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特開2021-181111トーチ保持構造体およびこれを備えたトーチ保持セット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-181111(P2021-181111A)
(43)【公開日】2021年11月25日
(54)【発明の名称】トーチ保持構造体およびこれを備えたトーチ保持セット
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/12 20060101AFI20211029BHJP
   B25J 15/04 20060101ALI20211029BHJP
【FI】
   B23K9/12 331H
   B25J15/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2020-88274(P2020-88274)
(22)【出願日】2020年5月20日
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】井上 雅博
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS11
3C707BS10
3C707GS01
3C707MT01
(57)【要約】
【課題】工具を用いることなく溶接トーチの交換を容易に行うことが可能なトーチ保持構造体を提供する。
【解決手段】本発明のトーチ保持構造体1は、溶接ロボットのマニピュレータの先端に取り付けられ、溶接トーチ7を着脱可能に保持する。トーチ保持構造体1は、溶接トーチ7を間に挟んで互いに対向して配置される第1クランプ部2および第2クランプ部3と、クランプレバー4と、を備える。クランプレバー4は、第1クランプ部2および第2クランプ部3を近接させて溶接トーチ7を挟み持つ保持状態と、第1クランプ部2および第2クランプ部3を離反させて溶接トーチ7の保持を解放する解放状態と、に切り替え可能である。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接ロボットのマニピュレータの先端に取り付けられ、溶接トーチを着脱可能に保持するトーチ保持構造体であって、
上記溶接トーチを間に挟んで互いに対向して配置される第1クランプ部および第2クランプ部と、
上記第1クランプ部および上記第2クランプ部を近接させて上記溶接トーチを挟み持つ保持状態と、上記第1クランプ部および第2クランプ部を離反させて上記溶接トーチの保持を解放する解放状態と、に切り替え可能なクランプレバーと、を備える、トーチ保持構造体。
【請求項2】
上記第1クランプ部は、第1基端部と、当該第1基端部につながり、上記溶接トーチの外周部を押圧する第1中間部と、上記第1中間部に対して上記第1基端部とは反対側につながる第1先端部と、を有し、
上記第2クランプ部は、上記第1基端部に対して第1軸線の周りに回動可能である第2基端部と、当該第2基端部につながり、上記溶接トーチの外周部を押圧する第2中間部と、上記第2中間部に対して上記第2基端部とは反対側につながる第2先端部と、を有し、
上記クランプレバーが上記保持状態にあるとき、上記第1先端部および上記第2先端部には、上記第1先端部および上記第2先端部が互いに近接する方向への押圧力が付与される、請求項1に記載のトーチ保持構造体。
【請求項3】
上記クランプレバーは、アーム部およびレバー部を含み、
上記アーム部は、基端部が上記第1先端部に対して上記第1軸線と平行な第2軸線の周りに回動可能に支持され、かつ上記基端部から先端部まで所定方向に延びており、
上記レバー部は、上記アームの上記先端部に対して上記第1軸線と平行な第3軸線の周りに回動可能である押圧部と、当該押圧部につながる操作部と、を有し、
上記押圧部は、上記第3軸線に沿って見て円周に沿う外側面を有し、
上記第3軸線に沿って見て上記外側面をなす円の中心は、上記第3軸線とは異なる位置にあり、
上記保持状態にあるとき、上記円の中心は、相対的に上記第2軸線に近接する位置にある、請求項2に記載のトーチ保持構造体。
【請求項4】
