【実施例】
【0052】
(反応スキーム)
【化5】
【0053】
(実験)
本発明は、当業者に知られている有機合成、生化学、レオロジーなどの従来技術を用いて行われる。
【0054】
以下、実施例を参照して本発明をより詳細に説明する。ただし、以下の各実施例は、実施された実施形態の説明のためにのみ提供されるものであり、本発明の範囲は、これらの実施例によってこれに限定されるものではない。
【0055】
(材料)
実施例および比較例を実行するために使用される化学物質は、以下の通りである。
【0056】
プルロニック−F127(12,500Da)、プルロニックF−68(8,400Da)、およびプルロニックL−35(1,900Da)は、BASF Corporationから入手した。無水テトラヒドロフラン(以下、「THF」と称す)、4−ジメチルアミノピリジン(以下、「DMAP」と称す)、無水ジメチルスルホキシド(以下、「無水DMSO」と称す)は、Acroseから入手した。N,N’−ジスクシンイミジルカーボネート(以下、「DSC」と称す)、パクリタキセル(以下、「PTX」と称す)は、Fluorochem社から入手した。L−アスパラギン酸、L−アスパラギン、L−リジン、L−セリン、L−チロシンは、Acroseから入手した。L−ロイシン、L−システイン、L−メチオニンは、cj haide(ningbo) biotech co. ltd.から入手可能した。
【0057】
実施例1
疎水性アミノ酸修飾プルロニックの調製
【0058】
(1)ロイシン修飾プルロニックF−127
疎水性アミノ酸であるL−ロイシンを4.8ミリモルの量でアルカリ性溶液に溶解し、アミノ酸溶液を形成した。0.6ミリモルの量でのプルロニックF−127および4.8ミリモルのDMAPを30mLの無水THFに溶解し、透明な溶液を得た。30分間撹拌した後、4.8ミリモルのDSCを含む10mLの無水DMSOを1時間以内に滴下して加え、混合物を室温で24時間撹拌した。プロセスはすべて窒素雰囲気下で行った。24時間後、ロイシンを含む溶液を加え、混合物を24時間撹拌し続けた。得られたロイシン修飾プルロニック溶液を透析で精製し、凍結乾燥して白色のポリマー粉末を得た(収率:45%)。
1H NMR (600 MHz, D
2O): δ 4.30, 4.21 (m, −
CH2−O−(C=O)−NH−), 4.01 (m, −O−(C=O)−NH−
CH−), 1.70 (m, −
CH2−CH−(CH
3)
2), 1.60 (m, −
CH−(CH
3)
2), 0.96 (m, −CH−(
CH3)2); FTIR: 780 cm
−1 (−NH wag), 1531 cm
−1 (−CNH), 1569 cm
−1(−(C=O)−NH−), 1731 cm
−1 (−(C=O)).
【0059】
ロイシン修飾プルロニックF−127の例示的な化学構造は、以下のように提供される。
【化6】
【0060】
(2)ロイシン修飾プルロニックF−68
疎水性アミノ酸であるL−ロイシンを4.8ミリモルの量でアルカリ性溶液に溶解し、アミノ酸溶液を形成した。0.6ミリモルの量でのプルロニックF−68および4.8ミリモルのDMAPを30mLの無水THFに溶解し、透明な溶液を得た。30分間撹拌した後、4.8ミリモルのDSCを含む10mLの無水DMSOを1時間以内に滴下して加え、混合物を室温で24時間撹拌した。プロセスはすべて窒素雰囲気下で行った。24時間後、ロイシンを含む溶液を加え、混合物を24時間撹拌し続けた。得られたロイシン修飾プルロニック溶液を透析で精製し、凍結乾燥して白色のポリマー粉末を得た(収率:40%)。
1H NMR (600 MHz, D
2O): δ 4.28, 4.23 (m, −
CH2−O−(C=O)−NH−), 4.06 (m, −O−(C=O)−NH−
CH−), 1.72 (m, −
CH2−CH−(CH
3)
2), 1.62 (m, −
CH−(CH
3)
2), 0.97 (m, −CH−(
CH3)2); FTIR: 780 cm
−1 (−NH wag), 1531 cm
−1 (−CNH), 1569 cm
−1(−(C=O)−NH−), 1731 cm
−1 (−(C=O))。
【0061】
ロイシン修飾プルロニックF−68の例示的な化学構造は、以下のように提供される。
【化7】
【0062】
(3)ロイシン修飾プルロニックL−35
疎水性アミノ酸であるL−ロイシンを4.8ミリモルの量でアルカリ性溶液に溶解し、アミノ酸溶液を形成した。0.6ミリモルの量でのプルロニックL−35および4.8ミリモルのDMAPを30mLの無水THFに溶解し、透明な溶液を得た。30分間撹拌した後、4.8ミリモルのDSCを含む10mLの無水DMSOを1時間以内に滴下して加え、混合物を室温で24時間撹拌した。プロセスはすべて窒素雰囲気下で行った。24時間後、ロイシンを含む溶液を加え、混合物を24時間撹拌し続けた。得られたロイシン修飾プルロニック溶液を透析で精製し、凍結乾燥して白色のポリマー粉末を得た(収率:35%)。
1H NMR (600 MHz, D
2O): δ 4.30 (m, −O−(C=O)−NH−
CH−), 4.22 (m, −
CH2−O−(C=O)−NH−), 1.70 (m, −
CH2−CH−(CH
3)
2), 1.61 (m, −
CH−(CH
3)
2), 0.97 (m, −CH−(
CH3)2); FTIR: 780 cm
−1 (−NH wag), 1531 cm
−1 (−CNH), 1569 cm
−1(−(C=O)−NH−), 1731 cm
−1 (−(C=O)).
