【課題】弾性部を有する端子を容易かつ確実に組み込み可能で、弾性部が大きく弾性変形しても端子同士の接触を防止できる回路基板用電気コネクタを提供することを課題とする。
【解決手段】可動ハウジング40は、固定ハウジング30の内部空間30Aに進入して固定ハウジングとは離間して位置する進入壁部40Aを有し、進入壁部の一壁面に、弾性部の一部を収容するための相手接続体との接続方向に延びる端子収容溝43Bが端子配列方向に配列形成され、上記一壁面に対し反対側となる背部側に端子の可動側被保持部を保持する可動側端子保持部43Aが形成され、可動ハウジングは、隣接する上記端子収容溝同士間に、進入壁部の回路基板側に向く先端部から上記接続方向に延びる突条部43Cを有し、端子が上記接続方向で回路基板側から取り付けられた状態で、突条部が端子配列方向で端子収容溝内の端子の弾性部との間に隙間δを形成している。
回路基板へ接続のための接続部が一端側に、相手接続体を接触させるための接触部が他端側に形成された端子と、回路基板の面に対して平行な一方向を端子配列方向として上記端子を複数保持するハウジングとを有し、該ハウジングが上記端子の上記接続部を介した回路基板への取付けのための固定ハウジングと、該固定ハウジングに対して可動で端子の接触部を配置する可動ハウジングとを有し、上記固定ハウジングが上記相手接続体との接続方向で上記可動ハウジングの進入を許容する内部空間を形成している回路基板用電気コネクタにおいて、
上記端子は、上記固定ハウジングで圧入保持される固定側被保持部と、上記可動ハウジングで圧入保持される可動側被保持部と、該固定側被保持部と該可動側被保持部との間に位置し弾性変形可能な弾性部とを有し、
上記可動ハウジングは、上記固定ハウジングの内部空間に進入して該固定ハウジングとは離間して位置する進入壁部を有し、該進入壁部の一壁面に、上記弾性部の一部を収容するための上記接続方向に延びる端子収容溝が端子配列方向に配列形成され、上記一壁面に対し直角なコネクタ幅方向で反対側となる背部側に上記端子の上記可動側被保持部を保持する可動側端子保持部が形成され、
さらに、上記可動ハウジングは、隣接する上記端子収容溝同士間に、上記進入壁部の回路基板側に向く先端部から上記接続方向に延びる突条部を有し、上記端子が上記接続方向で回路基板側から取り付けられた状態で、上記突条部が端子配列方向で上記端子収容溝内の端子の弾性部との間に隙間を形成していることを特徴とする回路基板用電気コネクタ。
上記端子の上記弾性部は、上記可動ハウジングの上記可動側端子保持部と上記固定ハウジングとの間の空間で、複数の湾曲部をもつ波形形状をなし、コネクタ幅方向で上記可動側端子保持部に最も近く位置する湾曲部が、上記接続方向で上記回路基板から最も遠くに位置していることとする請求項1に記載の回路基板用電気コネクタ。
上記可動ハウジングは、回路基板に対面する上記先端部の先端面にも、上記端子収容溝および上記突条部が形成されていて、上記先端面における上記突条部が回路基板側へ向けて上記端子よりも突出していることとする請求項1または請求項2に記載の回路基板用電気コネクタ。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施形態を説明する。
【0020】
<第一実施形態>
図1(A),(B)、
図2(A),(B)に見られる本実施形態に係るプラグコネクタIは、回路基板(図示せず)の実装面に実装される回路基板用電気コネクタである。また、プラグコネクタIの相手接続体(相手コネクタ)としてのレセプタクルコネクタIIは、他の回路基板(図示せず)の実装面に実装される回路基板用電気コネクタである。本実施形態を示す、以下の各図において、方向性を理解しやすくするために、回路基板の実装面に対して直角な上下方向をコネクタ高さ方向Z、コネクタにおける端子配列方向をY、コネクタ高さ方向Zおよび端子配列方向Yの両方向に対して直角な方向なコネクタ幅方向をXとして設定してある。プラグコネクタIおよびレセプタクルコネクタIIは、回路基板の実装面同士が平行となった姿勢で、実装面に対して直角なコネクタ高さ方向Z(上方Z1および下方Z2)を接続方向として抜出可能に嵌合接続される。本実施形態では、プラグコネクタIに対してレセプタクルコネクタIIが下方Z2に向け嵌合接続されるようになっている。
【0021】
