(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-181072(P2021-181072A)
(43)【公開日】2021年11月25日
(54)【発明の名称】除湿部材、除湿ローター、および、除湿部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/28 20060101AFI20211029BHJP
B01D 53/26 20060101ALI20211029BHJP
B01J 20/10 20060101ALI20211029BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20211029BHJP
D21H 17/68 20060101ALI20211029BHJP
C01B 33/154 20060101ALI20211029BHJP
【FI】
B01D53/28
B01D53/26 220
B01D53/26 230
B01J20/10 D
B01J20/30
D21H17/68
C01B33/154
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2020-88096(P2020-88096)
(22)【出願日】2020年5月20日
(11)【特許番号】特許第6918183号(P6918183)
(45)【特許公報発行日】2021年8月11日
(71)【出願人】
【識別番号】000110804
【氏名又は名称】ニチアス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】山名 和樹
(72)【発明者】
【氏名】神原 正彰
(72)【発明者】
【氏名】冨塚 悠馬
【テーマコード(参考)】
4D052
4G066
4G072
4L055
【Fターム(参考)】
4D052AA08
4D052CB01
4D052CE00
4D052HA01
4D052HA32
4D052HB06
4D052HB07
4G066AA22B
4G066AA47D
4G066BA28
4G066CA43
4G066DA03
4G066FA03
4G066FA11
4G066FA21
4G072AA26
4G072BB09
4G072GG01
4G072HH21
4G072JJ13
4G072TT30
4G072UU30
4L055AF04
4L055AF08
4L055AF13
4L055AG18
4L055FA13
4L055FA30
4L055GA06
4L055GA31
4L055GA46
4L055GA50
(57)【要約】 (修正有)
【課題】引張強度が高い除湿部材、除湿ロータ、及び除湿部材の製造方法を提供する。
【解決手段】ハニカム構造体を具備する除湿部材であって、前記ハニカム構造体は、平坦状基材21およびコルゲート状基材22と、前記コルゲート状基材の波頂部22aと前記平坦状基材とが当接する当接部23と、気孔部24と、を含み、前記当接部は、接着剤で接着された接着部23aと、前記接着部より前記通気孔部側に形成されたシリカゲル23bと、を含み、前記接着剤を構成する成分が、前記接着部より前記通気孔部側に形成されたシリカゲルの成分と異なる除湿部材。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハニカム構造体を具備する除湿部材であって、
前記ハニカム構造体は、
平坦状基材およびコルゲート状基材と、
前記コルゲート状基材の波頂部と前記平坦状基材とが当接する当接部と、
通気孔部と、
を含み、
前記当接部は、
接着剤で接着された接着部と、
前記接着部より前記通気孔部側に形成されたシリカゲルと、
を含み、
前記接着剤を構成する成分が、前記接着部より前記通気孔部側に形成されたシリカゲルの成分と異なる、
除湿部材。
【請求項2】
前記平坦状基材および/または前記コルゲート状基材が、混抄紙である、
請求項1に記載の除湿部材。
【請求項3】
前記混抄紙が、繊維の隙間にシリカゲルを含み、
前記混抄紙に含まれるシリカゲルの空隙の量が、前記接着部より前記通気孔部側に形成されたシリカゲルの空隙の量より多い、
請求項2に記載の除湿部材。
【請求項4】
前記接着剤が、有機成分を含む、
請求項1〜3の何れか一項に記載の除湿部材。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の除湿部材を含む、除湿ローター。
【請求項6】
除湿部材の製造方法であって、該製造方法は、
ハニカム構造体に珪酸ナトリウム溶液を担持させる担持工程と、
担持工程によりハニカム構造体に担持された珪酸ナトリウムを酸処理することでシリカゲルを合成するシリカゲル合成工程と、
を含み、
前記ハニカム構造体は、
平坦状基材およびコルゲート状基材と、
前記コルゲート状基材の波頂部と前記平坦状基材とを接着する接着部と、
通気孔部と、
を含む、
製造方法。
【請求項7】
前記平坦状基材および/または前記コルゲート状基材が、混抄紙である、
請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記接着剤が、有機成分を含む、
請求項6または7に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願の開示は、除湿部材、除湿ローター、および、除湿部材の製造方法に関する。
【0002】
工場等の製造現場においては、水分を排除したドライエアが必要な場合がある。例えば、半導体製造工場では、酸化の要因になる水分を極力除去したドライエアの需要が高まっている。ドライエアを供給するための装置としては、ハニカム構造体にシリカゲルやゼオライトを担持した除湿ローターを具備した除湿装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
