【実施例1】
【0011】
図1には、本実施例にかかる風向・風速計の超音波素子部分が示されている。同図(A)は平面から見た様子を示しており、これを矢印F1方向から様子が同図(B)に示されている
【0012】
これらの図において、装置の天井100と床200は、適宜の間隔をもって水平方向となるように配置されている。風は、矢印F1で一例を示すように、天井100と床200との間を通り抜けるようになっている。
【0013】
天井100には、その中心にスピーカ(発振用超音波素子)110が設けられており、その周囲には、水平面上の東西南北の位置であって、スピーカ110の中心から等距離となる位置に、マイクロホン(受信用超音波素子)120E,120W,120S,120Nがそれぞれ設けられている。一方、床200には、前記スピーカ110に対向する位置に、半球面状の散乱板210が設けられている。上述したスピーカ110から床面200に向かって出力された超音波は、散乱板210で反射され、マイクロホン120E,120W,120S,120Nに入射するようになっている。
【0014】
図2には、風向・風速の演算回路の構成が示されている。同図において、上述したマイクロホン120E,120W,120S,120Nは、受信した超音波信号を電気信号に変換して出力する。出力された電気信号は、相互相関関数演算部300に入力されるようになっている。相互相関関数演算部300では、入力信号から相互相関関数を演算する。演算された相互相関関数の値は、ベクトル演算部302に入力されるようになっており、ここで、入力信号から風向・風速が演算され、演算結果が表示部304に対して出力されるようになっている。
【0015】
これらのうち、相互相関関数演算部300は、マイクロホン120E,120W,120S,120Nのうち、対向するマイクロホンから出力された電気信号から相互相関関数を演算する機能を備えている。この演算結果は、東西方向及び南北方向の風速に対応する。具体的には、マイクロン120E,120Wの電気信号から東西方向の風速が演算され、マイクロホン120S,120Nの電気信号から南北方向の風速が演算されることになる。演算された東西方向及び南北方向の風速は、ベクトル演算部302に入力される。ベクトル演算部302では、東西方向の風速と、南北方向の風速に基づいてベクトル演算が行われ、風向・風速が求められ、表示部304に対して出力される。表示部304は、入力された演算結果に基づいて、風速及び風向を表示する。
【0016】
次に、本実施例の作用について説明する。上述したように、スピーカ110からは、白色雑音が出力される。なお、理想的な白色雑音は、すべての周波数成分の振幅が等しいが、本実施例では、必ずしも理想的なものではない。しかし、風向・風速の測定上何ら支障は生じない。スピーカ110から出力された白色雑音は、散乱板210に入射し、ここで反射されて球面方向に拡散する。反射された白色雑音は、マイクロホン120E,120W,120S,120Nにそれぞれ入射し、電気信号に変換される。
【0017】
相互相関関数演算部300では、マイクロホン120E,120Wの出力電気信号に対して相互相関関数を求める演算が行われる。ここで、風が全く吹いていないと仮定すると、マイクロホン120Eと120Wには、同じ白色雑音が同一位相で入射する。従って、相互相関関数の演算結果は、風速「0」を示すことになる。なお、この場合、相互相関関数の演算結果は、白色雑音の自己相関関数と一致する。仮に、白色雑音が理想的であるとすると、自己相関関数はいわゆるデルタ関数となる。本実施例では、理想的な白色雑音ではないし、外乱雑音が加わるので、理想的なデルタ関数とはならないが、概ね波形は近似する。
図4(D)には、相互相関関数の一例が示されている。マイクロホン120S,120Nの出力電気信号に対しても同様である。
【0018】
次に、例えば
図3(A)に示すように、南西方向から風が吹いているものとする。この場合、風の影響を受けて、マイクロホン120Eに対する白色絶音の入射時刻と、マイクロホン120Wに対する白色絶音の入射時刻との間にずれが生ずるようになる。図示の例では、マイクロホン120Eにおける入射時刻が、マイクロホン120Wにおける入射時刻よりも早くなる。
図4には信号波形の一例が示されており、マイクロホン120E,120Wに入射する白色雑音の波形が、同図(A),(B)にそれぞれ示されている。それらの相互相関関数を演算すると、同図(C)に示すようになる。これを、同図(D)の無風状態の場合と比較すると、ピークの間にΔTの時間差があるが、これが風が原因で生じたものであることから、このΔTの時間差から東西方向の風速を求めることができる。南北方向についても、同様である。
【0019】
図5には、
図4(A),(B)の信号波形に外乱ノイズが加わった場合が示されている。マイクロホン120E,120W,120S,120Nは、スピーカ110からの白色雑音の他に、装置が設置された環境に存在する各種の外乱雑音も拾うことになる。これらの外乱雑音は、白色雑音に混ざってしまい、
図4(A),(B)に示した波形は、
図5(A),(B)に示すようになる。しかし、この場合であっても、相互相関関数を求めれば、外乱雑音の影響が低減され、相互相関関数は、
図5(C)に示すようになり、上述した
図4(C)と比較してピークの位置にずれは生じない。従って、風速は、良好に演算することができる。
【0020】
図3(B)には、東西方向における相互相関関数の値と風速の関係が示されており、同図(C)には、南北方向における相互相関関数の値と風速の関係が示されている。相互相関関数から得られた東西方向の速度と南北方向の速度の各値は、ベクトル演算部302に入力され、ベクトル演算が行われる。すなわち、東西方向の速度を示すベクトルと、南北方向の速度を示すベクトルとの合成が行われ、風速に相当する長さであって、風向き方向を向いたベクトルが得られる(
図3(A)参照)。
【0021】
図3(A)に示す例では、東西方向の風速が同図(B)に示すVEWで、南北方向の風速が同図(C)に示すVSNである。これらが、同図(A)に示すベクトルFEW,FSNの長さにそれぞれ対応する。そして、これらベクトルFEW,FSNを合成すると、ベクトルFKとなり、このベクトルFKの大きさが風速を示し、方向が風向を示す。
【0022】
なお、相互相関関数,自己相互相関関数については、例えば、日野幹雄著「スペクトル解析」(朝倉書店,1977年10月1日初版)に詳述されている。
【0023】
以上のように、本実施例によれば、スピーカから送信された白色雑音の超音波を、東西南北のマイクロホンで送受信し、東西及び南北のマイクロホンの受信信号間で相互相関関数を求め、この値からベクトル演算を行って風向・風速を求めることとしたので、外部雑音の影響を受けにくく、測定精度の向上を図ることができる。
【0024】
<他の実施例> なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例では、半球面状の散乱板210としたが、スピーカ110から出力された超音波をマイクロホン120E,120W,120S,120Nに向けて反射できれば、半球面以外の形状、例えば四角錘形状としてもよい。
(2)前記実施例では、マイクロホン120E,120W,120S,120Nを、東西南北の方位となる位置に配置したが、必ずしも方位と一致せず、角度がずれていてもよいが、演算結果を補正する必要がある。
(3)前記実施例は、天井100側にスピーカ110を設置し、床200側にマイクロホン120E,120W,120S,120Nを設置したが、逆であってもよい。
(4)前記実施例では、超音波の白色雑音を使用したが、超音波でなくてもよい。
(5)前記実施例では、東西南北の4つのマイクロホンを使用したが、少なくとも2つあれば、それらのマイクロホンの設置方向の風速を求めることができる。3つのマイクロホンを設けてベクトル演算を行うことで、風向を求めることができる。
(6)前記実施例では、風向及び風速を求めたが、いずれか一方のみを求めるようにしてもよい。