そして、上記粒子が単結晶又は該単結晶が複数集合した多結晶体を形成しており、それが上記有機系発光分子の母結晶中に上記有機系増感分子が固溶した固溶体であるため、材料の熱力学的安定性が担保され、このため長期使用に適したフォトン・アップコンバージョン材料を提供することができる。
上記粒子を100℃で3日間保持したとき、上記有機系発光分子と上記有機系増感分子とが固溶状態を維持していることを特徴とする請求項1又は2に記載のフォトン・アップコンバージョン材料。
上記有機系発光分子が、アントラセン系有機系発光分子及び/又はペリレン系有機系発光分子であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載のフォトン・アップコンバージョン材料。
上記アントラセン系有機系発光分子が、ジオキサボロラン基、フェニル基、及び炭化水素基から成る群から選ばれた基を有することを特徴とする請求項4に記載のフォトン・アップコンバージョン材料。
上記粒子を析出工程が、再結晶法、蒸発拡散法、及び再沈法から成る群から選ばれた少なくとも1つの方法を用いることを特徴とする請求項6に記載のフォトン・アップコンバージョン材料の製造方法。
【背景技術】
【0002】
太陽光のエネルギーを太陽電池や水分解光触媒などによって電力や水素などの二次エネルギーに変換して利用するには、地表に届く太陽光のエネルギーが低密度であるため、変換効率を向上させる必要である。
【0003】
上述の太陽光のエネルギーを二次エネルギーに変換する系では、その系に固有の閾値エネルギー(バンドギャップとも呼ばれる)未満のエネルギーのフォトン(光子)に対応するスペクトル、すなわち、閾値波長よりも長波長の光は二次エネルギーへの変換に利用されない。
【0004】
このような現在未利用の長波長の光を上記変換に利用せしめる方法として、フォトン・アップコンバージョン(以下、「光UC」ということがある。)が提案されている。
【0005】
上記光UCは、エネルギーの低い2個のフォトンを、三重項‐三重項消滅と呼ばれる過程を利用してエネルギーのより高い1個のフォトンに変換する、換言すれば、長波長の光を短波長の光に変換する方法である。
【0006】
非特許文献1には、比較的高濃度な有機系発光分子と比較的低濃度な有機系増感分子とを含む溶液を基板上で急速に蒸発させることにより析出させた微細な結晶粉末状有機固体が記載されている。
【0007】
この有機固体は、固体析出が急速であることによって有機系発光分子と有機系増感分子とがほとんど相互に分離しないうちに有機系増感分子が有機系発光分子の固体中に微分散されるために、凝集を回避した増感分子の含有量を多くすることができる。
【0008】
したがって、有機系増感分子から有機系発光分子への三重項エネルギー移動が行われ易く、高効率な光UCが可能である旨が開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<フォトン・アップコンバージョン材料>
本発明のフォトン・アップコンバージョン材料について詳細に説明する。
上記フォトン・アップコンバージョン材料は、可視〜近赤外域で高い光学活性をもつ多環芳香族π共役系分子を用いたものであり、有機系発光分子と有機系増感分子とを含む粒子を含有する。
そして、上記粒子が単結晶又は該単結晶が複数集合した多結晶体を形成しており、上記有機系発光分子(以下、「発光分子」ということがある。)の母結晶ドメイン中に上記有機系増感分子(以下、「増感分子」ということがある。)が固溶した固溶体である。
【0019】
該フォトン・アップコンバージョン材料は、上記発光分子の母結晶中に上記増感分子が固溶した固溶体から成り、発光分子の母結晶中に増感分子が凝集せずに分散したものである。この固溶体は、
図1に示す熱力学平衡相図において、熱力学的に安定な状態の相であると定義されたα相にあたっている。
このような、α相にあたる固溶体で構成された本発明のフォトン・アップコンバージョン材料は長期使用に望まれる安定性に優れ、光UCを長期に亘り安定して行うことが可能である。
