【解決手段】施工中のトンネルの周辺の地山に形成した複数の注入孔から注入材を注入する際に、トンネル施工支援システムの取得部によって、各注入孔における注入量及び注入圧を含む注入データを取得する。PC端末からなる作成部によって、前記注入データに基づいて、各注入孔及びその周辺部の良否状態を示す良否データを作成し、注入孔配置
前記良否データ作成部が、注入データにおける注入量及び注入圧のうち少なくとも一方の値に応じて、複数段階に区分けされた良否状態表示の1つを前記良否データとして選択することを特徴とする請求項1に記載のトンネル施工支援システム。
前記良否データ作成部又は表示データ作成部が、前記注入データを前記良否状態に応じた色データに変換する変換部を含むことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のトンネル施工支援システム。
前記良否データの作成工程において、注入データにおける注入量及び注入圧のうち少なくとも一方の値に応じて、複数段階に区分けされた良否状態表示の1つを前記良否データとして選択することを特徴とする請求項5に記載のトンネル施工支援方法。
前記注入データの取得工程、前記良否データの作成工程、前記表示データの作成工程、前記出力表示の工程が連続してリアルタイムで実行されることを特徴とする請求項5又は6に記載のトンネル施工支援方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前掲特許文献2の事前予測方法は、別途計測機器が必要となること、予測の実施後、対策等の検討に時間がかかることにより、工事が長期化する。また、グラフから地山の良否状態を読み取るには、ある程度の専門知識や経験を要する。
本発明は、かかる事情に鑑み、NATMトンネルなどの山岳トンネルの施工に際し、掘削しようとする地山の良否状態を効率的にかつ直観的に把握可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明システムは、施工中のトンネルの周辺の地山に形成された複数の注入孔から前記地山に注入材が注入される注入工程を含むトンネル施工を支援するシステムであって、
各注入孔における注入量及び注入圧を含む注入データを取得する取得部と、
前記注入データに基づいて、各注入孔及びその周辺部の良否状態を示す良否データを作成する良否データ作成部と、
前記各注入孔及びその周辺部の良否データを、図中の当該注入孔との対応部に視覚的に認識可能に表示した注入孔配置図を含む表示データを作成する表示データ作成部と、
前記表示データを出力表示する出力表示部と
を備えたことを特徴とする。
【0007】
作業者は、出力表示された表示データ中の注入孔配置図を観ることで、切羽前方等のトンネル周辺の地山の良否状態を直観的に把握できる。専門的な知識や経験は不要である。これによって、例えば肌落ちなどの可能性があれば事前に対処でき、トンネルの掘進を適切かつ安全に行うことができる。
しかも、当該トンネル施工支援システムによれば、トンネル施工工程における補助工法としての注入工程中にトンネル周辺の地山の良否状態に関するデータを取得できるから、効率的である。
視覚的に認識可能な表示は、人の五感のうち専ら視覚によって認識できる色、模様などの表示を言い、文字、記号を除く。ただし、前記表示データが、視覚的に認識可能な表示以外の表示として、文字、記号を含んでいてもよい。
視覚的に認識可能な表示が、点滅などの時間的変化を伴うものであってもよい。
【0008】
前記良否データ作成部が、注入データにおける注入量及び注入圧のうち少なくとも一方の値に応じて、複数段階に区分けされた良否状態表示の1つを前記良否データとして選択することが好ましい。すなわち、各注入孔及びその周辺部の良否状態を複数段階に区分けし、注入量又は注入圧の値に応じて良否状態を段階的に規定してもよい。
【0009】
前記取得部が、前記注入孔の長手方向に区画された複数の注入領域における注入領域ごとに注入データを取得し、
前記良否データ作成部が、前記注入領域ごとに前記良否データを作成し、
前記表示データ作成部が、前記注入孔配置図における各注入領域との対応部分に、当該注入領域の良否データを視覚的に認識可能に表示した表示データを作成することが好ましい。
これによって、地山の状況をより細かく把握できる。
【0010】
