特開2021-178085(P2021-178085A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2021-178085歯科用配管内の有価物の回収装置並びに回収方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-178085(P2021-178085A)
(43)【公開日】2021年11月18日
(54)【発明の名称】歯科用配管内の有価物の回収装置並びに回収方法
(51)【国際特許分類】
   A61G 12/00 20060101AFI20211022BHJP
【FI】
   A61G12/00 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2020-85802(P2020-85802)
(22)【出願日】2020年5月15日
(71)【出願人】
【識別番号】520169225
【氏名又は名称】有限会社パラテック
(74)【代理人】
【識別番号】100092163
【弁理士】
【氏名又は名称】穴見 健策
(74)【代理人】
【識別番号】100136928
【弁理士】
【氏名又は名称】高宮 章
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 悌一郎
【テーマコード(参考)】
4C341
【Fターム(参考)】
4C341LL12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】歯科用配管内に付着、堆積した貴金属等の有価物を、簡単かつスムーズに回収して、貴重な資源の有効活用や有価物の売却による収益化を図ることができる歯科用配管内の有価物の回収装置を提供する。
【解決手段】歯科医療施設100に設置された歯科用配管内102に出し入れ自在に挿入される洗浄用ホース16を有し、該洗浄用ホース16の吐出部18から洗浄水を高圧噴射することにより歯科用配管102内に付着・堆積した有価物を含む汚泥を落とす洗浄装置12と、歯科用配管102に連通接続され、洗浄装置12により落とされた歯科用配管102内の有価物を含む汚泥と洗浄水とを負圧吸引し回収する吸引装置14と、を備えた歯科用配管内の有価物の回収装置10。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科医療施設に設置された歯科用配管内に出し入れ自在に挿入される洗浄用ホースを有し、該洗浄用ホースの吐出部から洗浄水を高圧噴射することにより歯科用配管内に付着・堆積した有価物を含む汚泥を落とす洗浄装置と、
歯科用配管に連通接続され、洗浄装置により落とされた歯科用配管内の有価物を含む汚泥と洗浄水とを負圧吸引し回収する吸引装置と、を備えたことを特徴とする歯科用配管内の有価物の回収装置。
【請求項2】
洗浄装置は、洗浄用ホースの吐出部に設けられ、洗浄水を洗浄用ホースの歯科用配管内への挿入方向とは逆斜め方向で歯科用配管内壁に向けて噴射する逆斜め噴射機構を含み、
吸引装置は、歯科用配管への洗浄用ホースの挿入元側となる端部に連通接続されたことを特徴とする請求項1記載の歯科用配管内の有価物の回収装置。
【請求項3】
歯科用配管の一端部に着脱可能に連通接続されるアダプタ管であり、洗浄用ホースの移動経路に介在し同洗浄用ホースを管内部に出し入れ自在に挿通させるホース挿通部と、
ホース挿通部から分岐接続されて吸引装置に管内部が連通接続される吸引系接続部と、を含むアダプタ管を有することを特徴とする請求項1又は2記載の歯科用配管内の有価物の回収装置。
【請求項4】
アダプタ管のホース挿通部は、該歯科用配管に一端部を着脱可能に接続される基部管と、
該基部管の該歯科用配管に接続される一端部とは対向する他端側を閉鎖する閉鎖部と、
該閉鎖部に該洗浄装置の洗浄用ホースを該基部管の軸線方向に沿って挿通させるように穿孔された挿通孔と、を有し、
吸引系接続部は、基部管に分岐接続され、該基部管の軸線方向と交差方向に管路を向けて設けられた接続管部を含むことを特徴とする請求項3記載の歯科用配管内の有価物の回収装置。
【請求項5】
歯科医療施設に設置された歯科用配管内から有価物を回収する方法であり、
