特開2021-180815(P2021-180815A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社三幸製作所の特許一覧

<>
  • 特開2021180815-排痰補助装置 図000003
  • 特開2021180815-排痰補助装置 図000004
  • 特開2021180815-排痰補助装置 図000005
  • 特開2021180815-排痰補助装置 図000006
  • 特開2021180815-排痰補助装置 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-180815(P2021-180815A)
(43)【公開日】2021年11月25日
(54)【発明の名称】排痰補助装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/00 20060101AFI20211029BHJP
【FI】
   A61M1/00 135
   A61M1/00 170
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2020-88383(P2020-88383)
(22)【出願日】2020年5月20日
(71)【出願人】
【識別番号】000144371
【氏名又は名称】株式会社三幸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100180367
【弁理士】
【氏名又は名称】寺尾 康典
(72)【発明者】
【氏名】宇賀神 俊之
(72)【発明者】
【氏名】高橋 誠司
(72)【発明者】
【氏名】春山 幸志郎
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA26
4C077BB10
4C077CC02
4C077CC06
4C077DD12
4C077DD19
4C077DD26
4C077EE04
(57)【要約】
【課題】 本発明は、排痰するために喀痰吸引する際の吸引カテーテルを用いることによる患者の苦痛の緩和が可能で、また、送気及び排気の十分な流量と陽圧/陰圧を確保することの可能な圧力発生装置を装備することなく安価な排痰補助装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
本発明に係る排痰補助装置は、患者に装着する吸排気具が連結される吸排気具接続口と、吸排気具接続口に接続するとともに送気装置が連結される送気装置接続口と、吸排気具接続口に接続する貯留部接続口と、吸排気具接続口の送気装置接続口又は貯留部接続口への接続を切り替える切替コックと、を有する排痰補助装置本体と、排痰補助装置本体の貯留部接続口に連結される本体接続口と、陰圧を発生する吸引器が連結される吸引器接続口と、を有する陰圧を保持する貯留部と、を備える排痰補助装置である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に装着する吸排気具が連結される吸排気具接続口と、前記吸排気具接続口に接続するとともに送気装置が連結される送気装置接続口と、前記吸排気具接続口に接続する貯留部接続口と、前記吸排気具接続口の前記送気装置接続口又は前記貯留部接続口への接続を切り替える切替コックと、を有する排痰補助装置本体と、
前記排痰補助装置本体の前記貯留部接続口に連結される本体接続口と、陰圧を発生する吸引器が連結される吸引器接続口と、を有する陰圧を保持する貯留部と、
を備える排痰補助装置。
【請求項2】
前記排痰補助装置は、前記貯留部接続口と前記本体接続口の間に、又は、前記吸排気具接続口と前記吸排気具の間に、流量計を更に備える、請求項1に記載の排痰補助装置。
【請求項3】
前記切替コックは、前記送気装置接続口を密閉する送気弁部と前記貯留部接続口を密閉する吸引弁部とを含む切替弁部を有する請求項1又は2に記載の排痰補助装置。
【請求項4】
前記切替コックは、切替レバー及び付勢部材を更に有し、前記切替レバーを用いて手動で操作すると前記吸排気具接続口が前記貯留部接続口に接続し、前記切替レバーから手を離すと前記付勢部材により付勢されて前記吸排気具接続口が前記送気装置接続口に接続する、請求項3に記載の排痰補助装置。
