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特開2021-181062有機性廃水の処理方法及び有機性廃水の処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-181062(P2021-181062A)
(43)【公開日】2021年11月25日
(54)【発明の名称】有機性廃水の処理方法及び有機性廃水の処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/12 20060101AFI20211029BHJP
   C02F 11/02 20060101ALI20211029BHJP
【FI】
   C02F3/12 FZAB
   C02F3/12 H
   C02F3/12 S
   C02F11/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-87764(P2020-87764)
(22)【出願日】2020年5月19日
(71)【出願人】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅仁
(72)【発明者】
【氏名】葛 甬生
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 利宏
【テーマコード(参考)】
4D028
4D059
【Fターム(参考)】
4D028AC03
4D028BB06
4D028BC13
4D028BC17
4D028BC18
4D028BC28
4D028BD11
4D028BD16
4D028BD17
4D028CA06
4D028CA09
4D028CA11
4D059AA05
4D059BA01
4D059CA22
4D059DA01
4D059EA05
4D059EA15
4D059EA20
4D059EB05
4D059EB15
4D059EB20
(57)【要約】
【課題】常時安定した処理水質を維持することができ、余剰汚泥の発生量の低減が可能な有機性廃水の処理方法及び有機性廃水の処理装置を提供する。
【解決手段】有機物を含む原水を第1好気性処理槽1a内で好気的に処理して第1好気性処理液を得る処理と、第1好気性処理液を第2好気性処理槽1b内で好気的に処理して第2好気性処理液を得る処理と、第2好気性処理液を固液分離して処理水と分離汚泥とを得る処理と、分離汚泥の一部を第1返送汚泥として引き抜いて第1好気性処理槽へ原水流入水量の5〜30流量%となるように返送する第1返送処理と、第1返送汚泥を引き抜いた後の分離汚泥の少なくとも一部を第2返送汚泥とし、第2返送汚泥を第2好気性処理槽へ返送する第2返送処理とを有する有機性廃水の処理方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物を含む原水を第1好気性処理槽内で好気的に処理して第1好気性処理液を得る処理と、
第1好気性処理液を第2好気性処理槽内で好気的に処理して第2好気性処理液を得る処理と、
前記第2好気性処理液を固液分離して処理水と分離汚泥とを得る処理と、
前記分離汚泥の一部を第1返送汚泥として引き抜いて前記第1好気性処理槽へ原水流入水量の5〜30流量%となるように返送する第1返送処理と、
前記第1返送汚泥を引き抜いた後の前記分離汚泥の少なくとも一部を第2返送汚泥とし、前記第2返送汚泥を前記第2好気性処理槽へ返送する第2返送処理と
を有することを特徴とする有機性廃水の処理方法。
【請求項2】
前記第2好気性処理槽内の浮遊汚泥を引き抜いて前記第1好気性処理槽へ返送する第3返送処理を更に有することを特徴とする請求項1に記載の有機性廃水の処理方法。
【請求項3】
前記第1好気性処理槽のBOD汚泥負荷が2〜10kg/kg/dとなるように前記第1返送処理を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の有機性廃水の処理方法。
【請求項4】
