【解決手段】固定部材12は、固定部材本体15と、固定部材本体15とは別体をなす筒状のカラー16とを備える。固定部材本体15は、車体側の組付面Paから延びるボルトPbに固定される固定部21と、ワイヤハーネス本体11を保持する保持部22とを有する。固定部21は、組付面Paに対向する表面21aと、表面21aから裏面側に貫通し内部にカラー16が設けられる貫通孔26を有する。貫通孔26の内周面は、カラー16が配置されるカラー配置部41と、カラー配置部41と表面21aとの間に位置する傾斜部42とを有する。そして、傾斜部42は、カラー配置部41側に向かって貫通孔26の中心軸線側に傾斜している。
前記カラーの軸方向から見て、前記傾斜部における前記カラー配置部側の端部の径方向位置と、前記カラーの内周面の位置とが一致している、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のワイヤハーネス用固定部材。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のワイヤハーネス用固定部材は、
[1]ワイヤハーネス本体を取付対象に固定するためのワイヤハーネス用固定部材であって、固定部材本体と、前記固定部材本体とは別体をなす筒状のカラーと、を備え、前記固定部材本体は、前記取付対象の組付面から延びるボルトに固定される固定部と、前記ワイヤハーネス本体を保持する保持部と、を有し、前記固定部は、前記組付面に対向する表面と、前記表面から裏面側に貫通し内部に前記カラーが設けられる貫通孔と、を有し、前記カラーには、前記ボルトが挿通され、前記貫通孔の内周面は、前記カラーが配置されるカラー配置部と、前記カラー配置部と前記表面との間に位置する傾斜部と、を有し、前記傾斜部は、前記表面から前記カラー配置部側に向かって前記貫通孔の中心軸線側に傾斜している。
【0012】
この構成によれば、固定部材本体の貫通孔内に配置されたカラーに取付対象側のボルトを挿入する際、貫通孔の傾斜部の傾斜によってボルトの先端をカラーに向けて案内することが可能となる。これにより、取付対象側のボルトに対する固定部材の組付方向に制約が生じる場合でも、ボルトをカラーに容易に挿入することが可能となる。従って、固定部材の取付対象への組付性を向上させることが可能となる。
【0013】
[2]前記カラーは、軸方向において内径が一様である。この構成によれば、形状な単純なカラーを採用しつつも、固定部材本体の貫通孔の形状変更、すなわち傾斜部の追加によって、固定部材の取付対象への組付性を向上させることが可能となる。
【0014】
[3]前記カラーは、前記カラーの軸方向の一端部から径方向外側に延びるフランジ部を有し、前記貫通孔は、前記カラー配置部における前記傾斜部側の端部において、前記フランジ部に対して前記カラーの軸方向に当接する段部を有している。この構成によれば、固定部材本体の貫通孔に傾斜部を設けた構成において、カラーのフランジ部を段部によってカラーの軸方向に支持することができる。
【0015】
[4]前記カラーの軸方向から見て、前記傾斜部における前記カラー配置部側の端部の径方向位置と、前記カラーの内周面の位置とが一致している。この構成によれば、固定部材本体の貫通孔内に配置されたカラーに取付対象側のボルトを挿入する際、貫通孔の傾斜部によってボルトの先端をカラーの内周面まで案内することが可能となる。これにより、カラーにボルトをより一層容易に挿入することが可能となる。
【0016】
[5]また、本開示のワイヤハーネスは、ワイヤハーネス本体と、上記のワイヤハーネス用固定部材と、を備える。
この構成によれば、ワイヤハーネス用固定部材における貫通孔の傾斜部によって、同固定部材の取付対象への組付性を向上させることが可能となる。
【0017】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のワイヤハーネス用固定部材及びワイヤハーネスの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張または簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率については各図面で異なる場合がある。また、本明細書における「垂直」は、厳密に垂直の場合のみでなく、本実施形態における作用ならびに効果を奏する範囲内で概ね垂直の場合も含まれる。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0018】