【請求項5】
前記付勢部材は、前記吸引弁部を付勢し、前記吸引弁部により前記貯留部接続口を塞ぐ、請求項4に記載の排痰補助装置。
【請求項6】
前記切替弁部は、円筒形状の回動部を有し、前記回動部の外縁から接線の一方向に送気弁部が延伸し、前記回動部の別の外縁から前記一方向と反対の接線の方向に吸引弁部が延伸する。請求項3〜5のいずれか一項に記載の排痰補助装置。
【請求項7】
前記送気弁部と前記切替弁部は一体的に回動し、前記送気弁部と前記切替弁部とがなす角度は前記送気装置接続口と前記貯留部接続口とのそれぞれの中心軸がなす角度より小さい、請求項3〜6のいずれか一項に記載の排痰補助装置。
【請求項8】
前記排痰補助装置本体は、排気する際に所定の陰圧以上になることを防止する本体安全弁を更に有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の排痰補助装置。
【請求項9】
前記吸排気具接続口は、排痰した痰を分離するフィルター部材を更に有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の排痰補助装置。
【請求項10】
前記貯留部は、該貯留部内の圧力が所定の陰圧以上になることを防止する貯留部安全弁を更に有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の排痰補助装置。
【請求項11】
前記排痰補助装置は、前記吸排気具を更に備える、請求項1〜10のいずれか一項に記載の排痰補助装置。
【請求項12】
前記排痰補助装置は、前記吸引器を更に備える、請求項1〜11のいずれか一項に記載の排痰補助装置。
【請求項13】
前記排痰補助装置は、前記送気装置を更に備える、請求項1〜12のいずれか一項に記載の排痰補助装置。
【請求項14】
前記送気装置は、バッグバルブマスクのバッグ部である、請求項13に記載の排痰補助装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排痰を補助する排痰補助装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
疾病や加齢などによる嚥下障害の患者や呼吸筋力が低下する神経筋疾患の患者は、排痰機能が低下又は無いため、痰を排出することが困難となる。気道に痰が溜まると、呼吸時の気道抵抗が増加し息切れが強くなり、また、気道感染を誘因し肺炎を起こしやすくなる。このようなことから、日常の排痰は非常に重要であり、排痰を補助する機器として痰吸引器が知られている。例えば、特許文献1には、口腔内に挿入され痰を吸引する吸引カテーテルと、吸引カテーテルに連通されて痰を収容する収容容器と、収容容器に連通されて収容容器を介して吸引カテーテルに負圧力を発生させるエアポンプと収容容器とエアポンプとの間の流路中にエアポンプによる負圧力が所定よりも大きい負圧力になった際に流路経路内に外気を流入させる圧力調整器と、から構成される、痰吸引器が開示されている。
【0003】
しかしながら、この痰吸引器は、吸引カテーテルを用いて喀痰吸引を行うため、一定の研修を受けた介護職員等により一定の条件下で行う必要があり、容易に喀痰吸引を行うことができない。また、患者に取っても吸引カテーテルを咽頭まで挿入して排痰を行うことから、喀痰吸引時に苦痛を伴うという問題があった。
【0004】
これに対して、患者の苦痛を和らげる目的で吸引カテーテルを用いない方法として、非特許文献1のような排痰補助装置が開示されている。しかしながら、この排痰補助装置は、排気及び吸気の十分な流量と陽圧/陰圧を確保することの可能な圧力発生装置を装備する必要があり、非常に高価であり、また、人工呼吸器を使用している患者のみにしか保険が適用されないことから、手軽に購入することが困難であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017−131356
