(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-177167(P2021-177167A)
(43)【公開日】2021年11月11日
(54)【発明の名称】1級アミド化合物の検出試薬、検出装置、および検出方法
(51)【国際特許分類】
G01N 31/22 20060101AFI20211015BHJP
G01N 31/00 20060101ALI20211015BHJP
G01N 30/06 20060101ALI20211015BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20211015BHJP
【FI】
G01N31/22 122
G01N31/00 F
G01N30/06 E
C07B61/00 300
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2021-45858(P2021-45858)
(22)【出願日】2021年3月19日
(31)【優先権主張番号】62/991,714
(32)【優先日】2020年3月19日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】胡 傑筆
(72)【発明者】
【氏名】▲黄▼ 靜萍
(72)【発明者】
【氏名】▲頼▼ 孟慈
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ 曉眉
(72)【発明者】
【氏名】葉 ▲バイ▼華
(72)【発明者】
【氏名】▲頼▼ 姿嘉
(72)【発明者】
【氏名】林 ▲シ▼韻
【テーマコード(参考)】
2G042
4H039
【Fターム(参考)】
2G042AA01
2G042BA05
2G042BA06
2G042CA02
2G042FA11
2G042FB02
4H039CA71
4H039CD10
4H039CD30
4H039CD90
(57)【要約】 (修正有)
【課題】再生水、製造工程回収水、純水、および廃水中における尿素を検出する新規方法の提供。
【解決手段】検出試薬は触媒とキサントヒドロールとを反応させることにより形成される。触媒は担体に担持された有効成分を含み、有効成分にはPt、Ru、Rh、またはこれらの組み合わせを含み、担体には炭素材、シリカ、アルミナ、または炭酸カルシウムが含まれる。検出装置100は試料ソース110および混合装置130を含み得る。混合装置130は、試料ソース110と接続して試料を受け、かつ混合装置130は、試料中の1級アミド化合物と反応して生成物を形成する検出試薬を含んでいる。検出装置100は、分離装置150と接続して、生成物の性質を検出すると共に、試料中の1級アミド化合物の濃度を確認する分析装置170も含み得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒およびキサントヒドロールを反応させることにより形成される検出試薬であって、前記触媒が担体に担持された有効成分を含み、前記有効成分にはPt、Ru、Rh、またはこれらの組み合わせが含まれる、検出試薬。
【請求項2】
前記担体の粒径d50が3μmから3mmであり、
前記担体の比表面積が7m2/gから1500m2/gである、請求項1に記載の検出試薬。
【請求項3】
前記有効成分と前記担体との重量比が0.5:99.5から80:20である、請求項1に記載の検出試薬。
【請求項4】
前記検出試薬が強酸を含まない、請求項1に記載の検出試薬。
【請求項5】
1級アミド化合物の検出方法であって、
試料を検出試薬に対して準備し、前記試料中の前記1級アミド化合物が前記検出試薬と反応して生成物を形成するようにするステップと、
前記生成物を分離すると共に、前記生成物の性質を検出して、前記試料中の前記1級アミド化合物の濃度を確認するステップと、
を含み、
前記検出試薬は、触媒とキサントヒドロールとを反応させることにより形成されており、前記触媒は担体に担持された有効成分を含み、かつ前記有効成分にはPt、Ru、Rh、またはこれらの組み合わせが含まれる、1級アミド化合物の検出方法。
【請求項6】
