【解決手段】バラスト水ラインを介してバラストタンク320にバラスト水を導入し、バラストタンク内における保持時間経過後にバラスト水を排出するように構成されたバラスト水管理(BWM)システムであって、バラスト水に殺生物剤を導入するよう構成された殺生物剤の供給源330と、導入期間中、中和剤の第1投与量である低モード及び第1投与量より多い中和剤の第2投与量である高モードの少なくとも一方で、殺生物剤の殺生物活性を少なくとも一部中和するように選択された中和剤を、中和剤導入部位において、排出バラスト水に導入するよう構成された中和システム360と、を有する、バラスト水管理システムである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本開示の1以上の態様は、バラスト水管理システムに関する。本開示のいくつかの態様
は、ANSの分散の可能性を低減できるバラスト水管理システム及び技術を提供する。本
開示の1以上の態様は、バラスト水管理システムにおける電気塩素化システムに関する。
本開示のさらに他の態様は、バラスト水の電解処理を利用するバラスト水管理システムを
提供する。本開示の他の態様は、十分なバラスト水の酸化還元電位値を維持してANSを
浄化する、バラスト水管理システム及び技術を提供する。本開示の他の態様は、バラスト
水が排出されうる前に更なる浄化サブシステム及び技術を用いることなく、殺生物剤濃度
を制御する、バラスト水管理システム及び技術を提供する。本開示のいくつかの有利な態
様は、過剰な又は望ましくないレベルの酸化殺生物剤の悪影響を低減するシステム及び技
術を提供する。本開示の1以上のさらなる態様は、許容レベルの殺生物剤を有する排出バ
ラスト水を提供するバラスト水管理システムを含む。本開示のさらなる態様は、既存の船
舶用バラスト水管理システムの改良又は修正を提供する。本開示の1以上の態様は、場合
によっては、船舶浮力システムでバラスト水を処理するための消毒システム及び技術、並
びに他の船舶システムで生物付着防止制御又は処理に関する。本開示の1以上の態様は、
冷却水システム及びバラスト水システム用の船上処理システムを特に対象とすることがで
きる。なお本開示のさらなる態様は、上記の態様のうちのいずれかを容易にすることに関
する。
【0027】
場合によっては、バラスト水管理システムは、1以上のバラストラインを介して、単独
のバラスト水の供給源あるいは1以上のバラスト水の供給源の組み合わせと流体的に接続
された、1以上のバラストタンクを有する。場合によっては、バラスト水管理システムは
、殺菌剤若しくは殺生物剤、又は殺生物剤の供給源をさらに有する。本明細書中で使用さ
れる場合、殺生物剤は、生物を、典型的にはバラスト水中の微生物を、中和する、不活性
化する、消毒する、又は生物学的に溶解して、不活性にする、あるいは少なくともさらな
る生物活性を不可能にする任意の薬剤である。いくつかの構成において、前記殺生物剤は
塩素系酸化剤でありうる。バラスト水管理システムのさらにいくつかの実施形態において
、殺生物剤はその場(in−situ)で生成されることができる。例えば、前記殺生物
剤の供給源は、塩化物含有水から塩素系殺生物剤を電気的分解に生成するように構成され
た電気分解装置を有してもよい。
【0028】
バラスト水管理システムの操作は、バラスト水を測定した特性の少なくとも1つに基づ
くことができる。本開示のいくつかの態様は、バラスト水の消毒を依然として提供する、
あるいはバラスト水の消毒を確実に行う、好ましくは、バラスト水系の含水構造の腐食を
ほとんど又は最小限に抑える、並びに潜在的に危険な消毒副産物のほとんど又は最小限の
形成に留める、最低レベルの殺生物剤を提供することができる。本開示のいくつかの態様
は、処理される又は処理されるべき水、例えばバラストタンクに導入されるバラスト水の
酸化還元電位に少なくとも部分的に基づくシステムを提供することができる。本開示のい
くつかの特定の態様は、最小レベルの殺生物剤、例えば利用可能な遊離塩素を提供するシ
ステム及び技術、あるいは、生物学的活性の有効な不活性化又はバラスト水の消毒を、確
実に行う殺生物剤濃度を含むシステム及び技術を提供し、一方では、船舶の構造物の腐食
又は補助的なユニットの運用の可能性を最小限に抑えるか、あるいは少なくとも低減し、
また、場合によっては、潜在的に危険な消毒副生成物の形成が最小限になる、又は少なく
とも低下する。
【0029】
場合によっては、バラスト水管理システムは、バラスト水ラインを介してバラスト水を
バラストタンクに導入し、前記バラストタンクからバラスト水を排出するように構成する
ことができる。前記システムは、典型的には、バラスト水に殺生物剤を導入するように構
成された殺生物剤の供給源と、導入期間中、中和剤の第1投与量である低モード及び中和
剤の第2投与量である高モードの少なくとも一方で、中和剤を、中和剤導入部位において
、前記排出バラスト水に導入するよう構成された中和システムとを、有する。典型的には
、第1投与量は第2投与量より少なく、前記中和剤は、殺生物剤の殺菌活性を少なくとも
一部中和するように選択される。いくつかの構成では、前記中和システムは、前記導入期
間中に高モードで前記中和剤を前記排出バラスト水に導入する。前記システムは、前記バ
ラスト水ラインを介して前記バラスト水を前記バラストタンク内に圧送するよう配置され
たバラスト水ポンプをさらに備える。前記システムはさらに、前記バラスト水ラインに流
体的に接続され、バラスト水から固形分の少なくとも一部を除去して前記バラストタンク
に導入するように配置されたフィルタを含む。前記殺生物剤の供給源は、殺生物剤の少な
くとも一部をフィルタの上流側に導入するように構成される。前記殺生物剤の供給源は、
塩化物含有水の供給源から殺生物剤を電解的に生成するように構成された電気分解装置を
含む。前記塩化物含有水の供給源は、船内冷却水システム、シーチェスト、及び塩化物含
有水貯蔵タンクのいずれかである。前記殺生物剤の供給源は、バラスト水ラインから流体
的に隔離されている塩化物含有水の供給源に流体的に接続された入口を含む。前記システ
ムは、前記中和剤導入部位の上流側の前記排出バラスト水の第1のORP値を測定するよ
うに構成された第1のORPセンサをさらに含む。前記導入期間後、前記第1のORP値
が目標ORP値未満である場合、中和システムは、オフモード(OFFモード)で中和剤
の導入を中止する。前記システムは、前記中和剤導入部位の下流側の前記排出バラスト水