前記第1好気性処理槽の総アルカリ度が100〜500mg/Lとなるようにアルカリを添加することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機性廃水の処理方法。
【請求項5】
前記第1好気性処理槽の溶存酸素濃度が2〜7mg/Lとなるように曝気風量を調整することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機性廃水の処理方法。
【請求項6】
有機物を含む原水を好気的に処理して第1好気性処理液を得る第1好気性処理槽と、
前記第1好気性処理液を好気的に処理して第2好気性処理液を得る第2好気性処理槽と、
前記第2好気性処理液を固液分離して処理水と分離汚泥とを得る固液分離槽と、
前記分離汚泥の一部を第1返送汚泥として引き抜いて前記第1好気性処理槽へ原水流入水量の5〜30流量%となるように返送する第1返送手段と、
前記第1返送汚泥を引き抜いた後の前記分離汚泥の少なくとも一部を第2返送汚泥とし、前記第2返送汚泥を前記第2好気性処理槽へ返送する第2返送手段と
を備えることを特徴とする有機性廃水の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性廃水の処理方法及び有機性廃水の処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生物化学的酸素要求量(BOD)の高い有機性廃水処理としては一般的に活性汚泥処理が用いられる場合が多い。活性汚泥処理は維持管理が容易でありランニングコストが低い。活性汚泥処理は流入原水中のBODの安定除去が可能であり、常時良好な処理水質が得られる等の利点もある。そのため、活性汚泥処理は生活廃水、工場廃水等の種々の有機性廃水処理に多く用いられている。
【0003】
しかしながら、活性汚泥処理ではBOD除去に伴う余剰汚泥が発生することが知られている。特にBOD濃度の高い廃水は余剰汚泥の発生量も多くなるため、余剰汚泥の処分に伴うコストの処理全体に占める比率が高くなってきており、余剰汚泥の削減が大きな課題となってきている。
【0004】
余剰汚泥の削減方法としては、高負荷及び低負荷を組み合わせた多段処理を行う方法がある。例えば、特開2010−069482号公報及び特開2005−211879号公報には、前段の高負荷槽となる第1生物処理槽で分散菌を発生させ、後段の低負荷槽となる第2生物処理槽で原生動物や後生動物の分散菌の捕食を利用して汚泥減容を行う食物連鎖による汚泥減容化方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−069482号公報
【特許文献2】特開2005−211879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2に記載される生物処理方法には、処理効率向上と余剰汚泥の発生量の低減を図るために第一生物処理槽と第二生物処理槽のBOD負荷及びpHを所定の範囲内に制御する必要があることが記載されている。この点、原水の性状が比較的安定している場合には、各生物処理槽のBOD負荷及びpHを制御することは比較的容易である。
【0007】
しかしながら、何らかの原因により原水に大きな濃度変動が生じると、生物処理槽のBOD負荷及びpHを制御することが難しくなり、第一生物処理槽での分散菌の発生が不安定となる場合がある。その結果、分散菌捕食による食物連鎖の汚泥減容化の効果が十分に得られなくなる。また、原水の性状変動により、第一生物処理槽で分散菌が発生しすぎて、第二生物処理槽に分散菌が残留すると、処理水質の悪化を招くリスクがある。特許文献1及び2には、第一及び第二生物処理槽へ汚泥を返送することについても一応記載があるが、汚泥の返送比率及びいずれの生物処理槽に汚泥を返送するかについては、適宜設定できるとの記載があるだけで、具体的な提案はなく、原水の性状変動を考慮した設計もなされていない。
【0008】
