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特開2021-176514人体移動補助装置、人体移動補助装置用ハンモック
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-176514(P2021-176514A)
(43)【公開日】2021年11月11日
(54)【発明の名称】人体移動補助装置、人体移動補助装置用ハンモック
(51)【国際特許分類】
   A61G 7/14 20060101AFI20211015BHJP
   A61G 5/14 20060101ALI20211015BHJP
【FI】
   A61G7/14
   A61G5/14
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2021-78189(P2021-78189)
(22)【出願日】2021年4月30日
(31)【優先権主張番号】特願2020-81494(P2020-81494)
(32)【優先日】2020年5月1日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】399071041
【氏名又は名称】月島倉庫株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090893
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 敏
(72)【発明者】
【氏名】北川 洋子
【テーマコード(参考)】
4C040
【Fターム(参考)】
4C040AA08
4C040HH02
4C040JJ04
4C040JJ09
(57)【要約】
【課題】動力シリンダーの動力で昇降可能で、移動可能な、人体移動補助装置及び人体移動補助装置用ハンモックを提供する。
【解決手段】人体移動補助装置1は台座部10、支柱部20、支持部30、人体保持具40からなり、支持部30は中心軸31を中心として回動可能、かつ支持部材35、36が直列につながって構成され、人体保持具40は保持棒41、41´を備え、ハンモック50は保持棒41、41´に掛けることが可能な長リング51、51´及び短リング52、52´を備え、トイレで用を足すための穴53を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
台座部、支柱部、支持部、人体保持具を有する人体移動補助装置であって、
前記支柱部は前記台座部に固設され、動力シリンダーを備え、該動力シリンダーにより前記支持部を上下に移動可能に支持するよう構成され、
前記支持部は支持部材、中心軸とを備え、前記支持部材は前記中心軸を中心として回動可能であり、前記支持部は前記人体保持具を保持可能かつ人体保持具が回動可能に構成され、前記人体保持具は、保持スペースと、少なくとも二つの保持棒を備え、前記少なくとも二つの保持棒は、前記保持スペースの両側に配置されていることを特徴とする、人体移動補助装置。
【請求項2】
前記支持部は、前記支持部材を複数備え、前記支持部材は棒状であり、複数の前記支持部材は、それぞれ直列に接続されており、前記支持部材同士のつなぎ目が回動可能に接続されていることを特徴とする、請求項1に記載の人体移動補助装置。
【請求項3】
前記支柱部は接続部材を備え、前記支柱部は前記支持部を、前記接続部材に前記中心軸を固定することで、支持可能とし、
前記接続部材は、前記中心軸を固定可能に、上側固定部と下側固定部とを備え、前記下側固定部は前記支柱部から取り外し可能であり、前記支柱部は、前記下側固定部に嵌合する上側段差面を有することを特徴とする、請求項1乃至2に記載の人体移動補助装置。
【請求項4】
前記人体保持具は、更に補助棒、人体保持具上部とを備え、前記二つの保持棒は前記補助棒と前記人体保持具上部とを介して接続されていることを特徴とする、請求項1乃至3に記載の人体移動補助装置。
【請求項5】
前記二つの保持棒に着脱可能なハンモックであって、前記ハンモックは背もたれ、座部、4つのリングを有し、前記座部は略中央に穴を設けたことを特徴とする、人体移動補助装置用ハンモック。
【請求項6】
前記背もたれ及び前記座部の材質はいずれも布、ビニールなど柔軟性素材によることを特徴とする、請求項5に記載の人体移動補助装置用ハンモック。


