プラグコネクタIは、回路基板の実装面に対して平行な一方向を端子配列方向Y(Y1およびY2)として配列された複数の金属製のプラグ端子10と、複数のプラグ端子10を保持する電気絶縁材製(例えば樹脂製)のプラグハウジング20と、端子配列方向Yにおけるプラグハウジング20の両端部で保持される金属製のプラグ固定金具50とを有している。
図2(A),(B)および
図3に見られるように、プラグ端子10は2列をなして配列されている。2列のプラグ端子10は、コネクタ幅方向Xで互いに対称形状をなし対称な向きをなして対向している。
【0022】
図4は、プラグ端子10単体の斜視図である。2列のうち一方から1つだけ抽出して示されるプラグ端子10は、
図4に見られるように、金属板部材を板厚方向で打ち抜いて平坦面を維持したまま作られてこの平坦面に位置する屈曲部分を有する雄型の端子であり、接続部11と、固定側被保持部12と、接触部13Aと、可動側被保持部13Bと、可動側連結部14と、弾性部15とを有している。
【0023】
接続部11は、プラグ端子10の一端側でコネクタ幅方向Xに延びて形成されており、その下端で回路基板の実装面の対応回路部に半田接続される。固定側被保持部12は、接続部11よりも上方に位置し接続部11につながる基部12Aと、基部12Aのコネクタ幅方向Xでの外側(
図4でのX1側)の位置で該基部12Aから上方Z1へ直状に延びる被保持腕部12Bとを有している。被保持腕部12Bは、コネクタ幅方向Xで外側(
図4でのX1側)に位置する側縁部(コネクタ高さ方向Zに延びる縁部)から突出する被保持突起12B−1が形成されている。被保持腕部12Bは、後述の固定ハウジング30の溝状の固定側端子保持部31Cに下方から圧入され、固定側被保持突起12B−1が固定側端子保持部31Cの内壁面に喰い込むことにより固定ハウジング30に保持される。
【0024】
接触部13Aは、プラグ端子10の他端側(
図4にてX2方向端側)にてコネクタ高さ方向Zで直状に延びる腕部13の上部で形成されている。接触部13Aは、端子配列方向Yに対して直角な両方の板面で、後述するレセプタクル端子60の一対の接触片62Aによって挟圧されて、該一対の接触片62Aと接触するようになっている。可動側被保持部13Bは、腕部13の下部をなし接触部13Aの下方に位置しており、コネクタ幅方向Xで外側(
図4でのX1側)に位置する側縁部(コネクタ高さ方向Zに延びる縁部)から突出する二つの可動側被保持突起13B−1が形成されている。また、可動側被保持部13Bは、その下部の上記側縁部からコネクタ幅方向Xの外方(X1方向)へ延び弾性部15に連結される可動側連結部14を有している。可動側被保持部13Bは、後述の可動ハウジング40の貫通溝状の可動側端子保持部43Aに上方Z1に向け圧入され、可動側被保持突起13B−1が可動側端子保持部43Aの内壁面に喰い込むことにより可動ハウジング40に抜けが防止される。
【0025】
弾性部15は、基部12Aと可動側連結部14とから立ち上がり、全体形状が略M字状をなしている。弾性部15は、被保持腕部12Bおよび可動側被保持部13Bよりも細い幅の帯状をなしている。弾性部15は、上部に湾曲形状の二つの湾曲部15A,15Cと下部に湾曲形状の一つの湾曲部15Bを有するとともに、湾曲部15Aと湾曲部15Bを結ぶ内側長腕部15Dそして湾曲部15Cと湾曲部15Bを結ぶ内側短腕部15E、さらには、湾曲部15Aと可動側連結部14とを結ぶ外側長腕部15Fそして湾曲部15Cと基部12Aとを結ぶ外側短腕部15Gを有している。本実施形態では、内側長腕部15Dと外側長腕部15Fとがほぼ同じ長さであり、内側短腕部15Eと外側短腕部15Gとがほぼ同じ長さである。また、内側長腕部15Dおよび外側長腕部15Fは、内側短腕部15Eおよび外側短腕部15Gよりも長いので、
図4に見られるように、湾曲部15Aは湾曲部15Cよりも上方に位置している。弾性部15で最も上方、すなわちコネクタ高さ方向Zで回路基板から最も遠くに位置している湾曲部15Aは、コネクタ幅方向Xでの内方、すなわち腕部13の可動側被保持部13Bに最も近く位置している。
【0026】
弾性部15は、三つの波形部、すなわち湾曲部15Aを上端とする逆U字状の波形部、湾曲部15Bを下端とするU字状の波形部、および湾曲部15Cを上端とする逆U字状の波形部が連結した略M字状をなしている。三つの波形部において、互いに隣接する腕部、すなわち内側長腕部15Dと外側長腕部15F、内側長腕部15Dと内側短腕部15E、内側短腕部15Eと外側短腕部15Gは、湾曲部15A、湾曲部15Bあるいは湾曲部15Cから遠くになるにしたがい波形の開き幅を広くするように傾斜した拡幅部分を形成している。
【0027】
弾性部15は、コネクタ幅方向Xで互いに隣接する腕部15D,15E,15F,15Gが、湾曲部15A,15B,15Cを支点として、互いの間隔、換言すると上記拡幅部分を広げたり狭めたりするように変位することで弾性変形可能となっている。また、弾性部15は、その板厚方向、すなわち端子配列方向Yにおいても弾性変形可能であり、また、コネクタ高さ方向Zにおいても、弾性変形可能である。本実施形態では、既述したように、弾性部15が略M字状にすることで、弾性部15の全長、すなわち弾性部15を略M字状に沿った全体の長さが大きくなっており、その結果、十分なばね長のもとで弾性部15を弾性変形させることが可能となっている。
【0028】
プラグハウジング20は、
図1(A),(B)、
図2(A),(B)に見られるように、コネクタ高さ方向Zで見たときに、端子配列方向Yを長手方向、コネクタ幅方向Xを短手方向としており、プラグ端子10を介した回路基板への取付けのための固定ハウジング30と、固定ハウジング30とは別部材として形成され固定ハウジング30に対して可動でプラグ端子10の接触部13Aを配置する可動ハウジング40とを有している。
【0029】
固定ハウジング30は、コネクタ幅方向Xで対向して位置し端子配列方向Yに延びる一対の側壁31と、コネクタ幅方向Xに延び一対の側壁31の端部同士を連結する一対の端壁32とを有し、この一対の側壁31および一対の端壁32によって四角筒をなす周壁を形成している。一対の側壁31および一対の端壁32に囲まれてコネクタ高さ方向Zに貫通する周壁内の空間は、下方から可動ハウジング40を収める内部空間30Aを形成している(
図3をも参照)。
【0030】
側壁31には、プラグ端子10の弾性部15の一部を収容するための固定側収容部31Aが側壁31の内壁面で没入するとともにコネクタ高さ方向Zに延びて形成されている(
図2(A)参照)。固定側収容部31Aは、コネクタ高さ方向Zで側壁31の上端寄り位置から下端にわたる範囲に延びており、上端が突上縁31Bで閉塞されているが、下端が開放されている。
図2(A)に見られるように、固定側収容部31Aは、プラグ端子10の弾性部15が自由状態にあるとき、弾性部15の内側短腕部15E、湾曲部15Cおよび外側短腕部15Gを収容している。また、側壁31の下半部には、端子配列方向Yでプラグ端子10に対応する位置に、プラグ端子10の被保持腕部12Bを圧入保持する溝状の固定側端子保持部31Cが、コネクタ高さ方向Zに延びるとともに下方に開口し端子配列方向Yに対して直角に拡がるスリット状に形成されている(
図2(A)、
図5(A),(B)参照)。
【0031】
端壁32の下半部には、
図1(A)に見られるように、コネクタ幅方向Xで両側部分が肉厚な突出壁32Bが形成されている。また、両方の突出壁32B間が金具圧入収容部33として形成されており、この突出壁32Bのコネクタ幅方向Xでの内縁側には、壁厚内でコネクタ高さ方向Zに延びるスリット状の金具挿入溝35が形成されている。この金具圧入収容部33には、後述のプラグ固定金具50が圧入保持される。
【0032】
また、側壁31には、
図1(A)、
図5(A),(B)に見られるように、端壁32の突出壁32Bに寄った位置に、下方に開口しコネクタ幅方向Xに貫通した規制溝部34が形成され、規制溝部34に可動ハウジング40に設けられた後述の被規制部45(
図5(A),(B)参照)を収め、規制溝部34の上側内面が被規制部45に対する上規制面34Aを形成している。また、側方内面が被規制部に対する横規制面34Bを形成している。
【0033】
可動ハウジング40は、固定ハウジング30の内部空間30Aへ下方から挿入されて配置されている。
図2(A)に見られるように、可動ハウジング40は、可動ハウジング40の上端部および後述の被規制部45を除く大部分が固定ハウジング30の内部空間30A内で可動に収容される進入壁部40Aを形成している。可動ハウジング40の上端部は、進入壁部40Aよりも上方の部分をなし、
図2(A)に見られるように、固定ハウジング30の内部空間30Aの上方に突出して位置している。
【0034】
進入壁部40Aは、