上記課題を鑑み、本発明は、常時安定した処理水質を維持することができ、余剰汚泥の発生量の低減が可能な有機性廃水の処理方法及び有機性廃水の処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明者らが鋭意検討した結果、好気性処理を多段で行うとともに、第1好気性処理槽へ返送する返送汚泥量を適正化することが有効であるとの知見を得た。
【0010】
以上の知見を基礎として完成した本発明の実施の形態は一側面において、有機物を含む原水を第1好気性処理槽内で好気的に処理して第1好気性処理液を得る処理と、第1好気性処理液を第2好気性処理槽内で好気的に処理して第2好気性処理液を得る処理と、第2好気性処理液を固液分離して処理水と分離汚泥とを得る処理と、分離汚泥の一部を第1返送汚泥として引き抜いて第1好気性処理槽へ原水流入水量の5〜30流量%となるように返送する第1返送処理と、第1返送汚泥を引き抜いた後の分離汚泥の少なくとも一部を第2返送汚泥とし、第2返送汚泥を第2好気性処理槽へ返送する第2返送処理とを有する有機性廃水の処理方法である。
【0011】
本発明の実施の形態に係る有機性廃水の処理方法は一実施態様において、第2好気性処理槽内の浮遊汚泥を引き抜いて第1好気性処理槽へ返送する第3返送処理を更に有する。
【0012】
本発明の実施の形態に係る有機性廃水の処理方法は別の一実施態様において、第1好気性処理槽のBOD汚泥負荷が2〜10kg/kg/dとなるように第1返送処理を行う。
【0013】
本発明の実施の形態に係る有機性廃水の処理方法は更に別の一実施態様において、第1好気性処理槽の総アルカリ度が100〜500mg/Lとなるようにアルカリを添加する。
【0014】
本発明の実施の形態に係る有機性廃水の処理方法は更に別の一実施態様において、第1好気性処理槽の溶存酸素濃度が2〜7mg/Lとなるように曝気風量を調整する。
【0015】
本発明の実施の形態は別の一側面において、有機物を含む原水を好気的に処理して第1好気性処理液を得る第1好気性処理槽と、第1好気性処理液を好気的に処理して第2好気性処理液を得る第2好気性処理槽と、第2好気性処理液を固液分離して処理水と分離汚泥とを得る固液分離槽と、分離汚泥の一部を第1返送汚泥として引き抜いて第1好気性処理槽へ原水流入水量の5〜30流量%となるように返送する第1返送手段と、第1返送汚泥を引き抜いた後の分離汚泥の少なくとも一部を第2返送汚泥とし、第2返送汚泥を第2好気性処理槽へ返送する第2返送手段とを備える有機性廃水の処理装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、常時安定した処理水質を維持することができ、余剰汚泥の発生量の低減が可能な有機性廃水の処理方法及び有機性廃水の処理装置が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る廃水処理装置の例を表す概略図である。
図2】本発明の第2の実施の形態に係る廃水処理装置の例を表す概略図である。
図3】第1の実施の形態の固液分離槽をMBR槽とした廃水処理装置の例を表す概略図である。
図4】第1の実施の形態の第2の固液分離槽をMBR槽とした廃水処理装置の例を表す概略図である。
図5】従来の廃水処理装置の例を表す概略図である。
図6】従来の廃水処理装置の別の例を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は構成部品の構造、配置等を下記のものに特定するものではない。
【0019】
本発明の第1の実施の形態に係る有機性廃水の処理装置は、図1に示すように、有機物を含む原水を好気的に処理して第1好気性処理液を得る第1好気性処理槽1aと、第1好気性処理液を好気的に処理して第2好気性処理液を得る第2好気性処理槽1bと、第2好気性処理液を固液分離して処理水と分離汚泥とを得る固液分離槽2と、分離汚泥の一部を第1返送汚泥として引き抜いて第1好気性処理槽1aへ原水流入水量の5〜30流量%となるように返送する第1返送手段3と、第1返送汚泥を引き抜いた後の分離汚泥の少なくとも一部を第2返送汚泥とし、第2返送汚泥を第2好気性処理槽1bへ返送する第2返送手段4とを備える。
【0020】
