【解決手段】機能層が積層された基材の機能層上に導電層を有する透明導電体であり、導電層は、金属ナノワイヤからなるネットワーク構造を有する導電成分と、ベンゾトリアゾール基含有のシランカップリング剤を有するマイグレーション抑制剤とが、マトリックス中に含有されており、機能層は、ポリエステル樹脂とアクリル樹脂とを主成分とすることを特徴とする透明導電体。
前記マイグレーション抑制剤の含有量は、前記マトリックス100重量部に対して5〜100重量部であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の透明導電体。
前記マイグレーション抑制剤は、ベンゾトリアゾール基含有のシランカップリング剤以外の複素環化合物、テルペン、ヒンダードフェノール、ホスフィン、チオエーテルのいずれか1種以上を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか記載の透明導電体。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明は以下の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲において種々の形態とすることができる。
【0016】
<透明導電体>
図1は、透明導電体の断面模式図である。
図1に示すように、透明導電体1は、機能層3が積層された基材2と、機能層3上に位置する導電層4と、を備える。
【0017】
<導電層>
導電層4は、複数の金属ナノワイヤ5からなるネットワーク構造を有する導電成分とベンゾトリアゾール基含有のシランカップリング剤を有するマイグレーション抑制剤(図示しない)とが、マトリックス6中に含有されてなる。
【0018】
導電層の厚さは、特に制限するものではないが、透明電極等に用いる際の銅や銀の微粒子からなる金属配線との接触抵抗や導電層の耐久性の観点から、例えば、20〜1000nmであることが好ましく、30〜200nmであることがより好ましく、40〜120nmであることがより好ましい。
【0019】
<導電成分>
導電層を構成する導電成分は、ネットワーク構造を有する金属ナノワイヤである。ネットワーク構造を有する金属ナノワイヤを導電成分として適用することで含有量に比して導電性に優れた導電層を得ることができる。また、ネットワーク構造を有していることで、導電層内の面方向への導電パスが形成され、低い表面抵抗値を得ることができる。なお、ネットワーク構造とは、導電層内の個別の金属ナノワイヤについて見たとき、別の金属ナノワイヤとの接点の数の平均が少なくとも1を超えるような分散構造をいう。
【0020】
<金属ナノワイヤ>
導電層を構成する金属ナノワイヤは、微細なワイヤ状の形状を呈するものであり、短軸の長さ(平均直径)及び長軸の長さ(平均長さ)は、種々の範囲を取りうるが、例えば、短軸の長さは、200nm以下であり、長軸の長さは、1〜100μmである。短軸の長さは、透明性の観点から5nm以上100nm以下であることが好ましく、5nm以上50nm以下であることがより好ましく、10nm以上30nm以下であることがさらに好ましい。長軸の長さは、導電性及び成形性の観点から1〜50μmであることが好ましく、5〜30μmであることがより好ましく、10〜25μmであることがさらに好ましい。平均アスペクト比(長軸の長さ/短軸の長さ)は、10以上であれば特に制限されるものではないが、透明性及び導電性の観点から、200以上であることが好ましく、450以上であることがより好ましい。
【0021】
金属ナノワイヤは、金属、合金、金属酸化物、金属窒化物、金属水酸化物等から構成されたものであり、構成元素としては、例えば、Ag、Cu、Au、Al、Rh、Ir、Co、Zn、Ni,In、Fe、Pd、Pt,Sn、Ti等から選択される1種以上が挙げられる。これらの中でも、透明性及び導電性の観点から銀ナノワイヤであることが好ましい。
【0022】
<マイグレーション抑制剤>
導電層を構成するマイグレーション抑制剤は、導電層に含まれることにより、金属ナノワイヤのマイグレーションを抑制する機能を発揮する材料である。本発明においては、マイグレーション抑制剤として、ベンゾトリアゾール基を官能基に持つケイ素化合物で構成されるシランカップリング剤(ベンゾトリアゾール基含有のシランカップリング剤)を有する。
図2にベンゾトリアゾール基含有のシランカップリング剤を構成するケイ素化合物の構造式を例示する。
図2に示したものは、トリメトキシ型のシランカップリング剤である。「Me−」はメチル基、「―R―」の部分は有機基である。「―R―」は例えばアルキレン基とアミド結合を構造内に含む。「―R−」を挟んでSiと反対側にはベンゾトリアゾール基を有している。
【0023】
本発明においては、ベンゾトリアゾール基含有のシランカップリング剤を導電層に含むことにより、1,2,3−ベンゾトリアゾール等の従来知られていたマイグレーション抑制剤と比べ、高温高湿環境(85℃、85%RH)下においても、効果的にマイグレーションを抑制することができる。この理由は定かではないが、無機化合物を化学結合する官能基を有するシランカップリング剤は、1,2,3−ベンゾトリアゾール等と比べ、金属ナノワイヤの表面近傍に優先的に存在することが推測される。そして、金属ナノワイヤの表面近傍に優先的に存在するベンゾトリアゾール基含有のシランカップリング剤の複素環に含まれる窒素が金属と錯体を形成してイオン化を抑制するとともに、ベンゼン環による疎水効果により、マイグレーション発生の原因の一つである水分の侵入が抑制されているものと推測される。
【0024】
マイグレーション抑制剤は、金属ナノワイヤのマイグレーションを抑制する機能を発揮する材料であれば、上述した化合物以外の材料を併用することができる。他のマイグレーション抑制剤としては、例えば、複素環化合物、テルペン、ヒンダードフェノール、ホスフィン、チオエーテル等が挙げられる。
【0025】