の第2のORP値を測定するように構成された第2のORPセンサと、前記第1のORP
値と前記第2のORP値との差が許容範囲ORP値内である場合、前記排出バラスト水中
の前記殺生物剤の中和を確認するように構成されたコントローラと、をさらに有する。中
和システムは、前記導入期間後、前記第1のORP値が目標ORP値未満である場合、高
モードでの前記中和剤の導入を中止し、低モードで前記中和剤を導入する。前記システム
は、前記中和剤導入部位の下流側における前記排出バラスト水の第2のORP値を測定す
るように構成された第2のORPセンサをさらに有し、前記第2のORP値が前記第1の
ORP値未満である場合、コントローラは前記排出バラスト水中の前記殺生物剤の中和を
確認するように構成されうる。導入期間後、前記第1のORP値が目標ORP値よりも大
きい場合、前記中和システムは前記中和剤を高モードで導入し続ける。前記第2のORP
値が適合ORP値よりも小さい場合、前記コントローラは前記排出バラスト水中の前記殺
生物剤の中和を確認するように構成されてもよい。
【0030】
本開示のいくつかの態様はまた、バラストタンクからバラストライン介して排出バラス
ト水の排出を管理することを対象とすることもできる。管理することは、前記排出バラス
ト水の第1のORP値を測定するステップと、導入期間中、中和剤を前記バラスト水に特
定の投与量で導入するステップを含みうる。前記中和剤は、典型的には、前記排出バラス
ト水中の殺生物剤の殺生物活性を少なくとも一部中和するように選択される。管理するこ
とは、前記中和剤を前記排出バラスト水に導入した後、前記排出バラスト水の第2のOR
P値を測定することと、導入期間後、前記第1のORP値が目標ORP値未満である場合
、前記中和剤の導入を中止すること、あるいは、前記第1のORP値が前記目標ORP値
よりも大きい場合、前記中和剤の投与を前記投与量で継続することを含みうる。前記殺生
物剤は、水源からの塩化物含有水から電解的に得てもよく、ここで前記水源は前記バラス
トラインから流動的に隔離されている。
少なくとも約40ミクロンの大きさを少なくとも有する、微粒子又は有機物の少なくと
も一部が、前記バラスト水を前記バラストタンクに導入する前に前記バラスト水から除去
されてもよい。前記微粒子又は前記有機物の前記少なくとも第1の部分を前記バラスト水
から除去する前に、前記殺生物剤の第1の部分が、前記バラスト水に導入されてもよい、
及び前記バラストタンクに導入される前に、前記殺生物剤の第2の部分が、(前記微粒子
が除去された)前記バラスト水に導入されてもよい。管理することは、前記第1のORP
値と前記第2のORP値との差に基づいて前記殺生物剤の中和を確認することをさらに含
んでもよい。目標ORP値は典型的には約200mVである。
【0031】
本開示の別の態様は、コンピュータ実行可能命令を有する非一時的コンピュータ可読媒
体を対象とすることができるものであって、コントローラにより実行される際、前記コン
ピュータ実行可能命令が前記コントローラに次のことを実行させる: バラストタンクか
ら船舶のバラストライン介して排出されるべき排出バラスト水の酸化還元電位を表す酸化
還元電位(ORP)の測定値を受け取る、 導入期間中、中和剤の供給源から前記排出バ
ラスト水中に第1投与量で中和剤を導入し、前記中和剤は前記排出バラスト水中の殺生物
剤の殺生物活性を少なくとも一部中和するために選択される、及び 前記測定されたOR
P値が目標ORP値未満である場合、導入期間後に前記中和剤の導入を中止する、あるい
は、前記測定されたORP値が前記目標ORP未満である場合、導入期間後の第1の投与
量を第2の投与量に低減する、あるいは、前記測定されたORP値が前記目標ORP値よ
りも大きい場合、導入期間後における前記中和剤の導入を前記第1の投与量率で維持する
。
【0032】
いくつかの構成では、前記システムは、例えば、海水等のバラスト水の供給源;バラス
ト水の酸化還元電位を測定して、それを表わす測定信号を送信するために配置されたセン
サ;バラスト水に殺生物剤を導入するために配置された殺生物剤の供給源;及び、センサ
からの測定信号を受信するために配置されており、測定信号と、典型的に約200mV〜
約1,000mVの範囲である、処理ORP値に少なくとも部分的に基づく出力信号を発
生して殺生物剤の供給源に送信し、バラスト水への殺生物剤の導入量を調節するように構
成されたコントローラを有する。場合によっては、殺生物剤の供給源は、塩化物含有水か
らハロゲン系殺生物剤を発生するように構成された電解塩素化システムを有することもで
きる。他の場合には、電解塩素化システムは、バラスト水、海水、塩化物種を含む水又は
それらの組合せの供給源に流体的に接続された入口を備えていてもよく、また、殺生物剤
として次亜塩素酸化合物を発生するように構成されていてもよい。電解塩素化システムは
、バラスト水、海水、塩化物種を含む水又はそれらの組合せの供給源の下流側において、
その供給源の出口に流体的に接続された第1の(排)出口を備えていてもよい。場合によ
っては、電解塩素化システムは、バラストタンク入口の上流側であって、かつ電解塩素化
システムの入口の下流側に流体的に接続された第2の(排)出口を有することもできる。
電解塩素化システムは、典型的には、次亜塩素酸化合物及び酸素化種を発生するように構
成されている。場合によっては、出力信号は、典型的には、電解塩素化システムの電気分
解装置中の電流密度を少なくとも約1,000アンペア/m
2に調節する。船上水処理シ
ステムの更なる実施態様では、処理ORP値が約500mV〜約750mVの範囲内であ
る。更に、処理ORP値は、指示又は規制された消毒要件に基づくことができる。コント
ローラは、シーチェストへの殺生物剤の導入量を調節して船上冷却システムに導入される
水の目標生物付着制御値を達成するように、構成することもできる。前記システムは、更
に、電気分解装置の下流側に流体的に接続された脱気タンクを備えていてもよい。バラス
ト水、海水、塩化物種を含む水又はそれらの組合せの供給源は、船上冷却水システムに流
体的に接続されていてもよいシーチェストであってもよい。
【0033】
バラスト水の管理に関係する本開示の1以上の態様は、バラストラインを介したバラス
ト水の供給源からバラストタンクに導入されるバラスト水の処理を対象とする。その実施
態様のいくつかにおいて、バラストタンクに導入される、バラスト水の処理方法は、バラ
