【課題】 物品の形状(高さ)の変更に柔軟に対応できるとともに、フィルムに対して確実かつ美観の良好な横シール(トップシール、エンドシール)を行うことが可能なシール装置を提供する。
【解決手段】 シール装置10は、一対のシーラー30,31を搬送方向に対して略垂直な搬送高さ方向に移動可能な流体シリンダー90と、一対のシーラー30,31を、搬送方向に沿って移動可能な駆動手段65と、を有し、フィルムYA1を挟んで対向配置させた一対のシーラー30,31を移動させながらフィルムYA1を搬送方向に対して横断する方向にシールする際、流体シリンダー90に供給する流速を変化させることで、一対のシーラー30,31の移動速度を変更可能に構成した。
前記一対のシーラーがシール位置に向かって移動を開始する移動開始位置と前記移動速度の組み合わせを変化させることで該一対のシーラーの移動の軌跡を変化可能に構成した、
ことを特徴とする請求項1に記載のシール装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の横シール装置では、一対のシーラーが近接する速度は一定であり、高さが異なる製品をシールする場合には、例えば、シール部に皺が入るなど仕上がりに影響が出る問題があった。
【0005】
また、上下移動(垂直移動)をモータ駆動とすることで、シーラーの近接する速度を調整可能とする装置も知られている。しかしながらこの場合、上下移動(垂直移動)及び前後移動(水平移動)の駆動源がいずれもモーターであるため、特に大型で重量がある物品や、剛性が高い物品を包装する場合において、良好なシールが行えない問題がある。具体的に、特に上下移動において、モーター駆動の場合は例えばカムやリンク機構を介してシーラー(トップシーラー)の移動を行うことが一般的であるが、上下のシーラー同士が最も離間する位置(上側のシーラーは回転の最上部、下側のシーラーは回転の最下部)で停止するように制御したとしても、慣性でシーラーが僅かに移動してしまう場合がある。そうなると、次回のシール時のシーラーの移動開始位置がずれることから、シール位置がずれたり、シール時にフィルムを噛みこむ原因となる場合がある。また、物品の高さが高い場合には、移動するシーラーと物品が接触する恐れもあり、物品の破損や、シーラーの破損(被包装物が剛性の高い物品の場合)が生じる問題がある。
【0006】
このように慣性によってシーラーの停止位置がずれた場合、モーターの回転方向を逆方向にすることで適切な位置に戻すことは可能ではあるが、物品の搬送速度が速い場合などは、運転中にタイミングで位置を戻す制御を行うことは現実的ではない。このよう場合には、シーラーの上下方向の駆動手段として、水平方向のずれがなく上下方向の移動制御が一意に(正確に)行える流体シリンダーの採用が望ましい。
【0007】
しかしながら、流体シリンダーの場合、シーラーの上下方向の移動速度を決定する流速を変化させることができないため、包装する物品の高さの変更に柔軟に対応することができない。
【0008】
図5は、従来の流体シリンダー(不図示)によってシーラー330を駆動する場合の、シーラー330の動作を示す概念図である。同図においては上部のシーラー330のみを記載し、下部のシーラーは省略する。同図は、厚み(高さ)が小さい物品XA1_3を包むフィルムYA1_3と、厚みが大きい物品XA1_4を包むフィルムYA1_4をそれぞれ、共通の(すなわち同じ動作を行う)シーラー330でシールする場合の側面概念図である。
【0009】
流体シリンダー(例えばエアシリンダーなど)は、シーラー330を垂直方向(図示上下方向)のみに移動させる。したがってこの場合に、シーラー330をボックスモーション動作させるには、流体シリンダーによる垂直方向の移動とともに、水平方向駆動手段によってシーラー330を水平方向(図示左右方向)にも移動させる。これにより、シーラー330は、或る移動開始位置Sから破線矢印のように下降してシール位置PSに達し、フィルムYA1_3、1_4をそれぞれ加圧し、シールする。
【0010】
同図に示すように、例えば厚みが小さい物品XA1_3に好適に設定されたシーラー330を用いて厚みが大きい物品XA1_4のフィルムYA1_4をシールすると、シーラー330に近接するフィルムYA1_4(下流側側面)が急峻となって搬送方向Tの余裕が少なくなり、フィルムYA1_4に皺が寄ったり、シーラー330が物品XA1_4に接触するなどの問題が生じる。
【0011】