除湿ローターを具備した除湿装置は、例えば、特許文献1の
図6に示されているように、処理ゾーンと再生ゾーンに分かれており、除湿ローターは所定のスピードで処理ゾーン、再生ゾーン、処理ゾーン、再生ゾーン・・・の順に回転移動する。そして、除湿ローターが処理ゾーンに位置する時には高湿度空気から水分を吸着し、再生ゾーンに位置する時には除湿ローターに吸着した水分を放出することで除湿ローターの除湿機能を再生する。除湿ローターへの吸湿および除湿ローターからの脱湿を繰り返すことで、除湿装置の連続稼働が可能となる。
【0004】
除湿ローターの製造方法としては、例えば、特許文献1には、以下の工程を含む方法が記載されている。
(1)所望の歯型を有する一対の形成ローラの間に送紙することで、波型紙を形成する。
(2)波型紙の一方の波頂部に水ガラス接着剤を塗布した後に多孔質の紙に接着し、次いで、波型紙の他方の波頂部に水ガラス接着剤を塗布しながら巻き取ることでハニカム構造を有した円筒状の成形体を得る。
(3)成形体を水ガラスの水溶液に浸漬し、乾燥および酸処理することで、成形体にシリカゲルを付着させる。
【0005】
また、特許文献2には、以下の工程を含む、除湿ローターのその他の製造方法が記載されている。
(1)ハニカム構造体を先ず作製する。
(2)作製したハニカム構造体を、シリカゲルを含むスラリーに含浸し、乾燥後、焼成することで、シリカゲルを担持したハニカム構造体を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭61−252497号公報
【特許文献2】特許第4958459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、工場の規模が大きくなる、あるいは、求められる除湿能力が高くなると、除湿ローターの大型化が必要な場合がある。除湿ローターを大型化した場合には、除湿ローターの回転中心からみて、鉛直方向上側では除湿ローターの重量による圧縮力が働く。一方、除湿ローターの回転中心からみて鉛直方向下側では、除湿ローターの重量により、ハニカム構造体の接着部分が剥離する方向の力が働く。
【0008】
また、除湿ローターを除湿装置に組み込む際に、板金で除湿部材を固定することがある。その場合、除湿ローターが水分の吸脱着により膨張収縮すると、ハニカム構造体の接着部分に引張応力が発生し、剥離するおそれがある。そのため、ハニカム構造体の接着部分をより強固にすることが望まれる。
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の除湿ローターは、シリカゲルの付着量を多くするため、(1)ハニカム構造体を構成する無機繊維の密度が非常に小さい紙を使用し、水ガラスを紙の奥まで含浸し、(2)ハニカム構造体を形成するための接着剤として水ガラスを用い、(3)酸処理により水ガラスをシリカゲル化する、との工程により製造している。したがって、除湿ローターのシリカゲルの付着量を多くするためには、接着剤を水ガラス以外に変更できないという問題がある。
【0010】
一方、特許文献2に記載の除湿ローターは、ハニカム構造体をシリカゲルスラリーに含浸し、乾燥後に加熱焼成することで製造している。しかしながら、本発明者らは、後述する比較例に示すとおり、特許文献2に記載の除湿ローターの製造方法では、ハニカム構造体の引張強度が非常に弱い、つまり、ハニカム構造の層間剥離が発生しやすいという問題を新たに発見した。
【0011】
本出願の開示は、上記問題を解決する為になされてものであり、鋭意研究を行ったところ、ハニカム構造体を形成する平坦状基材およびコルゲート状基材の当接部を、接着剤で接着された接着部と、接着部より通気孔部側に形成されたシリカゲルと、で形成することで、引張強度が高い除湿部材を提供できること、
を新たに見出した。
【0012】
すなわち、本出願の開示の目的は、引張強度が高い除湿部材、除湿ローター、および、除湿部材の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本出願の開示は、以下に示す、除湿部材、除湿ローター、および、除湿部材の製造方法に関する。
【0014】
(1)ハニカム構造体を具備する除湿部材であって、
前記ハニカム構造体は、
平坦状基材およびコルゲート状基材と、
前記コルゲート状基材の波頂部と前記平坦状基材とが当接する当接部と、
通気孔部と、
を含み、
前記当接部は、
接着剤で接着された接着部と、
前記接着部より前記通気孔部側に形成されたシリカゲルと、
を含み、
前記接着剤を構成する成分が、前記接着部より前記通気孔部側に形成されたシリカゲルの成分と異なる、
除湿部材。
(2)前記平坦状基材および/または前記コルゲート状基材が、混抄紙である、
上記(1)に記載の除湿部材。
(3)前記混抄紙が、繊維の隙間にシリカゲルを含み、
前記混抄紙に含まれるシリカゲルの空隙の量が、前記接着部より前記通気孔部側に形成されたシリカゲルの空隙の量より多い、
上記(2)に記載の除湿部材。
(4)前記接着剤が、有機成分を含む、
上記(1)〜(3)の何れか一つに記載の除湿部材。
(5)上記(1)〜(4)の何れか一つに記載の除湿部材を含む、除湿ローター。
(6)除湿部材の製造方法であって、該製造方法は、
ハニカム構造体に珪酸ナトリウム溶液を担持させる担持工程と、
担持工程によりハニカム構造体に担持された珪酸ナトリウムを酸処理することでシリカゲルを合成するシリカゲル合成工程と、
を含み、
前記ハニカム構造体は、
平坦状基材およびコルゲート状基材と、
