【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本願発明の一態様は、イソグリチルリチン酸またはその塩の吸入製剤を提供する。
【0013】
本態様に係る発明の一つの実施形態では、前記塩は、マグネシウム塩、アンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、または各種のアミノ酸塩であり、マグネシウム塩、アンモニウム塩、カリウム塩、またはナトリウム塩であることが好ましく、マグネシウム塩であることがより好ましい。
【0014】
本態様に係る発明の一つの実施形態では、前記吸入製剤は、エアゾール式吸入剤、ドライパウダー式吸入剤、ネブライザ用液体製剤、または蒸気に変換可能な製剤から選ばれ、ドライパウダー式吸入剤またはネブライザ用液体製剤から選ばれることが好ましい。
【0015】
本態様に係る発明の一つの好ましい実施形態では、前記吸入製剤は、微粉化されたイソグリチルリチン酸マグネシウムと、1種または複数種の薬学的に許容される担体とを含むドライパウダー式吸入剤であり、前記微粉化されたイソグリチルリチン酸マグネシウムの粒径は、0.5〜10μmであり、0.5〜5μmであることが好ましい。
【0016】
本明細書に記載された「イソグリチルリチン酸マグネシウムの粒径は、0.5〜10μmである」とは、イソグリチルリチン酸マグネシウムの原薬の粒径は、ほぼすべて0.5〜10μmの範囲にあり、さらにいえばイソグリチルリチン酸マグネシウムの粒径分布は、X
10≧0.5μm、かつX
80≦10μmに限定されることをいう。本明細書に記載された「X
10」とは、粒径分布が10%である粒径、すなわち当該粒径より小さい粒子の体積含有量が粒子全体の10%を占めることをいい、「X
50」とは、粒径分布が50%である粒径、すなわち当該粒径より小さい粒子の体積含有量が粒子全体の50%を占めることをいい、「X
80」とは、粒径分布が80%である粒径、すなわち当該粒径より小さい粒子の体積含有量が粒子全体の80%を占めることをいい、「X
90」とは、粒径分布が90%である粒径、すなわち当該粒径より小さい粒子の体積含有量が粒子全体の90%を占めることをいう。
【0017】
本明細書に記載された「薬学的に許容される担体」は、乳糖、マンニトール、トレハロース、またはグリシンから選ばれ、乳糖であることが好ましく、研磨乳糖、篩い分け乳糖、または篩い分け乳糖と細粒乳糖の混合物であることがより好ましい。研磨乳糖の粒径分布範囲は、1〜350μmにあり、ただしX
50<30〜110μmの粒度分布を有することが好ましく、篩い分け乳糖の粒径分布範囲は、1〜200μmにあり、ただしX
50<35〜115μmの粒度分布を有することが好ましく、細粒乳糖の粒径分布範囲は、1〜60μmにあり、ただしX
90<45μmの粒度分布を有することが好ましい。
【0018】
本明細書に記載された「研磨乳糖」とは、機械研磨により得られる様々な細かさを有しており、かつ異なる等級では粒度分布が異なる乳糖のことをいう。具体的には、粒径分布範囲が1〜350μmにあり、X
50<30〜110μmの粒度分布を有する乳糖である。本明細書に記載された「篩い分け乳糖」とは、篩い分けにより得られる比較的狭い粒度分布を有する乳糖のことをいう。具体的には、粒径分布範囲が1〜200μmにあり、X
50<35〜115μmの粒度分布を有する乳糖である。本明細書に記載された「細粒乳糖」は、粒度分布の比較的狭い細粒研磨乳糖と、微粉化された細粒乳糖とを含む。具体的には、粒径分布範囲が1〜60μmにあり、X
90<45μmの粒度分布を有する乳糖である。
【0019】
本態様に係る発明の一つの実施形態では、前記微粉化されたイソグリチルリチン酸マグネシウムと担体を混合してカプセルまたはブリスターパックに充填する。さらなる実施形態では、1カプセルまたはブリスターパックあたり、微粉化されたイソグリチルリチン酸マグネシウム1〜50mgと、乳糖0〜50mgとを含み、微粉化されたイソグリチルリチン酸マグネシウム1〜30mgと、乳糖1〜40mgとを含むことが好ましい。
