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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-180718(P2021-180718A)
(43)【公開日】2021年11月25日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/535 20060101AFI20211029BHJP
   A61F 13/536 20060101ALI20211029BHJP
   A61F 13/534 20060101ALI20211029BHJP
【FI】
   A61F13/535 200
   A61F13/536 100
   A61F13/534 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2020-86951(P2020-86951)
(22)【出願日】2020年5月18日
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】特許業務法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】蓑田 哲宏
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BA04
3B200BB01
3B200DA14
3B200DB01
3B200DB02
3B200DB05
3B200DB06
3B200DB12
3B200DB23
(57)【要約】
【課題】大量の体液を素早く吸収し、体液の前後左右への拡散性に優れ、横漏れが防止され、かつフィット性も両立し得る吸収性物品の提供。
【解決手段】液透過性のトップシート10と吸収体12との間にセカンドシート13を備え、セカンドシート13は、幅方向中央を長さ方向に延びる中央嵩高域20と、幅方向両側を長さ方向に延びる一端嵩低域21及び他端嵩低域22とを含み、比容積は、中央嵩高域20と一端嵩低域21及び他端嵩低域22とで異なり、一端嵩低域21及び他端嵩低域22が10cm/g以上50cm/g以下、中央嵩高域20が40cm/g以上120cm/g以下、中央嵩高域20と一端嵩低域21又は他端嵩低域22との比容積比が1.7以上5.2以下、幅寸法比(%)が一端嵩低域21:中央嵩高域20:他端嵩低域22が17:66:17以上26:48:26以下、中央嵩高域20の長さ寸法は吸収性物品1の長さ寸法の70%以上93%以下である吸収性物品1。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に配置された吸収体と、前記吸収体と前記トップシートとの間に配置されたセカンドシートと、を備える吸収性物品であって、
前記セカンドシートは、
幅方向中央部において長さ方向に延び、表面の繊維が毛羽立った嵩高な起毛部として構成される中央嵩高域と、幅方向一端部及び他端部においてそれぞれ長さ方向に延び、未起毛部として構成される一端嵩低域及び他端嵩低域と、を含む不織布であり、
前記中央嵩高域と、前記一端嵩低域及び前記他端嵩低域とは、無荷重状態の見かけの比容積が異なり、前記比容積は、前記一端嵩低域が10cm/g以上50cm/g以下、前記中央嵩高域が40cm/g以上120cm/g以下、及び前記他端嵩低域が10cm/g以上50cm/g以下であり、
前記中央嵩高域の前記比容積/前記一端嵩低域又は前記他端嵩低域の前記比容積が1.7以上5.2以下であり、
幅方向長さの比(%)が、前記一端嵩低域:前記中央嵩高域:前記他端嵩低域として、17:66:17以上26:48:26以下であり、
前記中央嵩高域の長さ方向長さは、前記吸収性物品の長さ方向長さに対し70%以上93%以下である、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記セカンドシートは、坪量35g/m以上125g/m以下のエアスルー不織布で構成される、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記セカンドシートの前記中央嵩高域と厚み方向に重なるように、複数層の前記吸収体が配置されている、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
少なくとも最も肌側に位置する前記吸収体の肌側表面の、前記中央部嵩高域と厚み方向に重なる領域内に設けられ、前記吸収体の長さ方向に延伸する凹溝をさらに備える、請求項3に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記凹溝の長さ方向長さが、前記中央嵩高域の長さ方向長さの25%以上75%以下である、請求項4に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記凹溝は、複数の前記吸収体を厚み方向に貫通しないエンボス溝又は複数の前記吸収体を厚み方向に貫通するスリットである請求項4又は5に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の介護現場の人手不足から、特に夜間においてオムツ交換の間隔が長くなってきており、長時間着用できる紙おむつのニーズが高まっている。このような現状に鑑み、尿等の体液を吸収する高吸収性ポリマーを比較的大量に含有する、長時間着用に耐える紙おむつ製品が上市されている。しかしながら、高吸収性ポリマーの特性上、複数回の排尿を吸収すると膨潤してそれ以後の紙おむつ内での尿の拡散が阻害され、吸収性が低下することは避けがたい。それに加え、夜間就寝時の体勢が横向き寝であるときは、尿等の体液が紙おむつの長さ方向へ拡散するより先に脚に伝って横漏れを生じることから、短時間で交換せざるを得なくなる。このように、紙おむつに高い吸収量を持たせても実際には吸収量に余力を残したまま交換されるケースが後を絶たない。従って、実使用下で高い吸収性をより長時間発揮できる紙おむつが求められている。
【0003】