前記コルゲート状基材の波頂部と前記平坦状基材とを接着する接着部と、
通気孔部と、
を含む、
製造方法。
(7)前記平坦状基材および/または前記コルゲート状基材が、混抄紙である、
上記(6)に記載の製造方法。
(8)前記接着剤が、有機成分を含む、
上記(6)または(7)に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本出願の開示により、従来の除湿部材と比較して、引張強度が高い除湿部材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、除湿ローターおよび第1の実施形態に係る除湿部材の概略を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、除湿部材を
図1の除湿ローターの回転中心軸方向に見た時のハニカム構造体の概略を示す図である。
【
図3】
図3は、ハニカム構造体の当接部を拡大した概略断面図である。
【
図4】
図4は、第3の実施形態に係る除湿部材の概略を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、除湿部材の引張強度の評価方法を説明するための概略図である。
【
図6】
図6は、実施例1および比較例1で作製した除湿部材、並びに、比較例2で作製したハニカム構造体の引張強度の測定結果を示すグラフである。
【
図7】
図7は、実施例2および比較例3で作製した除湿部材、並びに、比較例4で作製したハニカム構造体の引張強度の測定結果を示すグラフである。
【
図8】
図8は図面代用写真で、混抄紙の表面のSEM写真である。
【
図9】
図9は図面代用写真で、
図9Aは実施例2で作製した除湿部材のハニカム構造体を構成する混抄紙表面および断面のSEM写真、
図9Bは実施例1で作製した除湿部材のハニカム構造体を構成するガラス紙の断面のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本出願で開示する、除湿部材、除湿ローター、および、除湿部材の製造方法について詳しく説明する。
【0018】
(除湿部材の第1の実施形態)
図1乃至
図3を参照して、第1の実施形態に係る除湿部材について説明する。
図1は、除湿ローター10および除湿部材1の概略を示す斜視図である。
図2は、除湿部材1を
図1の除湿ローター10の回転中心軸Z方向に見た時のハニカム構造体2の概略を示す図である。
図3は、ハニカム構造体2の当接部23を拡大した概略断面図である。
【0019】
第1の実施形態に係る除湿部材1は、除湿ローター10を1以上に分割した分割体である。
図1に示す例では、除湿部材1を3つ組み合わせることで除湿ローター10を形成する例が示されているが、除湿ローター10を構成する除湿部材1の数は任意でよい。また、単一の除湿部材1で除湿ローター10を形成してもよい。
【0020】
除湿部材1は、ハニカム構造体2を具備する。ハニカム構造体2は、平坦状基材21と、コルゲート状基材22と、コルゲート状基材22の波頂部22aと平坦状基材21とが当接する当接部23と、通気孔部24と、を含む。当接部23は、接着剤で接着された接着部23aと、接着部23aより通気孔部側に形成されたシリカゲル23bとを含む。
【0021】
後述する製造方法で詳しく記載するが、除湿部材1は、先ず接着部23を含むハニカム構造体2を製造し、次に、ハニカム構造体2に珪酸ナトリウム溶液を担持し、そして、酸処理することで珪酸ナトリウムからシリカゲル23bを合成する(以下、珪酸ナトリウムから合成したシリカゲルを「合成シリカゲル」と記載することがある)。ハニカム構造体2を珪酸ナトリウム溶液に浸漬すると、接着部23a、平坦状基材21およびコルゲート状基材22で形成される隙間Sに珪酸ナトリウム溶液が充填される。したがって、接着部23aは合成シリカゲル23bで覆われることになる。なお、本明細書で開示する製造方法では、合成シリカゲル23bは、ハニカム構造体2を構成する平坦状基材21およびコルゲート状基材22の周囲全体に形成される。本明細書において、当接部23に含まれるシリカゲル23bとは、
図3に示すとおり、平坦状基材21の周囲に形成された合成シリカゲル23bと、コルゲート状基材22の周囲に形成された合成シリカゲル23bとの境界Bより、接着部23a側の合成シリカゲル23bを意味する。換言すると、合成シリカゲル23bの内、平坦状基材21とコルゲート状基材22の両方に当接する部分と言うこともできる。
【0022】
第1の実施形態に係る除湿部材1の平坦状基材21およびコルゲート状基材22は、当該技術分野で公知の繊維状基材を用いることができる。繊維状基材の具体例としては、例えば、シリカ・アルミナ繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、ムライト繊維、ガラス繊維、ロックウール繊維、炭素繊維等の無機繊維;ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、アラミド繊維、パルプ繊維、レーヨン繊維等の有機繊維が挙げられる。また、これらの繊維は、1種単独又は2種以上の組み合わせであっても良い。なお、上記繊維は単なる例示であって、これら繊維に限定されるものではない。また、平坦状基材21およびコルゲート状基材22は、同じ繊維を用いてもよいし、異なる繊維を用いてもよい。
【0023】
第1の実施形態に係る除湿部材1の繊維は、密度が低すぎるとハニカム構造体の強度が弱くなり、密度が高すぎると、繊維の間に担持するシリカゲルの量が少なくなる。したがって、繊維の密度は、強度とハニカム構造体の量(吸湿量)等を考慮し、適宜選択すればよい。第1の実施形態に係る除湿部材1の繊維の密度としては、例えば、0.05〜0.5g/cm
