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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-181244(P2021-181244A)
(43)【公開日】2021年11月25日
(54)【発明の名称】ステアリング装置の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20211029BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20211029BHJP
   B62D 119/00 20060101ALN20211029BHJP
   B62D 115/00 20060101ALN20211029BHJP
【FI】
   B62D6/00
   B62D5/04
   B62D119:00
   B62D115:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2020-86598(P2020-86598)
(22)【出願日】2020年5月18日
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】楳原 一成
(72)【発明者】
【氏名】宇野 孝
(72)【発明者】
【氏名】鶴岡 翔太
(72)【発明者】
【氏名】石谷 誠通
(72)【発明者】
【氏名】筒井 照夫
【テーマコード(参考)】
3D232
3D333
【Fターム(参考)】
3D232CC20
3D232CC30
3D232DA03
3D232DA15
3D232DA19
3D232DA63
3D232DA64
3D232DA67
3D232DC08
3D232DD01
3D232DD02
3D232EB04
3D232GG01
3D333CB02
3D333CB13
3D333CC06
3D333CC14
3D333CC38
3D333CD04
3D333CD06
3D333CD09
3D333CD10
3D333CD14
3D333CD16
3D333CD21
3D333CD23
3D333CE13
3D333CE21
3D333CE53
3D333CE55
(57)【要約】
【課題】ステアリングホイールの操舵角をより正確に求めることが可能なステアリング装置の制御装置を提供する。
【解決手段】トーションバー20を含むステアリングシャフト2と、ステアリングシャフト2の回転に伴う軸方向移動によって前輪11を転舵させるラックシャフト3と、トーションバー20の捩じれにより操舵トルクを検出するトルクセンサ4と、操舵トルクに応じた操舵補助力を発生させる操舵補助機構5と、を備えたステアリング装置1の制御装置6は、トーションバー20よりもラックシャフト3側におけるステアリングシャフト2の回転角を検出することが可能なレゾルバ69と、同回転角及び操舵トルクに基づいてステアリングホイール10の操舵角を求める操舵角演算手段とを備える。操舵角演算手段は、操舵補助機構5が発生する操舵補助力に関連する指標値を加味してステアリングホイール10の操舵角を演算する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングホイールに付与される操舵トルクによって捩じれるトーションバーを含んで構成された回転軸機構と、前記回転軸機構の回転に伴う軸方向移動によって車両の転舵輪を転舵させる転舵軸と、前記トーションバーの捩じれ量を検出するトルクセンサと、前記トルクセンサの検出値に応じた操舵補助力を発生させる操舵補助機構と、を備えたステアリング装置の制御装置であって、
前記トーションバーよりも前記転舵軸側における前記回転軸機構の回転角を検出することが可能な回転角検出手段と、
前記回転角検出手段によって得られた前記回転角及び前記トルクセンサの検出値に基づいて、前記ステアリングホイールの操舵角を演算により求める操舵角演算手段とを備え、
前記操舵角演算手段は、前記操舵補助機構が発生する操舵補助力に関連する指標値を加味して前記ステアリングホイールの操舵角を演算する、
ステアリング装置の制御装置。
【請求項2】
前記操舵角演算手段は、前記操舵補助機構の温度に関連する指標値を加味して前記ステアリングホイールの操舵角を演算する、
請求項1に記載のステアリング装置の制御装置。
【請求項3】
前記操舵補助機構は、電動モータと、前記電動モータの回転を減速して出力する減速機とを有し、
前記操舵角演算手段は、前記操舵補助機構が発生する操舵補助力に関連する指標値として、前記電動モータに供給される電流の電流値を用いる、