前記良否データ作成部又は表示データ作成部が、前記注入データを前記良否状態に応じた色データに変換する変換部を含むことが好ましい。
これによって、地山の状況を確実に直観的に把握することができる。
【0011】
本発明方法は、施工中のトンネルの周辺の地山に形成した複数の注入孔から前記地山に注入材を注入する注入工程を含むトンネル施工を支援する方法であって、
各注入孔における注入量及び注入圧を含む注入データを取得する工程と、
前記注入データに基づいて、各注入孔及びその周辺部の良否状態を示す良否データを作成する工程と、
前記各注入孔及びその周辺部の良否データを、図中の当該注入孔との対応部に視覚的に認識可能に表示した注入孔配置図を含む表示データを作成する工程と、
前記表示データを出力表示する工程と を備えたことを特徴とする。
前記良否データの作成工程において、注入データにおける注入量及び注入圧のうち少なくとも一方の値に応じて、複数段階に区分けされた良否状態表示の1つを前記良否データとして選択することが好ましい。
前記注入データの取得工程、前記良否データの作成工程、前記表示データの作成工程、前記出力表示の工程が連続してリアルタイムで実行されることが好ましい。
【0012】
本発明に係るプログラムは、前記トンネル施工支援システムにおける良否データ作成部及び表示データ作成部を構成するコンピュータに、
各注入孔における注入量及び注入圧を含む注入データを取得部から受け取る処理と、
受け取った注入データに基づいて、各注入孔及びその周辺部の良否状態を示す良否データを作成する処理と、
前記各注入孔及びその周辺部の良否データを、図中の当該注入孔との対応部に視覚的に認識可能に表示した注入孔配置図を含む表示データを作成する処理と、
を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、NATMトンネルなどの山岳トンネルの施工に際し、掘削しようとする地山の良否状態を効率的にかつ直観的に把握することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面にしたがって説明する。
図1に示すように、NATM工法によって山岳トンネル1が施工されている。補助工法として例えば注入式フォアポーリング工法、AGF工法、又は鏡ボルト工法が実施され、切羽1eの前方(
図1において左側)の地山に注入材2が注入されている。注入材2としては、例えばシリカレジン等のウレタン系発泡樹脂が用いられている。注入材2は、A液とB液を出発物質とする。これら2液が混合されて発泡しながら地山に注入されて硬化する。これによって、トンネル周辺の地山が安定化される。
【0016】
図1及び
図2に示すように、切羽1eの前方(トンネル周辺)の地山には、長尺の先受け鋼管20が多数打設されている。各先受け鋼管20の内部空間が、注入孔21を構成している。各先受け鋼管20ひいては各注入孔21は、トンネル軸に対して斜めかつ直線状に延びている。複数の先受け鋼管20からなる複数の注入孔21がトンネル1のアーチ部1aの周方向に間隔を置いて配置されている。施工管理上、注入孔21には前記周方向の配列順に孔番号(孔識別情報)が付されている。
各注入孔21の延び方向に例えば3つ(複数)の注入領域R1,R2,R3が設定されている。
【0017】
図1に示すように、注入工程用の注入機10と注入材供給源15がトラック5に搭載されて、トンネル1内に配置されている。注入機10には、1又は複数の注入ポンプ11と、操作盤13と、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)30が設けられている。注入材供給源15が注入ポンプ11の供給ポートに接続されている。注入ポンプ11の吐出ポートに注入管16が接続されている。注入管16は、注入工程を実施する1の注入孔21へ延びている。
【0018】
操作盤13によって、注入を実施する孔番号の指定、注入ポンプ11の運転開始指令、停止指令、注入流速の設定、設計注入量の設定、注入圧の上限値設定などが行われる。これら指令及び設定の信号は、操作盤13からPLC30に入力される。操作盤13の操作に応じて、PLC30によって注入ポンプ11が制御される。
【0019】
なお、
図1では簡略化されているが、実際には