また、実線矢印で示す領域PHでは、シールは開始していないものの、シーラー330がフィルムYA1_4に当接または近接し、予熱をしている領域(予熱領域PH)となるのであるが、シーラー330の移動速度が速いと十分な予熱が行えず、シール位置PSでのシールが適切に行えない恐れもある。
【0012】
また、例えばガゼットを形成するような場合、シール位置PSにて十分にフィルムYA1_4にテンションをかけながらフィルムYA1_4の内包への折り込みとシールを行う必要があるが、シーラー330の移動が速いと正確なガゼット形成ができず、またシール状態も粗くなってしまう問題があった。
【0013】
また、逆に厚みが大きい物品XA1_4に好適に設定されたシーラー330を用いると、例えば、シール位置PSから移動開始位置Sまでが長くなるため、厚みが小さい物品XA1_3の処理能力が低下する問題が生じる。
【0014】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、物品の形状(高さ)の変更に柔軟に対応できるとともに、フィルムに対して確実かつ美観の良好な横シール(トップシール、エンドシール)を行うことが可能なシール装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、フィルムを挟んで対向配置させた一対のシーラーを移動させながら前記フィルムを搬送方向に対して横断する方向にシールするシール装置であって、前記一対のシーラーを前記搬送方向に対して略垂直な搬送高さ方向に移動可能な流体シリンダーと、前記一対のシーラーを、前記搬送方向に沿って移動可能な駆動手段と、を有し、前記流体シリンダーを制御する流速を変化させることで、前記一対のシーラーの移動速度を変更可能に構成した、ことを特徴とするシール装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、物品の形状(高さ)の変更に柔軟に対応できるとともに、フィルムに対して確実かつ美観の良好な横シール(トップシール、エンドシール)を行うことが可能なシール装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<シール装置>
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るシール装置10の構成について説明する。なお、本実施形態のシール装置10は、フィルムYA1を挟んで対向配置させた一対のシーラー(上部シーラー30および下部シーラー31)を移動させながらフィルムYA1を、その搬送される方向に対して横断する方向にシールする横シール装置である。横シール装置は、またトップシール装置あるいはエンドシール装置と称される場合もある。また、本明細書における各図において、一部の構成を適宜省略して、図面を簡略化する。そして、本明細書における各図において、部材の大きさ、形状、厚みなどを適宜誇張して表現する。ここで、本実施形態における方向の定義としては便宜上、フィルムYA1が搬送される方向を搬送方向Tとし、搬送方向Tに直交するフィルムYA1の幅方向を搬送幅方向Wとし、搬送方向Tおよび搬送幅方向Wに直交する方向を搬送高さ方向Hとして説明する。
【0019】
図1は、シール装置10の概要を示す図であり、搬送方向Tから見た要部を示す正面図である。また同図においてシール装置10を動作させる流体シリンダーの制御を説明するための流体回路図も併記している。
【0020】
シール装置10は、例えば、横型の自動包装装置に採用される。横型の自動包装装置は、被包装物(物品)を所定間隔毎に搬送し、その搬送途中で熱溶融性のフィルム(包装フィルム、以下同様)YA1を折り曲げたり、重ね合せたり、所定形状に成形したり等して、被包装物の周囲を囲繞し、次いで、フィルムYA1の重合端縁を熱シールするとともに、所定部位を切断することにより包装体(ピロー包装体)を製造するようにしている。
【0021】
シール装置10は、フィルムYA1を挟むように配置される一対の上部シーラー30と下部シーラー31を有する。シール装置10はまた、上部シーラー30と下部シーラー31を搬送方向Tに対して(略)垂直となる方向(搬送高さ方向H)に移動可能な駆動手段80と、両シーラーを搬送方向Tに沿って水平方向に移動可能な駆動手段65を有する。これにより、両シーラー30、31は、ボックス状あるいは略楕円状などの所定の複数種(複数パターン)の軌跡で移動する。つまり本実施形態のシール装置10は、いわゆるボックスモーション式の装置である。
【0022】