スト水に殺生物剤を導入し;殺生物剤の導入量を調節して、水中で約200mV〜約1,
000mVの範囲に目標の水の酸化還元電位値を達成することを含んでいてもよい。殺生
物剤の導入は、少なくとも1種のハロゲン化種を含む殺生物剤流を発生させることを含ん
でいてもよい。殺生物剤の導入量の調節は、殺生物剤発生器の操作パラメータを調節して
、約500mV〜約750mVの範囲に目標の水の酸化還元電位値を達成することを含ん
でいてもよい。バラストタンクに導入される水の処理方法は、更に、殺生物剤流れの一部
を水源に導入することを含んでいてもよい。バラストタンクに導入される水の処理方法は
、更に、水源への殺生物剤の添加量を調節して、殺生物剤の所望の生物付着制御濃度を達
成することを含んでいてもよい。いくつかの有利な実施態様では、水を処理する方法は、
電気分解装置において、塩化物含有水を電気分解して殺生物剤流れを発生することを含ん
でいてもよい。水源からの水の一部の電気分解は、次亜塩素酸塩を含む殺生物剤流れ、場
合によっては、次亜塩素酸塩及び酸素化種を含有する殺生物剤流れ、を発生することを含
んでいてもよい。塩化物含有水の供給源は、船上冷却システムに流体的に接続されたシー
チェストからなっていてもよい。場合によっては、塩化物含有水の供給源は、バラスト水
をバラストタンクに導入するバラストラインから流体的に隔離されている。しかしながら
、他の構成では、塩化物含有水の供給源は、バラストラインを通って循環する海水、別の
バラストタンク、別個の貯蔵タンク、又はそれらの組み合わせを有する冷却システムであ
ってもよい。さらに他の構成では、塩化物含有水の供給源は、例えば、シーチェストから
の海水で少なくとも一部を満たすことが可能な貯蔵タンクでありうる。
【0034】
本開示の1以上の態様は、バラストラインを介して海水源に接続されたバラストタンク
を備えるバラスト水システムの改良方法を対象とする。実施態様のいくつかにおいて、バ
ラスト水システムの改良方法は、電気分解装置の入口を海水源に接続し、電気分解装置の
出口を脱気タンクの入口に接続し、電気分解装置及び脱気タンクの出口の下流に配置され
た酸化還元電位センサに、コントローラを接続することを有するものであってもよい。コ
ントローラは、電気分解装置の操作パラメータを調節して、バラストタンクに導入される
海水中で約200mV〜約1,000mVの範囲の目標酸化還元電位値を達成するように
構成することが好ましい。目標酸化還元電位値は、約500mV〜約750mVの範囲と
することができる。バラスト水システムの改良方法は、更に、バラストタンクの入口に脱
気タンクの出口を接続することを含んでなるものであってよい。更に、バラスト水システ
ムの改良方法は、脱気タンクの出口を海水源に接続することを含んでなるものであってよ
い。この方法は、海水源とバラストタンクとの間に接続されたフィルタの上流側に酸化還
元電位センサを配置することを有するものであってもよい。海水源は、有利には塩化物含
有水を貯蔵するシーチェスト又はリザーバからなっていてよい。船上水処理システムは、
650ppm〜750ppmの範囲の目標酸化還元電位値を有するものであってよい。セ
ンサは、その先端部に金電極を備えていてもよい。船上水処理システムは、更に、バラス
トタンク内の水の遊離塩素濃度及び酸化還元電位の少なくとも一方を測定するために配置
された第2のセンサを備えていてもよい。船上水処理システムは、バラストタンクから放
出されるべき水の遊離塩素濃度、全塩素濃度及び酸化還元電位値のうちの少なくとも1つ
を測定して、それを表わす第2の測定信号を送信するために配置された第2のセンサを備
えていてもよい。船上水処理システムは、更に、第2の測定信号を受信して、第2の測定
信号と、目標遊離塩素濃度、目標全塩素濃度及び第2の目標酸化還元電位値のうちの少な
くとも1つとに、少なくとも部分的に、基づく第2の出力信号を発生するように構成され
たコントローラを有してもよい。
【0035】
本開示の1以上の態様は、水域内の船舶の船上水処理システムを対象とする。当該処理
システムは、少なくとも1種の塩化物種を含有する水源と、水源及び水域の少なくとも一
方に流体的に接続されたフィルタと、フィルタの下流側に流体的に接続されたバラストタ
ンクと、海水の酸化還元電位が測定された信号表示を測定して送信するために配置された
センサと、バラストタンクに殺生物剤を導入するために配置された殺生物剤の供給源と、
センサから測定された信号を受信するために配置され、測定された信号と約200mV〜
約1,000mVの範囲の目標酸化還元電位値とに少なくとも部分的に基づく出力信号を
発生して、殺生物剤の供給源に送信し、バラストタンク及びフィルタに導入される水の少
なくとも一方への、殺生物剤の導入量を調節するように構成されたコントローラと、を備
えていてもよい。
【0036】
船上水処理システムを対象とする更なる実施態様は、海水、塩化物種を含有する水又は
それらの混合物の供給源を備えていてよく、それは、船舶が停泊しているときには、海水
、塩化物種を含有する水又はそれらの混合物を貯蔵するために利用される貯蔵容器であっ
てよい。従って、例えば、海水を1以上のリザーバに溜めて保存しておき、船舶が淡水域
を通過中の場合に、本明細書に記載の1種以上の殺生物剤の供給源によって利用すること
ができる。実際、実施態様によっては、2つ以上のバラストタンクを装備した船舶では、
いずれかのバラストタンクを利用して海水を貯蔵しておき、その後で、殺生物剤の供給源
用の塩化物含有水の供給源として、貯蔵した海水の少なくとも一部を利用することができ
る。
【0037】
本開示の1以上の態様は、船舶用水システムの生物付着防止制御を提供する。例えば、
消毒に利用される電気触媒的に生成した物質を用いて、典型的には、消毒に用いられる酸
化剤濃度より低い酸化剤濃度で、船舶の冷却システムの生物付着を抑制することもできる
。
【0038】
塩素要求量は、塩素と反応する無機及び有機化合物の存在に関連しうる。塩素要求量が
満たされるまでは、消毒に利用しうる遊離塩素はおそらく存在しないであろう。窒素化合
物が存在する場合、遊離塩素(free chlorine)より弱い殺生物剤と考えられるクロラミ
ン(chloramine)が生じうる。塩素投与量(CD)は、一般的に式(1)の関係によって
表されるように、全残留塩素(TRC)及び塩素要求量(Demand
chlorine
)に依存する。
【数1】
【0039】
全残留塩素は、式(2)の関係によって表すことができる。
【数2】
