【解決手段】回転電機に設けられるステータであって、複数のスロットが形成される円筒形状の固定子コアと、スロットに挿入される複数のセグメント導体からなるステータコイルSCと、複数のセグメント導体を構成するセグメントコイルC1,C2に溶接されるセンサ保持導体62と、センサ保持導体62に保持されるサーミスタ63と、を備えるセンサユニット61と、を有し、センサ保持導体62は、セグメントコイルC1の接合端部71に溶接される接合端部62aと、セグメントコイルC2の接合端部72に溶接される接合端部62bと、接合端部62a,62bを互いに連結する曲げ部62cと、を備え、サーミスタ63は、曲げ部62cの内側に保持されている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の説明では、本発明の一実施の形態であるステータ10を備える回転電機11として、電気自動車やハイブリッド自動車等に搭載される三相交流同期型のモータジェネレータを例示するが、これに限られることはなく、セグメントコイル40が組み付けられるステータ10を備えた回転電機であれば、如何なる回転電機であっても良い。
【0011】
[回転電機構造]
図1は本発明の一実施の形態であるステータ10を備えた回転電機11の一例を示す断面図である。
図1に示すように、モータジェネレータである回転電機11は、モータハウジング12を有している。モータハウジング12は、底付き円筒形状のハウジング本体13と、ハウジング本体13の開口端を閉じるエンドカバー14と、を備えている。ハウジング本体13内に固定されるステータ10は、複数枚のケイ素鋼鈑等からなる円筒形状のステータコア(固定子コア)15と、ステータコア15に巻き付けられる三相のステータコイル(固定子巻線)SCと、を有している。なお、モータハウジング12にはオイルを案内する油路16が形成されており、この油路16からステータコイルSCのコイルエンドCeに対して冷却用のオイルが供給されている。
【0012】
ステータコイルSCのコイルエンドCeには、バスバーユニット20が接続されている。このバスバーユニット20は、ステータコイルSCに設けられる3つの動力点Pu,Pv,Pwに接続される3つの動力バスバー21,22,23と、ステータコイルSCが備える3つの中性点Nu,Nv,Nwを互いに接続する中性バスバー24と、これらのバスバー21,22,23,24を保持する絶縁部材25と、を備えている。また、動力バスバー21,22,23の端部はモータハウジング12から外部に突出しており、それぞれの動力バスバー21,22,23にはインバータ26等から延びる電力ケーブル27が接続されている。
【0013】
また、ステータコア15の中央には、円柱形状のロータ30が回転自在に収容されている。このロータ30は、複数枚のケイ素鋼鈑等からなる円筒形状のロータコア31と、ロータコア31に埋め込まれる複数の永久磁石32と、ロータコア31の中央に固定されるロータシャフト33と、を有している。ロータシャフト33の一端部は、ハウジング本体13に設けられる軸受34によって支持されており、ロータシャフト33の他端部は、エンドカバー14に設けられる軸受35によって支持されている。
【0014】
[ステータ構造]
図2は
図1のA−A線に沿ってステータ10を示す断面図であり、
図3はU相の相巻線(以下、U相コイルCuと記載する。)を備えたステータコア15を示す断面図である。また、
図4はセグメントコイル40の一例を示す斜視図である。後述するように、ステータコイルSCは、U相コイルCuの他に、V相の相巻線(以下、V相コイルCvと記載する。)、およびW相の相巻線(以下、W相コイルCwと記載する。)によって構成されている。また、図示するU相コイルCu、V相コイルCvおよびW相コイルCwは、互いに同一のコイル構造を有するとともに、互いに位相を120°ずらしてステータコア15に巻き付けられている。
【0015】
図2に示すように、円筒形状のステータコア15の内周部には、所定間隔を空けて周方向に複数のスロットS1〜S48が形成されている。各スロットS1〜S48にはセグメントコイル(セグメント導体)40が収容されており、複数のセグメントコイル40を互いに接続することでステータコイルSCが構成されている。
図2および
図3に示すように、U相コイルCuを構成するセグメントコイル40はスロットS1,S2,S7,S8・・に収容されており、V相コイルCvを構成するセグメントコイル40はスロットS5,S6,S11,S12・・に収容されており、W相コイルCwを構成するセグメントコイル40はスロットS3,S4,S9,S10・・に収容されている。
【0016】