特許文献1には、一旦吸収した体液を吸収体内部に素早く移行させ、体液の逆戻りや漏れを防止することを目的として、トップシートと、バックシートと、その間に配置された吸収体と、を有し、該吸収体は上層吸収体と下層吸収体との積層体として構成され、該吸収体(又は上層吸収体)のトップシート側表面にてトップシート側に突出する領域として設けられた中高部と、中高部にて長さ方向に伸びるように設けられた凹部(くぼみ)とを備える、吸収性物品が開示されている。
【0004】
特許文献2には、体液の吸収速度に優れた吸収性物品の提供を目的として、トップシートと、トップシートの非肌面側に配置されたセカンドシートと、セカンドシートの非肌面側に配置された吸収体と、吸収体の非肌面側に配置された不透液性のバックシートと、を有し、セカンドシートが、所定のポリウレタン連続多孔質体からなる、吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−112590号公報
【特許文献2】特開2017−164356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の吸収性物品は、大量の尿を凹部に保持しつつ吸収することを想定した発明ではなく、大量の尿を素早く吸収することができたとしても、尿の横漏れを防止するには構成上不十分である。その上、特許文献1の吸収性物品は着用感が比較的良好とされる大型のものであるが、着用者へのフィット性を向上させるための構成を備えていないので、着用者の身体へのフィット性に問題がある。
【0007】
また、特許文献2に記載の吸収性物品は、吸収速度に優れるものの、横漏れ、前後左右への拡散性、ウエットバックに対して、効果は十分でない。
【0008】
本発明は、尿等の体液が大量であっても素早く吸収し、体液の前後左右への拡散性に優れ、横漏れが防止され、かつフィット性も両立することができる吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、トップシートと吸収体との間に、所定の構造及び特性を有するセカンドシートを配置することにより、目的に叶う吸収性物品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、下記の吸収性物品に係る。
【0010】
(1)液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に配置された吸収体と、前記吸収体と前記トップシートとの間に配置されたセカンドシートと、を備える吸収性物品であって、
前記セカンドシートは、
幅方向中央部において長さ方向に延び、表面の繊維が毛羽立った嵩高な起毛部として構成される中央嵩高域と、幅方向一端部及び他端部においてそれぞれ長さ方向に延び、未起毛部として構成される一端嵩低域及び他端嵩低域と、を含む不織布であり、
前記中央嵩高域と、前記一端嵩低域及び前記他端嵩低域とは、無荷重状態の見かけの比容積が異なり、前記比容積は、前記一端嵩低域が10cm/g以上50cm/g以下、前記中央嵩高域が40cm/g以上120cm/g以下、及び前記他端嵩低域が10cm/g以上50cm/g以下であり、
前記中央嵩高域の前記比容積/前記一端嵩低域又は前記他端嵩低域の前記比容積が1.7以上5.2以下であり、
幅方向長さの比(%)が、前記一端嵩低域:前記中央嵩高域:前記他端嵩低域として、17:66:17以上26:48:26以下であり、
前記中央嵩高域の長さ方向長さは、前記吸収性物品の長さ方向長さに対し70%以上93%以下である、ことを特徴とする吸収性物品。
(2)前記セカンドシートは、坪量35g/m以上125g/m以下のエアスルー不織布で構成される、上記(1)の吸収性物品。
(3)前記セカンドシートの前記中央嵩高域と厚み方向に重なるように、複数層の前記吸収体が配置されている、上記(1)又は(2)の吸収性物品。
(4)少なくとも最も肌側に位置する前記吸収体の肌側表面の、前記中央域嵩高部と厚み方向に重なる領域内に設けられ、前記吸収体の長さ方向に延伸する凹溝をさらに備える、上記(3)の吸収性物品。
(5)前記凹溝の長さ方向長さが、前記中央嵩高域の長さ方向長さの25%以上75%以下である、上記(4)の吸収性物品。
(6)前記凹溝は、複数の前記吸収体を厚み方向に貫通しないエンボス溝又は複数の前記吸収体を厚み方向に貫通するスリットである、上記(4)又は(5)の吸収性物品。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、尿等の体液が大量であっても素早く吸収し、体液の前後左右への拡散性に優れ、横漏れが防止され、かつフィット性も両立し得る吸収性物品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態に係る吸収性物品の構成を示す模式図である。(a)は平面図、(b)は(a)に示すX−X切断線での幅方向断面図である。
図2】本発明の第2実施形態に係る吸収性物品の構成を示す模式図である。(a)は平面図、(b)は(a)に示すX−X切断線での幅方向断面図である。
図3】本発明の第3実施形態に係る吸収性物品の構成を示す模式図である。(a)は平面図、(b)は(a)に示すX−X切断線での幅方向断面図である。
図4】セカンドシートの一実施形態の構成を示す模式斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において、吸収性物品の着用とは、体液の吸収前後を問わず、吸収性物品を身体に装着した状態をいう。吸収性物品において、長さ方向とは吸収性物品を身体に着用したときに着用者の股間部を介して身体の前後に亘る、図中Yで示す方向であり、幅方向とは長さ方向(又は長手方向)に対して直交する、図中Xで示す方向であり、厚み方向とは各構成部材を積層する、図中Zで示す方向である。肌側面とは、吸収性物品の着用時において、着用者の肌に当接する表面及び肌を臨む表面であり、非肌側面とは、着用者の衣服に接触する表面又は衣服を臨む表面である。体液とは、尿や血液、軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。
【0014】
<吸収性物品>