図1に示すように、車両用のワイヤハーネス10は、ワイヤハーネス本体11と、ワイヤハーネス本体11を車体パネルPの組付面Paに固定するための固定部材12と、を備えている。
【0019】
ワイヤハーネス本体11は、電線13と、電線13の外周を包囲する筒状の外装部材14と、を備えている。外装部材14は、全体として長尺の筒状をなしている。本実施形態の外装部材14の横断面形状は円形である。また、本実施形態の外装部材14は、例えば金属パイプからなる。外装部材14に通される電線13の数は、1本、または複数本である。
【0020】
なお、本明細書における「筒状」は、全体として筒状と見做せればよく、複数の部品を組み合わせて筒状をなすものや、C字状のように一部に切り欠きなどを有するものも含む。本実施形態の外装部材14は一部品で構成されている。
【0021】
(固定部材12)
図1及び
図2に示すように、固定部材12は、固定部材本体15と、固定部材本体15に設けられた筒状のカラー16とを備えている。
【0022】
固定部材本体15は、例えば、合成樹脂材からなる射出成形品である。固定部材本体15は、車体パネルPの組付面Paに固定される固定部21と、ワイヤハーネス本体11を保持する保持部22と、を有している。
【0023】
車体パネルPの組付面Paからは、固定用のボルトPbが延出している。ボルトPbは、円柱の外周面にねじ山を有してなる。ボルトPbは、例えば、組付面Paに対して略垂直をなしている。
【0024】
固定部材本体15の保持部22は、例えば、ワイヤハーネス本体11の外周を包囲する筒状をなす。また、例えば、保持部22は、本体側部位23と、カバー部24と、を有している。本体側部位23は、固定部21に一体成形されている。本体側部位23は、例えば、組付面Paに向かって開口する凹部25を有している。カバー部24は、凹部25の組付面Pa側の開口を塞ぐように、本体側部位23に組み付けられている。保持部22は、本体側部位23とカバー部24とによって筒状に構成され、保持部22の筒状の内側にワイヤハーネス本体11が通されている。
【0025】
固定部材本体15の固定部21は、保持部22の本体側部位23から延出された部位である。固定部21はボルトPbに固定される。固定部21は、例えば、板状をなしている。固定部21において、組付面Paへの組付状態で該組付面Paに対向する面を表面21aとし、その反対側の面を裏面21bとする。
【0026】
なお、本明細書における「対向」とは、面同士または部材同士が互いに正面の位置にあることを指し、互いが完全に正面の位置にある場合だけでなく、互いが部分的に正面の位置にある場合を含む。また、本明細書における「対向」とは、2つの部分の間に、2つの部分とは別の部材が介在している場合と、2つの部分の間に何も介在していない場合の両方を含む。また、本明細書における「対向」とは、対向する2つの部分が接している場合と、間隔が空いている場合の両方を含む。本実施形態では、例えば、組付面Paと固定部21の表面21aは互いに接している。
【0027】
図3に示すように、固定部21は、固定部21の表面21aから裏面21bまで貫通する貫通孔26を有している。貫通孔26は、例えば、固定部21の厚さ方向に沿って貫通している。貫通孔26の内部には、筒状のカラー16が設けられている。カラー16は、カラー16の軸方向が固定部21の厚さ方向に沿うように、貫通孔26内に配置されている。カラー16にはボルトPbが挿通される。
【0028】
カラー16は、固定部材本体15よりも剛性の高い例えば金属材料にて構成されている。カラー16は、カラー本体部31と、フランジ部32とを有している。カラー本体部31は、例えば、円筒状をなしている。カラー本体部31の内周面は、軸方向から見て円形をなしている。また、カラー本体部31の内径及び外径は、軸方向に亘って一様をなしている。フランジ部32は、カラー本体部31の軸方向の一端部から径方向外側に延出している。軸方向から見たフランジ部32の外形は、例えば、円形をなしている。
【0029】
貫通孔26の内周面は、カラー16が配置されるカラー配置部41と、カラー配置部41と前記表面21aとの間に位置する傾斜部42と、を有している。また、カラー配置部41と傾斜部42とは、貫通孔26の軸方向、すなわち、固定部材12の厚さ方向に並設されている。なお、貫通孔26の軸方向は、貫通孔26の貫通方向である。以下では、貫通孔26の軸方向を単に「軸方向」と言う場合がある。
【0030】