図1(a)に示すように、シール装置10は、搬送幅方向Wに伸びる下部支持台33を有する。下部支持台33の上面には、下部シーラー31が取付けられている。下部シーラー31の上面がシール面31aとなる。下部シーラー31は下部支持台33とともに移動する。
【0023】
また、下部支持台33および下部シーラー31に対向するように、その搬送高さ方向Hの上方に上部支持台36および上部シーラー30が設けられる。すなわち、上部支持台36は搬送幅方向Wに伸び、その下方に上部シーラー30が配けられる。上部シーラー30の下面がシール面30aとなる。
【0024】
上部支持台36および下部支持台33は搬送幅方向Wの両側に配置された一対のリニアガイド(直動案内)Lに支持されている。すなわち、上部支持台36および下部支持台33の両端近傍部位には、一対のリニアガイドLのレール35,35が起立状態で設置されており、下部支持台33の両端近傍部位には、レール35を挟持するなどしてレール35上を摺動するスライダ38が固定されている。これにより、上部支持台36および下部支持台33は安定して搬送高さ方向Hに移動(上下移動)できるようになっている。
【0025】
上部シーラー30(上部支持台36)と下部シーラー31(下部支持台33)とは、垂直方向(搬送高さ方向H)の駆動手段80により、同期して互いに近接または離間するように、上下移動可能に構成される。この例では、垂直方向の駆動手段80は例えば、リンク機構により上部シーラー30と下部シーラー31を同期して近接・離間するように移動するシーラー開閉手段80である。シーラー開閉手段80については後に詳述する。
【0026】
上部シーラー30は、さらに上部支持台36に対し所定のスパンで上下移動するようになっている。詳細には、上部シーラー30の上面は、上部支持台36に対して搬送高さ方向Hに移動(上下移動)可能な上部シーラー取付台37に固定されている。上部シーラー取付台37の天面には、2本の動力伝達ロッド46が起立形成されており、その動力伝達ロッド46の上端は、エアシリンダー52のシリンダロッド53に連携される。そしてエアシリンダー52に供給されるエア(圧縮空気)によって、上部シーラー取付台37および上部シーラー30は、下方に向けて付勢されて移動し、また流体(エア)の排出(大気開放)によって上方に移動(復帰)するようになっている。
【0027】
フィルムYA1にシールを行う際は、シーラー開閉手段80によって、上部シーラー30(上部支持台36)と下部シーラー31(下部支持台33)を互いに近接させる。そしてフィルムYA1を挟み込んだ状態で、エアシリンダー52によって上部支持台36に対して上部シーラー30を下降させ、上部シーラー30のシール面30aと下部シーラー31のシール面31aで挟まれたフィルムYA1に対して加圧、加熱を行う。
【0028】
さらに、上部支持台36の中央部位には、孔部55が形成されており、その孔部55内を挿通するようにしてシリンダー56が上下移動可能に配置されている。シリンダー56の下端には、カッター58が吊持されており、そのカッター58は、上部シーラー取付台37および上部シーラー30内に上下動自在に収容されている。シリンダー56の駆動によってカッター58を下降させると、同図の一点鎖線で示すように上部シーラー30のシール面30aからカッター58が突出し、その刃先が、下部シーラー31の受け溝に進入する。結果、フィルムYA1がカットされる。
【0029】
<垂直方向駆動手段(シーラー開閉手段)>
図2を参照して、上部シーラー30と下部シーラー31の垂直方向の駆動手段(垂直方向駆動手段)80であるシーラー開閉手段80について説明する。同図(A)、同図(B)は、搬送幅方向Wの一端部(
図1の左方向)から見た側面の一部を省略した図であり、同図(A)が上部シーラー30と下部シーラー31の離間状態(開状態)を示す図であり、同図(B)が両シーラー30,31の近接状態(閉状態)を示す図である。同図(C)は、搬送幅方向Wの一端部(
図1の左方向)から見た側面の一部を抜き出して示す図であり、同図(D)は、シーラーの動作を示す側面概要図である。
【0030】
本実施形態の上部シーラー30と下部シーラー31は、リンク機構により構成されるシーラー開閉手段80によって、同期して近接・離間するように搬送高さH方向に上下移動(開閉)される。シーラー開閉手段80は、例えば、