【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体移動補助装置に関するものであり、より詳細には、回動可能に支持された人体保持具を備えた人体移動補助装置及び人体移動補助装置用ハンモックに関する。
【背景技術】
【0002】
近年高齢化社会の到来により、また、介護分野における人手不足に伴い、介護分野での機械の活用が課題となっている。介護の現場においては、介護者にとって、足の不自由な要介護者を介護する際に、移動の補助が重労働である点や、要介護者の認知機能に問題がないのに介護者に世話をしてもらわなければならないなど要介護者の心理面の負担があった。以上の要介護者の移動について、機械の活用が課題となっている。特に要介護者がトイレを使用する際において、足は不自由であるが認知機能に支障のない要介護者にとって、要介護者は自分でトイレに行くことが可能になることが理想的であり、介護者の立場からは要介護者を車椅子から持ち上げてトイレに座らせることは、重労働であり、これらの問題点が課題となっている。
【0003】
そこで、足の不自由な要介護者を運搬するために、油圧シリンダーを取り付けて用いることが検討された。特許文献1においては、浴槽側壁外面にはこれに取付固着した筐体を介して油圧シリンダーを起立し、該油圧シリンダーの作動杵に同軸的に介装した案内管に介装しかつ筐体上に回動自在に装着された回転体はその一側壁面が台座背面を摺動案内するために筐体前壁面及び浴槽側壁内面と整合する構成とされていることを特徴とする患者の入退浴装置が開示されている。
【0004】
しかし特許文献1に開示される搬送用治具では、足の不自由な要介護者がこの入退浴装置に移乗する場合、移乗を補助する機構がないため大変な苦労を要するか、あるいは不可能だと考えられる。また、トイレなど車椅子が通常入るスペースがなく、車椅子を止めるスペースから距離が離れた場所に設置された物まで運ぶということが必要になってきているが、この入退浴装置は回転機構以上のものを備えていないことから、この距離を運ぶという機能は実現することができていない。
【0005】
そこで、特許文献2のような技術が検討された。特許文献2においては、トイレや浴室の壁面2に沿って設置され、座板を壁面ないしドアに添設した状態で折り畳むことが可能な、座位で入口開口を通って室の外から内へと移動できる旋回移動台を提供する。トイレないし浴室の壁面やドア面に座板及び当該座板を支持する部材が添設された状態に折畳まれ、この折畳み状態で座板が当該トイレないし浴室の壁面ないしドア面に添設されて位置し、座板を展開して旋回したときに、当該座板が入口開口を越えて移動するトイレないし浴室の旋回移動台が開示されている。特許文献2の技術を用いれば、離れた場所へ人体を運ぶという点は実現できるものの、車椅子から特許文献2の旋回移動台に移乗するにはやはり人力を用いなければならず、この困難性は解決できていない。そこで足の不自由な要介護者でも移乗を、転倒の危険などがなく安全に、労力をかけずに行えるような、人体移動補助装置の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭57−134039
【特許文献2】特開2011−19616
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、足の不自由な要介護者に対し、人体移動補助装置への移乗の作業を省き、かつベッドから車椅子への移動や、車椅子からトイレへの移動等を補助する、人体移動補助装置及び人体移動補助装置用ハンモックを提供することに目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明は、台座部、支柱部、支持部、人体保持具を有する人体移動補助装置であって、前記支柱部は前記台座部に固設され、動力シリンダーを備え、該動力シリンダーにより前記支持部を上下に移動可能に支持するよう構成され、前記支持部は支持部材、中心軸とを備え、前記支持部材は前記中心軸を中心として回動可能であり、前記支持部は前記人体保持具を保持可能かつ人体保持具が回動可能に構成され、前記人体保持具は、保持スペースと、少なくとも二つの保持棒を備え、前記少なくとも二つの保持棒は、前記保持スペースの両側に配置されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、前記支持部は、前記支持部材を複数備え、前記支持部材は棒状であり、複数の前記支持部材は、それぞれ直列に接続されており、前記支持部材同士のつなぎ目が回動可能に接続されていることを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