【0063】
ロイシン修飾プルロニックL−35の例示的な化学構造は、以下のように提供される。
【化8】
【0064】
(4)メチオニン修飾プルロニックF−127
疎水性アミノ酸であるL−メチオニンを4.8ミリモルの量でアルカリ性溶液に溶解し、アミノ酸溶液を形成した。0.6ミリモルの量でのプルロニックF−127および4.8ミリモルのDMAPを30mLの無水THFに溶解し、透明な溶液を得た。30分間撹拌した後、4.8ミリモルのDSCを含む10mLの無水DMSOを1時間以内に滴下して加え、室温で24時間攪拌を続けた。プロセスはすべて窒素雰囲気下で行った。24時間後、メチオニンを含む溶液を加え、混合物を24時間撹拌した。得られたメチオニン修飾プルロニック溶液を透析で精製し、凍結乾燥して白色のポリマー粉末を得た(収率:45%)。
1H NMR (600 MHz, D
2O): δ 4.30 (m, −O−(C=O)−NH−
CH−), 4.23 (m, −
CH2−O−(C=O)−NH−), 2.61 (m, −
CH2−CH
2−S−CH
3), 2.16 (s, −S−
CH3), 2.13, 1.96 (m, −CH
2−
CH2−S−CH
3); FTIR: 1215 cm
−1 (−CNH), 1603 cm
−1 (−(C=O)−NH−), 1733 cm
−1 (−(C=O)).
【0065】
実施例2
塩基性アミノ酸修飾プルロニックの調製
【0066】
(1)リジン修飾プルロニックF−127
塩基性アミノ酸であるL−リジンを2.4ミリモルの量で蒸留水に溶解し、アミノ酸溶液を形成した。0.6ミリモルの量でのプルロニックF−127および4.8ミリモルのDMAPを30mLの無水THFに溶解し、透明な溶液を得た。30分間撹拌した後、4.8ミリモルのDSCを含む10mLの無水DMSOを1時間以内に滴下して加え、混合物を室温で24時間攪拌した。プロセスはすべて窒素雰囲気下で行った。24時間後、リジンを含む溶液を加え、混合物を24時間撹拌し続けた。得られたリジン修飾プルロニック溶液を透析で精製し、凍結乾燥して白色のポリマー粉末を得た(収率:45%)。
1H NMR (600 MHz, D
2O): δ 4.25 (m, −
CH2−O−(C=O)−NH−), 3.16 (m, −O−(C=O)−NH−
CH2−), 1.81, 1.70 (m, NH−CH
2−CH
2−CH
2−
CH2), 1.57 (m, NH−CH
2−
CH2−CH
2−CH
2−), 1.41 (m, NH−CH
2−CH
2−
CH2−CH
2−, 2H); FTIR: 776 cm
−1 (−NH wag), 1557 cm
−1 (−CNH), 1710 cm
−1 (−(C=O)).
【0067】
実施例3
酸性アミノ酸修飾プルロニックの調製
【0068】
(1)アスパラギン酸修飾プルロニックF−127
酸性アミノ酸であるL−アスパラギン酸を4.8ミリモルの量でアルカリ性溶液に溶解し、アミノ酸溶液を形成した。0.6ミリモルの量でのプルロニックF−127および4.8ミリモルのDMAPを30mLの無水THFに溶解し、透明な溶液を得た。30分間撹拌した後、4.8ミリモルのDSCを含む10mLの無水DMSOを1時間以内に滴下して加え、混合物を室温で24時間攪拌し続けた。プロセスはすべて窒素雰囲気下で行った。24時間後、アスパラギン酸を含む溶液を加え、混合物を24時間撹拌した。得られたアスパラギン酸修飾プルロニック溶液を透析により精製し、凍結乾燥して白色のポリマー粉末を得た(収率:45%)。
1H NMR (600 MHz, D
2O): δ 4.38 (m, −O−(C=O)−NH−
CH−), 4.26 (m, −
CH2−O−(C=O)−NH−), 2.70, 2.51 (m, −
CH2−(C=O)−OH); FTIR: 776 cm
−1 (−NH wag), 1557 cm
−1 (−CNH), 1710 cm
−1 (−(C=O))。
【0069】
(2)アスパラギン修飾プルロニックF−127
酸性アミノ酸であるL−アスパラギンを2.4ミリモルの量でアルカリ性溶液に溶解し、アミノ酸溶液を形成した。0.6ミリモルの量でのプルロニックF−127および4.8ミリモルのDMAPを30mLの無水THFに溶解し、透明な溶液を得た。30分間撹拌した後、4.8ミリモルのDSCを含む10mLの無水DMSOを1時間以内に滴下して加え、混合物を室温で24時間攪拌し続けた。プロセスはすべて窒素雰囲気下で行った。24時間後、アスパラギンを含む溶液を加え、混合物を24時間撹拌した。得られたアスパラギン酸修飾プルロニック溶液を透析により精製し、凍結乾燥して白色のポリマー粉末を得た(収率:45%)。
1H NMR (600 MHz, D
2O): δ 4.35 (m, −O−(C=O)−NH−
CH−), 4.27 (m, −
CH2−O−(C=O)−NH−), 2.82, 2.68 (m, −
CH2−(C=O)−NH
2); FTIR: 1416 cm
−1 (−CN), 1680 cm
−1 (−(C=O)−NH−), 1720 cm
−1 (−(C=O)).