図2(A)〜同図(C)に示すように、下部シーラー支持軸81と、第1リンク82と、第1ジョイント83と、第2ジョイント84と、第2リンク85と、第3ジョイント86と、第3リンク87と、上部シーラー支持軸88と、流体シリンダー90と、連結アーム91と、連結軸92などを有する。
【0031】
なお、同図(A),同図(B)に示す構成は、搬送幅方向Wの両端側において対称に設けられている。つまり、詳細な図示は省略するが、同図(C)に示す他端側においても同図(A),同図(B)と同様の構成を有しており、他端側ではそれらに加えて、流体シリンダー90と、連結アーム91と、連結軸92が設けられている(
図1参照)。
【0032】
下部シーラー支持軸81は、下部支持台33の搬送幅方向Wの両端に固定される。第1リンク82は長手方向の一端(
図2(A)下方の端部)が下部シーラー支持軸81を介して下部支持台33に揺動可能に接続され、他端(同図上方の端部)が第1ジョイント83を介して第2リンク85の一端に揺動可能に接続される。第2ジョイント84は、支持枠60の上方において搬送幅方向Wに延在し、支持枠60に対して回転可能に設けられる。第2リンク85は、第2ジョイント84(
図1参照)の回転と一体的にこれを中心として揺動可能であり、第2リンク85の他端は、第3ジョイント86を介して第3リンク87の一端が揺動可能に接続される。第3リンク87の他端は、上部シーラー支持軸88を介して上部支持台36に揺動可能に接続される。
【0033】
また、
図1および
図2(C)に示すように、第2ジョイント84の他端側に連結アーム91の一端が固定される。第2ジョイント84は、連結アーム91に対しては相対的に回転不可であり、すなわち連結アーム91の姿勢の変位に伴って支持枠60に対して相対的に回転可能となっている。連結アーム91の他端は、連結軸92を介して流体シリンダー(例えば、エアシリンダー)90のシリンダロッド90Aに対して揺動可能に接続される。
【0034】
シーラー開閉手段80の動作は以下の通りである。まず、同図(A)に示す離間状態(開状態)において、同図(C)に示すエアシリンダー90によってシリンダロッド90Aが上昇すると、連結軸92の位置が上昇する。連結アーム91は連結軸92側の端部が上昇することによって他端側に固定された第2ジョイント84を支持枠60に対して回転(例えば図示の時計回りの方向に回動)させる。
【0035】
第2ジョイント84の回転に伴い、第2リンク85が第2ジョイント84を中心に回動(例えば図示の時計回りの方向に回動)する。これにより同図(B)に示すように、第2ジョイント84を中心に第1ジョイント83が搬送高さ方向Hの上方に、第3ジョイント86が下方に位置するように移動する。第3ジョイント86の下降(同図(A)に示す位置から搬送高さ方向Hの下方への移動)に伴い、これに接続する上部支持台36が押し下げられ、上部シーラー30が下降する。一方、第1ジョイント83の上昇(同図(A)に示す位置から搬送高さ方向Hの上方への移動)に伴い、これに接続する下部支持台33が押し上げられ、下部シーラー31が上昇する。このようにして、上部シーラー30と下部シーラー31は、最も近接する位置に移動(閉動作)し、両シーラー30、31の近接状態(閉状態、同図(B))となる。
【0036】
同図(B)に示す近接状態(閉状態)において、エアシリンダー90によってシリンダロッド90Aが下降すると、連結軸92の位置が下降する(同図(C))。連結アーム91は連結軸92側の端部が下降することによって他端側に固定された第2ジョイント84を回転(例えば図示の反時計回りの方向に回動)させる。
【0037】
第2ジョイント84の回転に伴い、第2リンク85が第2ジョイント84を中心に回動(例えば図示の反時計回りの方向に回動)する。これにより同図(B)に示す状態から、同図(A)に示すように、第1ジョイント83と第3ジョイント86が搬送高さ方向Hの同じ高さに移動する。つまり同図(B)の状態から、第1ジョイント83は下方に位置するように移動し、第3ジョイント86は上方に位置するように移動する。この移動に伴い、これに接続する上部支持台36が押し上げられて上部シーラー30が上昇し、下部支持台33が押し下げられて下部シーラー31が下降する。このようにして、上部シーラー30と下部シーラー31は、最も離間するする位置に移動(開動作)する。
【0038】
<水平方向駆動手段>
引き続き
