【解決手段】半導体装置は、少なくとも1対の側面が上方から下方へ向かって拡がるカーブ形状を有し、シリコン基板と、半導体層と、下層とを備える。半導体層は、前記シリコン基板の上面に形成される。下層は、前記シリコン基板の下面に形成され、その側面が前記シリコン基板の側面と接続する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。なお、実施形態において、上方、下方、上面、下面等と上下関係を用いて説明しているが、これは説明のために便宜上定められたものであり、製造時及び使用時等において必ずしも重力方向に対しての上下関係を示すものではない。また、曲率を有する、あるいは、曲率を持つとは、必ずしもその箇所が円周の一部となる意味ではなく、カーブ形状を有すると言う意味で用いている。
【0008】
また、垂直であるとは、厳密に垂直である必要はなく、例えば、
図4に示す半導体装置1の側面のように曲率を持ってその上側の半導体層12の上面12aの面積よりも下側のメタル層14の下面14bの面積の方が有意に広くなるような状態、ではないことを言い、製造上の多少のずれが生じても構わない。
【0009】
本実施形態に係る半導体装置は、表面に半導体前工程により半導体層及びメタル層等が形成されている。前工程完了後、バックグラインド装置を用いてシリコン基板の裏面の厚さを薄くし、その後、裏面を化学研磨することにより、バックグラインドの付着物や破砕層を除去し、その後、スパッタ装置を用いて裏面メタルを用いて形成し、ブレードダイシングによりチップ化したものであり、この後、ダイボンディング装置等を用いてパッケージに封止するものである。
【0010】
図1(a)乃至
図1(e)は、本実施形態に係る半導体装置のダイシングまでの様子を示す図である。半導体装置は、
図1(a)に示すシリコン基板10を用い、このシリコン基板10上に半導体装置を形成するものとする。
【0011】
まず、
図1(b)に示すように前工程を行うことにより、シリコン基板10の上面10aに、各種半導体膜、絶縁膜及びメタル配線等を備えて構成される半導体層12を形成する。この半導体層12は、例えば、洗浄、成膜、半導体膜形成、絶縁膜形成、フォトリソグラフィ、エッチング、不純物注入、活性化等の前工程の各処理を所定の順にしたがって行い形成される。半導体層12の上面12aは、表面となり、半導体層12の下面12bは、シリコン基板10の上面10aと対向するように形成される。
【0012】
次に、
図1(c)に示すように、シリコン基板10の上面10aと反対側、すなわち、半導体層12が形成されている反対側にバックグラインド処理を施すことにより、シリコン基板10の厚さを調整する。このプロセスは、バックグラインドに限定されることはなく、研削、研磨、CMP(Chemical Mechanical Polishing)、化学エッチング、サンドブラスト等の他の物理薄化を用いてもよい。
【0013】
その後さらに、シリコン基板10の下面10bをHF(フッ化水素)系の薬品を用いて、ライトエッチングを行う。使用するエッチングは、薬液を用いたエッチングには限られず、ガスを用いたドライエッチングであってもよい。また、研削又は研磨により裏面の破砕層を必要なだけ取り除く工程によるものであってもよい。
【0014】
次に、
図1(d)に示すように、シリコン基板10の下面10bに対してスパッタ処理により、下層として、メタル層14を形成する。メタル層14の上面14aは、シリコン基板10の下面10bと対向するように形成される。メタル層14の形成は、スパッタ処理で行われるものに限られるものではなく、蒸着、めっき、化学的又は物理的に形成する処理で行ってもよい。
【0015】
形成されるメタルは、例えば、Ti(チタン)を成膜させた後に、Tiを覆うように、Ni(ニッケル)膜、Au(金)膜を成膜させたものでもよい。このメタル層14は、Tiには限られず裏面メタルとなりうる金属であればよく、この他の例としては、Ti、Cu(銅)、Zn(亜鉛)、Pd(パラジウム)、Ni、Ag(銀)、Au、P(リン)のうち、少なくとも1つを含む金属膜である。
【0016】
次に、
図1(e)に示すように、ダイシングテープ16に転写して、ブレードダイシング装置を用いてチップ化を行う。メタル層14の下面14bがダイシングテープ16の上面16aと対向するようにダイシングテープ16を設置し、ダイシングブレードによりカット領域20を形成する。カット領域20は、半導体層12の上面12aから、少なくともダイシングテープ16に到達するまでにわたって形成される。
【0017】
図2は、ダイシングブレード30と、カットする対象となる基板との関係を示す図である。この
図2及び後述する
図3(b)に示すように、ダイシングブレード30は、例えば、ダイシングテープ16の途中まで、ダイシングテープ16の上面を浅く切る程度に、半導体層12、シリコン基板10及びメタル層14をダイシングするように設置され、基板全体をダイシングする。