複素環化合物とは、ヘテロ原子を1個以上持つ環状化合物を意味する。ヘテロ原子とは、炭素原子、又は水素原子以外の原子を意味する。複素環化合物のヘテロ原子数はいくつでもよい。なお、ヘテロ原子は複素環の環系の構成部分を形成する原子のみを意味し、環系に対して外部に位置していたり、少なくとも一つの非共役単結合により環系から分離していたり、環系のさらなる置換基の一部分であるような原子は意味しない。ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、テルル原子、リン原子、ケイ素原子、又はホウ素原子が好ましく、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、又はセレン原子がより好ましく、窒素原子、硫黄原子、又は酸素原子が更に好ましく、窒素原子又は硫黄原子が特に好ましい。複素環化合物における複素環の環員数はいずれでもよいが、好ましくは3〜8員環であり、更に好ましくは5〜7員環であり、特に好ましくは5又は6員環である。
【0026】
複素環としては、飽和であっても不飽和であってもよいが、好ましくは少なくとも1つの不飽和の部分を有する場合であり、更に好ましくは少なくとも2つの不飽和の部分を有する場合である。別の言い方をすると、複素環としては、芳香族、擬似芳香族、及び非芳香族のいずれでもよいが、好ましくは芳香族複素環、及び擬似芳香族複素環であり、更に好ましくは芳香族複素環である。 複素環としては、例えば、ピロール環、チオフェン環、フラン環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、1,2,4−トリアゾール環、1,2,3−トリアゾール環、テトラゾール環、1,2,5−チアジアゾール環、1,3,4−チアジアゾール環、1,2,3,4−チアトリアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、及び、これらにベンゾ縮環したインドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、ベンズイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、ベンゾチアジアゾール環、ベンゾオキサジアゾール環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、キノキサリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、フェナントロリン環、アクリジン環、プリン環、4,4’−ビピリジン環、1,2−ビス(4−ピリジル)エタン環、4,4‘−トリメチレンジピリジン環、及び、これらが一部又は全部飽和したピロリジン環、ピロリン環、イミダゾリン環等が挙げられる。
【0027】
複素環は、置換基が置換していても縮環していてもよく、置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、複素環基(ヘテロ環基と言ってもよい)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基を含む)、アンモニオ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及びヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基(−B(OH)
2)、ホスファト基(−OPO(OH)
2)、スルファト基(−OSO
3H)、その他の公知の置換基、が挙げられる。
【0028】
好ましい複素環化合物としては、2,4−ジアミノ−6−ビニル−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ビニル−1,3,5−トリアジンイソシアヌル酸付加物塩、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−1,3,5−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(ヘキシルオキシ)フェニル]−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシロキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−[3−(2−エチルヘキシル−1−オキシ)−2−ヒドロキシプロピルオキシ]フェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[2−ヒドロキシ−3−(ドデシルオキシ)プロピルオキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス[2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル]−6−(2,4−ジブトキシフェニル)) −1,3,5−トリアジン、N’−tert−プチル−N−シクロプロピル−6−(メチルチオ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジアミン、1,2,3−ベンゾトリアゾール、1,2,3−ベンゾトリアゾールナトリウム塩水溶液、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]メチルベンゾトリアゾール、2,2’−[[(メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)メチル]イミノ]ビスエタノール、6−(2−ベンゾトリアゾリル)−4−tert−オクチル−6’−tert−ブチル−4’−メチル−2,2’−メチレンビスフェノール、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α, α−ジメチルベンジル)フェニル]−2−ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−ドデシル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−tert−オクチルフェノール]、2−(3−sec−ブチル−5−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−2−ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2,5−ビス[5−tert−ブチルベンゾオキザゾリル(2)]チオフェン、2-メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾールメチルエーテル、2−メルカプトベンゾチアゾールエチルエーテル、2−メルカプトベンゾチアゾールプロピルエーテル、2−メルカプトベンゾチアゾールブチルエーテル、2−メルカプトベンゾチアゾールイソブチルエーテル、2−メルカプトベンゾチアゾールドデシルエーテル、(1,3−ベンゾチアゾール−2−イルチオ)酢酸、2−(1,3−ベンゾチアゾール−2−イルチオ)プロピオン酸、3−(1,3−ベンゾチアゾール−2−イルチオ)プロピオン酸、(1,3−ベンゾチアゾール−2−イルチオ)コハク酸、2-メルカプトチアゾリン、2−メルカプトチアゾリンメチルエーテル、(Z)−2−(2−アミノ−4−チアゾリル)−2−(メトキシイミノ)チオ酢酸 S−(2−ベンゾチアゾリル)、5−メルカプト−1−フェニル−1H−テトラゾール、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、5−フェニルテトラゾール等が挙げられる。
【0029】
テルペンとは、アルケンの亜集合であり、種々の植物、特に、針葉樹によって産生される化合物に由来し、多種多様な炭化水素を含むが、これらは全て、少なくとも1個のイソプレン単位を含む。テルペンは、環状ならびに非環状炭素骨格を有し得、イソプレンのその共有構造のため、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を有し得る。
【0030】
テルペンとしては、例えば、2個のイソプレン単位を含む、環状テルペンであるリモネン、フムレン、スクアレン、ファルネセン、および同等物が挙げられる。 またテルペンは、炭素骨格の酸化または再配列を通したテルペンの誘導体であるテルペノイドを含み、テルピネオール、ゲラニオール(genaniol)、および同等物が挙げられる。
【0031】
ヒンダードフェノールとは、ヒドロキシ基に近接して嵩高い置換基を有する、フェノール誘導体を指し、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、没食子酸アルキル(例えば、没食子酸メチル、没食子酸プロピル)、タンニン酸、第3級ブチル化ヒドロキノン(TBHQ)、ビタミンE(αトコフェロール)、および同等物が挙げられる。
【0032】
ホスフィンとは、リン光体(III)に付着した3個の置換基を有する、有機亜リン酸化合物を指す。置換基としては、例えば、アリール基(置換または非置換フェニル)、アルキル基(置換または非置換)が挙げられる。
【0033】
チオエーテルとは、硫黄基に付着された2個の置換基を有する、有機亜硫酸化合物である。置換基としては、例えば、アリール基(置換または非置換フェニル)、アルキル基(置換または非置換)が挙げられる。
【0034】
導電層におけるマイグレーション抑制剤の含有量は、金属ナノワイヤに起因するマイグレーションの抑制効果が発揮されるよう含有されていればよく、特に制限するものではないが、例えば、マトリックス100重量部に対して0.1〜200重量部である。マイグレーション抑制剤の含有量は、1〜150重量部であることが好ましく、5〜100重量部であることがより好ましく、10〜50重量部であることがさらに好ましい。導電層におけるマイグレーション抑制剤の含有量が上記範囲であれば、金属ナノワイヤに起因するマイグレーションを効果的に抑制することができる。
【0035】
マイグレーション抑制剤がベンゾトリアゾール基含有のシランカップリング剤と他のマイグレーション抑制剤とを含む場合、導電層におけるベンゾトリアゾール基含有のシランカップリング剤の含有量をマトリックス100重量部に対して0.1〜150重量部、他のマイグレーション抑制剤の含有量をマトリックス樹脂100重量部に対して0.1〜50重量部とすることが好ましく、ベンゾトリアゾール基含有のシランカップリング剤の含有量をマトリックス100重量部に対して0.5〜90重量部、他のマイグレーション抑制剤の含有量をマトリックス樹脂100重量部に対して0.5〜10重量部とすることがより好ましく、ベンゾトリアゾール基含有のシランカップリング剤の含有量をマトリックス100重量部に対して5〜30重量部、他のマイグレーション抑制剤の含有量をマトリックス樹脂100重量部に対して1〜5重量部とすることがさらに好ましい。
【0036】
<マトリックス>
導電層を構成するマトリックスは、非導電性の透明樹脂を主成分として含有するものであり、無機または有機系の高分子が挙げられる。ここで、「主成分」とは、マトリックスを構成する成分のうち、構成比率が50重量%以上であることを意味するものであり、好ましくは60重量%以上であり、より好ましくは80重量%以上であり、さらに好ましくは90重量%以上であり、特に好ましくは95重量%以上である。
【0037】
無機高分子としては、無機系の酸化物等が挙げられ、例えば、珪素酸化物である、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシランなどのテトラアルコシシラン類、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ペンチルトリメトキシシラン、n−ペンチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘプチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン等のトリアルコキシシラン類、メチルトリアセチルオキシシラン、メチルトリフェノキシシランなどのオルガノアルコシシランのアルコール、水、酸などから、加水分解・重合反応によって形成させるゾル−ゲルコーティングなどが使用できる。
