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特開2021-181428癒着防止用アミノ酸修飾ポリマーおよびその用途
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-181428(P2021-181428A)
(43)【公開日】2021年11月25日
(54)【発明の名称】癒着防止用アミノ酸修飾ポリマーおよびその用途
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/10 20060101AFI20211029BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20211029BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20211029BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20211029BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20211029BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20211029BHJP
   A61P 23/00 20060101ALI20211029BHJP
   A61L 31/06 20060101ALI20211029BHJP
   A61L 31/16 20060101ALI20211029BHJP
   A61K 47/69 20170101ALI20211029BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20211029BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20211029BHJP
【FI】
   A61K47/10
   A61K45/00
   A61P35/00
   A61P31/04
   A61P7/04
   A61P29/00
   A61P23/00
   A61L31/06
   A61L31/16
   A61K47/69
   A61K9/107
   A61K31/337
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2021-73641(P2021-73641)
(22)【出願日】2021年4月23日
(31)【優先権主張番号】63/014,756
(32)【優先日】2020年4月24日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】521178367
【氏名又は名称】博唯生技股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】PRO‐VIEW BIOTECH CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】張 ▲育▼嘉
(72)【発明者】
【氏名】張 ▲運▼坤
(72)【発明者】
【氏名】▲黄▼ 文延
(72)【発明者】
【氏名】薛 ▲敬▼和
(72)【発明者】
【氏名】▲蔡▼ 協▲致▼
(72)【発明者】
【氏名】林 宣因
(72)【発明者】
【氏名】徐 ▲迺▼盛
(72)【発明者】
【氏名】林 子▲楡▼
【テーマコード(参考)】
4C076
4C081
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA17
4C076AA95
4C076CC04
4C076CC05
4C076CC14
4C076CC27
4C076CC32
4C076EE23
4C076EE49
4C076FF43
4C076GG06
4C081AC16
4C081BA17
4C081BB01
4C081BB06
4C081BB07
4C081CA182
4C081CC02
4C081CE02
4C081DA12
4C081EA06
4C084AA17
4C084MA22
4C084MA28
4C084MA56
4C084NA05
4C084NA13
4C084ZA04
4C084ZA21
4C084ZA53
4C084ZB11
4C084ZB26
4C084ZB35
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA02
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA22
4C086MA28
4C086NA05
4C086NA13
4C086ZB26
(57)【要約】
【課題】
温度感受性材料としてのプルロニックは、その構造上の欠陥のいくつかに対処して機械的強度、組織付着能力、耐水特性を向上させることができれば、理想的な癒着防止剤や薬物担体となる大きな可能性を秘めている。プルロニックに基づく理想的な癒着防止材や薬物ベクターの提供。
【解決手段】
合成アミノ酸修飾ポリマーならびにその製造方法およびその使用方法が、開示されている。この合成アミノ酸修飾ポリマーは、明確な温度感受性、向上した耐水食性、および強化された機械的特性を有し、術後の組織癒着の形成を低減または防止するのに適している。さらに、このアミノ酸修飾ポリマーは、薬学的に活性な薬剤を送達するためのベクターとしても使用され得る。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)の構造を有する、ポリマー。
【化1】
(式中、
POLYは、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)−ポリ(プロピレンオキシド)(PPO)−ポリ(エチレンオキシド)(PEO)のトリブロックコポリマーであり、
mおよびnは、互いに独立して0または1であり、mおよびnが同時に0になることはなく、
AAはアミノ酸残基であり、そのアミノ基は、前記POLYの鎖末端に直接結合して、カルバメート(O−C(=O)−NH)結合を形成する。)
【請求項2】
前記POLYが、1,000〜20,000ダルトンの範囲の平均分子量を有する、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
前記POLYが、プルロニックF−127(PF127)、プルロニックF−68(PF68)、およびプルロニックL−35(PL35)からなる群から選択される、請求項1に記載のポリマー。
【請求項4】
前記アミノ酸残基が、疎水性アミノ酸、塩基性アミノ酸、酸性アミノ酸、芳香族アミノ酸、および親水性アミノ酸からなる群から選択される、請求項1に記載のポリマー。
【請求項5】
前記疎水性アミノ酸が、グリシン、アラニン、バリン、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、およびフェニルアラニンからなる群から選択され、前記塩基性アミノ酸が、リジン、ヒスチジン、アルギニンからなる群から選択され、前記酸性アミノ酸が、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸からなる群から選択され、前記芳香族アミノ酸が、チロシン、およびトリプトファンからなる群から選択され、前記親水性アミノ酸が、セリン、システイン、スレオニン、プロリンからなる群から選択される、請求項4に記載のポリマー。
【請求項6】
前記POLYが、プルロニックであり、前記AAが、ロイシン、メチオニン、リジン、アスパラギン酸、アスパラギン、チロシン、セリン、およびシステインからなる群から選択される、請求項1に記載のポリマー。
【請求項7】
術後組織癒着の防止および薬物送達のために使用される、請求項1に記載のポリマー。
【請求項8】
下記式(I)の構造を有するポリマーのうちのいずれか1つまたはその組み合わせ、および、薬学的に許容される担体を含む、組成物。
【化2】
(式中、
POLYは、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)−ポリ(プロピレンオキシド)(PPO)−ポリ(エチレンオキシド)(PEO)のトリブロックコポリマーであり、
mおよびnは、互いに独立して0または1であり、mおよびnが同時に0になることはなく、
AAは、アミノ酸残基であり、そのアミノ基は、前記POLYの鎖末端に直接結合して、カルバメート(O−C(=O)−NH)結合を形成する。)
【請求項9】
前記POLYが、1,000〜20,000ダルトンの範囲の平均分子量を有する、請求項8に記載のポリマー。
【請求項10】
前記ポリマーのいずれか1つまたはその組み合わせの量が、前記組成物の5重量%〜30重量%である、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記POLYが、プルロニックF−127(PF127)、プルロニックF−68(PF68)、およびプルロニックL−35(PL35)からなる群から選択される、請求項8に記載のポリマー。
【請求項12】
前記アミノ酸残基が、疎水性アミノ酸、親水性アミノ酸、塩基性アミノ酸、酸性アミノ酸、および芳香族アミノ酸からなる群から選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項13】
前記疎水性アミノ酸が、グリシン、アラニン、バリン、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、およびフェニルアラニンからなる群から選択され、前記塩基性アミノ酸が、リジン、ヒスチジン、アルギニンからなる群から選択され、前記酸性アミノ酸が、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸からなる群から選択され、前記芳香族アミノ酸が、チロシン、およびトリプトファンからなる群から選択され、前記親水性アミノ酸が、セリン、システイン、スレオニン、プロリンからなる群から選択される、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記POLYが、プルロニックであり、前記AAが、ロイシン、メチオニン、リジン、アスパラギン酸、アスパラギン、チロシン、セリン、およびシステインからなる群から選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項15】