上記押圧部と上記第2先端部との間に介在し、上記アーム部が延びる方向に沿って位置変更可能とされた調整部を備える、請求項3に記載のトーチ保持構造体。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載のトーチ保持構造体と、当該トーチ保持構造体に保持される溶接トーチと、を備えたトーチ保持セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接トーチを保持するトーチ保持構造体、およびこれを備えたトーチ保持セットに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば消耗電極式ガスシールドアーク溶接において、溶接ロボットを用いた自動溶接の手法が採用されている。多関節型ロボットなどのマニピュレータを備えた自動溶接を行うための溶接ロボットでは、溶接トーチはマニピュレータ先端の手首部に取り付けられている(たとえば特許文献1を参照)。溶接ロボットにおける溶接トーチの固定は、たとえばネジ締結により行う。あるいは、スリット加工を設けた略円筒状のクランプ部に溶接トーチを挿入し、ネジにてクランプを締めることで溶接トーチをマニピュレータ先端に固定していた。
【0003】
上記従来の溶接ロボットでは、溶接トーチがネジ締結等によって固定されている。このため、溶接トーチの交換の際には、ネジの緩め・締め付けは工具を用いての作業が必要で作業性が悪く、改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−36253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、工具を用いることなく溶接トーチの交換を容易に行うことが可能なトーチ保持構造体を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を採用した。
【0007】
本発明の第1の側面によって提供されるトーチ保持構造体は、溶接ロボットのマニピュレータの先端に取り付けられ、溶接トーチを着脱可能に保持するトーチ保持構造体であって、上記溶接トーチを間に挟んで互いに対向して配置される第1クランプ部および第2クランプ部と、上記第1クランプ部および上記第2クランプ部を近接させて上記溶接トーチを挟み持つ保持状態と、上記第1クランプ部および第2クランプ部を離反させて上記溶接トーチの保持を解放する解放状態と、に切り替え可能なクランプレバーと、を備える。
【0008】
好ましい実施の形態においては、上記第1クランプ部は、第1基端部と、当該第1基端部につながり、上記溶接トーチの外周部を押圧する第1中間部と、上記第1中間部に対して上記第1基端部とは反対側につながる第1先端部と、を有し、上記第2クランプ部は、上記第1基端部に対して第1軸線の周りに回動可能である第2基端部と、当該第2基端部につながり、上記溶接トーチの外周部を押圧する第2中間部と、上記第2中間部に対して上記第2基端部とは反対側につながる第2先端部と、を有し、上記クランプレバーが上記保持状態にあるとき、上記第1先端部および上記第2先端部には、上記第1先端部および上記第2先端部が互いに近接する方向への押圧力が付与される。
【0009】
好ましい実施の形態においては、上記クランプレバーは、アーム部およびレバー部を含み、上記アーム部は、基端部が上記第1先端部に対して上記第1軸線と平行な第2軸線の周りに回動可能に支持され、かつ上記基端部から先端部まで所定方向に延びており、上記レバー部は、上記アームの上記先端部に対して上記第1軸線と平行な第3軸線の周りに回動可能である押圧部と、当該押圧部につながる操作部と、を有し、上記押圧部は、上記第3軸線に沿って見て円周に沿う外側面を有し、上記第3軸線に沿って見て上記外側面をなす円の中心は、上記第3軸線とは異なる位置にあり、上記保持状態にあるとき、上記円の中心は、相対的に上記第2軸線に近接する位置にある。
【0010】
好ましい実施の形態においては、上記押圧部と上記第2先端部との間に介在し、上記アーム部が延びる方向に沿って位置変更可能とされた調整部を備える。
【0011】
本発明の第2の側面によって提供されるトーチ保持セットは、本発明の第1の側面に係るトーチ保持構造体と、当該トーチ保持構造体に保持される溶接トーチと、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るトーチ保持構造体によれば、クランプレバーの操作により、第1クランプ部および第2クランプ部を近接させて溶接トーチを挟み持つ保持状態と、第1クランプ部および第2クランプ部を離反させて溶接トーチの保持を解放する解放状態と、に切り替えることができる。このような構成によれば、溶接トーチを交換する際、工具を用いることなく溶接トーチの交換を容易に行うことが可能である。
【0013】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係るトーチ保持セットが取り付けられた溶接ロボットを示す斜視図である。
図2】本発明に係るトーチ保持セットの一例を示し、第1クランプ部および第1クランプ部が保持状態にあるときの斜視図である。