該歯科用配管内に洗浄装置の洗浄用ホースを挿入しつつ該洗浄用ホースの吐出部から洗浄水を高圧噴射して該歯科用配管内に付着・堆積した有価物を含む汚泥を落とす洗浄工程と、
該洗浄工程により該歯科用配管内に流れる該洗浄装置からの洗浄水と該歯科用配管内から該洗浄水により落とされた有価物を含む汚泥とを該歯科用配管に連通接続された吸引装置を介して負圧吸引することにより回収する吸引工程と、を同時に又は所定のタイミングで行いながら、該汚泥ごと有価物を回収することを特徴とする歯科用配管内の有価物の回収方法。
【請求項6】
洗浄用ホースの吐出部から洗浄用ホースの歯科用配管内への挿入方向とは逆斜め方向となるように洗浄水を歯科用配管内壁に向けて噴射させ、
洗浄水により落とされた有価物を含む汚泥と洗浄水を負圧吸引し回収する吸引装置を洗浄用ホースの歯科用配管への挿入元側に連通接続して配置させたことを特徴とする請求項5記載の歯科用配管内の有価物の回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科医院等の歯科医療施設に設置されている配水系配管やバキューム系配管等の歯科用配管内に付着・堆積した汚泥中の有価物の回収に利用できる歯科用配管内の有価物の回収装置並びに回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科治療の際には、金、銀、白金、パラジウム、チタンなどの金属の切削粉等が生じるが、バキュームで吸引されてバキューム系配管に集約して排水されたり、唾液や口腔内を洗浄する水等とともに排水管に排水されたりして、廃棄されている場合が多い。よって、金、銀等の価値が高い貴金属を微量ずつとはいえ常に廃棄しているとともに、環境にも悪影響があり、下水処理施設の負担が大きい等の問題が生じていた。これに対し、例えば、特許文献1には、歯治療時で生じる貴金属の回収を可能とした歯治療時発生汚物処理システムが提案されている。特許文献1の歯治療時発生汚物処理システムは、口腔内吸引端末装置で吸い込んだ歯治療発生汚物を排出する排出部と浄化槽との間に、貴金属を含むヘドロを溜めるヘドロ溜め装置が取り付けられており、ヘドロ溜め装置内にヘドロが溜まったら、このヘドロ溜め装置そのものを取り外して、貴金属を含むヘドロを回収しようとするものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−15057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バキューム系配管や排水管等の歯科用配管から流れ出る汚水については、上記特許文献1のようなヘドロ溜め装置等を利用して貴金属等を回収できる可能性がある。しかしながら、歯科用配管内には、歯科治療時に発生する金属粉等を含む汚水が治療の際に流れるが、数年〜十数年等の長期間の経過時には、金属粉等が完全には流れ出ずに、該歯科用配管内に汚泥として付着・堆積している場合がある。歯科用配管は、病院の建物の床下等に固定的に設置されており、堆積した汚泥を該配管から簡単に取り除くことが困難であるとともに、従来では、この歯科用配管内に堆積した金属粉等の有価物を回収することについてはほとんど着目されていなかった。
【0005】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その一つの目的は、歯科用配管内に付着、堆積した貴金属等の有価物を、簡単かつスムーズに回収して、貴重な資源の有効活用や有価物の売却による収益化を図ることができる歯科用配管内の有価物の回収装置並びに回収方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、歯科医療施設100に設置された歯科用配管内102(108、110)に出し入れ自在に挿入される洗浄用ホース16を有し、該洗浄用ホース16の吐出部18から洗浄水Wtを高圧噴射することにより歯科用配管102(108、110)内に付着・堆積した有価物を含む汚泥Mdを落とす洗浄装置12と、歯科用配管102(108、110)に連通接続され、洗浄装置12により落とされた歯科用配管102(108、110)内の有価物を含む汚泥Mdと洗浄水とを負圧吸引し回収する吸引装置14と、を備えた歯科用配管内の有価物の回収装置10から構成される。