図2(A)に見られるように、端子配列方向Yおよびコネクタ高さ方向Zに延びる一対の長壁41と、コネクタ幅方向Xおよびコネクタ高さ方向Zに延び一対の長壁41の端部同士を連結する一対の短壁42と、一対の長壁41および一対の短壁42から成る周壁に囲まれた空間を下方から閉塞する肉厚な底壁43と、底壁43から起立して端子配列方向Yに延びる起立壁44とを有している。上記周壁に囲まれコネクタ高さ方向Zで上方へ開口した空間は、レセプタクルコネクタIIの後述するハウジング本体部71の一部を受け入れるための受入部46をなしている。受入部46は、その略下半部では、上記周壁と起立壁44との間に形成された環状空間をなしている。
【0035】
長壁41は、端子配列範囲を含む範囲で外壁面が没していて、プラグ端子10の弾性部15の一部を収容する可動側収容部41Aが形成されている。可動側収容部41Aは、上下方向で長壁41の上端寄り位置から下端にわたる範囲に延びており、上端は突上縁41Bで閉塞されているが下端が開口している。
図2(A)に見られるように、可動側収容部41Aは、プラグ端子10の弾性部15が自由状態にあるとき、弾性部15の外側長腕部15Fを収容している。
【0036】
底壁43は、プラグ端子10の可動側被保持部13Bを収容して圧入保持する貫通溝状の可動側端子保持部43Aが、端子配列方向Yで配列されて形成されている。可動側端子保持部43Aは、端子配列方向Yに対して直角に拡がるスリット状をなし上下方向に貫通している。また、肉厚な底壁43は、
図6(A)にも見られるように、コネクタ幅方向Xでプラグ端子10の弾性部15に向く外壁面に、弾性部15の外側長腕部15Fの下部を可動に収める端子収容溝43Bが形成されている(
図6(B)をも参照)。端子配列方向Yで隣接する端子収容溝43B同士間には、隣接するプラグ端子10の弾性部15の外側長腕部15F同士間に進入して位置する突条部43Cが形成されている。
図6(B)に見られるように、突条部43Cと外側長腕部15Fとの間には端子配列方向Yで隙間δが形成されている。
【0037】
起立壁44は、
図2(A)に見られるように、プラグ端子10の接触部13Aの側縁部を収容する内溝部44Aが、起立壁44の側面(コネクタ幅方向Xに対して直角な面)から没入するとともにコネクタ高さ方向Zに延びて形成されている。内溝部44Aは、コネクタ高さ方向Zに貫通しており、その下端で底壁43の可動側端子保持部43Aと連通している。
【0038】
被規制部45は、
図3に見られるように、可動ハウジング40の短壁42の下部からコネクタ幅方向Xで外方へ向けて突出している。被規制部45は、
図5(A),(B)に見られるように、角状断面をなし、固定ハウジング30の規制溝部34内に収容されている。被規制部45は、コネクタ高さ方向Zでは規制溝部34の上規制面34Aに対して間隔をもって対向し、端子配列方向Yでは規制溝部34の横規制面34Bに対して間隔をもって対向している。したがって、可動ハウジング40は、上規制面34Aと被規制部45との間隔の範囲内で上方へ移動可能となっているとともに、被規制部45が上規制面34Aに当接することで、それ以上の移動を規制される。また、可動ハウジング40は、横規制面34Bと被規制部45との間隔の範囲内で端子配列方向Yに移動可能となっているとともに、被規制部45が横規制面34Bに当接することで、それ以上の移動を規制される。
【0039】
プラグ固定金具50は、金属板部材を部分的に屈曲することで作られており、
図3に見られるように、端子配列方向Yに対し直角な面で拡がる主板部51と、主板部51の上部からコネクタ幅方向Xに突出する突出部52と、主板部51の下縁で屈曲され端子配列方向Yで外方へ向く脚部53とを有している。主板部51の側縁には、係止突起51Aが形成されている。
【0040】
かかるプラグ固定金具50は、その主板部51が固定ハウジング30の端壁32に形成された金具圧入収容部33に上方から圧入され、主板部51に形成された係止突起51Aが金具挿入溝35の内壁面に喰い込むことで保持され、プラグ固定金具50の抜けが防止されている。
図1(A)に示されるように、プラグ固定金具50が金具圧入収容部33に所定位置まで圧入されると、脚部53がコネクタ高さ方向Zで回路基板の実装面(図示せず)のレベルに位置し、実装面上の対応部に接面可能となる。
【0041】
次に、レセプタクルコネクタIIの構成を、
図1(A),(B)、
図2(A),(B)および
図3にもとづいて説明する。レセプタクルコネクタIIは、
図1(A),(B)、
図2(A),(B)および