【0018】
ダイシングブレード30は、その刃部32がメタルの切断とシリコンの切断に適しているものを利用する。この刃部32によりメタル層14及びシリコンを切断するようにダイシングを行う。上述したように、この切断においては、ダイシングテープ16の上面も浅く切断される。
【0019】
図3(a)及び
図3(b)は、ダイシングのタイミングにおける基板とダイシングブレード30との様子を示す図である。それぞれ、
図2に示す方向A及び方向Bから見た図、すなわち、ダイシングブレード30と垂直な方向及びダイシングブレード30と平行な方向からの様子を示す図である。
【0020】
図3(a)に示すように、ダイシングブレード30の刃部32は、少なくともメタル層14と、半導体層12と、シリコン基板10と、を切断し、ダイシングテープ16の上面を浅く切断するのに問題の無い長さを有している。この刃部32により半導体層12及びシリコン層10と、メタル層14と、ダイシングテープ16の上面とが一緒に切断される。ダイシングブレードの幅は、本実施形態においては、厚いところで15〜50μmであるが、少なくともメタル層14を切っている部位は、刃先に曲率を有しているため、ダイシングブレードの元厚の部位よりも薄くなっている。また、切込み深さにより、メタル部のダイシングカーフ幅は変わっている。
【0021】
図3(b)は、方向Bから見たダイシングブレード30の断面を示す図である。なお、ダイシングブレード30の素材は特に限られるものではないので、この
図3(b)において、ハッチングは省略している。
【0022】
この
図3(b)に示すように、ダイシングブレード30の刃部32の側面部34は、シリコン基板10の高さの途中から曲線を描くような曲率を有している。この曲率は、
図3(b)に示すように、なめらかな曲率をしている。
【0023】
ダイシングブレード30において、刃部32は、例えば、メタルの切断とシリコン基板10の切断との両方に適するように選んだダイヤモンドの粒子を有している。
【0024】
別の例として、このダイシングブレード30を、ダイシングテープ16の途中まで到達するような通常の使用法により用いるのではなく、メタル層14の下面14bまでを切断し、ダイシングテープ16の上面付近を刃部32の刃先が切断する程度の高さにダイシングブレード30の高さを調整することによって、半導体装置1の下部において
図1(e)に示すように曲率を有するように切断をすることが可能となる。すなわち、
図3(a)に示すよりも高い位置であり、かつ、メタル層14が切断されるようにさらに浅い位置にダイシングソーの刃部32が配置されるように制御してもよい。
【0025】
このように、本実施形態においては、メタル層14までが切断され、さらに、刃部32の側面が有している曲率が半導体装置1の側面の曲率に転写されるように、シングルカットによりダイシングされるものであればよい。
【0026】
図4は、本実施形態に係る半導体装置1の断面を示す図である。この
図4に示すように、半導体装置1は、メタル層14と、シリコン基板10と、半導体層12とが重なり合うように形成されている。その側面は、シリコン基板10における側面20bが途中から曲率を有し、メタル層14の側面20aへと曲率を有したまま接続される。換言すると、半導体装置1の側面は、シリコン基板10の側面の上方から下方へと向かって平面視における半導体装置1の面積が増していくような曲率を有し、シリコン基板10の下面10bに接しているメタル層14の下方へと向かってさらに拡がるような曲率を有する。ダイシングソーの刃部32は、個体差により、その側面が厳密に平面であるわけではないので、当該刃部32の形状に合わせ、側面20bは、厳密に平面上の部分と曲率を有する部分とが分離されるのではなく、全体的になだらかな曲率を有していてもよい。
【0027】
この
図4の半導体装置1は、
図1(e)に示す基板から、1チップ分を取り出したものであり、メタル層14の下面14bからダイシングテープ16を除去したものである。この状態において、例えば、チップをダイボンディングして、その後、ワイヤボンディング、モールド等の工程を経ることにより半導体パッケージが生成される。
【0028】
この
図4に示すように、断面において、メタル層14の下面14bの長さが、半導体層12の上面12aの長さよりも長くなるように、半導体装置1は、形成される。3次元空間で表現すると、一例として、チップは矩形状であり、メタル層14の下面14bの面積が、半導体層12の上面12aの面積よりも広くなるように形成される。また、メタル層14の下面14bの各辺の長さが、対応する半導体層12の上面12aの各辺の長さよりも長くなるように形成される。
【0029】
