(Rは、相互に独立に、炭素数1〜10のアルキレン基、炭素数6以上のシクロアルキレン基、アリーレン基、又はアルキルアリーレン基を示し、Aは、相互に独立に、水素原子又は1以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する任意の有機基を示し、Bは、水素原子又は1以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有してもよい任意の有機基を示す)
【発明を実施するための形態】
【0014】
<反応性紫外線吸収剤>
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明の反応性紫外線吸収剤は、下記一般式(1)で表される化合物である。以下、本発明の反応性紫外線吸収剤の詳細について説明する。
【0015】
(前記一般式(1)中、Rは、相互に独立に、炭素数1〜10のアルキレン基、炭素数6以上のシクロアルキレン基、アリーレン基、又はアルキルアリーレン基を示し、Aは、相互に独立に、水素原子又は1以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する任意の有機基を示し、Bは、水素原子又は1以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有してもよい任意の有機基を示す)
【0016】
従来の紫外線吸収剤の紫外線吸収基は、ポリマー鎖にグラフトした構造を有する大きな分子鎖であるため、形成される塗膜が軟質になりやすい。また、ポリマー鎖と紫外線吸収基の結合が切断されると、紫外線吸収基に由来して生成した単分子がブリードアウトしやすくなることがある。これに対して、本発明の反応性紫外線吸収剤は、紫外線吸収基である2,4,6−トリス(2−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン基(以下、「トリフェニルトリアジン基」とも記す)を中心とし、複数個の反応性基がトリフェニルトリアジン基に結合した構造を有する。このため、複数個の反応性基に由来する結合の一つが切断されたとしても、残りの結合が保持されるので、ブリードが有効に抑制される。また、トリフェニルトリアジンが主骨格に組み込まれているので、芳香族環の剛直性が生かされ、塗膜の物性を向上させることができる。このため、本発明の反応性紫外線吸収剤を含有するコーティング剤を用いれば、耐久性に優れた塗膜を形成することができる。
【0017】
また、本発明の反応性紫外線吸収剤は、紫外線吸収基であるトリフェニルトリアジン基から反応性基を含む複数の有機基がグラフトしている。このため、これら複数の有機基がコーティング剤に用いられる溶剤やモノマー等に溶解及び相溶しやすいので、コーティング剤に配合する反応性紫外線吸収剤の量を多くすることができる。
【0018】
紫外線吸収性基であるトリフェニルトリアジン基に紫外線が当たると、水酸基とトリアジン環の窒素原子との間で水素原子が非局在化し、熱エネルギーを拡散して紫外線を吸収すると考えられる。トリフェニルトリアジン基の極大吸収波長は、通常、300〜360nmの範囲である。
【0019】
一般式(1)中、Rは、相互に独立に、炭素数1〜10のアルキレン基、炭素数6以上のシクロアルキレン基、アリーレン基、又はアルキルアリーレン基を示す。Rの具体例としては、メチレン、エチレン、プロピレン、メチルエチレン、ブチレン、イソブチレン、ヘキシレン、オクチレン、2−エチルヘキシレン、デシレン等のアルキレン基;シクロヘキシレン、メチルシクロヘキシレン、トリメチルシクロヘキシレン、シクロヘキシルジメチレン等のシクロアルキレン基;フェニレン、ナフチレン等のアリーレン基;メチルフェニレン等のアルキルアリーレン基;等を挙げることができる。なかでも、一般式(1)中のRは、メチレン(−CH
2−)、メチルメチレン(−CH(CH
3)−)、ジメチルメチレン(−C(CH
3)
2−)、エチルメチレン(−CH(CH
2CH
3)−)、ブチルメチレン(−CH(CH
2CH
2CH
2CH
3)−)が好ましい。
【0020】
一般式(1)中、Aは、相互に独立に、水素原子又は1以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する任意の有機基を示す。また、Bは、水素原子又は1以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有してもよい任意の有機基を示す。すなわち、本発明の反応性紫外線吸収剤は、一分子中に2以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有することが好ましい。一分子中の(メタ)アクリロイルオキシ基の数が1つであると、紫外線吸収性基がポリマー鎖にグラフトした状態となるので、形成される塗膜の熱安定性が低下しやすくなるとともに、ブリードが生じやすくなることがある。なお、一般式(1)中、A及びBは、相互に独立に、水素原子、3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシ−4−(メタ)アクリロイルオキシ−シクロヘキシルメチル基、4−(メタ)アクリロイルオキシ−3−ヒドロキシシロクヘキシルメチル基、又は4’−(メタ)アクリロイルオキシブトキシ−2−ヒドロシキプロピル基を示す(但し、A及びBのうち、水素原子は2つ未満である)ことが好ましい。
