリエチレングリコール−550−ジメチルエーテル、ポリエチレングリコール−750−ジメチルエーテルを含み、350、550、および750がポリエチレングリコールのおよその平均分子量を表す、ジアルキル化されたモノ−またはポリ−アルキレングリコールを含有する剤形が挙げられるが、これらに限定されない。これらの製剤は、1つまたは複数の酸化防止剤、例えばブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、没食子酸プロピル、ビタミンE、ヒドロキノン、ヒドロキシクマリン、エタノールアミン、レシチン、セファリン、アスコルビン酸、リンゴ酸、ソルビトール、リン酸、亜硫酸水素塩、メタ亜硫酸水素ナトリウム、チオジプロピオン酸、およびそのエステル、ならびにジチオカーバメートをさらに含み得る。
【0083】
経口投与のために本明細書において提供される医薬組成物は、リポソーム、ミセル、ミクロスフェア、またはナノシステムの形態でも提供され得る。ミセル型の剤形は、米国特許第6,350,458号の記載に従い調製可能である。
【0084】
他の実施形態では、本明細書において提供される医薬組成物は、液体剤形に再構成される非発泡性または発泡性の顆粒および粉末として提供され得る。非発泡性顆粒または粉末で使用される薬学的に許容される担体および賦形剤は、希釈剤、甘味料、および湿潤剤を含み得る。発泡性の顆粒または粉末において使用される薬学的に許容される担体および賦形剤は、有機酸および二酸化炭素供給源を含み得る。
【0085】
着色剤および矯味矯臭剤は、上記剤形のいずれにおいても使用することができる。
【0086】
本明細書において提供される医薬組成物は、遅延式、持続式、パルス式、制御式、標的化式、およびプログラム式の放出形態を含む、即時型または改変型の放出剤形として製剤化され得る。
【0087】
さらなる実施形態では、本明細書において提供される医薬組成物は、所望の治療作用を損なわない他の有効成分、または所望の作用を補完する物質と共に製剤化され得る。
【実施例】
【0088】
(実施例1)
非小細胞肺がんおよびメラノーマを有する患者の拡張コホートを含め、非小細胞肺がんを有する患者におけるペムブロリズマブ(pembrozulimab)併用エンチノスタットのフェーズ1B/2、非盲検、用量漸増試験。
【0089】
エンチノスタットをペムブロリズマブと併用すると、PD−1遮断抗体処置に対する応答が改善し、その結果、非小細胞肺がんおよびメラノーマを有する患者において、いずれかの薬剤を単独投与した場合と比較して、許容される安全性プロファイルを有しつつ応答率が改善する。
【0090】
第1の目的:
・エンチノスタット3mgを毎週服用した際に、安全性および忍容性の尺度としての有害事象を有した参加者の数。
・エンチノスタット5mgを毎週服用した際に、安全性および忍容性の尺度としての有害事象を有した参加者の数。
・エンチノスタット10mgを隔週で服用した際に、安全性および忍容性の尺度としての有害事象を有した参加者の数。
【0091】
フェーズ1b(用量漸増/確認コホート):
・ペンブロリズマブと併用して与えられるエンチノスタット(SNDX−275)の用量制限性の毒性(DLT)、および最大耐用量(MTD)、またはフェーズ2推奨用量(RP2D)を決定する。
・フェーズ2(拡張コホート):固形腫瘍における免疫関連の応答評価基準(irRECIST)に基づき、評価した各コホートにおいて、メラノーマおよびNSCLCを有する患者において、ペンブロリズマブと併用したRP2Dでのエンチノスタットについて、奏効率(overall response rate)(ORR)により決定される予備的有効性を評価する。
【0092】
第2の目的:
【0093】
有効性:メラノーマおよびNSCLCを有する患者において、ペンブロリズマブと併用したエンチノスタットについて、以下を含むirRECISTおよびRECIST1.1の両方に基づき、有効性の二次的尺度により決定される有効性を評価する:
・6カ月における臨床的有用率(clinical benefit rate)(CBR)(すなわち、完全応答[CR]+部分応答[PR]+安定病態[SD])。