【0007】
また、洗浄装置12は、洗浄用ホース16の吐出部18に設けられ、洗浄水Wを洗浄用ホース16の歯科用配管102(108、110)内への挿入方向Dとは逆斜め方向で歯科用配管内壁に向けて噴射する逆斜め噴射機構26を含み、吸引装置14は、歯科用配管102(108、110)への洗浄用ホース16の挿入元側となる端部に連通接続されたこととしてもよい。
【0008】
また、歯科用配管102(108、110)の一端部に着脱可能に連通接続されるアダプタ管24であり、洗浄用ホース16の移動経路に介在し同洗浄用ホース16を管内部に出し入れ自在に挿通させるホース挿通部34と、ホース挿通部34から分岐接続されて吸引装置14に管内部が連通接続される吸引系接続部36と、を含むアダプタ管24を有することとしてもよい。
【0009】
また、アダプタ管24のホース挿通部34は、該歯科用配管102(108、110)に一端部を着脱可能に接続される基部管38と、該基部管の該歯科用配管に接続される一端部とは対向する他端側を閉鎖する閉鎖部40と、該閉鎖部40に該洗浄装置12の洗浄用ホース16を該基部管38の軸線方向に沿って挿通させるように穿孔された挿通孔42と、を有し、吸引系接続部36は、基部管38に分岐接続され、該基部管38の軸線方向と交差方向に管路を向けて設けられた接続管部48を含むこととしてもよい。
【0010】
さらに、本発明は、歯科医療施設100に設置された歯科用配管102(108、110)内から有価物を回収する方法であり、該歯科用配管102(108、110)内に洗浄装置12の洗浄用ホース16を挿入しつつ該洗浄用ホース16の吐出部18から洗浄水Wを高圧噴射して該歯科用配管102(108、110)内に付着・堆積した有価物を含む汚泥を落とす洗浄工程と、該洗浄工程により該歯科用配管102(108、110)内に流れる該洗浄装置12からの洗浄水と該歯科用配管102(108、110)内から該洗浄水により落とされた有価物を含む汚泥とを該歯科用配管102(108、110)に連通接続された吸引装置14を介して負圧吸引することにより回収する吸引工程と、を同時に又は所定のタイミングで行いながら、該汚泥ごと有価物を回収する歯科用配管内の有価物の回収方法から構成される。
【0011】
また、洗浄用ホース16の吐出部18から洗浄用ホース16の歯科用配管102(108、110)内への挿入方向Dとは逆斜め方向となるように洗浄水Wを歯科用配管内壁に向けて噴射させ、洗浄水により落とされた有価物を含む汚泥と洗浄水を負圧吸引し回収する吸引装置14を洗浄用ホース16の歯科用配管102(108、110)への挿入元側に連通接続して配置させたこととしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の歯科用配管内の有価物の回収装置によれば、歯科医療施設に設置された歯科用配管内に出し入れ自在に挿入される洗浄用ホースを有し、該洗浄用ホースの吐出部から洗浄水を高圧噴射することにより歯科用配管内に付着・堆積した有価物を含む汚泥を落とす洗浄装置と、歯科用配管に連通接続され、洗浄装置により落とされた歯科用配管内の有価物を含む汚泥と洗浄水とを負圧吸引し回収する吸引装置と、を備えたことから、長年の使用により歯科用配管内に付着、堆積した金、銀等の貴金属等の有価物を、簡単かつスムーズに回収することができる。その結果、貴重な資源の有効活用や有価物の売却による収益化を図ることができる。
【0013】
また、洗浄装置は、洗浄用ホースの吐出部に設けられ、洗浄水を洗浄用ホースの歯科用配管内への挿入方向とは逆斜め方向で歯科用配管内壁に向けて噴射する逆斜め噴射機構を含み、吸引装置は、歯科用配管への洗浄用ホースの挿入元側となる端部に連通接続された構成とすることにより、洗浄用ホースからの噴射力による配管内での水流れ方向と吸引装置による負圧吸引方向とを略同じ方向となるので、有価物を含む汚泥をスムーズにかつ、省エネルギーで効率的に回収することができる。
【0014】