以下、図面を参照しつつ、本実施形態について説明する。図1図3は、それぞれ、第1〜第3実施形態に係る吸収性物品1、2、3(以下、これらを総称して「本実施形態の吸収性物品」ともいう。)を示す。図4は、セカンドシート13を示す。これらの図面は本実施形態の吸収性物品中の各構成部材の形状や寸法、大小関係等を規定するものではない。
【0015】
第1実施形態に係る吸収性物品1は、ベビー用又は成人用を問わず種々の吸収性物品として使用できるが、代表的には、軽失禁パッド、尿吸収パッド、パンツ型紙おむつ、テープ止め紙おむつ等が挙げられる。アウターとしての各種紙おむつと、インナーとしての吸収性物品1とを組み合わせてもよい。吸収性物品1の、長さ方向の寸法、及び幅方向の寸法はいずれも特に限定されないが、例えば、480mm以上850mm以下の範囲、及び200mm以上500mm以下の範囲である。吸収性物品1の寸法を前記の範囲に調整することで、種々の用途の吸収性物品が得られる。
【0016】
吸収体12やセカンドシート13の寸法範囲は後述しているが、それらの範囲の中で、例えば、吸収性物品1を製品幅28cm以上40cm以下、製品長58cm以上70cm以下の大型パッドとした場合、セカンドシート13を幅10cm以上30cm以下、長さ45cm以上65cmのサイズとし、吸収体12(上層吸収体25と下層吸収体26)の長さをセカンドシート13と同じ長さで設けることにより、体液の吸収時の拡散効率と製品製造時の吸収体12等の円滑な搬送性とを高水準で併せ持たせることができる。
【0017】
吸収性物品1は、図1に示すように、これを着用したときに相対的に肌側に位置する、液透過性のトップシート10と、トップシート10に対向して配置され、これを着用したときに相対的に非肌側に位置する液不透過性のバックシート11と、トップシート10とバックシート11との間に配置された吸収体12と、トップシート10と吸収体12との間に配置されたセカンドシート13と、トップシート10の肌側表面に設けられた一対の立体ギャザー14と、を備える。吸収体12はトップシート10とバックシート11との間に挟まれた構造となり、尿等の体液はトップシート10及びセカンドシート13を通して吸収体12に吸収及び保持される。吸収性物品1の用途やタイプに応じて、レッグギャザー、ウエストギャザー、サイドフラップ等を適宜設けることができる。
【0018】
本実施形態によれば、トップシート10と吸収体12との間に所定の構造を有するセカンドシート13を配置し、特に該セカンドシート13の肌側面に、幅方向中央部を長さ方向に延びる、見かけの比容積が高く体液を拡散しやすい起毛部としての中央嵩高域20と、中央嵩高域20の幅方向両側を長さ方向に延びる、見かけの比容積が低く体液を拡散しにくい非起毛部としての一端嵩低域21及び他端嵩低域22とを設けることにより、幅方向より長さ方向への体液の拡散が促され、横モレを抑えつつ、吸収体12の長さ方向末端付近の体液未吸収領域に体液を有効にかつ効率良く運搬できる。併せてセカンドシート13の幅方向中央部に設けられた中央嵩高域20がふっくらとして着用者の股間部への密着性を高め、様々な体勢による屈曲や圧力が吸収性物品1に生じても、効果的に体液を受け止めることができる。また、吸収体12の長さ方向末端領域でも効率の良い体液吸収が可能なので、吸収体12及び吸収性物品1を大型化することが可能になる。
【0019】
以下、各構成部材について、トップシート10、バックシート11、吸収体12、セカンドシート13及び立体ギャザー14の順でさらに詳しく説明する。なお、これらの構成部材は、シート状及び板状以外の立体構造を有していてもよい。
【0020】
(トップシート)
トップシート10は、吸収体12に向けて体液を速やかに通過させる液透過性のシート状部材であり、吸収体12を挟んで、バックシート30に対向して配置される。トップシート10は、着用者の肌に当接する場合があることから、柔らかな感触で、肌に刺激を与えないような性質を有する基材が好ましい。該基材としては、例えば、親水性不織布、同種又は異種の親水性不織布の積合体である複合不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム等が挙げられる。親水性不織布は、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン等の合成樹脂からなる合成繊維、レーヨン等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いて、エアスルー法、サーマルボンド法、スパンレース法、スパンボンド法等の公知の方法で加工することにより得られる。
【0021】
また、トップシート10には、液透過性を向上させる観点から、表面にエンボス加工や穿孔加工を施してもよい。これらのエンボス加工や穿孔加工は、公知の方法に従って実施することができる。肌への刺激を低減させる観点から、トップシート10には、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を含有させてもよい。強度、加工性及び液戻り量の観点から、トップシート10の坪量は、例えば15g/m以上40g/m以下の範囲である。トップシート10の形状は特に制限されず、漏れがないように体液を吸収体12に誘導する観点から、吸収体12を覆う形状であればよい。
【0022】
(バックシート)
バックシート11は、吸収性物品1の最も非肌側に配置され、例えば、吸収体12が保持する体液が衣類を濡らしたり、皮膚表面に付着したりしないような通気性又は非通気性の液不透過性基材からなる。バックシート用の液不透過性基材としては、例えば、樹脂フィルム、樹脂フィルムと不織布との積層体である複合シート等が挙げられる。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂からなるフィルム、ポリエチレンフィルムとポリプロピレンフィルムとの積層体である複合フィルム等が挙げられる。複合シートに用いられる不織布としては、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布とメルトブロー不織布との積層体である複合不織布、スパンボンド不織布とメルトブロー不織布とスパンボンド不織布との積層体である複合不織布等が挙げられる。
