(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-180747(P2021-180747A)
(43)【公開日】2021年11月25日
(54)【発明の名称】体温測定機能付きの手のひら静脈識別装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/1171 20160101AFI20211029BHJP
G01J 5/00 20060101ALI20211029BHJP
A61B 5/01 20060101ALI20211029BHJP
【FI】
A61B5/1171 100
G01J5/00 101Z
A61B5/01 100
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-87365(P2020-87365)
(22)【出願日】2020年5月19日
(11)【特許番号】特許第6778348号(P6778348)
(45)【特許公報発行日】2020年10月28日
(71)【出願人】
【識別番号】515264207
【氏名又は名称】株式会社イーバイピー
(74)【代理人】
【識別番号】100085372
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100129229
【弁理士】
【氏名又は名称】村澤 彰
(72)【発明者】
【氏名】劉 炳江
【テーマコード(参考)】
2G066
4C038
4C117
【Fターム(参考)】
2G066AC13
2G066CA16
4C038VA04
4C038VA07
4C038VB12
4C038VC05
4C117XA01
4C117XB01
4C117XC16
4C117XD16
4C117XE48
4C117XJ46
4C117XJ48
(57)【要約】
【課題】利用者の身元を認証するとともに、発熱症状のある利用者を識別する体温測定機能付きの手のひら静脈識別装置を提供する。
【解決手段】筐体と、この筐体に、利用者の手のひら領域の静脈を撮影するための手のひら静脈撮影カメラと、利用者の手首の温度を検出するための赤外線温度センサと、画像及び/又は音声を出力する出力装置と、制御装置とを備える。静脈撮影カメラと赤外線温度センサと出力装置が制御装置にそれぞれ電気的に接続され、静脈撮影カメラが撮影した静脈画像データと赤外線温度センサが検出した温度データを制御装置が処理しその処理結果を出力装置から画像又は音声のいずれか一方の形式又は双方の形式で出力装置から出力するように構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体に、利用者の手のひら領域の静脈を撮影するための手のひら静脈撮影カメラと、前記利用者の手首の温度を検出するための赤外線温度センサと、画像及び/又は音声を出力する出力装置と、制御装置とを備え、
前記静脈撮影カメラと前記赤外線温度センサと前記出力装置が前記制御装置にそれぞれ電気的に接続され、
前記静脈撮影カメラが撮影した静脈画像データと前記赤外線温度センサが検出した温度データを前記制御装置が処理しその処理結果を前記出力装置から画像又は音声のいずれか一方の形式又は双方の形式で出力するように構成された体温測定機能付きの手のひら静脈識別装置。
【請求項2】
前記画像及び/又は音声を出力する出力装置が液晶ディスプレイ及び/又はスピーカーであり、前記制御装置がマイクロコンピュータのマザーボード又は前記筐体に外付けされるパソコンである請求項1記載の体温測定機能付きの手のひら静脈識別装置。
【請求項3】
前記筐体に、前記利用者が所定の情報を入力するためのテンキー又はタッチパネルを更に備え、前記テンキー又はタッチパネルが前記制御装置に電気的に接続された請求項1又は2記載の体温測定機能付きの手のひら静脈識別装置。
【請求項4】
前記手のひら静脈撮影カメラを前記赤外線温度センサより上位に備えた請求項1ないし3いずれか1項に記載の体温測定機能付きの手のひら静脈識別装置。
【請求項5】
前記手のひら静脈撮影カメラの画像受信側の中心位置から前記赤外線温度センサの赤外線受信側の中心位置までの距離(h1)が3cm〜10cmの範囲にある請求項1ないし4いずれか1項に記載の体温測定機能付きの手のひら静脈識別装置。
【請求項6】