図2(A)、同図(B)を参照して水平方向の駆動手段(水平方向駆動手段)65について説明する。水平方向駆動手段65は、搬送方向Tに沿って延在し、シール装置10の機枠(不図示)に固定されるレール61と、レール61を挟持するなどしてレール61上を摺動するスライダ62と、スライダ62に一端が固定されるリンク機構63と、リンク機構63の他端に回転軸(不図示)が接続するモーター(不図示)などを有する。スライダ62の上面には支持枠60が固定される。
【0039】
このような構成により、モーターが駆動すると回転軸の回転運動がリンク機構63によって揺動運動に変換され、リンク機構63の一端に結合したスライダ62がレール61に沿って搬送方向Tの前後(同図(A)、同図(B)では左右)方向に移動する。これにより支持枠60に支持される上部支持台36、上部シーラー取付台37、上部シーラー30、下部支持台33および下部シーラー31がスライダ62の移動の範囲(上流側位置T1と下流側位置T2の間)内で、搬送方向Tの前後に水平移動可能となる。
【0040】
上記した垂直方向駆動手段80と水平方向駆動手段65により、同図(D)に示すように、上部シーラー30と下部シーラー31とは、例えば破線で示す軌跡で移動する。詳細には、上部シーラー30と下部シーラー31は、物品が収納されて筒状となったフィルムYA1を挟んで上下に配置され、破線のような軌跡で移動する。そして、上部シーラー30と下部シーラー31とが最も近接した位置(シール位置SP)において、フィルムYA1を挟持・加圧し、両シーラー30,31の熱により、フィルムYA1がシールされる。なお、シール位置SPでは、両シール面30a,31aでフィルムYA1の所定部位を挟持しつつ、一定区間、フィルムYA1の搬送方向Tに沿って平行移動するようになっている。そして、シールとともにカッター58を下降させ、フィルムYA1を搬送幅方向Wにカットする。このようにして、シール装置10は、物品XA1の長さに応じたピッチ毎に、フィルムYA1の幅方向(搬送幅方向W)にシール(例えばトップシール)とカットを行う。
【0041】
シール装置10は、制御手段(不図示)によって統括的に制御される。すなわち、シール装置10の各部位は、制御手段の制御下において動作して、その動作状況が制御手段によって管理されている。制御手段は、CPU、RAM、及びROM等から構成され、各種制御を実行する。CPUは、いわゆる中央演算処理装置であり、各種プログラムが実行されて各種機能を実現する。RAMは、CPUの作業領域として使用される。ROMは、CPUで実行される基本OSやプログラムを記憶する。
【0042】
そして本実施形態のシール装置10は、垂直方向駆動手段(シーラー開閉手段)80の流体シリンダー90に供給する流速を変化させることで、一対のシーラー30、31の移動速度を変更可能に構成されている。また、一対のシーラー30、31がシール位置PS(
図2(D)参照)に向かって移動を開始する移動開始位置と移動速度の組み合わせを変化させることで一対のシーラー30、31の移動の軌跡(のパターン)を変化させることが可能となる。
【0043】
<流体シリンダーの制御>
再び
図1の流体回路図を参照してシール装置10のシーラー開閉手段80を動作させる流体シリンダー(例えば、エアシリンダー)90の制御について説明する。
図1はエアシリンダー90の制御を行う流体回路図の一例であり、主要な構成を抜き出して示す図である。なお、本実施形態では流体シリンダー90がエアシリンダーである場合を例示するが、他の流体シリンダーであってもよい。
【0044】
エアシリンダー90は、方向切替弁70に接続するエア流路71によって、エア供給源Pまたは大気に切り替え可能に構成される。すなわち、エアシリンダー90の供給口90Iには圧縮空気が供給され、またエアシリンダー90で押された空気は、排出口(排気口)90Oから圧力調整弁で適宜調圧され、電磁弁等を経由して大気中に放出される。これにより、一対のシーラー30,31の開閉動作が行なわれる。
【0045】
詳細には、同図に示すように、エア流路71は、エアシリンダー90の供給口90Iに接続してエア(圧縮空気)を供給する供給路71Iと、エアシリンダー90の排出口90Oに接続してエアを排出(排気)する排出路71Oを含む。また、エア流路71は、第一の流速でエア(圧縮空気)を通過させる第一の流路R1と、第二の流速(第一の流速とは異なる)でエア(圧縮空気)を通過させる第二の流路R2を含む。
【0046】
一例として、排出路71Oは、エアシリンダー90から第一の流速でエア(圧縮空気)を排出する第一の流路R1と、エアシリンダー90から第二の流速(第一の流速とは異なる)でエア(圧縮空気)を排出する第二の流路R2を含む。
【0047】