【0038】
有機系高分子としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂(例えば、紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂)などが挙げられ、例えば、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ナイロンやベンゾグアナミン等のポリアミド樹脂、ABS樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、ポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデン等の塩素元素(Cl元素)を含有する樹脂、フッ素元素(F元素)を含有する樹脂、シリコーン系樹脂、セルロース系樹脂、等の有機系の高分子化合物が挙げられるが、これらを要求する特性や生産性等を踏まえ少なくとも1種を選択し、また、これらを2種以上混合してもよいが、好ましくは、重合反応に寄与する炭素−炭素二重結合基を2個以上有する化合物が重合反応した構造を含む高分子から構成されるものであることが好ましい。かかる高分子は、重合反応に寄与する炭素−炭素二重結合基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマーからなる組成物を、該炭素−炭素二重結合基内の炭素−炭素二重結合を反応点として重合反応することで炭素−炭素単結合を形成して得ることができる。
【0039】
炭素−炭素二重結合基を含む官能基としては、例えば、イソプロペニル基、イソペンテニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、メタクリル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、アリリデン基、アリリジン基、ビニルエーテル基や、炭素−炭素二重結合基の炭素にフッ素や塩素等のハロゲン元素が結合したもの(例えば、フッ化ビニル基、フッ化ビニリデン基、塩化ビニル基、塩化ビニリデン基等)や、炭素−炭素二重結合基の炭素にフェニル基やナフチル基等の芳香環を有する置換基が結合したもの(例えばスチリル基等)や、ブタジエニル基のように共役ポリエン構造を有する基、等が挙げられる。これらから要求する特性や生産性等を考慮して、1種または2種以上混合して使用すればよい。
【0040】
重合反応に寄与する炭素−炭素二重結合基を2個以上有する化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールエトキシトリアクリレート、ペンタエリスリトールエトキシトリメタクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリメタクリレート、ジトリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパントリメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、グリセリンプロポキシトリメタクリレートや、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環等の環状骨格を分子内に有する化合物(例えば、トリアクリレート・トリメタクリレート・テトラアクリレート・テトラメタクリレート・ペンタアクリレート・ペンタメタクリレート・ヘキサアクリレート・ヘキサメタクリレート等)や、これら化合物の一部を変性した化合物(例えば2−ヒドロキシプロパン酸等で変性した2−ヒドロキシプロパン酸変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、2−ヒドロキシプロパン酸変性ペンタエリスリトールトリメタクリレート、2−ヒドロキシプロパン酸変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、2−ヒドロキシプロパン酸変性ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、また、シリコーン骨格を導入したシリコーントリアクリレート、シリコーントリメタクリレート、シリコーンテトラアクリレート、シリコーンテトラメタクリレート、シリコーンペンタアクリレート、シリコーンペンタメタクリレート、シリコーンヘキサアクリレート、シリコーンヘキサメタクリレート等)や、骨格内にビニル基および/またはビニリデン基と共にその他骨格を有する化合物(例えば、ウレタン骨格を有するウレタントリアクリレート、ウレタントリメタクリレート、ウレタンテトラアクリレート、ウレタンテトラメタクリレート、ウレタンペンタアクリレート、ウレタンペンタメタクリレート、ウレタンヘキサアクリレート、ウレタンヘキサメタクリレート、エーテル骨格を有するポリエーテルトリアクリレート、ポリエーテルトリメタクリレート、ポリエーテルテトラアクリレート、ポリエーテルテトラメタクリレート、ポリエーテルペンタアクリレート、ポリエーテルペンタメタクリレート、ポリエーテルヘキサアクリレート、ポリエーテルヘキサメタクリレート、エポキシ由来の骨格を有するエポキシトリアクリレート、エポキシトリメタクリレート、エポキシテトラアクリレート、エポキシテトラメタクリレート、エポキシペンタアクリレート、エポキシペンタメタクリレート、エポキシヘキサアクリレート、エポキシヘキサメタクリレート、エステル骨格を有するポリエステルトリアクリレート、ポリエステルトリメタクリレート、ポリエステルテトラアクリレート、ポリエステルテトラメタクリレート、ポリエステルペンタアクリレート、ポリエステルペンタメタクリレート、ポリエステルヘキサアクリレート、ポリエステルヘキサメタクリレート等)が挙げられる。
【0041】