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】フィリップス・レスピロニクス合同会社 「カフアシストE70簡易取扱説明書」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、排痰するために喀痰吸引するために吸引カテーテルを用いることによる患者への苦痛を緩和することができ、また、送気及び排気の十分な流量と陽圧/陰圧を確保することの可能な圧力発生装置を装備することなく安価な、咳嗽を誘発し排痰を補助する排痰補助装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る排痰補助装置は、
患者に装着する吸排気具が連結される吸排気具接続口と、吸排気具接続口に接続するとともに送気装置が連結される送気装置接続口と、吸排気具接続口に接続する貯留部接続口と、吸排気具接続口の送気装置接続口又は貯留部接続口への接続を切り替える切替コックと、を有する排痰補助装置本体と、
排痰補助装置本体の貯留部接続口に連結される本体接続口と、陰圧を発生する吸引器が連結される吸引器接続口と、を有する陰圧を保持する貯留部と、
を備える排痰補助装置である。
【0009】
本発明に係る排痰補助装置であれば、吸引カテーテルを用いることなく肺に送気し一気に排気(吸引)することで咳嗽を誘発し排痰を補助可能であり、また、送気及び排気の十分な流量と陽圧/陰圧を確保することの可能な圧力発生装置を装備する必要がない。
【0010】
本発明に係る排痰補助装置は、貯留部接続口と本体接続口の間に、又は、吸排気具接続口と吸排気具の間に、流量計を更に備える、排痰補助装置である。
【0011】
本発明に係る排痰補助装置であれば、流量計で排気の流量を確認し、患者に苦痛を与えることの無い又は少ない排気の条件を設定することができる。
【0012】
本発明に係る排痰補助装置の切替コックは、送気装置接続口を密閉する送気弁部と貯留部接続口を密閉する吸引弁部とを含む切替弁部を有する排痰補助装置である。
【0013】
本発明に係る排痰補助装置の切替コックであれば、患者に送気中に吸引弁部から貯留部に空気が漏洩することがなく、また、患者から排気中に送気弁部から空気が流入することがなく、確実に咳嗽を誘発し排痰を補助することができる。
【0014】
本発明に係る排痰補助装置の切替コックは、切替レバー及び付勢部材を更に有し、切替レバーを用いて手動で操作すると吸排気具接続口が貯留部接続口に接続し、切替レバー から手を離すと付勢部材により付勢されて吸排気具接続口が送気装置接続口に接続する、排痰補助装置である。
【0015】
発明に係る排痰補助装置の切替コックは、排気に切り替えても、切替レバーから手を放すと自動的に送気に切り替わることから、過剰に排気を行うことがなく、患者に不要な苦痛を与えることがない。
【0016】
本発明に係る排痰補助装置の付勢部材は、切替弁部を付勢し、吸引弁部により貯留部接続口を塞ぐ、排痰補助装置である。
【0017】
本発明に係る排痰補助装置の吸引弁部であれば、付勢部材により付勢されて貯留部接続口を塞ぎ、確実に貯留部内の陰圧を保持するとともに、意図しない排気を防止することができる。
【0018】
本発明に係る排痰補助装置の切替弁部は、円筒形状の回動部を有し、回動部の外縁から接線の一方向に送気弁部が延伸し、回動部の別の外縁から一方向と反対の接線の方向に吸引弁部が延伸する、排痰補助装置である。
【0019】
本発明に係る排痰補助装置の切替弁部であれば、吸排気具接続口と貯留部接続口との接続と、吸排気具接続口と送気装置接続口との接続と、が確実に切り替えることができる。
【0020】
本発明に係る排痰補助装置の送気弁部と切替弁部は一体的に回動し、送気弁部と切替弁部とがなす角度は送気装置接続口と貯留部接続口とのそれぞれの中心軸がなす角度より小さい、排痰補助装置である。
【0021】
本発明に係る排痰補助装置の切替弁部であれば、吸排気具接続口と貯留部接続口との接続と、吸排気具接続口と送気装置接続口との接続と、がより確実に切り替えることができる。
【0022】
発明に係る排痰補助装置本体は、排気する際に所定の陰圧以上になることを防止する本体安全弁を更に有する、排痰補助装置である。
【0023】
発明に係る排痰補助装置本体であれば、過剰な陰圧で排気をすることによる、不要な苦痛を患者に与える恐れがない。
【0024】
本発明に係る排痰補助装置の吸排気具接続口は、排痰した痰を分離するフィルター部材を更に有する、排痰補助装置である。
【0025】