【0021】
一般式(1)中、Bで表される任意の有機基(但し、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する基を除く)としては、単官能エポキシ化合物や多官能エポキシ化合物をカルボキシ基に反応させて形成される基を挙げることができる。
【0022】
単官能エポキシ化合物としては、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ラウリルグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールモノラウリルエーテルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、t−ブチルフェニルグリシジルエーテル等を挙げることができる。これらの単官能エポキシ化合物を、後述する化合物(I)中のカルボキシ基の一部と反応させることで、得られる反応性紫外線吸収剤の溶剤への溶解性を向上させることができる場合がある。多官能性エポキシ化合物としては、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等を挙げることができる。これらの多官能エポキシ化合物を化合物(I)中のカルボキシ基の一部と反応させることで、オリゴマータイプの比較的高分子量の反応性紫外線吸収剤とすることができる。
【0023】
<反応性紫外線吸収剤の製造方法>
本発明の反応性紫外線吸収剤は、例えば、以下に示す方法にしたがって製造することができる。すなわち、本発明の反応性紫外線吸収剤の製造方法は、下記一般式(I)で表される化合物(I)と、3−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2−エポキシプロパン、(メタ)アクリロイルオキシ(3,4−エポキシシクロヘキシル)メタン、及び(メタ)アクリロイルオキシ2−(2−エポキシメトキシ)ブチルからなる群より選択される少なくとも一種の化合物(II)と、を反応させる工程を有する。そして、上記の工程では、化合物(I)1モルに対して、2モル倍超3モル倍以下の化合物(II)を反応させる。以下、本発明の反応性紫外線吸収剤の製造方法の詳細について説明する。
【0024】
(前記一般式(I)中、Rは、相互に独立に、炭素数1〜10のアルキレン基、炭素数6以上のシクロアルキレン基、アリーレン基、又はアルキルアリーレン基を示す)
【0025】
一般式(I)で表される化合物は、2,4,6−トリス(2,4−ジヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジンをエーテル化することで得ることができる。また、2,4,6−トリス(2,4−ジヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジンは、塩化アルミニウム等の存在下、トリクロロトリアジンとレゾルシノールをフリーデルクラフト反応させて得ることができる。
【0026】
2,4,6−トリス(2,4−ジヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジンの複数の水酸基のうち、紫外線吸収に寄与しない水酸基(以下、便宜的に「水酸基X」とも記す)に、水酸化ナトリウムや炭酸カリウム等のアルカリの存在下、ハロゲン化アルキルカルボン酸(ハロカルボン酸)を反応させることで、一般式(I)で表される化合物(I)を得ることができる。ハロカルボン酸としては、反応性しやすいとともに、入手が容易であり、かつ、比較的安価な化合物を用いることが好ましい。このようなハロカルボン酸としては、クロロ酢酸、ブロモ酢酸、アイオド酢酸、2−クロロプロピオン酸、2−ブロモプロピオン酸、2−クロロ酪酸、2−ブロモ酪酸、2−クロロイソ酪酸、2−ブロモイソ酪酸、2−クロロ吉草酸、2−ブロモ吉草酸等を挙げることができる。次いで、一般式(I)で表される化合物(I)と、カルボキシ基と反応しうる基及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物とを反応させることで、目的とする反応性紫外線吸収剤を得ることができる。なお、一般式(I)で表される化合物は、上述の方法以外の方法で製造してもよく、市販されている化合物を用いてもよい。
【0027】
一般式(I)で表される化合物(I)と反応させる化合物中のカルボキシ基と反応しうる基としては、水酸基、エポキシ基、ハロゲン置換アルキル基等を挙げることができる。なかでも、エポキシ基を有する化合物を用いることが好ましく、3−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2−エポキシプロパン、(メタ)アクリロイルオキシ(3,4−エポキシシクロヘキシル)メタン、及び(メタ)アクリロイルオキシ2−(2−エポキシメトキシ)ブチルからなる群より選択される少なくとも一種の化合物(II)を用いることがさらに好ましい。このような化合物(II)を用いると、反応が温和であるとともに、脱離による副生成物が生ずることがなく、触媒が残存していてもほとんど問題になることがない。すなわち、反応後に精製しなくともそのまま用いることができるために好ましい。