明においては、前記支柱部は接続部材を備え、前記支柱部は前記支持部を、前記接続部材に前記中心軸を固定することで、支持可能とし、前記接続部材は、前記中心軸を固定可能に、上側固定部と下側固定部とを備え、前記下側固定部は前記支柱部から取り外し可能であり、前記支柱部は、前記下側固定部に嵌合する上側段差面を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、前記人体保持具は、更に補助棒、人体保持具上部とを備え、前記二つの保持棒は前記補助棒と前記人体保持具上部とを介して接続されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、前記二つの保持棒に着脱可能なハンモックであって、前記ハンモックは背もたれ、座部、4つのリングを有し、前記座部は略中央に穴を設けたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、前記背もたれ及び前記座部の材質はいずれも布、ビニールなど柔軟性素材によることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、台座部、支柱部、支持部、人体保持具を有する人体移動補助装置であって、前記支柱部は前記台座部に固設され、動力シリンダーを備え、該動力シリンダーにより前記支持部を上下に移動可能に支持するよう構成され、前記支持部は支持部材、中心軸とを備え、前記支持部材は前記中心軸を中心として回動可能であり、前記支持部は前記人体保持具を保持可能かつ人体保持具が回動可能に構成され、前記人体保持具は、保持スペースと、少なくとも二つの保持棒を備え、前記少なくとも二つの保持棒は、前記保持スペースの両側に配置されていることを特徴とするので、この人体移動補助装置をトイレやベッド付近に設置した際に、下半身不随であるが認知機能に支障はない要介護者が、車椅子からトイレに一人で行ったり、ベッドから一人で起きて車椅子に乗ったりと、要介護者の自身での移動を補助することができ、またこれにより介護施設での重労働を削減することができる。
【0015】
また、本発明においては、前記支持部は、前記支持部材を複数備え、前記支持部材は棒状であり、複数の前記支持部材は、それぞれ直列に接続されており、前記支持部材同士のつなぎ目が回動可能に接続されていることを特徴とするので、トイレの入り口にこの人体移動補助装置を設置することで、より省スペースで人体保持具を移動させることができ、トイレに設置する際に、廊下が狭い場合が多い個人宅においても、この人体移動補助装置を設置及び運用することができる。
【0016】
さらに、本発明では、前記支柱部は接続部材を備え、前記支柱部は前記支持部を、前記接続部材に前記中心軸を固定することで、支持可能とし、前記接続部材は、前記中心軸を固定可能に、上側固定部と下側固定部とを備え、前記下側固定部は前記支柱部から取り外し可能であり、前記支柱部は、前記下側固定部に嵌合する上側段差面を有することを特徴とするので、体重がかかって疲労しやすい中心軸や支持部材、回転軸のメンテナンスが可能となり、また上側段差面を有することから、支持部や人体保持具及び体重などの重みを下側固定部のネジだけでなく、上側段差面でも支えることができ、人体移動補助装置の使用の際の安全性をより高めることができる。
【0017】
また、本発明は、前記人体保持具は、更に補助棒、人体保持具上部とを備え、前記二つの保持棒は前記補助棒と前記人体保持具上部とを介して接続されていることを特徴とするので、人体保持具の構造をより強くするとともに、人体保持具により保持される要介護者が補助棒を手すりとすることができ、要介護者に安定感を保たせつつその身体を保持させることができる。
【0018】
また、本発明は、前記二つの保持棒に着脱可能なハンモックであって、前記ハンモックは背もたれ、座部、4つのリングを有し、前記座部は略中央に穴を設けたことを特徴とするので、要介護者の移動を好適に補助する椅子の役割を果たすことができ、また便座まで移動した後においても、穴があいている構成であることから、容易に用を足すことができる。また、車椅子には穴の部分に取り換え可能なシートを敷いておくことで、衛生さを保つことができる。
【0019】
また、本発明は、前記背もたれ及び前記座部の材質はいずれも布、ビニールなど柔軟性素材によることを特徴とするので、取付位置を調整することができ、簡易な方法で人体保持具に取り付け可能であり、また車椅子やベッドにて、移動時以外においても要介護者の下に敷いておくことも可能であるため、要介護者が本発明の人体移動補助装置を使用するためにハンモックの上に移動するという準備動作をする必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態に係る人体移動補助装置の一例が示された斜視図である。