【0070】
実施例4
芳香族アミノ酸修飾プルロニックの調製
【0071】
チロシン修飾プルロニックF−127
芳香族アミノ酸であるL−チロシンを4.8ミリモルの量でアルカリ性溶液に溶解し、アミノ酸溶液を形成した。0.6ミリモルの量のプルロニックF−127および4.8ミリモルの量のDMAPを30mLの無水THFに溶解し、透明な溶液を得た。30分攪拌した後、4.8ミリモルのDSCを含む10mLの無水DMSOを1時間以内に滴下して加え、混合物を室温で24時間攪拌し続けた。プロセスはすべて窒素雰囲気下で行った。24時間後、チロシンを含む溶液を加え、混合物を24時間撹拌した。得られたチロシン修飾プルロニック溶液を透析により精製し、凍結乾燥して白色のポリマー粉末を得た(収率:40%)。
1H NMR (600 MHz, D
2O): δ 7.20 (d,
2CH,
6CH−phenyl ring), .6.89 (d,
3CH,
5CH−phenyl ring), 4.21 (m, −
CH2−O−(C=O)−NH−), 4.11 (m, −O−(C=O)−NH−
CH−), 3.15, 2.83 (m, −
CH2−ph); FTIR: 1403 cm
−1 (−CN), 1517 cm
−1 (−CNH), 1604 cm
−1 (−C−C−/C=C), 1710 cm
−1 (−(C=O))。
【0072】
実施例5
親水性アミノ酸修飾プルロニックの調製
【0073】
セリン修飾プルロニックF−127
親水性アミノ酸であるL−セリンを4.8ミリモルの量で蒸留水に溶解し、アミノ酸溶液を形成した。0.6ミリモルの量のプルロニックF−127および4.8ミリモルのDMAPを30mLの無水THFに溶解し、透明な溶液を得た。30分攪拌した後、4.8ミリモルのDSCを含む10mLの無水DMSOを1時間以内に滴下して加え、混合物を室温で24時間攪拌し続けた。プロセスはすべて窒素雰囲気下で行った。24時間後、セリンを含む溶液を加え、混合物を24時間撹拌し続けた。得られたセリン修飾プルロニック溶液を透析により精製し、凍結乾燥して白色のポリマー粉末を得た(収率:40%)。
1H NMR (600 MHz, D
2O): δ 4.30 (m, −
CH2−O−(C=O)−NH−), 4.16 (m, −O−(C=O)−NH−
CH−), 3.93, 3.83 (m, −
CH2−OH); FTIR: 1410 cm
−1 (−CN), 1604 cm
−1 (−(C=O)−NH−), 1720 cm
−1 (−(C=O))。
【0074】
(2)システイン修飾プルロニックF−127
親水性アミノ酸であるL−システインを4.8ミリモルの量でアルカリ性溶液に溶解し、アミノ酸溶液を形成した。0.6ミリモルの量のプルロニックF−127および4.8ミリモルの量のDMAPを30mLの無水THFに溶解し、透明な溶液を得た。30分攪拌した後、4.8ミリモルのDSCを含む10mLの無水DMSOを1時間以内に滴下して加え、混合物を室温で24時間攪拌し続けた。プロセスはすべて窒素雰囲気下で行った。24時間後、システインを含む溶液を加え、混合物を24時間撹拌し続けた。得られたシステイン修飾プルロニック溶液を透析により精製し、凍結乾燥して白色のポリマー粉末を得た(収率:50%)。
1H NMR (600 MHz, D
2O): δ 4.46 (m, −O−(C=O)−NH−
CH−), 4.27 (m, −
CH2−O−(C=O)−NH−), 3.20, 2.98 (m, −
CH2−SH); FTIR: 1412 cm
−1 (−CN), 1515 cm
−1 (−CNH), 1604 cm
−1 (−(C=O)−NH−), 1700 cm
−1(−(C=O))。
【0075】
実験例1
アミノ酸修飾ポリマーのレオロジーの特性評価
【0076】
(1)アミノ酸修飾ポリマーヒドロゲルの調製
実施例1〜5で調製したアミノ酸修飾プルロニックF−127のそれぞれを、15%(w/v)の最終濃度で蒸留水に溶解した。
【0077】
(2)比較例1の調製
ある量のプルロニックF127に、ある量の蒸留水を加えて、最終濃度が15%(w/v)のポリマーヒドロゲルを形成した。
【0078】
(3)レオロジーの特性評価
実施例1〜5で調製したアミノ酸修飾プルロニックF−127ヒドロゲルおよび比較例1の未修飾の対応物の粘度、ゾル−ゲル転移温度および粘弾性特性を、コーンプレート構成および溶媒の蒸発を防止するための金属カバーを備えたHR10レオメーター(TA Instruments社)を用いて特徴付けた。粘度測定は、せん断速度1.0s