前記筐体に、外部設備の電気錠のスイッチを制御するためのリレー装置を更に備え、前記リレー装置が前記制御装置に電気的に接続され、前記静脈撮影カメラが撮影した静脈画像データと前記赤外線温度センサが検出した温度データを処理しその処理結果に相応して前記制御装置が前記電気錠の開閉を制御するように構成された請求項1ないし5いずれか1項に記載の体温測定機能付きの手のひら静脈識別装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者の手のひらの静脈を撮影するとともに、利用者の体温を赤外線により測定する体温測定機能付きの手のひら静脈識別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
手のひら静脈識別は、静脈識別の一種であり、生体認証の技術に属する。この技術は、専用のカメラを用いて、予め、利用者の手のひら領域の静脈を撮影し、その静脈のディジタル画像をコンピュータシステムに保存し、特定のロジックで利用者固有の特徴値を計算しておく。そして利用者が手のひら静脈識別装置に手のひらを近づけたときに、手のひら静脈識別装置で得られた特徴値と予め保存された特徴値とを比較して、利用者の身元を認証する。こうした手のひらの静脈を撮像して個人認証とする「手のひら静脈撮像装置」が開示されている(例えば、特許文献1(請求項1、段落[0001]〜段落[0007]参照。))。
【0003】
手のひら静脈識別のメリットには、次の(1)〜(4)が挙げられる。(1)人体の内部の生体的特徴を摩擦による損傷を生じさせずに把握し、偽造が難しく安全性が高い。(2)非接触であり衛生的で利用し易い。(3)静脈の血流により画像を生成するため、死人の静脈では画像を生成できない生体識別である。(4)利用者本人であるのに本人と認識されない本人拒否率(FRR)は0.01%であり、他人であるのに利用者本人と認識する他人誤認率(FAR)は0.00001%であり、極めて識別精度が高い。
【0004】
一方、赤外線による体温測定技術は、非接触式の人体温度測定技術であり、現在広く採用されている。その測定技術は、いかなる物体もその温度が絶対零度より高い場合には、外部にエネルギーを放射するという原理に基づく。キルヒホッフの法則によると、電磁放射に対する物体の放射能力と吸収能力の比は、物体の種類に無関係であり、絶対温度と波長のみの関数であり、即ち吸収係数に比例する。
【0005】
上記の原理に基づいた赤外線による体温測定の部位には、人体表面と耳道の2種類がある。現在の一般的な人体表面温度の測定部位は前額(おでこ)と腕(内関穴付近)である。前額に比べて手首の温度は外界の温度や湿度の影響を受けにくく、かつ真の体温からの偏差が小さいため、実用的で応用価値が高いと言われている。赤外線による体温測定は、次の(1)〜(4)の利点がある。(1)測定に際して、測定者が測定対象者と接触しないため、測定対象者が感染症に罹っていたとしても、測定者が感染するおそれがない。(2)通常の測定時間は1秒以下であり、2秒を超えず、迅速に測定できる。(3)警報を発すべき体温を自由に設定できる。(4)従来の水銀体温計と比較して、破損しにくく、水銀汚染を生じることがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開WO2014/162388
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の赤外線による体温測定技術は、発熱症状のある感染症(例えば、新型のコロナウイルス肺炎COVID−19、重症急性呼吸器症候群SARSなど)に罹っている人を迅速にスクリーニングできる利点があるけれども、本人の身元認証機能に欠ける課題があった。
その一方、従来の手のひら静脈識別技術は、この技術を用いて利用者の個人認証を行って特定の場所への入場を許可している場合、身元認証には優れるけれども、利用者本人が上記感染症に罹っていて発熱症状がある場合でも、その利用者は特定の場所への入場が許可され、許可された利用者は特定の場所に居る他人に感染症をうつしてしまう課題があった。具体的には、手のひら静脈識別技術を採用する門限制御システムは、特定の場所に入ろうとする人の身分判断と、その授権有無判断を効果的に解決し、非授権者が特定の場所に入ることを効果的に防ぐことができるけれども、このシステムは、その人の体温を調べることができず、その人が上記感染症に罹っている場合、感染者が特定の場所に入り、そこにいる他人に感染症をうつすことを防止する観点で解決すべき課題があった。
【0008】