図2図1の人体移動補助装置の台座部の平面及び側面図である。
図3】支柱部を示した図である。
図4】支持部を示した図である。
図5】支持部の動作を示した図である。
図6】人体保持具の正面図及び平面図である。
図7図6の人体保持具の側面図及び斜視図である。
図8図6の人体保持具の他の一例を表した図である。
図9図1の人体移動補助装置用のハンモックを示した図である。
図10図9の人体移動補助装置用ハンモックの使用例を示した図である。
図11図1の人体移動補助装置をトイレに設置した際の車椅子から移乗する際の 図である。
図12図11の人体移動補助装置のトイレ側から要介護者が移乗する際の図であ る。
図13図1の人体移動補助装置をストッパーを用いないで使用した際の問題を示 した動作の際の平面図である。
図14図13の人体移動補助装置をストッパーを用いた際の動作の際の平面図で ある。
図15】本発明に係る人体移動補助装置の他の一例に用いる人体保持具160を示した図である。
図16図15の人体保持具160の斜視図を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施形態の詳細を説明する。まず、本実施形態に係る人体移動補助装置について説明する。
【0022】
図1は、本実施形態に係る人体移動補助装置1の一例が示された斜視図である。図2は、人体移動補助装置1の台座部10の平面及び側面図である。図3(W)は支柱部20の平面図を、(X)は正面図を、(Y)は側面図を、(Z)は斜視図をそれぞれ示している。なお(U)は、下側固定部26の拡大図である。図4は、支持部30の側面図及び平面図である。図5は支持部30の動作を示した図であり、(A)は図5(C)の状態まで人体保持具40が上昇した図を示した斜視図、(B)は図5(A)から30センチメートル程度人体保持具40が下降した場合を示した図、(C)は人体保持具がストッパー37とストッパー受29が当接しないぎりぎりの位置まで人体保持具40を上昇させた場合、(D)は、ストッパー37とストッパー受29が当接するまで人体保持具40を上昇させた場合を示した図である。図6(X)は人体保持具40の正面図であり、図6(Y)はその平面図である。図7(X)は人体保持具40の側面図であり、図7(Y)は人体保持具40の斜視図である。図8は人体保持具の他の一例である人体保持具60を示した図であり、(X)はその背面図、(Y)はその平面図である。図9は本発明に係るハンモック50を示した図であり、(X)はその側面図、(Y)は平面図、(Z)はハンモック50の正面方向からの斜視図である。図10はハンモック50の使用及び人体保持具40への装着を示した図であり、(X)はその平面図、(Y)はその側面図である。図11は車椅子にのった要介護者が人体移動補助装置1に移乗する様子及びその後の動き(X方向に移動)を示した平面図である。図12はトイレを終えた要介護者が人体移動補助装置1に移乗する様子及びその後の動き(Y方向に移動)を示した平面図である。図13は人体移動補助装置1を利用して、要介護者がX方向に移動する際のいわゆるへの字問題を示した時系列の図であり(A〜Dの順に時系列順で表している)、図14はストッパーの使用によりへの字問題を解消した場合の時系列の図(A〜Gの順に時系列順で表している)である。(説明は省略するがへの字問題はY方向に移動する際にもX方向の場合と同様におこるものである。)図15は、本発明に係る人体移動補助装置のうち、人体保持具60に代えて、人体保持具160を用いる際の、人体保持具160を図示したものであり、(X)は上面図、(Y)は側面図を図示したものである。図16は、図15の人体保持具160を斜視した斜視図である。なお、本発明では説明の便宜上、正面や前とは人体移動補助装置を図11のα側から見た方向であり、後ろ、背面とは人体移動補助装置を図11のβ側からみた方向とする。
【0023】
図1に示す人体移動補助装置1は、台座部10、支柱部20、支持部30、人体保持具40を備えている。
【0024】
このうち支柱部20は台座部10に立設している。支柱部20は後述する接続部材24を介して支持部30を上下に移動自在に保持している。支持部30はその先端である回転軸33に回動自在に人体保持具40を吊り下げている。以下それぞれについて詳細に説明する。
【0025】
