特開2021-176293(P2021-176293A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-176293(P2021-176293A)
(43)【公開日】2021年11月11日
(54)【発明の名称】水耕栽培装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 31/00 20180101AFI20211015BHJP
【FI】
   A01G31/00 607
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2020-82923(P2020-82923)
(22)【出願日】2020年5月10日
(71)【出願人】
【識別番号】515095922
【氏名又は名称】株式会社花の大和
(74)【代理人】
【識別番号】100137372
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 徳子
(72)【発明者】
【氏名】桜井 優
【テーマコード(参考)】
2B314
【Fターム(参考)】
2B314MA59
2B314NC28
2B314NC54
2B314ND30
2B314PB02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】異なる種類、サイズの球根を1つの容器で栽培可能とし、球根は勿論、芽や花茎も確実に保持することを可能とする。更に、異なる種類の球根植物の寄植えを楽しめるようにする。また、栽培容器への着脱自在の栽培装置として水の入れ替え作業を簡便にしてメンテナンス容易な水耕栽培装置を提供する。
【解決手段】栽培装置を球根装着トレー1と蓋体4から構成し、球根装着トレー1には根出し用の孔2aを有する球根収容部2と、球根装着トレー1と蓋体4とを連結する連結柱3を立設する。柔軟性を有する蓋体4には、球根の茎部を挿通する挿通部と連結柱連結孔8を設け、挿通部周縁に切り欠き部7と舌片6とを交互に隣り合うように複数設けて花茎保持部とする。また、連結柱3には複数の段部を形成して蓋体4の装着高さの調節を行い、球根装着トレー1に把持部1aを設けて着脱容易とする。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水耕栽培に用いられる球根植物の栽培装置であって、
当該栽培装置は球根装着トレーと蓋体から構成され、
球根装着トレーには、根出し用の孔が設けられた球根収容部が形成されると共に球根装着トレーと蓋体を連結する連結柱が立設され、
蓋体には、球根の茎部をその成長時に上方に向けて挿通させる挿通部と、
球根装着トレーと蓋体を連結する連結柱連結孔が設けられたことを特徴とする栽培装置。
【請求項2】
蓋体が柔軟性を有する素材からなる請求項1記載の栽培装置。
【請求項3】
蓋体の挿通部が円形であって、略中心に向けて複数の切り欠き部と複数の舌片が挿通部周縁に沿って隣り合うように形成されている請求項1又は2記載の栽培装置。
【請求項4】
球根装着トレーに立設された連結柱に段部が設けられ、球根装着トレーへの蓋体の装着高さの調節が可能な請求項1ないし3のうちいずれか1に記載された栽培装置。
【請求項5】
容器内部に栽培装置載置用フランジが設けられた水耕栽培容器と、
請求項1ないし4のうちいずれか1に記載された栽培装置を組み合わせた球根水耕栽培セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、家庭又は業務用等で植物を栽培する際に用いられる栽培装置、特に球根類の水耕栽培に適した栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、園芸を楽しむ人が増えており、家庭や店舗の室内・ベランダ等で楽しめるプランタや鉢などの容器での栽培が手軽で人気である。特に球根類の水耕栽培は苗に比べて保管や搬送などの管理が簡単で扱いやすく、観賞用及び観察用として広く行われている。
【0003】
水耕栽培に適した球根として、チューリップ、ヒヤシンス、クロッカス、ムスカリなどが挙げられるが、球根の形状にも球形、卵型、楕円形、紡錘型などがある上、同じ種類の球根であっても品種改良等によってその大きさは一律ではない。
【0004】