【0020】
本態様に係る発明のもう一つの好ましい実施形態では、前記ドライパウダー式吸入剤は、1種または複数種の薬学的に許容される添加剤をさらに含む。
【0021】
本明細書に記載された「薬学的に許容される添加剤」は、界面活性剤、潤滑剤、矯味剤のうち1種または複数種を含む。
【0022】
本態様に係る発明のいくつかの実施形態では、前記薬学的に許容される添加剤は、界面活性剤であり、例えば、リン脂質、ポロキサマー(Poloxamer)が挙げられる。
【0023】
本態様に係る発明のいくつかの実施形態では、前記薬学的に許容される添加剤は、潤滑剤であり、例えば、ステアリン酸マグネシウム、微粉化されたシリカゲル、タルク粉が挙げられる。
【0024】
本態様に係る発明のいくつかの実施形態では、前記薬学的に許容される添加剤が天然芳香剤と、人工合成されたフレグランスとからなる矯味剤である。前記天然芳香剤は、例えば、ハッカ油、オレンジ油、シナモン油、スペアミント油、ミントウォーター、オレンジピールの濃縮エタノール複合溶液が挙げられる。前記人工合成されたフレグランスは、例えば、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、オレンジフレーバーが挙げられる。
【0025】
本態様に係る発明のもう一つの好ましい実施形態では、前記吸入製剤は、ネイソグリチルリチン酸マグネシウムと、等張剤と、pH調節剤と、注射用水とを含み、pHが6.0〜8.0であるブライザ用液体製剤であり、前記ネブライザは、連続式ネブライザまたは定量式ネブライザである。
【0026】
本態様に係る発明の一つの好ましい実施形態では、前記イソグリチルリチン酸マグネシウムの含有量は、0.1〜5mg/mLであり、0.1〜2.5mg/mLであることが好ましい。いくつかの実施形態では、イソグリチルリチン酸マグネシウムの含有量は、0.1〜0.5mg/mLであり、またいくつかの実施形態では、同含有量は、0.5〜2.5mg/mLである。
【0027】
本態様に係る発明の一つの好ましい実施形態では、前記等張剤は、グルコース、塩化ナトリウム、塩化カリウム、マンニトールのうち1種または複数種の組合せから選ばれ、塩化ナトリウムであることが好ましい。
【0028】
本態様に係る発明の一つの好ましい実施形態では、前記pH調節剤は、水酸化ナトリウム、アンモニア水、塩酸、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、希硫酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸、酒石酸、酢酸ナトリウム、またはリン酸水素二ナトリウムから選ばれる1種または複数種の組合せであり、アンモニア水または水酸化ナトリウムであることが好ましい。
【0029】
本態様に係る発明の一つの好ましい実施形態では、前記pHは、6.5〜7.0である。
【0030】
なお、1mL、2mLまたは5mLの仕様の包装により単回投与量で提供されるネブライザ用液体製剤であることが好ましく、そのうち2mLであることが好ましい。
【0031】
本態様に係る発明のいくつかの実施形態では、前記吸入製剤は、10mL、20mLまたは30mLの仕様の包装により反復投与量で提供されるネブライザ用液体製剤である。
【0032】
本態様に係る発明のいくつかの実施形態では、前記ネブライザ用液体製剤は、天然芳香剤と、人工合成されたフレグランスとからなる矯味剤を含む。前記天然芳香剤は、例えば、ハッカ油、オレンジ油、シナモン油、スペアミント油、ミントウォーター、オレンジピールの濃縮エタノール複合溶液が挙げられる。前記人工合成されたフレグランスは、例えば、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、オレンジフレーバーが挙げられる。
【0033】
本願発明のもう一つの態様は、イソグリチルリチン酸またはその塩の吸入製剤の投与形態を提供する。前記投与形態は、前記吸入製剤を被験者に投与する頻度を含む。前記頻度は、1日3回、1日2回、1日1回、または2日1回から選ばれ、1日2回であることが好ましい。