本発明の目的は、上記課題を解決するために、利用者の身元を認証するとともに、発熱症状のある利用者を識別する体温測定機能付きの手のひら静脈識別装置を提供することにある。本発明の別の目的は、発熱症状のある利用者が特定の場所に入場することを未然に阻止する体温測定機能付きの手のひら静脈識別装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の観点は、筐体と、前記筐体に、利用者の手のひら領域の静脈を撮影するための手のひら静脈撮影カメラと、前記利用者の手首の温度を検出するための赤外線温度センサと、画像及び/又は音声を出力する出力装置と、制御装置とを備え、前記静脈撮影カメラと前記赤外線温度センサと前記出力装置が前記制御装置にそれぞれ電気的に接続され、前記静脈撮影カメラが撮影した静脈画像データと前記赤外線温度センサが検出した温度データを前記制御装置が処理しその処理結果を前記出力装置から画像又は音声のいずれか一方の形式又は双方の形式で出力するように構成された体温測定機能付きの手のひら静脈識別装置(以下、単に静脈識別装置ということもある。)である。
【0010】
本発明の第2の観点は、第1の観点に基づく発明であって、前記画像及び/又は音声を出力する出力装置が液晶ディスプレイ及び/又はスピーカーであり、前記制御装置がマイクロコンピュータのマザーボード又は前記筐体に外付けされるパソコンである静脈識別装置である。
【0011】
本発明の第3の観点は、第1又は第2の観点に基づく発明であって、前記筐体に、前記利用者が所定の情報を入力するためのテンキー又はタッチパネルを更に備え、前記テンキー又はタッチパネルが前記制御装置に電気的に接続された静脈識別装置である。
【0012】
本発明の第4の観点は、第1ないし第3の観点のいずれか1つの観点に基づく発明であって、前記手のひら静脈撮影カメラを前記赤外線温度センサより上位に備えた静脈識別装置である。
【0013】
本発明の第5の観点は、第1ないし第4の観点のいずれか1つの観点に基づく発明であって、前記手のひら静脈撮影カメラの画像受信側の中心位置から前記赤外線温度センサの赤外線受信側の中心位置までの距離(h1)が3cm〜10cmの範囲にある静脈識別装置である。
【0014】
本発明の第6の観点は、第1ないし第5の観点のいずれか1つの観点に基づく発明であって、前記筐体に、特定の場所の電気錠のスイッチを制御するためのリレー装置を更に備え、前記リレー装置が前記制御装置に電気的に接続され、前記静脈撮影カメラが撮影した静脈画像データと前記赤外線温度センサが検出した温度データを処理しその処理結果に相応して前記制御装置が前記電気錠の開閉を制御するように構成された静脈識別装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1の観点の静脈識別装置では、利用者が手のひらを手のひら静脈撮影カメラに近づけ、利用者の手首を赤外線温度センサに近づけると、静脈撮影カメラが撮影した静脈画像データと赤外線温度センサが検出した温度データを制御装置が処理し、その処理結果が出力装置から画像又は音声のいずれか一方の形式又は双方の形式で出力される。この結果、利用者の身元を認証できるとともに、発熱症状のある利用者を識別することができ、手のひら静脈認識と手首の温度測定の2つの作業を1つの操作で実現することができる。また利用者の身元認証と体温の測定結果を同時に出力することで、セキュリティの認証の問題を解決するだけでなく、体温スクリーニングも同時に行うことができる。更にこの静脈識別装置を使用するに際して、利用者は静脈識別装置に接触せず、感染症に感染するリスクを回避する上で、優れる。
【0016】
本発明の第2の静脈識別装置では、前記画像及び/又は音声を出力する出力装置が液晶ディスプレイ及び/又はスピーカーであるため、利用者は容易に画像を見ることができ、また音声を明確に聞くことができる。また前記制御装置がマイクロコンピュータのマザーボードであれば筐体内にコンパクトに格納でき、前記制御装置が外付けされるパソコンであれば静脈識別装置の制御回路をより簡単な構造にすることができる。
【0017】
本発明の第3の観点の静脈識別装置では、筐体に、利用者が所定の情報を入力するためのテンキー又はタッチパネルを備えるため、利用者自身がテンキー又はタッチパネルを操作して、利用者の身元認証結果及び発熱症状の有無を第三者に知らせるとともに、利用者本人も身元認証結果及び発熱症状の有無を知ることができる。
【0018】
本発明の第4の観点の静脈識別装置では、前記手のひら静脈撮影カメラを前記赤外線温度センサより上位に備えるため、利用者が手のひらを静脈撮影カメラに近づけたときに、容易に利用者の手首を赤外線温度センサに近づけることができ、身元認証結果及び発熱症状の有無を迅速に知ることができる。