図4に示すように、略U字状に曲げられるセグメントコイル40は、何れかのスロット(例えばスロットS1)に収容されるコイルサイド41と、所定のコイルピッチで他のスロット(例えばスロットS7)に収容されるコイルサイド42と、を有している。また、セグメントコイル40は、一対のコイルサイド41,42を互いに連結するエンド部43と、一対のコイルサイド41,42のそれぞれから延びる接合端部44,45と、を有している。なお、セグメントコイル40は銅等の導電材料からなる平角線によって構成されており、接合端部44,45の先端を除いてセグメントコイル40にはエナメルや樹脂被膜等の絶縁被膜が設けられている。また、セグメントコイル40に設けられるエンド部43は、
図4に示す折り曲げ形状に限られることはなく、ステータコア15に対する組み付け位置に応じて様々な形状に折り曲げられている。
【0017】
ここで、
図5はステータ10を示す斜視図であり、
図6(A)および(B)はセグメントコイル40の接続状況の一例を示す図である。
図2および
図5に示すように、ステータコア15の各スロットS1〜S48には、複数のセグメントコイル40が組み付けられている。また、
図5および
図6に示すように、ステータコア15にセグメントコイル40が組み付けられると、セグメントコイル40の接合端部44,45は、ステータコア15の一端面(端面)50から動力線側に突出して配置され、セグメントコイル40のエンド部43はステータコア15の他端面51から反動力線側に突出して配置される。
【0018】
そして、
図6(A)および(B)に示すように、ステータコア15の一端面50から突出する接合端部44,45は、他のセグメントコイル40の接合端部44,45に接触するように曲げられた後に、接触する他のセグメントコイル40の接合端部44,45に対して溶接される。これにより、セグメントコイル40の接合端部44,45は互いに溶接されて導体接合部60になり、導体接合部60を介して複数のセグメントコイル40は互いに接続されることで1つの導体になる。つまり、複数のセグメントコイル40によってU相コイルCuが構成され、複数のセグメントコイル40によってV相コイルCvが構成され、複数のセグメントコイル40によってW相コイルCwが構成される。なお、溶接加工が施された接合端部44,45には、導体を覆うように樹脂被膜等を形成する絶縁処理が施される。
【0019】
図7はステータコイルSCの結線状態の一例を示す図である。
図7に示すように、ステータコイルSCは、U相コイルCu、V相コイルCvおよびW相コイルCwによって構成されている。U相コイルCuは、互いに直列接続される複数のセグメントコイル40によって構成される。このU相コイルCuの一端部は動力点Puとなっており、U相コイルCuの他端部は中性点Nuとなっている。また、V相コイルCvは、互いに直列接続される複数のセグメントコイル40によって構成される。このV相コイルCvの一端部は動力点Pvとなっており、V相コイルCvの他端部は中性点Nvとなっている。さらに、W相コイルCwは、互いに直列接続される複数のセグメントコイル40によって構成される。このW相コイルCwの一端部は動力点Pwとなっており、W相コイルCwの他端部は中性点Nwとなっている。そして、U相コイルCuの中性点Nu、V相コイルCvの中性点NvおよびW相コイルCwの中性点Nwは互いに接続されており、各相コイルCu,Cv,CwによってステータコイルSCが構成されている。
【0020】
[温度検出構造]
続いて、ステータコイルSCの温度を検出するための温度検出構造について説明する。
図8はステータコイルSCのコイルエンドCeに設けられる導体接合部60の一部を示す図である。
図8に示すように、ステータコア15の一端面50側には、セグメントコイル40の接合端部44,45が互いに溶接されて形成される複数の導体接合部60が設けられている。これらの導体接合部60は、ステータコア15の周方向と径方向との双方に配列されている。複数の導体接合部60からなる接合部群として、最も径方向外側に位置して周方向に配列される第1接合部群G1があり、第1接合部群G1よりも径方向内側に位置する第2接合部群G2がある。また、
図8に示すように、第2接合部群G2を構成する導体接合部60の1つである導体接合部60xには、ステータコイルSCの温度を検出するセンサユニット61が設けられている。つまり、複数の導体接合部60を第1接合部群G1と第2接合部群G2とに区分した場合に、センサユニット61は第2接合部群G2を構成する導体接合部60xに設けられている。
【0021】
ここで、
図9は
図5の範囲αを拡大して示す斜視図であり、
図10はセンサユニット61が取り付けられた導体接合部60xを示す図である。なお、前述の説明では、セグメントコイルに「40」の符号を付して説明したが、以下の説明では、センサユニット61が接合されるセグメントコイル40に「C1,C2」の符号を付して説明する。また、前述したように、センサユニット61が設けられる導体接合部60については「60x」の符号を付して説明する。