用途や要求する特性や生産性等を考慮して、これらを単体で重合したものもしくは単体で重合したものを2種以上混合した組成物、または2種以上が共重合した2量体以上のオリゴマーから形成される組成物を使用することができるが、特にこれらに限定されるものではない。市販品としては、例えば、共栄社化学(株)製のライトアクリレートシリーズ、ライトエステルシリーズ、エポキシエステルシリーズ、ウレタンアクリレートAHシリーズ、ウレタンアクリレートATシリーズ、ウレタンアクリレートUAシリーズ、ダイセル・サイテック(株)製のEBECRYLシリーズ、PETIA、TMPTA、TMPEOTA、OTA 480、DPHA、PETA−K、綜研化学(株)製のフルキュアシリーズ、東洋インキ(株)製の“LIODURAS”(リオデュラス)(登録商標)シリーズ、中国塗料(株)製のフォルシードシリーズ、マツイカガク(株)製のEXPシリーズ、ダイセル・サイテック(株)製のEBECRYL1360、信越化学工業(株)製のX−12−2456シリーズ等が挙げられる。
【0042】
導電層には、本発明の効果を阻害しない範囲内で各種の添加剤を配合しても良い。添加剤としては、例えば、微粒子、架橋剤、難燃剤、耐熱安定剤、耐酸化安定剤、レベリング剤、滑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、分散剤などが挙げられる。
【0043】
<機能層>
透明導電体は、基材上にポリエステル樹脂とアクリル樹脂とを主成分とする機能層を有する。機能層は、各種機能を備えた層を意味するものであり、例えば、次に説明する易接着層が挙げられる。但し、機能層の種類を限定するものではなく、例えば、ハードコート層、反射防止層、防眩層などの層が挙げられる。機能層は基材の少なくとも一方の面に形成されていればよく、基材と機能層との間に他の層を有していても良いが、機能層が上述した導電層と接するよう、表面側に位置することが好ましい。本発明においては、ポリエステル樹脂とアクリル樹脂とを主成分とする機能層が上述した導電層と接する構成とすることにより、金属ナノワイヤに起因するマイグレーションによる導電層の抵抗値上昇を抑制することができる。この理由は定かではないが、金属ナノワイヤと隣接する層をポリエステル樹脂とアクリル樹脂とを主成分とする構成とすることにより、ポリエステル樹脂やアクリル樹脂による疎水効果により、マイグレーション発生の原因の一つである水分の侵入が抑制されているものと推測される。機能層の厚さは、特に制限されるものではないが、本発明の効果が発揮される点で、20nm〜2000nmであることが好ましい。
【0044】
<易接着層>
以下、機能層が易接着層である場合について詳細に説明する。易接着層は、導電層との密着性を高めるための層であり、ポリエステル樹脂とアクリル樹脂とを主成分とする。ここで、「主成分」とは、機能層を構成する成分のうち、構成比率が50重量%以上であることを意味するものであり、好ましくは60重量%以上であり、より好ましくは80重量%以上であり、さらに好ましくは90重量%以上であり、特に好ましくは95重量%以上である。
【0045】
ポリエステル樹脂は、主鎖にエステル結合を有するポリマーの総称であり、通常、ジカルボン酸とジオールの反応で得られる。ジカルボン酸としては例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、フマル酸、イタコン酸、アジピン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸などがあり、ジオールは、直鎖状アルキル系ジオールとしては例えば、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1.9−ノナンジオールなどがあり、分岐したジオールとしては例えば、1,2−プロピレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1.5−ペンタンジオールなどがある。さらにはジオール同士の縮合体であるジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどや、ビスフェノールA等とエチレレンオキシドとの付加物などのエーテル結合を分子中に有するジオールも例示することができる。ジカルボン酸とジオール以外の成分として、トリメリット酸等のトリカルボン酸、グルセリン、トリメチロール等のトリオール、5−スルホイソフタル酸一ナトリウムなどの極性基を有するジカルボン酸等をポリエステル重合上で問題にならない程度、ポリエステル成分中として20モル%以下であれば使用してもかまわない。水性で使用するためには、ジカルボン酸成分の一部に、親水性基を有する5−スルホイソフタル酸一ナトリウム等を使用すればよい。また、ポリエステル樹脂としては、変性ポリエステル共重合体、例えば、ウレタン、エポキシなどで変性したブロック共重合体、グラフト共重合体であっても良い。市販品としては、例えば、“バイロン”(東洋紡(株)製)、“バイロナール”(東洋紡(株)製)、“エリーテル”(ユニチカ(株)製)、“プラスコート”(互応化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0046】
アクリル樹脂は、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの誘導体を成分とするポリマーである。具体的には、例えばアクリル酸、メタクリル酸、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メトキシ−ポリエチレングリコールアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、アクリルアミド、アクリロニトリル、ヒドロキシルアクリレートなどを主成分としてこれらと共重合可能なモノマー(例えばスチレン、ジビニルベンゼンなど)を共重合したポリマーである。水性で使用するためには、メトキシ−ポリエチレングリコールアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレートなどの親水性基を有するモノマーを適量使用するか、アクリル酸、メタクリル酸等のモノマーを使用した後、これらモノマーに由来するカルボン酸を中和して親水性基にすることが好ましい。 また、アクリル樹脂としては、変性アクリル共重合体、例えば、ポリエステル、ウレタン、エポキシなどで変性したブロック共重合体、グラフト共重合体であっても良い。市販品としては、例えば、“アクリナール”(東栄化成(株)製)、“アクリット”(大成ファインケミカル(株)製)、“ヒタロイド”(日立化成工業(株)製)、“アクリディック”(DIC(株)製)、“ユーダブル”((株)日本触媒製)、“ダイヤナール”(三菱レイヨン(株)製)などが挙げられる。