前記組み合わせが、混合された式(I)のうちの2つ以上であり、前記POLYが、プルロニックF−127(PF127)であり、前記AAが、リジン、セリン、およびシステインからなる群から選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項16】
薬学的に活性な薬剤をさらに含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項17】
前記薬学的に活性な薬剤が、抗癌剤、抗生物質、止血剤、ステロイド、非ステロイド系抗炎症剤、ホルモン、鎮痛剤、および麻酔薬からなる群から選択される、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
術後組織癒着の防止および薬物送達のための、請求項8に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノ酸修飾ポリマーならびにその製造方法およびその使用方法に関する。アミノ酸修飾ポリマーは、温度感受性を有し、術後の組織癒着を軽減または防止するための吸収可能な機械的バリアを形成することができる。さらに、アミノ酸修飾ポリマーは、薬学的に活性な薬剤を送達するためのベクターとして機能することができる。
【背景技術】
【0002】
組織や臓器の癒着とは、内部組織または臓器の表面に異常に結合した瘢痕組織の帯であり、手術による外傷は、組織の癒着を引き起こす最も一般的な要因として、一般に知られている。術後の組織癒着は、慢性的な痛み、虚血、腸閉塞、臓器障害などの重篤な臨床合併症を引き起こす可能性があり、癒着剥離のための再手術が必要となることが多い。再手術は、不十分な麻酔、過度の出血、術後の炎症などの多くの危険因子が導入されるため、致命的なものとなる可能性がある。そこで、術後の組織癒着を防止するために、損傷した組織と隣接する組織との間に物理的なバリアを導入して術後の組織癒着の形成を妨げることが、広く受け入れられ、臨床的に使用されてきた。
【0003】
組織の癒着を防ぐための物理的な組織バリアとしては、フィルム・シート型、液体型、ゲル型など、さまざまなタイプの天然ポリマーまたは合成ポリマーが広く研究されてきた。フィルム・シート型の組織バリアは、損傷した組織を隣接する組織から物理的に隔離することができ、その結果、組織の癒着を防止することができる。カルボキシメチルセルロースをヒアルロン酸で架橋して調製したSeprafilm(登録商標)(Genzyme社)や、酸化されたポリマーセルロースにより調製されるInterceed(登録商標)(Johnson&Johnson Medical社)などが、癒着防止に使用される市販のフィルム・シート型材料である。しかし、緊急手術の状況では、フィルム・シート型の癒着防止剤を取り扱うことは、困難である。また、フィルム・シート型の組織バリアは、適用部位が位置的に複雑であったり、微細であったり、管状であったり、手が届きにくい位置にある場合の使用には適していない。また、フィルム・シート型の癒着防止剤を使用すると、縫合過程中に損傷部位にさらなる損傷をもたらす可能性があるという欠点がある。
【0004】
いくつかの液体型癒着バリア、例えば、32%デキストラン溶液によって調製されたHyson(登録商標)および4%イコデキストリン溶液によって調製されたAdept(登録商標)が商業的に使用されてきた。液体型の癒着防止剤は、手術後に創傷全体を洗浄するための滴下注入剤として適用するのが容易である。しかし、これらの物質には共通して、適用部位への付着性が不十分であるという1つの欠点がある。そのため、十分な癒着防止効果を発揮することができない。
【0005】
前述の問題を解決するために、様々なポリマー材料をベースにした様々なゲル型の癒着バリアが開発されている。ポリ乳酸をベースにしたAdcon−L(Gliatech)、ヒアルロン酸をベースにしたIntergel(登録商標)(Lifecore Biomedical)、天然ポリマーをベースにしたAdba(Amitie)、ポリエチレングリコールをベースにしたSpraygel(Confluent Surgical)、ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシドコポリマーをベースにしたFlowgel(Mediventures)などがゲル型癒着防止剤として開発されている。あらゆるゲル型癒着防止材の中でも温度感受性ヒドロゲルは、ポリマー溶液の塗布、注入、または噴霧などによりそのプレゲル溶液を損傷組織に直接投与し、その後、温度トリガーによりその場でヒドロゲルを形成することができるため、特に注目されている。さらに、温度感受性ヒドロゲルは、抗炎症剤などの薬学的に活性な薬剤を封入する能力も備えている。
【0006】
それに比べて、ゲル型癒着防止材は、液体型癒着防止剤よりも比較的安定したバリアを形成することができ、フィルム・シート型の癒着防止剤に比べて作業時間を大幅に短縮することができる。しかし、ゲル型癒着防止材は、通常、傷が治癒する前に体内で急速に溶解してしまうため、早期に吸収されてしまい、最終的には癒着防止効果が低くなる。
【0007】
米国特許第4,141,973B1には、組織癒着防止を目的として、ヒアルロン酸を主成分として使用する組成物が開示されている。しかし、ヒアルロン酸は生体内で急速に分解され、半減期が3日と短く、組織の癒着防止には十分な滞留時間がない材料であることが示されている。この欠点は、単一のヒアルロン酸が組織癒着防止剤として機能することを大きく制限している。
【0008】
一般にA−ポリ(エチレンオキシド)−B−ポリ(プロピレンオキシド)−A−ポリ(エチレンオキシド)(PEO−PPO−PEO)の構造を有するトリブロックコポリマーであるプルロニック(Pluronic)またはポロキサマーは、熱可逆的なゾル−ゲル転移挙動を示す代表的な温度感受性材料であり、癒着防止材料として広く研究されてきた。一般的に、プルロニックは低温では溶液状態で存在しているが、ある程度温度が上がるとゲル化が起こる(米国特許第4,188,373、米国特許第4,474,751、米国特許第4,478,822)。このようなゾル−ゲル転移挙動は、組成、濃度、分子量、環境イオン強度、pH値、添加剤などの要因によって影響を受ける可能性がある。したがって、プルロニックをベースにしたポリマーは、その多彩な物理化学的特性および生体適合性により、非常に魅力的である。プルロニックは、優れたゾル−ゲル相転移挙動を示すものの、その水和構造は、低い機械的強度、低い組織付着性、急速な水食特性など、癒着バリアとして使用する場合には多くの欠点がある。そのため、プルロニックは、滞留時間が短いという問題を有し、手術部位において十分な時間の癒着防止を行うことができない。また、プルロニックは、ベクターとして製薬科学の分野で数十年前にわたって幅広く研究されてきたが、不十分な機械的強度、低い水に対する安定性のため、ベクターとしての用途には適していない。近年、プルロニック系材料の癒着防止能力や薬物送達能力を向上させるために多くの試みがなされているが、理想的な、プルロニックをベースにした癒着防止・薬物送達材料は、まだ作製されていない。
【0009】
米国特許第9,327,049B2には、癒着防止を目的として、プルロニックが主成分として使用される組成物が開示されている。さらに、前記組成物は、抗菌性および止血性も有する。前記組成物は、ポロキサマー188(プルロニック(登録商標)F−68)、ポロキサマー407(プルロニック(登録商標)F−127)、キトサン、およびゼラチンを含む。キトサンは抗菌・止血作用を有し、生体内での分解時間が長いが、キトサンを癒着防止バリアの成分として使用することは、キチンアレルギーのある患者には危険なので、そのような場合には適していない。
【0010】
米国特許第9,895,446B2には、化学療法剤の局所内送達のための組成物が開示されている。この組成物は、少なくとも1つの抗癌剤と、1つまたは複数のポロキサマー化合物(ポロキサマー188(Pluronic(登録商標)F−68)、ポロキサマー407(Pluronic(登録商標)F−127)、ポロキサマー188とポロキサマー407との混合物を含む)と、を含む。しかし、ポロキサマー407もしくはポロキサマー188を単独で使用するか、またはこれら2種類のポロキサマーの混合物を薬物ベクターとして使用するにもかかわらず、これらの材料の機械的強度は、水食に耐えるには十分ではなく、持続的な薬物放出システムへのこれらの応用が制限されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第4,141,973号
【特許文献2】米国特許第4,188,373号
【特許文献3】米国特許第4,474,751号
【特許文献4】米国特許第4,478,822号
【特許文献5】米国特許第9,327,049号
【特許文献6】米国特許第9,895,446号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
現在、この分野ではプルロニック材料に基づく開発が行われているが、さらなる改善が依然として必要とされている。温度感受性材料としてのプルロニックは、その構造上の欠陥のいくつかに対処して機械的強度、組織付着能力、耐水特性を向上させることができれば、理想的な癒着防止剤や薬物担体となる大きな可能性を秘めている。プルロニックに基づく理想的な癒着防止材や薬物ベクターはまだ開発されていないが、少なくともこれらの材料に基づくより優れた癒着防止能力および薬剤放出(lease)プロファイルは、以下に開示される本発明によって達成されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の概要)
本発明の第一態様は、下記式(I):
【化1】
(式中、
POLYは、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)−ポリ(プロピレンオキシド)(PPO)−ポリ(エチレンオキシド)(PEO)のトリブロックコポリマーであり、
mおよびnは、互いに独立して0または1であり、mおよびnが同時に0になることはなく、
AAはアミノ酸残基であり、そのアミノ基は、POLYの鎖末端に直接結合して、カルバメート(O−C(=O)−NH)結合を形成する。)の構造を有するアミノ酸修飾ポリマーを提供することである。
【0014】
本発明の一実施形態では、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)−ポリ(プロピレンオキシド)(PPO)−ポリ(エチレンオキシド)(PEO)のトリブロックコポリマーは、プルロニックF−127(PF127)、プルロニックF−68(PF68)、およびプルロニックL−35(PL35)から選択される。