【0040】
HOClのような遊離塩素は、それが存在する場合、典型的には、式(3)の関係に従
って解離する。
[化1]
HOCl→H
++OCl
− (3)
【0041】
次亜塩素酸(HOCl)は、好ましい殺生物剤である。しかしながら、TRCを用いて
塩素処理の効果の特性を明らかにしても、クロラミン濃度のばらつきによって、有効TR
Cの範囲が僅か5ppm未満から40ppmにもわたる可能性があるため、とりわけ、汚
染された港湾から船上に汲みあげたバラスト水の処理に関して、消毒効果を正確に予測す
るのは不可能である。過剰な遊離塩素を用いて、要求量のばらつきに対応する場合には、
結果として、船舶の鉄鋼構造の腐食といった望ましくない腐食の恐れが生じ、更に、トリ
ハロメタン(THM)のような潜在的に毒性の消毒副産物が生成するが、これは、典型的
には、塩素要求量及び遊離有効塩素のレベルに依存する。
【0042】
従って、本開示によれば、例えば、バラスト水を有効に消毒するレベルに、殺生物剤の
添加又は導入を、確実に制御するシステム及び技術を提供する。実際、本開示のいくつか
の態様によれば、過塩素化の可能性を低減するシステム及び技術を提供する。本開示の更
に別の態様では、腐食及び副産物生成の可能性を最小限にする、又は低下させる有効殺生
物剤投与量の選択、監視及び調節を可能にするシステム及び技術に関する。本開示の好ま
しい態様は、塩素要求量、汚染レベル及びpHといった局所的海水条件とは無関係に、任
意の港湾において、バラスト水の有効な消毒を提供するものであり、測定されたORP又
は酸化還元電位によって表わされるような、十分な殺生物剤の酸化強度を維持する本開示
の態様を利用することによって、当該有効な消毒を確実に行うことができる。
【0043】
酸化還元電位又は水の酸化還元を測定するように構成された少なくとも1つのORPプ
ローブ又はセンサは、本開示の1以上の実施形態において利用することができる。測定電
位は、水中において最も強い活性の酸化剤又は還元剤によって決定され、本開示のいくつ
かの態様では、典型的には、HOClになりうる。しかしながら、海水には、典型的には
、約50ppm〜60ppmの臭化ナトリウムが含まれているので、塩素を利用する海水
消毒は、式(4)によって変換された、例えば次亜臭素酸等の臭素化種によって、少なく
とも一部行われうる。
[化2]
HOCl+NaBr→NaCl+HOBr (4)
【0044】
特定用途に関する酸化還元電位E
hは、通常、ネルンスト式(5)に基づいている。
【数3】
上記式中、E
hは反応の酸化還元電位であり、E
0は標準電位であり、RT/nFはネ
ルンスト数であり、A
oxは酸化剤の活量を表わし、A
redは還元剤の活量を表わして
いる。
【0045】
塩素は通常1490mVの標準電位を有し、臭素は通常1330mVの標準電位を有す
る。海水の典型的なpH7〜8.4の範囲内において、HOBrの濃度はHOClの濃度
よりも安定している。例えば、pH=8.0において、非解離のHOBr種は、約83%
であるのに対して、HOCl種は、約28%である。従って、塩素による海水の消毒に必
要なORP値は、淡水に関して設定される値とは異なる可能性があると考えられる。
【0046】
配管及び他の湿潤した船体構造が腐食する可能性は低いとはいえ、バラスト水処理のよ
うに海水処理に関して処理ORP値を確立することは、消毒又は生物付着制御に供するレ
ベルの酸化剤濃度、例えば塩素濃度の維持を容易にする上では有利になりうる。連続塩素
化型システムを含む特定のシステムの場合、塩素レベル(又は酸化剤レベル)は、約0.
5ppm〜1.0ppmの範囲内、好ましくは0.1ppm〜0.2ppmの範囲内に保
つことができると考えられる。従って、実施態様によっては、処理ORP値の上限値は、
約1ppmの対応する塩素レベルを供するか、あるいは許容腐食速度を超えない条件をも
たらすように決定されうる。経験的情報を利用して、ORPレベルと測定された腐食速度
との関係を、少なくとも一部確立することができる。例えば、年間1ミルの鉄鋼腐食速度
を許容指針として用いて、少なくとも一部、処理ORP値の上限を規定することができる
。処理ORP値の下限値は、所望の不活性化効果を十分に生じる条件になるように決定す
ることができる。例えば、経験的情報を利用して、ORPレベルと不活性化効率との関係
を確立することができる。
【0047】
遊離塩素残留技術の殺菌効果に影響を与える要因には、塩素残留濃度、接触時間、pH
及び水温が含まれる。pHは、港湾ごとに、あるいは季節ごとに変わる可能性もある。例
えば、季節的な藻類の繁殖によって、高いpHの海水が生じる可能性がある。固定塩素排
出量に基づく処理システムは、典型的に最悪のシナリオ、すなわち高pHでの条件に対処
するように設計されているので、海水のpHがより低い条件下では、バラスト水の過剰塩
素化が生じ、これに伴って、腐食の可能性が強まり、DBP生成の可能性が高くなりうる
。
【0048】
その消毒力ではなく塩素濃度を測定する残留塩素分析器とは異なり、ORPセンサは処
理される水の酸化(電子消費)電位又は還元(電子供給)電位の定性的な表示を提供する
。
【0049】
実験データを更に観察すると、還元剤の量が一定の場合、酸化還元電位及び残留塩素濃
度は、両方とも、不活性化率のパラメータとして用いることができるが、還元剤の量が変
化する場合、酸化還元電位のみが依然として利用できることが分かる。
【0050】
本開示の水処理プロセスは、典型的にはバラスト水として使用できる海水のバッチを用
いて行われる。このような場合、塩素等の酸化剤の濃度は、酸化剤が無機物質、有機物質
及び生物学的物質と反応するので、典型的には、経時的に減少する。本開示のいくつかの
態様では、処理されつつある水における濃度の動態に基づいて、既処理水のORP値を制
御する。従って、ORP制御は、通常、殺生物剤が少なくとも一部の、好ましくはほぼ全
ての、ANSを、例えば時間遅延ループによって、不活性化し、その一方で船舶構造の腐
食及びDBPの生成という潜在的有害性を最小限に抑えるのに効果を発揮する時間を与え
るように工夫されている。
【0051】
図3には、本開示の少なくとも1つの態様による船上処理システム200の概略が図示
されている。処理システム200は、少なくとも1つのバラストタンク120に流体的に
接続されたシーチェスト110のような、海水源を備えていてもよい。処理システム20
0は、塩素投与レベルが既処理水の酸化還元電位によって制御される、塩素消毒に基づく