図2は台座部10を示した図である。図2(X)において台座部10はその背面側に壁当接部11を設けている。壁当接部11は図11図12などにおいてトイレに人体移動補助装置1を設置する際に壁にあわせた形で設けられたものである。壁の形状にあって、台座部が回り込む機能を果たせる凹状であれば特に限定するものではないが、通常の家屋や介護施設等のトイレの壁の形からすると、矩形状の凹部とするのが好適である。また台座部10はその平面に台座表面12を備える。台座部10には、図示しないが、箱に収納された油圧ユニット等のユニットを設けておいてもよい。
【0026】
図3は、支柱部20を示した図である。図3(W)に示されるように、支柱部20は台座部10に立設されたシリンダーガイドレール21、21´に囲まれて、支柱中心23が設けられている。図3(X)に示されるように支柱中心23の下部には、動力シリンダー22が設けられている。動力シリンダー22は油圧シリンダーであるのが好適であるが、特に限定するものではない。エアシリンダー、ガスシリンダー、ねじシリンダー等公知の技術を使用することができる。支柱中心23には接続部材24が装着されている。
【0027】
接続部材24は上側固定部25と下側固定部26とを備える。下側固定部26は支柱中心23にネジ止めで装着されている。ただ、ネジ止めに限らず公知の方法で装着することができる。上側固定部25も、支柱中心23にネジ止めで装着されている。この部分もねじ止めに限られず、公知の方法を使用可能である。下側固定部26は図示されているように内部は略中空状になっており、中空状の内部にネジ止めの穴が4つ設けられている。ネジ止めの穴の数については適宜設計可能である。上側固定部25と下側固定部26で上下からはさむように中心軸31を固定可能となっている。
【0028】
下側固定部26は突起27を備えている。突起27は上側段差面28に嵌合することができる形となっている(図3(U)参照)。このように構成することによって、下側固定部が支持部や人体保持具の重みをネジ固定で支える形だけでなく、突起27から上側段差面28に力を逃がすことができるので荷重が分散される。また、シリンダーガイドレール21、21´は、その上端正面側にストッパー受29を備える。ストッパー受29はストッパー37が当接する部材である。この意味や機能は後述する。ストッパー受29はストッパー37が当接可能な形状であれば図示されているような中空の矩形状であっても、その他どのような形状でもよい。
【0029】
支柱中心23は、動力シリンダー22と接続しているため、動力シリンダー22の動作により上下に移動自在となっている。シリンダーガイドレール21、21´はこれをガイドする役割を果たす。接続部材24も支柱中心23に接続しているため、共に上下移動することとなる。そのため、支持部30と人体保持具40もこれに伴い上下動可能となっている。これを示したのが図5(A)(B)である。また、支柱中心23は、シリンダーガイドレール21、21´から露出している正面側に、下側固定部26を支えるように、上側段差面28を備えている。
【0030】
図5(C)(D)を参照しつつ、さらにストッパー受29とストッパー37の関係を詳述する。図5(C)は図5(A)と同様の高さである。図5(C)の位置よりも更に少し上の位置である図5(D)に動力シリンダー22を駆動させることで接続部材24の位置を上昇させる。そうすると、ストッパー37は図5(D)の位置にてストッパー受29に当接する。これにより支持部材35を固定することができる。固定することの意味は後述する。
【0031】
図4は支持部30を図示したものである。図4(Y)はその平面図であるが、この図に示すように支持部材35と支持部材36は直列につながっている。ただ、支持部材36のほうが支持部材35より短く構成されている。図4(X)も参照しつつさらに詳述する。支持部材35と支持部材36は回転軸32を介して階段状に、回動自在に接続されている。支持部材35と中心軸31は溶接部材36を介して接続され、溶接部材36と中心軸31は溶接部34により溶接で固定されている。この固定方法は公知の技術によるものでかまわない。また、支持部材35の、中心軸31近傍の上面に、ストッパー37が設けられている。
【0032】