【0019】
本発明の第5の観点の静脈識別装置では、手のひら静脈撮影カメラの画像受信側の中心位置から前記赤外線温度センサの赤外線受信側の中心位置までの距離(h1)が3cm〜10cmの範囲にあるため、利用者が手のひらを静脈撮影カメラに近づけたときに、同時に利用者の手首が赤外線温度センサに近づけられ、身元認証結果及び発熱症状の有無をより一層迅速に知ることができる。
【0020】
本発明の第6の観点の静脈識別装置では、筐体に、特定の場所の電気錠のスイッチを制御するための制御装置に接続されたリレー装置を備えるため、制御装置が、静脈撮影カメラが撮影した静脈画像データと赤外線温度センサが検出した温度データを処理しその処理結果に相応して、電気錠の開閉を制御する。この結果、発熱症状のある利用者が特定の場所に入場することを未然に阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る体温測定機能付きの手のひら静脈識別装置の構成図である。
【
図2】本発明の第2の実施形態に係る体温測定機能付きの手のひら静脈識別装置の正面図である。
【
図3】利用者が手のひらを手のひら静脈撮影カメラに近づけ、手首を赤外線温度センサに近づけている状況を示す、
図2のA−A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
【0023】
<第1の実施形態>
先ず、本発明の第1の実施形態に係る体温測定機能付きの手のひら静脈識別装置について説明する。
図1に示すように、第1の実施形態に係る静脈識別装置は、手のひら静脈撮影カメラ1と、赤外線温度センサ2と、マイクロコンピュータのマザーボード3と、液晶ディスプレイ4と、スピーカー5と、テンキー6と、リレー装置7とを筐体8に備える。マイクロコンピュータのマザーボード3は制御装置を構成し、液晶ディスプレイ4は画像を出力する出力装置を、スピーカー5は音声を出力する出力装置を構成する。制御装置であるマイクロコンピュータのマザーボード3には、静脈撮影カメラ1、赤外線温度センサ2、液晶ディスプレイ4、スピーカー5、テンキー6及びリレー装置7がそれぞれ電気的に接続される。
【0024】
手のひら静脈撮影カメラ1は、利用者の手のひら領域の静脈を撮影するために用いられる。赤外線温度センサ2は、利用者の手首の温度データである体温を検出するために用いられ、Melexis社製の型番MLX90614の赤外線温度センサが優先的に使用される。マイクロコンピュータのマザーボード3は、静脈撮影カメラ1が撮影した静脈画像データと赤外線温度センサ2が検出した温度データを処理し、その処理結果を文字と画像の形式で液晶ディスプレイ4に表示して、同時にスピーカー5から音声として利用者に伝えるように構成される。
【0025】
マイクロコンピュータのマザーボード3は、中央処理装置(CPU)、メモリ(RAM)、ストレージ(EMMC)、入出力インタフェース及びPCB電子回路基板を含む。テンキー6は、利用者がこの静脈識別装置を操作するために特定の情報を入力するために用いられる。リレー装置7は、特定の場所にある外部設備の電気錠のスイッチを制御するために用いられる。
【0026】
このように構成された静脈識別装置では、利用者が手のひらを手のひら静脈撮影カメラ1に近づけ、利用者の手首を赤外線温度センサ2に近づけると、静脈撮影カメラ1が撮影した静脈画像データと赤外線温度センサ2が検出した温度データを筐体8内のマザーボード3が処理し、その処理結果が液晶ディスプレイ4に表示され、同時にスピーカー5から音声として発せられる。また利用者がテンキー6に所定の情報を入力すれば、利用者の身元認証結果及び発熱症状の有無を第三者に知らせることができ、同時に利用者本人も身元認証結果及び発熱症状の有無を知ることができる。
【0027】
更にマザーボード3が静脈撮影カメラ1が撮影した静脈画像データと赤外線温度センサ2が検出した温度データを処理しその処理結果から利用者の身元を確認し、同時に利用者に発熱症状がないと認めれば、リレー装置7を介して電気錠を開錠するように制御し、利用者の特定の場所への入場を許可する。反対に処理結果から利用者の身元を確認できないか、或いは確認できたとしても、利用者に発熱症状があると認めれば、電気錠を開錠しないように制御し、発熱症状のある利用者が特定の場所に入場することを未然に阻止することができる。