請求項1又は2に記載のステアリング装置の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のステアリング装置の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のステアリング装置には、可撓性を有するトーションバーの捩じれ量によって検出されたステアリングホイールの操舵トルクや車速に基づいて、ステアリングホイールの操舵操作を補助する操舵補助力を発生させる電動式の操舵補助機構を備えたものがある。また、近年のステアリング装置には、例えば車線逸脱警報装置等の運転支援装置の制御に用いるため、ステアリングホイールの操舵角度を正確に検出して出力することが要請されている。
【0003】
本出願人は、この要請に応えるべく、特許文献1に記載のものを提案している。特許文献1に記載のステアリング装置は、例えば電動モータの出力軸の回転を減速する減速機構の摩耗など、ステアリング装置の使用による劣化に関連する指標値を加味してステアリングホイールの操舵角を演算するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019−209722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のようにステアリング装置の使用による劣化に関連する指標値を加味してステアリングホイールの操舵角を演算しても、ステアリングホイールの操作状態によっては、ステアリングホイールの操舵角に誤差が生じる場合があった。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、ステアリングホイールの操舵角をより正確に求めることが可能なステアリング装置の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は、ステアリングホイールに付与される操舵トルクによって捩じれるトーションバーを含んで構成された回転軸機構と、前記回転軸機構の回転に伴う軸方向移動によって車両の転舵輪を転舵させる転舵軸と、前記トーションバーの捩じれ量を検出するトルクセンサと、前記トルクセンサの検出値に応じた操舵補助力を発生させる操舵補助機構と、を備えたステアリング装置の制御装置であって、前記トーションバーよりも前記転舵軸側における前記回転軸機構の回転角を検出することが可能な回転角検出手段と、前記回転角検出手段によって得られた前記回転角及び前記トルクセンサの検出値に基づいて、前記ステアリングホイールの操舵角を演算により求める操舵角演算手段とを備え、前記操舵角演算手段は、前記操舵補助機構が発生する操舵補助力に関連する指標値を加味して前記ステアリングホイールの操舵角を演算する、ステアリング装置の制御装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るステアリング装置の制御装置によれば、ステアリングホイールの操舵角をより正確に求めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態に係る制御装置を有するステアリング装置の構成例を示す模式図である。
図2】操舵補助機構及び制御装置の構成例を示す構成図である。
図3】ウォームギヤ機構のウォーム及びウォームホイールを示す構成図である。
図4】トルクセンサの構成例を操舵補助機構の一部と共に示す構成図である。
図5】ステアリングホイールの操舵角を求めるために制御装置が行う演算処理の概要を示す制御ブロック図である。
図6】ウォームの回転角度とトルクとの関係を、ウォームホイールの複数の温度について示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態]
本発明の実施の形態について、図1乃至図6を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
【0011】
(電動パワーステアリング装置の構成)
図1は、本発明の実施の形態に係る制御装置を有するステアリング装置の構成例を示す模式図である。図1では、ステアリング装置を車両前方から見た状態を示しており、図1の左側が車両右側に、また図1の右側が車両左側に、それぞれ相当する。
【0012】
ステアリング装置1は、ステアリングホイール10に付与される操舵トルクによって捩じれるトーションバー20を含んで構成された回転軸機構としてのステアリングシャフト2と、ステアリングシャフト2の回転に伴う軸方向移動によって車両の転舵輪である前輪11を転舵させる転舵軸としてのラックシャフト3と、トーションバー20の捩じれ量を検出するトルクセンサ4と、トルクセンサ4の検出値に応じた操舵補助力を発生させる操舵補助機構5と、操舵補助機構5を制御する制御装置6とを備えている。