−1、温度上昇2℃/分で行った。前記ゾル−ゲル転移温度は、材料の貯蔵弾性率と損失弾性率が互いに交差する特定の温度で定義されており、20℃〜37℃の範囲で、温度ランプ2℃/分、トルク値100μN・m、固定周波数1Hzの振動モードを通して測定した。粘弾性特性は、20℃と37℃でそれぞれ1%のひずみを加えた周波数掃引によって測定した。粘度およびゾル−ゲル転移温度の結果をそれぞれ表1Aおよび1Bに示し、粘弾性特性の結果を
図1Aおよび1Bに示す。
【0079】
表1Aに示すように、実施例2および5(2)で調製したヒドロゲルの25℃および37℃の両方における粘度は、比較例1の粘度よりも極めて高く、このことは、リジンおよびシステイン修飾ポリマーのポリマー鎖がより複雑に絡み合っていることを示しており、リジンおよびシステイン残基がポリマー、アミノ酸残基、および水の間の強い相互作用に寄与し、前記ポリマーの機械的強度の向上につながっている可能性がある。これらの結果は、いくつかのアミノ酸で修飾することによって、プルロニックF−127構造の機械的強度を大幅に向上させることができるという強い証拠となる。実施例4で調製されたヒドロゲルの場合、25℃および37℃の両方における粘度は、比較例1の粘度よりも有意に低かった。このことは、芳香族基を有するアミノ酸が、修飾されたポリマーの鎖の絡み合いを妨げる可能性を示唆しており、最終的には、ポリマーの流動性の増加につながり、噴霧などの他の有用性をもたらす可能性がある。他の実施例で調製されたヒドロゲルは、表1Aに示すように、いずれも比較例1よりも高い粘度を示した。実施例2および5(2)で調製されたヒドロゲルのような顕著な粘度上昇は見られなかったが、これらの実施例は、プルロニックF−127の機械的強度が、プルロニックの鎖末端に1つまたはいくつかのアミノ酸を組み込むことで改善される可能性があるという知見を提供している。
【0080】
表1Bは、実施例1〜5で調製したヒドロゲルのゾル−ゲル転移温度を示している。表Bに示すように、最初に、調製されたヒドロゲルは、すべて異なるタイプのアミノ酸で修飾されているが、すべて温度感受性を有することが確認された。次に、実施例1〜5で調製されたヒドロゲルは、すべて比較例1のものよりも高いゾル−ゲル転移温度を示した。有意に、実施例2および実施例5(2)で調製されたヒドロゲルは、比較例1よりも著しく高いゾル−ゲル転移温度を示しており、このことは、ヒドロゲルと水との間により多くの水素結合または相互作用が形成されたことを示しており、水素結合または相互作用の形成は、ポリマー鎖におけるリジンのアミノ基またはシステインのチオール基に起因すると考えられ、その結果、これらの修飾ヒドロゲルの疎水性鎖が凝集し最終的に固体状のゲルを形成するためには、より高い温度を必要とする可能性がある。
【0081】
実施例1〜5および比較例1で調製したヒドロゲルの粘弾性特性を、レオメーターを用いて調べ、機械的特性をよりよく評価した。
図1Aに示すように、20℃において、実施例1〜5で調製されたヒドロゲルのすべてについて、貯蔵弾性率(G’)値よりも大きな損失弾性率(G”)値が観察され、これらのヒドロゲルのすべてが室温でゾル状の特性を示し、これらのヒドロゲルがより多様な用途に使用されることを可能にすることを示している。また、
図1Bに示すように、37℃では、実施例1〜5で調製したすべてのヒドロゲルについて、損失弾性率(G”)値よりも大きな貯蔵弾性率(G’)値が観察され、これらのヒドロゲルがすべてゲル状の特性を示すことが示された。さらに、実施例2および5(2)の両方で調製されたヒドロゲルは、貯蔵弾性率(G’)値が損失弾性率(G”)値よりも極めて大きく、これらのヒドロゲルが優れた機械的強度を示すことが示唆された。さらに、実施例3(2)および4で調製されたヒドロゲルを除いて、他の実施例で調製されたものはすべて、比較例1よりも大きな貯蔵弾性率(G’)値を示し、より優れた機械的特性が得られたことを示す。重要なことに、実施例2、5(2)および比較例1で調製されたヒドロゲルを参照すると、リジンおよびシステインで修飾されたプルロニックヒドロゲルは、未修飾のプルロニックヒドロゲルと比較して非常に大きな貯蔵弾性率(G’)を示し、未修飾のプルロニックヒドロゲルが、1つまたはいくつかのアミノ酸で修飾された後、機械的特性の優れた強化がもたらされ得ることが示される。なお、実施例3で調製されたヒドロゲルは、比較例1のものと比較して貯蔵弾性率(G’)値に有意な変化を示さないが、それらの粘度が比較例1のものよりも顕著に高かったため、依然として差異がある機械的強度を有している可能性がある。驚くことではないが、実施例4で調製されたヒドロゲルは、比較例1のものよりも著しく小さい貯蔵弾性率(G’)値を示し、このヒドロゲルが比較例1よりも弱い機械的強度を有する可能性があることが示唆される。調製したヒドロゲルの粘弾性の結果は、粘度測定から得られた結果と一致した。
【0082】
【表1A】
【0083】
【表1B】
【0084】
実験例2