【0028】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態に係る体温測定機能付きの手のひら静脈識別装置について説明する。
図2及び
図3に示すように、第2の実施形態に係る静脈識別装置は、筐体8を備える。この筐体8の表面には、筐体の上部から筐体の下部にかけて、利用者の手のひら領域の静脈を撮影するための手のひら静脈撮影カメラ1と、利用者の手首の温度を検出するための赤外線温度センサ2と、液晶ディスプレイ4と、テンキー6とがこの順に備える。また筐体8の内部には、マイクロコンピュータのマザーボード3と、スピーカー5と、リレー装置7とを備える。
【0029】
第1の実施形態と同様に、静脈撮影カメラ1、赤外線温度センサ2、液晶ディスプレイ4、スピーカー5、テンキー6及びリレー装置7がマイクロコンピュータのマザーボード3に電気的に接続される。また第1の実施形態と同様に、マイクロコンピュータのマザーボード3は、静脈撮影カメラ1が撮影した静脈画像データと赤外線温度センサ2が検出した温度データを処理し、その処理結果を文字と画像の形式で液晶ディスプレイ4に表示して、同時にスピーカー5から音声として利用者に伝えるように構成される。
【0030】
図3に示すように、筐体8は建物の壁9に垂直に、かつ起立した利用者が液晶ディスプレイ4に表示される文字と画像を読み取れる高さに設置される。第2の実施形態の静脈識別装置では、利用者が手のひらを手のひら静脈撮影カメラ1に近づけていき、手のひらから静脈撮影カメラ1までの距離(d1)が5cmに等しくなったときに、マイクロコンピュータのマザーボード3が静脈撮影カメラ1から手のひらの真ん中の静止画像を取得するようになっている。この取得と同時に、利用者の手首が赤外線温度センサ2に対向するため、赤外線温度センサ2は手首の表面温度データを取得するようになっている。ここで手首から赤外線温度センサ2までの距離は(d2)である。
【0031】
第2の実施形態の特徴ある構成は、手のひら静脈撮影カメラ1と赤外線温度センサ2の中心距離(h1)が手のひらの静脈画像データと手首の温度を同時に取得することができるところにある。具体的には、手のひら静脈撮影カメラ1の画像受信側の中心位置から赤外線温度センサ2の赤外線受信側の中心位置までの距離(h1)が3cm〜10cmの範囲にあることが好ましい。距離(h1)が3cm未満である場合には、赤外線温度センサ2が取得する温度が、外部環境の影響を受け易い手のひらの温度になるおそれがあり、利用者の体温を正確に測定できないおそれがある。一方、距離(h1)が10cmを超えると、赤外線温度センサ2が取得する温度は、利用者が着ている衣服の袖の表面温度であるおそれがあり、利用者の体温を正確に測定できないおそれがある。
【0032】
このように構成された静脈識別装置では、利用者が手のひらを手のひら静脈撮影カメラ1に近づけると、自動的に利用者の手首が赤外線温度センサ2に近づけられる。このため、静脈撮影カメラ1が撮影した静脈画像データと赤外線温度センサ2が検出した温度データを同時に取得することができる。この静脈画像データと温度データを筐体8内のマザーボード3が処理し、マザーボード3はその処理結果を液晶ディスプレイ4に表示し、同時にスピーカー5から音声として発する。
【0033】
上述した第1及び第2の実施形態の体温測定機能付きの手のひら静脈識別装置では、先ず、手のひら静脈撮影カメラ1により手のひらの静脈画像の認証データと、赤外線温度センサ2により手首の表面温度データの2つのデータを同時に取得する。次いで、取得された静脈画像の認証データと温度データの2つが、マイクロコンピュータマザーボード3に組み込まれた電子回路により変換され、液晶ディスプレイ4とスピーカー5に同時に出力される。利用者の身元認証と測定された体温の両方の結果を、身元認証がなされかつ感染症の疑いのない人のみを特定の場所に入場許可するための指標とする場合には、マイクロコンピュータのメインボード3はリレー装置7を制御し、特定の場所の電気錠のスイッチを作動又は不作動にする。この結果、本発明の静脈識別装置は、セキュリティと防疫の観点から、特定の場所への利用者の入場可否の判断に用いることができる。
【0034】
第1及び第2の実施形態の体温測定機能付きの手のひら静脈識別装置は、赤外線による体温測定技術と手のひら静脈認識アクセス制御システムを組み合わせることにより、手のひら静脈認識と体温度測定の2つの作業を1つの操作で実現する(手のひら静脈認識と同時に人間の手首の温度を測定する。)。利用者のIDの有無と体温を数値化して同時に出力する。これにより、この静脈識別装置を利用する者のID認証の問題が解決されるだけでなく、体温スクリーニングも同時に実行される。利用者が利用中、静脈識別装置との接触がないため、新型コロナウイルスなどの感染症の予防と管理のための新しい対策と方法が提供される