3、好ましくは0.08〜0.3g/cm
3は、より好ましくは0.1〜0.2g/cm
3等が挙げられる。
【0024】
接着部23を形成する接着剤は、平坦状基材21とコルゲート状基材22の波頂部22aを接着できれば特に制限はない。例えば、無機系接着剤または有機系接着剤があげられる。無機接着剤の例としては、シリカ系接着剤、水ガラス等があげられる。また、有機系接着剤としては、アクリル樹脂系接着剤、アクリル樹脂エマルジョン接着剤、α−オレフィン系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、ウレタン樹脂エマルジョン接着剤、エーテル系セルロース、エチレン−酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、エポキシ樹脂エマルジョン接着剤、塩化ビニル樹脂溶剤系接着剤、クロロプレンゴム系接着剤、酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤、シアノアクリレート系接着剤、シリコーン系接着剤、水性高分子−イソシアネート系接着剤、スチレン−ブタジエンゴム溶液系接着剤、スチレン−ブタジエンゴム系ラテックス接着剤、ニトリルゴム系接着剤、ポリイミド系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、デンプン系接着剤、天然ゴム系接着剤等が挙げられる。
【0025】
接着剤は、平坦状基材21とコルゲート状基材22の材質に応じて適宜選択すればよい。また、接着剤は、無機系接着剤および有機系接着剤から選択した2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、接着剤は、必要に応じて、粘着付与剤、可塑剤、硬化剤、架橋剤、希釈剤、充填剤、増粘剤、顔料、老化防止剤、酸化防止剤、消泡剤、難燃剤、防腐剤、分散剤、湿潤剤、親水化剤等を添加してもよい。
【0026】
シリカゲル23bを合成するための珪酸ナトリウム溶液は、珪酸ナトリウムを水に溶かしたもので、「水ガラス」とも呼ばれている。珪酸ナトリウム溶液は、市販の珪酸ナトリウムを水に溶解することで作製することができる。珪酸ナトリウム溶液の濃度は、薄すぎると一度の担持工程でハニカム構造体2に担持できる量が少なくなる。一方、濃すぎると、ハニカム構造体2の通気孔部24が目詰まりするおそれがある。したがって、所望の量が担持でき且つ通気孔部24が目詰まりしないように、珪酸ナトリウムの濃度は適宜設定すればよい。珪酸ナトリウム溶液の濃度としては、例えば、20〜50質量%、好ましくは25〜45質量%、より好ましくは30〜40質量%が挙げられる。
【0027】
第1の実施形態に係る除湿部材1は、先ず、平坦状基材21とコルゲート状基材22の波頂部22aを接着剤で接着してハニカム構造体2を作製する。特許文献2と異なり、第1の実施形態に係る除湿部材1は、焼成する必要はない。したがって、比較的熱に弱い接着剤を使用することもでき、使用する接着剤の種類の選択肢が多くなる。
【0028】
また、特許文献1に記載のとおり、珪酸ナトリウム(水ガラス)は接着剤として用いることもできる。しかしながら、第1の実施形態に係る除湿部材1は、接着部23aに、接着効果が高い接着剤を選択できる。したがって、接着剤で接着された接着部23aと、接着部23aより通気孔部側に形成された合成シリカゲル23bの成分は異なる。なお、本明細書において、成分が異なるとは、接着剤全体の成分が合成シリカゲル23bの成分と異なることを意味し、接着剤の成分の一部が合成シリカゲルの成分と同じになることを妨げない。
【0029】
接着剤で接着された接着部23aと、接着部23aより通気孔部側に形成された合成シリカゲル23bの成分が異なる効果として、異種の接着剤によるアンカー効果により接着強度を高めることでハニカム構造体の強度を向上させている点、異種の接着剤を用いることによる設計自由度の向上に伴うコスト削減や機能性付与効果などがある。一方で、例えば、珪酸ナトリウムを接着剤として使用した場合、接着部23aに付着固化した接着剤が珪酸ナトリウム溶液の担持工程で溶け出し、除湿部材としての成形体を保てないことが考えられる。この場合には、接着剤にこの珪酸ナトリウム溶液に強い異なる接着剤を用いればこのような現象が防げる効果が考えられる。珪酸ナトリウム溶液に強い接着剤としては、例えば、アクリル樹脂エマルジョン接着剤、エチレン−酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤等が挙げられる。
【0030】
また、接着剤で接着された接着部23aと、接着部23aより通気孔部側に形成された合成シリカゲル23bの成分が異なるその他の効果として、接着剤の分布や付着量等を調べることで、製品不良が発生した原因解明の寄与が挙げられる。
【0031】
(除湿部材の第2の実施形態)
除湿部材1の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態に係る除湿部材1は、平坦状基材21および/またはコルゲート状基材22が、混抄紙である点で第1の実施形態に係る除湿部材1と異なり、その他の点は第1の実施形態に係る除湿部材1と同じである。したがって、第2の実施形態では、第1の実施形態と異なる点を中心に説明し、第1の実施形態において説明済みの事項についての繰り返しとなる説明は省略する。よって、第2の実施形態において明示的に説明されなかったとしても、第2の実施形態において、第1の実施形態で説明済みの事項を採用可能であることは言うまでもない。
【0032】