このように、上面に比べて下面の面積を広くすることにより、ダイシング後においてチップを並べて搬送する場合等に、チップ表面(すなわち、上面12a)同士の距離を稼ぐことが可能となるため、チップ表面におけるチップ同士の接触する可能性が低くなる。このため、チップ同士の衝突によるチップ欠け、表面チッピングが発生しづらくなり、チップの品質が向上する。この結果、ボンディング不良の低減、抗折強度の低下の抑制をすることが可能となる。
【0030】
ここで、チッピングとは、各面において表面が割れたり、ヒビが入ったり、欠けたりすることを言う。このチッピングが起こることにより、搬送時、加工時及び使用時における半導体装置1の性能が低下する。
【0031】
図5は、半導体装置1を支持基盤40にダイボンディングした様子を示すものである。
例えば、メタル層14が支持基盤40上にはんだ42を用いてボンディングされている。
この
図5に示すように、半導体装置1の側面が曲率を有することにより、側面が垂直である場合と比較してはんだ42とメタル層14との接触面が広くなる。この結果、ダイシェア強度の向上、すなわち、ダイボンディング性を向上することが可能となる。はんだ42でボンディングする場合に限られず、ダイボンディング樹脂によりボンディングされる場合も同様である。
【0032】
さらに、
図5に示すように曲率を有していると、はんだ42でダイボンディングを行う場合に、メタル層14の側面が垂直になっている場合と比べて、はんだ42とメタル層14との接続面積が大きくなる。このことから、半導体装置1の表面までの側面の距離が長くなり、メタル層14と半導体層12が側面においてショートすること、さらには、メタル層14と半導体層12の表面とがショートすること、表面の半導体層12内の配線とボンディングに用いるはんだとがショートすることを抑制することが可能となる。同様の理由から、はんだ42を介した半導体装置1の側面からのリーク電流を抑制することが可能となる。
【0033】
ただし、メタル層14の下面14bが半導体層12の上面12aよりも長くなる長さが、半導体装置1の厚さの25%程度を越えると、チップとしての必要となる面積が広くなり、また、側面の曲率が緩くなり、さらに、ダイシングブレード30の形状も特殊なものとなるので、好ましくない。より好ましくは、メタル層14の下面14bが半導体層12の上面12aよりもせり出している長さは、半導体装置1の厚さの5%から25%程度であることが望ましい。
【0034】
以上のように、本実施形態によれば、側面に上面から下面へと向かって曲率を有し、上面よりも下面の面積を広くした形状を有することにより、リーク電流を抑制した上で、ダイボンディングの強度を向上することが可能となる。また、表面までの距離が長いため、側面におけるショートが発生しづらくなる。メタル層14と側面とのショートを発生させなくすることにより、メタル層14と半導体装置1の配線層等の表面とのショート、及び半導体装置1の側面と表面とのショートをも抑制できる。さらに、チップ表面の距離を長く保つことが可能となるため、ダイシング後の搬送時にチップ同士の衝突が発生しづらくなり、チップの品質を向上することが可能となる。
【0035】
一般的には、シリコンとメタルを別々に切断することが多いが、本実施形態においては1本のダイシングブレードを用いて切断している。この結果、ダイシングの工程におけるスループットを上げることが可能となる。このスループットはデュアルカットにするとより上げることが可能である。
【0036】
なお、上記では、半導体装置1の下層は、メタル層14であるもととしたが、これはダイアタッチフィルムであってもよい。ダイアタッチフィルムは、例えば、導電性のダイアタッチフィルムであってもよい。ダイアタッチフィルムを用いた半導体装置1を形成することにより、積層して半導体パッケージを製造する場合に、半導体装置1に加工を施すことなく積層させることが可能となる。
【0037】
(変形例)
前述した実施形態においては、シングルカットでダイシングを行ったが、これには限られず、ステップカットでダイシングを行うようにしてもよい。
【0038】
すなわち、本変形例においては、シリコン基板10を切断するダイシングブレードと、メタル層14を切断するダイシングブレードとを別々に用意し、それぞれの層により適したダイシングブレードにより切断を行う。すなわち、シリコン基板10は、シリコンを切断するダイシングブレード30の刃部32で切断し、メタル層14は、メタルを切断するダイシングブレード30の刃部32により切断をするようにしてもよい。
【0039】
図6は、ステップカットにより形成された半導体装置1を示す図である。本変形例に係る半導体装置1は、前工程後の基板に対して、まず、シリコンを切断する第1のダイシングブレードを用いて、シリコン基板10の下面10bを貫通する深さまで第1の切断を行う。この第1の切断は、メタル層14の上面14aに到達してもよいが、メタル層14の切断を目的としたものではないので、メタル層14を完全に切断するものではない。
【0040】