【0020】
本発明において、発光分子の母結晶中に増感分子が固溶しているとは、光学顕微鏡観察によって材料中に増感分子のみの凝集体ないし凝集領域が確認されないことをいい、例えば、発光分子の母結晶中に増感分子が2分子隣接している箇所が全く存在しないことまでを意味するものではない。
【0021】
このような、フォトン・アップコンバージョン材料は、増感分子の含有量が100℃における上記発光分子に対する固溶限未満であることが好ましい。
【0022】
発光分子の結晶相に対する増感分子の固溶限は、当該使用した発光分子と増感分子とに関する、
図1に模式的に示されたような二種分子混合系の熱力学平衡相図から知ることができ、発光分子と増感分子とのモル比が、発光分子の母結晶中に増感分子が固溶した固溶相を形成する範囲内であることで、長期に亘り固溶状態を維持できる。
なお、二種分子混合系の熱力学平衡相図は、当業者間で一般的に用いられている実験的な相図作成方法等に従って作成できる。
【0023】
一例として、100℃で3日間保持したとき、上記発光分子と上記増感分子とが相分離せずに固溶状態を維持するフォトン・アップコンバージョン材料であると、多くの実際用途では、長期に亘り光UCを行うことができる。
【0024】
また、本発明のフォトン・アップコンバージョン材料は、少量の増感分子が母相である発光分子の結晶相に固溶している特徴によって、一つの増感分子はその周囲を発光分子によって取り囲まれているために、光UCの際には、増感分子から発光分子への三重項エネルギー移動(以下、「TET」ということがある。)が高い効率で行われるため、TET過程でのエネルギー損失を低減できる。
【0025】
上記の光UCの過程は、以下のようになされる。
図2に示すように、まず、基底状態(S
0)にある増感分子が長波長光である入射光を吸収し、一重項励起状態(S
1)となり、その後すぐに項間交差によりエネルギーの低い三重項状態(T
1)となり、さらにこの増感分子から基底状態(S
0)にある発光分子へとTETが起こる。
【0026】
そして、三重項状態(T
1)にある2個の発光分子互いに近接すると、一方の有機系発光分子がよりエネルギーの高い一重項励起状態(S
1)となり、他方の有機系発光分子が基底状態(S
0)に落ちて三重項‐三重項消滅(以下、「TTA」ということがある。)が起こり、その結果、上記の一重項励起状態(S
1)となった有機系発光分子が基底状態(S
0)に戻る際にフォトンを発する。以上の過程によって、吸収された長波長の光が短波長の光に変換される。
【0027】
非特許文献1に記載の微細な結晶領域からなる有機固体は、溶媒中に溶解してブラウン運動的に動き回る孤立した溶質分子とは異なり、有機系増感分子と有機系発光分子とが近接して固定されているため、TETのために有機系増感分子と有機系発光分子との間の運動を介した衝突を必要とせず、速やかで効率的なTETが可能という利点がある。
【0028】
しかしながら、非特許文献1に示された結果では、有機系発光分子を主とする有機固体相中で有機系増感分子の一部が微視的に凝集していることが示唆されており、該凝集体では有機系発光分子へのTETが効率的に行われず、凝集体内部でのエネルギー移動が励起エネルギーの損失を伴っている可能性があり、また、三重項状態(T
1)に励起した増感分子から燐光(吸収した光よりも長波長の光)が生じてしまい、さらなる高効率な変換は困難である。
【0029】
本発明のフォトン・アップコンバージョン材料は、発光分子の母結晶中に増感分子が固溶しており、発光分子と増感分子とが近接し、増感分子同士が隣接していない。したがって、三重項状態(T
1)に励起した増感分子のエネルギーが、増感分子同士間で移動することなく、増感分子から発光分子に移動するので、上記エネルギーが燐光として散逸されることを防止できる。
【0030】