〇6カ月における無増悪生存(progression−free survival)(PFS)状態。
〇PFS
〇全生存(OS)
・処置に反応する患者の場合(すなわち、CRまたはPR):
・応答期間(DOR)
・応答までの時間(TTR)
【0094】
安全性:ペンブロリズマブと併用したエンチノスタットについて、臨床的有害事象(AE)、検査室パラメータ(laboratory parameter)、および心電図(ECG)により測定される安全性および忍容性を評価する。
研究デザイン
本明細書に記載されている併用療法に登録された患者は、エンチノスタットのみによる単剤療法を2週間受ける。2週間の単剤療法終了後、患者は、併用療法期間の処置サイクルに入る。各処置サイクルは21日間継続し、その期間中、患者は、ペンブロリズマブと併用したエンチノスタットを受ける。
【0095】
フェーズ2(拡張フェーズ)
第1の目的
【0096】
メラノーマおよびNSCLCを有する患者において、ペンブロリズマブと併用したRP2Dでのエンチノスタットについて、主に奏効率(ORR)により決定される予備的有効性を評価する。
【0097】
第2の目的
【0098】
第2の目的は、フェーズ1bについて列挙したものと同じである。
【0099】
主要エンドポイント
・奏効率(ORR)
・臨床的有用率(CBR)
・応答期間(DOR)
・応答までの時間(TTR)
・6カ月における無増悪生存(PFS)状態
・無増悪生存(PFS)
・全生存(OS)
【0100】
副次エンドポイント
【0101】
安全性:AE、臨床検査室パラメータ、およびECG。
【0102】
薬力学:末梢血液単核細胞(PBMC)におけるタンパク質のアセチル化
【0103】
診査:
・治療前後の腫瘍生検における、チェックポイント阻害剤(PD−1/PD−L1)の発現変化
・治療前後の腫瘍生検における、エフェクターT細胞:調節性T細胞の比(免疫組織化学)
・末梢血液および腫瘍生検における、MDSC数の変化
・治療前後の末梢血液細胞および腫瘍生検における、タンパク質のリジンアセチル化の変化
・エンチノスタットおよびペンブロリズマブのPKプロファイル
・治療前後の血液および腫瘍生検における、炎症性T細胞シグネチャの変化
・生検前後の遺伝子発現プロファイリング
・調節機構の他の免疫マーカーにおける変化、および生体検体の収集/保管試料に関する他の評価
・エンチノスタットと併用したペンブロリズマブの免疫原性
・ペンブロリズマブと併用して与えた際のエンチノスタットの曝露−安全応答
【0104】
免疫学的有効性に関する下記の代表的マーカーの血液レベルが評価される:
・骨髄由来のサプレッサー細胞(MDSC):Lin(CD3、CD14、CD19、CD56)陰性;HLA−DR
−;CD33
+
・MDSC:CD11b
+CD14
−CD33
+
・多形核−MDSC(PMN−MDSC):CD11b
+;CD14
−;CD33
+;CD15
+
・単球性(M−MDSC):CD11b
+;CD14
−;CD33
+;CD15
−
・M−MDSC:CD14
+;HLA−DR
−/lo
・単球:古典的CD14
hiCD16
+、中間のCD14
hiCD16
+、および非古典的CD14
+CD16
hiのサブセットを含むCD14
+CD16
+CD66b
−HLA−DR
+
・樹状細胞:Lin
−HLA
−DR
+CD303
+(BDCA2)形質細胞様;Lin
−HLA
−DR
+CD1c
+(BDCA1)骨髄性;Lin
−HLA
−DR
+CD141
+(BDCA3)
・好中球:高密度画分中のCD11b
+CD14
−CD15
+/CD66b
+細胞
・T細胞:CD3
+CD4
+;CD3
+CD8
+;調節性T細胞:CD4
+CD25
+FoxP3
+
・B細胞:CD19
【0105】
CD3/CD28、ConA、および破傷風トキソイドで刺激を受けた単核細胞における、インターロイキン−2(IL−2)、インターフェロン−ガンマ(IFN−γ)、および顆粒球マクロファージ−コロニー刺激因子(GM−CSF)のレベルを測定することにより、細胞の機能を評価する。
【0106】
細胞増殖を、
3H−チミジン取り込みアッセイにより評価する。