図3図2に示すトーチ保持セットの側面図である。
図4図2に示すトーチ保持セットの平面図である。
図5図3のV−V線に沿う断面図である。
図6図4のVI−VI線に沿う部分断面図である。
図7】第1クランプ部および第2クランプ部が保持状態から解除状態に切り替わる途中の状態を示す図5と同様の断面図である。
図8】第1クランプ部および第2クランプ部が解除状態にあるときの図5と同様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態につき、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0016】
図1は、本発明に係るトーチ保持セットが溶接ロボットに取り付けられた一例を示しており、溶接ロボットの全体斜視図である。同図に示す溶接ロボットB1は、たとえば複数のアームからなる多関節型のマニピュレータ9を備え、アーク溶接ロボットである。マニピュレータ9の先端には、アーク溶接用の溶接トーチ7が支持されている。マニピュレータ9が駆動することにより、所定の作業範囲内において溶接トーチ7が上下前後左右に自在に移動できる。図1に示した溶接ロボットB1は、たとえば協働ロボットである。協働ロボットでは、作業者がロボットに直接触れる機会が多く、たとえばロボットへのティーチング(教示)等はロボットのブレーキを解除した状態で作業者がロボットを直接操作して行う。なお、本発明に係るトーチ保持セットが取り付けられる溶接ロボットは、協働ロボットに限定されない。
【0017】
図2図6は、溶接トーチ7を備えて構成されたトーチ保持セットの一例を示している。本実施形態のトーチ保持セットA1は、トーチ保持構造体1および溶接トーチ7を備ええる。図1に示すように、トーチ保持構造体1は、マニピュレータ9の先端に取り付けられており、溶接トーチ7を保持している。
【0018】
トーチ保持構造体1は、第1クランプ部2、第2クランプ部3、クランプレバー4、ブラケット5および調整部6を備えている。
【0019】
ブラケット5は、トーチ保持構造体1をマニピュレータ9の先端に取り付けるための構造部であり、固定ベース51、スライドベース52、スライド部材53および取付軸54を有する。固定ベース51は、マニピュレータ9の先端に直接固定される部分であり、たとえばネジ締結によってマニピュレータ9の先端に取り付けられている。スライドベース52は固定ベース51に連結されており、略上下方向に沿って延びている。スライド部材53は、スライドベース52にネジ締結により取り付けられる。スライドベース52には長手方向に沿う長孔が形成されており、スライドベース52に対するスライド部材53の上下方向の取り付け位置を調整可能とされている。スライド部材53には、水平方向に延びる取付穴が形成されており、取付軸54は当該取付穴に嵌挿されている。また、スライド部材53には上記取付穴に通じるスリットが形成されており、ネジの締め込みによって上記取付穴を縮径し取付軸54を保持することが可能である。
【0020】
第1クランプ部2および第2クランプ部3は、互いが近接する状態にて溶接トーチ7を挟持するための構造部である。
【0021】
図5に示すように、本実施形態おいて、第1クランプ部2は、第1基端部21、第1中間部22、第1先端部23および取付部24を有する。第1中間部22は、溶接トーチ7の形状に対応した部分円筒状とされており、溶接トーチ7の外周部を押圧する部位である。第1基端部21は、第1中間部22の端部につながっている。第1先端部23は、第1中間部22に対して第1基端部21とは反対側につながっている。取付部24は、第1基端部21につながって延びており、ブラケット5に取り付けられる部位である。ブラケット5の取付軸54は、取付部24に形成された貫通孔に挿通されており、たとえば取付軸54の端部に装着されたナットを締め付けると、スライド部材53、取付軸54および取付部24(第1クランプ部2)が一体的に連結される。上記構造により、取付部24(第1クランプ部2)は、取付軸54の軸線の周りの所定の回動範囲で姿勢変更が可能である。
【0022】
第2クランプ部3は、第2基端部31、第2中間部32および第2先端部33を有する。第2基端部31、第2中間部32および第2先端部33は、各々、第1クランプ部2の第1基端部21、第1中間部22および第1先端部23と対応する部位である。第2中間部32は、溶接トーチ7の形状に対応した部分円筒状の部位を含み、溶接トーチ7の外周部を押圧する部位である。第2中間部32は、溶接トーチ7を挟んで第1中間部22と対向する位置に配置される。第2基端部31は、第2中間部32の端部につながっており、第1クランプ部2の第1基端部21と対向して配置される。第2先端部33は、第2中間部32に対して第2基端部31とは反対側につながっており、第1クランプ部2の第1先端部23と対向して配置される。