また、図4に示されるように支持部材35の中心軸31近傍の下側にはコロ38が設けられている。このコロ38は車輪及び車輪を支持部材35に固定する部材からなり、支持部30が回動した後上下移動する際にシリンダーガイドレール21及び21´と接して回転するように構成されている。このため、支持部材35がシリンダーガイドレール21、21´と擦れることにより消耗するのを避けることができる。なお、図示による説明の便宜上、コロ38は図4図5にのみ示しており、他の図においては省略されており、突起46、46´、47、47´においても図示を省略している場合がある。しかし、構成上はすべての図においてこれらは備えられているものである。
【0033】
次に、図6を示しつつ人体保持具40について詳述する。図6(X)等に示すように人体保持具40は接続棒44を介して支持部30の回転軸33に、回動自在につるされて接続されている。人体保持具40は上側に、保持スペース45を囲むように、コの字型の人体保持具上部43を備える。人体保持具上部43は接続棒44とも接続されている。
【0034】
次に保持スペース45を水平面上で囲むように棒状の保持棒41、41´が備えられている。保持棒41、41´同士を上側から接続するように人体保持具上部43が設けられており、水平的に接続するように、人体保持具40の図6(X)において手前側に、補助棒42が備えられている。保持棒41、41´上面には、ハンモック50を固定するための突起46、46´、47、47´が設けられている。図では平面に設けられているが、必ず上面にもうけなければならないわけではなく、それぞれ複数個であれば、側面に設けても、本発明のハンモックを固定できる。機能を備えていれば特に限定されるものではない。
【0035】
保持棒41、41´は略並行であれば、ハンモック50の装着がより容易になり、好ましい。
【0036】
図7(X)は人体保持具40の側面図、(Y)は人体保持具40の斜視図である。また、図8(X)は人体保持具の別の一例としての人体保持具60の背面図、図8(Y)はその平面図である。図7に示される人体保持具40の補助棒42の部分のみ、図8の、補助棒42に追加する形で第二の補助棒62が設けられている部分と構成が相違しており、その他は人体保持具40と人体保持具60の間で変わりはない。
【0037】
図6(X)等に示すように人体保持具40は接続棒44を介して支持部30の回転軸33に、回動自在につるされて接続されている。人体保持具40は上側に、保持スペース45を囲むように、コの字型の人体保持具上部43を備える。人体保持具上部43は接続棒44とも接続されている。
【0038】
次に保持スペース45を水平面上で囲むように棒状の保持棒41、41´が備えられている。保持棒41、41´同士を上側から接続するように人体保持具上部43が設けられており、水平的に接続するように、人体保持具40の図6(X)において手前側に、補助棒42が備えられている。保持棒41、41´上面には、ハンモック50を固定するための突起46、46´、47、47´が設けられている。図では平面に設けられているが、必ず上面にもうけなければならないわけではなく、それぞれ複数個であれば、側面に設けても、本発明のハンモックを固定できる。機能を備えていれば特に限定されるものではない。
【0039】
保持棒41、41´は略並行であれば、ハンモック50の装着がより容易になり、好ましい。
【0040】
図15は本発明に係る人体移動補助装置の他の一例として、人体保持具40,60に代わり人体保持具160を人体移動補助装置に用いる際の、人体保持具160を示した図である。(X)は人体保持具160の上面図、(Y)は人体保持具160の側面図である。また、図16は、図15の人体保持具160の斜視図である。人体保持具60の41,41´が、図8に示されるような保持スペース45を平行に囲んでいる構成が図示されているが、図15の人体保持具160の場合は、保持スペース45に相当する部分を囲むように、開口側が広がるようなハの字状に保持棒141、141´が設けられている点が異なる。その他の構成については、人体保持具160は、人体保持具40と変わりはない。
【0041】
第二の補助棒62は図8(X)(Y)に示されるように、人体を保持する保持スペース45側にせり出すように設けられている。第二の補助棒62は補助棒42に、コの字型の棒がせり出すように追加で設けられている。第二の補助棒62は図8に示されるコの字型のものに限らず、保持スペース45側にせり出すように設けられていればとくに形状は限定されるものではない。このように構成されていることで、要介護者が人体保持具により保持されている間、第二の補助棒62によりつかまりやすくなり、安定感を得ることができ、より好適である。
【0042】
図9は本発明に係るハンモック50を示した図である。ハンモックは紐の輪でできた長リング51、51´、短リング52、52´と、座部54、背もたれ55を備えている。