本明細書において、混抄紙とは、第1の実施形態で例示した平坦状基材21およびコルゲート状基材22を構成する繊維状基材の繊維の隙間に、シリカゲル、ゼオライト、シリカアルミナ非晶質多孔体、メソポーラスシリカ、イオン交換樹脂、ポリアクリル酸塩樹脂、アルキレンオキサイド樹脂等の吸湿性の粒子を抄き込んだ紙状の基材を意味する。混抄紙は、吸湿性の微粒子を分散した繊維溶液を紙状に抄くことで作製する。シリカゲルの種類は目的に応じて適宜選択すればよい。例えば、低湿度時の吸湿力に優れるA型、高湿度時の吸湿力に優れるB型を、目的に応じて選択すればよい。あるいは、A型およびB型のシリカゲルを混合してもよい。
【0033】
なお、混抄紙に含まれる吸湿性の微粒子は、製造過程で微粒子が繊維の隙間で凝集した形態となる。一方、接着部23aより通気孔部側に形成された合成シリカゲル23bは、ハニカム構造体2に含浸させた珪酸ナトリウムを酸処理することで作製される。したがって、混抄紙に含まれる吸湿性の微粒子の空隙の量は、接着部23aより通気孔部側に形成された合成シリカゲル23bの空隙の量より多くなる。なお、本明細書において、「空隙の量」とは、吸湿性の微粒子内部の細孔表面積を表す比表面積とは異なり、微粒子と微粒子の隙間に形成される隙間の単位体積当たりの量を意味する。「空隙の量」は、微粒子をSEM等により撮像し、見た目の粗さから比較すればよい。微粒子がランダムに凝集するほど、「空隙の量」は多くなり、SEM画像の見た目が粗くなる(微細な凹凸状が観察される)。一方、「空隙の量」が少なくなるほど、微粒子が密に形成されることから、SEM画像の見た目が滑らかになる。
【0034】
また、「空隙の量」は、個々の微粒子と微粒子の隙間の量ではなく、所定量の微粒子が凝集した領域における空隙の量(見た目の粗さ又は滑らかさ)を意味する。所定量の微粒子が凝集した領域とは、SEM画像から見た微粒子が凝集している任意の領域を意味する。したがって、領域には表面に形成されたクラック等は含まれない。換言すると、領域とは、SEM画像で観察される表面全体を意味するのではなく、あくまでも微粒子が凝集している部分を意味する。
【0035】
なお、混抄紙に含まれる吸湿性の微粒子と合成シリカゲル23bの違いについて、「空隙の量」に代え、「表面平滑性」、「表面性状」又は「表面粗さ」との用語を用いて違いを表してもよい。また、SEM画像から見た混抄紙に含まれる吸湿性の微粒子と合成シリカゲル23bの違いを、以下のように表してもよい。
・顆粒体が凝集した凹凸の表面を持つ吸湿性の微粒子と、表面が相対的に平らなブロック形状の合成シリカゲル。
・ざらざらした表面を持つ吸湿性の微粒子と、滑らかな表面を持つ合成シリカゲル。
【0036】
(除湿部材の第3の実施形態)
図4を参照して除湿部材1の第3の実施形態について説明する。第3の実施形態に係る除湿部材1は、ハニカム構造体2が平坦状基材21にコルゲート状基材22の波頂部22aを接着しながら積層、換言すると、平坦状基材21が略並行となるように形成されている点で、第1および第2の実施形態に係る除湿部材1と異なり、その他の点は第1および第2の実施形態に係る除湿部材1と同じである。したがって、第3の実施形態では、第1および第2の実施形態と異なる点を中心に説明し、第1および第2の実施形態において説明済みの事項についての繰り返しとなる説明は省略する。よって、第3の実施形態において明示的に説明されなかったとしても、第3の実施形態において、第1および第2の実施形態で説明済みの事項を採用可能であることは言うまでもない。
【0037】
第3の実施形態に係る除湿部材1は、平坦状基材21にコルゲート状基材22の波頂部22aを接着し、所定の長さで平坦状基材21およびコルゲート状基材22を切断し、順次積層すればよい。積層の形態としては、平坦状基材21→コルゲート状基材22→平坦状基材21→コルゲート状基材22のように、交互に積層すればよい。あるいは、平坦状基材21→コルゲート状基材22→平坦状基材21のセットを作製し、当該セットの平坦状基材21を接着してもよい。また、
図4では、通気孔部24の貫通方向が90度ずれるように交互に積層したハニカム構造体2の例が示されているが、通気孔部24を形成する方向は同じであってよい。なお、積層の形態は、第1の実施形態及び第2の実施形態も同様である。
【0038】
(除湿ローターの実施形態)
図1および
図4を参照して、除湿ローター10の実施形態について説明する。除湿ローター10は、第1および第2の実施形態に係る除湿部材1を組み合わせることで作製できる。第1および第2の実施形態に係る除湿部材1を用いれば、除湿ローター10の作製手順は特に制限はない。例えば、
図1には、(1)平坦状基材21にコルゲート状基材22の波頂部22aを接着しながらロール状に巻き取ることでローターを製造し、(2)ローターを分割し、分割したローターの各々に珪酸ナトリウム溶液を担持し、(3)珪酸ナトリウムを酸処理することでシリカゲル23bを合成することで除湿部材1を作製し、(4)作製した除湿部材1を組み合わせることで、除湿ローター10を作製する、例が示されている。代替的に、上記(2)の工程において、ローターを分割せず、そのまま用いてもよい。
【0039】
また、
図4に示す第3の実施形態に係る除湿部材1を用いて除湿ローター10を作製する場合は、除湿部材1を適当な形状となるようにカットし、組み合わせればよい。
【0040】
(除湿部材の製造方法の実施形態)
除湿部材の製造方法は、
・ハニカム構造体に珪酸ナトリウム溶液を担持させる担持工程と、
・担持工程によりハニカム構造体に担持された珪酸ナトリウムを酸処理することでシリカゲルを合成するシリカゲル合成工程と、
を含む。
【0041】
