【課題】中詰材に起因した袋本体の損傷問題と、吊りロープの吊上げ時における袋本体の網目の引き裂き問題を同時に解消できる、土木工事用袋体および土木工事用構造体を提供すること。
【解決手段】メッシュ状の袋本体21と、袋本体21の開口部の近傍の網目に挿通して取り付けた口絞りロープと、口絞りロープの下方の網目に挿通して取り付けた無端構造の吊りロープ27と、吊りロープ27の下方の網目に挿通して取り付けた中間口絞りロープ28とを具備し、中詰材30を収容しない袋本体21の上半の未収容部25の一部に中間口絞りロープ28を取り付け、吊りロープ27の吊上げ時に、中間口絞りロープ28を取り付けた未収容部25の一部にくびれを形成するようにした。
内部に中詰材を収容可能なメッシュ状の袋本体と、前記袋本体の開口部を開閉する口絞りロープと、前記袋本体の上部の網目に挿通して取り付けた無端構造の吊りロープとを具備し、前記袋本体が袋本体の下半で定量の中詰材を収容可能な収容部と、前記袋本体の上半で中詰材を収容しない未収容部とからなる土木工事用袋体であって、
前記未収容部の一部で、吊りロープの下方位置に中間口絞りロープを取り付け、
前記吊りロープの吊上げ時に、中間口絞りロープを取り付けた未収容部の一部にくびれを形成するように構成したことを特徴とする、
土木工事用袋体。
前記くびれを境にして未収容部の下半に中詰材の天端面の周縁部を包持可能な肩部を形成すると共に、未収容部の上半に首部を形成し、該首部に口絞りロープと吊りロープとを取り付けたことを特徴とする、請求項1に記載の土木工事用袋体。
前記吊りロープの吊上げ時に、未収容部の首部の吊り角度が、未収容部に中間口絞りロープを取り付けないで吊上げたときの袋本体の頂部の吊り角度より小さい関係にあることを徴とする、請求項2または3に記載の土木工事用袋体。
【背景技術】
【0002】
土木工事用袋体に中詰材を収容した土木工事用構造体は周知である。
一般的な土木工事用袋体は、メッシュ状のネット生地で製作した袋本体と、袋本体の開口部の近くの網目に周回させて取り付けた無端構造の吊りロープと、袋本体の開口部の口開きを防止する口絞りロープとを具備している(特許文献1)。
袋本体は全体が均質強度と均一寸法の網目を有していて、中詰材の容量(1〜4t)に応じて外形寸法が異なる袋本体を使い分けしている。
【0003】
図8を参照して特許文献1に記載の土木工事用袋体50を使用した土木工事用構造体の製造方法について説明する。
吊りロープ52付きの袋本体51を大きく口開きして型枠40内に収容した状態で、袋本体51の内部に中詰材30を投入する。
中詰材30の投入を終えたら、袋本体51の網目に挿通してある吊りロープ52の途中を袋本体51の複数箇所からループ状に引出し、吊りロープ52の複数箇所をクレーン等で吊上げて型枠40から取り出す(
図8(A),(B))。
この際、軽く吊上げた状態の袋本体51の頂部または吊りロープ52の根元部に口絞りロープ53を巻き付けて開口部を閉じる。
完成した土木工事用構造体50を所定の現場へ運搬移動して敷設する(
図8(C))。
【0004】
完成した土木工事用構造体50を現場へ敷設すると中詰材30の全体が水平方向に広がり、所望の高さを確保し難いという難点がある。
【0005】
特許文献2には、袋本体の胴部に周回させて取り付けた補強帯により中詰材の高さを一定に規制することが開示されている。
特許文献3には、中詰材の収容後に吊りロープを吊上げた状態で、中詰材の天端付近に取り付けた調整ロープの長さ調整を行うことで中詰材を収容した袋本体の収容部の高さと外周寸法を調整することが開示されている。
【0006】
特許文献4には、吊りロープの挿通部位の網目寸法のみを他の部位より大きく編成することで、吊りロープの吊上げ時に吊りロープを挿通した網目の引き裂きを防止した土木工事用袋体が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の土木工事用袋体または土木工事用構造体には次の幾つかの問題点がある。
<1>特許文献1に記載の土木工事用袋体50は、中詰材30の収容が袋本体51の全容積の1/2程度であり、残りの未充填領域のネット生地は自由な変形が可能である。