水処理システムを対象としうる。例えば、処理システム200は、塩素投与量のレベルを
可変にし、その一方で、処理海水の目標又は所望の酸化還元電位を、ANSの有効死亡率
をもたらすレベルに保つ、ORPコントロールシステムを備えていてもよい。本開示の特
定の側面のいくつかにおいては、処理システム200によって、処理される水質には関係
なく、残留次亜塩素酸(HOCl)を提供し、好ましくは処理海水の消毒を行うのに十分
なレベルに保つことができる。例えば、処理システム200は、処理すべき水のpH若し
くは汚染度又はその両方を補正する必要をなくすることができる。こうした消毒処理を容
易にするため、システム200は、バラストタンク120に導入された水の測定特性を示
すために配置された少なくとも1つのプローブ又はセンサ210と、プローブ又はセンサ
210からの測定特性を表わす測定信号を受信するために配置された少なくとも1つのコ
ントローラ又はコントロールシステムCとを備えていてもよい。上述のように、このまし
い非限定的実施態様には、水のORPレベルを示すことができるセンサ又はプローブが、
必要とされる。処理システム200は、更に、少なくとも1種の殺生物剤を水中に導入す
るために配置された、少なくとも1種の消毒剤又は殺生物剤の少なくとも1種の供給源2
20を備えていてもよい。例えば、塩素供給システムを利用して、タンク120に導入さ
れた水に少なくとも1つの消毒種を送り込むことができる。概略的に図示されているよう
に、制御フィードバックループを設けて、処理すべき水への殺生物剤の導入を調節するこ
とができる。少なくとも1つのORPプローブを水配管に直接挿入し、又は、保守を容易
にするため循環ループ内に取り付けることができる。他の場合には、ORP監視及びコン
トロールシステムは、バラスト水供給本管110から支流を取り出すポンプ240を備え
ていてもよい。ORPプローブと本管とを接続するパイプ及びフランジは、ORPプロー
ブに害を及ぼし又は望まざる電食条件を生じさせる可能性のある迷走電流を防止するため
、本管と同じ材料から製作するのが望ましい。少なくとも1つのプローブは、本管と同じ
電位を有することが望ましいが、これはプローブを本管に接地することによって実現でき
る。
【0052】
本開示のいくつかの態様における処理システム300の別の1つの略図が
図4に示され
ている。システム300は、船舶内に配置されたシーチェスト310のような海水源を含
んでいてもよい。システム300は、更に、典型的には少なくとも1つのバラスト水タン
ク320を具備する浮力システムを備え又はそれに流体的に接続することができる。特定
の実施態様において、システム300には、シーチェスト310に、できれば少なくとも
1つのバラストタンク320に、流体的に接続された少なくとも1種の酸化剤又は殺生物
剤の供給源330を、備えていてもよい。更なる他の実施態様において、シーチェスト3
10は、海水を利用する船舶の少なくとも1つのシステムに流体的に接続される。例えば
、シーチェスト310は、船舶の少なくとも1つの冷却水システムCWSに流体的に接続
されて、それに海水を供給することができる。さらに、酸化剤又は殺菌剤の供給源330
は、少なくとも1つの冷却水システムCWSに流体的に接続されてもよい。供給源330
は、前駆種を少なくとも1つの消毒又は殺生物化合物に電気化学的に変換することが可能
な電気分解装置332のような、少なくとも1つの電気的駆動装置を備えていてもよい。
供給源330は、更に、装置332に電気エネルギを供給して、シーチェスト310又は
冷却水システムCWSから供給される塩素を含む水の殺生物剤への電気触媒的転換を促進
するために配置された、少なくとも1つの電源334を備えていてもよい。供給源330
は、更に、電気触媒的殺生物剤の生成プロセス中に生じる水素ガス等の任意のガスの少な
くとも1種の換気口Vによる除去を促進する、少なくとも1つの脱気単位操作装置336
を備えていてもよい。供給源330の少なくとも1つの出口は、タンク320に接続して
もよい。脱気単位操作装置336の出口は、タンク320に流体的に接続されるのが望ま
しい。望ましい実施態様の場合、供給源330の出口は、更にシーチェスト310に接続
されて、電気分解装置332及び脱気単位操作装置326のいずれかからの、少なくとも
1つの殺生物剤を含む、流れを生じさせる。
図7に概略的に図示されているように、シス
テム300は、支流抜き出し技術を利用することが可能であり、このとき、シーチェスト
310から取り出された海水の一部が供給源330に導入され、船舶浮力システム320
に導入されるべき海水の残余が少なくとも1つのフィルタ340によって濾過される。
【0053】
酸化剤の供給源330は、電気分解装置332のような、少なくとも1種の酸化種(こ
れに限定するわけではない)を生成する、少なくとも1つの電気的駆動式装置を備えてい
てもよい。システム300は、更に、システム300の少なくとも1つの構成要素の少な
くとも1つの特性又は性質を示すために配置された少なくとも1つのセンサ又はプローブ
を備える監視システムを備えていてもよい。例示的に図示されているように、監視システ
ムは、本管路342におけるシーチェスト310からの水の少なくとも1種の性質を測定
するために配置された少なくとも1つのセンサ352と、浮力システム320の1つ以上
のバラストタンク内における水の特性のような、浮力システム320の少なくとも1つの
性質を測定するために配置された少なくとも1つのセンサ354と、所望により、1つ以
上のバラストタンクから出口又は放出口Dに放出される水の性質を測定するために配置さ
れた少なくとも1つのセンサ356を備えている。システム300には、更に、少なくと
も1つのコントローラ又はコントロールシステムCを備えていてもよい。コントロールシ
ステムCは、システム300の少なくとも1つの操作パラメータを調節又は調整するよう
に構成するのが望ましい。本開示の特定の態様において、コントロールシステムCは、監
視システムの少なくとも1つのセンサから、少なくとも1つの入力信号を受信することが
できる。本開示の更なる特定の態様において、コントロールシステムCは、供給源330
及び浮力システムのいずれについても、少なくとも1つの操作パラメータを調節すること
ができる。更なる他の特定の側面において、コントロールシステムCは、バラストタンク
320からの排水操作を監視し、制御することができる。