【0047】
易接着層におけるポリエステル樹脂とアクリル樹脂との配合割合は、特に制限するものではないが、例えば、5〜95重量%:95〜5重量%である。配合割合は、20〜80重量%:80〜20重量%が好ましく、30〜70重量%:70〜30重量%がより好ましい。
【0048】
易接着層は、本発明の効果を阻害しない範囲において、密着性等を改善するために上述したポリエステル樹脂やアクリル樹脂以外の樹脂成分を含んでいても良い。また、易接着層の滑り性やブロッキング性を改良するためシリカ等の微粒子を含んでいても良い。易接着層には、上述したマイグレーション抑制剤を添加しても良く、易接着層にマイグレーション抑制剤を添加することにより、金属ナノワイヤに起因するマイグレーションをより効果的に抑制することができる。易接着層にマイグレーション抑制剤を添加する場合、易接着層を構成する樹脂成分100重量部に対して0.1〜100重量部含有することが好ましく、1〜50重量部含有することがより好ましい。
【0049】
易接着層の厚さは、特に制限されるものではないが、本発明の効果が発揮される点で、20nm〜1000nmであることが好ましく、50〜300nmであることがより好ましく、70〜200nmであることがさらに好ましい。
【0050】
<基材>
基材は、可視光に対して透過性を有する材料で構成されたものであり、例えば、無機材料又はプラスチック材料から構成される。
【0051】
基材を構成する無機材料としては、例えば、石英、サファイア、ガラス等が挙げられる。また、基材を構成するプラスチック材料としては、例えば、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー等のシクロオレフィン樹脂、ポリアクリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。透明性等の光学特性、生産性の観点から、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂が好ましい。
【0052】
基材を構成するポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリメチレンテレフタレート、および共重合成分として、例えば、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコールなどのジオール成分や、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などのジカルボン酸成分などを共重合したポリエステル樹脂などを挙げることができる。好適に用いられるポリエステル樹脂は、主に、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートの少なくとも1種を構成成分とする。これらのポリエステル樹脂の中でも、物性とコストのバランスからポリエチレンテレフタレートが最も好ましい。
【0053】
基材を構成するポリエステル樹脂は、樹脂中に含まれるオリゴマー量が少ないことが好ましく、この理由は定かではないが、オリゴマー量が少ない基材を用いることにより、金属ナノワイヤに起因するマイグレーションが抑制される。ポリエステル樹脂中に含まれる環状三量体オリゴマーの含有量は、1.5質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以下であることがより好ましく、0.7質量%以下であることがさらに好ましく、0.6質量%以下であることが特に好ましい。
【0054】
基材は、単層であっても複層であっても良い。また、本発明の効果を奏する範囲内であれば、これらの各層には、必要に応じて、各種添加剤を含有させることができる。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、耐光剤、ゲル化防止剤、有機湿潤剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、アンチブロッキング剤、不活性粒子などが挙げられる。
【0055】
基材は、生産性の観点から長尺のフィルム状又はシート状のものが好ましい。基材の厚さは、特に制限されるものではないが、強度や柔軟性を考慮すると、5〜300μmであることが好ましく、10〜150μmであることがより好ましい。厚さが5μm未満であると、十分な強度が得られなくなるおそれがある。厚さが300μmを超えると、フレキシブル性が低下するとともに、透明性が低下し、タッチパネル等の透明電極としての使用に適さなくなるおそれがある。
【0056】
機能層を有する基材は、機能層が積層された基材を150℃で30分加熱した後の機能層表面における1μm以上のオリゴマーが10,000μm
2あたり150個以下であることが好ましく、加熱処理後の機能層表面の析出オリゴマー量を少なくすることにより、金属ナノワイヤに起因するマイグレーションが抑制される。機能層表面におけるオリゴマーは75個以下であることがより好ましく、50個以下であることがさらに好ましく、25個以下であることが特に好ましい。なお、オリゴマーの測定方法は、以下の通りである。
(1)フィルムを架台に吊り下げ150℃、30分間オーブン中で加熱する。
(2)フィルムをオーブンから取り出し、室温まで冷却したのち、測定面をレーザー顕微鏡で観察(×3000倍)し、析出したオリゴマーの最大の長さが1μm以上のオリゴマー個数を数えた。上記方法で100μm四方の任意の10領域を計測し、10領域の平均値をオリゴマー析出量(個数)とした。