水耕栽培に使用される、球根を安定して支える用具として栽培用容器に装着する、根出し用穴を設けた円板状球根支承台であって、当該根出し用穴の周縁に鍵型の突起を立設した球根載置用トレー(図6)が従来から使用されている。根出し用穴の上に球根を載置し、根を下方に向けて延出させ、鍵型の突起で球根や花茎を支承するのである。
【0005】
また、非特許文献1のような球根水栽培用剣山の意匠がある。
【0006】
さらに、球根類の水耕栽培容器として開発された、特許文献1記載の発明がある。この水耕栽培装置は、液体が収容された液槽内に非栽培物を支承する支承台と非栽培物を覆う覆体を設けてなる。
【0007】
特許文献2に記載された発明は、上方が開放した水入れ容器の上部に、底部に根延び出し用穴を設けた球根装着凹部が形成された球根装着体であって、球根を装着後に球根押さえ用スポンジと芽延び出し用穴を備える蓋体が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−157079号公報
【特許文献2】実開平7−17043号公報
【非特許文献1】意匠登録第1626952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
球根植物には多数の種類があり、球根の形状や直径も異なり、同一種類であっても球根の大きさには個体差がある。従って従来の球根用栽培具は、ヒヤシンスなどの大型球根1球用など特定の種類の球根に適した容器となっている。
【0010】
球根載置用トレー(図6)では、根出し用の穴の大きさや球根を支える鍵型の突起も一定の大きさとなっている。
【0011】
球根収容部と収容する球根の大きさが大きく異なると、球根収容部にうまく球根が収まらず不安定となる。また、鍵型の突起で球根の胴部を確実に支承できない場合が生じたり、無理やり突起の中に押し込んでしまうと球根を傷つけてしまったりする。
【0012】
一方、水耕栽培では容器内の水の管理が重要となる。球根は根から自身に不要なものを水中へ排出し、空気中の菌やゴミなどの不純物も容器内にたまるため、容器内の水の取替え作業が必要となる。根腐れ防止剤を水に投入していても、週に一度は水の入れ替えを行う必要がある。
【0013】
さらに、栽培開始から一月ほどして芽がでてくると日の当たる場所へ移動させるため今まで以上に水が減り、水も汚れやすくなる。
【0014】
水やりは、球根に水をかけないようにするほうが望ましいため、水の継ぎ足しより、水を全部捨てて新鮮な水と入れ替えることが重要となる。容器の洗浄や水の入れ替え作業は、球根を載置した台座ごと取り外して行うが、確実に支承されていないと、球根が動転するおそれがある。花茎が延びてくると更にバランスが悪くなり植物が倒れてしまう。
【0015】
多数設けられた突起に突き刺して球根を保持する球根用剣山(非特許文献1)を使用すると球根はある程度安定するが、球根を傷つけ、その傷口からカビが発生して生育に悪影響を与えるおそれがある。
【0016】
また、芽や花茎の成長につれて重心が上方へ移動して球根のバランスがさらに悪くなり、球根全体が傾倒してしまう。球根や花茎を傾倒した状態で放置すると元に戻すことは不可能である。
【0017】
すなわち、球根の水耕栽培では、球根だけでなく、芽や花茎を安定的に保持することが重要となるのである。
【0018】
特許文献1の水耕栽培装置は、球根を支承部に挿入したあとに覆体を被せる構造として支承部と覆体とで被栽培物の倒れを防止する構造となっている。覆体にはスリットが設けられているが、成長した花茎を確実に支えることは不可能である。
【0019】
また、特許文献2の球根水栽培器は、スポンジで球根を抑えるだけであって、成長後の芽や花茎を支承することはできない。
【0020】
そこで本願では、異なる種類、サイズの球根であっても1つの容器で栽培可能で、球根は勿論、成長後の芽や花茎も確実に保持することが可能かつ、取り外し容易とし、水の入れ替え作業を簡便にした水耕栽培装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するために、本願請求項1では、
栽培装置を球根装着トレーと蓋体から構成し、球根装着トレーには、根出し用の孔が設けられた球根収容部と、球根装着トレーと蓋体とを連結する連結柱を立設するのである。一方、蓋体には、球根の茎部を挿通する挿通部と前記連結柱連結孔を設けるのである。
【0022】
請求項2では、蓋体を弾性且つ可撓性を有する、柔軟性素材で形成するのである。
【0023】