図3に示すように、2液混合の注入方式における注入ポンプ11及び注入材供給源15は、それぞれA液用のものとB液用のものとが2台1組になっている。更に前記注入領域R1,R2,R3ごとに1組(2台)の注入ポンプ11が設けられている。注入領域が3つの場合、6台の注入ポンプが設けられている。1組(2台)の注入ポンプ11からのA液用及びB液用の2本の注入管16が、互いに合流して、注入孔21の対応する注入領域R1,R2,R3まで挿し入れられている。これによって、注入材2が注入領域R1,R2,R3ごとに注入される。
各注入ポンプ11の吐出側には、注入圧センサ17が設けられている。
図3において、注入孔21の口径は、軸長に対して誇張されている。
【0020】
図4は、前記注入工程での注入データを利用してトンネル1の掘削施工を支援するトンネル施工支援システム3を示したものである。トンネル施工支援システム3は、前記PLC30及びパーソナルコンピュータ(PC)端末31からなるコンピュータ群と、操作盤13及び注入圧センサ17からなる入力機器とを構成要素として備えている。
PLC30と入力機器13,17とによって、注入データの取得部3cが構成されている。
【0021】
詳しくは
図5に示すように、PLC30は、演算処理部30aと、入出力部30bと、記憶部30mを含む。演算処理部30aは、マイクロプロセッサやマイクロコントロールユニットによって構成されている。入出力部30bには、操作盤13及び注入圧センサ17等の入力機器、注入ポンプ11等の出力機器、並びにハブ33が接続されている。
【0022】
図5に示すように、記憶部30mには、注入ポンプ11の制御のためのプログラム30qに加えて、トンネル施工支援のためのプログラム30pが格納されている。
プログラム30pは、注入データを取得する処理をPLC30に実行させる。取得された注入データ30dが記憶部30のデータ格納領域に記憶される。
【0023】
注入データとしては、注入材の注入量(kg)及び注入圧(MPa)が含まれる。更に、注入データとして注入速度(単位時間当たりの流量(kg/min))、注入停止回数等が含まれていてもよい。
注入データは、注入孔21ごとに取得される。好ましくは、各注入孔21の注入領域R1,R2,R3ごとに注入量、注入圧などの注入データが取得される。
【0024】
具体的に注入データは、次のようにして取得されるようにプログラムされている。
注入量は、注入流速の時間積分によって算出される。注入流速が一定であるときは、注入流速と注入時間の積が注入量となる。一定の注入流速として、操作盤13による設定流速が用いられている。
なお、注入管16に流量計を設けて、注入流速を検知し、これをPLC30において時間積分してもよい。
注入量は、注入ポンプ11の回転数に係数を乗じることよって算出してもよい。注入ポンプ11の1回転あたりの吐出流量と回転数とによって注入量を算出してもよい。
注入圧は、注入圧センサ17によって検出され、PLC30に入力される。
注入停止回数は、操作盤13からの停止指令信号がカウントされる。
注入停止回数を除く注入データ取得の時間間隔は、例えば0.001秒から0.数秒オーダーであるが、これに限られるものではない。
【0025】
図4に示すように、トンネル施工支援システム3のPC端末31は、注入機10に据え付けられた据付PC端末38や、作業者Aが携行可能な携行PC端末39によって構成されている。据付PC端末38としては、ノートパソコンが用いられているが、これに限らず、デスクトップパソコンを用いてもよい。携行PC端末39としては、タブレットが用いられているが、これに限らず、携行可能かつ無線通信機能付きであれば、ノートパソコン、スマートフォンなどを用いてもよい。
【0026】
トンネル施工支援システム3のコンピュータ30,31(38,39)どうしが、ハブ33を介した有線又は無線のローカルエリアネットワーク(LAN)によって相互にデータ通信可能に接続されている。PLC30と据付PC端末38とはイーサネット(登録商標)規格のLANケーブル35及びハブ33を介して有線接続されている。通信方式には
シリアル通信が適用されているが、パラレル通信であってもよい。
【0027】
ハブ33には、無線アンテナ34が接続されている。無線アンテナ34は、注入機10に取り付けられていてもよく、トラック5(
図1)に取り付けられていてもよい。無線アンテナ34を介して、携行PC端末39が、PLC30及び据付PC端末38と無線LAN接続されている。トンネル1内における無線アンテナ34と携行PC端末39との無線通信可能距離は、好ましくは数十メートル〜数百メートルである。