そのため、土木工事用構造体の転地時に、袋本体51の内部で中詰材30が自由に動いてしまいネット生地に摩耗または切創に起因した破れが生じ易い。
<2>袋本体の下半に補強帯を取り付けた特許文献2に記載の土木工事用袋体は、袋本体の下半に収容した中詰材の側面を締め付けるだけであり、天端(上面)に位置する中詰材の自由な動きを規制できる構造になっていない。
しかもこの土木工事用袋体は、袋本体の上半の未収容領域の面積が大きいため、転地時や段積み時等において、天端の中詰材が補強帯を簡単に乗り越えてネット生地に破れが生じ易い。
<3>袋本体に調整ロープを取り付けた特許文献3に記載の土木工事用袋体は、調整ロープが中詰材を収容した袋本体の収容部の高さと外周寸法の調整機能を有するだけで、天端(上面)に位置する中詰材の自由な動きを規制できる構造になっていない。
そのため、転地時等に天端の中詰材が転がり落ちて未収容領域のネット生地が破れ易い。
<4>中詰材の充填量を変えずに中詰材の自由な動きを規制する方法として、袋本体の外形寸法を小さくすることが考えられる。
袋本体の外形寸法を小さくすれば袋本体の未充填領域の面積が減り、理論上は中詰材の自由な動きを規制できるが、実際には袋本体の外形寸法を小さくすると、中詰材の充填作業がし難くなるだけでなく、中詰材が漏れ出ないように袋本体の開口部を小さく絞り込む作業が非常に困難となる。
<5>従来の土木工事用袋体は、袋本体の網目が均一寸法であるため、吊りロープを吊上げるときに吊りロープを挿通した網目が横向きに引っ張られて網目を囲む編糸が引き裂かれて切れてしまう問題、いわゆる股裂き問題が生じ易い。
<6>吊りロープによる網目の引き裂き問題を回避するには、
図8(B)に示した未収容領域の吊り高さH
0を長くして袋本体51の頂部の吊り角度θ
0を小さくすることが知られている。袋本体51の頂部の吊り角度θ
0が小さくなれば吊りロープ52を挿通した網目にかかる引裂力を小さく抑えられる。
その反面、未収容領域の吊り高さH
0を長くすると、袋本体51の外形寸法が大きくなってコストが嵩むうえに、袋本体30内で中詰材が動き易くなり上記した<1>の問題が生じ易くなる。
このように従来の土木工事用袋体は、製造コストの問題と袋本体の損傷問題を同時に解決することができなかった。
<7>吊りロープによる網目の引き裂き問題を回避する他の手段としては、吊りロープの挿通部位の網目寸法のみを他の部位より大きく編成した特許文献4に記載の土木工事用袋体を使用することが知られている。
部分的に網目寸法を変えてネット生地を製作するには、高度な製造技術を必要とするためにコストが嵩む。
<8>中詰材を収容した袋本体の外周を縦横方向に向けて複数のロープやベルトで結束すれば、中詰材の自由な動きを完全に規制して袋本体の損傷問題を解消できるが、中詰材の全体を強固に締め付けると土木工事用構造体が本来有していた屈撓性が犠牲になる。
このように従来の土木工事用袋体は、中詰材に起因した袋本体の損傷問題と屈撓性の両立が困難であった。
【0009】
本発明は以上の点に鑑みて成されたもので、その目的とするところは、中詰材に起因した袋本体の損傷問題と、吊りロープの吊上げ時における袋本体の網目の引き裂き問題を同時に解消しつつ、ネット生地の使用量を抑えて土木工事用袋体の製造コストを低減できる、土木工事用袋体および土木工事用構造体を提供することにある。
さらに本発明の他の目的は、中詰材の大きな転動を抑制しつつ、敷設現場の不陸を吸収できる程度の屈撓性を確保できる土木工事用袋体および土木工事用構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、内部に中詰材を収容可能なメッシュ状の袋本体と、前記袋本体の開口部を開閉する口絞りロープと、前記袋本体の上部の網目に挿通して取り付けた無端構造の吊りロープとを具備し、前記袋本体が袋本体の下半で定量の中詰材を収容可能な収容部と、前記袋本体の上半で中詰材を収容しない未収容部とからなる土木工事用袋体であって、前記未収容部の一部で、吊りロープの下方位置にに中間口絞りロープを取り付け、前記吊りロープの吊上げ時に、中間口絞りロープを取り付けた未収容部の一部にくびれを形成するように構成した。