【0028】
一般式(I)で表される化合物(I)1モルに対して、2モル倍超3モル倍以下の化合物(II)を反応させることが好ましく、2.3〜2.9モル倍の化合物(II)を反応させることがさらに好ましく、2.5〜2.8モル倍以下の化合物(II)を反応させることが特に好ましい。化合物(I)1モルに対して、3モル倍を超える量の化合物(II)を反応させると、エポキシ基を有する化合物(II)が残存することになる。このため、残存した化合物(II)を除去するために精製する必要が生じてしまい、工程が煩雑になる。
【0029】
一般式(I)で表される化合物(I)と、化合物(II)とを反応させた場合、エポキシ基が開環して水酸基が生成する。生成した水酸基に酸無水物を反応させてハーフエステル化し、アルカリ現像性や高耐ブリードアウト性を付与した反応性紫外線吸収剤とすることもできる。酸無水物としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、テトラヒドロフタル酸無水物、シクロヘキセンジカルボン酸無水物等を挙げることができる。
【0030】
生成した水酸基にイソシアネート化合物を反応させてもよい。例えば、オクタデシルイソシアネート、ラウリルモノイソシアネート等の単官能のアルキルモノイソシアネートを反応させると、溶媒への溶解性を向上させることができる。また、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアナート、1,1−(ビス(メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、2−[(3,5−ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチル(メタ)アクリレート、2−[0−(1’−メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ]エチル(メタ)アクリラート等の(メタ)アクリロイルオキシ基及びイソシアネート基を有する化合物を反応させてもよい。
【0031】
化合物(I)と化合物(II)を反応させる際には、通常、触媒を用いる。触媒としては、フッ化ホウ素エチルエーテル錯体;トリエチルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等のアミン類;トリフェニルホスフィン等のトリアルキルリンやトリアリルリン化合物;トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩;2−メチル−4−エチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール系化合物;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド等の第4級有機リン塩等を挙げることができる。触媒の量は、エポキシ基に対して、0.001〜10モル%とすることが好ましく、0.1〜5モル%とすることがさらに好ましい。
【0032】
化合物(I)及び触媒を溶解しうる溶媒中で、化合物(I)と化合物(II)を反応させることが好ましい。溶媒としては、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル等のエステル系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、ジメチルエチレングリコール等のエーテル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエーテルエステル系溶剤等を挙げることができる。なかでも、アルコール系溶剤、グリコール系溶剤、アミド系溶剤、スルホキシド系溶剤を用いることが好ましい。
【0033】
必要に応じて用いられるメトキシフェノール等の重合禁止剤の存在下、必要に応じて空気を吹き込みながら、化合物(I)と化合物(II)を反応させる。反応温度は、例えば、室温から150℃の範囲内とすればよい。前述の通り、化合物(I)と化合物(II)を反応させても副生成物が生じないので、得られた溶液を、反応性紫外線吸収剤の溶液としてそのまま用いることができる。
【0034】
<紫外線・電子線硬化性コーティング剤>
本発明の紫外線・電子線硬化性コーティング剤(以下、「UVEBコート剤」とも記す)は、前述の反応性紫外線吸収剤を0.1〜50質量%含有し、好ましくは0.5〜30質量%、さらに好ましくは1〜20質量%含有する。反応性紫外線吸収剤の含有量が0.1質量%未満であると、形成される塗膜の紫外線吸収能が低くなってしまう。一方、反応性紫外線吸収剤の含有量が50質量%超であると、反応しきれなかった反応性紫外線吸収剤が形成される塗膜に残りやすくなり、塗膜が脆くなる場合がある。形成される塗膜の耐候性(耐光性)を向上させたい場合には、UVEBコート剤中の反応性紫外線吸収剤の含有量を0.1〜10質量%とすることが好ましい。また、形成した塗膜の下地の耐候性(耐光性)を向上させたい場合には、UVEBコート剤中の反応性紫外線吸収剤の含有量を1〜50質量%とすることが好ましい。