原水としては、有機物を含有する廃水であれば特に限定されず、例えば、生活廃水、下水、食品工場、化学工場、パルプ工場などの有機物を含有する種々の有機性廃水が用いられる。以下に限定されないが、無機性浮遊性物質(SS)が少なく(例えば、SSが0〜100mg/L程度)易分解性有機物濃度が高い(例えば、BOD値が1000〜2000mg/L程度)食品・飲料系廃水や生活系廃水等のような原水が特に好適に処理される。
【0021】
第1好気性処理槽1aおよび第2好気性処理槽1bとしては、好気性処理槽1内に流入する原水中の有機物(BOD)を分解可能な細菌、細菌を捕食する微生物等を含む活性汚泥が内部に収容され、曝気により原水を好適に処理して好気性処理液を得る装置であれば特に限定されないが、例えば、曝気槽や流動担体槽が利用できる。
【0022】
第1好気性処理槽1aで処理された第1好気性処理液は、第2好気性処理槽1bへ導入され、更に処理される。第2好気性処理槽1bで処理された第2好気性処理液は、固液分離槽2へ導入され、固液分離槽2内において、処理水と分離汚泥とに分離される。分離汚泥の一部は、第1返送汚泥として、配管等で構成された第1返送手段3を介して第1好気性処理槽1aへ返送する。第2返送手段4は、分離汚泥の少なくとも一部を第2返送汚泥として、配管等で構成された第2返送手段4を介して第2好気性処理槽1bへ返送する。分離汚泥の残部は余剰汚泥として系外へ排出される。
【0023】
なお、原水を第1好気性処理槽1aへ流入させる配管には流量計(不図示)が設けられていてもよく、第1返送汚泥及び第2返送汚泥の汚泥流量を、原水流入流量に対して制御するための制御手段が設けられていてもよい。また、第1好気性処理槽1aに溶存酸素濃度(DO)を測定するためのDO計が設けられ、第1好気性処理槽1aの曝気風量によりDOを制御する制御手段が設けられてもよい。固液分離槽2としては、例えば、沈殿池及びMBR(膜分離活性汚泥)槽が利用できる。
【0024】
第1好気性処理槽1aでは、微小動物を増殖させるのに重要なBOD−SS負荷、DO、pHの諸条件を適切に維持することが極めて重要である。特に、原水の濃度、流量等の変動を考慮した有機性廃水の処理を行うためには、第1好気性処理槽1aとの処理条件との関係において一定の条件を満たすように第1返送手段3の処理条件を調節することが重要である。
【0025】
第1好気性処理槽1aの役割としては、第1好気性処理槽1aで分散性細菌等を増殖させ、BODを除去したのちに、第2好気性処理槽1bにおいて生息する微小動物によって汚泥を捕食させて汚泥減容化を図ることにある。その際、第2好気性処理槽1bで増殖させた微小動物を、有機物分解除去の主たる反応槽である第1好気性処理槽1aに送り込んで、送り込んだ先の第1好気性処理槽1aのBOD―SS負荷を一定の条件で維持させることで、常時安定した処理水質を維持でき、かつ余剰汚泥の発生量を低減できる。
【0026】
第1の実施形態では、第1好気性処理槽1aへの原水流入水量に対する第1返送汚泥流量の流量比(第1返送汚泥流量/原水流入水量)は、5〜30流量%となるように調整すし、10〜30流量%、更には15〜30流量%となるように調整することがより効果的である。第1返送汚泥流量の流量比が多すぎると、原水の性状変動により第1好気性処理槽1aのBOS−SS負荷が急減して分散性細菌の優先的発生が抑制され、汚泥発生量が増加する場合がある。第1返送汚泥流量の流量比が少なすぎると、第1好気性処理槽1aでのBOD除去性能が低下し、第1好気性処理液の水質が低下するため、第2好気性処理槽1bでの処理が安定的に進まない場合がある。
【0027】
第1好気性処理槽1aのBOD−SS負荷は2〜10kg/kg/dとなるように調整することが好ましい。第1好気性処理槽1aおよび第2好気性処理槽1bを含む好気性処理槽1全体でのBOD−SS負荷は0.1〜0.5kg/kg/dであることが好ましく、より好ましくは0.15〜0.4kg/kg/d、更に好ましくは0.2〜0.3kg/kg/dとなるように制御することが効果的である。
【0028】