吸排気具接続口に排痰した痰を分離するフィルター部材を有すると、排気により吸引した痰を排痰補助装置本体に流入させ、汚染させる恐れがない。
【0026】
発明に係る排痰補助装置の貯留部は、該貯留部内の圧力が所定の陰圧以上になることを防止する貯留部安全弁を更に有する、排痰補助装置である。
【0027】
発明に係る排痰補助装置本体であれば、排気をする際に過剰に吸排気することを防止し、患者に不要な苦痛を与えることはない。
【0028】
発明に係る排痰補助装置は、吸排気具を更に備える、排痰補助装置である。
【0029】
発明に係る排痰補助装置であれば、確実に送気及び排気を行うことができる。
【0030】
発明に係る排痰補助装置は、吸引器を更に備える、排痰補助装置である。
【0031】
発明に係る排痰補助装置であれば、確実に貯留部を所定の陰圧とすることができる。
【0032】
発明に係る排痰補助装置は、送気装置を更に備える、排痰補助装置である。
【0033】
発明に係る排痰補助装置であれば、患者に送気し肺を膨らませてから排気を行うことから、確実に送気し、排気を行うことができる。
【0034】
発明に係る排痰補助装置の送気装置は、バッグバルブマスクのバッグ部である、排痰補助装置である。
【0035】
発明に係る排痰補助装置であれば、簡便に送気することができ、高価な圧力発生装置を装備する必要がない。
【発明の効果】
【0036】
本発明に係る排痰補助装置であれば、吸引カテーテルを用いることによる喀痰吸引の際の患者の苦痛を緩和することが可能であり、また、送気及び排気の十分な流量と陽圧/陰圧を確保することの可能な圧力発生装置を装備することなく安価な排痰補助装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は、本発明に係る排痰補助装置の模式構成図である。
図2図2は、本発明に係る排痰補助装置の排痰補助装置本体の平面図である。
図3図3は、本発明に係る排痰補助装置の排痰補助装置本体の右側面図と、送気装置接続口と吸排気具接続口とが接続する状態の排痰補助装置本体の内部構造を示すA−A断面図である。
図4図4は、本発明に係る排痰補助装置の排痰補助装置本体の右側面図と、貯留部接続口と吸排気具接続口とが接続する状態の排痰補助装置本体の内部構造を示すA−A断面図である。
図5図5は、本発明の変形形態に係る排痰補助装置の排痰補助装置本体の平面図である
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の一実施形態を、説明する。
【0039】
図1に、本実施形態に係る排痰補助装置1の模式構成図を示す。排痰補助装置1は、患者が吸気及び排気するために装着する吸排気具6と、患者の肺から排出する空気を吸引する陰圧を保持する貯留部5と、患者への送気と患者からの排気を切り替える排痰補助装置本体4と、陽圧を発生して患者に送気する送気装置3と、陰圧を発生する吸引器2と、を備える。
【0040】
図2に、排痰補助装置本体(以下、単に「本体」ともういう。)4の平面図を示す。本体4は、患者が吸気及び排気するために装着する吸排気具6に連結する吸排気具接続口41と、患者に送気する送気装置3に連結する送気装置接続口43と、貯留部5に連結する貯留部接続口44と、送気と排気(吸引)を切り替える切替コック42と、排気を行う際に排気圧が所定の陰圧以上になることを防止する本体安全弁45と、を有する。
【0041】
吸排気具接続口41には、患者が排気した空気に含まれる痰及び唾液を分離するフィルター部材46(図3(B)及び図4(B)を参照)を有する。また、患者が排気した空気に含まれる痰及び唾液を確実に分離するために、貯留部接続口44にフィルター部材39(不図示)を更に有しても良い。
【0042】
一方、送気装置接続口43は、送気装置3より患者に送気された空気が送気装置3に逆流することを防止する逆止弁48(図3(B)及び図4(B)を参照)を有する。逆止弁48により、患者に送気した空気が肺から逆流することなく、肺の中を陽圧に保つことができる。
【0043】
なお、本体4は、分解して内部を洗浄することが可能である。
【0044】