【0107】
本明細書に記載されている併用療法による処置の様々な段階において収集された腫瘍生検組織を、下記事項について評価する:
・アセチル化
・PD−L1発現
・e−カドヘリンレベル
・MDSC:CD33
+S100A9
+
・マクロファージCD163
+またはCD68
+細胞
・好中球−好中球エラスターゼ
+細胞
・樹状細胞−DC−SIGN(CD209)
・組織内のMDSCレベルが減少している場合には、適宜、CD4、CD8、グランザイムB、およびFoxP3陽性細胞
【0108】
研究デザイン
【0109】
拡張フェーズがDLT後に開始し、MTDおよびRP2Dが用量漸増フェーズの期間中に同定される。このフェーズでは、用量漸増フェーズにおいて同定されたRP2Dを用いて、エンチノスタットを評価する。最初の患者は、D1、D8、およびD15に、3mgの開始用量でエンチノスタットを受けると共に、21日サイクルのD1に、静脈内(IV)輸液により、ペンブロリズマブ200mgを受ける。
【0110】
下記の患者コホートが、このフェーズに参加するように選択され得る:
・コホート1:扁平上皮癌または腺癌の組織学を有し、PD−1またはPDL−1遮断抗体で処置を受けたことのないNSCLC
・コホート2:PD−1またはPD−L1−遮断抗体でこれまでに処置を受け、そして進行した、NSCLC(任意の組織学)を有する患者
・コホート3:PD−1またはPD−L1遮断抗体でこれまでに処置を受け、そして進行した、メラノーマを有する患者
【0111】
エンチノスタット単剤療法免疫相関(EMIC)コホート:20例までのコホート1のうち病期2のNSCLC患者が無作為に割り振られて参加する。試料サイズ。
【0112】
用量漸増/確認フェーズ
【0113】
患者3〜6例が、標準的なフェーズ1用量漸増スキームに基づき各用量コホートに登録される。各患者は、1つの用量コホートのみに参加する。用量漸増/確認フェーズに登録された患者の合計数は、認められた安全性プロファイルによるが、同プロファイルは、1用量コホート当たりの患者数、およびMTDまたはRP2Dに到達するのに必要とされる用量漸増の数を決定する。さらなる患者、合計9例が、用量確認コホートにおいて潜在的なRP2Dで登録され、MTDまたはフェーズ2(すなわち、RP2D)において組み合わせてさらに調査するために推奨される他の用量で、エンチノスタットに関するさらなるAE、免疫相関、および抗腫瘍活性データが取得される。
【0114】
拡張フェーズ
【0115】
136例までの患者が、3つのコホートに登録されるように計画される。患者は、主要エンドポイントとしてORRを用いる単一アームの研究デザインに基づき、各コホートに登録される。併用レジメンの抗腫瘍活性が不十分な場合、評価されるコホートのうち1または複数への登録が早期に終了し得るように、拡張フェーズが2段階で実施される。各コホートへの登録を終了または継続する決定は、他のコホートとは独立に下される。研究実施期間中に新たに得られたデータに基づきさらなるまたは異なるコホートの登録が可能となるように、プロトコールが修正される場合もある。エンチノスタットおよびペンブロリズマブを用いた併用療法は、以下に記載されている基準に従い、4コホート(cohotors)のそれぞれにおいて評価される:
【0116】
組み入れ基準
NSCLC患者:
1.組織学的または病理学的に確認された再発性/転移性のNSCLCを有する。
2.腺癌を有する場合には、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)の再構成および上皮増殖因子受容体(EGFR)変異についてこれまでに試験されていることが要件とされ、結果がこの研究で収集されるように入手可能であり、そして陽性の場合には、過去のEGFRまたはALK療法によって処置済みである。
3.進行/転移した状況において、少なくとも1つの化学療法レジメンを受けたことがある。
【0117】
メラノーマ患者:
1.組織学的または細胞学的に確認された、切除不能または転移性のメラノーマの診断を有し、PD−1またはPD−L1遮断抗体の後にPDを経験し、BRAF V600変異陽性の場合には、BRAF阻害剤。拡張フェーズ、コホート2および3の患者