【0028】
図6に示すように、PC端末31(38,39)は、CPU31a、入出力部31b、ディスプレイ31c、記憶部31mを含む。
記憶部31mには、トンネル施工支援のためのプログラム31p及びデータ31dが記憶されている。プログラム31pは、例えばC#等のプログラミング言語で記述されたコンピュータ実行可能なプログラムであり、注入データ受取プログラム31q、良否データ作成プログラム31r、表示データ作成プログラム31sを含む。
データ31dは、PLC30から受け取った注入データ31e、並びに良否データ31f及び表示データ31gを含む。
【0029】
注入データ受取プログラム31qは、PLC30から新たな注入データを随時受け取って、記憶部31mに蓄積注入データ31eとして蓄積(記憶)する処理をPC端末31(38,39)に実行させる。PC端末31(38,39)は、注入データの蓄積部(データロガー)として機能する。
なお、図示は省略するが、据付PC端末38のプログラム31pは、蓄積注入データ31eを定期的又は不定期的に携行PC端末39へ送信する処理を実行するための注入データ送信プログラムを更に含む。携行PC端末39の注入データ受取プログラム31qは、PLC30からだけでなく据付PC端末38からも注入データを受信し、携行PC端末39の蓄積注入データ31eを据付PC端末38から受信したものに更新(上書き)する処理をも携行PC端末39に実行させる。
【0030】
良否データ作成プログラム31rは、蓄積注入データ31eに基づいて、各注入孔21及びその周辺部の良否状態を示す良否データ31fを作成する処理を、PC端末31に実行させる。好ましくは、良否データ作成プログラム31rは、各注入孔21の領域R1,R2,R3ごとに良否データ31fを作成する処理をPC端末31に実行させる。プログラム31rを実行時のPC端末31は、「良否データ作成部」として機能する。
【0031】
図7に模式的に例示するように、良否データ31fは、地山の良否状態を複数段階に区分けされた記号や数値(良否状態表示、
図7においては便宜的に文字で表記)によって表されたデータである。好ましくは、良否データ作成部としてのPC端末31は、注入データ31eにおける注入量及び注入圧のうち少なくとも一方の値に応じて、複数段階に区分けされた良否状態表示の1つを良否データ21fとして選択する。
各注入孔21の各領域R1,R2,R3に対応する良否データは、1つに限らず、複数作成してもよい。例えば、1つの注入孔21の1つの領域R1,R2,R3に対して、注入圧だけに基づく注入圧基準良否データ、注入量だけに基づく注入量基準良否データ、注入量及び注入圧を総合した総合良否データを作成してもよい。
【0032】
所要の改良効果が発現されたか否かは、注入圧が基準となり、例えば注入圧が規定値以上になったか否かで判断される。規定値は、例えば注入開始時の注入圧(初期圧)に0.5MPaを加算した値に設定される。注入量などは補助的な位置付けとなる。
【0033】
具体的に良否データは、例えば以下のようにして作成されるようにプログラムされている。
注入圧に基づく良否データとして、最終の注入圧が規定値である場合、対応領域R1,R2,R3の地山の状態は平均的であるとのデータが作成される。最終の注入圧が規定値を上回る場合は、対応領域R1,R2,R3の地山の状態はより良好とのデータが作成される。逆に最終の注入圧が低ければ低いほど、対応領域R1,R2,R3の地山の状態がより不良であるとのデータが作成される。
【0034】
また、注入量に基づく良否データとして、最終の注入量が多ければ多いほど、対応領域R1,R2,R3の地山状態がより良好であるとのデータが作成される。より広い改良範囲が形成されたと考えられるからである。最終の注入量が設計注入量を下回る場合は、改良範囲が想定よりも狭い範囲内にしか形成されていないとし、対応する注入孔21の対応領域R1,R2,R3の地山状態は不良とのデータが作成される。
注入停止回数に基づく良否データとしては、例えば注入停止回数が増えるにしたがって良否状態が悪いとのデータが作成される。地山の状態が悪いほど、例えば注入材2の漏れ等の事象が起き、注入停止が増える傾向があるからである。