【0035】
第1及び第2の実施形態の体温測定機能付きの手のひら静脈識別装置を構成する手のひら静脈撮影カメラ1、赤外線温度センサ2,液晶ディスプレイ4、スピーカー5、テンキー6、リレー装置7及びマイクロコンピュータのマザーボード3の電子回路、電子部品及びモジュールは、すべて既存の技術であり、当該技術分野に属する技術者であれば、実現可能である。当該技術分野に属する技術者にとって,本実施形態の静脈識別装置に対して多くの変形や改善を行うことができるが、本発明の効果及び実用性に影響を与えることがなければ、これらの変形や改善は、本発明の保護の範囲と見なされるべきである。
【0036】
また、上述した第1及び第2の実施形態の静脈識別装置は、筐体8に液晶ディスプレイ4及びスピーカー5を備えたが、液晶ディスプレイ又はスピーカーのいずれか一方を備えるだけでもよく、或いは双方を備えなくてもよい。また第1及び第2の実施形態の静脈識別装置は、筐体8にテンキー6及びリレー装置7を備えたが、テンキー又はリレー装置のいずれか一方を備えるだけでもよく、或いは双方を備えなくてもよい。またテンキー6の代わりにタッチパネル(図示せず)でもよい。更に制御装置として、筐体8にマイクロコンピュータのマザーボード3を備える代わりに、外部のパソコンを外付けして制御機能を果たすようにしてもよい。
更に、
図2及び
図3に示す各要素の配置は、一例であってこの配置に限定されるものではない。手のひら静脈撮影カメラ1、赤外線温度センサ2、液晶ディスプレイ4、テンキー6及びリレー装置の各配置は任意に決めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の体温測定機能付きの手のひら静脈識別装置は、入場する際に、個人の身元と個人の体温を同時に確認する必要がある特定の場所において利用される。
【符号の説明】
【0038】
1 手のひら静脈撮影カメラ
2 赤外線温度センサ
3 マイクロコンピュータのマザーボード(制御装置)
4 液晶ディスプレイ(出力装置)
5 スピーカー(出力装置)
6 テンキー
7 リレー装置
8 筐体
【手続補正書】
【提出日】2020年8月31日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体に、利用者の手のひら領域の静脈を撮影するための手のひら静脈撮影カメラと、前記利用者の手首の温度を検出するための赤外線温度センサと、画像及び/又は音声を出力する出力装置と、制御装置とを備え、
前記静脈撮影カメラと前記赤外線温度センサと前記出力装置が前記制御装置にそれぞれ電気的に接続され、
前記静脈撮影カメラが撮影した静脈画像データと前記赤外線温度センサが検出した温度データを前記制御装置が処理しその処理結果を前記出力装置から画像又は音声のいずれか一方の形式又は双方の形式で出力するように構成された体温測定機能付きの手のひら静脈識別装置であって、
前記手のひら静脈撮影カメラは前記赤外線温度センサより上位に配置され、かつ前記手のひら静脈撮影カメラの画像受信側の中心位置から前記赤外線温度センサの赤外線受信側の中心位置までの距離(h1)が3cm〜10cmの範囲にあり、
前記利用者が手のひらを前記手のひら前記静脈撮影カメラに近づけていき、手のひらから静脈撮影カメラまでの距離(d1)と手首から赤外線温度センサまでの距離(d2)をとったときに、前記静脈撮影カメラが手のひらの真ん中の静止画像を取得し、この取得と同時に利用者の手首が前記赤外線温度センサに対向して前記赤外線温度センサが手首の表面温度データを取得するように構成されたことを特徴とする体温測定機能付きの手のひら静脈識別装置。
【請求項2】
前記画像及び/又は音声を出力する出力装置が液晶ディスプレイ及び/又はスピーカーであり、前記制御装置がマイクロコンピュータのマザーボード又は前記筐体に外付けされるパソコンである請求項1記載の体温測定機能付きの手のひら静脈識別装置。
【請求項3】
前記筐体に、前記利用者が所定の情報を入力するためのテンキー又はタッチパネルを更に備え、前記テンキー又はタッチパネルが前記制御装置に電気的に接続された請求項1又は2記載の体温測定機能付きの手のひら静脈識別装置。
【請求項4】