【0013】
ステアリングシャフト2は、ステアリングホイール10が一端部に固定されたコラムシャフト21と、ラックシャフト3のラック歯31に噛み合うピニオン歯231を有するピニオンシャフト23と、コラムシャフト21とピニオンシャフト23との間に介在する中間シャフト22とを有している。コラムシャフト21と中間シャフト22、及び中間シャフト22とピニオンシャフト23は、それぞれ自在継手24,25によって連結されている。
【0014】
コラムシャフト21は、第1軸部材211及び第2軸部材212を有し、第1軸部材211と第2軸部材212とがトーションバー20により連結されている。第1軸部材211は、ステアリングホイール10と一体に回転し、ステアリングホイール10に付与された操舵トルクがトーションバー20を介して第2軸部材212に伝達される。トルクセンサ4は、運転者がステアリングホイール10に付与する操舵トルクをトーションバー20の捩じれ量によって検出する。
【0015】
ラックシャフト3は、筒状のラックハウジング30に収容され、車幅方向に沿って軸方向移動可能である。ラックシャフト3の両端部には、それぞれボールジョイントソケット12が固定され、これらのボールジョイントソケット12によってラックシャフト3に連結されたタイロッド13が、図示しないナックルアームを介して左右の前輪11を転舵させる。ボールジョイントソケット12には、タイロッド13の一端部に設けられた球状の連結部131が収容されている。ボールジョイントソケット12の外周側には、蛇腹状のゴムあるいは樹脂からなるベローズ14が配置されている。
【0016】
ボールジョイントソケット12は、その外径がラックシャフト3の外径よりも大きく形成されており、ラックハウジング30の左右両端部には、ボールジョイントソケット12との当接によってラックシャフト3の軸方向移動範囲を規定するストッパ301が取り付けられている。そして、ボールジョイントソケット12がストッパ301に当接したときのステアリングホイール10の操舵角が、ステアリングホイール10の最大舵角となる。
【0017】
ステアリングホイール10が操舵操作されると、ステアリングホイール10にコラムシャフト21及び中間シャフト22を介して連結されたピニオンシャフト23が回転し、ピニオン歯231とラック歯31との噛み合いによってラックシャフト3が軸方向に移動する。そして、このラックシャフト3の軸方向移動により、タイロッド13を介して左右の前輪11が転舵される。
【0018】
図2は、操舵補助機構5及び制御装置6の構成例を示す構成図である。図3は、操舵補助機構5のウォームギヤ機構54を示す構成図である。図4は、トルクセンサ4の構成例を操舵補助機構5の一部と共に示す構成図である。
【0019】
操舵補助機構5は、モータハウジング510に収容されたステータ511及びロータ512、ならびにロータ512と一体に回転する出力軸としてのモータシャフト513を有する電動モータ51と、モータシャフト513に固定されたウォーム52と、ウォーム52に噛み合うウォームホイール53とを有している。ウォーム52及びウォームホイール53は、ウォームハウジング50に収容されている。モータシャフト513は、一端部がカップリング514を介してウォーム52に連結されると共に、軸受515,516に支持されている。本実施の形態では、電動モータ51が三相ブラシレスモータであり、ステータ511は、コイル巻線511aが巻き回された複数のコア511bを有している。ロータ512は、永久磁石からなる複数のN磁極512a及びS磁極512bを外周面に交互に有している。
【0020】
ウォーム52は、金属製であり、円柱状の軸部521と、螺旋状に形成されたウォーム歯522とを一体に有している。軸部521は、ウォーム歯522を挟む両端部が軸受55,56によって支持されている。ウォームホイール53は、キー57によって第2軸部材212に対して相対回転不能に固定されている。ウォーム52及びウォームホイール53は、減速機構としてのウォームギヤ機構54を構成する。ウォームギヤ機構54は、電動モータ51のモータシャフト513の回転を減速し、減速によって増幅された電動モータ51のトルクを操舵補助力として第2軸部材212に出力する。
【0021】
ウォームホイール53は、中心部に第2軸部材212が挿通された円板状の芯金531と、芯金531の外周に配置されてウォーム52と噛合う環状の歯部532とを有している。芯金531は金属からなり、歯部532は樹脂からなる。ウォームホイール53の歯部532は、射出成形によって芯金531と一体に形成されている。歯部532が樹脂成型されていることにより、ウォーム52とウォームホイール53とのバックラッシュに起因する歯同士の衝突音(ラトル音)が低減されている。歯部532は、複数の斜歯532aを有しており、斜歯532aの歯筋がウォームホイール53の軸方向に対して傾斜している。