本発明の他の形態において、前記くびれを境にして未収容部の下半に中詰材の天端面の周縁部を包持可能な肩部を形成すると共に、未収容部の上半に首部を形成し、該首部に口絞りロープと吊りロープとを取り付ける。
本発明の他の形態において、前記吊りロープの吊上げ時に、未収容部の首部の吊り角度が肩部の吊り角度より小さい関係にある。
本発明の他の形態において、前記吊りロープの吊上げ時に、未収容部の首部の吊り角度が、未収容部に中間口絞りロープを取り付けないで吊上げたときの袋本体の頂部の吊り角度より小さい関係にある。
本発明の他の形態において、前記吊りロープが口絞りロープと中間口絞りロープの間に位置している。
本発明は、中詰材を収容した土木工事用構造体であって、前記した何れかの土木工事用袋体と、前記土木工事用袋体に収容した中詰材とを具備し、中間口絞りロープと、中間口絞りロープの取付位置を境にして未収容部の下半に形成した肩部とにより中詰材の天端面の周縁部を包持するように構成する。
【発明の効果】
【0011】
本発明は少なくともつぎのひとつの効果を奏する。
<1>中間口絞りロープを取り付けた袋本体の未収容部の一部にくびれを形成するだけで、未収容部の吊り高さを小さくしつつ、吊りロープを挿通した袋本体の頂部の吊り角度を小さくできる。
したがって、袋本体の製作に要するネット生地の使用量を削減して袋本体を低コストに製作できて、吊りロープを挿通した網目の引き裂きも確実に抑止できる。
<2>袋本体と中間口絞りロープの組み合わせにより、中詰材の全体を包持することができる。
したがって、土木工事用構造体の製作時、転地時および敷設後において、袋本体の包持作用により中詰材の自由な動きを抑制できるので、中詰材の自由な動きに起因したネット生地の破れを効果的に軽減できる。
<3>中間口絞りロープが未収容部の肩部と協働して中詰材の天端面の周縁部を包持するので、中詰材の崩れ落ちも効果的に抑制できる。
<4>中間口絞りロープが未収容部の肩部と協働して中詰材のこぼれ出しを抑制するので、開口部に最も近い位置に設けた口絞りロープの負担を著しく軽減できる。
そのため、口絞りロープを安価な低強度ロープで代用することも可能であり、口絞りロープの取付作業と口絞り作業を簡易化できる。
<5>中詰材の包持性と、敷設現場の不陸を吸収できる程度の屈撓性の併有が可能な土木工事用袋体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に図面を参照しながら本発明について説明する。
【0014】
<1>土木工事用構造体
図1,2を参照して説明すると、土木工事用構造体10は、土木工事用袋体20(以下「袋体20」)と、袋体20に収容した中詰材30とよりなる。
【0015】
<2>袋体
袋体20は、中詰材30を充填するメッシュ状の袋本体21と、袋本体21の開口部22の最も近い位置に取り付けた口絞りロープ26と、袋本体21の開口部22の近くで、口絞りロープ26の下方に取り付けた無端構造の吊りロープ27と、袋本体21の開口部22から離れた位置で、吊りロープ27の下方に取り付けた中間口絞りロープ28とを具備する。
3本の各ロープ25〜27は、袋本体21に対して開口部22から底部23側へ向けて、口絞りロープ26、吊りロープ27、中間口絞りロープ28の順序で取り付けてある。
【0016】
<2.1>袋本体
袋本体21は開口部22と底部23とを有するネット生地製の有底袋である。
袋本体21は中詰材30を収容する収容部24と、中詰材30を収容しない未収容部25とからなる。
【0017】
<2.1.1>ネット生地
本発明ではネット生地の無駄を減らすため、中詰材30の収容量(例えば1m
3〜4m
3)に応じて製作した袋本体21を使用し、袋本体21は中詰材30の収容量に対応した必要最小面積のネット生地を用いて製作する。
袋本体21のネット生地としては、例えばポリエステル(1500d/20本、強度100kgf/2脚、または破断伸度50%)等の合成繊維糸を二重に編成した極太ラッセル網地を使用できる。
ネット生地の網目はその展開形状が四角形または六角形を呈していて、全体が均一の網目である。網目は中詰材30が抜け出ない寸法に設定してあり、一般的な網目寸法は25〜50mmである。