【0023】
強度及び加工性の観点から、バックシート11の坪量は特に限定されないが、例えば、15g/m以上40g/m以下の範囲である。着用時の蒸れを防止する観点から、バックシート11に通気性を付与することができる。バックシート11に通気性を付与する方法としては特に限定されず公知の方法を採用できるが、例えば、バックシート用基材である樹脂フィルムを多孔質化する方法、バックシート用基材にエンボス加工を施す方法等が挙げられる。樹脂フィルムを多孔質化する方法の一例としては、樹脂にフィラーを含有させてフィルム化し、得られたフィルムからフィラーを除去する方法等が挙げられる。フィラーとしては例えば炭酸カルシウム等の無機塩が挙げられる。
【0024】
(吸収体)
本実施形態の吸収体12は、図1(b)等に示すように、トップシート10(又はセカンドシート13)とバックシート11との間に配置され、トップシート10側(又は肌側)に位置する上層吸収体25と、バックシート11側(又は非肌側)に位置する下層吸収体26と、の積層体として構成されている。上層吸収体25及び下層吸収体26の長さ方向及び幅方向の各長さは、本実施形態では上層吸収体25が下層吸収体26よりも大きい形態であるが、これに限定されず、例えば、上層吸収体25と下層吸収体26とが略同寸法である形態、上層吸収体25よりも下層吸収体26が大きい形態等でもよい。また、本実施形態の吸収体12は、上層吸収体25及び下層吸収体26という2層の吸収体の積層体であるが、これに限定されず、3層以上の任意の数の吸収体の積層体でもよい。
【0025】
吸収体12は、例えば、吸収基材と、吸収基材に担持される吸収成分と、を含む。
吸収基材には、例えば、生理用ナプキン、おむつ、尿パッド等に含まれる吸収基材を使用でき、例えば、フラッフパルプ、親水性シート等がある。フラッフパルプには、例えば、木材パルプ、合成繊維や、合成樹脂繊維等の非木材パルプ等の綿状の解繊物等がある。親水性シートには、例えば、ティシュー、吸収紙、親水性不織布等がある。また、アセテートトウの開繊体を吸収基材として使用できる。
【0026】
吸収成分には、例えば、高吸収性ポリマー(Super Absorbent Polymer、以下「SAP」ともいう)等がある。本実施形態で使用する高吸収性ポリマーとしては、体液を吸収及び保持し、体液の逆流を防止できる各種ポリマーを特に限定なく使用でき、例えば、ポリアクリル酸塩、ポリアスパラギン酸塩、(デンプン・アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸・ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン・無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等の、カルボキシル基含有モノマーを構成単位として含む重合体が挙げられる。高吸収性ポリマーは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。これらの中でも、重量当たりの体液吸収量の観点から、ポリアクリル酸塩が好ましく、ポリアクリル酸ナトリウムがより好ましい。
【0027】
高吸収性ポリマーの形態は特に限定されないが、ゲルブロッキング等の発生を抑制する観点から、好ましくは粒子状であり、より好ましくは中位粒子径を有する粒子状である。高吸収性ポリマーの中位粒子径は、例えば、50μm以上600μm以下の範囲又は50μm以上550μm以下の範囲である。また、高吸収性ポリマーの坪量は、吸収体12の体液吸収能力(体液吸収量)と繰り返し体液を吸収した後の着用感とのバランス等の観点から、例えば90g/m以上240g/m以下の範囲である。吸収体12は、上記の吸収基材及び吸収成分を用いて、単層又は複層のシート状に構成される。これらの中でも、木材パルプからのフラッフパルプのウェブの親水性繊維マトリックスをSAP粒子と混合して形成したものが好ましい。なお、本実施形態の吸収体12は複数の層の積層体として構成されるが、層毎に吸収基材及び吸収成分の種類を変えてもよく、また、同じ種類の吸収基材及び吸収成分を用いてもよい。
【0028】
吸収体12の寸法は特に限定されないが、例えば、長さ方向の寸法は380mm以上750mm以下の範囲又は430mm以上680mm以下の範囲、幅方向の寸法は50mm以上480mm以下の範囲又は80mm以上450mm以下の範囲である。吸収体12の平面視形状は特に限定されないが、例えば、矩形状(長方形状)、砂時計状、I字状、長方形の4角が丸まった角丸四角形状、長円状、一方向に長い楕円形状等が挙げられる。なお、幅が150mm以上になる場合には、砂時計状のように股間の部分の幅を狭くすることで、着用者が足を動かしやすくすることがより望ましい。その場合、一番幅が狭い部分の寸法は例えば80mm以上120mm以下の範囲である。吸収体12の厚みは、吸収体12の形態や材質等に応じて適宜選択される。また、体液の吸収性、保持性や、吸収体12の形状保持性、SAPの脱落防止等の観点から、必要に応じて吸収体12全体をティシュー等の親水性シートで被覆してもよい。上層吸収体25及び下層吸収体26は、同じ吸収基材及び吸収成分を用いて構成してもよく、異なる吸収基材及び/又は異なる吸収成分を用いて構成してもよい。
【0029】
(セカンドシート)
セカンドシート13は、トップシート10と吸収体12との間に配置され、例えば、吸収性物品1内での体液拡散性を向上させ、体液の横モレを抑制しつつ、通常であれば体液の吸収には寄与し難い、吸収体12の長手方向末端領域にも体液を拡散させ、該領域が体液を吸収できるように機能する。本実施形態のセカンドシート13は、次の(a)〜(c)の条件を満たすものである。これらの条件を満たすことで、トップシート10を介してセカンドシート13に供給された体液が中央嵩高域20を通って長手方向に拡散するとともに、一端嵩低域21及び他端嵩低域22は中央嵩高域20より拡散性が劣ることから体液の広がりが抑制され、体液の横モレが防止される。
【0030】
(a)中央嵩高域及び端部嵩低域