【0022】
電動モータ51のコイル巻線511aには、電線511cを介して制御装置6から電流が供給される。制御装置6は、演算処理装置であるCPU61、CPU61が実行するプログラムや各種のデータが記憶された不揮発性メモリを含む記憶部62、バッテリーから供給される直流電流をスイッチングする複数のスイッチング素子63、抵抗器やコンデンサ等の各種の受動素子64、温度センサとしてのサーミスタ65、及び電動モータ51に供給される電流を検出する電流センサ66が、プリント基板67,68に実装されて構成されている。制御装置6は、モータハウジング510とウォームハウジング50との間に介在するケース部材60に収容されている。
【0023】
また、制御装置6は、モータシャフト513のケース部材60に対する回転角を検出すレゾルバ69を有している。レゾルバ69は、モータシャフト513に固定されたレゾルバロータ691と、ケース部材60に固定されたレゾルバステータ692とを有し、レゾルバステータ692に対するレゾルバロータ691の回転角に応じた検出信号をCPU61に出力する。CPU61は、レゾルバ69によって検出された回転角にウォームギヤ機構54の減速比の逆数を乗じて第2軸部材212の回転角を求めることが可能である。すなわち、本実施の形態では、レゾルバ69が、トーションバー20よりもラックシャフト3側におけるステアリングシャフト2の回転角を検出することが可能な本発明の回転角検出手段に相当する。
【0024】
トルクセンサ4は、図4に示すように、ウォームハウジング50に結合されたセンサハウジング40に収容されている。第1軸部材211には、トーションバー20の一部を収容する筒状の連結部材213がスプライン嵌合により相対回転不能に連結され、この連結部材213の一端部にトーションバー20が相対回転不能に固定されている。連結部材213の他端部は、軸受214を介して第2軸部材212に対して回転可能に支持されている。
【0025】
トーションバー20の他端部は、ピン200によって第2軸部材212に対して相対回転不能に固定されている。第2軸部材212は、ウォームハウジング50及びセンサハウジング40に対して軸受500,400によって回転自在に支持されている。連結部材213は、センサハウジング40に対して軸受401によって回転自在に支持されている。
【0026】
トルクセンサ4は、連結部材213と一体に回転する永久磁石41と、第2軸部材212に取り付けられた支持部材42に固定されて第2軸部材212と一体に回転する回転ヨーク43と、センサハウジング40に対して固定された固定ヨーク44と、図略の磁界検出素子とを有し、永久磁石41と回転ヨーク43との相対的な角度の変化、すなわちトーションバー20の捩れによって、磁界検出素子で検出される磁界の強度が変わるように構成されている。なお、トルクセンサ4としては、様々な公知の構成のものを適宜用いることが可能である。
【0027】
例えば右左折時や旋回時においてステアリングホイール10が操舵操作されたときのトーションバー20の捩じれ角(捩じれ量)は、例えば2〜3°である。すなわち、このような操舵操作の際、第1軸部材211の回転角(操舵角)と第2軸部材212の回転角とは、2〜3°程度の角度差が生じる。トルクセンサ4によって検出された操舵トルクをTqとし、トーションバー20のばね定数をkとし、トーションバー20の捩じれ角をθとしたとき、θは下記式(1)により求めることができる
θ=Tq/k・・・(1)
【0028】
本実施の形態では、第2軸部材212の回転角にトーションバー20の捩じれ角θを加算して第1軸部材211の回転角(ステアリングホイール10の操舵角)を求める。ステアリングホイール10の操舵角は、車両が直進状態となる中立状態においてゼロである。ステアリングホイール10が例えば右方向に操舵操作された際の操舵角を正値とすれば、左方向に操舵操作された際の操舵角は負値となる。トーションバー20の捩じれ角θの正負についても同様である。
【0029】
ステアリングホイール10の操舵角の演算に用いられる第2軸部材212の回転角は、車両の製造時に設定されて記憶部62に記憶されている中点舵角を基準とした相対角であり、その絶対値の最大値は360°を超える。例えばステアリングホイール10が中立位置から左右方向にそれぞれ1回転半する車両の場合には、第2軸部材212の回転角が±540°の範囲で変化する。車両の製造時には、ステアリングホイール10を中立位置とし、前輪11の転舵角をゼロとしたときのレゾルバ69の検出値が中点舵角を示す中点舵角情報として記憶部62に記憶される。相対角は、中点舵角情報が記憶された後に、レゾルバ69の検出値の単位時間あたりの変化量にウォームギヤ機構54の減速比の逆数を乗じて求められる第2軸部材212の回転量を積算することで求めることができる。