【0018】
<2.1.2>袋本体の収容部と未収容部
本発明では袋本体21に中詰材30の収容範囲を収容部24と定義し、収容部24の真上で中詰材30の未収容範囲を未収容部25と定義する。
さらに中間口絞りロープ28の取付位置を境にして未収容部25の下半を肩部25a、未収容部25の上半を首部25bと定義して説明する。
首部25bの上部に開口部22を形成し、開口部22の周囲に口絞りロープ26と吊りロープ27を予め取り付けておく。
【0019】
<2.2>口絞りロープ
口絞りロープ26は吊りロープ27の上方に位置し、袋本体21の開口部22を開閉するためのロープであり、開口部22に近い位置の網目に挿通して取り付ける。
口絞りロープ26を吊りロープ27の上方に位置させたのは、吊りロープ27の影響を受けずに開口部22を閉じるためと、開口部22を囲んだネット生地の収束箇所が袋本体21の上方へ出っ張るのを回避するためである。
口絞りロープ26を網目に挿通するときに適宜目飛ばしを行うと、口絞りロープ26の取付作業性と、開口部22の閉鎖性がよくなる。
【0020】
<2.3>吊りロープ
吊りロープ27は無端構造のロープであり、口絞りロープ26と中間口絞りロープ28の間の網目に挿通して取り付けてある。
【0021】
<2.4>中間口絞りロープ
中間口絞りロープ28は未収容部25の一部にくびれを形成して中詰材30を包持する機能と口絞りロープ機能を併有した複合ロープである。
中間口絞りロープ28は未収容部25の中間部、すなわち吊りロープ27の取付位置と中詰材30の天端との間の網目に挿通して取り付ける。
【0022】
中間口絞りロープ28を取り付けて未収容部25の一部にくびれを形成するのは、吊りロープ27の吊上げ時に袋本体21(首部25)の頂部の吊り角度を小さくして吊りロープ27を挿通した網目の引き裂きを防止するためと、土木工事用構造体10の敷設後に未収容部25の肩部25aで中詰材30の天端面の周縁部を弾力的に包持するためである。
【0023】
未収容部25に対する中間口絞りロープ28の取付高さとくびれ寸法(くびれ径)を選択することで、袋本体21の頂部の吊り角度、未収容部25の肩部25aによる中詰材30の天端面の周縁部の包持面積、および中間口絞りロープ28の負担荷重を調整できる。
中間口絞りロープ28の取付高さとくびれ寸法は、袋本体21の外形寸法と中詰材30の収容量等を考慮して適宜選択する。
【0024】
<3>中詰材
中詰材30は、例えば玉石等の自然骨材、コンクリートガラ、各種廃棄物の焼成体等を使用できる。
根固工に使用する場合、直径150mm程度の中詰材30を使用するが、中詰材30の大きさは使途に応じて適宜選択する。
【0025】
[土木工事用構造体の製作方法]
つぎに
図3A、
図3Bを参照しながら袋体20を使用した土木工事用構造体10の製作方法について説明する。
【0026】
<1>袋本体のセット(
図3A(A))
上下を開放し、逆円錐台形(すり鉢形)を呈する型枠40を準備する。
型枠40の内部に袋本体21を収容する。大きく口開きした袋本体21の開口部21近くを外方へ折り返して型枠40の上口へ被せる。
【0027】
<2>中詰材の投入(
図3A(A))
バックホウ等の重機を用いて袋本体21に所定量の中詰材30を投入する。
【0028】
<3>中間口絞りロープの絞り込み(
図3A(B))
中詰材30の投入を終えたら、型枠40内にセットしたまま、未収容部25に取り付けた中間口絞りロープ28を収容部23の径より小さくなるように所定の周長に絞り込み、中間口絞りロープ28の両端が容易に解けないように結束等で固定する。
上記した中間口絞りロープ28の「所定の周長」とは、土木工事用構造体10の完成後に吊りロープ27を挿通した網目の引き裂き防止機能と、未収容部25の肩部25aによる中詰材30の天端面の包持機能を発揮し得るくびれの周長を意味する。
中間口絞りロープ28の絞込み作業は未収容部25が弛んだ状態で行うので、小さな力で絞り込みができる。
なお、中間口絞りロープ28は予め袋本体21に取り付けておいてもよいし、中詰材30の投入後に現場で袋本体21に後付けしてもよい。