また、歯科用配管の一端部に着脱可能に連通接続されるアダプタ管であり、洗浄用ホースの移動経路に介在し同洗浄用ホースを管内部に出し入れ自在に挿通させるホース挿通部と、ホース挿通部から分岐接続されて吸引装置に管内部が連通接続される吸引系接続部と、を含むアダプタ管を有する構成とすることにより、歯科用配管への洗浄用ホースのホース挿入構造と同歯科用配管のホース挿入元側での吸引装置との接続構造を簡単な構成で具体的に実現できる。
【0015】
また、アダプタ管のホース挿通部は、該歯科用配管に一端部を着脱可能に接続される基部管と、該基部管の該歯科用配管に接続される一端部とは対向する他端側を閉鎖する閉鎖部と、該閉鎖部に該洗浄装置の洗浄用ホースを該基部管の軸線方向に沿って挿通させるように穿孔された挿通孔と、を有し、吸引系接続部は、基部管に分岐接続され、該基部管の軸線方向と交差方向に管路を向けて設けられた接続管部を含む構成とすることにより、アダプタ管を簡単な構造で具体的に実現できるとともに、吸引装置による吸引力を保持した状態で、洗浄用ホースのアダプタ管内部への出し入れを該ホースに負荷をかけることなくスムーズに行え、操作性及び実用性が高い。
【0016】
さらに、本発明の歯科用配管内の有価物の回収方法によれば、歯科医療施設に設置された歯科用配管内から有価物を回収する方法であり、該歯科用配管内に洗浄装置の洗浄用ホースを挿入しつつ該洗浄用ホースの吐出部から洗浄水を高圧噴射して該歯科用配管内に付着・堆積した有価物を含む汚泥を落とす洗浄工程と、該洗浄工程により該歯科用配管内に流れる該洗浄装置からの洗浄水と該歯科用配管内から該洗浄水により落とされた有価物を含む汚泥とを該歯科用配管に連通接続された吸引装置を介して負圧吸引することにより回収する吸引工程と、を同時に又は所定のタイミングで行いながら、該汚泥ごと有価物を回収することから、長年の使用により歯科用配管内に付着、堆積した金、銀等の貴金属等の有価物を、簡単かつスムーズに回収することができる。その結果、貴重な資源の有効活用や有価物の売却による収益化を図ることができる。
【0017】
また、洗浄用ホースの吐出部から洗浄用ホースの歯科用配管内への挿入方向とは逆斜め方向となるように洗浄水を歯科用配管内壁に向けて噴射させ、洗浄水により落とされた有価物を含む汚泥と洗浄水を負圧吸引し回収する吸引装置を洗浄用ホースの歯科用配管への挿入元側に連通接続して配置させた構成とすることにより、洗浄用ホースからの噴射力による配管内での水流れ方向と吸引装置による負圧吸引方向とが略同じ方向となるので、有価物を含む汚泥をスムーズにかつ、省エネルギーで効率的に回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1の実施形態に係る歯科用配管内の有価物の回収装置並びに回収方法の概略図である。
図2図1の歯科用配管内の有価物の回収装置の一部拡大説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下添付図面を参照しつつ本発明の歯科用配管内の有価物の回収装置並びに回収方法の実施形態について説明する。本発明に係る歯科用配管内の有価物の回収装置並びに回収方法は、歯科医院等での歯科医療施設に配管設置されている歯科用配管内に付着・堆積された有価物(例えば、歯科治療の際などに発生する金、銀、白金、パラジウム、チタンの貴金属の切削粉等)を容易に回収することを可能としたものである。図1図2は、本発明の歯科用配管内の有価物の回収装置並びに回収方法の第1の実施形態を示している。図1図2に示すように、本実施形態に係る歯科用配管内の有価物の回収装置10は、歯科医療施設100に設置された歯科用配管102内に付着・堆積した有価物を含む汚泥を落とす洗浄装置12と、該洗浄装置12により落とされた歯科用配管102内の有価物を含む汚泥を負圧吸引し回収する吸引装置14と、を備えている。図1は、歯科医療施設100における診療設備及び歯科用配管の一例を模式的にあらわすとともに、本実施形態の歯科用配管内の有価物の回収装置10を概略で説明した概略図である。図2は、歯科用配管内の有価物の回収装置10の要部を拡大し断面した説明図である。
【0020】