【0015】
一または複数の実施形態では、前記アミノ酸残基は、疎水性アミノ酸、塩基性アミノ酸、酸性アミノ酸、芳香族アミノ酸および親水性アミノ酸から選択される。
【0016】
特定の実施形態では、前記アミノ酸残基は、ロイシン、メチオニン、リジン、アスパラギン酸、アスパラギン、チロシン、セリン、およびシステインのうちの1つであってもよい。
【0017】
本発明の第二態様は、下記式(I):
【化2】
(式中、
POLYは、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)−ポリ(プロピレンオキシド)(PPO)−ポリ(エチレンオキシド)(PEO)のトリブロックコポリマーであり、
mおよびnは、互いに独立して0または1であり、mおよびnが同時に0になることはなく、
AAはアミノ酸残基であり、そのアミノ基は、POLYの鎖末端に直接結合して、カルバメート(O−C(=O)−NH)結合を形成する。)
の構造を有するポリマーのうちのいずれか1つ、または、その組み合わせを含む組成物を提供することである。
【0018】
本発明の1つの実施形態では、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)−ポリ(プロピレンオキシド)(PPO)−ポリ(エチレンオキシド)(PEO)のトリブロックコポリマーは、プルロニックF−127(PF127)、プルロニックF−68(PF68)、およびプルロニックL−35(PL35)から選択される。
【0019】
1つまたは複数の実施形態では、前記アミノ酸残基は、疎水性アミノ酸、塩基性アミノ酸、酸性アミノ酸、芳香族アミノ酸および親水性アミノ酸から選択される。
【0020】
特定の実施形態では、前記アミノ酸残基は、ロイシン、メチオニン、リジン、アスパラギン酸、アスパラギン、チロシン、セリン、およびシステインのいずれか1つであってもよい。
【0021】
本発明の第3態様は、術後組織癒着の防止および薬物送達のための、ポリマーおよび組成物の使用を提供することである。
【0022】
1つまたは複数の実施形態において、本発明は、薬学的に活性な薬剤の送達のための改善された充填容量およびより優れた放出プロファイルを有するアミノ酸修飾ポリマーを特徴とする。
【0023】
前記薬学的に活性な薬剤は、抗癌剤、抗生物質、ステロイド、止血剤、非ステロイド系抗炎症剤、ホルモン、鎮痛剤、および麻酔薬からなる群から選択される。好ましくは、パクリタキセルである。
【0024】
明らかに、本発明の上記の説明に基づいて、本発明の基本的な技術的思想から逸脱することなく、当該技術分野における一般的な技術的知識および従来の手段を参照して、他の様々な修正、置換、または変更を行うことができる。
【0025】
発明の主題のより完全な理解は、以下の図と併せて考慮される詳細な説明および特許請求の範囲を参照することによって導き出すことができる。以下の各図は、実行された実施形態の説明のためにのみ提供されており、本発明の範囲は、これらの図によってそれらに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1A図1Aは、実施例1〜5で調製したアミノ酸修飾プルロニックおよび比較例1で調製した未修飾プルロニックの貯蔵弾性率および損失弾性率を示す。測定は20℃で行い、貯蔵弾性率を直線で、損失弾性率を点線で表示する。
図1B図1Bは、実施例1〜5で調製したアミノ酸修飾プルロニックおよび比較例1で調製した未修飾プルロニックの貯蔵弾性率および損失弾性率を示す。測定は37℃で行い、貯蔵弾性率を直線で、損失弾性率を点線で表示する。
図2図2は、Hoffmann癒着スコアリングシステムを使用して組織癒着を評価した結果を示す。対照群と実験群との間の統計的差異を、Prism 7 for Mac(GraphPad Software、USA)を使用する両側(two−tailed)計算によるスチューデントのt検定によって分析した。p<0.05の値を統計的有意と見なし、*はp<0.05を示し、**はp<0.01を示し、***はp<0.001を示し、****はp<0.0001を示し、NSは、統計的に有意な差ではないことを表す。
図3A図3Aは、対照群の組織癒着を示す。
図3B図3Bは、比較例1の処置後の組織癒着を示す。
図3C図3Cは、実施例1(1)の処置後の組織癒着を示す。
図3D図3Dは、実施例2の処置後の組織癒着を示す。
図3E図3Eは、比較例2の処置後の組織癒着を示す。
図4A図4Aは、比較例1で調製されたヒドロゲルのPTX放出プロファイルを示す。
図4B図4Bは、実施例2で調製されたヒドロゲルのPTX放出プロファイルを示す。
図4C図4Cは、実施例5(2)で調製されたヒドロゲルのPTX放出プロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の1つまたは複数の実施形態を詳細に説明する前に、本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、単数形の「一つの(a)」、「一つの(an)」および「前記(the)」は、文脈で明確に指定されていない限り、複数の対象を含むことに留意することが重要である。したがって、例えば、「アミノ酸」への言及は、単一のアミノ酸、ならびに2つ以上の同じまたは異なるアミノ酸を含み、「ポリマーの鎖末端」への言及は、単一の鎖末端、ならびに2つの同じまたは異なるポリマーの鎖末端などを含む。
【0028】
本発明を説明および特許請求するにあたり、別段の指定がない限り、本明細書で使用される用語は、以下の定義を有する。
【0029】
本明細書で使用される場合、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「有する(has)」、「有する(having)」、またはそれらの他の任意の変形の用語は、非排他的な包含をカバーすることを意図している。例えば、要素のリストを含む成分、構造、物品、または装置は、必ずしもそれらの要素のみに限定されるものではなく、明示的に挙げられていない他の要素や、そのような構成要素、構造、物品、または装置に固有の要素を含んでもよい。
【0030】
用語「アミノ酸」とは、タンパク質の構造単位を称す。遺伝暗号によってコード化されている20種類のアミノ酸は、「標準アミノ酸」と呼ばれる。これらのアミノ酸は、構造H2N−CHR−COOHを有し、ここで、Rは、アミノ酸に特有の側鎖である。標準アミノ酸は、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリンである。アミノ酸は、5つのグループ、具体的には、疎水性アミノ酸、親水性アミノ酸、塩基性アミノ酸、酸性アミノ酸、および芳香族アミノ酸に分類できる。本明細書では、アミノ酸は、本明細書に記載の「D.」および「L.」と呼ばれる2つの立体異性体で存在し得る。
【0031】
本発明のアミノ酸修飾ポリマーおよび組成物は、様々な術後のタイプのいずれかとの関連で、癒着を防止するために投与され得る。本明細書で使用される「術後」という用語は、腹部、腹腔骨盤、眼科、整形外科、胃腸、胸部、頭蓋、頭頸部、心臓血管、婦人科、産科、関節(例えば、関節鏡検査)、泌尿器科、形成外科、再建外科、筋骨格外科、および神経筋の手術を非限定的に含む、本発明のアミノ酸修飾ポリマーおよび組成物が使用される術後処置の例を称す。
【0032】
本発明によれば、術後の組織癒着を効果的に防止することが、可能である。本発明に用いられる癒着防止ポリマーおよびその組成物は、粉末状、溶液状、ゲル状等の任意の形態を有し得、したがって、例えば、内視鏡手術のような比較的局所的な手術であっても容易に実行することができる。
【0033】
本発明で用いられる癒着防止ポリマーおよびその組成物は、例えば、創傷部位および創傷部位の周囲に位置する臓器または周囲の組織の表面に塗布または噴霧することによって、手術に適用することができる。前記適用は、1回で行ってもよいし、複数回に分けて対象となる臓器や周辺組織の表面の局所部分に塗布または噴霧を行ってもよい。また、塗布または噴霧装置を用いてもよい。前記装置は、事前に充填された注射器であってもよい。投与量は、当業者により適切に選択または調整され得る。
【0034】
「アミノ酸修飾ポリマー」という用語は、その鎖末端がカルバメート結合を介してアミノ酸および/またはポリアミノ酸と結合されたポリマーを称し、ここで、このポリマーは、ブロックコポリマーであってもよく、2つ以上のブロックを含んでいてもよい。さらに、前記コポリマーは、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)−ポリ(プロピレンオキシド)(PPO)−ポリ(エチレンオキシド)(PEO)からなるトリブロックポリマーであるプルロニックであってもよい。前記アミノ酸修飾ポリマーの構造は、以下の式(I)で表される。
【0035】
【化3】
(式中、
POLYは、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)−ポリ(プロピレンオキシド)(PPO)−ポリ(エチレンオキシド)(PEO)を含むコポリマーを表し、
mおよびnは、互いに独立して0または1であり、mおよびnが同時に0になることはなく、
AAは、そのアミノ基がPOLYの鎖末端に直接結合してカルバメート結合を形成するアミノ酸またはポリアミノ酸残基を表し、AAは、疎水性アミノ酸、塩基性アミノ酸、酸性アミノ酸、芳香族アミノ酸、および親水性アミノ酸からなる群から選択される。前記疎水性アミノ酸としては、例えば、グリシン、アラニン、バリン、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニンおよびそれらのポリマーなどの疎水性アミノ酸および/または疎水性ポリアミノ酸が挙げられ、前記塩基性アミノ酸としては、リジン、ヒスチジン、アルギニンおよびそれらのポリマーなどの、塩基性アミノ酸および/または塩基性ポリアミノ酸が挙げられる。前記酸性アミノ酸としては、例えば、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸およびそれらのポリマーなどの、酸性アミノ酸および/または酸性ポリアミノ酸が挙げられる。前記芳香族アミノ酸としては、例えば、チロシン、トリプトファンおよびそれらのポリマーなどの、芳香族アミノ酸および/または芳香族ポリアミノ酸が挙げられる。前記親水性アミノ酸としては、例えば、セリン、スレオニン、システイン、プロリンおよびそれらのポリマーなどの、親水性アミノ酸および/または親水性ポリアミノ酸が挙げられる。)
【0036】