前記検出試薬がカラムに充填され、前記試料が、前記試料の極性と前記検出試薬の極性とが類似したものになるようキサントヒドロールをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記生成物を分離する前記ステップが液体クロマトグラフィーを用い、かつ前記生成物の性質を検出する前記ステップが、前記生成物の蛍光信号、分子量、または紫外線吸収信号を検出することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
検出装置であって、
試料ソースと、
前記試料ソースと接続して試料を受ける混合装置であって、前記試料中の1級アミド化合物と反応して生成物を形成する検出試薬を含む混合装置と、
前記混合装置と接続して前記生成物を分離する分離装置と、
前記分離装置と接続して前記生成物の性質を検出すると共に前記試料中の前記1級アミド化合物の濃度を確認する分析装置と、
を含み、
前記検出試薬が、触媒とキサントヒドロールとを反応させることにより形成され、
前記触媒が担体に担持された有効成分を含み、かつ
前記有効成分にはPt、Ru、Rh、またはこれらの組み合わせが含まれる、検出装置。
【請求項9】
前記混合装置はカラムであり、前記試料が、前記試料の極性と前記検出試薬の極性とが類似したものになるようキサントヒドロールをさらに含む、請求項8に記載の検出装置。
【請求項10】
前記分離装置が液体クロマトグラフィーカラムを含み、かつ前記分析装置が、蛍光分光計、質量分析計、または可視光-紫外線吸光度計を含む、請求項8に記載の検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年3月19日に出願された米国特許仮特許出願62/991,714の利益を主張し、その全体が参照されることにより本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は検出試薬に関し、より詳細には、検出試薬を用いて1級アミド化合物を検出するための検出装置および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
水不足の問題および工業用水の需要のため、世界中の全ての国が再生水の開発に積極的に取り組み、徐々にこれを工業用水として導入するようになっており、人々の生活への影響を低減している。台湾を例にとると、2021年、南台湾サイエンスパークでは、年々規模が拡大する投資のため、そして工業用水の需要の増加、地方の貯水能力の不足、および水不足により引き起こされ得る生産プロセスの停止および生産能力の低下の回避に対応するべく、1日に40000トンをこえる再生水が使用されている。台湾のハイテク再生水プラントは、実際の工業用水の要求仕様に対応している。再生水は、それが使用できるようになる前に、21項目の試験規格を満たさなければならない。それらのうち、「尿素」は、中性の小分子である(分子量がわずか60)ため、現在の膜技術を用いて除去することはできない。水質試験項目において、尿素は検出および除去が最も困難な項目である。尿素について再生水の規格は5ppbと定められている。水中の尿素濃度が5ppbを超えると、液浸リソグラフィ技術を用いるフォトリソグラフィプロセスはT−topping現象が生じてしまうが、それは製品の線幅に影響を及ぼし、かつ半導体製造において問題を起こしてしまう。よって、水―尿素検出システムの開発は、半導体の上流および下流の産業技術の発展、例えば、給水端における再生水プラント、純水を用いる半導体グレードの特殊化化学薬品、超純水システムのベンダーおよびサプライチェーン等にとって、非常に重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
よって、再生水、製造工程回収水、純水、および廃水中における尿素を検出する新規方法が早急に求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の1実施形態は、触媒とキサントヒドロールとを反応させることにより形成される検出試薬であって、触媒が担体に担持された有効成分を含み、有効成分にはPt、Ru、Rh、またはこれらの組み合わせが含まれる、検出試薬を提供する。
【0006】