【0034】
本願発明のさらにもう一つの態様は、慢性ウイルス性肝炎を治療する薬物の製造におけるイソグリチルリチン酸またはその塩の吸入製剤の応用を提供する。前記イソグリチルリチン酸またはその塩は、イソグリチルリチン酸マグネシウムであることが好ましい。
【0035】
本願発明のまたさらにもう一つの態様は、逐次療法で慢性ウイルス性肝炎を治療する薬物の製造におけるイソグリチルリチン酸マグネシウム吸入製剤の応用を提供する。前記逐次療法では、イソグリチルリチン酸マグネシウム注射液とイソグリチルリチン酸マグネシウム吸入製剤を用いる。
【0036】
本願発明のまたさらにもう一つの態様は、イソグリチルリチン酸マグネシウム吸入製剤と、イソグリチルリチン酸マグネシウム注射液とを含む配合を提供する。
【0037】
本願発明のまたさらにもう一つの態様は、慢性ウイルス性肝炎を治療する方法を提供する。前記方法は、慢性ウイルス性肝炎患者に治療有効量のイソグリチルリチン酸またはその塩の吸入製剤を投与することを含む。いくつかの実施例では、前記吸入製剤は、エアゾール式吸入剤、ドライパウダー式吸入剤、ネブライザ用液体製剤、または蒸気に変換可能な製剤から選ばれ、ドライパウダー式吸入剤またはネブライザ用液体製剤から選ばれることが好ましい。
【0038】
本願発明のまたさらにもう一つの態様は、1つまたは複数の単回投与量で包装されるイソグリチルリチン酸またはその塩を含む吸入製剤と、投与用具と、取扱説明書と、適切なパッケージとを含むキットを提供する。いくつかの実施例では、前記吸入製剤は、エアゾール式吸入剤、ドライパウダー式吸入剤、ネブライザ用液体製剤、または蒸気に変換可能な製剤から選ばれ、ドライパウダー式吸入剤またはネブライザ用液体製剤から選ばれることが好ましい。いくつかの実施例では、ネブライザ用液体製剤の投与用具は、ネブライザであり、前記ネブライザは、連続式ネブライザまたは定量式ネブライザである。いくつかの実施例では、前記取扱説明書には慢性ウイルス性肝炎を治療する方法が記載され、そのうち慢性ウイルス性肝炎患者に治療有効量のイソグリチルリチン酸またはその塩の吸入製剤を投与することを含む。
【0039】
本願発明のまたさらにもう一つの態様は、COPDを治療する薬物の製造におけるイソグリチルリチン酸またはその塩の吸入製剤の応用を提供する。前記イソグリチルリチン酸またはその塩は、イソグリチルリチン酸マグネシウムであることが好ましい。
【0040】
本態様に係る発明の一つの実施形態では、前記吸入製剤は、エアゾール式吸入剤、ドライパウダー式吸入剤、ネブライザ用液体製剤、または蒸気に変換可能な製剤から選ばれ、ドライパウダー式吸入剤またはネブライザ用液体製剤から選ばれることが好ましく、ネブライザ用液体製剤であることが最も好ましい。
【0041】
本態様に係る発明の一つの好ましい実施形態では、前記吸入製剤は、イソグリチルリチン酸マグネシウムと、等張剤と、pH調節剤と、注射用水とを含み、pHが6.0〜8.0であるネブライザ用液体製剤であり、前記ネブライザは、連続式ネブライザまたは定量式ネブライザである。
【0042】
本態様に係る発明の一つの好ましい実施形態では、前記イソグリチルリチン酸マグネシウムの含有量は、0.1〜5mg/mLであり、0.1〜2.5mg/mLであることが好ましい。いくつかの実施形態では、イソグリチルリチン酸マグネシウムの含有量は、0.1〜0.5mg/mLであり、またいくつかの実施形態では、同含有量は、0.5〜2.5mg/mLである。
【0043】
本態様に係る発明の一つの好ましい実施形態では、前記等張剤は、グルコース、塩化ナトリウム、塩化カリウム、マンニトールのうち1種または複数種の組合せから選ばれ、塩化ナトリウムであることが好ましい。
【0044】