図3の(A)に本体4の右側面図を、(B)に送気装置接続口43と吸排気具接続口41とが接続する状態の本体4の内部構造を表すA−A断面図を示す。切替コック42は、切替レバー61、切替弁部62、及び付勢部材65からなり、本体4の中心から送気装置接続口43と貯留部接続口44に寄った位置に配置されている。切替弁部62と付勢部材65は、排痰補助装置本体4に内蔵され、切替レバー61は、本体4の上面の外側に配置されている。また、切替レバー61は、連結部67を介して切替弁部62と連動するように取り付けられている。
【0045】
切替弁部62は、連結部67の先端に回動可能に取り付けられる回動部68と、送気装置接続口43を塞ぐ送気弁部63と、貯留部接続口44を塞ぐ吸引弁部64とを含む。回動部68は円筒形状を有し、その外縁から接線の一方向(およそ左方)に送気弁部63が延伸し、別の外縁からその一方向と反対の接線の方向(およそ下方)に吸引弁部64が延伸する。送気弁部63と吸引弁部64とがなす角度(本例では約70度)は、送気装置接続口43と貯留部接続口44とのそれぞれの中心軸がなす角度(本例では90度)より小さい。これにより、回動部68が回動して送気弁部63が送気装置接続口43を開放すると、送気装置接続口43が吸排気具接続口41に連通する。この時、吸引弁部64は、付勢部材65により付勢されて、貯留部接続口44を塞いでいる。なお、送気弁部63と吸引弁部64とがなす角度と、送気装置接続口43と貯留部接続口44とのそれぞれの中心軸がなす角度とは、送気装置接続口43と貯留部接続口44とが確実に開閉されるとともに、閉じたときに確実に密閉することが可能であり、また、送気装置接続口43と吸排気具接続口41との接続と貯留部接続口44と吸排気具接続口41との接続とが容易に切り替え可能であれば良く、本例に限定されない。
【0046】
また、吸引弁部64には、気密性を保持するためのシール部材66が配置されており、吸引弁部64が貯留部接続口44を密閉し貯留部5内の陰圧を保持している。吸引弁部64が付勢部材65により付勢されて貯留部接続口44を塞ぎ、シール部材66により吸引弁部64が貯留部接続口44を密閉することより、確実に貯留部5内の陰圧を保持するとともに、意図しない患者からの排気を防止している。
【0047】
一方、回動部68が逆方向に回動して吸引弁部64が貯留部接続口44を開放すると、貯留部接続口44が吸排気具接続口41に連通する。この時、送気弁部63は、送気装置接続口43を閉じている。このように、切替弁部62の送気弁部63と吸引弁部64は一体的に回動し、送気装置接続口43及び貯留部接続口44の一方が吸排気具接続口41に連通する。
【0048】
切替レバー61と切替弁部62とは連結部67で連結しており、切替コック42は、手動で切替レバー61を作動すると送気から排気に切り替わり、切替レバー61から手を離すと付勢部材65に付勢されて自動的に送気に切り替わる手動式切替コックである。
【0049】
切替レバー61は、切替弁部62との連結部67から2方向に上面視で約135度の角度を有して伸長している。また、切替レバー61の先端部69は、伸長方向に対して右側に屈曲している。なお、切替レバー61の伸長方向の角度並びに先端部69の屈曲は、切替レバー61に指を掛けて切替レバー61を回転させ易くすることを目的としており、手で容易に切替レバー61を作動することができれば良く、伸長方向の角度及び屈曲の方向等は、本例に限定されない。
【0050】
図4の(A)に本体4の右側面図を、(B)に貯留部接続口44と吸排気具接続口41とが接続する状態の本体4の内部構造を表すA−A断面図を示す。手動で切替レバー61を作動すると、切替コック42は回動し、送気弁部63は送気装置接続口43に押し当てられて送気装置接続口43を塞ぎ、吸引弁部64は貯留部接続口44から離間して貯留部接続口44を開放し、吸排気具接続口41は貯留部接続口44と接続する。なお、送気弁部63にも気密性を保持するためのシール部材66が配置されており、送気弁部63が送気装置接続口43を密閉し送気装置3から空気が流入することを防止している。
【0051】
一方、切替レバー61から手を離すと、付勢部材65により付勢されて切替弁部62は回動し、吸引弁部64は貯留部接続口44に押し当てられ、送気弁部63は送気装置接続口43から離間して送気装置接続口43を開放し、吸排気具接続口41が送気装置接続口43に接続する。
【0052】