用語「アミノ酸修飾ポリマー組成物」は、式(I)の構造を有するポリマーのいずれか1つ、またはそれらの組み合わせを含む組成物を称す。
(式中、
POLYは、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)−ポリ(プロピレンオキシド)(PPO)−ポリ(エチレンオキシド)(PEO)を含むコポリマーを表し、
mおよびnは、互いに独立して0または1であり、mおよびnが同時に0になることはなく、
AAは、そのアミノ基がPOLYの鎖末端に直接結合してカルバメート結合を形成するアミノ酸またはポリアミノ酸残基を表し、AAは、疎水性アミノ酸、塩基性アミノ酸、酸性アミノ酸、芳香族アミノ酸、および親水性アミノ酸からなる群から選択される。前記疎水性アミノ酸としては、例えば、グリシン、アラニン、バリン、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニンおよびそれらのポリマーなどの疎水性アミノ酸および/または疎水性ポリアミノ酸が挙げられ、前記塩基性アミノ酸としては、リジン、ヒスチジン、アルギニンおよびそれらのポリマーなどの、塩基性アミノ酸および/または塩基性ポリアミノ酸が挙げられる。前記酸性アミノ酸としては、例えば、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸およびそれらのポリマーなどの、酸性アミノ酸および/または酸性ポリアミノ酸が挙げられる。前記芳香族アミノ酸としては、例えば、チロシン、トリプトファンおよびそれらのポリマーなどの、芳香族アミノ酸および/または芳香族ポリアミノ酸が挙げられる。前記親水性アミノ酸はとしては、例えば、セリン、スレオニン、システイン、プロリンおよびそれらのポリマーなどの、親水性アミノ酸および/または親水性ポリアミノ酸が挙げられる。)
【0037】
「の量で」という用語は、本発明における組成物に基づくポリマーのいずれか1つまたはその組み合わせの重量を称す。ポリマーまたはその組み合わせは、前記組成物の総重量に基づいて、5重量%〜30重量%、7重量%〜25重量%、好ましくは10重量%〜20重量%、12重量%〜18重量%、より好ましくは13重量%〜17重量%の範囲から選択される量で使用され得る。
【0038】
「ポリマーの組み合わせ」という用語は、異なるアミノ酸修飾ポリマーの2つ以上が混合される組み合わせを意味する。ここで、2つのアミノ酸修飾ポリマーの組み合わせの場合、前記組み合わせの各ポリマーが、99:1〜1:99、90:10〜10:90、80:20〜20:80、70:30〜30:70、60:40〜40:60、または90:10〜50:50の重量比で含まれ得、例えば、95:5〜30:70、80:20〜40:60、または70:30〜50:50の重量比で含まれ得る。
【0039】
「化学的に活性化されたコポリマー溶液」という用語は、アミノ酸とのさらなる反応が可能になり重合したアミノ酸誘導体が形成されるようなコポリマーの鎖末端で活性な炭酸エステルを生成する触媒を含む溶媒に溶解される、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)−ポリ(プロピレンオキシド)(PPO)−ポリ(エチレンオキシド)(PEO)を含むコポリマーを称す。
【0040】
「生体適合性」という用語は、使用される量および箇所において、レシピエントの細胞に対して実質的に非毒性、非免疫原性、および非刺激性であり、また、使用される箇所において、レシピエントの身体に著しく有害なまたは望ましくない影響を誘発または引き起こすことのない材料を称す。
【0041】
「癒着防止」という用語は、隣接する組織または臓器の表面が互いに癒着するのを防止するための組成物を投与して、そのような投与がない場合に生じる、癒着の数、範囲、および/または程度に対して、癒着の数、癒着の範囲(例えば、面積)、および/または癒着の程度(例えば、厚さ、または機械的もしくは化学的破壊に対する抵抗力)の相対的な減少を引き起こすことを称す。
【0042】
「癒着防止剤」という用語は、隣接する組織または臓器の表面が一緒に癒着するのを防止するために投与または適用する組成物を称す。
【0043】
「ベクター」という用語は、薬学的に活性な薬剤を運搬および放出することができる担体を称す。
【0044】
「ベクター用途」という用語は、薬学的に活性な薬剤を送達および放出するための担体を必要とする用途を称す。
【0045】
「カルバメート結合」という用語は、アミノ酸のアミノ基とポリマーの鎖末端の炭酸エステルとの間のカルバメート結合を称す。このようなカルバメート結合の化学構造は、以下の式(II)のように表される。
【化4】
【0046】
「薬学的に活性な薬剤」という用語は、ヒトまたは動物の身体に一定の治療効果、予防効果および/または診断効果をもたらす可能性のある任意の薬用有用物質を称す。ここで、前記薬学的に活性な薬剤は、抗癌剤、抗生物質、止血剤、ステロイド、非ステロイド系抗炎症剤、ホルモン、鎮痛剤、および麻酔薬からなる群から選択される。好ましくは、前記抗癌剤は、パクリタキセルである。
【0047】
本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」という用語は、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒または封入材料などの薬学的に許容される材料、組成物またはビヒクルを称す。各担体は、製剤の他の成分と適合性があり、患者に害を及ぼさないという意味で「許容される」ものでなければならない。
【0048】
本発明では、アミノ酸修飾ポリマーおよびポリマー組成物が、ヒドロゲルとして存在し得、また、温度感受性を有し得る。したがって、前記ポリマーおよびポリマー組成物により、温度の変化でゾル状態とゲル状態との間で可逆的に転移することが可能になり、前記ポリマーの含有量を調整することによって、ゾル−ゲル相転移(ゲル化)の温度を制御することができる。前記ポリマーおよび/またはポリマー組成物は、室温ではゾル状態を呈する可能性があっても、温度が人の体温未満、ここでは28℃〜34℃になるとゲル状態に変化する可能性があるため、それらは、人または動物の体内の手術部位に注入または噴霧されてもよく、十分な創傷被覆が提供される。手術部位に適用されると、前記ポリマーおよび/またはポリマー組成物は、その後ゲル化を経て、組織癒着を防止するためのバリアとして創傷に付着し得る。
【0049】
前記アミノ酸修飾ポリマーおよびポリマー組成物は、それらが多くの薬学的に活性な薬剤の、経皮的、注射可能な、噴霧可能なおよび制御された送達を実行するためのベクターとして作用することを可能にする、感熱性のゾル−ゲル状態の転移を可能にすることができる。
【0050】
ポリ(エチレンオキシド)(PEO)−ポリ(プロピレンオキシド)(PPO)−ポリ(エチレンオキシド)(PEO)を含むコポリマーであるプルロニックは、熱可逆性のゾル−ゲル相転移挙動および一定の癒着防止能力を示すことが報告されており、これは、癒着防止とベクター用途の両方で広く研究されている。しかし、これは、機械的強度が低く、組織への付着性が弱く、水に溶けるのが早い(2日未満)ため、人体内での、癒着防止効果が低く、薬物放出プロファイルが悪いという問題がある。
【0051】
本発明では、アミノ酸修飾ポリマーによる癒着防止効果の向上を評価するために、本発明の化合物の未修飾の比較例となる純粋なプルロニックを比較対象として使用する。そこで、本発明者らは、広範な研究の結果、いくつかのアミノ酸で修飾されたプルロニックが、(1)ポリマー構造の機械的強度を高め、(2)ポリマーの流動性を向上させ、生物医学的用途での有用性を高め、(3)水食耐性能を高め、(4)ポリマーと組織との間の付着性を高め、(5)組織癒着防止能を高め、(6)薬剤的に活性な薬剤の送達における充填容量を増加させ、(7)薬剤的に活性な薬剤の送達における放出プロファイルを改善し得ることを見出した。
【実施例】
【0052】
(反応スキーム)
【化5】
【0053】
(実験)
本発明は、当業者に知られている有機合成、生化学、レオロジーなどの従来技術を用いて行われる。
【0054】
以下、実施例を参照して本発明をより詳細に説明する。ただし、以下の各実施例は、実施された実施形態の説明のためにのみ提供されるものであり、本発明の範囲は、これらの実施例によってこれに限定されるものではない。
【0055】
(材料)
実施例および比較例を実行するために使用される化学物質は、以下の通りである。
【0056】
プルロニック−F127(12,500Da)、プルロニックF−68(8,400Da)、およびプルロニックL−35(1,900Da)は、BASF Corporationから入手した。無水テトラヒドロフラン(以下、「THF」と称す)、4−ジメチルアミノピリジン(以下、「DMAP」と称す)、無水ジメチルスルホキシド(以下、「無水DMSO」と称す)は、Acroseから入手した。N,N’−ジスクシンイミジルカーボネート(以下、「DSC」と称す)、パクリタキセル(以下、「PTX」と称す)は、Fluorochem社から入手した。L−アスパラギン酸、L−アスパラギン、L−リジン、L−セリン、L−チロシンは、Acroseから入手した。L−ロイシン、L−システイン、L−メチオニンは、cj haide(ningbo) biotech co. ltd.から入手可能した。
【0057】
実施例1
疎水性アミノ酸修飾プルロニックの調製
【0058】
(1)ロイシン修飾プルロニックF−127
疎水性アミノ酸であるL−ロイシンを4.8ミリモルの量でアルカリ性溶液に溶解し、アミノ酸溶液を形成した。0.6ミリモルの量でのプルロニックF−127および4.8ミリモルのDMAPを30mLの無水THFに溶解し、透明な溶液を得た。30分間撹拌した後、4.8ミリモルのDSCを含む10mLの無水DMSOを1時間以内に滴下して加え、混合物を室温で24時間撹拌した。プロセスはすべて窒素雰囲気下で行った。24時間後、ロイシンを含む溶液を加え、混合物を24時間撹拌し続けた。得られたロイシン修飾プルロニック溶液を透析で精製し、凍結乾燥して白色のポリマー粉末を得た(収率:45%)。H NMR (600 MHz, DO): δ 4.30, 4.21 (m, −CH−O−(C=O)−NH−), 4.01 (m, −O−(C=O)−NH−CH−), 1.70 (m, −CH−CH−(CH), 1.60 (m, −CH−(CH), 0.96 (m, −CH−(CH); FTIR: 780 cm−1 (−NH wag), 1531 cm−1 (−CNH), 1569 cm−1(−(C=O)−NH−), 1731 cm−1 (−(C=O)).