本態様に係る発明の一つの好ましい実施形態では、前記pH調節剤は、水酸化ナトリウム、アンモニア水、塩酸、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、希硫酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸、酒石酸、酢酸ナトリウム、またはリン酸水素二ナトリウムから選ばれる1種または複数種の組合せであり、アンモニア水または水酸化ナトリウムであることが好ましい。
【0045】
本態様に係る発明の一つの好ましい実施形態では、前記pHは、6.5〜7.0である。
【0046】
なお、1mL、2mLまたは5mLの仕様の包装により単回投与量で提供されるネブライザ用液体製剤であることが好ましく、そのうち2mLであることが好ましい。
【0047】
本態様に係る発明のいくつかの実施形態では、前記吸入製剤は、10mL、20mLまたは30mLの仕様の包装により反復投与量で提供されるネブライザ用液体製剤である。
【0048】
本態様に係る発明のいくつかの実施形態では、前記ネブライザ用液体製剤が天然芳香剤と、人工合成されたフレグランスとからなる矯味剤を含む。前記天然芳香剤は、例えば、ハッカ油、オレンジ油、シナモン油、スペアミント油、ミントウォーター、オレンジピールの濃縮エタノール複合溶液が挙げられる。前記人工合成されたフレグランスは、例えば、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、オレンジフレーバーが挙げられる。
【0049】
本態様に係る発明の一つの実施形態では、前記吸入製剤を被験者に投与する投与頻度は、1日3回、1日2回、1日1回、または2日1回から選ばれ、1日2回であることが好ましい。
【0050】
本態様に係る発明の一つの好ましい実施形態では、タバコ煙の吸入誘発ラットCOPD動物モデルを用い、イソグリチルリチン酸マグネシウム吸入製剤の気管投与と霧化投与の2種の投与経路を用いてイソグリチルリチン酸マグネシウム吸入製剤の薬理学的作用を評価する。
【0051】
本態様に係る発明の一つの好ましい実施形態では、リポ多糖(LPS)誘発マウスCOPD動物モデルを用い、イソグリチルリチン酸マグネシウム吸入製剤の1日1回および1日2回の霧化投与という投与経路を用いて投与量を低、中、高の3段階(0.5、1.5と5mg/mL)に分けてイソグリチルリチン酸マグネシウム吸入製剤の薬理学的作用を評価する。
【0052】
本願発明のまたさらにもう一つの態様は、COPDを治療する方法を提供する。前記方法は、COPD患者に治療有効量のイソグリチルリチン酸またはその塩の吸入製剤を投与することを含む。いくつかの実施例では、前記吸入製剤は、エアゾール式吸入剤、ドライパウダー式吸入剤、ネブライザ用液体製剤、または蒸気に変換可能な製剤から選ばれ、ドライパウダー式吸入剤またはネブライザ用液体製剤から選ばれることが好ましく、ネブライザ用液体製剤であることが最も好ましい。いくつかの実施形態では、前記吸入製剤を被験者に投与する投与頻度は、1日3回、1日2回、1日1回、または2日1回から選ばれ、1日2回であることが好ましい。
【0053】
本願発明のまたさらにもう一つの態様は、1つまたは複数の単回投与量で包装されるイソグリチルリチン酸またはその塩を含む吸入製剤と、投与用具と、取扱説明書と、適切なパッケージとを含むキットを提供する。いくつかの実施例では、前記吸入製剤は、エアゾール式吸入剤、ドライパウダー式吸入剤、ネブライザ用液体製剤、または蒸気に変換可能な製剤から選ばれ、ドライパウダー式吸入剤またはネブライザ用液体製剤から選ばれることが好ましく、ネブライザ用液体製剤であることが最も好ましい。いくつかの実施例では、ネブライザ用液体製剤の投与用具は、ネブライザであり、前記ネブライザは、連続式ネブライザまたは定量式ネブライザである。いくつかの実施例では、前記取扱説明書にはCOPDを治療する方法が記載され、そのうちCOPD患者に治療有効量のイソグリチルリチン酸またはその塩の吸入製剤を提供することを含む。
【0054】
本願発明のまたさらにもう一つの態様は、去痰薬物の製造におけるイソグリチルリチン酸またはその塩の吸入製剤の応用を提供する。前記去痰薬物とは、痰液を薄めて粘度を低減することでその排出を促す薬物のことをいう。当該去痰薬物に含まれるイソグリチルリチン酸またはその塩は、イソグリチルリチン酸マグネシウムであることが好ましい。