【0035】
UVEBコート剤には、その他の成分として、従来公知の材料をさらに含有させることができる。その他の成分としては、単官能モノマー、多官能モノマー、光硬化性オリゴマー、光硬化性ポリマー等の硬化成分の他、これらの硬化成分を光硬化させるための光重合開始剤、コート剤の粘性や塗布性を調整するための有機溶剤等を挙げることができる。
【0036】
単官能モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、アダマンチルメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニロキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、無水フタル酸と2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの付加物、アクリロイルモルホリン等のラジカル重合性モノマー等を挙げることができる。
【0037】
多官能モノマー及び光硬化性オリゴマーとしては、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ(n=2以上)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=2以上)ジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコール(n=2以上)ジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、トリメチロールプロパンジアクリレート、ビス(2−(メタ)アクリロキシエチル)−ヒドロキシエチル−イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(2−(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型ジエポキシと(メタ)アクリル酸とを反応させたエポキシジ(メタ)アクリレート等のエポキシポリ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体に2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを反応させたウレタントリ(メタ)アクリレート、イソホロンジイソシアネートと2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとを反応させたウレタンジ(メタ)アクリレート、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートとを反応させたウレタンヘキサ(メタ)アクリレート、ジシクロヘキシルジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとを反応させたウレタンジ(メタ)アクリレート、ジシクロヘキシルジイソシアネートとポリ(n=6〜15)テトラメチレングリコールとのウレタン化反応物に2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとを反応させたウレタンジ(メタ)アクリレート等のウレタンポリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンとコハク酸及び(メタ)アクリル酸とを反応させたポリエステル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンとコハク酸、エチレングリコール、及び(メタ)アクリル酸を反応させたポリエステル(メタ)アクリレート等のポリエステルポリ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0038】
光硬化性ポリマーとしては、ポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエポキシ樹脂等のポリマーの末端や側鎖に、ラジカル重合性を示す複数の(メタ)アクリロイルオキシ基が導入されたポリマー等を挙げることができる。さらに、カルボキシ基等を有する、アルカリ現像性の光硬化性ポリマーを用いることもできる。
【0039】
光重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインモノメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アセトイン、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、メチルフェニルグリオキシレート、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等の硫黄化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド等のリン酸化合物;2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1やカンファーキノン等を挙げることができる。