傾斜部42は、カラー配置部41及びカラー16の表面21a側に設けられている。傾斜部42は、カラー配置部41側に向かって貫通孔26の中心軸線L側に傾斜している。
例えば、傾斜部42は、貫通孔26の軸方向から見て、貫通孔26の中心軸を中心とする円形をなしている。すなわち、傾斜部42は、貫通孔26の表面21a側の端部の周方向全体に設けられている。また、例えば、傾斜部42は、カラー配置部41側に向かって縮径するテーパ状をなしている。
【0031】
傾斜部42のカラー16側の端部42a、すなわち、傾斜部42の縮径側の端部42aは、カラー配置部41に連なっている。傾斜部42の端部42aの径は、例えば、カラー16のフランジ部32の外径と同等に設定されている。また、傾斜部42の端部42aに対して軸方向の反対側の端部、すなわち、傾斜部42の拡径側の端部42bは、固定部21の表面21aに連なっている。つまり、傾斜部42は、貫通孔26の軸方向において、カラー配置部41の傾斜部42側の端部から固定部21の表面21aまでの範囲に形成されている。
【0032】
本実施形態のカラー配置部41は、カラー16のフランジ部32に倣った形状をなす段部43を有している。段部43は、フランジ部32を支持している。段部43は、フランジ部32の軸方向一側面、及びフランジ部32の外周面に接している。カラー16の軸方向において、段部43がフランジ部32に当接することで、カラー16が貫通孔26から抜け出ることを抑制している。
【0033】
本実施形態の固定部材12では、固定部材本体15を成形した後、カラー16を貫通孔26のカラー配置部41に配置する。そして、カラー16を、固定部材本体15に対して、例えば、かしめ固定する。かしめ固定では、例えば、カラー本体部31のフランジ部32とは反対側の端部31aにおいて、周方向の1箇所または複数箇所を径方向外側に塑性変形させることで、当該端部31aにおける塑性変形した部位が、貫通孔26の内周面に食い込む。これにより、カラー16が、貫通孔26に対して周方向及び軸方向に固定される。
【0034】
次に、本実施形態のワイヤハーネス10の車体パネルPの組付面Paに対する組付態様をその作用とともに説明する。
まず、ワイヤハーネス本体11に固定部材12を組み付ける。このとき、ワイヤハーネス本体11を保持部22の凹部25に嵌合し、その状態で凹部25の開口をカバー部24で塞ぐ。これにより、ワイヤハーネス本体11が保持部22に保持される。
【0035】
その後、ワイヤハーネス本体11が固定部材12以外の固定点にて、車体パネルPに固定される。これにより、固定部材12が車体パネルPに固定されていないものの、ワイヤハーネス本体11が車体パネルPに接近した状態となる。
【0036】
次に、ワイヤハーネス本体11が車体パネルPに接近した状態で、固定部材12を車体パネルPに固定する。
図4に示すように、まず、ワイヤハーネス本体11を軸として固定部材12を回動させることにより、固定部材12のカラー16に車体パネルP側のボルトPbを挿入させる。このとき、ボルトPbの先端が貫通孔26の傾斜部42に当たると、ボルトPbの先端が傾斜部42の傾斜によってカラー16へと案内される。これにより、ボルトPbをカラー16に挿入しやすくなっている。
【0037】
また、貫通孔26の表面21a側の端部に傾斜部42が設けられることによって、貫通孔26においてボルトPbを挿入する際の入口側の端部が拡径した形状となる。このため、ボルトPbの先端を貫通孔26に挿入しやすくなっている。また、傾斜部42は、貫通孔26の表面21a側の端部の周方向全体に設けられているため、傾斜部42は、ワイヤハーネス本体11の長さ方向における固定部材12の位置ずれ、及び、固定部材12と保持部22の並設方向における固定部材12の位置ずれに対応する。
【0038】
カラー16にボルトPbを挿入した後、
図1に示すように、ボルトPbにおいてカラー16から突出した部分にナットPcを螺着することで、カラー16及び固定部21を車体パネルPに対して締結固定する。
【0039】
本実施形態の効果について説明する。
(1)固定部材本体15の貫通孔26の内周面は、カラー16が配置されるカラー配置部41と、カラー配置部41と表面21aとの間に位置する傾斜部42とを有する。そして、傾斜部42は、表面21aからカラー配置部41側に向かって貫通孔26の中心軸線L側に傾斜している。この構成によれば、固定部材本体15の貫通孔26内に配置されたカラー16に車体側のボルトPbを挿入する際、貫通孔26の傾斜部42の傾斜によってボルトPbの先端をカラー16に向けて案内することが可能となる。これにより、車体側のボルトPbに対する固定部材12の組付方向に制約が生じる場合でも、ボルトPbをカラー16に容易に挿入することが可能となる。従って、固定部材12の車体パネルPへの組付性を向上させることが可能となる。