インビトロでのポリマー滞留時間の測定
【0085】
(1)アミノ酸修飾ポリマーヒドロゲルの調製
実施例1〜5で調製されたアミノ酸修飾プルロニックF−127のそれぞれを、15%(w/v)の最終濃度で蒸留水に溶解した。
【0086】
(2)比較例1の調製
ある量のプルロニックF−127に、ある量の蒸留水を加えて、最終濃度が15%(w/v)のポリマーヒドロゲルを形成した。
【0087】
滞留時間の測定
本発明において、調製されたポリマーヒドロゲルの滞留時間を測定するために適用される方法論では、米国特許第10,105,387が参照される。
【0088】
簡単に言えば、実施例1〜5および比較例1で調製した各ポリマーヒドロゲル1mLを、7mLの個々のバイアルに加えた。次に、すべてのバイアルを37℃のインキュベーターに入れて、固体のポリマーヒドロゲルを得た。各個別のバイアル内のヒドロゲルがすべてゲル相になった後、リン酸緩衝液(PBS、pH7.4)を1mL添加した。その後、バイアルを37℃のインキュベーターで貯蔵しながら、1日1回、一定時間間隔で、調製したポリマーゲルの表層のリン酸緩衝液を除去した。ポリマーゲルの残量を観察して、インビトロでのポリマーゲルの滞留時間を測定し、その結果を表2に示した。
【0089】
表2に示すように、実施例1〜5で調製したヒドロゲルの滞留時間は、いずれも比較例1の滞留時間よりも長く、4〜18日であった。特に、実施例2および5(2)で調製されたヒドロゲルは、それぞれ16日および18日と著しく優れたゲル滞留時間を示した。比較例1は、いかなるタイプのアミノ酸でも修飾されておらず、最も短いゲル滞留時間を示し、約2日であった。したがって、様々なタイプのアミノ酸で修飾されたプルロニックは、そのゲルの滞留時間を改善することがわかった。
【0090】
これらの結果から、アミノ酸を修飾したプルロニックヒドロゲルでは、ポリマー鎖内の水素結合、ポリマー鎖間の水素結合、ポリマー鎖と周囲の水との間の水素結合が増加し、それによりヒドロゲルの水食耐性能が向上することが示唆される。さらに、リジンおよびシステイン修飾プルロニックヒドロゲルは、そのアミン基およびチオール基が水素結合を形成するか、さらには(チオール基を介して)ジスルフィド結合を形成する傾向があり、これにより最終的には水食に対するゲルの安定性が大きく向上するため、水食耐性能の向上を示すさらなる具体的証拠が提供される。結論として、これらの修飾ヒドロゲルのヒドロ構造(hydro−structures)は、1つまたはいくつかのアミノ酸を導入することによって大幅に強化することができる。
【0091】
前述したように、粘度と貯蔵弾性率の増加は、調製されたヒドロゲルの機械的強度の改善と見なすことができることも注目に値する。対照的に、実施例4で調製されたヒドロゲルは、比較例1よりも比較的低い粘度および弱い機械的強度を示したが、それでも比較例1よりも長いゲル滞留時間を示した。これは、チロシンが疎水性アミノ酸であり、水に反発するという生来の性質に起因する可能性があり、このことでチロシン修飾プルロニックヒドロゲルが水食に抵抗し得、それによりゲルの滞留時間が長くなる。
【0092】
【表2】
【0093】
実施例3
インビトロ粘膜付着性の測定
【0094】
(1)アミノ酸修飾ポリマー溶液の調製
実施例1〜5で調製したアミノ酸修飾プルロニックF−127のそれぞれを、最終濃度15%(w/v)で超純水に溶解し、各ポリマー溶液を、使用するまで低温で保存した。
【0095】
(2)比較例1の調製
ある量のプルロニックF127を超純水に溶解して、最終濃度が15%(w/v)のポリマー溶液を得、前記ポリマー溶液を、使用するまで低温で保存した。
【0096】
(3)ムチン溶液の調製
ムチン粉末を超純水に溶解して15%(w/v)の溶液を得ることによって、ムチン溶液を調製した。詳細には、4℃に維持された冷水浴中で、穏やかな磁気撹拌(200rpm)の下、100mlの超純水に、ムチンをゆっくりと加えた。調製を終了すると、ムチン溶液を、使用するまで4℃で保存した。
【0097】
(4)ポリマー−ムチン混合物の調製
実施例1〜5で調製したポリマー粉末のそれぞれと、比較例1で調製した未修飾ポリマー粉末とを、調製したムチン溶液(15重量%)と個別に混合して、15%(w/v)のポリマー−ムチン混合物を得た。
【0098】
(5)インビトロ粘膜付着性判定
ポリマー粘膜付着の予測的かつ間接的な評価を得るために、レオロジー法を用いた(Hassan, E.E.,ら, A Simple Rheological method for the in Vitro Assessment of Mucin−Polymer Bioadhesive Bond Strength,Pharm Res 7,491−495, 1990)。実施例1〜5で調製されたアミノ酸修飾プルロニックF−127溶液、比較例1の未修飾の対応物、調製されたムチン溶液、およびポリマーとムチン溶液との混合物の粘膜付着性を、コーンプレート構成と、溶媒の蒸発を防止するための保護金属カバーとを備えたHR10レオメーター(TA Instruments)を用いて評価した。レオロジー分析は、37℃で10秒