2.これまでにPD−1/PD−L1遮断抗体で処置され、そのような処置期間中にPDを経験した。
【0118】
拡張フェーズ、コホート2(NSCLC)および3(メラノーマ)の患者
1.これまでにPD−1/PD−L1遮断抗体(すなわち、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、MEDI4736、またはGNE PD−L1[MPDL3280A])で処置を受け、RECIST1.1により、またはそのような処置期間中もしくはその後に、臨床的に実証された明白な進行性の疾患を経験した。
【0119】
すべての患者:
1.書面でのインフォームドコンセントを提出した日に年齢が18歳またはそれ超。
2.脳転移を有する場合には、ステロイドを使用しないで、または1日、≦10mgのプレドニゾン(または等価物)の安定した、もしくは減少した用量で、少なくとも4週間局所療法を行った後、安定な神経学的状態を有さなければならず、神経学的AEと他のAEの評価とを混同させるような神経学的機能障害を有してはならない。
3.最初の研究薬物の用量前の28日以内に、画像化研究に基づく局所的再発性または転移性の疾患のエビデンス:
4.少なくとも1つの、従来技術による測定可能な≧20mmの病変、またはスパイラルCTスキャンまたはMRIによる測定可能な≧10mmの病変、ただし最初の研究薬物の用量前28日以内に最後の画像化が実施済み。測定可能な病変が1つのみ存在し、それがこれまでの照射野に位置する場合には、測定可能な病変について、RECIST、バージョン1.1に基づき、進行が実証されていなければならない。
5.放射線治療を受けた場合には、最初の研究薬物の用量を受ける前に、処置完了後2週の洗い流し(wash out)期間を有し、上記基準に従い、少なくとも1つの測定可能(measureable)な病変を継続して有する。
6.ECOGパフォーマンスステータスが0または1。
7.受容可能、適用可能な検査室パラメータを有する。
8.女性被験体は、妊娠していてはならない。
9.男性の場合には、適切な避妊法の使用に合意する
10.最近の事前の化学療法の毒性効果(複数可)について、グレード1またはそれ未満(脱毛症を除く)までの消散を経験した。患者が大手術または>30Gyの放射線療法を受けた場合には、患者は、介入に起因する毒性および/または合併症から回復していなければならない。
11.研究評価スケジュールに従い、スクリーニング期間中、および必須として指定された他の時点において、新鮮な腫瘍試料を収集する意思を有する。
12.書面でのインフォームドコンセントを理解し、それを提出し、および研究手順を順守する能力を有する。
【0120】
除外基準
下記のいずれかの基準を満たす患者は、本研究に参加するのに適格であるとはみなされない:
1.免疫不全の診断、または研究薬物の最初の用量前の7日間以内の全身ステロイド療法もしくは任意の他の形態の免疫抑制療法の受容。生理学的用量のコルチコステロイドの使用は、スポンサーとの協議後に承認され得る。
2.過去2年間に全身処置を必要とした活性な自己免疫疾患(すなわち、疾患修飾剤、コルチコステロイド、または免疫抑制薬による)。置換療法(例えば、副腎もしくは脳下垂体機能不全のためのチロキシン、インスリンまたは生理的コルチコステロイド置換療法)は、全身処置の形態とはみなされない。
3.間質性肺疾患(ILD)の病歴。
4.ベンズアミドまたはエンチノスタットの不活性成分に対するアレルギー。
5.ペンブロリズマブの任意の活性または不活性な成分に対するアレルギーの病歴。
6.処置担当研究者の意見として、本研究の結果と混同するような、本研究の全期間にわたり患者が参加するのを妨げるおそれがある、または参加することが患者の最良の利益とはならない、下記事項を含むが、これらに限定されないあらゆる状態、療法、または検査値異常の履歴または現存するエビデンス:
7.ベースラインより前の6カ月以内の心筋梗塞または動脈血栓塞栓事象、または重度もしくは不安定狭心症、ニューヨーク心臓協会(NYHA)クラスIIIまたはIV疾患、またはQTc間隔>470msec。