【0043】
座部54の略中央には、要介護者がトイレの便座に座ったときに用を足すための穴53が設けられている。背もたれ55側の端には短リング52、52´が、座部54側の端には長リング51、51´がそれぞれ設けられている。これらは柔軟性を備えた材質で構成されているのが好適である。柔軟性を備えていることで、要介護者の寝ているベッドに常時ひいておいたり、車椅子に常時設置しておくことで、いつでも人体移動補助装置を使用可能とすることができる。また、車椅子70に図示しないシートを、ハンモック50の下に敷いておくことで、要介護者の尿漏れ等に対処することができる。このシートは、穴53を覆い隠せる程度の大きさであり、ハンカチなどの布や、オムツのような紙製のものであってもよい。
【0044】
図10(X)はハンモック50を人体保持具40に装着した際の平面図である。図10(Y)はハンモック50を人体保持具40に装着した際の側面図である。なお、(X)では人体保持具40が、(Y)では要介護者がそれぞれ点線で描かれている。長リング51、51´は突起46、46´に、短リング52、52´は突起47、47´にそれぞれ引っ掛けられて固定され、図10(Y)で見て左側にハンモック50が移動して落ちないようになっている。なお、特に断りがない限り、人体保持具40の形状、機能につき図8の人体保持具60についても同様である。
【0045】
図10及び図11を参照しつつ本発明における人体移動補助装置1とハンモック50を用いた人体移動補助について詳述する。
【0046】
まず、車椅子70に要介護者が乗っている場合を想定する。トイレと廊下を隔てる壁である後壁72を後ろ(β側)にして、回転軸31を備える側を前側(α側)にして、人体移動補助装置1をあらかじめ設置しておく。人体移動補助装置1の運用方法を以下説明する。
【0047】
まず、人体保持具車椅子70にあらかじめハンモック50を敷いておき、要介護者はハンモック50を人体保持具40に、図10のように引っ掛ける(ステップ1)。この際人体保持具40を前後に移動させて引っ掛けると引っ掛けやすい。なお、ステップ1において、人体移動補助装置は図5の(B)の位置であり、図11で言えばAの位置である。
【0048】
次に、ステップ2では、図示しないスイッチにより、動力シリンダー22を動かして、図5(B)の状態から図5(A)の状態に、人体保持具40を持ち上げる。このとき、まだ図11のAの位置である。
【0049】
次にステップ3では、要介護者は壁や図示していない手すりなどを利用し、あるいは介護者の助力により、人体保持具を図11のB位置まで動かす。
【0050】
次にステップ4では、図5(A)の位置と同じ高さを示す図5(C)の位置から、図5(D)の位置に高さを微調整する。図5(C)ではストッパー37が、ストッパー受29に当接していない。これを図5(D)の位置まで動力シリンダー22を用いて上昇させ、ストッパー37をストッパー受29に当接させる。これにより、支持部材35を固定することができる。これがステップ4である。
【0051】
次にステップ5は、ステップ4では図11の上では位置はBだったが、これを要介護者または介護者の手でC位置まで動かす。
次にステップ6では、ステップ4で図5(D)のようにストッパー37を当接させたものを、図5(C)の状態に戻すために、図示しないスイッチを用い、動力シリンダー22を駆動させ、少しだけ人体保持具40の位置を下げる。
【0052】
次にステップ7では、人体保持具40を回転軸32、33及び中心軸31を活用し、要介護者または介護者の手で、手すり74等を使い、トイレ71の位置である、位置Dまで動かす。次にステップ8では、人体保持具40を、図5(A)と同じ高さになっているところを図5(B)と同じ高さまで、図示しないスイッチを用い、戻す。この図5(A)と図5(B)の高さの差は30cm程度であるとよい。これにより、柔軟性を備えたハンモック50がトイレ71の便座に接触し、緩む。その結果、要介護者はトイレ71の便座に座ることができ、穴53から用を足すことができる。ステップ1から8までで、車椅子70からトイレ71まで無理なく要介護者が移動できることとなる。
なお、ステップ2乃至ステップ7のいずれかの時点で、図11の位置Aの人体保持具40の向きが、図11の位置Dの人体保持具40の向きになるためには、人体保持具40を180度回転する必要がある。この回転は、ステップ2乃至ステップ7のいずれかの時点で行えばよい。
【0053】
次にトイレ71から車椅子70に戻るまでを詳述する。