第1好気性処理槽1aの総アルカリ度は、100〜500mg/Lとなるようにアルカリ剤を添加することが好ましく、より好ましくは200〜400mg/L、更には200〜300mg/Lとすることが効果的である。第1好気性処理槽1aのpHに変動が生じた場合、槽内微生物の菌叢が変化し、処理水質の不安定化および汚泥減容効果の低下を招く要因となる。すなわち、第1好気性処理槽1aにおけるpH変動が生じないように、pH緩衝作用を維持することが重要である。第1好気性処理槽1aのpHは6.0〜8.5であることが好ましく、より好ましくは7.0〜8.0である。第1好気性処理槽1aの浮遊物質(MLSS)濃度は1000〜4000mg/Lとすることができ、より典型的には1000〜2000mg/Lとすることができる。
【0029】
第1好気性処理槽1aの溶存酸素濃度(DO)は、2〜7mg/Lとなるように曝気風量を調整することが望ましく、更に望ましくは4〜6mg/Lとなるように調整することがより効果的である。第2好気性処理槽1bのDOは1〜7mg/Lとなるように調整することが好ましく、更に好ましくは2〜4mg/L程度に調整すると良い。DOは好気性処理槽内の菌叢に影響を与えており、DO制御により余剰汚泥削減に効果的な菌叢の維持および安定した処理水質の維持が可能となる。
【0030】
第2好気性処理槽1bは活性汚泥方式を採用することが可能であるが、微生物担体を投入した流動担体方式としても同様な汚泥減容効果が得られる。第2好気性処理槽1bとしては、MBR槽を利用することもできる。MBR槽を用いることにより沈殿池が不要となり、装置のコンパクト化が可能となる。さらに第2好気性処理槽1bのMLSSが汚泥の沈降性に影響を受けにくく、所定濃度に安定して維持できるため、第1好気性処理槽1aへの返送汚泥量を所定量に設定すれば、第1好気性処理槽1aのBOD−SS負荷を安定して設定できる。
【0031】
微生物担体として、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリルアミド、光硬化性樹脂等の合成高分子、カラギーナン、アルギン酸ソーダ等の高分子を用いたゲル担体、ポリエチレンやポリウレタン、ポリプロピレン等からなる流動担体が挙げられる。担体の形状としては球形、四角形、円筒形の何れも使用可能であり、その有効径は第2好気性処理槽1bの出口に設けられるスクリーンより安定して分離できる径が好ましい。
【0032】
第2好気性処理槽1bのBOD−SS負荷は、第1好気性処理槽1aおよび第2好気性処理槽1bを含む好気性処理槽1全体でのBOD−SS負荷が0.1〜0.5kg/kg/dとなるように調整される、例えば0.2〜0.4kg/kg/d、好ましくは0.2〜0.3kg/kg/dとすることが好ましい。第2好気性処理槽1bの水理学的滞留時間(HRT)は8〜24時間、より好ましくは12〜24時間、更には22〜24時間とすることができ、MLSSが3000〜5000mg/L、更には4000〜5000mg/Lとするように処理することが好ましい。
【0033】
第2好気性処理槽1bへの原水流入水量に対する第2返送汚泥流量の流量比(第2返送汚泥流量/原水流入水量)は、80〜100流量%、より好ましくは、85〜90流量%となるように調整することがより好ましい。これにより、BOD−SS負荷の維持、また活性汚泥を捕食する微小動物の維持が可能という効果が得られる。
【0034】
なお、固液分離槽2として図3に示すような膜分離槽(MBR槽)を使用することもできる。固液分離槽2として膜分離槽を用いることにより、沈殿池使用時と比較して分離汚泥のMLSS濃度を高く設定することが可能である。その際、第1好気性処理槽1aへの原水流入水量に対する第1返送汚泥流量の流量比(第1返送汚泥流量/原水流入水量)は、5〜15流量%となるように調整することがより好ましい。また、この場合、第2好気性処理槽1bへの原水流入水量に対する第2返送汚泥流量の流量比(第2返送汚泥流量/原水流入水量)は、60〜70流量%となるように調整する。
【0035】
(処理方法)