【0059】
ロイシン修飾プルロニックF−127の例示的な化学構造は、以下のように提供される。
【化6】
【0060】
(2)ロイシン修飾プルロニックF−68
疎水性アミノ酸であるL−ロイシンを4.8ミリモルの量でアルカリ性溶液に溶解し、アミノ酸溶液を形成した。0.6ミリモルの量でのプルロニックF−68および4.8ミリモルのDMAPを30mLの無水THFに溶解し、透明な溶液を得た。30分間撹拌した後、4.8ミリモルのDSCを含む10mLの無水DMSOを1時間以内に滴下して加え、混合物を室温で24時間撹拌した。プロセスはすべて窒素雰囲気下で行った。24時間後、ロイシンを含む溶液を加え、混合物を24時間撹拌し続けた。得られたロイシン修飾プルロニック溶液を透析で精製し、凍結乾燥して白色のポリマー粉末を得た(収率:40%)。H NMR (600 MHz, DO): δ 4.28, 4.23 (m, −CH−O−(C=O)−NH−), 4.06 (m, −O−(C=O)−NH−CH−), 1.72 (m, −CH−CH−(CH), 1.62 (m, −CH−(CH), 0.97 (m, −CH−(CH); FTIR: 780 cm−1 (−NH wag), 1531 cm−1 (−CNH), 1569 cm−1(−(C=O)−NH−), 1731 cm−1 (−(C=O))。
【0061】
ロイシン修飾プルロニックF−68の例示的な化学構造は、以下のように提供される。
【化7】
【0062】
(3)ロイシン修飾プルロニックL−35
疎水性アミノ酸であるL−ロイシンを4.8ミリモルの量でアルカリ性溶液に溶解し、アミノ酸溶液を形成した。0.6ミリモルの量でのプルロニックL−35および4.8ミリモルのDMAPを30mLの無水THFに溶解し、透明な溶液を得た。30分間撹拌した後、4.8ミリモルのDSCを含む10mLの無水DMSOを1時間以内に滴下して加え、混合物を室温で24時間撹拌した。プロセスはすべて窒素雰囲気下で行った。24時間後、ロイシンを含む溶液を加え、混合物を24時間撹拌し続けた。得られたロイシン修飾プルロニック溶液を透析で精製し、凍結乾燥して白色のポリマー粉末を得た(収率:35%)。H NMR (600 MHz, DO): δ 4.30 (m, −O−(C=O)−NH−CH−), 4.22 (m, −CH−O−(C=O)−NH−), 1.70 (m, −CH−CH−(CH), 1.61 (m, −CH−(CH), 0.97 (m, −CH−(CH); FTIR: 780 cm−1 (−NH wag), 1531 cm−1 (−CNH), 1569 cm−1(−(C=O)−NH−), 1731 cm−1 (−(C=O)).
【0063】
ロイシン修飾プルロニックL−35の例示的な化学構造は、以下のように提供される。
【化8】
【0064】
(4)メチオニン修飾プルロニックF−127
疎水性アミノ酸であるL−メチオニンを4.8ミリモルの量でアルカリ性溶液に溶解し、アミノ酸溶液を形成した。0.6ミリモルの量でのプルロニックF−127および4.8ミリモルのDMAPを30mLの無水THFに溶解し、透明な溶液を得た。30分間撹拌した後、4.8ミリモルのDSCを含む10mLの無水DMSOを1時間以内に滴下して加え、室温で24時間攪拌を続けた。プロセスはすべて窒素雰囲気下で行った。24時間後、メチオニンを含む溶液を加え、混合物を24時間撹拌した。得られたメチオニン修飾プルロニック溶液を透析で精製し、凍結乾燥して白色のポリマー粉末を得た(収率:45%)。H NMR (600 MHz, DO): δ 4.30 (m, −O−(C=O)−NH−CH−), 4.23 (m, −CH−O−(C=O)−NH−), 2.61 (m, −CH−CH−S−CH), 2.16 (s, −S−CH), 2.13, 1.96 (m, −CHCH−S−CH); FTIR: 1215 cm−1 (−CNH), 1603 cm−1 (−(C=O)−NH−), 1733 cm−1 (−(C=O)).
【0065】
実施例2
塩基性アミノ酸修飾プルロニックの調製
【0066】
(1)リジン修飾プルロニックF−127
塩基性アミノ酸であるL−リジンを2.4ミリモルの量で蒸留水に溶解し、アミノ酸溶液を形成した。0.6ミリモルの量でのプルロニックF−127および4.8ミリモルのDMAPを30mLの無水THFに溶解し、透明な溶液を得た。30分間撹拌した後、4.8ミリモルのDSCを含む10mLの無水DMSOを1時間以内に滴下して加え、混合物を室温で24時間攪拌した。プロセスはすべて窒素雰囲気下で行った。24時間後、リジンを含む溶液を加え、混合物を24時間撹拌し続けた。得られたリジン修飾プルロニック溶液を透析で精製し、凍結乾燥して白色のポリマー粉末を得た(収率:45%)。H NMR (600 MHz, DO): δ 4.25 (m, −CH−O−(C=O)−NH−), 3.16 (m, −O−(C=O)−NH−CH−), 1.81, 1.70 (m, NH−CH−CH−CHCH), 1.57 (m, NH−CHCH−CH−CH−), 1.41 (m, NH−CH−CHCH−CH−, 2H); FTIR: 776 cm−1 (−NH wag), 1557 cm−1 (−CNH), 1710 cm−1 (−(C=O)).
【0067】
実施例3
酸性アミノ酸修飾プルロニックの調製
【0068】
(1)アスパラギン酸修飾プルロニックF−127
酸性アミノ酸であるL−アスパラギン酸を4.8ミリモルの量でアルカリ性溶液に溶解し、アミノ酸溶液を形成した。0.6ミリモルの量でのプルロニックF−127および4.8ミリモルのDMAPを30mLの無水THFに溶解し、透明な溶液を得た。30分間撹拌した後、4.8ミリモルのDSCを含む10mLの無水DMSOを1時間以内に滴下して加え、混合物を室温で24時間攪拌し続けた。プロセスはすべて窒素雰囲気下で行った。24時間後、アスパラギン酸を含む溶液を加え、混合物を24時間撹拌した。得られたアスパラギン酸修飾プルロニック溶液を透析により精製し、凍結乾燥して白色のポリマー粉末を得た(収率:45%)。H NMR (600 MHz, DO): δ 4.38 (m, −O−(C=O)−NH−CH−), 4.26 (m, −CH−O−(C=O)−NH−), 2.70, 2.51 (m, −CH−(C=O)−OH); FTIR: 776 cm−1 (−NH wag), 1557 cm−1 (−CNH), 1710 cm−1 (−(C=O))。
【0069】
(2)アスパラギン修飾プルロニックF−127
酸性アミノ酸であるL−アスパラギンを2.4ミリモルの量でアルカリ性溶液に溶解し、アミノ酸溶液を形成した。0.6ミリモルの量でのプルロニックF−127および4.8ミリモルのDMAPを30mLの無水THFに溶解し、透明な溶液を得た。30分間撹拌した後、4.8ミリモルのDSCを含む10mLの無水DMSOを1時間以内に滴下して加え、混合物を室温で24時間攪拌し続けた。プロセスはすべて窒素雰囲気下で行った。24時間後、アスパラギンを含む溶液を加え、混合物を24時間撹拌した。得られたアスパラギン酸修飾プルロニック溶液を透析により精製し、凍結乾燥して白色のポリマー粉末を得た(収率:45%)。H NMR (600 MHz, DO): δ 4.35 (m, −O−(C=O)−NH−CH−), 4.27 (m, −CH−O−(C=O)−NH−), 2.82, 2.68 (m, −CH−(C=O)−NH); FTIR: 1416 cm−1 (−CN), 1680 cm−1 (−(C=O)−NH−), 1720 cm−1 (−(C=O)).