より詳細には、排出路71Oは、第一の流路(第一流路)R1と第二の流路(第二流路)R2に分岐する。そして、第一流路R1は、電空レギュレータや、オリフィスと逆止弁とから構成されるスピードコントローラ73Aおよび電磁弁74Aを経由して方向切替弁70に接続する。第一流路R1のスピードコントローラ73Aは例えば、エアシリンダー90の圧力室からのエアの排出速度が第一の速度になるように制御する。また、第二流路R2は、電空レギュレータや、オリフィスと逆止弁とから構成されるスピードコントローラ73Bおよび電磁弁74Bを経由して方向切替弁70に接続する。第二流路R2のスピードコントローラ73Bは例えば、同じエアシリンダー90の圧力室からののエアの排出速度が第一の速度とは異なる第二の速度になるように制御する。ここでは一例として第一の速度は第二の速度よりも大きい(高速である)とする。
【0048】
スピードコントローラ73A,73Bによって1つのエアシリンダー90の圧力室からのエアの排出速度が制御される。また、それぞれのスピードコントローラ73A,73Bの下流に設けられた電磁弁74A、74Bによって、排出口90Oに接続する流路(第一流路R1,第二流路R2)が切替可能に構成される。すなわち、電磁弁74Aを開放し電磁弁74Bを閉鎖することでエアシリンダー90の排出口90Oから高速のエアが排出される。一方、電磁弁74Bを開放し電磁弁74Aを閉鎖することで排出口90Oから低速のエアが排出される。この結果、エアシリンダー90は、シリンダロッド53の往動(押し込み)の速度が高速と低速に切り替え可能となる。
【0049】
<シール装置の制御>
次に、シール装置10の制御について説明する。本実施形態では、エアシリンダー90からのエアの排出の流路(第一流路R1,第二流路R2)の切替により、上部シーラー30と下部シーラー31の近接動作(閉動作)の速度を制御する。まず、シール動作の開始に際し、方向切替弁70の切替によって排出路71Oが大気に開放される。このとき、電磁弁74Aを開放して第一の流路R1が大気に開放されると、互いに最も離間した搬送高さ方向Hにおける基準位置(以下、初期高さH0という。)にある上部シーラー30と下部シーラー31とが高速で近接するように移動し、フィルムYA1を加圧してシール位置PSにてシールおよびカットを行う。その後、方向切替弁70の切替によって供給路71Iがエア供給源Pに接続される。これにより上部シーラー30と下部シーラー31は互いに離間し、初期高さH0の位置に復帰する。
【0050】
一方、排出路71Oが大気に開放された状態で、電磁弁74Bを開放して第二の流路R2が大気に開放されると、初期高さH0にある上部シーラー30と下部シーラー31とが低速で近接するように移動し、フィルムYA1を加圧してシール位置PSにてシールおよびカットを行う。その後、方向切替弁70の切替によって供給路71Iがエア供給源Pに接続される。これにより上部シーラー30と下部シーラー31は互いに離間し、初期高さの位置H0に復帰する。
【0051】
このように、エアシリンダー90からエアを排出する第一の流路R1と第二の流路R2の切替によって、上部シーラー30および下部シーラー31の移動速度を制御(高速と低速に変更)できる。移動速度(高速にするか低速にするか)は、物品XA1の形状等に応じて適宜且つ随時選択される。
【0052】
そして、上部シーラー30および下部シーラー31の移動速度に応じて、両者の移動開始位置(シール動作における初期位置)をそれぞれ適宜選択することで、両シーラー30、31の移動の軌跡を異なるパターンにすることができ、包装される物品XA1の形状に応じた適切なシールを行うことができる。
【0053】
図3は、シール装置10におけるシール動作を説明する図であり、同図(A)が搬送幅方向Wから見た上部シーラー30(および下部シーラー31)の側面概念図である。また同図(B)が上部シーラー30および下部シーラー31を抜き出して示す搬送方向Tから見た正面図である。下部シーラー31は、同図(B)に示すようにフィルム搬送面H1を中心として上部シーラー30と線対称の位置関係にあり、これと同期して移動するため、以降の図において一部の図示とその動作の説明を省略する場合がある。
【0054】
上部シーラー30は、垂直方向の駆動手段であるエアシリンダー90によって搬送高さ方向Hの上下(図示上下方向)に移動するとともに、水平方向駆動手段65によって搬送方向Tの前後(図示左右方向)に移動する。エアシリンダー90は、搬送高さ方向Hの所定位置(基準高さ)H0と搬送面H1(付近)の間で上部シーラー30を移動させる。また、水平方向駆動手段65は、スライダ62の移動範囲(上流側位置T1と下流側位置T2の間)で上部シーラー30を移動させる。