ハニカム構造体および珪酸ナトリウム溶液は、既に説明済みのため、詳しい記載は省略する。シリカゲル合成工程に用いる酸は、珪酸ナトリウム溶液からシリカゲルを合成できれば特に制限はない。酸としては、例えば、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸、および、それら酸の金属塩等、例えば、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム等のアルミニウム塩、硝酸カルシウム、塩化カルシウム等のカルシウム塩、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム等のマグネシウム塩、硫酸鉄、硝酸鉄等の鉄塩が挙げられる。前記の酸および酸の金属塩は、単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。また、合成シリカゲル23bは、A型であってもB型であってもよい。酸処理の濃度を変える等の方法により、目的に応じて所望の型となるように合成すればよい。なお、珪酸ナトリウム溶液からシリカゲルを合成する際に、酸としてアルミニウム塩を用いた場合には、シリカアルミナゲルが得られる。本明細書において「合成シリカゲル」と記載した場合、「合成シリカゲル」には、酸に由来する金属塩を含んだシリカゲルも包含される。
【0042】
以下に実施例を掲げ、本出願で開示する実施形態を具体的に説明するが、この実施例は単に実施形態の説明のためのものである。本出願で開示する発明の範囲を限定したり、あるいは制限することを表すものではない。
【実施例】
【0043】
〔除湿部材の製造〕
<原料>
原料には、以下の製品を用いた。なお、割合は、質量%である。
【0044】
<基材>
【表1】
【0045】
なお、シリカゲルは、サイリシア740(A型シリカゲル、富士シリシア化学社製)を用いた。また、作製した基材の坪量(g/m
2)は、ガラス紙が20、混抄紙が83で、厚み(μm)はガラス紙101、混抄紙が197であった。
【0046】
<接着剤>
【表2】
【0047】
<珪酸ナトリウム溶液>
【表3】
【0048】
<酸処理液>
【表4】
【0049】
<シリカゲルスラリー溶液>
【表5】
【0050】
<実施例1>
[除湿部材の作製]
以下の手順により、除湿部材を作製した。
(1)平坦状基材およびコルゲート状基材として、ガラス紙を用いた。ガラス紙を、接着剤を用いてコルゲート加工し、コルゲート加工紙を、接着剤を用いて渦巻状に巻き取り、直径450mm、フルート長さ210mm、フルートの山の高さ1.9mmの、ローター型ハニカム構造体を製作した。なお、フルート長さとはコルゲート状基材22の波頂部22aの長さ(除湿ローターの厚み)(
図1および
図2のL参照)、フルート山の高さとは波頂部22aと平坦状基板21との距離(
図2のH参照)を意味する。
(2)作製したハニカム構造体を珪酸ナトリウム溶液に浸漬した後(その他、珪酸ナトリウムを担持させる担持手段として、スプレー、スプリンクラー等の噴霧、散布による手段でも良い。)、ハニカム構造体を珪酸ナトリウム溶液から引き上げた。
(3)珪酸ナトリウム溶液を担持したハニカム構造体をエアブローした後、酸処理液に浸漬し、ハニカム構造体中の珪酸ナトリウムと硫酸アルミニウムの化学反応により、珪酸アルミニウムのヒドロゲルを生成した。
(4)ハニカム構造体を加熱乾燥し、シリカゲルによって強化された除湿部材を得た。
【0051】
[除湿部材の引張強度の評価方法]
図5を参照しながら、除湿部材の引張強度の評価方法を説明する。引張強度は、以下の手順で評価した。
(1)作製した除湿部材を積層方向に並行となるように5cm
3の立方体状に切断し、引張強度測定用の試験体とした。
(2)試験体を110℃×1時間乾燥し、重量を電子天秤および3辺の長さをノギスで測定した。
(3)試験体のハニカム構造体の積層方向の上下に、エポキシ接着剤を用いて引張試験用の冶具を接着した。
(4)試験体を引張試験機(島津製作所、島津製作所・小型卓上試験機Ez−LX)に取り付け、試験体に1mm/minで連続的に引張加重を加え、破断時の荷重を1N単位まで求めた。
(5)積層方向の引張強度は、次式によって求めた。
σ=F/(A×B)
(ただし、σ:引張強度[N/cm
2]、F:試験体破断時の荷重[N]、試験体のA寸[cm]、試験体のB寸[cm]
【0052】
引張強度の評価は、3個の試験体で行った。評価結果を
図6に示す。引張強度の平均値は、24.3kPaであった。
【0053】
<比較例1>
実施例1の珪酸ナトリウム溶液に代え、シリカゲルスラリー溶液を用いた。作製した除湿部材の密度が、実施例1とほぼ同じとなるように固形分濃度を調整したシリカゲルスラリー溶液に浸漬した後、150℃で乾燥を行い、次いで、500℃で1時間焼成することで、比較例1の除湿部材を作製した。作製した除湿部材の引張強度は、実施例1と同様の手順で評価した。評価結果を
図6に示す。引張強度の平均値は、9.6kPaであった。
【0054】
<比較例2>
実施例1で作製したハニカム構造体(珪酸ナトリウム溶液に非浸漬)を比較例2とした。比較例2の引張強度は、実施例1と同様の手順で評価した。評価結果を
図6に示す。引張強度の平均値は、18.6kPaであった。
【0055】