【0070】
実施例4
芳香族アミノ酸修飾プルロニックの調製
【0071】
チロシン修飾プルロニックF−127
芳香族アミノ酸であるL−チロシンを4.8ミリモルの量でアルカリ性溶液に溶解し、アミノ酸溶液を形成した。0.6ミリモルの量のプルロニックF−127および4.8ミリモルの量のDMAPを30mLの無水THFに溶解し、透明な溶液を得た。30分攪拌した後、4.8ミリモルのDSCを含む10mLの無水DMSOを1時間以内に滴下して加え、混合物を室温で24時間攪拌し続けた。プロセスはすべて窒素雰囲気下で行った。24時間後、チロシンを含む溶液を加え、混合物を24時間撹拌した。得られたチロシン修飾プルロニック溶液を透析により精製し、凍結乾燥して白色のポリマー粉末を得た(収率:40%)。H NMR (600 MHz, D2O): δ 7.20 (d, CHCH−phenyl ring), .6.89 (d,CHCH−phenyl ring), 4.21 (m, −CH−O−(C=O)−NH−), 4.11 (m, −O−(C=O)−NH−CH−), 3.15, 2.83 (m, −CH−ph); FTIR: 1403 cm−1 (−CN), 1517 cm−1 (−CNH), 1604 cm−1 (−C−C−/C=C), 1710 cm−1 (−(C=O))。
【0072】
実施例5
親水性アミノ酸修飾プルロニックの調製
【0073】
セリン修飾プルロニックF−127
親水性アミノ酸であるL−セリンを4.8ミリモルの量で蒸留水に溶解し、アミノ酸溶液を形成した。0.6ミリモルの量のプルロニックF−127および4.8ミリモルのDMAPを30mLの無水THFに溶解し、透明な溶液を得た。30分攪拌した後、4.8ミリモルのDSCを含む10mLの無水DMSOを1時間以内に滴下して加え、混合物を室温で24時間攪拌し続けた。プロセスはすべて窒素雰囲気下で行った。24時間後、セリンを含む溶液を加え、混合物を24時間撹拌し続けた。得られたセリン修飾プルロニック溶液を透析により精製し、凍結乾燥して白色のポリマー粉末を得た(収率:40%)。H NMR (600 MHz, DO): δ 4.30 (m, −CH−O−(C=O)−NH−), 4.16 (m, −O−(C=O)−NH−CH−), 3.93, 3.83 (m, −CH−OH); FTIR: 1410 cm−1 (−CN), 1604 cm−1 (−(C=O)−NH−), 1720 cm−1 (−(C=O))。
【0074】
(2)システイン修飾プルロニックF−127
親水性アミノ酸であるL−システインを4.8ミリモルの量でアルカリ性溶液に溶解し、アミノ酸溶液を形成した。0.6ミリモルの量のプルロニックF−127および4.8ミリモルの量のDMAPを30mLの無水THFに溶解し、透明な溶液を得た。30分攪拌した後、4.8ミリモルのDSCを含む10mLの無水DMSOを1時間以内に滴下して加え、混合物を室温で24時間攪拌し続けた。プロセスはすべて窒素雰囲気下で行った。24時間後、システインを含む溶液を加え、混合物を24時間撹拌し続けた。得られたシステイン修飾プルロニック溶液を透析により精製し、凍結乾燥して白色のポリマー粉末を得た(収率:50%)。H NMR (600 MHz, DO): δ 4.46 (m, −O−(C=O)−NH−CH−), 4.27 (m, −CH−O−(C=O)−NH−), 3.20, 2.98 (m, −CH−SH); FTIR: 1412 cm−1 (−CN), 1515 cm−1 (−CNH), 1604 cm−1 (−(C=O)−NH−), 1700 cm−1(−(C=O))。
【0075】
実験例1
アミノ酸修飾ポリマーのレオロジーの特性評価
【0076】
(1)アミノ酸修飾ポリマーヒドロゲルの調製
実施例1〜5で調製したアミノ酸修飾プルロニックF−127のそれぞれを、15%(w/v)の最終濃度で蒸留水に溶解した。
【0077】
(2)比較例1の調製
ある量のプルロニックF127に、ある量の蒸留水を加えて、最終濃度が15%(w/v)のポリマーヒドロゲルを形成した。
【0078】
(3)レオロジーの特性評価
実施例1〜5で調製したアミノ酸修飾プルロニックF−127ヒドロゲルおよび比較例1の未修飾の対応物の粘度、ゾル−ゲル転移温度および粘弾性特性を、コーンプレート構成および溶媒の蒸発を防止するための金属カバーを備えたHR10レオメーター(TA Instruments社)を用いて特徴付けた。粘度測定は、せん断速度1.0s−1、温度上昇2℃/分で行った。前記ゾル−ゲル転移温度は、材料の貯蔵弾性率と損失弾性率が互いに交差する特定の温度で定義されており、20℃〜37℃の範囲で、温度ランプ2℃/分、トルク値100μN・m、固定周波数1Hzの振動モードを通して測定した。粘弾性特性は、20℃と37℃でそれぞれ1%のひずみを加えた周波数掃引によって測定した。粘度およびゾル−ゲル転移温度の結果をそれぞれ表1Aおよび1Bに示し、粘弾性特性の結果を図1Aおよび1Bに示す。
【0079】
表1Aに示すように、実施例2および5(2)で調製したヒドロゲルの25℃および37℃の両方における粘度は、比較例1の粘度よりも極めて高く、このことは、リジンおよびシステイン修飾ポリマーのポリマー鎖がより複雑に絡み合っていることを示しており、リジンおよびシステイン残基がポリマー、アミノ酸残基、および水の間の強い相互作用に寄与し、前記ポリマーの機械的強度の向上につながっている可能性がある。これらの結果は、いくつかのアミノ酸で修飾することによって、プルロニックF−127構造の機械的強度を大幅に向上させることができるという強い証拠となる。実施例4で調製されたヒドロゲルの場合、25℃および37℃の両方における粘度は、比較例1の粘度よりも有意に低かった。このことは、芳香族基を有するアミノ酸が、修飾されたポリマーの鎖の絡み合いを妨げる可能性を示唆しており、最終的には、ポリマーの流動性の増加につながり、噴霧などの他の有用性をもたらす可能性がある。他の実施例で調製されたヒドロゲルは、表1Aに示すように、いずれも比較例1よりも高い粘度を示した。実施例2および5(2)で調製されたヒドロゲルのような顕著な粘度上昇は見られなかったが、これらの実施例は、プルロニックF−127の機械的強度が、プルロニックの鎖末端に1つまたはいくつかのアミノ酸を組み込むことで改善される可能性があるという知見を提供している。
【0080】
表1Bは、実施例1〜5で調製したヒドロゲルのゾル−ゲル転移温度を示している。表Bに示すように、最初に、調製されたヒドロゲルは、すべて異なるタイプのアミノ酸で修飾されているが、すべて温度感受性を有することが確認された。次に、実施例1〜5で調製されたヒドロゲルは、すべて比較例1のものよりも高いゾル−ゲル転移温度を示した。有意に、実施例2および実施例5(2)で調製されたヒドロゲルは、比較例1よりも著しく高いゾル−ゲル転移温度を示しており、このことは、ヒドロゲルと水との間により多くの水素結合または相互作用が形成されたことを示しており、水素結合または相互作用の形成は、ポリマー鎖におけるリジンのアミノ基またはシステインのチオール基に起因すると考えられ、その結果、これらの修飾ヒドロゲルの疎水性鎖が凝集し最終的に固体状のゲルを形成するためには、より高い温度を必要とする可能性がある。
【0081】
実施例1〜5および比較例1で調製したヒドロゲルの粘弾性特性を、レオメーターを用いて調べ、機械的特性をよりよく評価した。図1Aに示すように、20℃において、実施例1〜5で調製されたヒドロゲルのすべてについて、貯蔵弾性率(G’)値よりも大きな損失弾性率(G”)値が観察され、これらのヒドロゲルのすべてが室温でゾル状の特性を示し、これらのヒドロゲルがより多様な用途に使用されることを可能にすることを示している。また、図1Bに示すように、37℃では、実施例1〜5で調製したすべてのヒドロゲルについて、損失弾性率(G”)値よりも大きな貯蔵弾性率(G’)値が観察され、これらのヒドロゲルがすべてゲル状の特性を示すことが示された。さらに、実施例2および5(2)の両方で調製されたヒドロゲルは、貯蔵弾性率(G’)値が損失弾性率(G”)値よりも極めて大きく、これらのヒドロゲルが優れた機械的強度を示すことが示唆された。さらに、実施例3(2)および4で調製されたヒドロゲルを除いて、他の実施例で調製されたものはすべて、比較例1よりも大きな貯蔵弾性率(G’)値を示し、より優れた機械的特性が得られたことを示す。重要なことに、実施例2、5(2)および比較例1で調製されたヒドロゲルを参照すると、リジンおよびシステインで修飾されたプルロニックヒドロゲルは、未修飾のプルロニックヒドロゲルと比較して非常に大きな貯蔵弾性率(G’)を示し、未修飾のプルロニックヒドロゲルが、1つまたはいくつかのアミノ酸で修飾された後、機械的特性の優れた強化がもたらされ得ることが示される。なお、実施例3で調製されたヒドロゲルは、比較例1のものと比較して貯蔵弾性率(G’)値に有意な変化を示さないが、それらの粘度が比較例1のものよりも顕著に高かったため、依然として差異がある機械的強度を有している可能性がある。驚くことではないが、実施例4で調製されたヒドロゲルは、比較例1のものよりも著しく小さい貯蔵弾性率(G’)値を示し、このヒドロゲルが比較例1よりも弱い機械的強度を有する可能性があることが示唆される。調製したヒドロゲルの粘弾性の結果は、粘度測定から得られた結果と一致した。
【0082】
【表1A】
【0083】
【表1B】
【0084】
実験例2
インビトロでのポリマー滞留時間の測定
【0085】
(1)アミノ酸修飾ポリマーヒドロゲルの調製