図3に見られるように、レセプタクルコネクタII用の回路基板の実装面(図示せず)に対して平行な一方向を端子配列方向Yとして配列された複数の金属製のレセプタクル端子60と、複数のレセプタクル端子60を保持する電気絶縁材製(例えば樹脂製)のレセプタクルハウジング70と、端子配列方向Yにおけるレセプタクルハウジング70の両端部で保持される金属製のレセプタクル固定金具80とを有している。レセプタクル端子60は2列をなして配列されており、コネクタ幅方向Xで互いに対称な向きで対向している。
【0042】
レセプタクル端子60は、帯状の金属板部材を板厚方向に屈曲して作られた端子であり、回路基板の実装面(図示せず)に対して半田により接続される接続部61が一端側に形成されていて、二股状をなしてプラグ端子10の接触部13Aを狭圧して接触する一対の接触片62A(
図1参照)をもつ接触部62が他端側に形成されている。接触片62Aは、端子配列方向Yに対して直角な方向に拡がる板面をもつ帯状片をなしており、一対の接触片62Aの間隔を拡大・縮小する方向、すなわち端子配列方向Yに弾性変形可能となっている。コネクタ嵌合状態において、一対の接触片62Aは、プラグ端子10の板状の接触部13Aを挟圧することで該接触部13Aに接触する。レセプタクル端子60は、レセプタクルハウジング70に形成された後述の端子収容部74(
図2(A)参照)に上方(Z1側)から圧入して取り付けられる。
【0043】
レセプタクルハウジング70は、コネクタ高さ方向Zに延びるハウジング本体部71と、ハウジング本体部71の上部(Z1側の部分)における端子配列方向Yでの端部からコネクタ幅方向Xに突出するブロック部72とを有している。ハウジング本体部71は端子配列方向Yを長手方向とする略直方体外形をなしている。
【0044】
図2(A),(B)に見られるように、ハウジング本体部71の下半部には、コネクタ幅方向Xでの中央域で没入し下方(Z2方向)に開口する受入部71Aが形成されている。受入部71Aは、
図2(B)に見られるように、コネクタ嵌合状態にてプラグコネクタIの可動ハウジング40の起立壁44を下方から受け入れるようになっている。
【0045】
ハウジング本体部71は、レセプタクル端子60を収容するための端子収容部74が端子配列方向Yで配列されて形成されている。端子収容部74は、コネクタ高さ方向Zでハウジング本体部71の全範囲にわたって延びており、コネクタ高さ方向Zでの受入部71Aの範囲ではその内壁面に沿って延びる溝部を形成し、コネクタ高さ方向Zで底部側半部(
図2(A)にて上半部)をなす肉厚の底壁部71Bの範囲では底壁部71Bを貫通する孔部を形成している。
【0046】
図3に見られるように、コネクタ幅方向Xで対向するブロック部72の内壁面同士間には、レセプタクル固定金具80を収容するための金具圧入収容部75が形成されている。それぞれのブロック部72には、コネクタ高さ方向Zで
図3における下部(上端部を除く部分)の壁厚内にコネクタ幅方向Xで内方そしてコネクタ高さ方向Zで下方に向け開口するスリット状の金具挿入溝(
図3には表われず)が形成されている。
【0047】
レセプタクル固定金具80は、金属板部材を部分的に屈曲することで作られており、
図3に見られるように、プラグ固定金具50と同様の形状をなしていて、端子配列方向Yに対し直角な面で拡がる主板部81と、主板部81の下部からコネクタ幅方向Xに突出する突出部82と、主板部81の上縁で屈曲され端子配列方向Yで外方へ向く脚部83とを有している。主板部81の側縁には、係止突起81Aが形成されている。
【0048】
かかるレセプタクル固定金具80は、その主板部81がハウジング本体部71の端部に形成された金具圧入収容部75に下方から圧入され、主板部81に形成された係止突起81Aが、上記金具挿入溝の内壁面に喰い込むことで保持され、レセプタクル固定金具80の抜けが防止される。
図1(A)に示されるように、レセプタクル固定金具80が金具圧入収容部75に所定位置まで圧入されると、脚部83がコネクタ高さ方向Zで回路基板の実装面のレベルに位置し、実装面上の対応部に接面可能となる。
【0049】
次に、上述の構成の本実施形態におけるプラグコネクタIの組立要領と、プラグコネクタIへのレセプタクルコネクタIIの接続要領を説明する。
【0050】
<プラグコネクタIの組立要領>
先ず、プラグコネクタIについては、可動ハウジング40を、