まず、トイレ71で用を足した後、図5(B)と同じ高さにあり、図12で言えばD位置にある人体保持具40を、図5(A)の高さと同じ高さまで引き上げる。(ステップ9)
【0054】
次に、人体保持具40を、要介護者自身で手すり74や壁などを用い、図12のC位置まで移動させる。(ステップ10)。
【0055】
そして、図5の(c)位置の高さであるところを、図5の(D)の高さまで、図示しないスイッチで、動力シリンダー22を使い、上昇させ、ストッパー37をストッパー受29に当接させる(ステップ11)。
【0056】
次に、図12のC位置からB位置まで人体保持具を動かす(ステップ12)。
そして、図5の(D)の高さにある支持部30を図5(C)の高さまで下げ、ストッパー37とストッパー受29が間隔を持つようにする(ステップ13)。
【0057】
その後、要介護者または介護者が壁や手すりなど図示しないものも使い、人体保持具40を回動させて、図12のA位置まで動かす。(ステップ14)
最後に人体保持具40を、図示しないスイッチを用いて、図5(A)の高さから図5(B)の高さに下降させ、要介護者が車椅子70に座る。(ステップ15)
このようにステップ9から15までで、要介護者は一人でトイレ71から車椅子70まで戻ってくることができる。
なお、ステップ9乃至ステップ14のいずれかの時点で、図12の位置Dの人体保持具40の向きが、図12の位置Dの人体保持具40の向きになるためには、人体保持具40を180度回転する必要がある。この回転は、ステップ9乃至ステップ14のいずれかの時点で行えばよい。
【0058】
次に図13を用いて、ストッパー37およびストッパー受29を省略した場合に起こる問題について詳述する。ストッパー37をストッパー受29に当接しないで人体保持具を動かした場合、図13のように、支持部30がへの字になったまま、人体移動補助装置1正面をとおりすぎてしまう。
ここでへの字とは、図11の支持部材35の回転軸31(図4(Y)参照)から外側に延長した線より、支持部材36が、移動方向より手前にある場合(位置A)を指している。
そのため、後でへの字を解消して、逆への字(図14D〜Gの支持部30の形状)へと変形しなければならなくなり、図13のDの段階で、横壁73に衝突してしまうなど、スペースが限られたトイレの部屋では不都合が生じる可能性があった。
ここで逆への字とは、図11の支持部材35の回転軸31(図4(Y)参照)から外側に延長した線より、支持部材36が、移動方向側に移動している場合(位置D)を指している。
そこで、ステップ4、6及びステップ11、13をいれ、ストッパー37およびストッパー受29を備える人体移動補助装置1とすることで、これを回避することができることとなる。
【0059】
また、ステップ1〜15に限られず、例えば図14のB、C、Dの位置でステップ4と6を作業するなど、任意の位置でストッパー37とストッパー29を当接させる作業をしてもよい。そのようにすることで、スペースのある場所でへの字から逆への字に支持部30を変形させることができるため、より省スペースな作業とすることができる。なお、トイレの部屋の形状は、本開示のもの以外においても、本開示の人体移動補助装置1およびハンモック50の機能を活用できるトイレにおいても、要介護者が容易に移動しうる効果はある。設置方法を工夫することでさまざまな形状の部屋に対応することができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本開示は、老人ホームなど集合住宅だけでなく、個人宅においても車椅子でトイレへ行く足の不自由な要介護者用として、またベッドから車椅子へ乗り移るための器具として、好適に利用することができる。しかしながら、本開示は、上述された実施形態、及び実施例に限定されるものではない。トイレや、浴場や、食卓など、要介護者がその人体を移動させる必要がある場合に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0061】
1 人体移動補助装置
10 台座部
20 支柱部
21 21´ シリンダーガイドレール
22 動力シリンダー
23 支柱中心
24 接続部材
30 支持部
31 中心軸
32 33 回転軸
35、36 支持部材
40 人体保持具
41、41´ 保持棒
42 補助棒
45 保持スペース
50 ハンモック
51 51´ 長リング
52 52´ 短リング
53 穴
60 人体保持具
62 第二の補助棒




















図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
図16