第1の実施の形態に係る有機性廃水の処理方法は、まず、原水を第1好気性処理槽1a内へ供給し、第1好気性処理槽1aにおいて原水を好気的に処理する。第1好気性処理槽1aでは、以下に限定されないが、例えば、HRTが5時間、DOが2〜7mg/L、総アルカリ度が200mg/L、MLSSが1000mg/Lとして原水を好気的に処理して第1好気性処理液を得る。
【0036】
続いて第1好気性処理槽1aで得られた第1好気性処理液を第2好気性処理槽1b内へ供給し、第2好気性処理槽1bにおいて第1好気性処理液を更に好気的に処理する。第2好気性処理槽1bでは、以下に限定されないが、例えば、HRTが22時間、DOが1〜7mg/L、MLSSが4000mg/Lとして処理液を好気的に処理して第2好気性処理液を得る。第2好気性処理液は、固液分離槽2により処理水と分離汚泥とに分離する。
【0037】
固液分離槽2で得られた微小動物を含む分離汚泥の一部は、第1返送汚泥として第1好気性処理槽1aへ返送する。第1好気性処理槽1aには、原水流入水量に対して5〜30流量%となる第1返送汚泥を導入する。微小動物を含む分離汚泥の残りの少なくとも一部はさらに第2返送汚泥として第2好気性処理槽1bへ返送する。
【0038】
本発明の第1の実施の形態に係る有機性廃水の処理装置及び処理方法によれば、原水流入水量に対して5〜30流量%となる第1返送汚泥を第1好気性処理槽1aに導入することにより、BODを除去する活性汚泥と活性汚泥を捕食する微小動物を一定量、かつ、それぞれが活性の高い状態で第1好気性処理槽1a内に維持することができる。
【0039】
BODの除去量によって余剰汚泥の発生量は多少変動する。本発明の第1の実施の形態に係る有機性廃水の処理装置及び処理方法によれば、活性汚泥を捕食する微小動物も一定量、高活性で第1好気性処理槽1a内に維持されているため、原水の水量・濃度変動によって余剰汚泥の発生量が変動しても、常時安定した汚泥減容が可能となる。その結果、原水の性状変動が生じても第1好気性処理槽1a内における処理を安定化することができ、常時安定した処理水質を維持しながら余剰汚泥の発生量の低減が可能となる。
【0040】
返送流量比が過少である場合、第1好気性処理槽1aにおいて活性の高い返送汚泥の滞留量が減少することになる。高活性の返送汚泥はBOD除去の初期過程において駆動力として働き、BOD除去を加速させることから、返送汚泥の滞留量が過少であることでBOD除去が速やかに進行せず、処理水質が悪化する。また、原水の水量・濃度変動によってBOD負荷が変動した際に対応できず、好気性処理が不安定となる。一方、返送流量比が過大である場合は、第1好気性処理槽1aにおけるBOD−SS負荷が小さくなり、分散性細菌の優先的発生が抑制され、食物連鎖のバランスが崩れ、余剰汚泥発生量の増加につながる。
【0041】
そのような場合においても、第1の実施の形態に係る有機性廃水の処理装置及び処理方法によれば、分離汚泥の一部を第1返送汚泥として引き抜いて第1好気性処理槽1aへ原水流入水量の5〜30流量%となるように返送する第1返送処理を行うことにより、原水の性状変動に関わらず、常時安定した処理水質を維持することができ、且つ余剰汚泥の発生量の低減が可能となる。なお、第1好気性処理槽1aの容積は、BOD−SS負荷で設定されるが、第1の実施の形態に係る有機性廃水の処理装置および処理方法によれば、第1好気性処理槽1aの容積が、第2好気性処理槽1bの容積の約1/3〜1/10程度で済むため、小型の第1好気性処理槽1aを配置するだけで、装置全体の大型化を抑制しながら廃水処理を安定して効率良く処理することができる。
【0042】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態に係る有機性廃水の処理装置は、図2に示すように、第2好気性処理槽1b内の浮遊汚泥を引き抜いて第1好気性処理槽1aへ返送する第3返送手段5を更に有する点が、第1の実施の形態に係る有機性廃水の処理装置と異なる。
【0043】
第1好気性処理槽1aへの原水流入水量に対する第3返送汚泥流量の流量比(第3返送汚泥流量/原水流入水量)を、1〜10流量%、更には5〜10流量%となるように調整することが好ましい。他は、第1の実施の形態に係る有機性廃水の処理装置と実質的に同様であるので説明を省略する。