第1の切断を行った後に、第1の切断面に表出したメタル層14に対して、第1のダイシングブレードよりも刃幅の狭い第2のダイシングブレードを用いて、メタル層14の下面14bまでを切断するように、第2の切断を行う。この第2の切断は、前述した実施形態と同様に、ダイシングテープ16の上面を浅く切断してもよい。
【0041】
図6に示すように、第1の切断においては、前述した実施形態に係る半導体装置1と同様に、側面20cに曲率を有するように切断される。これは、ダイシングブレードの断面形状と同様にシリコン基板10までが切断されるためである。続く第2の切断においては、メタル層14を垂直に、もしくは、本変形例においても、
図4又は
図7に示すように、前述した実施形態と同様に曲率を持った断面となるように側面20dが表出するように切断される。
【0042】
図7は、
図6の変形例に係る半導体装置1を示す図である。
図7のような切断面は、メタル層14の切断を行う際に、前述の実施形態で説明したように、メタル層14の下面14bまでを切断するようにダイシングブレードの高さを調節することにより形成される。
上述したように、ダイシングテープ16の途中まで、ダイシングテープ16の上面を浅く切断する程度の高さに調節するようにしてもよい。
【0043】
図8は、本実施形態の別の例に係る半導体装置1を示す図である。この
図8に示すように、ほぼ垂直である部分が、シリコン基板10の下方に及んでいてもよい。このような場合においても、
図6等と同様の効果を得ることが可能となる。
【0044】
図9は、さらに別の例に係る半導体装置1を示す図である。この
図9に示すように、シリコン層10を切断する際に、メタル層14の上層部をも切断してもよい。
【0045】
以上のように、本変形例によっても、側面20cにおいて曲率を有するため、前述した実施形態に係る半導体装置1と同様に、上面12aよりも下面14bの面積が広く、チップ形状、すなわち、半導体1の形状が矩形である場合には、上面12aの各辺の長さよりも、下面14bの各辺の長さが長くなる。この長さの差により、半導体装置1の上面12aの衝突を抑制することが可能となる。ステップカットにすることにより、前述のシングルカットに比べて、メタル用、シリコン用のブレードの選定をすることが可能となり、さらなる品質向上につながる。
【0046】
すなわち、シリコン基板10及びメタル層14を切断する刃が異なるため、ダイシング工程において、シリコン基板10の表面及び側面チッピング及びメタル層14の下面14bにおける裏面チッピングの発生を抑制し、抗折強度を向上することに繋がり、チップの歩留まりを向上させることが可能となる。また、たとえシリコン層10の下部においてヒビ等のクラックが発生した場合においても、チッピングが発生したシリコン層10の下面と当該メタル層14の上面とが物理的に接続し、当該チッピング箇所は、少なくともその下面においてメタル層10に固定されているため、チッピング部分の剥がれが発生しづらくなり、後工程におけるゴミを発生させることを抑制することが可能となる。
【0047】
また、側面20dが垂直である場合においても、側面20dにおいては、はんだ、ダイボンディング樹脂等のボンディング剤に対して従来のものと効果は変わらないが、側面20cにおいて曲率を有するため、ボンディング剤が側面20cの側面を上から押さえつける力が前述の実施形態と同様に掛かるため、同様の効果を得ることが可能となる。はんだ等の導電体のボンディング剤である場合はさらに、前述の実施形態と同様に、側面又は表面における電流のリークを抑制することも可能となる。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
また、当然のことながら、本発明の要旨の範囲内で、これらの実施の形態を部分的に適宜組み合わせることも可能である。
【0049】
例えば、半導体装置1は、それぞれ交わる方向に基板が切断されてチップ化されるが、一方の方向においては、シングルカットにより切断され、他方の方向においては、ステップカットにより切断されてもよい。もちろん、双方の方向においてシングルカット又はステップカットにより切断されてもよい。さらには、対向する2組の側面のうち、1組の側面のみが上述したように曲率を有していてもよい。
【0050】
また、半導体装置1のシリコン基板10は、別のもので置き換えられたものであってもよい。例えば、窒化ガリウム(GaN)、炭化ケイ素(SiC)等を用いた基板であっても、当然前述の実施形態に係るダイシング方法により、半導体装置1と同様の効果を得ることが可能となる。
【0051】
さらに、
図10のように、メタル層14の途中から側面に曲率を有するように半導体装置1を形成してもよい。このように、メタル層14の厚さにより、シリコン基板10及びメタル層14におけるカーブの位置が変化しても構わない。
【0052】
前述の半導体装置1の形状は、例えば、顕微鏡等を用いてチップの断面を観察すること、又は、側面を観察することにより検知することが可能である。