本開示の1実施形態は、1級アミド化合物の検出方法であって、試料を検出試薬に対して準備し、試料中の1級アミド化合物が検出試薬と反応して生成物を形成するようにするステップと、生成物を分離すると共に、生成物の性質を検出して、試料中の1級アミド化合物の濃度を確認するステップと、を含み、検出試薬は、触媒とキサントヒドロールとを反応させることにより形成されており、触媒は担体に担持された有効成分を含み、かつ有効成分にはPt、Ru、Rh、またはこれらの組み合わせが含まれる、1級アミド化合物の検出方法を提供する。
【0007】
本開示の1実施形態は、検出装置であって、試料ソースと、試料ソースと接続して試料を受ける混合装置であって、試料中の1級アミド化合物と反応して生成物を形成する検出試薬を含む混合装置と、混合装置と接続して生成物を分離する分離装置と、分離装置と接続して生成物の性質を検出すると共に試料中の1級アミド化合物の濃度を確認する分析装置とを含み、検出試薬は、触媒とキサントヒドロールとを反応させることにより形成されており、触媒は担体に担持された有効成分を含み、かつ有効成分にはPt、Ru、Rh、またはこれらの組み合わせが含まれる、検出装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】1実施形態における検出装置の概略図である。
【
図2】1実施形態において、尿素を含有する試料を異なる検出試薬と反応させ、液体クロマトグラフィーカラムにより分離した後に測定された質量スペクトルである。
【
図3】1実施形態において、尿素含有試料を検出試薬と反応させて7日間静置した前と後に、液体クロマトグラフィーカラムにより分離し、測定された蛍光スペクトルである。
【
図4】1実施形態において、尿素含有試料をHCl触媒下でキサントヒドロールと反応させて12時間静置した前と後に、液体クロマトグラフィーカラムにより分離し、測定された蛍光スペクトルである。
【
図5】1実施形態において、尿素含有試料を検出試薬に150時間連続で通してから、液体クロマトグラフィーカラムにより分離した後に測定された信号の積分面積を示している。
【
図6】1実施形態において、異なる濃度の尿素含有試料を検出試薬に通してから、液体クロマトグラフィーカラムにより分離した後に測定された信号の積分面積を示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の詳細な記載において、説明の目的で、開示される実施形態が十分に理解されるよう、多数の特定の詳細が記載される。しかしながら、これら特定の詳細がなくとも、1つまたはそれ以上の実施形態が実施可能であることは、明らかであろう。
【0010】
本開示の1実施形態は、触媒とキサントヒドロールとを反応させることにより形成される検出試薬を提供する。一般に、キサントヒドロールの使用量は触媒よりもはるかに多い。例えば、キサントヒドロールを溶媒中に溶解して溶液を形成することができ、次いでその溶液を触媒と混合して、触媒とキサントヒドロールとを反応させて検出試薬を形成する。前記溶媒には、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、触媒と反応しない他の溶媒、またはこれらの組み合わせが含まれるが、これに限定されるものではない。キサントヒドロールの構造は次のとおりである。
【0012】
前記触媒は、担体に担持された有効成分を含む。例えば、有効成分にはPt、Ru、Rh、またはこれらの組み合わせが含まれるが、これに限定されるものではない。担体には、炭素材、シリカ、アルミナ、または炭酸カルシウムが含まれるが、これに限定されるものではない。いくつかの実施形態において、炭素材は、ココナッツの殻、VulcanXC−72、またはAC01を含む異なる原料から作られる活性炭であってよいが、これに限定されるものではない。いくつかの実施形態において、有効成分はPtであってよく、かつ担体は炭素材、例えば活性炭であってよい。いくつかの実施形態において、担体の粒径d50は3μmから3mmであり、例えば、15μmから80μm、18μm、40μm、または70μmであるが、これに限定されるものではない。担体の比表面積は7m
2/gから1500m
2/g、例えば100m
2/gから1200m
2/g、110m
2/g、400m
2/g、または900m