【0023】
本実施形態において、第1基端部21と第2基端部31とは、ヒンジ構造によって連結されている。具体的には、第1基端部21および第2基端部31の各々に形成された貫通孔に共通の回動軸25が嵌挿されている。このような構造によって、図5図8に示すように、第2基端部31(第2クランプ部3)は、第1基端部21に対して回動軸25の軸線(第1軸線O1)の周りに回動可能である。本実施形態では、第1軸線O1は、第1クランプ部2および第2クランプ部3によって保持される溶接トーチ7の軸線Oxと平行である。なお、本実施形態において、第1クランプ部2および第2クランプ部3と、溶接トーチ7との間には、絶縁スリーブ71が介在している。
【0024】
クランプレバー4は、アーム部41およびレバー部42を含んで構成される。アーム部41は、第1クランプ部2の第1先端部23に支持されている。アーム部41は、基端部(図6における右側端部)から先端部(図6における左側端部)まで所定方向(図6の左右方向)に延びている。本実施形態において、第1先端部23とアーム部41とは、ヒンジ構造によって連結されている。具体的には、第1先端部23およびアーム部41の基端部の各々に形成された貫通孔に共通の回動軸26が嵌挿されている。このような構造によって、図5図6図8に示すように、アーム部41の基端部は、第1先端部23に対して回動軸26の軸線(第2軸線O2)の周りに回動可能である。本実施形態では、第2軸線O2は第1軸線O1と平行である。
【0025】
本実施形態において、第1先端部23には切欠き231が形成されている。また、第2先端部33には、切欠き331および凹部332が形成されている。切欠き231および切欠き331は、アーム部41が第1先端部23から第2先端部33に向かって延びる姿勢をとるとき(図5図7参照)、当該アーム部41が収まる空隙部分である。凹部332は、第2先端部33のうち第1先端部23とは反対側の面から凹む部位である。凹部332は、アーム部41が第1先端部23から第2先端部33に向かって延びる姿勢をとるときに調整部6が収まる空隙部分である。
【0026】
レバー部42は、アーム部41の先端部に連結されており、押圧部421および操作部422を有する。本実施形態において、アーム部41の先端部とレバー部42の押圧部421とは、ヒンジ構造によって連結されている。具体的には、アーム部41の先端部、および押圧部421の各々に形成された貫通孔に共通の回動軸43が嵌挿されている。このような構造によって、図5図7に示すように、押圧部421は、アーム部41の先端部に対して回動軸43の軸線(第3軸線O3)の周りに回動可能である。本実施形態では、第3軸線O3は第1軸線O1と平行である。
【0027】
操作部422は、押圧部421につながって延びており、レバー部42の回動操作に用いられる部位である。本実施形態において、操作部422は適宜湾曲しており、図5に示すように操作部422を倒した状態において第2中間部32(第2クランプ部3)の外周面に面接触する。
【0028】
本実施形態において、押圧部421は、略円柱状とされており、第3軸線O3に沿って見て円周に沿う外側面421aを有する。図5図7等に示すように、第3軸線O3視において、外側面421aをなす円の中心C1は、第3軸線O3とは異なる位置にある。このような構成によって、図5図7に示すように、レバー部42(押圧部421)を回動させると、第3軸線O3に対する中心C1の位置は変化する。図5に示すように、操作部422を倒した状態において、外側面421aをなす円の中心C1は、相対的に第2軸線O2に近接する位置にある。これにより、第3軸線O3から、中心C1および第2軸線O2を結ぶ線分と外側面421aとの交点P1までの寸法L1は、相対的に大きくなる。本実施形態では、図5に示した状態において、外側面421aをなす円の中心C1は、第2軸線O2に最も近接する位置にある。このとき、第3軸線O3から上記交点P1までの寸法L1は最も大きくなる。
【0029】
ここで、第2軸線O2と第3軸線O3との距離は一定であり、図5に示す状態において、押圧部421は、矢印に示す方向に、調整部6を介して第2先端部33を押圧する。そして、当該押圧力の反力が第1先端部23に作用し、第2先端部33(第2クランプ部3)と第1先端部23(第1クランプ部2)とが互いに近接する。これにより、第1中間部22(第1クランプ部2)および第2中間部32(第2クランプ部3)は、絶縁スリーブ71を介して溶接トーチ7の外周部を押圧し、溶接トーチ7を挟み持つ。このようにして、図5に示した状態では、第1先端部23(第1クランプ部2)および第2先端部33(第2クランプ部3)が互いに近接する方向への押圧力が付与されており、本発明で言う保持状態に相当する。