図3に見られるごとく固定ハウジング30の下方に位置させた後に、固定ハウジング30内に下方から進入させて配置する。
【0051】
次に、プラグ端子10を固定ハウジング30と可動ハウジング40へ下方から組み込む。このとき、プラグ端子10の腕部13が、可動ハウジング40の可動側端子保持部43Aを下方から貫通圧入されて、可動ハウジング40に組み込まれる。腕部13が組み込まれた状態において、腕部13の上部をなす接触部13Aの側縁部が、起立壁44の可動側端子保持部43Aで保持される。また、腕部13の下部をなす可動側被保持部13Bが、可動側端子保持部43Aの溝内面に可動側被保持突起13B−1が喰い込むことで保持され、これによってプラグ端子10の抜けが防止される(
図2(A)参照)。一方、プラグ端子10の固定側被保持部12が、固定ハウジング30のスリット溝状の固定側端子保持部31Cへ下方から圧入されて、可動ハウジング40に組み込まれる。このとき、固定側被保持部12は、固定側被保持突起12B−1が固定側端子保持部31Cの溝内面に喰い込むことで保持され、これによってもプラグ端子10の抜けが防止される(
図2(A)参照)。
【0052】
プラグ端子10が固定ハウジング30および可動ハウジング40に組み込まれた状態において、弾性部15の弾性部15の内側短腕部15E、湾曲部15Cおよび外側短腕部15Gの上半部は固定側収容部31Aに収容され、弾性部15の外側長腕部15Fは可動側収容部41Aに収容される。また、外側短腕部15Gの下半部は可動側端子保持部43A内に収容される。また、可動側連結部14は底壁43の底面に沿って露呈して延びている。接続部11は側壁31の底面に沿って露呈して延びている。
【0053】
また、可動ハウジング40の可動側端子保持部43Aへのプラグ端子10の腕部13の圧入過程にて、弾性部15は、コネクタ幅方向Xで固定側収容部31Aと可動側収容部41Aとの間に形成された空間へ下方から進入される。該空間への進入過程において、弾性部15の外側長腕部15Fの下半部(可動側連結部14に連結されている側の部分)は、可動ハウジング40の端子収容溝43B内へ下方から挿入される。このとき、外側長腕部15Fの下半部は、端子収容溝43Bの内壁面、換言すると、端子配列方向Yで端子収容溝43Bの両側に位置する突条部43Cの外壁面(端子配列方向Yに対して直角な面)によって、端子配列方向Yでの規制を受けながら端子収容溝43B内へ挿入されることとなる。したがって、弾性部15は、外側長腕部15Fの下半部で突条部43Cによる規制を受けて案内されながら、容易かつ確実に上記空間への進入を深め所定の組込み位置に達する。
【0054】
本実施形態では、弾性部15の挿入の案内のための端子収容溝43Bは、可動ハウジング40において下側、すなわちコネクタ高さ方向Zでプラグ端子10が挿入される側に位置する底壁43に形成されている。したがって、プラグ端子10の組込み過程における初期段階から弾性部15と端子収容溝43Bとの相対位置を正規位置に定めやすく、外側長腕部15Fの下半部を端子収容溝43Bに挿入することで弾性部15の姿勢を簡単に安定させることができる。
【0055】
また、プラグ端子10の弾性部15は、湾曲した形状でコネクタ高さ方向Zに大きく、すなわちプラグ端子10の組み込み方向に長くなっているので、自由状態にて端子配列方向Yで容易に弾性変形し、組み込み過程ではその姿勢が不安定で、特に、組み込み方向での先方(上方)に位置する湾曲部15Aは端子配列方向Yで位置が定まりにくい。一方、外側長腕部15Fの下半部は、可動ハウジング40に保持される腕部13に可動側連結部14を介して連結されているので、湾曲部15Aと比べて剛性が高く、姿勢が不安定になりにくい。このように、外側長腕部15Fの下半部は姿勢が不安定になりにくいので、端子収容溝43Bに容易に挿入することができる。したがって、本実施形態では、従来のような弾性部が姿勢不安定で所定位置に収まらないという事態が生じにくい。しかも、端子収容溝43Bでは、プラグ端子10の弾性部15と可動ハウジング40の突条部43Cとの間に隙間δが形成されているので、プラグ端子10の組込みは容易であり、組込み後、コネクタの使用時にあっては、弾性部15の弾性変位によるフローティングを隙間δで確保できる。
【0056】
本実施形態では、プラグ端子10の腕部13の圧入と固定側端子保持部31Cの圧入は同時に行われることとしたが、圧入のタイミングが同時であることは必須ではない。例えば、可動ハウジング40と固定ハウジング30をコネクタ高さ方向Zで