前記筐体に、外部設備の電気錠のスイッチを制御するためのリレー装置を更に備え、前記リレー装置が前記制御装置に電気的に接続され、前記静脈撮影カメラが撮影した静脈画像データと前記赤外線温度センサが検出した温度データを処理しその処理結果に相応して前記制御装置が前記電気錠の開閉を制御するように構成された請求項1ないし3いずれか1項に記載の体温測定機能付きの手のひら静脈識別装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明の第1の観点は、筐体と、前記筐体に、利用者の手のひら領域の静脈を撮影するための手のひら静脈撮影カメラと、前記利用者の手首の温度を検出するための赤外線温度センサと、画像及び/又は音声を出力する出力装置と、制御装置とを備え、前記静脈撮影カメラと前記赤外線温度センサと前記出力装置が前記制御装置にそれぞれ電気的に接続され、前記静脈撮影カメラが撮影した静脈画像データと前記赤外線温度センサが検出した温度データを前記制御装置が処理しその処理結果を前記出力装置から画像又は音声のいずれか一方の形式又は双方の形式で出力するように構成された体温測定機能付きの手のひら静脈識別装置
であって、前記手のひら静脈撮影カメラは前記赤外線温度センサより上位に配置され、かつ前記手のひら静脈撮影カメラの画像受信側の中心位置から前記赤外線温度センサの赤外線受信側の中心位置までの距離(h1)が3cm〜10cmの範囲にあり、前記利用者が手のひらを前記手のひら前記静脈撮影カメラに近づけていき、手のひらから静脈撮影カメラまでの距離(d1)と手首から赤外線温度センサまでの距離(d2)をとったときに、前記静脈撮影カメラが手のひらの真ん中の静止画像を取得し、この取得と同時に利用者の手首が前記赤外線温度センサに対向して前記赤外線温度センサが手首の表面温度データを取得するように構成されたことを特徴とする体温測定機能付きの手のひら静脈識別装置(以下、単に静脈識別装置ということもある。)である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
本発明の第
4の観点は、第1ないし第
3の観点のいずれか1つの観点に基づく発明であって、前記筐体に、特定の場所の電気錠のスイッチを制御するためのリレー装置を更に備え、前記リレー装置が前記制御装置に電気的に接続され、前記静脈撮影カメラが撮影した静脈画像データと前記赤外線温度センサが検出した温度データを処理しその処理結果に相応して前記制御装置が前記電気錠の開閉を制御するように構成された静脈識別装置である。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
本発明の第1の観点の静脈識別装置では、利用者が手のひらを手のひら静脈撮影カメラに近づけ、利用者の手首を赤外線温度センサに近づけると、静脈撮影カメラが撮影した静脈画像データと赤外線温度センサが検出した温度データを制御装置が処理し、その処理結果が出力装置から画像又は音声のいずれか一方の形式又は双方の形式で出力される。この結果、利用者の身元を認証できるとともに、発熱症状のある利用者を識別することができ、手のひら静脈認識と手首の温度測定の2つの作業を1つの操作で実現することができる。また利用者の身元認証と体温の測定結果を同時に出力することで、セキュリティの認証の問題を解決するだけでなく、体温スクリーニングも同時に行うことができる。更にこの静脈識別装置を使用するに際して、利用者は静脈識別装置に接触せず、感染症に感染するリスクを回避する上で、優れる。
また本発明の第1の観点の静脈識別装置では、前記手のひら静脈撮影カメラを前記赤外線温度センサより上位に備え、かつ手のひら静脈撮影カメラの画像受信側の中心位置から前記赤外線温度センサの赤外線受信側の中心位置までの距離(h1)が3cm〜10cmの範囲にあるため、利用者が手のひらを静脈撮影カメラに近づけたときに、同時に利用者の手首が赤外線温度センサに近づけられ、身元認証結果及び発熱症状の有無を容易にかつより一層迅速に知ることができる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
本発明の第
4の観点の静脈識別装置では、筐体に、特定の場所の電気錠のスイッチを制御するための制御装置に接続されたリレー装置を備えるため、制御装置が、静脈撮影カメラが撮影した静脈画像データと赤外線温度センサが検出した温度データを処理しその処理結果に相応して、電気錠の開閉を制御する。この結果、発熱症状のある利用者が特定の場所に入場することを未然に阻止することができる。