【0044】
第3返送汚泥は、第2好気性処理槽1bの浮遊汚泥であるため、固液分離槽2からの分離汚泥と比較してDOが高いことが特徴として挙げられる。そのため、第2の実施の形態に係る有機性廃水の処理装置及びこれを用いた処理方法によれば、第3返送手段5を介して、第2好気性処理槽1b内の浮遊汚泥を引き抜いて第1好気性処理槽1aへ返送する第3返送処理を行うことにより、第3返送汚泥を第1好気性処理槽1aへ返送した際に第1好気性処理槽1a内のDOをより適性な状態に維持することが可能となり、安定した処理水質の維持および余剰汚泥削減に効果的な菌叢の維持が行える。
【0045】
本発明は第1及び第2の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態が導出でき、実施段階においては、その要旨を逸脱しない範囲において変形し具体化し得る。
【実施例】
【0046】
以下に本発明の実施例を比較例と共に示すが、これらの実施例は本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。
【0047】
(実施例1)
有機物(BOD)濃度が1000mg/Lの有機性廃水を原水とし、図1に示す有機性廃水の処理装置を使用して、表1に示す基本処理条件で廃水処理を行った。実施例1では、原水の供給流量を2.5L/dとし、第1好気性処理槽においてはBOD−SS負荷を5kg/kg/d、MLSS濃度1000mg/L、DO2〜7mg/Lとなる条件で好気的に処理を行った後、固液分離槽にて固液分離を行い、得られた分離汚泥の一部を第1返送汚泥として0.4L/dで第1好気性処理槽へ返送した。第2好気性処理槽においてはMLSS濃度4000mg/L、DO2〜7mg/Lとなる条件で好気的に処理を行った後、固液分離槽にて固液分離を行い、得られた分離汚泥の一部を第2返送汚泥として2.2L/dで第2好気性処理槽へ返送した。この時、好気性処理槽全槽におけるBOD−SS負荷は0.3kg/kg/dであった。第1好気性処理槽における総アルカリ度は200mg/Lとなるようにアルカリを添加した。
【0048】
実施例1では、表1に示す様に、第1好気性処理槽への第1返送汚泥流量が原水流入水量に対する流量比として15流量%となるように調整し、BOD−SS負荷を5kg/kg/dとした。
【0049】
比較例1は第1好気性処理槽を設置しない図5の従来の標準活性汚泥処理フローに基づいて、容積が2.5Lの好気性処理槽を使用し、表1及び表2に示す条件で廃水処理を行った。比較例1では原水流入水量に対する好気性処理槽への返送汚泥流量比を100流量%(2.5L/d)とした。なお、各項目の分析は、下水試験方法(日本下水道協会2012年度版)に準拠して行った。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
比較例1は好気性処理槽が1槽のみの従来の活性汚泥処理方式で有機性廃水の処理を行った場合の汚泥発生量および処理水中の溶解性BODの分析結果を示している。一方、実施例1は原水流入水量に対する第1返送汚泥流量比が15流量%、第1好気性処理槽のBOD−SS負荷が5kg/kg/d、第1好気性処理槽の総アルカリ度が200mg/L、第1好気性処理槽のDOが2〜7mg/Lの好適な範囲に調整された場合の汚泥発生量および処理水中の溶解性BODの分析の結果を示している。実施例1では、比較例1と同程度の安定した処理水質が得られ、さらに比較例1での汚泥発生量と比較して汚泥発生量は40%削減され、良好な汚泥減容効果が得られた。
【0053】
比較例2は、図1に示す処理装置において、原水流入水量に対する第1返送汚泥流量比を2流量%とし、原水流入水量に対する第2返送汚泥量を2.2L/dとした場合の汚泥発生量および処理水中の溶解性BODの結果を示している。比較例2では第1好気性処理槽へ返送される汚泥が少なく、第1好気性処理槽のBOD−SS負荷が一時的に急増し、汚泥発生量が増加する。また、活性の高い分離汚泥の返送が少ないため第1好気性処理槽でのBOD除去性能が低下し、処理水質が悪化した。