8.未制御の心不全または高血圧症、未制御の糖尿病、または未制御の全身性の感染。
9.進行している、または積極的処置(適切に処置された基底細胞癌、または頚部上皮内癌(cervical intraepithelial neoplasia)[CIN]/子宮頚部上皮内癌(cervical carcinoma in situ)または上皮内メラノーマ(melanoma in situ)を除く)を必要とする別のさらなる既知悪性疾患。他のがんの以前の病歴は、過去5年以内に活性な疾患が認められない限り許容される。
10.肺臓炎のエビデンスまたは肺臓炎の病歴。
11.全身療法を必要とする活性な感染症。
12.既知の活性な中枢神経系(CNS)転移および/または癌性髄膜炎(carcinomatous meningitis)。
13.注記:患者が安定であり(研究薬物の最初の用量前の少なくとも4週間、画像化[評価毎に同一の画像化様式、MRIまたはCTスキャンを用いる]により、進行のエビデンスを認めない、およびあらゆる神経学的症状がベースラインまで戻っている)、新規または拡張性の脳転移のエビデンスを有さず、および研究薬物の最初の用量前の少なくとも2週間、ステロイドを使用していない、または1日、≦10mgのプレドニゾン(または等価物)の安定した、もしくは減少した用量で投与されている条件で、これまでに処置された脳転移を有する患者であっても、参加することができる。臨床的安定性を問わず除外される癌性髄膜炎は、この例外に含まれない。
14.本研究の要件との連携を妨げる既知の精神障害または物質乱用障害。
15.現在、研究療法に参加し、その療法を受けている、または処置の初回用量の4週間以内に研究薬剤の研究に参加したことがあり、そして研究療法を受けた、または研究デバイスを使用した。
16.処置の初回用量の30日間以内に生ワクチンを受けた。
17.ベースラインより前の4週間以内の、事前の抗がんモノクロナール抗体(mAb)、または4週間より前に投与された薬剤に起因するAEから回復(すなわち、≦グレード1またはベースライン)していない患者。
18.研究ベースラインよりも前の2週間以内の、事前の化学療法、標的化小分子療法、もしくは放射線療法、またはこれまでに投与された薬剤に起因するAEから回復(すなわち、≦グレード1またはベースライン)していない患者。注記:≦グレード2の神経障害、または≦グレード2の脱毛症を有する患者は、この基準に対する例外であり、本研究への適格性を有し得る。注記:大手術を受けた患者の場合には、患者は、療法開始前に、介入に起因する毒性および/または合併症から適切に回復していなければならない。
19.処置の初回用量前の4週間以内に、血液製剤(血小板または赤血球を含む)の輸液、またはコロニー刺激因子(顆粒球−コロニー刺激因子[G−CSF]、顆粒球マクロファージ−コロニー刺激因子[GM−CSF]、または組換えエリスロポエチンを含む)の投与を受けた。
20.禁止医薬品リストに列挙されている任意の他の薬剤、例えばバルプロ酸を用いた処置を現在受けている、または処置の初回用量前の14日間以内に他の全身性のがん薬剤を用いた処置を受けた。
21.女性の場合には、妊娠中、授乳中、もしくは妊娠すると期待される、または男性の場合には、スクリーニング来院で始まり、研究薬物の最終用量後の120日間にわたり研究の予定期間内に子供の父となると期待される。
22.ヒト免疫不全ウイルス(HIV)(HIV1/2抗体)の既知病歴。
23.既知の活性なB型肝炎(例えば、B型肝炎表面抗原反応性)、またはC型肝炎(例えば、C型肝炎ウイルスリボ核酸[定性的])。
24.本研究と直接関係する研究施設もしくはスポンサーのスタッフである近親者(例えば、配偶者、親/法律上の保護者、きょうだい、または子供)である、またはそのような近親者を有する、ただし、特定の患者について、前向き倫理調査委員会(prospective Institutional Review Board)(IRB)/倫理委員会(EC)の承認(委員長またはその被指名者による)が付与され、この基準に対する例外が許可される場合を除く。
【0121】
(実施例2)