【0054】
バラスティングを含むがこれに限定されない浮力調整操作中、供給源330からの塩素
等の酸化剤又は殺生物剤を含む流れは、1つ以上の塩素分配装置によって、シーチェスト
310及びバラスト水本管路342に導入することができる。本管路342における塩素
処理水の酸化還元電位は、ORPセンサであってもよいセンサ352を備える監視システ
ムによって監視することができる。センサ352は、フィルタ340の下流側に配置され
るように図示されているが、他の実施態様では、海水の特性を指示し又は表示するため、
フィルタ340の上流側に配置されたセンサ352を、又はフィルタ340の上流側又は
シーチェスト310内にある追加センサをも含むことができる。コントロールシステムC
は、監視システムからの1以上の指示又は表示を受信し、好ましくは少なくとも1つの表
示に基づいて、供給源330の操作パラメータのようなシステムの少なくとも1つの操作
パラメータを適宜調整するように構成することができる。例えば、コントロールシステム
Cは、システム300の単位操作装置のいずれかにおける既処理水のORPを、予め設定
した許容可能な又は望ましい排水限界内に維持するように、構成することができる。所望
により、排水操作又はデバラスト操作中に、例えば還元剤又は中和剤の供給源360から
、少なくとも1種の還元剤又は中和剤を、放出される処理バラスト水に導入することがで
きる。
【0055】
したがって、本開示のさらなる態様は、ORP系のコントロールシステム及び技術、並
びに、例えば、好ましくはデバラスティング(de−ballasting)操作中に排
出される前に、バラスト水等の処理水中の残留殺生物剤の濃度(例えば、塩素及び/又は
次亜塩素酸塩の濃度)を、目標ORP値といった許容レベルまで除去又は低減する、中和
水サブシステム及び方法を含むことができる。目標ORP値は規制限度に基づいてもよい
。脱塩素化は、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、過酸化水素、及び第一鉄塩(これらに限
定されない)のような少なくとも1つの還元剤を利用することができる。塩素の中和は、
脱塩素コントローラ、例えば第1のコントローラを操作又は構成して、排出されるバラス
ト水内の殺生物剤の中和又は脱塩素を、典型的な未処理の原海水の範囲である、約150
mV〜約350mVの範囲内、好ましくは約200mVから約300mVの範囲内にする
ことによって達成してもよい。他の中和技術として、活性炭、紫外線系システム、及び金
属触媒固定床のいずれを利用してもよい。
【0056】
オプションとして、同一のORP制御機器を、デバラスティング中にORP設定を適切
に変更しながら、バラスト操作とデバラスト操作との両方に使用することができる。例え
ば、バラスト水、海水、塩化物種を含有する水、又はそれらの組み合わせを、シーチェス
ト110からタンク120に導入してもよく、そのため、結果として得られる前記タンク
内の水のORP値は、例えば300mV、さらには100mV未満等といった概ね所望の
レベル又は許容レベル以下のORP値を有する。
【0057】
特定の実施形態において、ORPセンサ356は、浮力システムからの排出水のORP
値又は酸化剤濃度を測定することができる;コントロールシステムCは、前記排出水中の
任意の酸化剤又は殺生物剤を少なくとも一部又は許容限度まで中和する還元剤の添加量又
は投与量などの酸化剤中和システム360の操作パラメータを、好ましくはセンサ356
からの測定信号に基づいて調整することができる。場合によっては、排出されるバラスト
水中の所望のレベルの残留酸化剤濃度を達成するために、ある濃度の全残留酸化剤をOR
Pセンサの代わりに又はそれと共に使用してもよい。望ましい排水限界は、管轄区域の指
示を満たすために変わりうる。例えば、排水中の許容可能な塩素レベルは、約1mg/L
未満、場合によっては約0.5mg/L未満、場合によっては2ppm未満でありうる。
【0058】
特定の実施形態において、ORPセンサ354は、浮力システムからの排出水のORP
値又は酸化剤濃度を測定することができる;コントロールシステムCは、前記排出水中の
任意の酸化剤又は殺生物剤を少なくとも一部又は許容限度まで中和する還元剤の添加量又
は投与量などの酸化剤中和システム360の操作パラメータを、好ましくはセンサ354
からの測定信号に基づいて調整することができる。
【0059】
特定の実施形態において、コントロールシステムCは、3つのモードのうちの少なくと
も1つで排出されるべき水への中和剤の添加、好ましくは脱塩素剤の添加を調整するよう
に構成される。前記3つのモードは、例えば、オフモード、低モード及び高モードである
。
【0060】
いくつかの構成において、バラスト水がバラストタンク320から排出され始め、排出
されるべきバラスト水が目標値よりも大きい場合、酸化剤中和システム360は自動的に
高モードに切り替わる。当該高モードは、3〜5分間維持されて、ORPセンサ354が
定常状態に達することを可能にする。定常状態、又は3〜5分経過すると、中和剤の添加
モードがセンサ354からの信号に基づいて自動的に切り替わる。前記オフモードは、排
出されるバラスト水のORP値となるバラスト水が目標値未満、例えば約300mV未満
、又は他の例では約200mV未満である場合に作動する。さらなる代替構成では、排出
されるバラスト水が約200mV未満のORP値を有する場合、低モードが作動する。セ
ンサ354からのORP値が少なくとも約200mVであると、高モードが作動する。
【0061】
特定の実施形態において、ORPセンサ356からのORP測定値は、酸化剤中和シス
テム360が従事し、かつ許容範囲内で適合して作動していることの検証を提供する。例
えば、当該検証は以下のように進められる:
酸化剤中和システム360がオフモードにある場合、ORPセンサ356の測定値は、O
RPセンサ354の測定値±50mVの値と同一になるはずであり、あるいは、酸化剤中
和システム360が低モードにある場合、ORPセンサ356の測定値は、ORPセンサ
354の測定値未満になるはずである。このことは、排水中に過剰な脱塩素剤が存在する
ことを示しうるものであり、あるいは、酸化剤中和システム360が高モードにある場合
、ORPセンサ356の測定値は300mV未満になるはずである。
【0062】
特定の実施形態において、デバラスティング中、携帯型の総残留酸化剤(TRO)分析