上記フォトン・アップコンバージョン材料の粒子を構成する単結晶の形状は、例えば、正四面体状、楕円体状、角錐形状等の多面体の他、針状、枝状、網状、鱗片状等どのような形状であってもよいが、縦方向、横方向、厚さ方向のうち最も長い方向の寸法が、1μm以上であることが好ましい。
【0031】
上記単結晶の寸法が、1μm以上であることで、さらに高効率な光UCが可能である。
図2に示すように、光UCでは、TETの後にTTAが生じる必要がある。
該結晶中では、
図3に示すように、三重項状態(T
1)にある発光分子の励起エネルギーが隣接する基底状態(S
0)の発光分子に移動し、励起状態である三重項状態(T
1)、即ち三重項励起子の位置が結晶中をランダムに移動し、その結果二個の三重項励起子同士が出会ってTTAが生じる。
【0032】
本発明のフォトン・アップコンバージョン材料は、単結晶で形成され、分子同士が近接して規則的に並んでいるため、三重項励起子が結晶中をランダムに移動する。
【0033】
しかしながら、寸法が過度に小さい単結晶の場合には、上記励起子同士が出会う前に各励起子が結晶表面に出会う可能性が高まり、結晶表面は周期性の途切れた場所であり欠陥の一種として機能しうることから、有機系発光分子間での励起子エネルギー移動がそこで途切れて上記励起子が失活してしまう。
【0034】
過去の報告では有機分子結晶中での三重項励起子の拡散移動距離は数十nmから数百nm程度という報告もあることから、上記単結晶の寸法が1μm以上であることによって、発光分子間での励起子エネルギー移動が途切れ難くなり、TTAが起こる確率が高くなるために、光UCの高効率化が可能になる。
【0035】
上記のように、TTAが起こる確率は、単結晶の寸法が大きくなれば大きくなるほど高くなるので、単結晶の寸法の下限は、1μmであることが好ましく、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは20μm以上、最も好ましくは50μm以上である。
また、単結晶の寸法の上限は、特に制限はないが、これまでの発明者の実験結果から、例えば5000μm以上まで成長させると結晶構造が乱れ易くなることがあり、4000μm以下であることが好ましく、より好ましくは3000μm以下、さらに好ましくは2000μm以下である。
【0036】
また、フォトン・アップコンバージョン材料の粒径は、使用する用途によって大きく変わるが、例えば塗料として使用する場合は、コート剤樹脂への分散性の観点から1μm〜5μmであることが好ましい。
【0037】
上記有機系発光分子としては、フォトン・アップコンバージョン材料として従来公知の多環芳香族π共役系分子を使用することができ、アントラセン系有機系発光分子やペリレン系有機系発光分子を使用できる。
【0038】
上記アントラセン系有機系発光分子としては、ジオキサボロラン基、フェニル基又は炭化水素基及びこれらの任意の組み合わせの基を有する発光分子を挙げることができ、具体的には、下記構造式(1)〜(3)の発光分子が挙げられる。
【0042】
また、上記ペリレン系有機系発光分子としては下記構造式(4)の発光分子が挙げられる。
【0044】
上記有機系増感分子としては、フォトン・アップコンバージョン材料として従来公知の多環芳香族π共役系分子を使用することができ、例えば、下記構造式(5)、(6)の有機系増感分子を使用できる。
【0047】
上記発光分子と上記増感分子とのモル比(増感分子/発光分子)は、発光分子と増感分子の種類やこれらの組み合わせにもよるが、1/10
6以上1/10
3未満であることが好ましい。
【0048】
下記実施例を行った際の発明者の経験から、1/10
6未満では増感分子が少なく、有意義な光UCを行うことが困難になることがあり、1/10
3を超えると、場合によって固溶限界を超えて増感分子の凝集体が生じ易くなる、あるいは三重項励起子の増感分子への再衝突のためにUC効率が低くなる可能性などによって、不適となることがある。
【0049】
<フォトン・アップコンバージョン材料の製造方法>
本発明のフォトン・アップコンバージョン材料の製造方法は、上記フォトン・アップコンバージョン材料を作製する方法である。