【0040】
有機溶剤としては、炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、グリコール系溶剤、グリコールエステル系溶剤、アミド系溶剤、カーボネート系溶剤、スルホキシド系溶剤、イオン液体等を挙げることができる。
【0041】
反応性紫外線吸収剤の紫外線吸収能が良好であることから、UVEBコート剤に添加される顔料の紫外線による光劣化を抑制し、形成されるコーティング層(塗膜)の色彩変化を防止することができる。すなわち、UVEBコート剤は、有機顔料をさらに含有することが好ましい。有機顔料としては、カラーインデックス(C.I.)ナンバーで例示すると、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、94、95、97、109、110、117、120、125、128、129、137、138、139、147、148、150、151、153、154、155、166、168、175、180、181、185、191;C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、64、71、73;C.I.ピグメントレッド4、5、9、23、48、49、52、53、57、97、112、122、123、144、146、147、149、150、166、168、170、176、177、180、184、185、192、202、207、214、215、216、217、220、221、223、224、226、227、228、238、240、242、254、255、264、269、272;C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50;C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64;C.I.ピグメントグリーン7、36、58;C.I.ピグメントブラック7;C.I.ピグメントホワイト6等を挙げることができる。
【0042】
有機顔料は、2種以上を組み合わせて用いることができる。2種以上の有機顔料を組み合わせる(混合する)方法としては、粉末顔料を混合する方法、ペースト顔料を混合する方法、顔料化の際に混合して固溶体を得る方法等がある。
【0043】
UVEBコート剤には、さらに、ニトロキサイド化合物等の光安定剤、ヒンダードフェノール等の酸化防止剤、染料、顔料分散剤、蛍光増白剤、塗膜の物性や塗布性を改善するためのレベリング剤、消泡剤、滑剤、増粘剤、帯電防止剤、界面活性剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、黄変防止剤、ブルーイング剤、赤外線吸収剤、接着促進剤、防汚剤、撥水剤、硬化性触媒、シリカ等の無機フィラー、金属微粒子等を含有させてもよい。
【0044】
インクジェット用のインクとして用いる場合、吐出性を考慮すると、UVEBコート剤の粘度は50mPa・s以下であることが好ましい。フローコートやディップによる塗装に用いる場合には、UVEBコート剤の粘度は100mPa・s以下であることが好ましい。一方、固形分が80質量%を超える高粘性のコーティング組成物(ハイソリッド型)としてもよい。
【0045】
UVEBコート剤を用いれば、耐光性、耐候性、耐傷性、耐ブリード性、及び基材に対する密着性等の特性に優れているとともに、これらの特性が長期間にわたって維持される塗膜を形成することができる。形成する塗膜の厚さは、例えば、0.1〜50μmとすることが好ましい。塗膜の厚さが0.1μm未満であると、塗膜に欠損が生じやすくなったり、紫外線吸収能がやや不足する場合があったりする。一方、塗膜の厚さが50μm超であると、塗膜にひび割れ(クラック)が発生しやすくなることがある。硬さ、耐傷性、長期的に安定な密着性、及びクラックの抑制等を考慮すると、形成する塗膜の厚さは1〜30μmとすることが好ましい。
【0046】
塗膜を形成する基材としては、例えば、各種ポリマー、木材、繊維、セラミックス、ガラス、金属、これらの複合物、これらの積層体等を挙げることができる。また、塗膜の密着性をさらに高めるために、基材の表面をコロナ処理、プラズマ処理、化学薬品処理等して活性化させてもよい。
【0047】
UVEBコート剤を基材や物品等の表面に塗布した後、光を照射して硬化させれば、塗膜を形成することができる。UVEBコート剤は、刷毛塗り、スプレー塗装、ディプコート、フローコート、ロール塗り、カーテンコート、スピンコート、インクジェット等によって基材等の表面に塗布することができる。
【0048】
塗布したUVEBコート剤を加温又は加熱して揮発成分を除去して未硬化膜とした後、さらに紫外線や電子線を照射して硬化させてもよい。紫外線や電子線は、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンアーク、カーボンアーク、LEDランプ等の光源を用いて照射することができる。光の照射量は、例えば、100〜10,000mJ/cm
2とすることが好ましく、300〜5,000mJ/cm
2とすることがさらに好ましい。
【0049】