【0040】
(2)カラー16は、軸方向において内径が一様である。この構成によれば、形状な単純なカラー16を採用しつつも、固定部材本体15の貫通孔26の形状変更、すなわち傾斜部42の追加によって、固定部材12の車体パネルPへの組付性を向上させることが可能となる。
【0041】
(3)カラー16は、カラー16の軸方向の一端部から径方向外側に延びるフランジ部32を有している。そして、貫通孔26は、カラー配置部41における傾斜部42側の端部において、フランジ部32に対してカラー16の軸方向に当接する段部43を有している。この構成によれば、貫通孔26に傾斜部42を設けた構成において、フランジ部32を段部43によってカラー16の軸方向に支持することができる。
【0042】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態における貫通孔26は、カラー配置部41における傾斜部42側の端部において、フランジ部32に対してカラー16の軸方向に当接する段部43を有している。すなわち、上記実施形態では、カラー16において表面21a側の端部にフランジ部32が設けられているが、これに特に限定されるものではない。
【0043】
例えば、
図5に示すように、上記実施形態のフランジ部32及び段部43を省略し、カラー16において裏面21b側の端部にフランジ部51を設けてもよい。フランジ部51は、カラー16の裏面21b側の端部から径方向外側に延びている。この構成によれば、ボルトPbに螺着されるナットPcがカラー16のフランジ部51に当接するように構成できる。従って、カラー16におけるナットPcとの接触面積を増やすことが可能となり、その結果、ボルトPbとナットPcによって、固定部材12を車体パネルPに対して好適に締結固定することが可能となる。なお、
図5に示す例では、カラー16は、例えば、カラー16の表面21a側の端部でかしめ固定される。
【0044】
・また、例えば、
図6に示すように、上記実施形態のカラー16からフランジ部32を省略し、カラー16の外径を軸方向において一様にしてもよい、この構成によれば、カラー16の形状がより単純なものとなる。
【0045】
また、
図6に示す例では、カラー16の軸方向から見て、傾斜部42におけるカラー配置部41側の端部42aの径方向位置と、カラー16の内周面16aの位置とが一致している。すなわち、傾斜部42の縮径側の端部42aが、カラー16の内周面16aに直接的に連なっている。この構成によれば、固定部材本体15の貫通孔26内に配置されたカラー16に車体側のボルトPbを挿入する際、貫通孔26の傾斜部42の傾斜によってボルトPbの先端をカラー16の内周面16aまで案内することが可能となる。これにより、カラー16にボルトPbをより一層容易に挿入することが可能となる。
【0046】
なお、
図6に示す例では、貫通孔26は、カラー16の表面21a側の端部に軸方向に当接する当接部61を有している。また、例えば、カラー16は、カラー16の裏面21b側の端部でかしめ固定される。
【0047】
・上記実施形態の傾斜部42は、貫通孔26の周方向全体に設けられたが、これに限らず、傾斜部42を貫通孔26の周方向の一部に設けてもよい。
・カラー16の横断面形状は円形に限らず、例えば、楕円形や多角形状などとしてもよい。なお、カラー16の横断面形状を楕円形など、カラー16の軸方向から見て長手方向を有する形状とする場合、当該長手方向を、ワイヤハーネス本体11の長さ方向に沿った方向、もしくは、固定部21と保持部22の並設方向に沿った方向にすることが好ましい。
【0048】
・カラー16をインサート品とした固定部材本体15のインサート成形によって、固定部材12を形成してもよい。
・外装部材14の横断面形状は円形に限らず、例えば楕円形や多角形など、任意の形状にすることができる。
【0049】
・外装部材14は、合成樹脂などからなり可撓性を有するコルゲートチューブであってもよい。
・上記実施形態では、ワイヤハーネス本体11を車体パネルPに固定するための固定部材12に適用したが、これに特に限定されるものではなく、ワイヤハーネス本体11を車体パネルP以外の取付対象に固定するための固定部材にも適用可能である。