【0029】
<4>口絞りロープの絞込み(
図4)
未収容部25が弛んだ状態で、口絞りロープ26を絞り込んで袋本体21の開口部22を閉じる。
口絞りロープ26が吊りロープ27の上方に位置するので、吊りロープ27の影響を受けずに開口部22を閉じることができる。
【0030】
なお、
図4では開口部22の位置を示すために開いた状態で示しているが、実際には内部の中詰材30が漏出しない程度まで開口部22を閉じる。
袋本体21の開口部22を閉じた後、解けないように口絞りロープ26の引き出し部分を結んでおく。
なお、口絞りロープ26と中間口絞りロープ28の絞り作業はどちらを先に行ってもよい。
【0031】
<5>脱型(
図3B(C))
袋本体21の網目に挿通した吊りロープ27の途中を袋本体21の複数箇所(例えば6箇所)からループ状に引出し、引き出した吊りロープ27の複数個所をクレーン等のフック29に吊り掛ける。
吊りロープ27を吊上げて型枠40から取り出すことで土木工事用構造体10の製作を完了する。
完成した土木工事用構造体10は所定の現場へ運搬移動して敷設する(
図3B(D))。
【0032】
[土木工事用構造体の特性]
つぎに土木工事用構造体10の主要な特性について説明する。
【0033】
<1>未収容部の吊り角度
図5を参照して中間口絞りロープ28による未収容部25の吊り角度について説明する。
図5(A)は中間口絞りロープ28を設けずに吊りロープ27を通じて袋本体21を吊上げた対比形態を示し、(B)は未収容部25の一部に中間口絞りロープ28を取り付けて吊上げた本発明の形態を示している。
図5の(A)と(B)で示した袋本体21は同一寸法であり、中詰材30の収容量も同一とする。
【0034】
図5(A)に示した対比形態においては、中間口絞りロープ28を設けず吊りロープ27を通じて袋本体21を吊上げたときの吊り角度をθ
1、未収容部25の吊り高さをH
1とする。
【0035】
図5(B)に示した本発明の形態では、吊りロープ27を吊上げると、袋本体21の未収容部25の全体が均一な円錐形になろうとするが、中間口絞りロープ28が未収容部25の拡径を規制するために、未収容部25の一部にくびれができる。
未収容部25の一部にくびれができることで、未収容部25に首部25bの吊り角度θ
2と、肩部25aの吊り角度θ
3のふたつの吊り角度ができる。
【0036】
これら複数の吊り角度θ
1〜θ
3の関係はつぎのとおりである。
〔関係1〕首部25bの吊り角度θ
2は肩部25aの吊り角度θ
3より小さい(θ
2<θ
3)。
〔関係2〕首部25bの吊り角度θ
2は対比形態の吊り角度θ
1より小さい(θ
2<θ
1)。
〔関係3〕対比形態の吊り角度θ
1は肩部25aの吊り角度θ
3より小さい(θ
1<θ
3)。
これによりθ
2<θ
1<θ
3の関係が成り立つ。
【0037】
また未収容部25の吊り高さを対比すると、未収容部25の一部に中間口絞りロープ28を設けてくびれを設けた分だけ、本発明の未収容部25の吊り高さH
2が対比形態の吊り高さH
1と比べて短くなる(H
1>H
2)。
【0038】
対比形態では袋本体21の製作に要するネット生地の使用量を削減するため、未収容部25の吊り高さH
1を小さくすると、吊り角度θ
1が大きくなって、吊りロープ27を挿通した網目に引き裂きを生じるおそれがある。
【0039】
対比形態では未収容部25の吊り角度θ
1と吊り高さH
1が互いに影響し合う関係である。
これに対し本発明では、首部25bの吊り角度θ
2と未収容部25の吊り高さH
2が影響し合わないので、未収容部25の吊り高さH
2の影響を受けずに首部25bの吊り角度θ
2を小さくできる。
したがって、本発明では、未収容部25の吊り高さH
2を小さくしつつ、吊りロープ27を挿通した首部25bの吊り角度θ
2を小さくできるので、袋本体21の製作に要するネット生地の使用量を削減でき、さらに吊りロープ27を挿通した網目の引き裂きも確実に抑止できる。
【0040】
<2>未収容部のくびれについて
未収容部25にくびれを形成する方法として、吊りロープ27の吊上げ後に中間口絞りロープ28を締め付ける方法が考えられる。