【0057】
<透明導電体の製造方法>
透明導電体を製造する方法は、特に制限されず、(1)機能層が積層された基材の機能層上に金属ナノワイヤとマイグレーション抑制剤とマトリックスを形成する原料とを含有した塗料を塗布して導電層を形成してもよく、(2)機能層が積層された基材の機能層上に金属ナノワイヤを含有するインクを塗布し、インクに含まれる溶媒成分を揮発除去させて金属ナノワイヤのネットワーク構造を形成した後、金属ナノワイヤからなるネットワーク構造の上からマイグレーション抑制剤とマトリックスを形成する原料とを含有する塗料(オーバーコート剤)を塗布することで導電層を形成してもよい。
【0058】
上記において、適用される塗布方法としては、特に制限されるものではないが、例えば、スピンコート、ディップコート、バーコート、スプレーコート、ブレードコート、グラビアコート、リバースコート、スリットダイコート、スクリーン印刷、インクジェット等のウェットコート法が挙げられる。これらの中でも、均一に塗布できることからスリットダイコートを使用したウェットコート法が好ましい。
【0059】
導電層のマトリックスは、上述のマトリックスを形成する原料を反応させて形成する。マトリックスを硬化させる方法として、加熱による熱硬化や、紫外線、可視光、電子線等の照射による光硬化が挙げられる。光硬化の場合、後述する光重合開始剤を含有させ、紫外線、可視光、電子線等を照射することでマトリックスを硬化させることができる。
【0060】
光重合開始剤としては、特に制限するものではないが、例えば、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系、ベンジルジメチルケタールなどのベンゾイン系、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1などのα−ヒドロキシケトン系やα−アミノケトン系、イソプロピルチオキサントン、2−4−ジエチルチオキサントンなどのチオキサントン系、メチルフェニルグリオキシレートなどが挙げられ、極大吸収波長の値、吸光度、色見、着色度合い等の観点から、これら光重合開始剤のうち1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0061】
本発明の透明導電体は、JIS K7361−1(1997)に基づいた全光線透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。全光線透過率が上記範囲であれば、優れた透明性を示し、タッチパネル等に組み込んだ際にディスプレイの表示を鮮やかに認識することができる。
【0062】
本発明の透明導電体は、JIS K7136(2000)に基づいたヘーズが5%未満であることが好ましく、3%未満であることがより好ましく、1.5%未満であることがさらに好ましい。ヘーズが上記範囲であれば、優れた透明性を示し、タッチパネル等に組み込んだ際にディスプレイの表示を鮮やかに認識することができる。
【0063】
本発明の透明導電体は、表面抵抗値が1〜1000Ω/□であることが好ましく、1〜500Ω/□であることがより好ましく、10〜100Ω/□であることがより好ましい。表面抵抗値が上記範囲にあることでタッチパネル等の電子機器に好適に用いることができる。透明導電体の表面抵抗値は、金属ナノワイヤの塗布量等により調整することができ、例えば、金属ナノワイヤの塗布量は0.0001〜0.5g/m
2である。好ましくは表面抵抗値が1〜1000Ω/□であれば金属ナノワイヤの塗布量は0.001〜0.4g/m
2であり、表面抵抗値が5〜500Ω/□であれば金属ナノワイヤの塗布量は0.003〜0.1g/m
2であり、表面抵抗値が10〜100Ω/□であれば金属ナノワイヤ塗布量は0.01〜0.07g/m
2である。
【0064】
本発明の透明導電体は、後述するマイグレーション評価における温度85℃、相対湿度85%の環境下にて電圧5Vを500時間印可した後の抵抗値の変化率が30%以下であることが好ましく、25%以下であることがより好ましく、20%以下であることがさらに好ましく、15%以下であることが特に好ましい。抵抗値の変化率が上記範囲内であれば、タッチパネル等の電子機器に組み込んだ際に動作不良や誤作動が発生することを抑制することができる。
【0065】
本発明の透明導電体は、基材における導電層側とは反対側の面に易接着層、ハードコート層、反射防止層、防眩層等の光学機能層を有していてもよい。また、上述した本発明の導電層を設け、基材の両面側に導電層を有する構成としてもよい。
【0066】
<用途>
本発明の透明導電体は、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等のディスプレイや、タッチパネル、太陽電池、有機LE素子等の透明電極として使用することができる。
【実施例】
【0067】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0068】
1. 金属ナノワイヤインクの調製
銀ナノワイヤ(短軸の長さ23〜26nm、長軸の長さ10〜20μm)を0.18重量%、粘度調整剤を0.09重量%、分散剤などの添加剤を2重量%、水系溶媒を97.73重量%(イソプロピルアルコール10重量%、超純水87.73重量%)含む銀ナノワイヤインクを調製した。
【0069】
2. オーバーコート剤の調製
表1に示す各成分を、表1に示す量(単位は重量部)で混合し、オーバーコート剤を調製した。なお、各成分は下記のものを用い、溶媒としては酢酸ブチル/メチルエチルケトン(混合比9:1)を用いて固形分量が2%となるよう調整した。
<マトリックス>
・ウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂及び光重合開始剤
<添加剤>
・添加剤A:ベンゾトリアゾール基含有のシランカップリング剤[品番:X−12−1214A、信越化学工業株式会社製]
・添加剤B:デシルトリメトキシシラン[品番:KBM−3103C、信越化学工業株式会社製]