−1のせん断速度のフローモードを用いて行い、熱衝撃による構造変化を避けるために、各分析の前に室温で5分間の休止時間を設けた。
【0099】
この実験は、前記アミノ酸修飾ポリマーとムチンの溶液との混合物から得られた分散液の測定された粘度の評価に基づいている。これら2つの成分の間の相互作用の程度は、混合物の最終粘度(η
最終)の測定値であり、これは前記ポリマーとムチンとの間の確立された相互作用に対するパラメータを表し、以下の式によって計算することができる。
【0100】
η
最終=η
混合物−(η
ポリマー+η
ムチン)
ここで、
η
混合物=ポリマーとムチンとを含む混合物の粘度
η
ポリマー=ポリマーの粘度
η
ムチン=ムチンの粘度
【0101】
ポリマーとムチンの間に相互作用がある場合、値はη
最終>0(Mayol L.ら、A novel poloxamers/hyaluronic acid in situ forming hydrogel for drug delivery:Rheological,mucoadhesive and in vitro release properties,Eur J Pharm Biopharm 70(1);199−206,2008)であり、結果を表3に示す。
【0102】
表3に示すように、すべての実施例で調製された各ポリマーの粘膜付着特性を、η
最終の計算された粘度で表した。明らかに、すべての調製されたポリマーは、一定の程度の粘膜付着特性を示した。さらに、実施例1および4で調製されたアミノ酸修飾F−127ポリマーは、比較例1の粘膜付着性よりも低いη
最終の値を示したが、他の実施例のポリマーはすべて有意に高いη
最終の値を示し、プルロニックF−127を修飾するために疎水性および芳香族疎水性アミノ酸を使用することは、修飾されたポリマーに対する粘膜付着特性の低下をもたらすはずであることを示唆した。これらの結果は、疎水性アミノ酸の側鎖の利用可能性が低いことに起因する可能性がある。より具体的には、この場合、ロイシン、メチオニン、およびチロシン(芳香族アミノ酸に分類されるが、疎水性を示す)を含む疎水性アミノ酸の側鎖は、ムチンとの相互作用(例えば、水素結合)を生成するための利用可能性が低く、したがって、その粘膜接着性は相対的に弱い。対照的に、実施例2および5で調製されたポリマーは、アミン基(実施例2から)、ヒドロキシル基(実施例5(1)から)、およびチオール基(実施例5(2)から)が、ムチンと水素結合および/またはジスルフィド結合を形成するのに利用可能な側鎖を有しているため、有意に強い粘膜接着性を示した。その結果、これらのアミノ酸修飾ポリマーは、強い粘膜接着性を示す。
【0103】
【表3】
【0104】
実験例4
動物モデルでの癒着防止効果の試験
【0105】
(1)アミノ酸修飾ポリマーヒドロゲルの調製
実施例1〜4で調製したアミノ酸修飾プルロニックF−127のそれぞれを蒸留水に溶解して、最終濃度が15%(w/v)のポリマーヒドロゲルを得た。
【0106】
(2)比較例1の調製
ある量のプルロニックF127に、ある量の蒸留水を加えて、最終濃度が15%(w/v)のポリマーヒドロゲルを形成した。
【0107】
(3)比較例2の調製
実施例2および5(2)で調製したアミノ酸修飾ポリマーを、まず8:2の重量比で混合し、ポリマーの組み合わせを得た。続いて、ある量の蒸留水を加えて、最終濃度が15%(w/v)のヒドロゲル混合物を得た。
【0108】
(4)動物試験
本発明の合成アミノ酸修飾ポリマーヒドロゲルの組織癒着防止効果を評価するために、動物実験(腹壁擦過ラットモデル)を行った。ここでは、実施例1(1)、2、3、4で調製したポリマーヒドロゲルを実験群とし、比較例1で調製した未修飾のものを比較群として用い、比較例2で調製したヒドロゲルを組み合わせたものを別の比較群として用い、手術部位に材料を適用しない対照群を用いた。
【0109】
動物試験では、1群あたり4匹の雄のSprague Dawley(SD)ラットを、Zoletil(登録商標)とRompun(登録商標)(1:1)とを含む混合液を1mL/Kg注入することにより腹腔内麻酔した。麻酔をかけたラットを剃毛し、ポビドンで消毒した後、腹壁の白線に沿って5cmの長さで切開して腹膜を開いた。その後、メスを用いて右腹壁に表皮を剥がした2×2cm