UVEBコート剤は、光に曝される屋外用途の物品等の塗装やコーティングに適している。具体的には、建築材、自動車、農業用資材、日用品、ディスプレイ、家電等のプラスチック部材、木材部材、ガラス部材等の物品に使用され、光による劣化を防止し、長期間にわたって良好な外観を保持することができる。また、反応性紫外線吸収剤を多く配合したUVEBコート剤を用いることで、内部や下層を光から保護する紫外線吸収層を形成することができる。UVEBコート剤は、光劣化しやすい、食品、医薬品、ディスプレイ部、工業試薬、医療用材料等の包装部材の表面をコートして保護するコーティング層を形成するための材料として有用である。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0051】
<反応性紫外線吸収剤の製造>
(実施例1:反応性紫外線吸収剤−1(M−RUVA−1))
撹拌機、温度計、及び分留装置を取り付けたセパラブルフラスコに、下記式(2)で表される化合物(2,4,6−トリス[4−(1−オクチルオキシカルボニル)エチルオキシ−2−ヒドロキシフェニル]−1,3,5−トリアジン)(以下、「トリエステル体」とも記す)80部、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート20部を入れて均一化した。次いで、メタノール100部を添加して撹拌した。
【0052】
【0053】
水酸化ナトリウム16部及び水100部を別容器に入れて調製した水酸化ナトリウム水溶液をセパラブルフラスコ中に添加した。約80℃に加温してメタノールを留去した後、92℃まで加熱して含水メタノールを流出させた。内容物を分液ロートに移した後、酢酸エチルを添加し、有機溶解分を抽出して除去し、水層を得た。
【0054】
ディゾルバーを備えたフラスコにイオン交換水800部及び得られた水層を入れた。3.5%塩酸46部を撹拌下で添加し、析出物をろ過して得た。得られた析出物を水で洗浄した後、乾燥及び粉砕して、黄色の粉体を得た。核磁気共鳴装置(NMR)及び赤外線分光光度計(IR)を使用して得られた粉体を分析し、下記式(3)で表される化合物(2,2’,2”−[1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリイルトリス[(3−ヒドロキシ−4,1−フェニレン)オキシ]]トリスプロピオン酸)(以下、「トリカルボン酸」とも記す)であることを確認した。
【0055】
【0056】
アセトニトリル/水混合溶媒を展開溶媒とする高速液体クロマトグラフィー(HLPC)により測定した純度は、98.8%であった。ジメチルスルホキシドを溶媒とし、分光光度計を使用して測定した極大吸収波長は、350nmであった。得られたトリカルボン酸は、メタノール及びグリコール類に可溶であり、テトラヒドロフラン(THF)、メチルエチルケトン(MEK)、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAc)に不溶であった。
【0057】
撹拌機、温度計、空気導入管、及び分留装置を取り付けたセパラブルフラスコにプロピレングリコールモノメチルエーテル144.8部を入れて撹拌した。得られたトリカルボン酸50.1部(純分50部、0.08モル)を添加し、50℃まで加熱して溶解させた。ヒドロキノン0.1部及びトリフェニルホスフィン1.6部を添加し、空気を弱く吹き込んだ後、3−メタクリロイルオキシ−1,2−エポキシプロパン(GMA)29.2部(トリカルボン酸1モルに対し2.5モル倍)をさらに添加した。100℃に加熱して2時間反応させ、IRにより、エポキシ基に対応する909cm
−1の吸収の消失、水酸基に対応する3480cm
−1付近の吸収の生成、及びエステル基に対応する1,720cm
−1の吸収の増大を確認した。また、ガスクロマトグラフィー(GC)で分析し、GMAのピークが検出されないことを確認した。さらに、180℃で恒量に達する不揮発分は、34.7%であった。NMR及びIRを使用して分析し、下記式(4)で表される化合物を主成分とし、下記式(5)で表される化合物を副成分とする反応性紫外線吸収剤−1(M−RUVA−1)が得られたことを確認した。極大吸収波長は、357nmであった。得られたM−RUVA−1の溶液をMEK、THF、及びPGMAcにそれぞれ添加したところ、析出することなく溶解した。
【0058】
【0059】
(実施例2:反応性紫外線吸収剤−2(M−RUVA−2))
GMAの量を29.2部(トリカルボン酸1モルに対し2.79モル倍)としたこと以外は、前述の実施例1と同様にして、上記式(4)で表される化合物を主成分とし、上記式(5)で表される化合物を副成分とする反応性紫外線吸収剤−2(M−RUVA−2)を得た。得られたM−RUVA−2は、実施例1で得たM−RUVA−1に比して、上記式(4)で表される化合物を多く含んでいた。GCで分析し、GMAのピークが検出されないことを確認した。180℃で恒量に達する不揮発分は、35.9%であった。極大吸収波長は、357nmであった。
【0060】
(実施例3:反応性紫外線吸収剤−3(M−RUVA−3))