【0030】
そして、中点舵角及び積算によって求められた相対角によって第2軸部材212の回転角(絶対角)を求めることができ、この回転角にトーションバー20の捩じれ角θを加算すれば、ステアリングホイール10の操舵角を一応算出することができる。
【0031】
しかし、操舵補助機構5が発生する操舵補助力が大きくなると、例えばウォームギヤ機構54において、操舵角の精度に影響を与え得る大きさの弾性的な変形が発生する場合がある。本実施の形態では、樹脂からなるウォームホイール53の歯部532が、弾性変形が発生しやすい部位として挙げられる。ウォームホイール53の歯部532がウォーム52との噛み合いによって弾性変形すると、歯部532の弾性変形によってモータシャフト513が余分に回るため、中点舵角からの第2軸部材212の回転角が実際よりも大きく検出されてしまう。
【0032】
そこで、本実施の形態では、制御装置6のCPU61が、操舵補助機構5が発生する操舵補助力に関連する指標値を加味してステアリングホイール10の操舵角を演算する。次に、ステアリングホイール10の操舵角を精度よく求めるための制御装置6の処理内容について、図5を参照して説明する。
【0033】
図5は、ステアリングホイール10の操舵角を求めるためにCPU61が実行する演算処理の概要を示す制御ブロック図である。CPU61は、記憶部62に記憶されたプログラムを実行することにより、経年劣化補正量演算部71、減速機構剛性補正量演算部72、トーションバーロア側回転角演算部73、及びトーションバーアッパ側回転角演算部74として機能する。
【0034】
経年劣化補正量演算部71は、車両の製造後においてボールジョイントソケット12がストッパ301に当接した回数であるエンド突き当て回数と、同じく車両の製造後において車両の始動スイッチ(イグニッションスイッチ)がオフ状態からオン状態となった回数である始動回数と、車両の積算走行距離とを、ステアリング装置1の経年劣化に関連する指標値として用いて経年劣化補正量を演算する。
【0035】
ボールジョイントソケット12がストッパ301に当接すると、ウォームギヤ機構54に大きな負荷がかかるので、特にウォームホイール53の歯部532において摩耗や変形が発生しやすい。なお、ボールジョイントソケット12がストッパ301に当接したことは、例えばステアリングホイール10の最大舵角付近においてトルクセンサ4によって検出される操舵トルクが急増することにより検知することができる。また、車両が長年にわたり使用されると、始動回数や積算走行距離が増加するので、これらの値をステアリング装置1の経年劣化に関連する指標値として用いることができる。経年劣化補正量演算部71では、例えばそれぞれの指標値に所定の係数を乗じた積を合算して経年劣化補正量を演算する。
【0036】
減速機構剛性補正量演算部72は、操舵補助機構5が発生する操舵補助力に関連する指標値、及び操舵補助機構5の温度に関連する指標値に基づいて減速機構剛性補正量を演算する。ウォームホイール53の歯部532は、操舵補助力が大きく、また温度が高いほど弾性変形量が大きくなるため、操舵補助機構5の操舵補助力及び温度に関連する指標値を用いて減速機構剛性補正量を演算することができる。
【0037】
本実施の形態では、操舵補助力に関連する指標値として、電動モータ51に供給される電流の電流値を用いる。この電流値は、電流センサ66の検出値であり、電流値が大きいほど電動モータ51が大きなトルクを発生する。また、本実施の形態では、操舵補助機構5の温度に関連する指標値として、サーミスタ65の温度検出値を用いる。サーミスタ65は、ウォームホイール53の温度を直接的に測定するものではないが、サーミスタ65の検出温度とウォームホイール53の温度との間には相関関係があるので、サーミスタ65の温度検出値を操舵補助機構5の温度に関連する指標値とすることができる。
【0038】
図6は、第2軸部材212を非回転に固定し、電動モータ51によってウォーム52にトルクを付与したときのウォーム52の回転角度とトルクとの関係を、ウォームホイール53の三つの温度T(20℃、50℃、80℃)について示すグラフである。このグラフに示すように、ウォームホイール53の歯部532の弾性変形によってウォーム52が回転する角度は、ウォーム52のトルクと比例する関係にある。
【0039】