・添加剤C:3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン[東京化成工業株式会社製]
【0070】
(実施例1乃至5)
透明基材として、ポリエステル樹脂とアクリル樹脂とを主成分としてなる易接着層(厚さ100nm)が表面に積層された厚さ125μmの低オリゴマータイプのポリエチレンテレフタレートフィルムA(150℃で30分加熱した後の易接着層表面の1μm以上のオリゴマーが10,000μm
2あたり25個以下)を準備した。次いで、塗工装置としてスロットダイコータを用いて、14g/m
2の塗布量で、透明基材Aの易接着層上に銀ナノワイヤインクを塗工し、ウェット膜を乾燥炉により、120℃の乾燥温度で乾燥させて、銀ナノワイヤからなるネットワーク構造を形成した。そして、スロットダイコータを用いて銀ナノワイヤからなるネットワーク構造上に上記で得られたオーバーコート剤を塗工し、ウェット膜を乾燥炉により、80℃の乾燥温度で乾燥し、紫外線照射装置により表面における積算光量が500mJ/cm
2となるように紫外線を照射して硬化性樹脂を硬化させ、厚さ80〜100nmの導電層を有する透明導電体を作製した。得られた透明導電体のマイグレーション評価の結果を表1に示す。
【0071】
(実施例6及び7)
透明基材として、ポリエステル樹脂とアクリル樹脂とを主成分としてなる易接着層(厚さ100nm)が表面に積層された厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルムB(150℃で30分加熱した後の易接着層表面の1μm以上のオリゴマーが10,000μm
2あたり75個以下)を用いた以外、実施例1と同様の条件で透明導電体を作製した。得られた透明導電体のマイグレーション評価の結果を表1示す。
【0072】
(比較例1乃至7)
透明基材として、ポリエステル樹脂とウレタン樹脂とを主成分としてなる易接着層(厚さ100nm)が表面に積層された厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルムC(150℃で30分加熱した後の易接着層表面の1μm以上のオリゴマーが10,000μm
2あたり150個を超える)を用いた以外、実施例1と同様の条件で透明導電体を作製した。得られた透明導電体のマイグレーション評価の結果を表1示す。
【0073】
(マイグレーション評価)
上記により得られた透明導電体に対し、マイグレーション評価を行った。マイグレーション評価について、
図3を参照しながら説明する。
【0074】
図3(a)、(b)、(c)、(d)は、マイグレーション評価を説明するための説明図である。先ず、上記で得られた透明導電体から50mm×160mmの寸法のサンプル片を切り出し、
図3(a)に示すように導電層表面にレーザーエッチング11を施した。次いで、
図3(b)に示すように、導電層表面にカッターナイフで切れ込みを設け、線幅40μmのグランドギャップ12を形成した後、スクリーン印刷にて銀ペースト(品番:SF−2772X、Betterly社製)を
図3(c)に示すパターン状に印刷し、乾燥炉により140℃で50分間乾燥させ、金属配線13a、13b、13c、13dを作製した。次いで、
図3(d)に示すように、導電層及び金属配線の上方に光学用透明粘着シート(品番:8146−2、3M社製)14を片面に有するポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ125μm)の粘着シート面を貼合した後、金属配線13a、13cに5Vの直流電流を印可した状態で恒温恒湿器に入れ、85℃、相対湿度85%の条件で保存した。続いて、保存後の各透明導電体におけるプラス電極側の金属配線13cと金属配線13dにおける抵抗値を測定し、抵抗値の変化率(%)=[(保存後の抵抗値―初期の抵抗値)/初期の抵抗値]×100との数式に基づいて算出した。評価基準は以下の通りである。
◎:500時間後の抵抗値の変化率が25%以下である
〇:500時間後の抵抗値の変化率が25%を超え30%以下である
△:500時間後の抵抗値の変化率が30%を超え35%以下である
✕:500時間後の抵抗値の変化率が35%を超える
【0075】
なお、マイグレーション評価に利用した機器は以下の通りである。
・電圧印可装置[型番:スイッチング・パワーサプライ S8FS−G10005CS、オムロン(株)社製]
・抵抗測定機[型番:デジタルマルチメーター KT−2011、カイセ(株)社製]
・恒温恒湿器[型番:PR−1KT、エスペック(株)社製]
【0076】
【表1】
【0077】
表1に示すように、ポリエステル樹脂とアクリル樹脂とを主成分とする易接着層が積層された基材上に導電層を有する構成とし、導電層にベンゾトリアゾール基含有のシランカップリング剤からなるマイグレーション抑制剤を含む実施例1乃至7の透明導電体は、高温高湿環境下におけるマイグレーション評価において抵抗値の上昇が抑制され、耐マイグレーション性に優れる結果を示した。一方、表1に示すように、導電層にマイグレーション抑制剤を有さない比較例1の透明導電体は、高温高湿環境下におけるマイグレーション評価において抵抗値が大幅に上昇する結果を示した。また、表1に示すように、導電層にベンゾトリアゾール基含有のシランカップリング剤からなるマイグレーション抑制剤を配合した比較例2乃至5の透明導電体は、ポリエステル樹脂とウレタン樹脂とを主成分とする易接着層上に導電層を有する構成であることから、高温高湿環境下におけるマイグレーション評価において抵抗値の上昇が多少抑制された傾向を示すものの、実施例に比べ、耐マイグレーション性は不十分な結果を示した。同様に、導電層にデシルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどの添加剤を配合した比較例6及び7の透明導電体は、高温高湿環境下におけるマイグレーション評価において抵抗値の上昇が多少抑制された傾向を示すものの、実施例に比べ、耐マイグレーション性は不十分な結果を示した。