【0022】
図9および
図10に示すように、導体接合部60xは、セグメントコイル(第1セグメント導体)C1の接合端部(端部)71と、セグメントコイル(第2セグメント導体)C2の接合端部(端部)72と、を備えている。また、セグメントコイルC1の接合端部71とセグメントコイルC2の接合端部72との間には、センサ保持導体62およびサーミスタ(温度センサ)63からなるセンサユニット61が設けられている。略U字状に折り曲げられたセンサ保持導体62は、直線状に伸びる接合端部(第1端部)62aと、直線状に伸びる接合端部(第2端部)62bと、これら一対の接合端部62a,62bを互いに連結する曲げ部62cと、を有している。また、センサ保持導体62の接合端部62a,62bは互いに離れており、接合端部62aと接合端部62bとの間には所定の隙間Sが設けられている。
【0023】
また、セグメントコイルC1の接合端部71には、センサ保持導体62の接合端部62aが溶接されており、セグメントコイルC2の接合端部72には、センサ保持導体62の接合端部62bが溶接されている。さらに、センサ保持導体62の曲げ部62cの内側にはサーミスタ63が配置されており、樹脂等の封止材64によってサーミスタ63はセンサ保持導体62に固定されている。つまり、センサ保持導体62の曲げ部62cの内側には、温度を検出するサーミスタ63が保持されている。なお、センサ保持導体62は、セグメントコイルC1,C2と同じ素材、つまり銅等の導電材料からなる平角線によって形成されている。
【0024】
このように、導体接合部60xに対してセンサユニット61を取り付けることにより、ステータコイルSCの温度を適切に検出することができる。つまり、ステータコイルSCのコイルエンドCeにセンサユニット61が組み込まれるため、バスバーユニット20に対してセンサユニット61を組み付けた場合に比べて、ステータコイルSCの温度をより高い部位で計測することができる。また、通電時に発熱するセンサ保持導体62の曲げ部62cによってサーミスタ63を囲むようにしたので、ステータコイルSCの温度をより高い部位で計測することができる。
【0025】
また、
図8に示すように、センサユニット61は径方向内側の第2接合部群G2に設けられており、この点からも、ステータコイルSCの温度を適切に検出することができる。つまり、コイルエンドCeの内周部については外周部に比べて冷却され難いことから、センサユニット61を第2接合部群G2に設けることにより、ステータコイルSCの温度をより高い部位で計測することができる。しかも、
図1に示すように、コイルエンドCeの外周部には冷却用のオイルが供給されるため、コイルエンドCeの外周部は他の部位に比べて温度が低くなり易いが、このような冷却構造であっても、センサユニット61を第2接合部群G2に設けることにより、ステータコイルSCの温度をより高い部位で計測することができる。
【0026】
[製造方法]
続いて、本発明の一実施の形態であるステータ10の製造方法について説明する。
図11はステータ10の製造方法の一部を簡単に示す図である。また、
図12(A)および(B)はセンサユニット61の組立過程を示す図であり、
図13(A)〜(C)は、導体接合部60に対するセンサユニット61の取付過程を示す図である。
【0027】
図11に示すように、ステータ10の製造工程として、ステータコア15にセグメントコイル40を挿入するコイル挿入工程100が設けられており、セグメントコイル40の接合端部を曲げるコイル曲げ工程110が設けられている。コイル挿入工程100においては、
図2および
図6(A)に示すように、ステータコア15に形成される複数のスロットS1〜S48に対して、複数のセグメントコイル40が挿入される。また、コイル曲げ工程110においては、
図6(B)および
図8に示すように、ステータコア15の一端面50から突出するセグメントコイル40の接合端部44,45を曲げることにより、複数の導体接合部60がステータコア15の周方向と径方向との双方に配列される。
【0028】
また、
図11に示すように、ステータ10の製造工程として、センサユニット61を組み立てるセンサ組立工程200が設けられている。センサ組立工程200においては、
図12(A)に示すように、センサ保持導体62の曲げ部62cの内側に対してサーミスタ63の測定部63aが収容され、
図12(B)に示すように、樹脂等の封止材64によってサーミスタ63はセンサ保持導体62に固定されている。このように、センサ保持導体62に対してサーミスタ63を固定することにより、センサ保持導体62およびサーミスタ63からなるセンサユニット61が形成される。なお、ステータコイルSCの温度をより高く検出するため、センサ保持導体62に対してサーミスタ63の測定部63aを接触させることが望ましい。
【0029】
さらに、