2/gであるが、これに限定されるものではない。担体の比表面積が小さすぎると、触媒の活性が低下し得る、つまり、キサントヒドロールと反応して検出試薬を形成する効果が良好でなくなる。担体の比表面積が大きすぎると、担体の強度が低下し、崩壊し易くなる。いくつかの実施形態において、有効成分と担体との重量比は、0.5:99.5から80:20、例えば、0.5:99.5から40:60、70.9:29.1、または76.6:23.4であるが、これに限定されるものではない。有効成分の比率が低すぎると、触媒の活性が不十分となる。有効成分の比率が高すぎると、触媒効果が低減し得る。なお、強酸、例えばHCl、C
2HF
3O
2、HNO
3、H
2SO
4、または他の強酸が、尿素とキサントヒドロールとの反応の触媒として用いられることもあるという点に留意されたい。その反応は次のとおりである。
【0014】
本開示で形成される検出試薬、および検出試薬と尿素との反応は次のとおりである。
【0016】
尿素に加え、前記検出試薬は、次のような他の1級アミド化合物と反応させることができる、ということが理解される。
【0018】
式中、Rは水素原子または有機基を示す。強酸を触媒として用いる反応と比較して、本開示の実施形態では、先ずは触媒を用いてキサントヒドロールと反応させ検出試薬を形成してから、その検出試薬を1級アミド化合物と反応させることにより形成される生成物は、より安定している。強酸を触媒として用いる反応生成物は、一定の時間(例えば12時間)の後に大量の副産物を生成し、検出試薬と1級アミド化合物とが反応した後の生成物は長時間(例えば7日)安定に保存することができる。また、生成物を形成する検出試薬と尿素との反応時間(1分未満)は、強酸触媒下における尿素とキサントヒドロールとの反応時間(約30分)に比べてはるかに短い。
【0019】
本開示の1実施形態は、試料を検出試薬に対して準備し、試料中の1級アミド化合物が検出試薬と反応して生成物を形成するようにするステップを含む1級アミド化合物の検出方法を提供する。1実施形態において、1級アミド化合物は尿素であり得る。他の実施形態において、1級アミド化合物には、尿素、グルタミン、アスパラギンまたはこれらの組み合わせが含まれるが、これに限定されるものではない。いくつかの実施形態において、試料には水、例えば、再生水、製造工程回収水、純水または廃水が含まれるが、これに限定されるものではない。1級アミド化合物が尿素であるとき、試料中における尿素の検出限界(LOD)は3ppb以下までになり得る。現在、台湾における再生水の尿素の規格は5ppbであるため、本開示の実施形態により、再生水中の尿素が給水規格を満たしているか確認するのに十分である。
【0020】
いくつかの実施形態において、検出試薬はカラムに充填されてよく、試料はカラム中の検出試薬を溶出することができ、よって試料中の1級アミド化合物 (例えば尿素)が検出試薬と反応して生成物が形成されることとなる。検出試薬は低極性であるため、極性の試料(例えば純水)にキサントヒドロールを加えて、試料の極性を検出試薬の極性に近いものとし、両者間の極性の差が大きくてスムーズに溶出できなくなるのを回避する必要がある。試料が低極性のものである場合は、それをカラムに直接加えて、低極性の検出試薬と反応させることができる。
【0021】
前記カラムを反応に用いる場合、試料がカラムに入ってからカラムを離れるまでの時間を、カラムのサイズ、カラムの長さ、および試料の流速により、例えば1分未満に調整することができる。上述の時間は、試料中の尿素を検出試薬と反応させて生成物を形成するのに十分な時間である。時間が短すぎる、例えば溶出速度が速すぎると、尿素の反応により形成される生成物の比率が過度に低くなり、その性質を分析することができなくなる。一方、時間が長すぎる、例えば溶出速度が低速すぎると、分析時間が延び、検出効率が低下してしまう。
【0022】
次いで、生成物を分離し、生成物の性質をテストして、試料中の1級アミド化合物の濃度を確認する。例えば、カラムから流出する液体は主に、水(または他の溶媒)、キサントヒドロールおよびその誘導体、ならびに上述の生成物を含んでいる。キサントヒドロールの比率は生成物に比べてはるかに大きいため、カラムから流出する液体は、キサントヒドロールによる生成物の信号に対するカバレッジまたは干渉を避けるべく、その性質を測定する前に分離しておく必要がある。いくつかの実施形態において、液体クロマトグラフィーを生成物の分離ステップに用い、かつ生成物の性質の分析ステップは、生成物の蛍光強度、分子量、または紫外線吸収強度を分析することを含む。いくつかの実施形態において、上記測定は、カラム中の検出試薬を変えることなく150時間続けることができ、よって検出プロセスが簡便化され得る。