なお、付勢部材65は、付勢して自動的に切替弁部62を作動させて貯留部接続口44を閉じることが可能な弾性体であれば良く、例えば、コイルバネ、渦巻バネ、板バネ等であっても良い。
【0053】
一方、切替コック42を作動させる構造は、手動で切替コック42を作動すると送気から排気に切り替わり、手を離すと付勢部材65に付勢されて自動的に排気から送気に切り替われば良く、切替レバー61を作動することにより切替弁部62を回動させて送気と排気が切り替わる構造に限定されない。例えば、切替コック42の摘み(不図示)を手で握ると切替弁部62が作動する構造、切替コック42のボタン(不図示)を手で押すと切替弁部62が作動する構造、等であっても良い。また、例えば、切替弁部62が左右方向又は上下方向に移動することにより送気装置接続口43及び貯留部接続口44を開閉する構造、切替弁部62が本体4の内外方向に移動することにより送気装置接続口43及び貯留部接続口44を開閉する構造であっても良い。
【0054】
本体安全弁45は、患者に咳嗽を誘発させて排痰するために排気する際に過大な陰圧が掛かると、患者に苦痛を与えることになるため、例えば、吸引圧が−6kPa以上の陰圧になった場合に開放され、外気を取り入れて−6kPa以下の陰圧を保持するように設定されている。なお、本体安全弁45が開放される陰圧の値は、患者が苦痛なく咳嗽を誘発することができる陰圧であれば良く、任意の陰圧に設定すれば良い。
【0055】
吸排気具6は、患者の口と鼻を覆う略三角錘状のマスク、又は、口腔内に挿入し先端の部分を舌の上に配置する管状のマウスピースであり、本体4の吸排気具接続口41に直接、又は、管状体(不図示)を介して連結される。なお、患者により、患者が容易に使用することができ(効果が高い)、また患者に使用することによる苦痛や不快感を与えることの少ない、マスク、マウスピース、又は、同時にマスクとマウスピースを選択すれば良い。
【0056】
送気装置3は、送気をすることができる袋状の手動式の人工呼吸器具であり、医療現場で一般的に使用されているバッグバルブマスクのバッグ部である。送気装置3は、本体4の送気装置接続口43に直接又は管状体(不図示)を介して連結される。なお、送気装置3には、所定の陽圧以上となった場合には、送気装置3内の空気を大気中に放出する安全弁(不図示)を有する。また、送気装置3は、手動で送気可能であれば良く、バッグバルブマスクに限定されない。
【0057】
貯留部5は、患者から空気を排気するための陰圧の空気を貯留する、上部の蓋が開閉可能な密閉容器であり、本体接続口51と、吸引器接続口52と、貯留部安全弁54と、を有する。貯留部5は、咳嗽を誘発することができるように一気に肺から空気を排気することを確実に行うことが可能な陰圧の空気を保持できる容量、例えば1000〜1400mLと、陰圧に耐え得る強度と、を有する。
【0058】
本体接続口51は、中空の蛇腹管(不図示)を介して本体4の貯留部接続口44に連通し、吸引器接続口52は、吸引器2に管状体(不図示)を介して連通している。また、貯留部安全弁54は、例えば、貯留部5内の圧力が―40kPa以上の陰圧になると、開放して外気を流入させ、咳嗽を誘発する為に排気する際に患者の肺から空気を過剰に排気して患者に苦痛を与えることを防止している。なお、陰圧の値は、蛇腹管の太さや長さにより、患者に過大な苦痛を与えることなく確実に咳嗽を誘発することが可能な排気圧が定まるため、適宜調整すれば良い。
【0059】
吸引器2は、陰圧を発生させ、痰の排出を補助することが可能であれば、内蔵されるポンプの種類や大きさは限定されず、既存のポータブル型吸引器でも良い。また、病院の病室に配置されている、吸引用の配管であっても良い。なお、本実施形態に係る排痰補助装置1には、陰圧を保持する貯留部5を備えることから、吸引器2が、大きな流量を得るための圧力発生装置であることを要しない。
【0060】
次に、本発明の実施形態の変形形態に係る排痰補助装置1について、説明する。
【0061】
図5に、本発明の実施形態の変形形態に係る排痰補助装置本体4の平面図を示す。なお、本発明の実施形態と実施形態の変形形態との異なる部分のみについて説明することとし、実施形態と同様な点については、説明を省略する。
【0062】