2の腹膜欠損を形成した。実験群に、濃度15%(w/v)のアミノ酸修飾プルロニックヒドロゲルおよび非修飾プルロニックヒドロゲルをそれぞれ2mLずつ、損傷部位に個別に均一に適用したところ、2分以内にその場でゲル化が起こった。対照群では、2mLの滅菌した生理食塩水で欠損部を洗浄した。最後に、腹膜を3−0絹縫合糸で縫合し、皮膚を4−0絹縫合糸で縫合した。
【0110】
術後14日目に、組織の癒着の重症度を、Hoffmann癒着スコアリングシステム(スコア番号が0、1、2、3のいずれかであり、番号が大きいほど組織の癒着の重症度が高い)に従って、二重盲検法で調べた。
【0111】
Hoffmann癒着スコアリングシステムを用いた組織癒着の重症度の検討に関する詳細な説明を以下の表4に示す。Hoffmann癒着スコアリングシステムを用いた組織の癒着の重症度の評価された定量的な結果を、表5に示し、そして
図2にグラフで示すことができ、ここで、対照群と実験群との間の統計的な差異を、Prism 7 for Mac(GraphPad Software、USA)を用いて両側計算によるスチューデントのt検定で分析した。また、対照群、比較群、実験群の組織癒着の写真を、
図3(A〜E)に示す。
【0112】
表5に示すように(
図2も参照)、実施例1〜4で調製したヒドロゲルは、すべて組織癒着を有意に抑制する効果を示したが、比較例1で調製したヒドロゲルは、対照群と比較して組織癒着を防止する効果が有意ではなかった(
図3(A〜D)も参照)。特に、実施例2で調製したヒドロゲルは、組織癒着を防止する効果が著しく優れていた。これらの結果から、滞留時間の長いヒドロゲルがより十分な組織癒着防止効果を発揮することが、示唆される。また、異なるアミノ酸修飾ポリマーの組み合わせを調整することにより、これらのヒドロゲル混合物の粘度、機械的強度、粘膜付着性を制御することができ、したがって、その滞留時間を調整することができ、よって、組織癒着防止効果が期待できるヒドロゲルを作製することができる。したがって、リジン修飾ポリマーとシステイン修飾ポリマーとの組み合わせを含む組成物を有する、比較例2で調製したヒドロゲルは、16日にわたるゲル滞留時間を示し、動物実験では著しく優れた組織癒着防止効果を示した(
図3Eも参照)。
【0113】
【表4】
【0114】
【表5】
a:平均±SEM(n = 4); *:p <0.05; **:p <0.01; ***:p <0.001; ****:p <0.0001; NS:有意差なし
【0115】
実験例5
薬学的に活性な薬剤の充填、封入、および放出
【0116】
(1)PTXおよびアミノ酸修飾ポリマー混合物の調製
まず、12mgのPTX12mgを、8mLのメタノールに溶解した。その後、実施例2および5(2)の各アミノ酸修飾ポリマー1gを、それぞれ対応するPTX−メタノール溶液に加え、PTX−アミノ酸修飾ポリマーの混合物を得た。
【0117】
(2)比較例1の調製
PTX12mgをメタノール8mLに溶解した。調製したPTX−メタノール溶液に未修飾のプルロニックF−127を1g加え、PTX−プルロニックF−127混合物を形成した。
【0118】
(3)薬剤の充填と封入
ここでは、薬学的に活性な薬剤としてパクリタキセルを選択し、これを、薄膜水和法を用いて充填および封入した(Wei Z.,ら,Paclitaxel−Loaded Pluronic P123/F127 Mixed Polymeric Micelles:Formulation,Optimization and in Vitro Characterization,Int.J.Pharm,376(1),176−185,2009)。簡単に説明すると、実施例2、5(2)、および比較例1で調製された薬剤およびアミノ酸修飾ポリマー混合物のそれぞれを、個々のナス型ガラス瓶に移し、1時間かけて回転蒸発させてメタノールを除去した。メタノールが除去されると、ボトル内にはPTX−充填ポリマー薄膜の層が形成され、これを50℃の真空オーブンに一晩入れて溶媒の除去を完了した。各PTX−充填ポリマー薄膜を8mLの蒸留水で再水和してPTXを封入した後、23μmのセルロース膜でろ過して、封入されていないPTXを除去した。その後、薬物充填容量と薬物封入効果とを評価するために、PTXを封入したポリマーをそれぞれ凍結乾燥して、PTXポリマー粉末を生成した。
【0119】
薬物充填容量と薬物封入効果の計算式を、以下のように示した。
【数1】
【数2】
とし、その結果を表6に示す。
【0120】
【表6】
【0121】
表6に示すように、実施例2および5(2)の両方で調製されたヒドロゲルは、比較例1と比較して、薬物負荷容量が向上することが確認された。さらに、実施例2のヒドロゲルはまた、増強されたPTX封入効果を示した。これらの結果は、プルロニックF−127が、アミノ酸修飾により、薬物負荷容量と封入効果が大幅に向上され得ることを示した。
【0122】
(4)薬物放出