請求項3では、蓋体の挿通部を円形に形成し、略中心に向けて切り欠きと舌片を挿通部周縁に沿って隣り合わせに複数形成するのである。
【0024】
請求項4では、球根装着トレーに立設した連結柱に段部を形成し、蓋体の装着高さ調節を行う構造とするのである。
【0025】
請求項5では、容器内部に栽培装置載置用フランジを設けた水耕栽培容器と、本願発明
に係る栽培装置を組み合わせた球根類の水耕栽培セットとするのである。
【発明の効果】
【0026】
球根装着トレーと蓋体によって球根を挟持することで大きさや形状が異なる球根であっても一つの容器で同時に水耕栽培を行える。
【0027】
すなわち、従来は同一種類の球根しか栽培できなかったが、異なる球根同士を組み合わせる、いわゆる球根植物の寄植え水耕栽培が可能となる。複数の種類の球根を栽培することで、種々の花や高さの異なる植物からなる、華やかな寄植えにすることもでき、開花時期が異なる植物を寄植えにすることで鑑賞期間を長くするなど水耕栽培の鑑賞価値が飛躍的に高まり、今までには味わうことのできなかった、新しい水耕栽培の楽しみを享受することができる。
【0028】
蓋体に設けた切り欠きと舌片が球根胴部、芽部、花茎を確実に挟持するので、球根だけでなく、植物全体のバランスを保つことができる。
【0029】
球根装着トレー及び蓋体を連結することで球根をより安定保持でき、当該栽培装置を球根ごと持ち上げて取り外しが簡単に行えるので水の入れ替え作業が容易である。
【0030】
連結柱に設けた複数の段部によって蓋体の高さ調節が可能である。また蓋体は柔軟性があるため球根や花茎を傷つけずに弾力的に保持が可能である。
【0031】
球根装着トレー及び蓋体によって容器内の水の蒸発を抑制するとともに、空気中の塵埃の侵入も防いで水の交換頻度を適正回数にし、メンテナンスが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】球根装着トレーの平面図。
図2】球根装着トレーの斜視図。
図3】蓋体の平面図。
図4】連結柱の正面図。
図5】栽培容器への栽培装置の装着方法を示す説明図。
図6】従来の球根固定具の斜視図。
図7】球根装着トレーと蓋体を連結させた状態を示す説明図。
図8】栽培容器に球根装着トレーを載置した状態を示す説明図。
図9】更に蓋体を連結した状態を示す説明図。
図10】実際にクロッカスを栽培している状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
それでは本願発明に係る水栽培装置について図面を参照しながら説明する。
【0034】
本願の水耕栽培装置は球根装着トレー1と蓋体4から構成される。図1が球根装着トレー1の平面図である。球根装着トレー1は透明あるいは半透明のプラスチック等の合成樹脂材製からなる板状部材であって、ここでは、平面視略円形状である。
【0035】
球根装着トレー1には複数の球根を収容する球根収容部2が設けられている。図1では、7つの球根収容部2が設けられている。ここでは球根収容部の大きさは同じとしているが、球根収容部の数や大きさの選択は自由である。すなわち、中央に大きな球根、例えばチューリップなどの径の大きな球根を載置する、収容部を一箇所設け、その周りに、例えばクロッカスなどの球根を載置する径の小さな収容部を複数設けるなどの変化を付けると異なる種類の球根の寄植えが可能となるのである。
【0036】
球根装着トレー1の対向する位置で周縁部の一部を半円形に切り欠いて把持部1aとする。それぞれの把持部を指で把持して栽培容器への着脱を容易に行うのである。また、球根装着トレー1の上面には適宜の位置に複数の連結柱3が立設されている。
【0037】
球根収容部2は球根の少なくとも球根の下部が収容できる大きさの円形凹嵌部となっており中央に球根の根が延出できるように根出し用穴2aが形成されている。
【0038】
図3は蓋体4の平面図である。蓋体4は合成樹脂成形品あるいはゴム製品などからなる、弾性及び可撓性を有する柔軟素材からなる、薄い円板状であって球根装着トレーと同等、あるいは、より柔軟性を有する素材で作られている。
【0039】
球根装着トレー同様、周縁部を対向する位置で半円形に切り欠いて把持部4aが形成されている。蓋体4と球根装着トレー1は一対になっており、直径が略同一で、球根装着トレーに設けた球根収容部2と同数の円形の挿通部5が球根収容部2に対応する位置に形成されている。
【0040】