本実施形態では、例えば、歯科医療施設100は、1台の歯科用サクション(歯科用バキューム)104によって複数台の診療ユニット106の吸引を行う、いわゆるセントラルバキューム方式の設備の例で説明する。図1に示すように、歯科医院等の歯科医療施設100では、吸引ポンプ等を有した歯科用サクション104に該施設の床下等に配管されたバキューム系配管108を介して、複数台(図上、3台)の診療ユニット106が接続されている。診療ユニット106には、診察台、バキュームチップ等を有する吸引端末、口腔内を洗浄するためのスピットン等が設置されている。歯科治療時には、診療ユニット106から、金、銀、白金、パラジウム等の貴金属の切削粉等が生じるが、それらの金属粉は、唾液、血液、口腔洗浄水等とともに、バキューム系配管108に吸引されて集約される。バキューム系配管108には、分離器112が接続されており、分離器108は、各診療ユニット104からバキューム系配管108内を通って歯科用サクション104側に吸引されてくる液状物や固形物を含む汚水等と気体(空気)とを分離し、気体はエアフィルタを介して歯科用サクション104に吸引され、汚水等については、該分離器112に接続された排水系配管110に流出される。本実施形態では、バキューム系配管108や配水系配管110等が歯科用配管102であり、本実施形態の歯科用配管内の有価物の回収装置10は、長期間の利用によりバキューム系配管108内に付着・堆積している金属粉等の有価物を含む汚泥を回収する場合について説明する。なお、歯科医療施設100及びその歯科用配管102の構成は、上記のものに限らず、例えば、モーターバキューム方式、エアーバキューム方式の設備やそれに伴う配管構成、その他任意の構成のものでも適用することができる。
【0021】
洗浄装置12は、バキューム系配管108や配水系配管110歯科用配管102内に付着又は堆積した有価物を含む汚泥を落とすための洗浄手段であり、歯科用配管102内に出し入れ自在に挿入される洗浄用ホース16を有する。図1図2に示すように、洗浄装置12は、例えば、該洗浄用ホース16の吐出部18から洗浄水Wtを歯科用配管102の管内壁に向けて高圧噴射することにより、歯科用配管102内に付着又は堆積した有価物を含む汚泥Mdを落とす高圧洗浄機からなる。洗浄装置12は、例えば、ポンプで水を加圧して高圧水を供給する洗浄機本体20と、洗浄機本体20に接続された前記洗浄用ホース16と、洗浄用ホースの先端に設けられた吐出部18と、を有する。洗浄機本体20は、例えば、電動モータでポンプを作動させて該本体に給水される水道水を加圧し、洗浄用ホース16に高圧水を圧送供給する。洗浄用ホース16は、自在に曲げたり撓ませたりすることができる耐圧性ホースからなり、十数mm程度の長さで設けられている。なお、洗浄用ホース16の長さは、歯科用配管の長さ等に応じて任意に設定してもよく、リール等に巻き取り、繰り出し自在とすることとしてもよい。洗浄用ホース16は、手元スイッチ22により、吐出部18からの洗浄水の高圧噴射と停止を切り替える。洗浄用ホース16は、後述のように歯科用配管102であるバキューム系配管108の一端に接続されたアダプタ管24を介して該バキューム系配管106内に出し入れ自在に挿入される。吐出部18は、洗浄水Wtを洗浄用ホース16の歯科用配管102内への挿入方向Dとは逆斜め方向で歯科用配管102内壁に向けて噴射する逆斜め噴射機構26を含む。逆斜め噴射機構26は、例えば、前端部が略ドーム状に閉鎖されるとともに、該ドーム状の前端部の後方側に形成された括れ部分に洗浄水の噴射口が複数個設けられた逆噴射ノズル28を含む。逆噴射ノズル26の噴射口は、該ノズルの括れ部分のテーパ状壁面に穿孔されて設けられており、ノズル前方とは逆斜め方向、例えば、ノズルの後方から30〜60度程度傾斜した方向に向けて洗浄水Wtを高圧噴射するように設定されている。本実施形態では、吐出部18の逆噴射ノズル18から噴射する水圧は、大気圧や一般的な水道の水圧よりも高く歯科用配管内102に強く付着している汚泥をも剥離して流すような圧力で設定されるとよく、例えば、8〜12MPaに設定される。
【0022】