排痰補助装置1は、患者が吸気及び排気するために装着する吸排気具6と、患者の肺から排出する空気を吸引する陰圧を保持する貯留部5と、患者への送気と患者からの排気を切り替える排痰補助装置本体4と、陽圧を発生して患者に送気する送気装置3と、陰圧を発生する吸引器2と、本体4の貯留部接続口44と貯留部5の本体接続口51の間には、直接又は中空の蛇腹管(不図示)を介して接続された流量計47と、を備える。
【0063】
なお、流量計47を用いて患者から排気された空気の流量を計測し、患者に苦痛を与えることが無い又は少ない、排気により咳嗽を誘発し排痰可能な排気の条件を設定できれば良く、流量計47が接続される位置は、貯留部接続口44と本体接続口51の間に限られず、吸排気具接続口41と吸排気具6の間でも良い。
【0064】
また、患者に苦痛を与えることが無い又は少ない、排気により咳嗽を誘発し排痰可能な排気の条件を設定できれば良く、患者から排気された空気の流量を流量計47を用いて計測することに限られず、排気された空気の差圧をマノメーターを用いて計測しても良い。
【0065】
なお、図2の切替レバー6は、吸排気具接続口41と送気装置接続口43とが接続した状体に位置しており、図5の切替レバー6は、吸排気具接続口41と貯留部接続口44とが接続した状態に位置している。
【0066】
次に、本実施形態に係る排痰補助装置1の使用方法について説明する。
【0067】
先ず、本体4の吸排気具接続口41に吸排気具6を、送気装置接続口43に送気装置3を、貯留部接続口44に貯留部5を介して吸引器2を接続し、吸引器2の電源を入れる。そして、吸排気具6を患者の手又は胸等に密着させ、送気と排気のタイミングを確認してもらう。その上で、患者の口と鼻をマスクで覆い、送気装置3を操作して患者の肺に所定の時間、空気を送気する。このとき、胸の動きと膨らみを観察し、十分に空気を吸い込んだこと並びに過剰に空気を送り込んでいないことに注意する。次に、切替レバー61を手で操作し、貯留部接続口44を開放し、吸排気具6と貯留部5とを連通させ、一気に貯留部5の陰圧を掛けることにより肺から排気し、咳嗽を誘発させ、痰を動かし、痰を排出する。貯留部5に吸引された空気は、吸引器2を介して大気中に放出される。所定の時間、排気を行った後、切替レバー61から手を離すと、自動的に付勢部材65により付勢されて切替弁部62が回動し、貯留部接続口44は閉じられ、送気装置接続口43が開放され、排気が停止する。一方、排出された痰は、口から容器又はティッシュペーパー等に吐き出す。この送気、排気による咳嗽の誘発及び痰の排出の操作を所定の回数繰り返し、十分に排痰を行った上で、痰の排出を終了する。
【0068】
なお、肺から排気を行う際には、流量計47を用いて排気の流量を測定し、患者に適した、咳嗽を誘発させ、痰を動かし、痰を排出する条件を設定することに留意する。
【0069】
また、貯留部5に痰が流入した場合には、貯留部5を吸引器2と本体4から外し、貯留部5の蓋を開けて、溜まった痰を廃棄することができる。なお、吸排気具6、本体4、貯留部5及び連結する蛇腹管等は、衛生面から定期的に洗浄することが好ましい。
【0070】
一方、患者自身が自分で肺を膨らませて空気を十分に吸引できる場合には、送気装置3を用いることなく患者自身が深呼吸して肺を膨らませた上で、切替レバー61を操作し、一気に貯留部5の陰圧を掛け排気することにより咳嗽を誘発して排痰を行っても良い。
【0071】
また、本発明に係る排痰補助装置1は、送気と排気を行うことが可能であることから、呼吸運動の補助装置としても使用可能であり、患者の呼吸運動訓練装置としても使用可能である。
【0072】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0073】
1 排痰補助装置
2 吸引器
3 送気装置
4 排痰補助装置本体
5 貯留部
6 吸排気具
7 患者
41 吸排気具接続口
42 切替コック
43 送気装置接続口
44 貯留部接続口
45 本体安全弁
46 フィルター部材
47 流量計
48 逆止弁
51 本体接続口
52 吸引器接続口
54 貯留部安全弁
61 切替レバー
62 切替弁部
63 送気弁部
64 吸引弁部
65 付勢部材
66 シール部材
67 連結部
68 回動部
69 先端部

図1
図2
図3
図4
図5