【0023】
いくつかの実施形態において、検出試薬をカラム中に充填することなく、試料を検出試薬と直接混合すると共に反応させて生成物を形成することができる。この方法を採用する場合、例えば触媒等の固体は、反応後ろ過により除去しなければならず、次いで、反応後に、混合物(水または他の溶媒、キサントヒドロールおよびその誘導体、ならびに生成物を含む)から生成物を分離し、生成物の性質を分析する。反応後の生成物は長時間安定に存在できるため、分離および分析の前に長時間保存しておくことができ、かつその一部を後日の参照のために保管しておくことができる。
【0024】
本開示の1実施形態は、
図1に示される検出装置100を提供する。検出装置100は試料ソース110および混合装置130を含み得る。混合装置130は、試料ソース110と接続して試料を受け、かつ混合装置130は、試料中の1級アミド化合物と反応して生成物を形成する前記検出試薬を含んでいる。いくつかの実施形態において、混合装置130は、検出試薬を充填させるカラムであり得る。一般に検出試薬は低極性であるため、試料ソース110中の試料にキサントヒドロールを加えることで、試料の極性を検出試薬の極性に近いものとし、生成物を形成するための後続の反応が容易に行われるようにすることができる。
【0025】
検出装置100は、混合装置130と接続して、生成物を分離する分離装置150も含み得る。いくつかの実施形態において、分離装置150は液体クロマトグラフィーカラムであってよい。検出装置100は、分離装置150と接続して、生成物の性質(例えば、蛍光強度、分子量、または紫外線吸収強度)を検出すると共に、試料中の1級アミド化合物の濃度を確認する分析装置170も含み得る。例えば、分析装置170は、蛍光分光計、質量分析計、または可視光−紫外線吸光度計等であってよい。
【0026】
本開示の上述した内容ならびにその他の目的、特徴および利点を理解し易くするため、添付の図面と対応させながら、好ましい実施例を詳細に記載する。
【0029】
Pt、Ru、およびRhをそれぞれ活性炭に担持させ、Pt/C(担持量5%、比表面900m
2/g、Strem Chemicals、カタログ番号78-1611)触媒、Ru/C(担持量5%、Strem Chemicals、カタログ番号 44-4050)触媒、およびRh/C(担持量5%、Sigma Aldrich、カタログ番号 206164)触媒を形成した。それら触媒をカラムに充填した後、キサントヒドロールおよびアルコールの溶液をそのカラムに加え、触媒とキサントヒドロールとを15分反応させて、検出試薬を得た。
【0030】
調製済みの試料(5ppbの尿素および0.4%(w/v)キサントヒドロールを含む溶液)を流速1mL/分でカラム中に加え、試料中の尿素を検出試薬と反応させて、次の生成物を形成した。
【0032】
試料がカラムに入ってからカラムを離れるまでの時間は1分未満であり、それを尿素と検出試薬との反応に要される時間とみなすことができる。次いで、カラムから流出した液体(主に水、キサントヒドロールおよびその誘導体、ならびに前記生成物を含む)を、液体クロマトグラフィーカラムに通し、生成物の信号を蛍光分光計により測定した。生成物信号の保持時間は約5分であった。
図2に示されるように、Pt/C、Ru/C、およびRh/Cはいずれも生成物信号を有しており、Pt/Cの生成物信号がとりわけ顕著であった。
【0033】
Pt/Cカラムから流出した液体を7日間静置してから、液体クロマトグラフィーカラムに通し、生成物信号を蛍光分光計で測定した。その測定の結果が
図3に示されており、検出試薬との反応後に形成された生成物が、大量の副産物を生成すること無く、長時間安定に保存できることが見て取れる。このように、液体クロマトグラフィーカラムおよび/または蛍光分光計のスケジュール(schedule)がつまっている場合、すぐに測定しなくても、生成物を一定時間保存しておくことができる。また、カラムから流出した液体の一部は、後日の参照に保存しておくことができる。
【0035】