総合良否データとしては、注入圧に基づく良否データを基準とし、これに、注入量に基づく良否データなどを適宜選択して加味したデータが作成される。
【0035】
表示データ作成プログラム31sは、表示データ31gを作成する処理を、PC端末31に実行させる。プログラム31sを実行時のPC端末31は、「表示データ作成部」として機能する。
【0036】
図8は、表示データ31gをディスプレイ31c(表示データ出力部)に出力した表示画像4の一例を示したものである。表示データ31gひいては表示画像4は、注入作業の日報の形式で作成されており、複数の注入孔21を実際の並びにしたがって配置して図示した注入孔配置
図40(絵図)を含む。注入孔配置
図40には、各注入孔21及びその周辺部と対応する注入孔対応部41が含まれている。好ましくは、各注入孔対応部41は、注入領域R1,R2,R3とそれぞれ対応する注入領域対応部分41a,41b,41cに区画されている。詳しくは、
図8に示すように、注入孔配置
図40は、切羽前方の地山の平面
図42や、トンネル内部から見た正面
図43を含む。図示は省略するが、更に注入孔配置
図40が、切羽前方の地山の側面図や、切羽前方の地山を斜めから見た斜視図を含んでいてもよい。平面
図42と正面
図43など、切羽前方の地山を複数の方向から見た絵図を同時に表示してもよく、一方向から見た絵図を選択的に表示してもよい。切羽前方の地山を見る方向を閲覧者Aの指示で任意に変更可能な絵図であってもよい。
【0037】
各注入孔対応部41には、対応する注入孔21及びその周辺部の良否データが、視覚的に認識可能に表示される。視覚的に認識可能な表示は、好ましくは色表示である。すなわち、注入孔対応部41が、対応する注入孔21及びその周辺部の良否状態に応じた色で表示される。好ましくは、各注入孔21の領域R1,R2,R3ごとの対応部分41a,41b,41cが、対応する領域R1,R2,R3の良否状態に応じた色で表示される。
要するに、プログラム31r,31sによって、各注入孔21の各領域R1,R2,R3の注入データが、当該領域R1,R2,R3の良否状態に応じた色データに変換される。プログラム31r,31sを実行時のPC端末31は、注入データを良否状態に応じた色データに変換する変換部として機能する。
【0038】
例えば、地山の状態が良好であるとの注入データは、暖色系の色データに変換される。不良であるとの注入データは、寒色系の色データに変換される。具体的には、例えば「より良好」は赤色、「良好」は橙色、「平均」は黄色、「不良」は青色、「より不良」は紺色の色データとされる。
これとは逆に、良好であるとの注入データは、寒色系の色データに変換され、不良であるとの注入データは、暖色系の色データに変換されてもよい。
好ましくは、表示画像4には、色と良否状態との関係を示す凡例47が表示される。
【0039】
さらに、注入孔配置
図40は、注入量基準の良否状態を表す絵
図44、注入圧基準の良否状態を表す絵
図45、注入量及び注入圧などを総合した良否状態を表す絵
図46などを含む。図示は省略するが、さらに注入停止回数に基づく良否状態を表す絵図などが含まれていてもよい。これら絵
図44,45,46の全部を同時に表示してもよく、絵
図44,45,46の一部を選択的に表示してもよい。
【0040】
トンネル1は次のようにして施工される。
切羽1eの前方の地山を掘削して、トンネル1をあるスパンだけ掘進する(掘進工程)。
トンネル1の周壁には覆工(図示せず)を構築する(覆工構築工程)。
さらに、補助工法として、ドリルジャンボ(図示せず)によって先受け鋼管20を打設することで注入孔21を形成する(先受け鋼管打設工程(注入孔形成工程))。
その後、前記ドリルジャンボを後退させ、入れ替わりにトラック5を切羽1e側へ前進させる。
トラック5の注入機10から延びる注入管13を注入孔21に差し入れる。続いて、注入ポンプ11を駆動することによって、注入材2を注入孔21から地山に注入する(注入工程)。
一般に、まず孔番号が奇数番の注入孔21へ注入を行い、その後、偶数番の注入孔21へ注入を行う。各注入孔21において、注入領域R1,R2,R3ごとに対応する注入ポンプ11によって注入を行う。
注入材2の硬化後、次のスパンの掘進工程を行う。以上の工程を反復する。
【0041】
前記のトンネル施工の際、トンネル施工支援システム3は次のように動作され、又は使用される。