図2(A)に示される位置とは異なる位置に配しておき、腕部13の圧入と固定側端子保持部31Cの圧入とが前後して行われてもよい。
【0057】
次に、プラグ端子10を固定ハウジング30と可動ハウジング40へ組み込んだ後に、プラグ固定金具50を固定ハウジング30へ取り付けられる。このプラグ固定金具50の固定ハウジング30への取付けは、固定ハウジング30と可動ハウジング40へのプラグ端子10の組込みとは係りなく、いつ行ってもよい。
【0058】
一方、レセプタクルコネクタIIは、
図3に見られるごとく、レセプタクルハウジング70に対し、上方からレセプタクル端子60が組み込まれ、下方からレセプタクル固定金具80が組み込まれることにより完成する。
【0059】
<プラグコネクタIへのレセプタクルコネクタIIの接続要領>
プラグコネクタIとレセプタクルコネクタIIをそれぞれ対応する回路基板に取り付ける。
【0060】
しかる後、レセプタクルコネクタIIのハウジング本体部71をプラグコネクタIの可動ハウジング40の受入部46へ上方から挿入する。レセプタクルコネクタIIのハウジング本体部71が受入部46の内面で案内され挿入が進行するとともに、ハウジング本体部71の受入部71Aへ、プラグコネクタIのプラグ端子10(接触部13A)を配した起立壁44が下方から進入する。この結果、レセプタクルコネクタIIのハウジング本体部71に保持されたレセプタクル端子60は、プラグコネクタIの起立壁44に配列されたプラグ端子10の接触部13Aを二股状の接触片62Aで挟圧して該接触部13Aに接触し、コネクタ同士は嵌合接続状態となる。
【0061】
レセプタクルコネクタIIとプラグコネクタIとは、コネクタ幅方向X、端子配列方向Yで、限らずしも正確に正規位置で接続されるということはなく、ずれを伴うことがある。また、コネクタ幅方向Xにずれが生じている場合、プラグコネクタIのプラグ端子10の弾性部15がコネクタ幅方向Xに弾性変形することによりそのずれを吸収する。また、端子配列方向Yでずれが生じている場合、
図7に見られるように、プラグコネクタIのプラグ端子10の弾性部15が端子収容溝43B内で突条部43Cとの間の隙間δ(
図6参照)の範囲内で弾性変形してそのずれを吸収する。
【0062】
また、本実施形態では、プラグ端子10の弾性部15の外側長腕部15Fは、端子配列方向Yで突条部43Cとの間の隙間δの範囲内での弾性変形が可能となっている一方で、突条部43Cにより過度な弾性変形が阻止される。したがって、レセプタクルコネクタIIとの嵌合接続状態にあるプラグコネクタIが外力を受けて端子配列方向Yで振動したとき、仮に複数のプラグ端子10のうちの一部のプラグ端子10において共振が生じても、プラグ端子10同士が接触することが防止される。
【0063】
また、本実施形態では、プラグ端子10の弾性部15において最も上方に位置している湾曲部15Aがコネクタ幅方向Xでの内方に位置しており、この湾曲部15Aから延びて外側長腕部15Fが、突条部43Cによって端子配列方向Yでの所定量以上の弾性変形の規制を受けている。つまり、弾性部15における複数の腕部のうち、長く形成されている外側長腕部15Fの弾性変形を突条部43Cによって規制することで、弾性部15の過大弾性変形の規制の効果が向上する。
【0064】
<第二実施形態>
図8に示される第二実施形態は、プラグ端子が金属板部材を板厚方向で打ち抜かれて作られた第一実施形態とは異なり、プラグ端子110が金属帯部材を板厚方向に屈曲して作られること、可動ハウジング140の進入壁部140Aの底壁143の底面に形成された底面側突条部143Eがプラグ端子110よりも下方に突出していることに特徴があり、他は第一実施形態の場合と同じであり、第一実施形態と対応する部位には第一実施形態での符号に「100」を加えた数字の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0065】