ENCORE601:進行性のNSCLCまたはメラノーマを有する患者における、ペンブロリズマブと併用したエンチノスタットを評価するようにデザインされたフェーズ1b/2試験。
【0122】
方法
白金に基づく化学療法でこれまでに処置された、病期III/IVのNSCLCを有する患者が、3+3用量漸増フェーズに登録された。3週間毎(q3W)に、21日サイクルで、静脈内経路により送達される、200mg固定用量のペンブロリズマブと併用して、週1回(qW)、3mgまたはqWで5mgを経口投与されるエンチノスタットについて探索を行い、安全性およびMTDまたはRP2Dを決定する。処置の進行と相関する評価マーカーには、末梢血液試料中の腫瘍PD−L1発現、およびMDSC変化、および調節性T細胞が含まれた。
【0123】
結果
患者9例が、上記のようなペンブロリズマブの組合せで登録された(そのうちの6例がエンチノスタット3mgを、および3例が5mgをqWで投与された)。患者9例中8例で、DLTは認められなかった。3mgのエンチノスタット(entibostat)で処置された患者1例が、サイクル2期間中に、グレード3のアルカリホスファターゼおよびビリルビン上昇を呈し、免疫媒介型肝炎の症状発現と考えられた。これは、研究薬物を保持すること、および全身性コルチコステロイドを投与することにより首尾よく迅速に管理された。対になった末梢血液試料を有する患者3例中2例において、ベースラインからのMDSCの減少が認められた。安定病態が、評価された患者6例中3例で認められた。
【0124】
結論
ペンブロリズマブと併用したエンチノスタットは良好な忍容性を示すと考えられ、組合せの投与の際に、MDSCがベースラインから低下したことにより示されるように、免疫調節活性を有した。
【0125】
本発明の好ましい実施形態について、本明細書に示し、記載してきたが、そのような実施形態は、例示目的に限定して提示されていることは、当業者にとって明白である。ここで、非常に多くの変化、変更、および置換について、本発明から逸脱せずに当業者により想起される。本明細書に記載されている本発明の実施形態に対する様々な代替形態が、本発明を実践する際に採用され得ると理解すべきである。下記の特許請求の範囲が本発明の範囲を定義するように、ならびにこれらの特許請求の範囲内の方法および構造、ならびにその均等物が、特許請求の範囲により網羅されるように意図される。
本発明の実施形態の例として、以下の項目が挙げられる。
(項目1)
患者にエンチノスタット、および抗PD−1抗体または抗PD−L1抗体を含む組合せを投与することを含む、がんを処置する方法。
(項目2)
患者にエンチノスタット、および抗PD−1抗体を含む組合せを投与することを含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記抗PD−1抗体がペンブロリズマブである、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記がんが、PD−L1の過剰発現により特徴付けられる、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記がんが、PD−L1の低発現により特徴付けられる、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記がんが、肺がんまたはメラノーマである、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記患者が、少なくとも1つの事前療法を受けた、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記事前療法が、抗PD−1抗体を用いるものであった、項目7に記載の方法。
(項目9)
前記がんが肺がんである、項目6に記載の方法。
(項目10)
前記肺がんが非小細胞肺がんである、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記非小細胞肺がんが、腺癌、扁平上皮癌、および大細胞癌から選択される、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記がんがメラノーマである、項目6に記載の方法