実施例1〜5で調製されたアミノ酸修飾プルロニックF−127のそれぞれを、15%(w/v)の最終濃度で蒸留水に溶解した。
【0086】
(2)比較例1の調製
ある量のプルロニックF−127に、ある量の蒸留水を加えて、最終濃度が15%(w/v)のポリマーヒドロゲルを形成した。
【0087】
滞留時間の測定
本発明において、調製されたポリマーヒドロゲルの滞留時間を測定するために適用される方法論では、米国特許第10,105,387が参照される。
【0088】
簡単に言えば、実施例1〜5および比較例1で調製した各ポリマーヒドロゲル1mLを、7mLの個々のバイアルに加えた。次に、すべてのバイアルを37℃のインキュベーターに入れて、固体のポリマーヒドロゲルを得た。各個別のバイアル内のヒドロゲルがすべてゲル相になった後、リン酸緩衝液(PBS、pH7.4)を1mL添加した。その後、バイアルを37℃のインキュベーターで貯蔵しながら、1日1回、一定時間間隔で、調製したポリマーゲルの表層のリン酸緩衝液を除去した。ポリマーゲルの残量を観察して、インビトロでのポリマーゲルの滞留時間を測定し、その結果を表2に示した。
【0089】
表2に示すように、実施例1〜5で調製したヒドロゲルの滞留時間は、いずれも比較例1の滞留時間よりも長く、4〜18日であった。特に、実施例2および5(2)で調製されたヒドロゲルは、それぞれ16日および18日と著しく優れたゲル滞留時間を示した。比較例1は、いかなるタイプのアミノ酸でも修飾されておらず、最も短いゲル滞留時間を示し、約2日であった。したがって、様々なタイプのアミノ酸で修飾されたプルロニックは、そのゲルの滞留時間を改善することがわかった。
【0090】
これらの結果から、アミノ酸を修飾したプルロニックヒドロゲルでは、ポリマー鎖内の水素結合、ポリマー鎖間の水素結合、ポリマー鎖と周囲の水との間の水素結合が増加し、それによりヒドロゲルの水食耐性能が向上することが示唆される。さらに、リジンおよびシステイン修飾プルロニックヒドロゲルは、そのアミン基およびチオール基が水素結合を形成するか、さらには(チオール基を介して)ジスルフィド結合を形成する傾向があり、これにより最終的には水食に対するゲルの安定性が大きく向上するため、水食耐性能の向上を示すさらなる具体的証拠が提供される。結論として、これらの修飾ヒドロゲルのヒドロ構造(hydro−structures)は、1つまたはいくつかのアミノ酸を導入することによって大幅に強化することができる。
【0091】
前述したように、粘度と貯蔵弾性率の増加は、調製されたヒドロゲルの機械的強度の改善と見なすことができることも注目に値する。対照的に、実施例4で調製されたヒドロゲルは、比較例1よりも比較的低い粘度および弱い機械的強度を示したが、それでも比較例1よりも長いゲル滞留時間を示した。これは、チロシンが疎水性アミノ酸であり、水に反発するという生来の性質に起因する可能性があり、このことでチロシン修飾プルロニックヒドロゲルが水食に抵抗し得、それによりゲルの滞留時間が長くなる。
【0092】
【表2】
【0093】
実施例3
インビトロ粘膜付着性の測定
【0094】
(1)アミノ酸修飾ポリマー溶液の調製
実施例1〜5で調製したアミノ酸修飾プルロニックF−127のそれぞれを、最終濃度15%(w/v)で超純水に溶解し、各ポリマー溶液を、使用するまで低温で保存した。
【0095】
(2)比較例1の調製
ある量のプルロニックF127を超純水に溶解して、最終濃度が15%(w/v)のポリマー溶液を得、前記ポリマー溶液を、使用するまで低温で保存した。
【0096】
(3)ムチン溶液の調製
ムチン粉末を超純水に溶解して15%(w/v)の溶液を得ることによって、ムチン溶液を調製した。詳細には、4℃に維持された冷水浴中で、穏やかな磁気撹拌(200rpm)の下、100mlの超純水に、ムチンをゆっくりと加えた。調製を終了すると、ムチン溶液を、使用するまで4℃で保存した。
【0097】
(4)ポリマー−ムチン混合物の調製
実施例1〜5で調製したポリマー粉末のそれぞれと、比較例1で調製した未修飾ポリマー粉末とを、調製したムチン溶液(15重量%)と個別に混合して、15%(w/v)のポリマー−ムチン混合物を得た。
【0098】
(5)インビトロ粘膜付着性判定
ポリマー粘膜付着の予測的かつ間接的な評価を得るために、レオロジー法を用いた(Hassan, E.E.,ら, A Simple Rheological method for the in Vitro Assessment of Mucin−Polymer Bioadhesive Bond Strength,Pharm Res 7,491−495, 1990)。実施例1〜5で調製されたアミノ酸修飾プルロニックF−127溶液、比較例1の未修飾の対応物、調製されたムチン溶液、およびポリマーとムチン溶液との混合物の粘膜付着性を、コーンプレート構成と、溶媒の蒸発を防止するための保護金属カバーとを備えたHR10レオメーター(TA Instruments)を用いて評価した。レオロジー分析は、37℃で10秒−1のせん断速度のフローモードを用いて行い、熱衝撃による構造変化を避けるために、各分析の前に室温で5分間の休止時間を設けた。
【0099】
この実験は、前記アミノ酸修飾ポリマーとムチンの溶液との混合物から得られた分散液の測定された粘度の評価に基づいている。これら2つの成分の間の相互作用の程度は、混合物の最終粘度(η最終)の測定値であり、これは前記ポリマーとムチンとの間の確立された相互作用に対するパラメータを表し、以下の式によって計算することができる。
【0100】
η最終=η混合物−(ηポリマー+ηムチン
ここで、
η混合物=ポリマーとムチンとを含む混合物の粘度
ηポリマー=ポリマーの粘度
ηムチン=ムチンの粘度
【0101】
ポリマーとムチンの間に相互作用がある場合、値はη最終>0(Mayol L.ら、A novel poloxamers/hyaluronic acid in situ forming hydrogel for drug delivery:Rheological,mucoadhesive and in vitro release properties,Eur J Pharm Biopharm 70(1);199−206,2008)であり、結果を表3に示す。
【0102】
表3に示すように、すべての実施例で調製された各ポリマーの粘膜付着特性を、η最終の計算された粘度で表した。明らかに、すべての調製されたポリマーは、一定の程度の粘膜付着特性を示した。さらに、実施例1および4で調製されたアミノ酸修飾F−127ポリマーは、比較例1の粘膜付着性よりも低いη最終の値を示したが、他の実施例のポリマーはすべて有意に高いη最終の値を示し、プルロニックF−127を修飾するために疎水性および芳香族疎水性アミノ酸を使用することは、修飾されたポリマーに対する粘膜付着特性の低下をもたらすはずであることを示唆した。これらの結果は、疎水性アミノ酸の側鎖の利用可能性が低いことに起因する可能性がある。より具体的には、この場合、ロイシン、メチオニン、およびチロシン(芳香族アミノ酸に分類されるが、疎水性を示す)を含む疎水性アミノ酸の側鎖は、ムチンとの相互作用(例えば、水素結合)を生成するための利用可能性が低く、したがって、その粘膜接着性は相対的に弱い。対照的に、実施例2および5で調製されたポリマーは、アミン基(実施例2から)、ヒドロキシル基(実施例5(1)から)、およびチオール基(実施例5(2)から)が、ムチンと水素結合および/またはジスルフィド結合を形成するのに利用可能な側鎖を有しているため、有意に強い粘膜接着性を示した。その結果、これらのアミノ酸修飾ポリマーは、強い粘膜接着性を示す。
【0103】
【表3】
【0104】
実験例4
動物モデルでの癒着防止効果の試験
【0105】
(1)アミノ酸修飾ポリマーヒドロゲルの調製
実施例1〜4で調製したアミノ酸修飾プルロニックF−127のそれぞれを蒸留水に溶解して、最終濃度が15%(w/v)のポリマーヒドロゲルを得た。
【0106】
(2)比較例1の調製
ある量のプルロニックF127に、ある量の蒸留水を加えて、最終濃度が15%(w/v)のポリマーヒドロゲルを形成した。
【0107】
(3)比較例2の調製
実施例2および5(2)で調製したアミノ酸修飾ポリマーを、まず8:2の重量比で混合し、ポリマーの組み合わせを得た。続いて、ある量の蒸留水を加えて、最終濃度が15%(w/v)のヒドロゲル混合物を得た。
【0108】
(4)動物試験
本発明の合成アミノ酸修飾ポリマーヒドロゲルの組織癒着防止効果を評価するために、動物実験(腹壁擦過ラットモデル)を行った。ここでは、実施例1(1)、2、3、4で調製したポリマーヒドロゲルを実験群とし、比較例1で調製した未修飾のものを比較群として用い、比較例2で調製したヒドロゲルを組み合わせたものを別の比較群として用い、手術部位に材料を適用しない対照群を用いた。
【0109】
動物試験では、1群あたり4匹の雄のSprague Dawley(SD)ラットを、Zoletil(登録商標)とRompun(登録商標)(1:1)とを含む混合液を1mL/Kg注入することにより腹腔内麻酔した。麻酔をかけたラットを剃毛し、ポビドンで消毒した後、腹壁の白線に沿って5cmの長さで切開して腹膜を開いた。その後、メスを用いて右腹壁に表皮を剥がした2×2cmの腹膜欠損を形成した。実験群に、濃度15%(w/v)のアミノ酸修飾プルロニックヒドロゲルおよび非修飾プルロニックヒドロゲルをそれぞれ2mLずつ、損傷部位に個別に均一に適用したところ、2分以内にその場でゲル化が起こった。対照群では、2mLの滅菌した生理食塩水で欠損部を洗浄した。最後に、腹膜を3−0絹縫合糸で縫合し、皮膚を4−0絹縫合糸で縫合した。