図8に見られるように、プラグ端子110は、金属帯部材を板厚方向に屈曲成形した、いわゆる曲げ端子であり、接触部113Aと接続部111との間に略M字状の弾性部115を有している点では、第一実施形態のプラグ端子と基本的に同じであるが、弾性部115の上部に位置する2つの湾曲部115Aと湾曲部115Cとは、コネクタ高さ方向Zで同じ位置にあり、また、被保持腕部112Bと可動側被保持部113Bには、それらの側縁に被保持突起は形成されていない。被保持腕部112Bは、固定ハウジング130の固定側端子保持部131Cに下方から圧入され、被保持腕部112Bの両側縁部(上下方向に延びる縁部)で保持される。可動側被保持部113Bは、可動ハウジング140の可動側端子保持部143Aに下方から圧入され、可動側被保持部113Bの両側縁部(上下方向に延びる縁部)で保持される。
【0066】
プラグ端子110の弾性部115における外側腕部115Fの下半部は、可動ハウジング140のコネクタ高さ方向Zに延びる側面側端子収容溝143B(第一実施形態の端子収容溝43Bに対応)内に収容されており、端子配列方向Yで側面側端子収容溝143Bの両側に位置する側面側突条部143C(第一実施形態の突条部43Cに対応)との間の隙間の範囲内で弾性変位(フローティング)可能となっている。また、本実施形態では、可動ハウジング140の底壁143の下面、すなわち可動ハウジング140において回路基板(図示せず)に対面する先端部の先端面には、端子配列方向Yでプラグ端子110に対応する位置で、コネクタ幅方向Xに沿って延びて側面側端子収容溝143Bに連続する底面側端子収容溝143Dが形成されている。底面側端子収容溝143Dには、プラグ端子110の可動側連結部114が収容されている。また、隣接する底面側端子収容溝143D同士間には底面側突条部143Eがプラグ端子110との間に隙間をもつようにして設けられている。底面側突条部143Eは、底面側端子収容溝143Dに収められるプラグ端子110の可動側連結部114よりも下方に突出している。
【0067】
本実施形態では、底面側突条部143Eがプラグ端子110よりも回路基板側へ向け突出しているので、可動ハウジング140が外力を受けて下方へ大きく変位しても、底面側突条部143Eが回路基板に当接することとなり、プラグ端子110の可動側連結部114が回路基板に接触することはない。
【0068】
また、本実施形態において、底面側突条部143Eと可動側連結部114との間には、隙間があってもなくともよい。隙間がある場合は、可動側連結部114が底面側端子収容溝143D内で隙間分だけ変位可能となり、隙間がないときには、底面側突条部143Eによるプラグ端子110に対する保持力が向上する。
【0069】
本実施形態における底面側端子収容溝143Dおよび底面側突条部143Eのそれぞれに相当する収容溝および突条部を、既述した第一実施形態の可動ハウジング40の底壁43の底面に設けることも可能である。
【0070】
第一実施形態および第二実施形態では、可動ハウジングの下部に、プラグ端子の弾性部の過大な弾性変形を規制するための突条部(ここでは「下側突条部」という)を形成することとしたが、これに加え、可動ハウジングの上部にも、弾性部の過大な弾性変形を形成するための突条部(ここでは「上側突条部」という)を設けてもよい。例えば、弾性部においてコネクタ高さ方向で上方かつコネクタ幅方向で最も内方に位置する湾曲部に対して、端子配列方向で両側に位置する上側突条部を設け、この上側突条部によって端子配列方向での湾曲部の弾性変形を規制することができる。このように下側突条部と上側突条部の両方を設けることにより、弾性部の過大な弾性変形を規制する効果が向上する。また、このように上側突条部を設けた場合であっても、プラグコネクタの製造過程にて、可動ハウジングにプラグ端子を下方から組み込む際、該プラグ端子の弾性部は下側突条部によって案内されながら、該弾性部の上側の湾曲部が上側突条部間に進入することとなる。つまり、組込み過程にてプラグ端子はある程度位置決めされているので、弾性部の上側の湾曲部が上側突条部に衝突することはなく、プラグ端子を簡単かつ確実に組み込むことができる。
【0071】
第一および第二実施形態では、回路基板の実装面に対して直角なコネクタ高さ方向ZをレセプタクルコネクタIIとの接続方向とするプラグコネクタIに本発明を適用する例を説明したが、本発明を適用可能なコネクタはこれに限られない。例えば、回路基板の実装面に対して平行な方向を相手接続体との接続方向とする、いわゆるライトアングルコネクタに本発明を適用することもできる。
【0072】
第一および第二実施形態では、本発明が適用されるコネクタに接続される相手接続体が相手コネクタである例を説明したが、相手接続体の形態はこれに限られず、例えば、コネクタに対して挿入接続される回路基板が相手接続体であってもよい。