調製済みの試料(5ppbの尿素および0.4%(w/v)キサントヒドロールを含む溶液)を30分間静置してから、液体クロマトグラフィーカラムに通し、生成物の信号を質量分析計により測定した。
図2に示されるように、約5分の保持時間に生成物信号は現れなかった。上述から、触媒が無ければ、尿素とキサントヒドロールはほとんど反応しないということが見て取れる。
【0037】
調製済みの試料(5ppbの尿素および0.4%(w/v)キサントヒドロールを含む溶液)に1.5M HClを加えてから、液体クロマトグラフィーカラムに通し、生成物の信号を質量分析計により測定した。約5分の保持時間における生成物信号の強度は低い。
【0038】
調製済みの試料(5ppbの尿素および0.4%(w/v)キサントヒドロールを含む溶液)に1.5M HClを加えて30分反応させてから、液体クロマトグラフィーカラムに通し、生成物の信号を質量分析計により測定した。
図2に示されるように、約5分の保持時間における生成物信号の強度は高い。上述から、HCl触媒下、尿素とキサントヒドロールとが反応して生成物を形成するのに要される反応時間は30分にもなり、本開示の1実施形態における検出試薬と尿素との反応に要される時間よりはるかに長いということが見て取れる。
【0039】
試料をHClと30分反応させて生成物を形成し、12時間静置した後、その生成物を液体クロマトグラフィーカラムに通し、生成物信号を蛍光分光計により測定した。その測定の結果は
図4に示されるとおりである。HCl触媒下で尿素とキサントヒドロールとを反応させた後、短時間後に大量の副産物(保持時間は約17.5分)が生成されたことが見て取れる。このように、上述の生成物は、反応後すぐに測定しなければならず、長時間保存することはできない。
【0041】
試料をカラムに150時間連続で通したことを除き、実施例1の検出試薬(Pt/C触媒を用いた)および試料は同様とした。カラムから流出した液体(主に水、キサントヒドロールおよびその誘導体、ならびに前記生成物を含む)を、液体クロマトグラフィーカラムに通し、
図5に示されるように、信号の積分値を蛍光分光計で約2分測定した。
図5から、上記システムの連続測定時間は150時間にも達し得るということがわかる。
【0043】
3ppb、5ppb、7ppb、5ppb、および3ppbの尿素を含むそれぞれの試料溶液(いずれも0.4%(w/v)のキサントヒドロールを含む)を、異なる時間に、順次カラムに通したことを除き、実施例1の検出試薬(Pt/C触媒を用いた)および試料は同様とした。カラムから流出した液体(主に水、キサントヒドロールおよびその誘導体、ならびに前記生成物を含む)を、液体クロマトグラフィーカラムに通し、
図6に示されるように、信号の積分値を蛍光分光計で約2分測定した。
図6から、上記検出システムが、試料中の0ppbから7ppbまでの尿素濃度の差異を識別できるということがわかる。
【0045】
Ptを活性炭に担持させ(比表面積900m2/g、Strem Chemicals、カタログ番号78-1611)、Pt/Cを形成した(担持量5%)。Pt/C 6mg、キサントヒドロール3mLおよび調製済みの試料(33ppmの尿素、グルタミン、アスパラギン溶液、および0.4%(w/v)のキサントヒドロールを含む)3mLを30分反応させ、試料中の1級アミド化合物が検出試薬と反応して、以下の生成物が形成されるようにした。
【0047】
混合物中の触媒等の固体を、反応後にろ過または遠心分離により除去してから、液体(水、キサントヒドロールおよびその誘導体、ならびに上記生成物を含む)を液体クロマトグラフィーカラムに通し、生成物の信号を蛍光分光計により測定した。生成物信号の保持時間は、順にアスパラギン約1.4分、グルタミン約1.6分、尿素約2.0分であった。上述から、検出試薬が尿素だけでなく、他の1級アミド化合物を検出するのにも利用可能であるということが見て取れる。
【0048】
当業者には、開示された実施形態に様々な修飾および変更を加え得るということが明らかであるだろう。本明細書および実施形態は単に例示と見なされるよう意図されており、本開示の真の範囲は、以下の特許請求の範囲およびそれらの均等物によって示される。
【符号の説明】
【0049】
100…検出装置
110…試料ソース
130…混合装置
150…分離装置
170…分析装置
【外国語明細書】