【0055】
本態様に係る発明の一つの実施形態では、前記吸入製剤は、エアゾール式吸入剤、ドライパウダー式吸入剤、ネブライザ用液体製剤、または蒸気に変換可能な製剤から選ばれ、ドライパウダー式吸入剤またはネブライザ用液体製剤から選ばれることが好ましく、ネブライザ用液体製剤であることが最も好ましい。
【0056】
本態様に係る発明の一つの好ましい実施形態では、前記吸入製剤は、イソグリチルリチン酸マグネシウムと、等張剤と、pH調節剤と、注射用水とを含み、pHが6.0〜8.0であるネブライザ用液体製剤であり、前記ネブライザは、連続式ネブライザまたは定量式ネブライザである。
【0057】
本態様に係る発明の一つの好ましい実施形態では、前記イソグリチルリチン酸マグネシウムの含有量は、0.1〜5mg/mLであり、0.2〜2.5mg/mLであることが好ましい。いくつかの実施形態では、イソグリチルリチン酸マグネシウムの含有量は、0.2〜0.5mg/mLであり、またいくつかの実施形態では、同含有量は、0.5〜2.5mg/mLである。
【0058】
本態様に係る発明の一つの好ましい実施形態では、前記等張剤は、グルコース、塩化ナトリウム、塩化カリウム、マンニトールのうち1種または複数種の組合せから選ばれ、塩化ナトリウムであることが好ましい。
【0059】
本態様に係る発明の一つの好ましい実施形態では、前記pH調節剤は、水酸化ナトリウム、アンモニア水、塩酸、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、希硫酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸、酒石酸、酢酸ナトリウム、またはリン酸水素二ナトリウムから選ばれる1種または複数種の組合せであり、アンモニア水または水酸化ナトリウムであることが好ましい。
【0060】
本態様に係る発明の一つの好ましい実施形態では、前記pHは、6.5〜7.0である。
【0061】
なお、1mL、2mLまたは5mLの仕様の包装により単回投与量で提供されるネブライザ用液体製剤であることが好ましく、そのうち2mLであることが好ましい。
【0062】
本態様に係る発明のいくつかの実施形態では、前記吸入製剤は、10mL、20mLまたは30mLの仕様の包装により反復投与量で提供されるネブライザ用液体製剤である。
【0063】
本態様に係る発明のいくつかの実施形態では、前記ネブライザ用液体製剤は、天然芳香剤と、人工合成されたフレグランスとからなる矯味剤を含む。前記天然芳香剤は、例えば、ハッカ油、オレンジ油、シナモン油、スペアミント油、ミントウォーター、オレンジピールの濃縮エタノール複合溶液が挙げられる。前記人工合成されたフレグランスは、例えば、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、オレンジフレーバーが挙げられる。
【0064】
本態様に係る発明の一つの好ましい実施形態では、マウスフェノールレッド排泄実験法を用いて、イソグリチルリチン酸マグネシウム吸入製剤がマウスの気管分泌に与える影響を評価する。
【0065】
本願発明のまたさらにもう一つの態様は、去痰方法を提供する。前記方法は、痰分泌異常または痰排出機能不良の患者に治療有効量のイソグリチルリチン酸またはその塩の吸入製剤を投与することを含む。いくつかの実施例では、前記吸入製剤は、エアゾール式吸入剤、ドライパウダー式吸入剤、ネブライザ用液体製剤、または蒸気に変換可能な製剤から選ばれ、ドライパウダー式吸入剤またはネブライザ用液体製剤から選ばれることが好ましく、ネブライザ用液体製剤であることが最も好ましい。
【0066】