【0055】
つまり、同図(A)に示すようにシール動作の開始に際し、初期高さH0にある上部シーラー30を搬送方向Tに沿ってシール位置PSよりも上流側(同図(A)の右方向)に適宜移動させることで、上部シーラー30の移動開始の初期位置Sを複数設定することができる。この移動開始の初期位置(初期高さH0における、搬送方向Tに沿う一対のシーラー30、31の位置)S1,S2、S3を以下、移動開始位置S1,S2,S3という。なおこの例では3つの位置を示しているが、移動開始位置Sの数と位置は図示の例に限らない。
【0056】
そして移動開始位置S1〜S3に応じて、上部シーラー30は、同図の破線矢印で示すように複数種類のパターンの軌跡で移動(下降)し、シール位置PSに達する。上部シーラー30と下部シーラー31はシール位置PSにおいてフィルムYA1(ここでは不図示)を挟み、これを加圧してシールを施す。本実施形態におけるシール位置PSは、上部シーラー30と下部シーラー31によってフィルムYA1の加圧を開始する位置であり、搬送高さ方向HにおいてはフィルムYA1の搬送面H1と同じ高さ(ほぼ同一面)にある。なお、シール後は、いずれもほぼ等速で(同じ軌跡で)初期高さH0に復帰する。
【0057】
本実施形態では、この複数種類のパターンの移動の軌跡のそれぞれにおいて、さらに上部シーラー30の移動(下降)の速度を高速と低速に切り替えることができる。具体的に同図の例では、移動開始位置S1からの軌跡において高速下降と低速下降を選択でき、移動開始位置S2からの軌跡において高速下降と低速下降を選択でき、移動開始位置S3からの軌跡において高速下降と低速下降を選択できる。さらに、上部シーラー30および下部シーラー31の加熱温度も複数設定できる。
【0058】
つまり本実施形態では、選択可能な動作パラメータとして、移動開始位置S、上部シーラー30および下部シーラー31の移動速度V、上部シーラー30および下部シーラー31の加熱温度TMが設定可能であり、制御手段はシール動作の制御プログラムにおいてこれらのパラメータから物品XA1に応じて一の移動開始位置Sと一の移動速度Vおよび一の加熱温度TMの組み合わせを選択して、一対のシーラーの移動制御を行う。
【0059】
図4は、シール装置10におけるシール動作の具体例を示す図であり、同図(A)がシール動作において選択可能な動作パラメータの一例であり、同図(B)が搬送幅方向Wから見た上部シーラー30(および下部シーラー31)の側面概念図である。
【0060】
同図(A)に示すように、ここでは一例として、動作パラメータとして、3種の移動開始位置S1,S2、S3、2種の上部シーラー30(および下部シーラー31)の移動速度V1(例えば、高速)、V2(例えば、低速)、2種の上部シーラー30(および下部シーラー31)の加熱速度TM1(例えば、高温)、TM2(例えば、低温)が設定されている。そして、制御手段は、物品XA1の形状に応じて、いずれかの移動開始位置S、いずれかの移動速度Vおよびいずれかの加熱温度TMの組み合わせを選択する。なお、これらのパラメータは、物品XA1の形状や、フィルムYA1の搬送速度も考慮して適宜設定される。
【0061】
同図(B)は例えば、物品XA1_2を包装する場合に、移動開始位置S1,移動速度V2,加熱温度TM2を選択して移動制御を行った場合と、物品XA1_1を包装する場合に移動開始位置S3,移動速度V1、加熱温度TM1を選択して移動制御を行った場合の動作の概念図である。
【0062】
厚み(搬送高さ方向H)が大きい物品XA1_2を包装する場合、シール装置10による物品XA1_2やフィルムYA1_2の噛み込みを防ぎ、正確で美観の良好なシールを行うためには、フィルムYA1_2に必要且つ十分なテンションをかけつつ、予熱も十分に行ってシールをすることが望ましい。そこで、シール位置PSからより離れた移動開始位置S1、移動速度V2(低速)、加熱温度TM2(低温)を選択することで、フィルムYA1には必要且つ十分なテンションをかけつつも物品XA1_2高さに応じた搬送方向Tの余裕を確保できる。また、これにより十分な予熱時間PH1を確保できる。
【0063】