【0050】
上記製造方法は、有機系発光分子と有機系増感分子とを溶媒に溶解してから、上記有機系発光分子の母結晶中に上記有機系増感分子が固溶した固溶体の結晶を析出させる析出工程を有する。
上記析出工程により析出した単結晶が成長し、隣接する複数の単結晶で集合体を形成すると多結晶体となる。
【0051】
上記析出工程としては、再結晶法、蒸発拡散法、及び再沈法を挙げることができる。
これらの方法は、析出工程中の環境を穏やかに変化させ、結晶を析出させることが可能であり、有機系増感分子が凝集することなく有機系発光分子の母結晶中に固溶すると共に、粒径が大きな固溶体の結晶を形成できる。
【0052】
また、上記固溶体中の発光分子と増感分子とのモル比、すなわち、発光分子の母結晶中に固溶する増感分子の量は、これらを溶解させる溶媒の種類、及び発光分子と増感分子との濃度により調節できる。
【0053】
具体的には、増感分子の溶媒中濃度が同じであれば、増感分子に対して溶解度が高い溶媒を用いると発光分子の母結晶中への増感分子の固溶量は低下し、増感分子に対する溶解度が低い溶媒を用いると固溶量は増加する。また、増感分子の溶媒に対する溶解度が同じあれば、溶媒中の増感分子の濃度が高いと発光分子の母結晶中への固溶量は増加し、増感分子の濃度が低いと固溶量が減少する。
但し、溶媒の選定や、発光分子と増感分子の濃度を調節するにあたっては、増感分子が単独で析出することがないように留意する必要がある。
【0054】
上記有機系発光分子と有機系増感分子とを溶解する溶媒としては、トルエン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、アセトニトリルなどを挙げることができる。
また、蒸発拡散法及び再沈法において、溶媒中溶解している有機系発光分子と有機系増感分子とを析出させる貧溶媒としては、エタノール、ヘキサンなどを使用できる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0056】
[実施例1]
トルエン3.1mLに、構造式(5)の有機系増感分子0.68mg(3×10
−4M)と、構造式(1)の有機系発光分子20mg(1.5×10
−2M)を加え100℃に加熱して完全に溶解させた後、室温まで徐冷の後、1日程度静置しフォトン・アップコンバージョン材料を得た。
【0057】
また、溶媒を3.1mLのエチルベンゼンに替えてフォトン・アップコンバージョン材料を作製し、また2.9mLのアセトニトリルに有機系増感分子0.11mg(5×10
−5M)と、構造式(1)の有機系発光分子15mg(1.2×10
−2M)溶解してフォトン・アップコンバージョン材料を作製したところ、上記トルエンを用いて作製したフォトン・アップコンバージョン材料と同様のフォトン・アップコンバージョン材料が得た。
【0058】
[実施例2]
トルエン0.3mLに、構造式(5)の有機系増感分子0.11mg(5×10
−4M)と、構造式(3)の有機系発光分子5mg(5×10
−2M)を加え溶解させた。この溶液を入れた開放容器を、有機系発光分子への貧溶媒(エタノール)2mLが入った密閉容器内に1〜2週間静置し、トルエンと貧溶媒が気相を介して混合することによりフォトン・アップコンバージョン材料を得た。
【0059】
[実施例3]
トルエン0.32mLに、構造式(5)の有機系増感分子0.12mg(5×10
−4M)と、構造式(2)の有機系発光分子12mg(1×10
−1M)を溶解した他は実施例2と同様にしてフォトン・アップコンバージョン材料を得た。
【0060】
[実施例4]
トルエン0.48mLに、構造式(6)の有機系増感分子0.09mg(2×10
−4M)と、構造式(4)の有機系発光分子2.4mg(2×10
−2M)を溶解した他は、実施例1と同様にしてフォトン・アップコンバージョン材料を得た。
【0061】
[比較例1]
濃度が5×10