セカンドシート13は不織布から構成され、図4に示すように、そのトップシート10側表面13aには、幅方向中央部において長さ方向に延び、表面の繊維が毛羽立った起毛繊維13xの集合体である、嵩高な起毛部として構成される中央嵩高域20と、幅方向一端部及び他端部においてそれぞれ長さ方向に延び、未起毛部として構成される一端嵩低域21及び他端嵩低域22と、を含む。すなわち、本実施形態のセカンドシート13は、トップシート10側表面(又は肌側面)に、一端嵩低域21、中央嵩高域20及び他端嵩低域22がそれぞれ長さ方向に帯状に延びる領域として幅方向一端部から他端部に向けて順番にかつ略平行に配列されている。中央嵩高域20は、例えば、不織布の片側表面の所定領域を毛羽立たせることにより形成することができる。毛羽立たせる方法としては、例えば、回転ノコ刃により毛羽立たせる方法、ニードルパンチにより毛羽立たせる方法等が挙げられ、インラインでの生産性やコストの観点から回転ノコ刃により毛羽立たせる方法が好ましい。起毛部としての中央嵩高域20と、未加工の非起毛部としての一端嵩低域21、及び他端嵩低域22と、を設けることにより、後述する見かけの比容積の差を得ることができる。
【0031】
本実施形態における起毛の状態は特に限定されず、目視で起毛状態が確認できればそれでよいが、より具体的には、中央嵩高域20の起毛率は例えば5%以上90%以下の範囲又は8%以上80%以下の範囲から選択され、一端嵩低域21、及び他端嵩低域22との見かけの比容積の差、及び比率が後述する所定の範囲になるように適宜調整すればよい。起毛率とは、起毛加工による中央嵩高域20の厚さの増加率を意味する。例えば、起毛前の不織布の無荷重下での厚みをT1、起毛後の中央嵩高域20の無荷重下での厚みをT2としたとき、起毛率(%)は、[(T2―T1)/T1]×100で表すことができる。上記厚さは、ハイトゲージ((株)ミツトヨ製)を用いて無荷重下の厚さを測定することで求められる。
【0032】
好ましい本実施形態では、起毛後の中央嵩高域20の無荷重下の厚さは例えば1.5mm以上6.0mm以下の範囲である。後述の比容積の差、及び比率を所定の範囲とした上で、中央嵩高域20の無荷重下の厚さを前述の範囲とすることで、横漏れ防止と着用感とを非常に高い水準で両立できる。
【0033】
(b)見かけの比容積
中央嵩高域20と、一端嵩低域21及び他端嵩低域22とは、無荷重状態の見かけの比容積が異なる。一端嵩低域21及び他端嵩低域22の比容積は、10cm/g以上50cm/g以下の範囲であり、中央嵩高域20の比容積は、40cm/g以上120cm/g以下の範囲である。これらの比容積の各範囲から、中央嵩高域20の比容積と、一端嵩低域21及び他端嵩低域22の比容積と、が異なるように設定される。また、中央嵩高域20の比容積と、一端嵩低域21又は他端嵩低域22の比容積と、の比(中央嵩高域20の比容積/一端嵩低域21又は他端嵩低域22の比容積)は、1.7以上5.2である。なお、一端嵩低域21及び他端嵩低域22の各比容積は、同じでも異なっていてもよい。見かけの比容積(SV)は、セカンドシート13の1枚当たりの厚さを坪量で除し、単位グラムあたりの容積cmとして求められる数値である。比容積は、JIS−P8111に規定する温湿度条件下(23±1℃、50±2%RH)で平衡状態に保持後に測定される。
【0034】
(c)幅方向長さ及び長さ方向長さ
図4に示すように、中央嵩高域20の幅方向長さL、一端嵩低域21の幅方向長さM及び他端嵩低域22の幅方向長さNは、幅方向長さの比(%)として、(M:L:N)が17:66:17(%)以上26:48:26(%)以下の範囲である。また、中央嵩高域20の長さ方向長さは、吸収性物品1の長さ方向長さに対し70%以上93%以下である。70%未満では、中央嵩高域20の効果(体液を長さ方向末端まで拡散させる効果)が不十分になる傾向がある。93%を超えると、吸収性物品1の長さ方向末端から体液が漏出する傾向がある。
【0035】
以上の各条件を満たすことにより、所望の機能を有する本実施形態のセカンドシート13が得られる。以上の各条件を1つでも満たさない場合は、トップシート10を透過してきた体液が、選択的に中央嵩高域20に拡散せず、その一部が一端嵩低域21及び他端嵩低域22にも拡散し、横漏れの原因になる傾向がある。
【0036】
セカンドシート13を得るための不織布としては、体液透過性を有する親水性不織布であれば特に制限されず、例えば、エアスルー不織布、サーマルボンド不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布等が挙げられる。これらの不織布の中でも、体液の中央嵩高域20への選択的な拡散の傾向が強いこと等から、エアスルー不織布が好ましい。セカンドシート13の坪量は、好ましくはトップシート10よりも大きく、より好ましくは坪量が35g/m以上125g/m以下の範囲であり、さらに好ましくは坪量が35g/m以上125g/m以下の範囲であるエアスルー不織布である。また、セカンドシート13の寸法は特に限定されず、少なくとも中央嵩高域20が吸収体12(又は上層吸収体25)の肌側面に安定的に接触し得る寸法とすればよいが、例えば、幅寸法が10cm以上40cm以下、長さ寸法が26cm以上78cm以下の範囲である。
【0037】
(立体ギャザー)
吸収性物品1は、図1に示すように、例えば、着用者の排泄した体液の横漏れを防止するため、必要に応じて、トップシート10の肌側面の幅方向両側端部に、一対の立体ギャザー14を備えていてもよい。立体ギャザー14は、ギャザーシート14aと、弾性伸縮部材14bと、を備え、ギャザーシート14aの幅方向一端は、トップシート10の肌側面において、セカンドシート13の幅方向の両縁辺の上方付近に該両縁辺に沿って長さ方向に延びるように固定されている。ギャザーシート14aの幅方向他端は、トップシート10に対して自由端になる。該自由端に沿って弾性伸縮部材14bを配設することで、該自由端に起立性を付与し、着用者の体型に合わせて変形可能になる。ギャザーシート14aの幅方向一端は、例えば、バックシート11の非肌側面の幅方向両端、トップシート10とバックシート11とを部分的又は全体的に接合した袋体の幅方向両端等が挙げられる。なお、本実施形態の吸収性物品は、立体ギャザーを含まない実施形態をも包含する。