本願発明のまたさらにもう一つの態様は、1つまたは複数の単回投与量で包装されるイソグリチルリチン酸またはその塩を含む吸入製剤と、投与用具と、取扱説明書と、適切なパッケージとを含むキットを提供する。いくつかの実施例では、前記吸入製剤は、エアゾール式吸入剤、ドライパウダー式吸入剤、ネブライザ用液体製剤、または蒸気に変換可能な製剤から選ばれ、ドライパウダー式吸入剤またはネブライザ用液体製剤から選ばれることが好ましく、ネブライザ用液体製剤であることが最も好ましい。いくつかの実施例では、ネブライザ用液体製剤の投与用具は、ネブライザであり、前記ネブライザは、連続式ネブライザまたは定量式ネブライザである。いくつかの実施例では、前記取扱説明書には去痰方法が記載され、そのうち痰分泌異常または痰排出機能不良の患者に治療有効量のイソグリチルリチン酸またはその塩の吸入製剤を投与することを含む。
【0067】
本明細書に記載された「イソグリチルリチン酸」という用語の化学名は、(18α,20β)−20−カルボキシル−11−オキソ−30−ノルオレアナ−12−エン−3β−イル−2−O−β−D−グルコピラヌロノシル−α−D−グルコピラノシドウロン酸を指す。
【0068】
「イソグリチルリチン酸マグネシウム」という用語の化学名は、(18α,20β)−20−カルボキシル−11−オキソ−30−ノルオレアナ−12−エン−3β−イル−2−O−β−D−グルコピラヌロノシル−α−D−グルコピラノシドウロン酸マグネシウムを指し、その構造は上記式Iに示すとおりである。当該用語にはその水和物、例えば、四水和物も含まれる。
【0069】
本願発明者は鋭意研究を行ったところ、中分子量のイソグリチルリチン酸マグネシウムを吸入製剤として製造することが可能で、当該製剤の排出率が高くかつ微粒割合が高く、吸入投与する場合にイソグリチルリチン酸マグネシウムが肺から迅速に血液に入り、そして血液循環に従って全身において役割を果たすという知見を意外に見出した。イソグリチルリチン酸マグネシウム吸入製剤は、一般的な経口製剤よりバイオアベイラビリティが有意に高くなり、そのため投与量を低減して毒性と有害事象が発生するリスクを低減することが可能である。注射製剤と比べて、イソグリチルリチン酸マグネシウム吸入製剤はほぼ同等なバイオアベイラビリティを有しており、しかも薬物は自主的に摂取されるまたは受動的に吸い込まれて投与されるので、注射に伴う痛みを大幅に軽減でき、投与時のコンプライアンスが向上する。したがって、本願発明に係る吸入製剤は、注射投与を併用する逐次療法にとりわけ好適であり、薬効の発揮が確保されながらも薬物の注射投与に伴う痛みを軽減し治療費を減らすことは可能である。
【0070】
タバコ煙の吸入誘発ラットCOPD動物モデルでは、イソグリチルリチン酸マグネシウム吸入製剤がCOPDラットの臨床症状を緩和し、COPDラットにおける好中球をメインとする炎症性因子の浸潤を抑制し、肺の炎症を有意に緩和し、気管支壁の状態を改善する効果を有し、気管支の粘液分泌物を減少し、肺気腫を緩和する効果は認められた。関連実験により、COPDの治療に有意な効果が認められた。また、イソグリチルリチン酸マグネシウムの投与経路により、その薬効にも影響を与えることが判明した。霧化吸入の投与経路(イソグリチルリチン酸マグネシウムのネブライザ用液体製剤0.4mg/mL、30min)は、炎症軽減の効果が最も優れていた。
【0071】
LPS誘発マウスCOPD動物モデルでは、イソグリチルリチン酸マグネシウム吸入製剤の全投与量群はモデル群と比べて、マウスの気管支気道における白血球数の顕著な減少が認められた。イソグリチルリチン酸マグネシウムのネブライザ用液体製剤を1日2回吸入する低投与量群と中投与量群では、陽性対照群と同等な治療効果が認められ、高投与量群では、治療効果が低投与量と中投与量群よりやや劣っていた。また、同等投与量においては、イソグリチルリチン酸マグネシウムの1日2回投与が1日1回より治療効果が優れていた。
【0072】
マウスフェノールレッド排泄実験法で、イソグリチルリチン酸マグネシウム吸入製剤がマウス気管分泌に与える影響を評価した。その結果、霧化投与15min(イソグリチルリチン酸マグネシウムのネブライザ用液体製剤0.2mg/mL)におけるフェノールレッド排泄量は対照群の同排泄量より有意に増加した(p<0.01)。