器を使用して総塩素量を測定するために、オペレータは、排出水のサンプルを手動で収集
することができる。測定値は0.1mg/L未満になるはずである。測定値が0.1mg
/Lよりも大きい場合には、オフモードから低モードへ若しくは低モードから高モードへ
手動で切り替えることにより、又は脱塩素剤がより高濃度値(例えば、表1参照の提供さ
れたルックアップテーブルに従って)を示すように手動で選択することにより、オペレー
タは、高レベルの中和剤を各々選択することができる。
【0063】
塩素を中和するための亜硫酸ナトリウム又は亜硫酸水素ナトリウムなどの脱塩素剤の理
論重量比は、それぞれ1.85及び1.65である。典型的には、過剰の脱塩素剤を使用
して、確実に残留塩素を極低濃度にする。例えば、バラスト水ポンプ(図示せず)の上流
側に注入される酸化剤中和システム360由来の亜硫酸ナトリウムは、効果的な混合のた
めに、4.7〜5重量比の亜硫酸ナトリウムの用量が必要とされ、0.1mg/L未満の
塩素濃度に効率よく低減する。
【0064】
特定の実施形態において、必要とされる最大脱塩素剤濃度は、容器の種類及び交換パタ
ーンに従って分類できる。全ての船舶がこれらの分類に正確に適合するわけではないこと
を理解すべきである。コンテナ船及びコースター船は通常航海時間が短く、排水等のバラ
スト作業は外海で行われることが予想される。このような場合、2mg/Lと同程度の高
いTROレベルが予想され、そのため最大で10〜12mg/Lの亜硫酸塩濃度が必要と
される。タンカー及び他の一般的な比較的長い航海船については、排出水のTRO測定値
は1mg/Lを超えていないと間違いなく予想されることから、脱塩素剤の最大用量は5
mg/Lを超えないはずである。表1のグループは、酸化剤中和システム360の運転モ
ード、バラスト水の保持時間、及びバラスト水の供給源に関する大型船の脱塩素剤用量(
脱塩素剤投与量)レベルの概算を示す。
表1:脱塩素化モードのオペレータマニュアル入力に関する参照表。
【表1】
【0065】
中和剤の一例は亜硫酸ナトリウム15%w/w溶液である。この濃度を超えると再結晶
化する可能性があるため、取り扱いに関して有利である。亜硫酸水素ナトリウムについて
は、30〜40%w/wの溶液が液体形態で入手可能である。
【0066】
コントロールシステムCは、
図5に例示的に示されているように、1以上のコンピュー
タシステムを使用して実施することができる。コントロールシステムCは、例えば、イン
テル ペンティアム(登録商標)タイプのプロセッサ又は他の任意のタイプのプロセッサ
、あるいはそれらの組み合わせに基づくものなどの汎用コンピュータであってもよい。代
替として、コンピュータシステムは、例えば、分析システムを対象とした特定用途向け集
積回路(ASIC)又はコントローラといった特殊なプログラミングを施された専用ハー
ドウェアを含んでいてもよい。
【0067】
コントロールシステムCは、例えば、ディスクドライブメモリ、フラッシュメモリデバ
イス、RAMメモリデバイス、又は記憶データ要の他のデバイスのうちのいずれか1以上
有しうる1以上のメモリデバイス710に通常接続される1以上のプロセッサ705を含
んでもよい。コントロールシステムCは、典型的には、例えば、1以上のディスクドライ
ブメモリ、フラッシュメモリ素子、RAMメモリ素子又は他のデータ記憶用素子のうちい
ずれか1以上備えていてよい、1以上のメモリ素子710に接続されている1つ以上のプ
ロセッサ305を含んでいてもよい。メモリ710は、通常、処理システム及び/又はコ
ントロールシステムCの操作中にプログラム及びデータを格納するために使用される。例
えば、メモリ710を用いて、ある時間に亘るパラメータに関する履歴データを記憶する
ことができる。本開示の実施形態を実施するプログラミングコードを含むソフトウェアは
、コンピュータの読取り可能及び/又は書込み可能な不揮発性記録媒体に記憶し、更に、
典型的には、メモリにコピーして、後でプロセッサによって実行できるようにすることが
できる。こうしたプログラミングコードは、複数のプログラミング言語、例えば、Jav
a(登録商標)、Visual Basic、C、C#、若しくは、C++、フォートラ
ン、パスカル、Eiffel、Basic、COBALのうちのいずれか、又は、それら
の様々な組み合わせのうちのいずれか、で書くことができる。
【0068】
コントロールシステムの構成要素は、(例えば、同じ装置内に組み込まれた構成要素間
における)1つ以上のバス及び/又は(例えば、独立した個別装置上に位置する構成要素
間における)ネットワークを含んでもよい相互接続機構730によって結合することがで
きる。相互接続機構は、典型的には、システムの構成要素間の情報(例えば、データ、命
令)の交換を可能にする。
【0069】
コントロールシステムは、入力信号i1、i2、i3、・・・、inを供給する1以上
の入力装置730、例えば、監視システムのセンサ、キーボード、マウス、トラックボー
ル、マイクロフォン、タッチスクリーンのうちのいずれかを備えていてもよく、また、出
力信号s1、s2、s3、・・・、siを供給できる1つ以上の出力装置740、例えば
、印刷装置、ディスプレイスクリーン、又はスピーカを備えていてもよい。さらに、コン
ピュータシステムは、(システムの構成要素の1つ以上によって形成可能なネットワーク
に加えて又はその代わりとして)通信ネットワークに、コンピュータシステムを接続する
ことが可能な1つ以上のインタフェース(図示せず)を備えることができる。
【0070】
本開示の1つ以上の実施形態によれば、前記1つ以上の入力装置は、パラメータを測定
するためのセンサを備えることができる。代わりに、センサ、絞り弁若しくは流量制御弁
及び/又はポンプ或いはこれらの構成要素の全ては、コンピュータシステムに操作可能に
結合された通信ネットワークに接続することができる。例えば、センサ352、354、
及び356は、コンピュータシステムに直接接続された入力装置として構成することが可
能であり、絞り弁及び/又はポンプは、コンピュータシステムに接続された出力装置とし
て構成することが可能であり、上記の任意の1つ以上を別のコンピュータシステム又は構
成要素と結合して、通信ネットワークを介して通信を行なわせることができる。こうした
構成をとると、別のセンサからかなりの距離をおいて1つ以上のセンサを配置することが
可能になり、又は、任意のサブシステム及び/又はコントローラから離間して任意のセン