【0038】
ギャザーシート14aには、疎水性繊維にて形成された撥水性又は液不透過性の不織布、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布の積層体である複合不織布等を使用でき、弾性伸縮部材14bには、例えば、ポリウレタン糸、帯状のポリウレタンフィルム、糸状又は帯状の天然ゴム等を使用できる。
【0039】
<吸収性物品の製造方法>
吸収性物品1は、公知の製造方法により製造できるが、例えば、吸収体12をトップシート10とバックシート11との間に配置する工程と、トップシート10の縁辺とバックシート11の縁辺とを一部又は全周に亘ってホットメルト接着剤やヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等を用いて固定する工程と、バックシート11及び/又はトップシート10の所定位置に立体ギャザー14を設置する工程と、を含む製造方法が挙げられる。そして、吸収性物品1が尿取りパッドや軽失禁パッドである場合は、これを包装体に個別包装した後、長手方向に3つ折りにして折りたためばよい。また、レッグギャザー、ウエストギャザー、サイドフラップ等を必要に応じて設けることができる。
【0040】
<第2実施形態>
図2は、第2実施形態に係る吸収性物品2を示す。(a)は平面図、(b)は幅方向断面図である。吸収性物品2は、吸収体12に代えて吸収体12Bを有する以外は、吸収性物品1と同じ構成であり、かつ吸収性物品1と同じ変形例を有している。以下、吸収性物品1と同じ構成及び機能を有する各構成部材については同じ参照符号を付して説明を省略する。
【0041】
(第2実施形態の吸収体)
吸収体12Bは、吸収体12の変形例であり、トップシート10側に配置される上層吸収体25Bと、バックシート11側に配置される下層吸収体26Bと、の積層体として構成される。吸収体12Bは、セカンドシート13の中央嵩高域20と厚み方向(Z方向)に重なる領域(吸収体12Bの幅方向略中央部)にスリット27を有する以外は吸収体12と同じ構成である。スリット27は、吸収体12Bの長さ方向(Y方向)一端部周辺から他端部周辺に向けて延び、上層吸収体25B及び下層吸収体26Bを厚み方向(Z方向)に貫通し、その平面視形状が長円状である。本実施形態の吸収性物品2は、吸収体12Bと、スリット27と、吸収体12Bの非肌側に積層されたバックシート11とで構成された、バックシート11の肌側面を底面とする凹溝を有する。
【0042】
スリット27の寸法(長さ方向長さ、幅方向長さ)は特に限定されないが、それぞれ、セカンドシート13の中央嵩高域20の長さ方向長さ及び幅方向長さよりも小さいことが好ましく、例えば、スリット27の長さ方向長さは中央嵩高域20の長さ方向長さの25%以上75%以下の範囲である。スリット27の長さ方向長さを所定の範囲とすることにより、吸収体12Bの耐久性や機械強度等を損なうことなく、吸収体12Bの長さ方向末端領域での吸収成分の利用率を高め、複数回の体液を円滑に吸収し得る吸収体12Bとすることができる。25%未満では、スリット27を設ける効果が不十分になる傾向がある。75%を超えると、長さ方向の末端から体液が漏出したり、上層吸収体25Bと下層吸収体26Bとの面方向へのズレが発生したり、吸収体12B全体としての機械強度が低下したりして、吸収可能な体液量が減少し、さらに漏れが発生する傾向がある。また、スリット27の幅方向長さc(図2(b))は例えば中央嵩高域20の幅方向長さの4%以上20%以下の範囲である。
【0043】
本実施形態では、上層吸収体25B及び下層吸収体26Bに形成された各スリットは、平面視形状及び寸法(長さ方向長さ、幅方向長さ)は同じであるが、これに限定されず、平面視形状及び寸法の少なくとも1つが異なるものでもよい。スリット27の平面視形状としては、本実施形態の長円状以外にも、長方形、長方形の4角が丸まった角丸長方形、楕円形、Iの字状等が挙げられる。また、スリット27と同構成のスリットを上層吸収体25B及び下層吸収体26Bのいずれか一方に設けてもよい。
上述の構成を有する吸収体12Bを有する吸収性物品2は、吸収性物品1と同様の効果を有するとともに、体液の繰り返し吸収の際の吸収速度、吸収量等の点では一層向上する場合が多くなる傾向にある。
【0044】
<第3実施形態>
図3は、第3実施形態に係る吸収性物品3を示す。(a)は平面図、(b)は幅方向断面図である。吸収性物品3は、トップシート10に代えてトップシート15を有し、かつ吸収体12に代えて吸収体12Cを有する以外は、吸収性物品1と同じ構成であり、かつ吸収性物品1と同じ変形例を有している。以下、吸収性物品1と同じ構成及び機能を有する各構成部材については同じ参照符号を付して説明を省略する。
【0045】
(第3実施形態のトップシート)
トップシート15は、トップシート10の変形例であり、その肌側表面の、セカンドシート13の中央嵩高域20と厚み方向に重なる領域に設けられた、バックシート11側に凹む3本の溝28を有している。3本の溝28は、トップシート15の長さ方向の一端部周辺から他端部周辺にかけて、略平行に長さ方向に略直線状に延びるように設けられ、例えば、体液がトップシート15を透過するときに、長さ方向に向かう体液の流れを発生させる。溝28に前述の機能を発揮させる観点から、その深さ寸法(溝28の最深点から溝28の開口面に降ろした垂線の長さ)は例えば1.5mm以上7.0mm以下の範囲である。
【0046】
溝28は本実施形態の3本に限定されず、中央嵩高域20の幅方向寸法に応じて、1本でも、2本でも、4本以上の任意の数でもよい。溝28の断面視形状は本実施形態の逆三角形状に限定されず、例えば、四角形状、半円状、U字状等でもよい。溝28は、例えば、エンボス加工等により形成できる。トップシート15を構成する液透過性基材はトップシート10と同様でよい。また、溝28の一部を、中央嵩高域20と厚み方向に重ならない領域に設けてもよい。
【0047】
(第3実施形態の吸収体)