このくびれの形成方法は、吊上げ初期に吊りロープ27を挿通した袋本体21の網目に引き裂きの問題が生じることと、テンションがかかった未収容部25の締付けに大きな締付力を必要とするといった問題を内包している。
【0041】
そこで本発明では、吊上げ前に未収容部25の一部に拡径不能に中間口絞りロープ28を取り付けておき、吊上力を利用して未収容部25の一部にくびれを形成するようにした。
したがって、本願発明ではくびれを形成するために中間口絞りロープ28を大きな力で締め付ける必要がなくなり、さらに吊上げ初期において吊りロープ27を挿通した網目に大きな引き裂き力が生じない。
【0042】
<3>吊上げ時における中間口絞りロープの荷重負担について
図6は中詰材30の充填後に中間口絞りロープ28をきつく締め付けて、天端面を含めて中詰材30の全体を袋本体21で締め付けて構成した対比形態を示している。
この対比形態では、中詰材30が邪魔になって作業員の力だけで中間口絞りロープ28をきつく締め付けることが困難であるうえに、吊上げ時における中間口絞りロープ28の拡径方へ向けた荷重負担が極めて大きくなる。
【0043】
本発明では
図3B(C)に示したように、吊上げ前は未収容部25にテンションがかかっていないので中間口絞りロープ28に拡径力は生じない。
図3B(D)に示したように、吊りロープ27を吊上げたときにはじめて中間口絞りロープ28に拡径力が発生する。
吊りロープ27を吊上げたときに、未収容部25の肩部25aのネット生地の広がりに多少の余裕ができ、ネット生地の余裕によって
図6の対比形態と比べて中間口絞りロープ28の拡径方へ向けた荷重負担が小さくなる。
【0044】
<4>中詰材の包持作用
土木工事用構造体10の敷設状態を示した
図7を参照しながら、袋本体21による中詰材30の包持作用について説明する。
【0045】
土木工事用構造体10を着床したときに中詰材30群が水平方向に広がろうとする。
中間口絞りロープ28が未収容部25の肩部25aを構成するネット生地の拡張を一定範囲に制限するため、未収容部25の肩部25aは中詰材30の天端面の周縁部を被覆しながら弾性的に包持する。
このように本発明では、袋本体21と中間口絞りロープ28の組み合わせにより、袋本体21の収容部24と未収容部25の肩部25aのネット生地の弾力を活かして、中詰材30群の全体を包持することができる。
したがって、土木工事用構造体10の製作時、転地時および敷設後において、袋本体21の包持作用によって、中詰材30の自由な動きを抑制できるので、中詰材30に起因したネット生地の破れを効果的に軽減できる。
【0046】
中間口絞りロープ28は未収容部25の肩部25aと協働して中詰材30を包持するだけでなく、口絞りロープとしても機能する。
脱型時や転地時に天端面の中詰材30が崩れようとしても、中詰材30の天端面を覆う未収容部25の肩部25aが中詰材30の崩れ落ちを効果的に抑制する。
このように袋体20は、未収容部25の肩部25aが中詰材30の崩れ落ちを効果的に抑止するので、中詰材30の崩れ落ちに起因したネット生地の破れの問題も解消することができる。
【0047】
<5>土木工事用構造体の屈撓性について
図6に例示したように、中詰材30の全体を袋本体21で締め付けた対比形態では、中詰材30の締付け効果が大きいことから土木工事用構造体10の屈撓性が失われ、敷設面の起伏に十分に追従することができない。
【0048】
これに対して本発明では
図7に示したように、袋本体21の収容部24と、中間口絞りロープ28を取り付けた未収容部25の肩部25aとの協働によって中詰材30群の全体を弾力的に包持している。
そのため、土木工事用構造体10の屈撓性を保持できて、敷設面の起伏に追従することができる。
【0049】
<6>口絞りロープについて
既述したように中間口絞りロープ28は袋本体21に収容した中詰材30のこぼれ落ちを規制するので、口絞りロープ26の負担を著しく軽減できる。
そのため、口絞りロープ26を安価な低強度ロープで代用することも可能であり、口絞りロープ26を袋本体21の網目に挿通するときの目飛ばし数を大幅に増やして口絞りロープ26の取付作業と口絞り作業を簡易化できる。