図11に示すように、ステータ10の製造工程として、導体接合部60xに対してセンサユニット61を取り付けるセンサ仮付工程120が設けられており、導体接合部60,60xをTIG溶接等によって溶接するコイル溶接工程130が設けられている。センサ仮付工程120においては、
図13(A)に示すように、導体接合部60xを構成する第1セグメントコイルC1と第2セグメントコイルC2との間に、センサ保持導体62およびサーミスタ63からなるセンサユニット61が挿入される。また、コイル溶接工程130においては、
図13(B)に符号Xで示すように、セグメントコイルC1の接合端部71とセンサ保持導体62の接合端部62aとが互いに溶接され、セグメントコイルC2の接合端部72とセンサ保持導体62の接合端部62bとが互いに溶接される。これにより、
図13(C)に示すように、セグメントコイルC1,C2およびセンサ保持導体62は、溶接加工によって形成される溶込部65を介して互いに接合される。なお、コイル溶接工程130においては、センサユニット61を備えていない他の導体接合部60についても溶接加工が施される。つまり、コイル溶接工程130においては、複数の導体接合部60,60xが個々に溶接されている。
【0030】
また、コイル溶接工程130においては、溶接加工時の熱がサーミスタ63に伝達されるが、
図13(B)に示すように、センサ保持導体62の接合端部62aと接合端部62bとは互いに離れているため、隙間Sに熱を逃がして接合端部62a,62bの放熱性を高めることができ、溶接加工時の熱からサーミスタ63を保護することができる。また、センサ保持導体62の接合端部62a,62bを長く形成することにより、符号Xで示した溶接箇所からサーミスタ63を離すことができ、溶接加工時の熱からサーミスタ63を保護することができる。
【0031】
これまで説明したように、センサ保持導体62およびサーミスタ63からなるセンサユニット61を形成し、このセンサユニット61を導体接合部60xに取り付けることにより、ステータコイルSCに対してサーミスタ63を簡単に取り付けることができる。すなわち、ステータコイルSCに対してサーミスタ63を取り付ける際には、サーミスタ63を単独で取り扱うのではなく、サーミスタ63をセンサユニット61として取り扱うことにより、製造過程におけるサーミスタ63の取扱いが極めて容易になる。
【0032】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。前述の説明では、2つのセグメントコイルC1,C2を備えた導体接合部60xに対してセンサユニット61を取り付けているが、これに限られることはなく、3つ以上のセグメントコイル40からなる導体接合部に対してセンサユニット61を取り付けても良い。すなわち、前述の説明では、複数のセグメントコイル40を直列接続することで各相コイルCu,Cv,Cwを構成しているが、これに限られることはなく、複数のセグメントコイル40を並列接続することによって各相コイルCu,Cv,Cwを構成しても良い。例えば、2つのセグメントコイル40を並列接続した場合には、4つのセグメントコイル40によって導体接合部が形成される。このように、3つ以上のセグメントコイル40からなる導体接合部が形成される場合であっても、導体接合部を構成するセグメントコイル40間にセンサユニット61を組み込むことにより、ステータコイルSCの温度を適切に検出すること可能である。
【0033】
前述の説明では、ステータコイルSCの温度をより高い部位で検出する観点から、第2接合部群G2に含まれる導体接合部60xにセンサユニット61を設けているが、これに限られることはない。例えば、発熱するステータコイルSCの温度分布によっては、第1接合部群G1に含まれる導体接合部60にセンサユニット61を設けても良い。また、前述の説明では、温度センサとしてサーミスタ63を用いているが、これに限られることはなく、他の温度センサを採用しても良い。また、前述の説明では、TIG溶接等のアーク溶接によって導体接合部60を溶接しているが、これに限られることはなく、レーザー溶接等を用いて導体接合部60を溶接しても良い。なお、
図1に示した例では、ステータコイルSCのコイルエンドCeに冷却用のオイルを供給しているが、これに限られることはなく、他の冷却構造を備えたステータ10に対して本発明を適用することも可能である。
【0034】
また、図示する例では、1つのスロットに対して8つのセグメントコイル40を挿入しているが、これに限られることはない。例えば、1つのスロットに対して8つを上回るセグメントコイル40を挿入しても良く、1つのスロットに対して8つを下回るセグメントコイル40を挿入しても良い。また、前述の説明では、スロット数が48のステータコア15を用いているが、これに限られることはなく、他のスロット数のステータコア15を用いても良い。