ここでは、7箇所の挿通部5が形成されており、各挿通部の略中心部が球根の芽や花茎の挿通孔5aとなっている。当該挿通孔5aに向けて略三角形状の舌片6と略三角形状の切り欠き部7が、挿通部周縁に沿って隣り合うように複数形成されている。
【0041】
挿通孔5aから芽や花茎が成長してくると舌片6は花茎等に接触して上方に押し曲げられ、舌片6の弾性力の復元によって接触抵抗が高まり、芽や花茎が弾性的且つ確実に保持される。また、切り欠き部7に挿通した花茎は、切り欠き部7で挟持されるのである。
【0042】
図7が球根装着トレーに蓋体を連結させた状態を示す説明図である。
【0043】
舌片や切り欠きが複数設けられているため、図10に示すようにクロッカスなど一つの球根から複数の芽が出る場合は、複数の切り欠き部や舌片によって各芽を確実に保持することが可能となるのである。
【0044】
また、蓋体4には球根装着トレーの上面に立設した、連結柱3に対応する位置に連結孔8が形成されている。この実施形態では、連結孔8は6つ形成されており、連結孔8の直径は連結柱3の直径と略同一である。
【0045】
連結柱3は連結柱の直径よりやや大きな直径を有する頭部3aと、鉛直方向に複数の係合段部3b、3cが設けられている。蓋体4の連結孔8と連結柱3を当接させて下方へ押し込むと、頭部3aを通り抜けた蓋体4は、段部3bで係止される。更に押し込むことで次の段部3cで係止されるのである(図4)。
【0046】
このように、球根装着トレーに収容する球根の大きさ(高さ)に合わせて蓋体4の装着高さを調節することが可能である。また、蓋体が水平になるように連結する必要はなく、例えば中央にチューリップやヒヤシンスなどの大きな球根を載置し、周囲にクロッカスなどのより小さく扁平な形状の球根を配置した場合は、蓋体の装着高さを調節することで、弾性を有する蓋体は、傘状にしなり、各球根の上部を緩やかに押圧することになるのである。
【0047】
球根装着トレーと蓋体によって球根が挟持されることに加え、球根上部は蓋体の舌片の根本近傍で保持され、球根から発芽した芽や花茎は切り欠き部に挟持されたり、舌片の先端部によって接触、押圧されたりして支承されるため、球根や花茎が確実に保持されて移
動することがない。
【0048】
それでは、実際に球根の水耕栽培を行うときの手順について図5を参照しながら説明する。
【0049】
使用する栽培容器9は、有色又は無色透明のプラスチック製あるいはガラス製等の容器であることが好ましい。水耕栽培は室内で行われ、インテリア性が要求されるとともに、根や芽などの成長の様子を観察することも目的や楽しみとなり、透明な容器は植物の成長の様子を視認しやすいからである。
【0050】
栽培容器9は上方が開放された円筒形であって、栽培容器の上部の内周に沿ってフランジが9a設けられている。栽培容器9の内周と、球根装着トレー1の直径及び蓋体4の直径は略同一である。栽培容器のフランジ9aに球根装着トレー1を載置し、球根収容部2に栽培する球根を配置する。次に、蓋体4で球根上部を覆うように配置し球根装着トレーに立設した連結柱3に蓋体の連結孔8を当接して蓋体を押し込み、球根装着トレー1と蓋体4を連結するのである。
【0051】
栽培容器9の洗浄や水交換の際は、球根装着トレーと蓋体の把持部1a、4aを両方把持して球根ごと栽培装置を簡易に取り外すことができる。蓋体4及び蓋体の舌片6や切り欠き部7によって球根及び花茎が強力に保持されているため、取り外しの際に球根が移動したり、花茎が倒れたりすることがない。
【0052】
この実施形態では、栽培容器や球根装着トレーは平面視、円形としているが、容器は角型、楕円、その他様々な形状で構わない。また、球根装着トレー及び蓋体も容器内に装着できるのであれば、上述の機能が発揮できる範囲内で正方形状、長方形状など種々応用が可能である。
【0053】
参考として図8で他の栽培容器に球根収容トレーを載置した状態、図9で更に蓋体を連結させた状態を示す説明図として示している。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本願発明品は、球根などの水耕栽培容器及び水耕栽培装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0055】
1、球根支承トレー
2、球根収容部
3、連結柱
4、蓋体
5、挿通部
6、舌片
7、切り欠き部
8、連結孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10