サを配置することが可能になり、それでもなお、それらの間におけるデータ供給が行なえ
るようにすることが可能になる。
【0071】
コントロールシステムは、本開示の様々な態様を実施できる1つのタイプのコンピュー
タシステムとしての例を示されているが、本開示は、例示的に示したソフトウェア又はコ
ンピュータシステムでの実施に限定されるものではない。実際のところ、例えば、汎用コ
ンピュータシステム、コントローラ、又は、その構成要素若しくはサブセクションでは実
施せず、代わりに、専用システム若しくは専用プログラマブルロジックコントローラ(P
LC)として又は分散コントロールシステムにおいて実施することもできる。更に、当然
明らかなように、本開示の1つ以上の特徴又は態様は、ソフトウェア、ハードウェア若し
くはファームウェア又はこれらの任意の組み合わせで実施することができる。例えば、前
記コントローラによって実行可能なアルゴリズムの1つ以上のセグメントは、次に、1つ
以上のネットワークを介して通信可能な個別コンピュータで実施できる。
【0072】
本開示の、これら及びその他の実施形態の機能及び利点については、下記の例から更に
深く理解することができるであり、これらの例は、本開示の1以上のシステム及び技術の
便益及び/又は利点を例示しているが、本開示の全範囲を例証しているわけではない。
【0073】
図6及び
図7は、それぞれ、塩素化プロセス及び脱塩素化プロセスのための制御アルゴ
リズムを例示的に示すものであり、例えば、本開示の1以上の態様におけるコントロール
システムC内で実施することができる。
図6に示すように、フィルタの上流側又は下流側
、あるいはその両方におけるバラスト水に対して、生成した殺生物剤を添加する。ORP
値を測定して、殺生物剤の生成速度若しくは添加される殺生物剤の量、又はその両方を調
整して使用し、所望の目標値を達成する。ORPは継続的、連続的、又は断続的に測定さ
れて殺生物剤の導入を維持又は調整する。
図7に示すように、デバラストが始まると、初
期モードを使って、手動又は自動的に、例えば低モード(LOW mode)又は高モー
ド(HIGH mode)モードで中和剤を導入する。排出されているバラスト水のOR
P値を測定して、目標値と比較する。測定されたORP値が目標値内、例えば約300m
V未満である場合、モードはオフモード又は低モードのいずれかにあると再決定される。
測定されたORP値が目標より大きい場合、高モードが維持される。
【0074】
これで本開示のいくつかの例証となる実施形態の説明を終えたが、当該当業者には当然
明らかなように、上記は単なる例証であって、限定的なものではなく、ただ単に、例示の
ために提示されたものでしかない。多様な改変及び他の実施形態が、当該分野における当
業者の裁量範囲内にあり、本開示の範囲内に含まれるものと考えられる。とりわけ、本明
細書に提示された例の多くは、方法行為又はシステム要素の特定の組み合わせを含んでい
るが、それらの行為及び要素を他の態様で組み合わせて、同じ目的を達成できることを理
解すべきである。
【0075】
当該当業者には当然明らかなように、本明細書に記載のパラメータ及び構成は、例示的
なものであり、実際のパラメータ及び/又は構成は、本開示のシステム及び技術が用いら
れる特定用途に依存されうる。また、当該当業者であれば、ありきたりの実験法しか用い
なくても、本開示の特定の実施形態の等価物を認識し又は確認することができるはずであ
る。従って、本明細書に記載の実施形態は単なる例証として提示されたものでしかなく、
添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内において、本開示は具体的に記述したもの
とは異なる方法で実施できることを理解すべきである。
【0076】
更に、やはり当然明らかなように、本開示は、本明細書に記載の各特徴、システム、サ
ブシステム若しくは技術、及び、本明細書書に記載の2つ以上の特徴、システム、サブシ
ステム若しくは技術の任意の組み合わせ、並びに/又は、方法を対象とするものであり、
こうした特徴、システム、サブシステム及び技術が互いに矛盾しない場合、請求項におい
て具体化された本開示の範囲内に含まれるものとみなされる。更に、1つの実施形態との
関連においてのみ論じられた行為、要素及び特徴は、他の実施形態における同様の役割か
ら除外されるように意図されているわけではない。
【0077】
本明細書において使用されるとき、用語「複数の」は、2つ以上の部品又は構成要素を
表わしている。「含んでなる」、「含む」、「具備する」、「備える」、「含有する」及
び「包含する」という用語は、明細書又は特許請求の範囲などのいずれにおいても、オー
プンエンド(開いた系)の用語であり、すなわち、「〜を含むが、〜に限定されない」こ
とを表わしている。従って、こうした用語の使用は、その後に挙げる部品及びその等価物
並びに追加部品を包含することを意味する。「〜から構成される」及び「本質的には〜か
ら構成される」という移行句だけが、それぞれ、請求項に関する限定的な又は半限定的な
移行句である。請求項における「第1の」、「第2の」、「第3の」等のような序数用語
を使用して、1つの請求項の構成要素を改変することは、1つの請求項要素のもう1つの
請求項要素に対する優先度、順位若しくは順番、又は、ある方法のステップが実施される
時間的順序を単独で暗示するものではなく、ただ単に、ある名称を有する請求項要素の1
つを同じ名称(ただし序数用語の使用)を有するもう1つの要素から区別して、請求項要
素の見分けがつくようにするためのラベルとして用いられているだけである。
前記バラスト水ラインに流体的に接続され、前記バラスト水から固形分の少なくとも一部を除去して前記バラストタンクへ導入されるよう配置されたフィルタをさらに含み、前記殺生物剤の供給源は、前記フィルタの上流側に前記殺生物剤の少なくとも一部を導入するよう構成されている、請求項1に記載のシステム。
前記殺生物剤の供給源は、塩化物含有水の供給源から前記殺生物剤を電解的に生成させるように構成された電気分解装置を有し、前記塩化物含有水の供給源が船冷却水システム、シーチェスト、及び塩化物含有水の貯水タンクのいずれかである、請求項1に記載のシステム。
前記導入期間後、前記第1のORP値が目標ORP値未満であり、かつ前記保持時間が最小保持時間未満である場合、前記中和システムは、前記高モードでの前記中和剤の導入を中止し、前記低モードで前記中和剤を導入する、請求項1に記載のシステム。