減速機構剛性補正量演算部72は、記憶部62に記憶された制御マップを参照して減速機構剛性補正量を演算する。この制御マップには、電動モータ51に供給される電流の電流値ならびにサーミスタ65の温度検出値と、ウォームホイール53の歯部532の弾性変形によって発生するウォーム52の回転角度との関係が定義されている。この制御マップは、例えば実験結果に基づいてマップ値が定められている。
【0040】
トーションバーロア側回転角演算部73は、上記の中点舵角情報及び相対角の情報に基づいて得られる回転角に経年劣化補正量及び減速機構剛性補正量を適用し、トーションバーロア側回転角を演算する。具体的には、中点舵角情報及び相対角の情報によって得られる回転角に、経年劣化補正量及び減速機構剛性補正量を加算もしくは減算してトーションバーロア側回転角を演算する。経年劣化補正量及び減速機構剛性補正量を加算するか減算するかは、例えばステアリングホイール10の操舵方向に応じて決めることができる。トーションバーロア側回転角は、トーションバー20よりもラックシャフト3側(トルク伝達下流側)におけるステアリングシャフト2の回転角であり、本実施の形態では第2軸部材212の回転角がこれにあたる。
【0041】
トーションバーアッパ側回転角演算部74は、トーションバーロア側回転角演算部73によって演算されたトーションバーロア側回転角と、トーションバー20のばね定数及びトルクセンサ4の検出値である操舵トルクとに基づいて、ステアリングホイール10の操舵角を演算する。この演算の手順については、特に限定されるものではないが、例えば、上記式(1)によってトーションバー20の捩じれ角を求め、この捩じれ角をトーションバーロア側回転角に加算して、トーションバー20よりもステアリングホイール10側(トルク伝達上流側)におけるステアリングシャフト2の回転角であるステアリングホイール10の操舵角を求めることができる。
【0042】
経年劣化補正量演算部71、減速機構剛性補正量演算部72、トーションバーロア側回転角演算部73、及びトーションバーアッパ側回転角演算部74は、レゾルバ69によって得られた第2軸部材212の回転角及びトルクセンサ4の検出値に基づき、操舵補助機構5が発生する操舵補助力に関連する指標値、及び操舵補助機構5の温度に関連する指標値を加味して、ステアリングホイール10の操舵角を演算により求める操舵角演算手段の一態様である。
【0043】
以上のようにして求められたステアリングホイール10の操舵角の情報は、制御装置6による電動モータ51の制御に用いてもよく、車両に搭載された他の制御装置に出力してもよい。この他の制御装置としては、例えば旋回時等において制動力や各車輪への駆動力配分を制御して車両挙動を安定化させるためスタビリティ制御装置や、運転者が意図しない車両の車線からの逸脱を抑制する車線逸脱抑制装置などが挙げられる。また、夜間の走行時において操舵角に応じた角度で進行方向前方を照らすヘッドライト照射方向調節システムを備えた車両であれば、同システムの制御装置にステアリングホイール10の操舵角の情報を出力してもよい。
【0044】
(実施の形態の効果)
以上説明した本発明の実施の形態によれば、操舵補助機構5が発生する操舵補助力に関連する指標値を加味してステアリングホイール10の操舵角を演算するので、操舵補助力が大きい場合にも、操舵角を正確に求めることが可能となる。また、本実施の形態では、操舵補助機構5の温度に関連する指標値を加味するので、さらに操舵角の検出精度を高めることができる。
【0045】
(付記)
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、この実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0046】
また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態では、操舵補助機構5がコラムシャフト21の第2軸部材212に操舵補助力を付与する場合について説明したが、これに限らず、例えばピニオンシャフト23あるいはラックシャフト3に操舵補助力を付与するように操舵補助機構を構成してもよい。
【符号の説明】
【0047】
1…ステアリング装置
10…ステアリングホイール
11…前輪(転舵輪)
2…ステアリングシャフト(回転軸機構)
20…トーションバー
3…ラックシャフト(転舵軸)
4…トルクセンサ
5…操舵補助機構
6…制御装置
69…レゾルバ(回転角検出手段)
71…経年劣化補正量演算部(操舵角演算手段)
72…減速機構剛性補正量演算部(操舵角演算手段)
73…トーションバーロア側回転角演算部(操舵角演算手段)
74…トーションバーロア側回転角演算部(操舵角演算手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6