【0030】
調整部6は、レバー部42(クランプレバー4)の押圧部421と第2クランプ部3の第2先端部33との間に介在している。本実施形態では、調整部6は、調整ナット61、調整ベース62およびスペーサ63を有する。これら調整ナット61、調整ベース62およびスペーサ63は、いずれもアーム部41に外嵌されており、第2先端部33の凹部332に収容されている。調整ナット61は、アーム部41に対して相対回転可能であり、凹部332の底面に当接し得る。調整ベース62は、調整ナット61の雌ネジに螺合する雄ネジを有し、調整ナット61よりも第3軸線O3寄りに配置される。調整ベース62は、アーム部41に対して相対回転不能であるとともに、アーム部41が延びる方向(第2軸線O2と第3軸線O3とを結ぶ線分に沿う方向)に所定範囲で移動可能である。スペーサ63は、調整ベース62よりも第3軸線O3寄りに配置されており、円板状である。このような構成により、調整ナット61を回すと、調整ベース62はアーム部41が延びる方向に沿って移動する。したがって、調整部6(調整ベース62およびスペーサ63)は、アーム部41が延びる方向に沿って位置変更可能である。
【0031】
図1図3に示すように、溶接トーチ7の基端部にはケーブル81が接続されている。溶接ロボットB1により溶接作業を行う際、図示しないワイヤ送給装置からケーブル81を介して溶接トーチ7へ溶接ワイヤが供給される。また、溶接トーチ7には、電力およびシールドガスが供給される。また、本実施形態において、第2クランプ部3にはロボット操作レバー83が取り付けられている。ロボット操作レバー83は、作業者が協働ロボットである溶接ロボットB1を操作する際に握る部位である。図1に示すように、普段はケーブル81と溶接トーチ7の接続部位を覆うカバー82が装着されている。カバー82は、第1クランプ部2、第2クランプ部3およびクランプレバー4を覆っており、メンテナンス時には当該カバー82を取り外すことが可能である。
【0032】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0033】
上記のように、図5に示したクランプレバー4(操作部422)を倒した状態では、第2先端部33(第2クランプ部3)と第1先端部23(第1クランプ部2)とが互いに近接している。そして、第1中間部22(第1クランプ部2)および第2中間部32(第2クランプ部3)は、絶縁スリーブ71を介して溶接トーチ7の外周部を押圧しており、溶接トーチ7を挟み持つ保持状態にある。
【0034】
たとえば溶接トーチ7を交換する際には、操作部422(レバー部42)を図5に示した倒れた状態から、図7に示すように起立させる。このとき、第3軸線O3視において押圧部421の外側面421aをなす円の中心C1から第2軸線O2までの距離は、図5に示す場合と比べて長くなる。そうすると、第3軸線O3から、中心C1および第2軸線O2を結ぶ線分と外側面421aとの交点P1までの寸法L1が小さくなり、押圧部421がスペーサ63(調整部6)から離間する。
【0035】
図7に示す状態においては、第1クランプ部2および第2クランプ部3による溶接トーチ7の押圧が解放されている。この状態から図8に示すように、アーム部41(クランプレバー4)を第2軸線O2の周りに図中矢印方向に回動させるとともに、第2クランプ部3を第1軸線O1の周りに図中矢印方向に回動させて、第1クランプ部2および第2クランプ部3を離反させることができる。図8に示した状態において、溶接トーチ7をトーチ保持構造体1から取り外すことが可能であり、本発明で言う解放状態に相当する。
【0036】
溶接トーチ7の交換後には、上記した図5図7図8の手順によって溶接トーチ7を取り外した操作と反対の操作を行う。すなわち、図8に示すように溶接トーチ7を第1クランプ部2側に当てた状態から、第2クランプ部3を第1軸線O1の周りに反時計回りに回動させて第1クランプ部2に近接させる。次いで、クランプレバー4(アーム部41)を第2軸線O2の周りに時計回りに回動させ、アーム部41を切欠き231および切欠き331に収容させる。次いで、レバー部42を第3軸線O3の周りに時計回りに回動させて、当該レバー部42が第2クランプ部3の第2中間部32に沿って倒れた状態とする。このような操作によって、図5に示すように、第1クランプ部2および第2クランプ部3によって溶接トーチ7を挟み持つ保持状態となる。