吸収体12Cは、吸収体12の変形例であり、トップシート10側に配置される上層吸収体25Cと、バックシート11側に配置される下層吸収体26Cと、の積層体として構成される。吸収体12Cは、上層吸収体25Cの肌側面の、セカンドシート13の中央嵩高域20と厚み方向(Z方向)に重なる領域(上層吸収体25Cの幅方向略中央部)に3本の凹溝29a、29b、29c(以下これらを総称して「凹溝29」ともいう)を有する以外は、吸収体12と同じ構成である。本実施形態のバックシート11側に凹む凹溝29は、エンボス加工により形成されたものであり、エンボス溝ともいえる。本実施形態では、エンボス加工以外の方法で凹溝を形成してもよい。
【0048】
3本の凹溝29は、上層吸収体25Cの長さ方向(Y方向)一端部周辺から他端部周辺に向けて部分的に略平行に延び、その断面視形状が略逆三角形状(又はV字状)の溝である。凹溝29のうち、幅方向中央の凹溝29bは、上層吸収体25Cの肌側面を長さ方向一端部周辺から他端部周辺まで略一直線状に延びるように設けられている。幅方向一端部側の凹溝29a及び他端部側の凹溝29cは、それぞれ、上層吸収体25Cの肌側面の長さ方向一端部周辺では凹溝29bに連続的に近接して延び、該肌側面の長さ方向中央部周辺では凹溝29bに略平行に延び、かつ該肌側面の長さ方向他端部周辺では凹溝29bに連続的に離反して延びるように設けられている。凹溝29a及び凹溝29cは、凹溝29bを対称軸にして、左右対称である。このように3本の凹溝29を配置することにより、セカンドシート13による体液の拡散作用と協働して、体液が拡散しにくい長手方向末端領域の吸収体12にも体液を効率よく拡散させることができる。
【0049】
本実施形態の3本の凹溝29は、上層吸収体25Cの肌側面の長手方向中央部周辺にてトップシート10の肌側面に設けられた3本の凹溝28と厚み方向に重なる位置に配置されているが、凹溝29の一部又は全部が凹溝28とは厚み方向に重ならなくてもよい。また、凹溝29の数は本実施形態の3本に限定されず、1本でも、2本でも、4本以上の任意の数でもよい。また、凹溝29が複数本である場合、全ての凹溝29が延びる方向は特に限定されず、全ての凹溝29が長さ方向に略直線状でもよく、少なくとも1本の一部が幅方向外側に延びる線状でもよい。凹溝29の断面視形状は本実施形態の逆三角形状に限定されず、例えば、四角形状、半円状、U字状等でもよい。
【0050】
凹溝29の長さ方向長さ及び幅方向長さは特に限定されないが、セカンドシート13に設けられた中央嵩高域20の長さ方向長さ及び幅方向長さよりも小さいことが好ましく、例えば長さ方向長さは中央嵩高域20の長さ方向長さの25%以上75%以下の範囲である。また、幅方向長さは例えば中央嵩高域20の幅方向長さの13%以上85%以下の範囲である。ここで、凹溝29の長さ方向長さ及び幅方向長さは、3本の凹溝29を含む最小面積の領域の長さ方向最大長さ及び幅方向最大長さである。本実施形態では、長さ方向最大長さとは凹溝29bの長さであり、幅方向最大長さとは凹溝29a、29cの長さ方向一端同士又は他端同士を結んだ直線の長さである。長さ方向長さ及び幅方向長さを前述の範囲から選択することにより、前述の第2実施形態のスリット27と同様の効果を得ることができる。
【0051】
上述の構成を有するトップシート15及び吸収体12Cを有する吸収性物品3は、吸収性物品1と同様の効果を有するとともに、体液の繰り返し吸収の際の吸収速度、吸収量等の点では一層向上する場合が多くなる傾向にある。
【0052】
以上、本発明を、実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態の範囲には限定されないことは言うまでもなく、上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【実施例】
【0053】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本実施形態を更に詳細に説明する。
【0054】
(実施例1)
坪量60g/mのエアスルー不織布を用い、肌側面の幅方向中央部を回転ノコ刃で切削加工し、毛羽立たせることで、見かけの比容積70cm/gの中央嵩高域を設けた。また、中央嵩高域の幅方向両側の一端嵩低域及び他端嵩低域は、見かけの比容積30cm/gであり、中央嵩高域は、一端嵩低域及び他端嵩低域端部低嵩域のよりふっくらと嵩高な状態になったセカンドシートを作製した。
【0055】
上記で得られたセカンドシート、表1〜表2に記載の各所定寸法のトップシート、バックシート及び吸収体(上層吸収体及び下層吸収体)を用い、図1に示す構造を有する、パッドタイプ紙おむつである実施例1の吸収性物品を作製した。中央嵩高域を設けることにより長さ方向への拡散吸収を有効に促し、尿量の多いモニターの夜間使用でもモレを抑制することができた。
【0056】
(実施例2)
吸収体を図2に示すスリットを設けた吸収体に変更する以外は、実施例1と同様にして、図2に示す構造を有する、パッドタイプ紙おむつである実施例2の吸収性物品を作製した。なお、各種寸法は表1〜表2に示したとおりである。このスリットは、吸収体の、セカンドシートの中央嵩高域と厚み方向に重なる領域に、上層吸収体及び下層吸収体を厚み方向に貫通した中空領域として設けられたものである。セカンドシートとスリットとの効果で吸収速度が大きく向上し、モレを有効に防ぐことができた。
【0057】
(実施例3)
トップシート肌側面上層、及び上層吸収体肌側面の、セカンドシート中央嵩高域と厚み方向に重なる各領域に、エンボス加工により、図3に示す溝(トップシート)、及び凹溝(上層吸収体)を形成した。ただし、溝及び凹溝の本数を3本から4本に変更し、各4本の溝及び凹溝が、互いに略平行にかつ略等間隔に長さ方向に略直線状に延びるように配置した。このトップシート及び上層吸収体を用いる以外は、実施例1と同様にして、図3に示す構造を有する、パッドタイプ紙おむつである実施例3の吸収性物品を作製した。なお、各種寸法は表1〜表2に示したとおりである。セカンドシートとエンボス加工により形成された溝及び凹溝との相乗効果で、トップシート表面から吸収体へ尿の浸透が広く促進され、吸収速度と逆戻りが良化し、モレを有効に防ぐことができた。
【0058】
(比較例1)