本明細書において、無膜拡散法(Zhang L.,ら,Development and in−Vitro Evaluation of Sustained Release Poloxamer 407(P407)Gel Formulations of Ceftiofur,J.Controlled Release,85(1),73−81,2002)を用いて、薬物放出プロファイルを調べた。簡単に説明すると、実施例2、5(2)、および比較例1で調製されたPTX封入ポリマー粉末の各サンプルを、それぞれ対応するビーカーに入れ、再水和させて、アミノ酸変性プルロニックを20%(w/v)含むPTX−ポリマーヒドロゲルを形成した。ここでは、比較例1から、ポリマー含有量が20%(w/v)のPTX−未修飾プルロニックヒドロゲルを調製し、比較サンプルとした。次に、ビーカー内の調製した各PTX−ポリマーヒドロゲルを、37℃のインキュベーター内で予備加温し、ゲル状態を保持した。その後、PBS−メタノール混合溶液(90%:10%;v/v)を含む予め温めておいた放出媒体25mLを、調製した各PTX−ポリマーヒドロゲルの表面に直接添加し、37℃のインキュベーター内で100rpmの振とう速度で静置した。所定の時間に各ビーカーから1mLの溶液を取り出して薬剤の放出を調べ、続いて1mLの放出媒体を加えてシンク状態(sink condition)を維持した。調製した各アミノ酸修飾プルロニックおよび比較例1の薬物放出試験を3連で行い、UV波長を236nmに設定したUV−Vis分光計で薬物放出データを検出した。分析された薬物放出プロファイルは、
図4(A−C)に表示されている。
【0123】
図4Aは、未修飾のプルロニックF−127から調製したヒドロゲルのPTX放出プロファイルを示す。
図4Aに示すように、封入されたPTXの約50%が24時間以内に放出され、すべてのPTXが48時間以内に未修飾プルロニックF−127から完全に放出され、迅速な薬物放出挙動を示した。さらに、封入されたPTXの約30%が最初の12時間以内に放出されたことから、ダンピング(dumping)薬物放出が起こったことがわかる。
【0124】
図4(B−C)は、実施例2および5(2)で調製したヒドロゲルのPTX放出パターンをそれぞれ示す。
図4(B−C)に示すように、120時間以内に、実施例2で調製されたヒドロゲルから約60%のPTXが放出され、一方、実施例5(2)で調製されたヒドロゲルからは40%のPTXがゆっくりと放出され、これらのヒドロゲルの持続可能な薬物放出プロファイルを示している。また、両方のヒドロゲルも168時間以内にPTXを完全に放出したものの、異なる薬物放出パターンを示していた。実施例2で調製されたヒドロゲルのPTX放出速度は、最後の48時間に急速な増加を示し、一方で実施例5(2)で調製されたヒドロゲルは、最後の24時間にPTXの迅速な放出を示した。これらの結果は、これら2つのヒドロゲル間の機械的強度の違いに起因する可能性がある。実験例2における実施例2および5(2)のゲル滞留時間の結果により示されるように、リジン修飾ヒドロゲルは、システイン修飾ヒドロゲルよりもわずかに短いゲル滞留時間を示したことから、リジン修飾ヒドロゲルの構造は、システイン修飾ヒドロゲルの構造よりも早期に、速く崩壊することが示唆された。このような状態により、リジン修飾ヒドロゲルではシステイン修飾ヒドロゲルよりも速く内部チャネルが形成され、この内部チャネルによりPTXがヒドロゲル内を容易に通過することが可能になり、その結果、リジン修飾ヒドロゲルではシステイン修飾ヒドロゲルと比較して早期にPTX放出速度の増加が生じるのであろう。
【0125】
本発明者らの実験結果に基づき、プルロニックをベースとした薬物放出システムは、プルロニックを1つまたはいくつかのアミノ酸で修飾することにより、薬物の充填、薬物の封入、および薬物放出の持続性を大幅に向上できることが確認される。
【0126】
要約すると、本発明により、1つまたはいくつかのアミノ酸によって修飾されたプルロニックが(1)ポリマー構造の機械的強度を高め、(2)ポリマーの流動性を向上させ、生物医学的用途での有用性を高め、(3)水食耐性能を高め、(4)ポリマーと組織との間の付着性を高め、(4)組織癒着防止能を高め、(5)薬学的に活性な薬剤の送達における充填容量を増加させ、(7)薬学的に活性な薬剤の送達における放出プロファイルを改善し得ることが、見出された。
【0127】
本発明を前述の好ましい実施形態を参照して詳細に説明してきたが、前述の説明は本発明を限定するものとして解釈されるべきではないことを理解されたい。前述の内容を読めば、様々な修正や置換が当業者には明らかになるであろう。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義されるべきである。