【0054】
比較例3は、図1に示す処理装置において、原水流入水量に対する第1返送汚泥流量比を50流量%とし、原水流入水量に対する第2返送汚泥量を2.2L/dとした場合の汚泥発生量および処理水中の溶解性BODの結果を示している。比較例3では第1好気性処理槽へ返送される汚泥が多いため、第1好気性処理槽のBOD−SS負荷が一時的に低くなり、分散性細菌の優先的増殖が抑制される。これにより後段の第2好気性処理槽で食物連鎖がうまく進行せず、汚泥発生量が増加し、標準活性汚泥法と同等となり、削減効果は見られない。
【0055】
このように、本開示によれば、有機性廃水を好気的に処理する第1好気性処理槽において、BOD−SS負荷5kg/kg/d、DO2〜7mg/L、総アルカリ度100〜500mg/Lの条件で曝気処理を行うことにより、第1好気性処理槽において分散性細菌等を優勢的に増殖させ、第2好気性処理槽において微小動物によってこれらを捕食させることで余剰汚泥の発生が削減できることが分かる。更に、図6に示すように、第2好気性処理槽から固液分離した分離汚泥を、余剰汚泥を第2好気性処理槽へ返送するだけでなく、図1に示すように、原水流入水量の5〜30流量%となる流量で第1好気性処理槽に導入することで、第1好気性処理槽内の活性汚泥保持量がバランスよく維持されることから、第1好気性処理槽において更なるBOD除去および活性汚泥の捕食が進行し、余剰汚泥の発生をより抑制することが可能となる。
【0056】
(実施例2)
実施例2では、実施例1と同様の有機性廃水を原水とし、図2に示す有機性廃水の処理装置を使用して、原水流入水量に対する第3返送汚泥流量比が5流量%となるように、第1好気性処理槽へ第3返送汚泥を導入し、表3に示す条件になるように調整した。比較例4では、第1好気性処理槽を設置しない図5の従来の標準活性汚泥処理フローに基づいて、表1及び表2に示す条件で廃水処理を行った。
【0057】
【表3】
【0058】
実施例2は原水流入水量に対する第1返送汚泥流量比が10流量%、原水流入水量に対する第2返送汚泥流量比が70流量%、原水流入水量に対する第3返送汚泥流量比が5流量%、第1好気性処理槽のBOD−SS負荷が5kg/kg/d、第1好気性処理槽の総アルカリ度が200mg/L、第1好気性処理槽のDOが2〜7mg/Lの好適な範囲に調整された場合の汚泥発生量および処理水中の溶解性BODの分析の結果を示している。実施例2では、比較例4と比較してより安定した処理水質が得られ、さらに比較例2での汚泥発生量と比較して汚泥発生量は50%程度削減されることが分かる。
【0059】
このように、第2実施例によれば、有機性廃水を好気的に処理する第1好気性処理槽において、BOD−SS負荷2〜10kg/kg/d、DO2〜7mg/L、総アルカリ度100〜500mg/Lの条件で曝気処理を行うことにより、第1好気性処理槽において分散性細菌等を優勢的に増殖させ、第2好気性処理槽において微小動物によってこれらを捕食させることで余剰汚泥の発生が削減できることが分かる。更に第2好気性処理槽から固液分離した分離汚泥を原水流入水量の5〜30流量%となる流量で第1好気性処理槽に導入することで、第1好気性処理槽内の活性汚泥保持量がバランスよく維持されることから、第1好気性処理槽において更なるBOD除去および活性汚泥の捕食が進行し、余剰汚泥の発生をより抑制することが可能となる。
【0060】
加えて、第3返送汚泥は第2好気性処理槽の浮遊汚泥であるため、固液分離槽からの分離汚泥と比較してDOが高いことが特徴として挙げられる。そのため、第3返送汚泥を第1好気性処理槽へ返送した際に第1好気性処理槽内のDOをより適性な状態に維持することが可能となり、安定した処理水質の維持および余剰汚泥削減に効果的な菌叢の維持が可能となる。
【符号の説明】
【0061】
1…好気性処理槽
1a…第1好気性処理槽
1b…第2好気性処理槽
2…固液分離槽
3…第1返送手段
4…第2返送手段
5…第3返送手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6