−4Mの構造式(5)の有機系増感分子トルエン溶液4μLを示差走査熱量測定装置付属のアルミセル(開放容器)に滴下し、60℃で1時間真空加熱してトルエンを蒸発させ上記アルミセルの壁面に有機系増感分子を付着させた。
このアルミセルに構造式(3)の有機系発光分子3.4mg(有機系増感分子/有機系発光分子:1/5000)を加え、密閉した。これを昇温速度10℃/分で加熱し、示差熱分析により有機系発光分子の融解のシグナルが得られた温度から15℃昇温させ、その温度で5分間保持し、発光分子と増感分子とを混合した。
その後、降温速度5℃/分で冷却し、上記分子が凝固してフォトン・アップコンバージョン材料を得た。
【0062】
[比較例2]
加熱後に温度保持した後、液体窒素に5分間浸漬して急冷する他は、比較例1と同様にしてフォトン・アップコンバージョン材料を得た。
【0063】
[比較例3]
構造式(2)の有機系発光分子3.9mgを用いる他は、比較例1と同様にしてフォトン・アップコンバージョン材料を得た。
【0064】
[比較例4]
加熱後に温度保持した後、液体窒素に5分間浸漬して急冷する他は、比較例3と同様にしてフォトン・アップコンバージョン材料を得た。
【0065】
<評価>
実施例1〜4、比較例1〜4のフォトン・アップコンバージョン材料を以下の方法で評価した。評価結果を表1に示す。
【0066】
(発光スペクトル)
図4に示す発光測定系を用い、フォトン・アップコンバージョン材料に所定の単色光(励起光)を照射し、UC発光と燐光との発光強度比を測定した。
実施例1〜4及び比較例1〜4の発光スペクトル図を、それぞれ
図5〜
図12に示す。
【0067】
また、100℃で3日間保持(アニール)した後のUC発光を測定した。
アニール後の実施例1のUC発光のスペクトル図を
図13に示す。
【0068】
(フォトン・アップコンバージョン材料の形態)
フォトン・アップコンバージョン材料粒子の偏光顕微鏡像により、形態、結晶ドメインサイズ、結晶ドメイン中の有機系増感分子の凝集体の有無を観察した。
実施例1〜4及び比較例1〜4の顕微鏡像と偏光顕微鏡とを、それぞれ発光スペクトル図と合わせて
図5〜
図12に示す。
【0069】
実施例1〜4のフォトン・アップコンバージョン材料は、有機系増感分子の凝集体がなく、有機系発光分子中に有機系増感分子が固溶していることがわかる。
【0070】
(有機系増感分子と有機系発光分子のモル比)
フォトン・アップコンバージョン材料をアセトニトリルに溶解し、高速液体クロマトグラフ(HPLC)で得られたシグナルと検量線とを比較し、有機系増感分子と有機系発光分子のモル比を推定した。
【0071】
【表1】
【0072】
表1、
図5〜
図8から、本発明のフォトン・アップコンバージョン材料は燐光のスペクトルがほとんど検出されず、有機系増感分子から有機系発光分子への三重項エネルギー移動が高効率で行われていることがわかる。
また、表1、
図9〜
図12から、有機系増感分子が凝集した試料でも光UCが生じるが、燐光が生じていることから、有機系増感分子の励起エネルギーの一部が(発光分子に移動できておらず)UC発光に寄与していないことが分かる。
【0073】
図13のアニール前後の発光スペクトルの比較から、本発明のフォトン・アップコンバージョン材料はアニールによる発光スペクトルの変化がなく、熱力学的に安定であり、長期に亘り光UCできることがわかる。
【0074】
本発明のフォトン・アップコンバージョン材料(実施例3)と非晶質試料(比較例3)とに、表1に示す励起光(単色光)を数分間継続的に照射した際の発光スペクトルの変化を
図14に示す。
本発明のフォトン・アップコンバージョン材料は発光強度が高いUC光が安定して生じているのに対し、比較例では励起光の照射初期には強いUC光が生じたがすぐに強度が低下し、燐光の強度が高くなっており、光照射をしただけでUC光の強度比が変化している。
この結果から、長時間の光照射に対し、本発明のフォトン・アップコンバージョン材料は安定であり、比較例のガラス試料は不安定であることが分かる。