GMAに代えて、メタクリロイルオキシ(3,4−エポキシシクロヘキシル)メタン(ECHMMA)40.2部(トリカルボン酸1モルに対し2.5モル倍)を用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にして、下記式(6)で表される化合物を主成分とし、下記式(7)で表される化合物を副成分とする反応性紫外線吸収剤−3(M−RUVA−3)を得た。GCで分析し、ECHMMAのピークが検出されないことを確認した。180℃で恒量に達する不揮発分は、38.0%であった。極大吸収波長は、356nmであった。
【0061】
【0062】
(実施例4:反応性紫外線吸収剤−4(M−RUVA−4))
GMAに代えて、アクリロイルオキシ2−(2−エポキシメトキシ)ブチル(GHBA)41.0部(トリカルボン酸1モルに対し2.56モル倍)を用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にして、下記式(8)で表される化合物を主成分とし、下記式(9)で表される化合物を副成分とする反応性紫外線吸収剤−4(M−RUVA−4)を得た。GCで分析し、GHBAのピークが検出されないことを確認した。180℃で恒量に達する不揮発分は、37.4%であった。極大吸収波長は、356nmであった。
【0063】
【0064】
(実施例5:反応性紫外線吸収剤−5(M−RUVA−5))
GHBAの量を32部に代えたこと、及び2−エチルヘキシルモノグリシジルエーテル(EHG)8.4部をさらに用いたこと以外は、前述の実施例4と同様にして、下記式(10)で表される反応性紫外線吸収剤−5(M−RUVA−5)を得た。なお、下記式(10)中の4’−(メタ)アクリロイルオキシブトキシ−2−ヒドロシキプロピル基の一部は水素原子(−H)であった。GCで分析し、GHBA及びEHGのピークがいずれも検出されないことを確認した。180℃で恒量に達する不揮発分は、37.2%であった。極大吸収波長は、356nmであった。
【0065】
【0066】
(比較例1:比較反応性紫外線吸収剤−1(R−RUVA−1))
撹拌機、温度計、及び分留装置を取り付けたセパラブルフラスコに、下記式(11)で表される化合物(2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−(2’−エチル)ヘキシル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン))(以下、「モノオール体」とも記す)50部、PGMAc120.8部、及びヒドロキノン0.1部を入れ、空気を吹き込みながら100℃に加温した。2−イソシアナトエチルメタクリレート(MOI)12.4部及びPGMAc12.4部の混合物を添加し、ジラウリン酸スズ0.05部及びPGMAc12.4部の混合物をさらに添加した。100℃で5時間反応させて、下記式(12)で表される比較反応性紫外線吸収剤−1(R−RUVA−1)を得た。IRで分析し、MOIに対応する2,200cm
−1付近の吸収の消失を確認した。180℃で恒量に達する不揮発分は、29.4%であった。極大吸収波長は、341nmであった。得られたR−RUVA−1がMEK等の溶媒に溶解することを確認した。
【0067】
【0068】
(比較例2:比較反応性紫外線吸収剤−2(R−UVA−2))
2−イソシアナトエチルメタクリレートに代えて、1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート(BEI)19.0部を用いたこと以外は、前述の比較例1と同様にして、下記式(13)で表される比較反応性紫外線吸収剤−2(R−RUVA−2)を得た。180℃で恒量に達する不揮発分は、31.7%であった。極大吸収波長は、340nmであった。
【0069】
【0070】
<コーティング剤の製造及び塗膜の形成>
(実施例6〜9、比較例3〜6)
ウレタンアクリレートオリゴマー1(商品名「WR−100」、大日精化工業社製)30部及びウレタンアクリレートオリゴマー2(商品名「GD785」、DIC社製)70部に対し、製造した反応性紫外線吸収剤、トリエステル体、又はモノオール体5部(固形分として)を添加した。固形分50%になるようにMEKを添加して希釈し、コーティング剤を得た。プライマー処理が施されたオレフィンシート又は透明なPETフィルム(100μm)に、ナンバー6のバーコーターを用いて得られたコーティング剤を塗布し、60℃で1分間乾燥させた後、電子線(50kGy、加圧電圧165kv)を照射してコーティング剤を硬化させて塗膜を形成した。
【0071】
<評価>
(耐候性試験)
表面に塗膜を形成したオレフィンシートを用いて、以下に示す条件で「スーパーUV試験」及び「QUV試験」を行った。
[スーパーUV試験]
ランプの種類:メタルハライドランプ
ランプ照度:50mW/cm
2
温度:63℃
照射時間:20時間
サイクル:シャワー30秒、結露4時間のサイクルを1,000時間
[QUV試験]
ランプの種類:UVランプ
ランプ照度:0.71W/m
2
温度:60℃
照射時間:4時間
サイクル:50℃で結露4時間のサイクルを5,000時間
【0072】
各試験後の塗膜の60℃グロス保持率(%)を測定した。結果を表1に示す。また、塗膜の端部を目視にて観察し、密着性を評価した。結果を表1に示す。
【0073】
(耐傷性)