吸引装置14は、洗浄装置12により落とされた歯科用配管102内の有価物を含む汚泥Mdと、同洗浄装置12から該配管102内に高圧噴射された汚泥混じりの洗浄水と、を負圧吸引し回収する吸引・回収手段である。図1図2に示すように、吸引装置14は、例えば、歯科用配管102であるバキューム系配管108の一端に連通接続された乾湿両用の負圧吸引機からなる。本実施形態では、吸引装置14とバキューム系配管108との接続は、後述のようにバキューム系配管108の一端に接続されたアダプタ管24を介して洗浄用ホース16の挿入元側となる端部に連通接続されている。吸引装置14は、例えば、負圧を発生させる吸引機本体30と、一端が吸引機本体30に接続されるとともに、他端がアダプタ管24に接続された可撓性の蛇腹管32と、を有する。吸引機本体30は、例えば、該本体にオンオフのスイッチが設けられ、スイッチオン時に電動モータでファン又はポンプを作動させて負圧吸引力を発生させるとともに、蛇腹管32を介して負圧吸引したものを本体内部に設置された回収容器に回収する。蛇腹管32は、曲げ伸ばし自在な可撓性と、負圧吸引力では変形しないような耐圧性を有しており、吸引機本体30とアダプタ管24にそれぞれ着脱可能に取り付けられる。
【0023】
アダプタ管24は、歯科用配管102であるバキューム系配管108の一端部に着脱可能に連通接続され、洗浄用ホース16を挿通させるホース挿通手段と、洗浄用ホース16の挿入元側で吸引装置14を連通接続させる連通接続手段と、を一部材で兼用する。本実施形態では、アダプタ管24は、図1図2に示すように、該アダプタ管内部がバキューム系配管108と内部連通しており、洗浄用ホース16の移動経路に介在し同洗浄用ホース16を管内部に出し入れ自在に挿通させるホース挿通部34と、ホース挿通部34から分岐接続されて吸引装置14に管内部が連通接続される吸引系接続部36と、を含む。
【0024】
ホース挿通部34は、バキューム系配管108に一端部を着脱可能に接続されて洗浄用ホースの移動経路をなす基部管38と、該基部管38のバキューム系配管108に接続される一端部とは対向する他端側を閉鎖する閉鎖部40と、該閉鎖部40に洗浄用ホース16を該基部管38の軸線方向に沿って挿通させるように穿孔された挿通孔42と、を有する。基部管38は、例えば、一端にバキューム系配管108を嵌合状に受け入れて接続される拡径部が一体的に設けられた直管状の管体からなる。基部管38の他端側には、着脱可能に嵌合する閉蓋部材44が組み付けられ、該閉蓋部材44が該他端側を閉鎖する閉鎖部40を形成している。閉蓋部材44の略中心位置またはその近傍に該閉鎖部40を貫通する挿通孔42が設けられている。挿通孔42は、直管状の基部管38の管軸線と略平行な方向に貫通されており、挿通孔42近傍では、洗浄用ホース16を略直線状に前後移動させて負荷なく出し入れすることができる。挿通孔42には、ある程度の気密性を保持しながら洗浄用ホース16を出し入れ挿通できるようにパッキン46が取り付けられている。吸引系接続部36は、基部管38に分岐接続され、該基部管38の軸線方向と交差方向に管路を向けて設けられた接続管部48からなる。接続管部48は、基部管38と内部連通して一体的に形成されており、基部管38の直線状の管軸線から略90度方向にカーブ状に曲げられた曲がり部を介して接続されている。なお、アダプタ管24は、洗浄用ホースの挿入方向や吸引装置との接続管の分岐方向は、上記構造に限定される、任意の方向としてもよい。
【0025】
次に、本実施形態にかかる歯科用配管内の有価物の回収装置10の作用を歯科用配管内の有価物の回収方法とともに説明する。例えば、図1のような歯科医療施設100のバキューム系配管108内に付着・堆積した有価物を回収する場合に、必要に応じて、ファイバースコープカメラ等でバキューム系配管108内に有価物を含む汚泥が付着又は堆積しているか、その量がどれくらいかを事前に確認する工程を含むこととしてもよい。本実施形態では、有価物の回収対象となる該バキューム系配管108の端部にアダプタ管24を接続し、該アダプタ管24のホース挿通部34を介して洗浄装置12の洗浄用ホース16をバキューム系配管108に挿入していく。アダプタ管24の吸引系接続部36には、吸引装置14の蛇腹管32を接続する。そして、洗浄装置12によるバキューム系配管108内の洗浄工程と、吸引装置14によるバキューム系配管108内からの有価物の吸引工程と、を同時に又は所定のタイミングで行いながら有価物を回収していく。