図6に示すとおり、ハニカム構造体の接着剤の周囲を合成シリカゲルで覆うことで、引張強度が向上することを確認した。その理由としては、ハニカム構造体の接着部より通気孔部側に形成した合成シリカゲルが、当接部の接着面積を増大し、接着効果を奏しているためと考えられる。一方、特許文献2に記載の、ハニカム構造体をシリカゲルスラリーに浸漬する製造方法で作製した除湿部材は、ハニカム構造体の引張強度より低くなった。特許文献2に記載の製造方法では、シリカゲルの担持量を多くすることが難しい。そのため、焼成工程を実施することで、作製した除湿部材の除湿性能を向上している。しかしながら、本出願の開示により、特許文献2の製造方法では、引張強度との観点では、焼成工程によりハニカム構造体の引張強度が著しく低下することを新たに発見した。引張強度が低下する理由としては、接着剤等の有機成分が焼成工程により焼失したためと考えられる。
【0056】
また、特許文献2に記載の製造方法は、シリカゲルをハニカム構造体に担持するため、除湿機能を有しないコロイダルシリカを、シリカゲルスラリー中に添加する必要がある。したがって、ハニカム構造体に担持した微粒子の全てに除湿機能を持たせることができなかった。一方、本出願で開示する除湿部材は、珪酸ナトリウム溶液からシリカゲルを合成するため、ハニカム構造体に担持した微粒子(合成シリカゲル)の全てが除湿機能を奏する。したがって、単位重量当たりの除湿能力を向上できる。
【0057】
<実施例2>
ガラス紙に代え、混抄紙を用いた以外は、実施例1と同様の手順で除湿部材を作製し、引張強度の評価を行った。評価結果を
図7に示す。引張強度の平均値は、46.8kPaであった。
【0058】
<比較例3>
ガラス紙に代え、混抄紙を用いた以外は、比較例1と同様の手順で除湿部材を作製し、引張強度の評価を行った。評価結果を
図7に示す。引張強度の平均値は、2.1kPaであった。
【0059】
<比較例4>
実施例2で作製した、混抄紙を用いたハニカム構造体(珪酸ナトリウム溶液に非浸漬)を比較例4とした。比較例4の引張強度は、実施例1と同様の手順で評価した。評価結果を
図7に示す。引張強度の平均値は、8.7kPaであった。
【0060】
図7に示すとおり、ハニカム構造体の接着剤の周囲を合成シリカゲルで覆うことで、引張強度が向上することを確認した。なお、実施例1と比較例2とを対比した場合、接着剤の周囲をシリカゲルで覆うことで、引張強度は約1.3倍になった。一方、実施例2と比較例4とを対比した場合、接着剤の周囲をシリカゲルで覆うことで、引張強度は約5.4倍になった。つまり、基材としてガラス紙を用いるより、混抄紙を用いた方が、接着剤を用いて作製したハニカム構造体より引張強度が大幅に増加した。
【0061】
基材として混抄紙を用いた場合に、引張強度がハニカム構造体と比較して大幅に増加した理由を解明するため、SEMを用いて基材表面と基材の断面を撮影した。まず、
図8に混抄紙の表面のSEM写真を示す。
図8に示すとおり、混抄紙は、繊維の隙間にシリカゲルが多孔質状に担持されていることを確認した。
【0062】
次に、実施例2で作製した除湿部材のハニカム構造体を構成する混抄紙表面および断面のSEM写真(
図9A)、実施例1で作製した除湿部材のハニカム構造体を構成するガラス紙の断面のSEM写真(
図9B)を示す。
【0063】
図9Aの表面のSEM写真に示すように、合成シリカゲルは、非常に滑らかな表面(空隙が少ない)となることを確認した。そして、
図9Aの断面のSEM写真に示すように、実施例2で作製した除湿部材は、混抄紙に含まれる多孔質状のシリカゲル(
図9Bの写真の円で囲った部分)の表面に、合成シリカゲルが積層(
図9Bの写真の矢印部分)していることを確認した。
【0064】
一方、
図9Bの断面のSEM写真に示すように、実施例1で作製した除湿部材は、ガラス紙の表面から内部に至るまで、珪酸ナトリウム溶液を酸処理することで合成したシリカゲルが一体的に合成されていることを確認した。
【0065】
実施例2で作製した除湿部材の引張強度が実施例1の除湿部材と比較して、著しく高くなった原因は、以下の理由が考えられる。
(1)先ず、ハニカム構造体の当接部付近について検討する。上記のとおり、接着部より通気孔部側に形成した合成シリカゲルは、当接部の接着面積を増大する。ところで、混抄紙内部のシリカゲルは多孔質状(凹凸が多い)である。そのため、珪酸ナトリウム溶液が多孔質状のシリカゲルの隙間に侵入し、合成工程により、合成シリカゲルの一部が多孔質状のシリカゲルに入り組むことで、混抄紙内部の多孔質状のシリカゲルと外側の合成したシリカゲルの一体性、換言すると、多孔質状のシリカゲルと外側の合成したシリカゲルの接着性が高くなる。したがって、
図3の隙間S部分の合成シリカゲルは、当接部の接着面積の増大に加え、平坦状基材21およびコルゲート状基材22の内部に含まれる多孔質状のシリカゲルと協同して、接着力の増強作用を奏していると考えられる。
(2)次に、平坦状基材およびコルゲート状基材全体について検討する。実施例2のハニカム構造体は、混抄紙内部の多孔質状の部分は維持された状態で、混抄紙表面のみが緻密な合成シリカゲルで覆われる。そのため、ハニカム構造体を構成する基材である混抄紙の外側と内側で剛性が異なることから、引張力が付加した際に、力が分散されやすくなる。換言すると、ハニカム構造体に引張力が付加された際に、ハニカム構造体の平坦状基材およびコルゲート状基材が引張力を分散しやすくなり、その結果、当接部23に歪が集中し難くなる。一方、実施例1では、
図9Bに示すように、ガラス紙の表面から内部に至るまで、合成シリカゲルで一体的に形成されていることから、引張力が付加した際に、力が分散され難くなる。そのため、付加された引張力が、当接部23に集中することから、混抄紙と比較して、引張強度が弱くなったと考えられる。
【0066】
以上の結果より、本出願で開示する除湿部材の製造方法で除湿部材を製造する場合、先ずハニカム構造体を作製し、次いで、シリカゲルを合成することから、ハニカム構造体を形成する接着剤の選択肢が向上する。特に、特許文献2に記載の除湿部材は、約500℃の焼成工程により除湿性能の向上を図っていることから、燃焼温度が500℃より低い接着剤は使用できなかった。一方、本出願で開示する除湿部材は、燃焼温度が低い接着剤でも使用できる。