図9のフローチャートに示すように、PLC30は、注入工程の期間中、注入ポンプ11による注入流速(kg/min)ひいては注入量(kg)、及び対応する注入圧センサ17による注入圧(MPa)を含む注入データを取得する(ステップ101)。
取得した注入データは、随時、PC端末31すなわち据付端末38及び携行PC端末39へそれぞれ送信される(ステップ102)。PLC30は新たな注入データを取得する度に送信してもよく、所定時間(1秒〜10秒)置きにまとめて送信してもよい。
各PC端末31(38,39)は、注入データ受取プログラム31qの働きによって、注入データをPLC30から受信し(ステップ201)、その注入データを受信時刻などと共に記憶部31mに蓄積する(ステップ202)。
【0042】
なお、PLC30と据付PC端末38とは有線LAN接続であるから、通信エラーが発生しにくい。したがって、据付PC端末38に蓄積された注入データのほうが、携行PC端末39に蓄積された注入データより信頼性が高いと言える。そこで、据付PC端末38の蓄積注入データは、定期的に携行PC端末39へ送信され、携行PC端末39の注入データが据付PC端末38からのデータに更新(上書き)される。この場合、携行PC端末39は、PLC30からの注入データを、据付PC端末38を介して間接的に受け取ることになる。
【0043】
さらにPC端末31(38,39)は、良否データ作成プログラム31rの働きによって、記憶部31mの注入データ31eに基づいて、各注入孔21の領域R1,R2,R3ごとに、地山の良否状態を示す良否データ31fを作成する(ステップ203)。
【0044】
ここで、作業者A等がPC端末31(38又は39)に対して地山状況の表示要求を入力したものとする(ステップ204)。該入力を受けたPC端末31は、表示データ作成プログラム31sを起動して、各注入孔21及びその周辺部の良否状態、更には各領域R1,R2,R3の良否状態を色で表した注入孔配置
図40を含む表示データ31gを作成する(ステップ205)。更にPC端末31は、作成した表示データ31gをディスプレイ31cに出力表示する(ステップ2
06)。
これによって、作業者A等は、注入孔配置
図40を観ることで切羽前方の地山の良否状態を直観的に把握できる。専門的な知識や経験は不要である。
このように、トンネル施工支援システム3を用いて、切羽前方の地山の状況を可視化することによって、トンネル1の掘進を適切かつ安全に行うことができる。掘削中の肌落ちなどの可能性があれば事前に対処できる。
しかも、トンネル施工支援システム3によれば、トンネル施工工程における補助工法としての注入工程中に切羽前方の地山の良否状態に関するデータを取得できるから、効率的である。
【0045】
PLC30による注入データ31eの取得、PC端末31による注入データ31eの受け取り、良否データ31fの作成、表示データ31gの作成、ディスプレイ31cへの出力表示の工程を連続して、リアルタイムで実行してもよい。これによって、施工中、作業者A等は、注入状況ひいては地山の良否状態をリアルタイムで把握できる。
【0046】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、視覚的に認識可能な表示は、地山の良否状態に応じた模様であってもよい。
表示データが、状態が不良な地山部分に対して注意を促す文字その他の表示を含んでいてもよい。
トンネル1の外部の例えばオフィスや詰所の外部コンピュータが、トンネル施工支援システム3のネットワークに組み込まれ、PC端末31の1つとして機能していてもよい。
前記外部コンピュータとPLC30及び端末38,39との接続には、インターネットなどの公衆通信網5を用いてもよい。前記外部コンピュータとPLC30及び端末38,39によって、仮想プライベートネットワーク(VPN)が構築されるようにしてもよい。
表示データをプリンター(出力表示部)で紙出力してもよい。
トンネル施工支援システムのフロー(
図9)は適宜変更できる。例えば、地山状況表示要求(ステップ204)を受けた段階で良否データを作成してもよい(ステップ203)。
注入材2は、ウレタン系発泡樹脂に限らず、モルタル、セメントなどであってもよい。
注入材の注入対象及びシステム3による管理対象は、施工中のトンネルの周辺の地山であればよく、切羽前方の地山に限らず、トンネル上方、トンネル下方などであってもよい。