具体的には、洗浄工程では、洗浄装置12の洗浄機本体20を起動させ、高圧水を供給可能としておき、手元スイッチ22をオンすると、バキューム系配管108内に挿入した洗浄用ホース16の吐出部18から洗浄水Wtを高圧噴射する。洗浄水Wtの高圧噴射により、バキューム系配管108の管内壁に付着又は堆積した有価物を含む汚泥Wを落としながら、該配管108内の洗浄用ホース16を前方へ進めていく。この際、洗浄用ホース16は、可撓性があるのでバキューム系配管108が曲がっていても該配管形状に沿って進め入れていくことができる。同時に、吐出部18には逆斜め噴射機構26が設けられているので、洗浄水の逆斜め方向への高圧噴射による推進力も相まって洗浄用ホース16を前方にスムーズに進め入れることができるとともに、該配管108から落とした有価物を含む汚泥Mdを洗浄用ホース16の挿入元側に向けて流しやすくする。吸引工程では、吸引装置14を起動し、前記洗浄工程により該バキューム系配管108内から該洗浄水Wtにより落とされた有価物を含む汚泥と、バキューム系配管108内に流れる該洗浄装置12からの洗浄水と、を吸引装置14を介して負圧吸引することにより回収する。すなわち吸引工程では、歯科用配管内の汚泥混じりの洗浄水を負圧吸引して、汚泥ごと有価物を回収する。この際、洗浄用ホースの吐出部18から洗浄用ホース16のバキューム系配管108内への挿入方向とは逆斜め方向となるように洗浄水をバキューム系配管内壁に向けて噴射させるとともに、吸引装置14を洗浄用ホース16のバキューム系配管108への挿入元側に連通接続して配置させていることにより、バキューム系配管108内に落とされた汚泥と洗浄水に対して、高圧噴射による該配管内での水流れ方向と、吸引装置14による同配管内での吸引方向Sdとが略同じ方向に設定されるので、スムーズかつ効率的に汚泥と洗浄水を回収することができる。例えば、洗浄工程と吸引工程を同時に行いながら、該汚泥及び洗浄水の水分ごと有価物を吸引装置14の吸引機本体30内の回収容器に回収する。バキューム系配管108内から有機物を含む汚泥を回収したらその回収した汚泥を、例えば、有価物分析業者に持っていき、汚泥中の有価物を分離回収する。なお、洗浄工程と吸引工程は、同時に行う場合に限らず、例えば、先に洗浄工程のみを行いその終了後に吸引工程を行うようにしたり、洗浄工程と吸引工程とを交互に繰り返し行うようにしたり、洗浄工程を行っている最中に間欠的に吸引工程を行うようにしたり、吸引工程による負圧吸引力を常に作用させた状態で間欠的に洗浄工程を行うようにしたり、洗浄工程と吸引工程を行う時間や割合をそれぞれ任意に設定することとしたりする等、その他所定のタイミングで行いながら、有価物を回収することとしてもよい。また、上記実施形態では、バキューム系配管108内から有機物を回収する例で説明したが、排水系配管110内に付着・堆積した有価物を回収する場合も略同様な方法で有価物を回収することができる。
【0026】
以上説明した本発明の歯科用配管内の有価物の回収装置並びに回収方法は、上記した実施形態のみの構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の本質を逸脱しない範囲において、任意の改変を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の歯科用配管内の有価物の回収装置並びに回収方法は、例えば、歯科医院、総合病院の歯科、歯科技工所などの歯科医療施設の排水管やバキューム配管内に付着・堆積した貴金属等の有価物を回収するのに好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0028】
10 歯科用配管内の有価物の回収装置
12 洗浄装置
14 吸引装置
16 洗浄用ホース
18 吐出部
20 洗浄機本体
24 アダプタ管
26 逆斜め噴射機構
34 ホース挿通部
36 吸引系接続部
38 基部管
40 閉鎖部
42 挿通孔
48 接続管部
100 歯科医療施設
102 歯科用配管
108 バキューム系配管
110 配水系配管
図1
図2