【0110】
術後14日目に、組織の癒着の重症度を、Hoffmann癒着スコアリングシステム(スコア番号が0、1、2、3のいずれかであり、番号が大きいほど組織の癒着の重症度が高い)に従って、二重盲検法で調べた。
【0111】
Hoffmann癒着スコアリングシステムを用いた組織癒着の重症度の検討に関する詳細な説明を以下の表4に示す。Hoffmann癒着スコアリングシステムを用いた組織の癒着の重症度の評価された定量的な結果を、表5に示し、そして図2にグラフで示すことができ、ここで、対照群と実験群との間の統計的な差異を、Prism 7 for Mac(GraphPad Software、USA)を用いて両側計算によるスチューデントのt検定で分析した。また、対照群、比較群、実験群の組織癒着の写真を、図3(A〜E)に示す。
【0112】
表5に示すように(図2も参照)、実施例1〜4で調製したヒドロゲルは、すべて組織癒着を有意に抑制する効果を示したが、比較例1で調製したヒドロゲルは、対照群と比較して組織癒着を防止する効果が有意ではなかった(図3(A〜D)も参照)。特に、実施例2で調製したヒドロゲルは、組織癒着を防止する効果が著しく優れていた。これらの結果から、滞留時間の長いヒドロゲルがより十分な組織癒着防止効果を発揮することが、示唆される。また、異なるアミノ酸修飾ポリマーの組み合わせを調整することにより、これらのヒドロゲル混合物の粘度、機械的強度、粘膜付着性を制御することができ、したがって、その滞留時間を調整することができ、よって、組織癒着防止効果が期待できるヒドロゲルを作製することができる。したがって、リジン修飾ポリマーとシステイン修飾ポリマーとの組み合わせを含む組成物を有する、比較例2で調製したヒドロゲルは、16日にわたるゲル滞留時間を示し、動物実験では著しく優れた組織癒着防止効果を示した(図3Eも参照)。
【0113】
【表4】
【0114】
【表5】
a:平均±SEM(n = 4); *:p <0.05; **:p <0.01; ***:p <0.001; ****:p <0.0001; NS:有意差なし
【0115】
実験例5
薬学的に活性な薬剤の充填、封入、および放出
【0116】
(1)PTXおよびアミノ酸修飾ポリマー混合物の調製
まず、12mgのPTX12mgを、8mLのメタノールに溶解した。その後、実施例2および5(2)の各アミノ酸修飾ポリマー1gを、それぞれ対応するPTX−メタノール溶液に加え、PTX−アミノ酸修飾ポリマーの混合物を得た。
【0117】
(2)比較例1の調製
PTX12mgをメタノール8mLに溶解した。調製したPTX−メタノール溶液に未修飾のプルロニックF−127を1g加え、PTX−プルロニックF−127混合物を形成した。
【0118】
(3)薬剤の充填と封入
ここでは、薬学的に活性な薬剤としてパクリタキセルを選択し、これを、薄膜水和法を用いて充填および封入した(Wei Z.,ら,Paclitaxel−Loaded Pluronic P123/F127 Mixed Polymeric Micelles:Formulation,Optimization and in Vitro Characterization,Int.J.Pharm,376(1),176−185,2009)。簡単に説明すると、実施例2、5(2)、および比較例1で調製された薬剤およびアミノ酸修飾ポリマー混合物のそれぞれを、個々のナス型ガラス瓶に移し、1時間かけて回転蒸発させてメタノールを除去した。メタノールが除去されると、ボトル内にはPTX−充填ポリマー薄膜の層が形成され、これを50℃の真空オーブンに一晩入れて溶媒の除去を完了した。各PTX−充填ポリマー薄膜を8mLの蒸留水で再水和してPTXを封入した後、23μmのセルロース膜でろ過して、封入されていないPTXを除去した。その後、薬物充填容量と薬物封入効果とを評価するために、PTXを封入したポリマーをそれぞれ凍結乾燥して、PTXポリマー粉末を生成した。
【0119】
薬物充填容量と薬物封入効果の計算式を、以下のように示した。
【数1】
【数2】
とし、その結果を表6に示す。
【0120】
【表6】
【0121】
表6に示すように、実施例2および5(2)の両方で調製されたヒドロゲルは、比較例1と比較して、薬物負荷容量が向上することが確認された。さらに、実施例2のヒドロゲルはまた、増強されたPTX封入効果を示した。これらの結果は、プルロニックF−127が、アミノ酸修飾により、薬物負荷容量と封入効果が大幅に向上され得ることを示した。
【0122】
(4)薬物放出
本明細書において、無膜拡散法(Zhang L.,ら,Development and in−Vitro Evaluation of Sustained Release Poloxamer 407(P407)Gel Formulations of Ceftiofur,J.Controlled Release,85(1),73−81,2002)を用いて、薬物放出プロファイルを調べた。簡単に説明すると、実施例2、5(2)、および比較例1で調製されたPTX封入ポリマー粉末の各サンプルを、それぞれ対応するビーカーに入れ、再水和させて、アミノ酸変性プルロニックを20%(w/v)含むPTX−ポリマーヒドロゲルを形成した。ここでは、比較例1から、ポリマー含有量が20%(w/v)のPTX−未修飾プルロニックヒドロゲルを調製し、比較サンプルとした。次に、ビーカー内の調製した各PTX−ポリマーヒドロゲルを、37℃のインキュベーター内で予備加温し、ゲル状態を保持した。その後、PBS−メタノール混合溶液(90%:10%;v/v)を含む予め温めておいた放出媒体25mLを、調製した各PTX−ポリマーヒドロゲルの表面に直接添加し、37℃のインキュベーター内で100rpmの振とう速度で静置した。所定の時間に各ビーカーから1mLの溶液を取り出して薬剤の放出を調べ、続いて1mLの放出媒体を加えてシンク状態(sink condition)を維持した。調製した各アミノ酸修飾プルロニックおよび比較例1の薬物放出試験を3連で行い、UV波長を236nmに設定したUV−Vis分光計で薬物放出データを検出した。分析された薬物放出プロファイルは、図4(A−C)に表示されている。
【0123】
図4Aは、未修飾のプルロニックF−127から調製したヒドロゲルのPTX放出プロファイルを示す。図4Aに示すように、封入されたPTXの約50%が24時間以内に放出され、すべてのPTXが48時間以内に未修飾プルロニックF−127から完全に放出され、迅速な薬物放出挙動を示した。さらに、封入されたPTXの約30%が最初の12時間以内に放出されたことから、ダンピング(dumping)薬物放出が起こったことがわかる。
【0124】
図4(B−C)は、実施例2および5(2)で調製したヒドロゲルのPTX放出パターンをそれぞれ示す。図4(B−C)に示すように、120時間以内に、実施例2で調製されたヒドロゲルから約60%のPTXが放出され、一方、実施例5(2)で調製されたヒドロゲルからは40%のPTXがゆっくりと放出され、これらのヒドロゲルの持続可能な薬物放出プロファイルを示している。また、両方のヒドロゲルも168時間以内にPTXを完全に放出したものの、異なる薬物放出パターンを示していた。実施例2で調製されたヒドロゲルのPTX放出速度は、最後の48時間に急速な増加を示し、一方で実施例5(2)で調製されたヒドロゲルは、最後の24時間にPTXの迅速な放出を示した。これらの結果は、これら2つのヒドロゲル間の機械的強度の違いに起因する可能性がある。実験例2における実施例2および5(2)のゲル滞留時間の結果により示されるように、リジン修飾ヒドロゲルは、システイン修飾ヒドロゲルよりもわずかに短いゲル滞留時間を示したことから、リジン修飾ヒドロゲルの構造は、システイン修飾ヒドロゲルの構造よりも早期に、速く崩壊することが示唆された。このような状態により、リジン修飾ヒドロゲルではシステイン修飾ヒドロゲルよりも速く内部チャネルが形成され、この内部チャネルによりPTXがヒドロゲル内を容易に通過することが可能になり、その結果、リジン修飾ヒドロゲルではシステイン修飾ヒドロゲルと比較して早期にPTX放出速度の増加が生じるのであろう。
【0125】
本発明者らの実験結果に基づき、プルロニックをベースとした薬物放出システムは、プルロニックを1つまたはいくつかのアミノ酸で修飾することにより、薬物の充填、薬物の封入、および薬物放出の持続性を大幅に向上できることが確認される。
【0126】
要約すると、本発明により、1つまたはいくつかのアミノ酸によって修飾されたプルロニックが(1)ポリマー構造の機械的強度を高め、(2)ポリマーの流動性を向上させ、生物医学的用途での有用性を高め、(3)水食耐性能を高め、(4)ポリマーと組織との間の付着性を高め、(4)組織癒着防止能を高め、(5)薬学的に活性な薬剤の送達における充填容量を増加させ、(7)薬学的に活性な薬剤の送達における放出プロファイルを改善し得ることが、見出された。
【0127】
本発明を前述の好ましい実施形態を参照して詳細に説明してきたが、前述の説明は本発明を限定するものとして解釈されるべきではないことを理解されたい。前述の内容を読めば、様々な修正や置換が当業者には明らかになるであろう。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義されるべきである。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図4C
【外国語明細書】
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