一方、厚み(搬送高さ方向H)が小さい物品XA1_1の場合、フィルムYA1_1へのテンションや、予熱は、厚みが大きい物品XA1_2の場合と比べて低くしてよい場合が多い。また、シール位置PSまでの搬送方向Tに沿う距離を短くすることで処理能力を高めたいという要望もある。そこで、例えばシール位置PSに近い移動開始位置S3、移動速度V1(高速)、加熱温度TM1(高温)を選択することで、予熱時間PH2は短くしつつも確実なシールを行うことができる。なお、加熱温度はパラメータとして複数設定せず、一定温度であってもよい。
【0064】
<他の実施形態>
上述の第一流路R1と第二流路R2は、いずれか一方に切り替える構成に限らず、いずれも同時に開閉する構成であってもよい。すなわち、シーラー30、31の移動時に、第一流路R1の電磁弁74Aと第二流路R2の電磁弁74Bをいずれも開放し、第一流路R1と第二流路R2のいずれからもエアを排出する構成であってもよい。これにより、シーラー30、31の移動速度を、高速または低速のいずれとも異なる速度(例えば、高速と低速の間の中速)に制御することができる。また、異なる流速でエアを排出するする経路は、第一流路R1と第二流路R2に限らず、3経路以上であってもよい。
【0065】
以上説明したように、本実施形態のシール装置10によれば、物品XA1の形状(特に搬送高さ方向Hの厚み)が異なる場合であっても、動作パラメータの選択によって物品XA1の形状に応じた、上部シーラー30および下部シーラー31の動作制御(移動制御)を行うことができる。
【0066】
これにより、物品XA1の形状に合わせて、確実なシールを行うとともに、シール部分の美観を良好にでき、例えばガゼットを形成する場合においても、美観の良好なガゼットを形成できる。また、包装する物品XA1の重量が大きく変更になる場合であっても、柔軟に対応でき、確実且つ良好なシールを行うことができる。
【0067】
例えば、包装する物品XA1がチェーンなど剛性が高いものの場合、シーラー30,31が物品XA1に接触すると、物品XA1に傷が生じるだけでなく、シーラー30,31も破損する恐れがある。このような場合は、シーラーの移動開始位置のずれを防止するため、上下方向(垂直方向)の動作は一意となる流体シリンダーで制御することが望ましい。
【0068】
一方で、チェーンは、その形状や重量が様々であり、例えば重量において2kgと20kgなど、大きな差が生じることが多々ある。この場合は、物品XA1の厚みにも差が生じ、シールの処理能力(単位時間あたりのシール処理数)としても開きが生じる。このような場合に一定(共通の)速度でシーラー30,31を動作させると、例えば、フィルムYA1にしわが生じたり、ガゼットの美観を損ねる、あるいはシールが粗雑になるなどの問題があった。
【0069】
しかしながら本実施形態によれば、移動開始位置S、移動速度V(および加熱温度TM)のそれぞれについて複数のパラメータを設定しておき、そのうちの一の移動開始位置S、移動速度V(および加熱温度TM)のパラメータの組み合わせを選択してシーラー30、31の移動制御を行うことができる。したがって、物品XA1の形状や重量の変更(それによる処理速度の変更)が生じた場合であっても柔軟に対応するとともに、確実かつ美観の良好なシールを行うことができる。
【0070】
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。すなわち、上記実施形態において、各構成の位置、大きさ、長さ、形状、材質、向きなどは適宜変更できる。
【0071】
例えば、上記シール装置10の実施形態において上部シーラー30および下部シーラー31の動力源は、エアシリンダーに限らず油圧シリンダーなど他の流体シリンダーを用いても良い。
【0072】
また、エア流路71は、第一の流速でエア(圧縮空気)を通過させる第一の流路R1と、第二の流速(第一の流速とは異なる)でエア(圧縮空気)を通過させる第二の流路R2を含んでいればよい。すなわち、エアの流速の切替が可能な第一の流路(第一流路)R1と第二の流路(第二流路)R2(スピードコントローラ73A、73Bおよび電磁弁74A、74B)をエアの供給路70Iに設け、エアの供給側において流速の制御を行う構成であってもよい。
【0073】
また、上記の実施形態では、横型の自動包装装置に採用されるシール装置10を例に説明したが、縦型の自動包装装置に採用されるものであってもよい。包装機は、三方・四方シール包装、またはシュリンク包装機などでもよい。
【0074】
また、水平方向駆動手段65のスライダ62は、リンク機構63などに限らず、シリンダなどにより駆動されるものであってもよい。