【0037】
本実施形態のトーチ保持構造体1は、第1クランプ部2、第2クランプ部3およびクランプレバー4を備える。第1クランプ部2および第2クランプ部3は、溶接トーチ7を間に挟んで対向して配置される。クランプレバー4の操作により、第1クランプ部2および第2クランプ部3を近接させて溶接トーチ7を挟み持つ保持状態と、第1クランプ部2および第2クランプ部3を離反させて溶接トーチ7の保持を解放する解放状態と、に切り替えることができる。このような構成によれば、溶接トーチ7を交換する際、工具を用いることなく溶接トーチ7の交換を容易に行うことが可能である。
【0038】
第1クランプ部2は第1基端部21、第1中間部22および第1先端部23を有する。第2クランプ部3は、第1クランプ部2の上記各部に対応する第2基端部31、第2中間部32および第2先端部33を有し、第2基端部31は第1基端部21に対して第1軸線O1周りに回動可能である。第1中間部22および第2中間部32は、溶接トーチ7の外周部を押圧する部位であり、これら第1中間部22および第2中間部32を溶接トーチ7の形状に対応した形状とすることにより、溶接トーチ7を適切に挟み持つことが可能である。
【0039】
本実施形態では、クランプレバー4はアーム部41およびレバー部42を含む。アーム部41の基端部は、第1クランプ部2の第1先端部23に対して第1軸線O1と平行な第2軸線O2の周りに回動可能に支持され、所定方向に延びている。レバー部42は、押圧部421およびこれにつながる操作部422を有する。押圧部421は、アーム部41の先端部に対して第1軸線O1と平行な第3軸線O3周りに回動可能である。第3軸線O3視において、押圧部421の外側面421aをなす円の中心C1は、第3軸線O3とは異なる位置にあり、上記中心C1は第3軸線O3に対して所定の偏心位置にある。このような構成によれば、図5図7図8を参照して説明したように、レバー部42の第3軸線O3周りの回動、アーム部41の第2軸線O2周りの回動、および第2クランプ部3の第1軸線O1周りの回動の一連の回動操作を行うことで、溶接トーチ7を挟み持つ保持状態から溶接トーチ7の交換が可能な解放状態への切り替えを、容易かつ適切に行うことが可能である。
【0040】
本実施形態において、トーチ保持構造体1は調整部6を備える。調整部6は、クランプレバー4の押圧部421と第2クランプ部3の第2先端部33との間に介在しており、アーム部41が延びる方向に沿って位置変更可能である。これにより、調整部6(調整ベース62およびスペーサ63)を第3軸線O3に近づくように動かすことで、第1クランプ部2および第2クランプ部3が保持状態にあるときの溶接トーチ7の保持力を増大させることができる。また、調整部6を第3軸線O3から遠ざかる(第2軸線O2に近づく)ように動かすことで、第1クランプ部2および第2クランプ部3が保持状態にあるときの溶接トーチ7の保持力を減少させることができる。したがって、調整部6を具備する構成によれば、トーチ保持構造体1による溶接トーチ7の保持力を適宜調整することができる。
【0041】
トーチ保持セットA1によれば、上記したトーチ保持構造体1の利点を享受することができるとともに、溶接トーチ7もまとめて取り扱うことができるので便利である。
【0042】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の範囲は上記した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した事項の範囲内でのあらゆる変更は、すべて本発明の範囲に包摂される。
【0043】
上記実施形態において、トーチ保持構造体1によって保持する溶接トーチ7がアーク溶接用である場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。トーチ保持構造体によって保持する溶接トーチについては、たとえばTIG溶接用やプラズマ溶接用等の他の溶接トーチであっても適用可能である。
【符号の説明】
【0044】
A1:トーチ保持セット、B1:溶接ロボット、C1:中心、1:トーチ保持構造体、2:第1クランプ部、21:第1基端部、22:第1中間部、23:第1先端部、3:第2クランプ部、31:第2基端部、32:第2中間部、33:第2先端部、4:クランプレバー、41:アーム部、42:レバー部、421:押圧部、421a:外側面、422:操作部、6:調整部、7:溶接トーチ、9:マニピュレータ、O1:第1軸線、O2:第2軸線、O3:第3軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8