オレフィンシート上に形成した塗膜の表面にスチールウールを載置し、荷重100g/cm
2で10往復させた。10往復後の塗膜の外観を目視にて確認し、耐傷性を評価した。結果を表1に示す。
【0074】
(耐ブリード性)
表面に塗膜を形成したPETフィルムを60℃の温水に1週間浸漬させた後、塗膜の外観を目視にて確認した。また、浸漬前後の全光透過率(極大吸収波長の吸光度)を測定し、全光線透過率の保持率(%)を算出した。結果を表1に示す。
【0075】
【0076】
<UVインキの調製及び評価>
(実施例10)
ポリエステル系ウレタンアクリレート(テレフタル酸/セバシン酸/エチレングリコール/ネオペンチルグリコール共重合体(水酸基価:37.4mgKOH/g)、イソホロンジイソシアネート、及びヒドロキシエチルアクリレートによるウレタンオリゴマー、数平均分子量:4,500)50部、トリメチロールプロパントリアクリレート15部、フェノキシエチルアクリレート35部、反応性紫外線吸収剤−4(M−RUVA−4)10部(固形分として)、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルフェノン3部、及び2,2−ジエトキシアセトフェノン2部を混合し、撹拌してUVインキを得た。
【0077】
ポリカーボネート板にナンバー6のバーコーターを用いて得られたUVインキを3g/m
2となるように塗布した後、UV(高圧水銀灯160w/cm×3本、50m/min)を照射し、UVインキを硬化させて塗膜を形成した。なお、比較例として、(i)M−RUVA−4に代えてトリエステル体を添加したもの;及び(ii)M−RUVA−4を添加していないもの;をそれぞれ調製し、塗膜を形成した。
【0078】
表面に塗膜を形成したポリカーボネート板を用いて、以下に示す条件で「スーパーUV試験」を行った。
[スーパーUV試験]
ランプの種類:メタルハライドランプ
ランプ照度:50mW/cm
2
温度:83℃
照射時間:200時間
【0079】
スーパーUV試験前後の塗膜の黄変度を目視で確認して比較した。(ii)M−RUVA−4を添加していない比較例のUVインキで形成した塗膜は、黄変していた。また、(i)トリエステル体を添加した比較例のUVインキで形成した塗膜は、若干黄色変色しており、表面がべたついていた。これに対し、実施例10のUVインキで形成した塗膜は変色しておらず、表面もべたついていなかった。
【0080】
<紫外線硬化性コーティング剤(イエロー色)の製造及び評価>
(実施例11〜14)
黄色顔料(ピグメントイエロー74(大日精化工業社製)、ピグメントイエロー150(ランクセス社製)、ピグメントイエロー155(大日精化工業社製)、及びピグメントイエロー180(大日精化工業社製))をそれぞれ20部、下記式(14)で表される酸性シナジスト2部、グラフト型塩基性分散剤(特許第5953380号公報に記載の合成例9、ポリエチレングリコールモノプロピレングリコールモノメチルエーテルモノアミン(分子量2000)と、MOIとの反応生成物であるマクロモノマー/ジメチルアミノエチルメタクリレート/メチルメタクリレートのリビングラジカル重合で得られる、数平均分子量17,300、PDI1.41、アミン価40.0mgKOH/gのポリマー型分散剤、固形分100%)8部、及びフェノキシエチルアクリレート(POE)70部をポリ瓶に入れた。ジルコニアビーズ(0.1m)を充填し、ペイントコンディショナーを使用して3時間分散させた。ジルコニアビーズを除去した後、POEを添加して不揮発分25%となるように希釈した。フィルター(0.5μm)でろ過して粗大粒子を除去し、4種類のイエロー顔料のミルベース(顔料分散液)を調製した。
【0081】
【0082】
調製した各顔料分散液21.6部、反応性紫外線吸収剤−5(M−RUVA−5)2部、2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルアクリレート51.4部、エチレンオキサイド付加物トリメチロールプロパントリアクリレート20部、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルフェノン3部、及び2,2−ジエトキシアセトフェノン2部を混合して均一化した後、フィルター(1.0μm)でろ過して、イエロー色の紫外線硬化性コーティング剤(4種類)を得た。なお、比較例として、(iii)M−RUVA−5を添加していないイエロー色の紫外線硬化性コーティング剤(4種類)を用意した。
【0083】
プライマー処理が施された透明なPETフィルム(100μm)に、ナンバー6のバーコーターを用いて得られた紫外線硬化性コーティング剤をそれぞれ塗布した後、60℃で1分間乾燥させた。キセノンウェザーメーターを使用して120時間紫外線を照射し、紫外線硬化性コーティング剤を硬化させて塗膜を形成した。その結果、比較例の紫外線硬化性コーティング剤中の顔料が退色したことが分かった。また、実施例の紫外線硬化性コーティング剤のうち、ピグメントイエロー74は僅かに退色していたが、他の顔料はほとんど変化していなかった。なお、実施例のコーティング剤の粘度は、いずれも5.0mPa・s前後と低いものであった。このため、実施例のコーティング剤は、インクジェットインクとして有用である。