【0067】
また、合成シリカゲルは、シリカゲルが有する除湿機能に加え、ハニカム構造体の当接部分の接着機能を顕著に向上するとの効果を奏する。つまり、異なる2つの効果を奏することを確認した。混抄紙から形成したハニカム構造体の引張強度は、ガラス紙から形成したハニカム構造体の引張強度より低い(比較例2および4参照)。しかしながら、合成シリカゲルは、混抄紙に含まれる多孔質状のシリカゲルおよび繊維の両方に対して接着効果を示すことから、ハニカム構造体を形成する基材として混抄紙を用いた場合には、合成シリカゲルの接着機能が非常に優れることも確認した。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本出願の開示によれば、除湿部材の引張強度が向上する。したがって、除湿装置の製造メーカー、除湿した空気が必要な製造業にとって有用である。
【符号の説明】
【0069】
1…除湿部材、2…ハニカム構造体、21…平坦状基材、22…コルゲート状基材、22a…波頂部、23…当接部、23a…接着部、23b…合成シリカゲル、24…通気孔部、10…除湿ローター、B…境界、H…フルート山の高さ、L…フルート長さ、S…隙間、Z…除湿ローターの回転中心軸
【手続補正書】
【提出日】2020年9月30日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハニカム構造体を具備する除湿部材であって、
前記ハニカム構造体は、
平坦状基材およびコルゲート状基材と、
前記コルゲート状基材の波頂部と前記平坦状基材とが当接する当接部と、
通気孔部と、
を含み、
前記当接部は、
接着剤で接着された接着部と、
前記接着部より前記通気孔部側に形成されたシリカゲルと、
を含み、
前記接着剤を構成する成分が、前記接着部より前記通気孔部側に形成されたシリカゲルの成分と異なり、
前記平坦状基材および/または前記コルゲート状基材が、混抄紙である、
除湿部材。
【請求項2】
前記混抄紙が、繊維の隙間にシリカゲルを含み、
前記混抄紙に含まれるシリカゲルの空隙の量が、前記接着部より前記通気孔部側に形成されたシリカゲルの空隙の量より多い、
請求項1に記載の除湿部材。
【請求項3】
前記接着剤が、有機成分を含む、
請求項1または2に記載の除湿部材。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の除湿部材を含む、除湿ローター。
【請求項5】
除湿部材の製造方法であって、該製造方法は、
ハニカム構造体に珪酸ナトリウム溶液を担持させる担持工程と、
担持工程によりハニカム構造体に担持された珪酸ナトリウムを酸処理することでシリカゲルを合成するシリカゲル合成工程と、
を含み、
前記ハニカム構造体は、
平坦状基材およびコルゲート状基材と、
前記コルゲート状基材の波頂部と前記平坦状基材とを接着する接着部と、
通気孔部と、
を含み、
前記平坦状基材および/または前記コルゲート状基材が、混抄紙である、
製造方法。
【請求項6】
前記接着剤が、有機成分を含む、
請求項5に記載の製造方法。
【手続補正書】
【提出日】2021年6月2日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハニカム構造体を具備する除湿部材であって、
前記ハニカム構造体は、
平坦状基材およびコルゲート状基材と、
前記コルゲート状基材の波頂部と前記平坦状基材とが当接する当接部と、
通気孔部と、
を含み、
前記当接部は、
接着剤で接着された接着部と、
前記接着部より前記通気孔部側に形成され、珪酸ナトリウムから合成したシリカゲルと、
を含み、
前記接着剤を構成する成分が、前記接着部より前記通気孔部側に形成されたシリカゲルの成分と異なり、
前記平坦状基材および/または前記コルゲート状基材が、混抄紙であり、
前記混抄紙の内部には多孔質状のシリカゲルが含まれ、前記合成したシリカゲルの一部が前記多孔質状のシリカゲルに入り組むことで、前記混抄紙の内部の前記多孔質状のシリカゲルと前記合成したシリカゲルが一体性を有する、
除湿部材。
【請求項2】
前記混抄紙が、繊維の隙間にシリカゲルを含み、
前記混抄紙に含まれるシリカゲルの空隙の量が、前記接着部より前記通気孔部側に形成されたシリカゲルの空隙の量より多い、
請求項1に記載の除湿部材。
【請求項3】
前記接着剤が、有機成分を含む、
請求項1または2に記載の除湿部材。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の除湿部材を含む、除湿ローター。
【請求項5】
除湿部材の製造方法であって、該製造方法は、
ハニカム構造体に珪酸ナトリウム溶液を担持させる担持工程と、
担持工程によりハニカム構造体に担持された珪酸ナトリウムを酸処理することでシリカゲルを合成するシリカゲル合成工程と、
を含み、
前記ハニカム構造体は、
平坦状基材およびコルゲート状基材と、
前記コルゲート状基材の波頂部と前記平坦状基材とを接着する接着部と、
通気孔部と、
を含み、
前記平坦状基材および/または前記コルゲート状基材が、混抄紙であり、
前記シリカゲル合成工程により、前記接着部より前記通気孔部側に珪酸ナトリウムから合成したシリカゲルが形成され、
前記混抄紙の内部には多孔質状のシリカゲルが含まれ、前記合成したシリカゲルの一部が前記多孔質状のシリカゲルに入り組むことで、前記混抄紙の内部の前記多孔質状のシリカゲルと前記合成したシリカゲルが一体性を有する、
製造方法。
【請求項6】
前記接着剤が、有機成分を含む、
請求項5に記載の製造方法。