(項目13)
前記メラノーマが切除不能または転移性のメラノーマである、項目12に記載の方法。(項目14)
前記患者が、抗CTLA4抗体による事前療法で進行している、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記患者が、BRAF阻害剤による事前療法で進行している、項目13に記載の方法。(項目16)
前記エンチノスタット、および前記抗PD−1抗体または前記抗PD−L1抗体が、いずれかの順番で逐次的に、または同時に投与される、項目1に記載の方法。
(項目17)
エンチノスタット、および前記抗PD−1抗体または前記抗PD−L1抗体が、21日間の処置サイクル中に、いずれかの順番で逐次的に、または同時に投与される、項目1に記載の方法。
(項目18)
前記エンチノスタット、および前記抗PD−1抗体が、いずれかの順番で逐次的に、または同時に投与される、項目2に記載の方法。
(項目19)
エンチノスタット、および前記抗PD−1抗体が、21日間の処置サイクル中に、いずれかの順番で逐次的に、または同時に投与される、項目2に記載の方法。
(項目20)
前記抗PD−1抗体が前記処置サイクルの1日目に投与される、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記抗PD−1抗体が2mg/kgの用量で投与される、項目19に記載の方法。
(項目22)
前記抗PD−1抗体が200mgの固定用量で投与される、項目19に記載の方法。
(項目23)
前記エンチノスタットが3mg/kgの用量で投与される、項目1に記載の方法。
(項目24)
前記エンチノスタットが5mg/kgの用量で投与される、項目1に記載の方法。
(項目25)
前記エンチノスタットが10mg/kgの用量で投与される、項目1に記載の方法。
(項目26)
前記エンチノスタットが毎週投与される、項目1に記載の方法。
(項目27)
前記抗PD−1抗体または前記抗PD−L1抗体が2週間毎に投与される、項目1に記載の方法。
(項目28)
患者にエンチノスタット、およびペンブロリズマブから本質的になる組合せを投与することを含む、がんを処置する方法。
(項目29)
前記エンチノスタットが固体剤形として投与され、前記ペンブロリズマブが静脈内輸液として投与される、項目28に記載の方法。
(項目30)
前記がんが、肺がんまたはメラノーマである、項目28に記載の方法。
(項目31)
エンチノスタット、および抗PD−1抗体または抗PD−L1抗体の組合せを含む、進行性の非小細胞肺がんおよびメラノーマを処置するためのキット。
(項目32)
エンチノスタット、および抗PD−1抗体または抗PD−L1抗体を投与することを含む併用療法について患者を選択する方法であって、前記患者から得られる腫瘍組織試料中のPD−L1発現を測定することを含む、方法。
(項目33)
PD−L1発現に関する腫瘍比率スコア(TPS)が50%を超える、または50%に等しい場合、前記患者にエンチノスタット、および抗PD−1抗体または抗PD−L1抗体を含む前記併用療法を投与することをさらに含む、項目32に記載の方法。
(項目34)
PD−L1発現に関する腫瘍比率スコア(TPS)が1%を超える、または1%に等しい場合、前記患者にエンチノスタット、および抗PD−1抗体または抗PD−L1抗体を含む前記併用療法を投与することをさらに含む、項目32に記載の方法。
(項目35)
PD−L1発現に関する腫瘍比率スコア(TPS)が49%を超える、または49%に等しい場合、前記患者にエンチノスタット、および抗PD−1抗体または抗PD−L1抗体を含む併用療法を投与することをさらに含む、項目32に記載の方法。
(項目36)
PD−L1発現に関する腫瘍比率スコア(TPS)が、1%から50%の間である場合、前記患者にエンチノスタット、および抗PD−1抗体または抗PD−L1抗体を含む前記併用療法を投与することをさらに含む、項目32に記載の方法。
(項目37)
前記腫瘍組織試料が、扁平上皮または非扁平上皮の非小細胞肺がんに由来する、項目32に記載の方法。
(項目38)
前記腫瘍組織試料がメラノーマに由来する、項目32に記載の方法。