一端嵩低域及び他端嵩低域の見かけの比容積30cm/gとし、中央嵩高域の見かけの比容積を43cm/gとし、見かけの比容積の比を1.4と実施例1よりも小さくする以外は、実施例1と同様にして、パッドタイプ紙おむつである比較例1の吸収性物品を作製した。得られた吸収性物品は、特に繰り返しの体液の吸収に対し、長さ方向へ拡散を制御することが十分出来ず、横モレが生じる結果となった。
【0059】
(比較例2)
セカンドシートの肌側面全面に切削加工を施し、一端嵩低域及び他端嵩低域の見かけの比容積70cm/gとし、中央嵩高域の見かけの比容積を70cm/gとし、見かけの比容積の比を1とする以外は、実施例1と同様にして、パッドタイプ紙おむつである比較例2の吸収性物品を作製した。得られた吸収性物品は、吸収速度に若干良化が見られたものの、比較例1と同じく端部と中央部の容積比の差が小さいため、特に繰り返しの体液の吸収に対し、長さ方向への拡散制御が不十分で横モレが見られた。
【0060】
(比較例3)
セカンドシートに用いられるエアスルー不織布を坪量25g/mのエアスルー不織布に変更する以外は、実施例1と同様にして、パッドタイプ紙おむつである比較例3の吸収性物品を作製した。得られた吸収性物品は、一端嵩低域及び他端嵩低域、中央嵩高域の各見かけの比容積は実施例1等と同様であるが、坪量が低いため見かけの厚さがそれほど向上しておらず、吸収速度や逆戻りの低下がみられた。拡散性そのものが夜間の繰り返しの吸収、尿量が多いモニターの場合に不十分なケースがあり、かなり横モレしやすい傾向であった。
【0061】
(比較例4)
セカンドシート中央嵩高域を製品長(長さ方向の全長)に対し95.2%の長さ比で配置する以外は、実施例1と同様にして、パッドタイプ紙おむつである比較例4の吸収性物品を作製した。得られた吸収性物品は、長さ方向への拡散が非常に良好であり吸収速度、逆戻りともに良化が見られるが、長さ方向への拡散が過剰な場合があり、製品前端部または後端部よりモレを生じるケースがみられた。
【0062】
(比較例5)
セカンドシート中央嵩高域を製品長(全長)に対し60.0%の長さ比で配置する以外は、実施例1と同様にして、パッドタイプ紙おむつである比較例5の吸収性物品を作製した。得られた吸収性物品は、長さ方向への拡散が尿量の多いモニターの夜間の繰り返しの排尿に不足する場合があり、横モレを生じる事例がみられた。
【0063】
実施例1〜3及び比較例1〜5で得られた各吸収性物品について、下記の評価試験を実施した。結果を表3に示す。なお、表1〜表3では、中央部嵩高域を単に「嵩高域」ともいい、一端嵩低域及び他端嵩低域を単に「嵩低域」と総称することもある。また、凹溝を単にエンボスとも呼ぶ。
【0064】
〔モニター着用による夜間モレ評価〕
ある施設において比較的尿量の多い8人のパネラーの協力の下、実施例1〜3及び比較例1〜5で得られたパッドタイプ紙おむつを着用してもらい、一晩装着後のモレの有無について評価を行った。横モレや縦モレ(長さ方向前端部又は後端部からのモレが生じる)などモレの状態を観察し、次の基準で評価した。
「モレがない」の評価が6人以上8人以下のときを「〇」、「モレがない」の評価が3人以上5人以下のときを「△」、「モレがない」の評価が1人若しくは2人のとき又は「モレがない」の評価が1人もいないときを「×」とした。
【0065】
〔吸収速度(従来の35g/cm加圧下と150g/cm加圧下)〕
パッドタイプ紙おむつを平面に伸ばして広げた状態で固定し、内径30mmの筒状の吸収速度治具をパッドタイプ紙おむつの肌当接面側の幅方向、長さ方向の中央に設置し、1回あたり40mlの0.9%生理食塩水を注入し、紙おむつ表面に液面が吸収されるまでの時間を計測した。吸収後から3分後に次の40mlを注入し、同様に吸収されるまでの時間を計測した。この操作を繰り返し、40ml×3回の吸収に要する時間の合計を吸収速度(秒)とした。吸収速度治具の重量により35g/cm加圧下と150g/cm加圧下の2水準の荷重で測定を行った。
【0066】
〔逆戻り量(従来の35g/cm加圧下と150g/cm加圧下)〕
パッドタイプ紙おむつを平面に伸ばして広げた状態で固定し、パッドタイプ紙おむつの肌側面の幅方向、長さ方向の中央に0.9%生理食塩水を1000ml注入し10分間静置した。パッドタイプ紙おむつの肌側面の幅方向、長さ方向の中央に濾紙を置き、さらにその上へ35g/m荷重又は150g/m荷重となる重りを置き1分間静置した。1分間静置後に重りを取りのぞき、濾紙が吸収した0.9%生理食塩水の重量を、吸収前後の重量差より求め、逆戻り量(ウエットバック、g)とした。
なお、上記評価試験で利用した35g/cmという荷重は、仰臥位における臀部平均体圧相当に相当するものであり、150g/cmという荷重は、座位における臀部高圧箇所の荷重に相当するものである。
【0067】
〔無荷重見かけ厚さ〕
ハイトゲージ(商品名、(株)ミツトヨ製)を用い、一端嵩低域、他端嵩低域、及び中央嵩高域の、各無荷重下の厚さ(無荷重見かけ厚さ)を測定した。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】
【0071】
表1〜3に示すように、セカンドシートの中央嵩高域と両端の低嵩域とが、本発明規定の適切な目付(坪量)、幅、長さ、見かけの比容積である場合、着用時のモレ評価が「〇」であった。このことから、夜間就寝時において、様々な体勢や圧力が加わっても繰り返しの体液(排尿等)を吸収しモレを防ぐことが可能であった。また、適切に長さ方向に延伸し、かつ中央嵩高域と厚み方向(Z方向)に重なるよう設けられたスリットや凹溝との組合せにより、比較的尿量が多い場合でも吸収速度や逆戻りを向上させながら、着用時のドライ感を高めつつモレが生じにくい吸収性物品を提供することが出来た。
【符号の説明】
【0072】
1、2、3 吸収性物品
10、15 トップシート
11 バックシート
12、12B、12C 吸収体
13 セカンドシート
14 立体ギャザー
14a ギャザーシート
14b 弾性伸縮部材
20 中央嵩高域
21 一端嵩低域
22 他端嵩低域
25、25B、25C 上層吸収体
26、26B、26C 下層吸収体
27 スリット
28 溝
29、29a、29b、29c 凹溝
図1
図2
図3
図4