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特開2021-181541熱伝導性樹脂組成物およびそれからなる成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-181541(P2021-181541A)
(43)【公開日】2021年11月25日
(54)【発明の名称】熱伝導性樹脂組成物およびそれからなる成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20211029BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20211029BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20211029BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20211029BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20211029BHJP
【FI】
   C08L101/00
   C08K3/013
   C08K7/02
   C08K7/14
   C08L77/00
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2020-87786(P2020-87786)
(22)【出願日】2020年5月20日
(11)【特許番号】特許第6900078号(P6900078)
(45)【特許公報発行日】2021年7月7日
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100103115
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 康廣
(72)【発明者】
【氏名】正鋳 夕哉
(72)【発明者】
【氏名】大畠 渉
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA011
4J002CL011
4J002CL031
4J002CL051
4J002DA016
4J002DA026
4J002DA076
4J002DA086
4J002DA096
4J002DA116
4J002DE076
4J002DE106
4J002DE146
4J002DE236
4J002DF016
4J002DJ046
4J002DK006
4J002DL007
4J002FA047
4J002FD016
4J002FD017
4J002GT00
(57)【要約】
【課題】流動方向の熱伝導率が2W/(m・K)以上でありながら、耐フォギング性に優れた成形体を製造することができる樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】熱可塑性樹脂(A)および熱伝導性充填材(B)を含有する熱伝導性樹脂組成物であって、前記熱可塑性樹脂(A)と前記熱伝導性充填材(B)との質量比率が38/62〜85/15であり、125℃で200時間のフォギング試験後のガラス板のヘイズ値が8以下であり、 前記熱伝導性樹脂組成物を成形してなる成形体の流動方向の熱伝導率が2W/(m・K)以上である、熱伝導性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂(A)および熱伝導性充填材(B)を含有する熱伝導性樹脂組成物であって、
前記熱可塑性樹脂(A)と前記熱伝導性充填材(B)との質量比率が38/62〜85/15であり、
125℃で200時間のフォギング試験後のガラス板のヘイズ値が8以下であり、
前記熱伝導性樹脂組成物を成形してなる成形体の流動方向の熱伝導率が2W/(m・K)以上である、熱伝導性樹脂組成物。
【請求項2】
前記熱伝導性充填材(B)が、タルク、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボン、黒鉛、銀、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、錫、鉄、およびステンレスからなる群から選択される1種以上の材料である、請求項1に記載の熱伝導性樹脂組成物。
【請求項3】
前記熱伝導性樹脂組成物がさらに、非熱伝導性繊維状強化材(C)を含有し、前記熱可塑性樹脂(A)および前記熱伝導性充填材(B)の合計と前記非熱伝導性繊維状強化材(C)との質量比率が100/0〜50/50である、請求項1または2に記載の熱伝導性樹脂組成物。
【請求項4】
前記非熱伝導性繊維状強化材(C)が、ガラス繊維である、請求項3に記載の熱伝導性樹脂組成物。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂(A)がポリアミドである、請求項1〜4のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂(A)が、結晶性ポリアミドと非晶性ポリアミドとからなり、前記結晶性ポリアミドと前記非晶性ポリアミドとの質量比率が100/0〜40/60である、請求項1〜5のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂(A)と前記熱伝導性充填材(B)との質量比率が38/62〜75/25であり、
前記熱伝導性充填材(B)が黒鉛である、請求項1〜6のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂(A)と前記熱伝導性充填材(B)との質量比率が45/55〜70/30であり、
前記熱伝導性充填材(B)が平均粒径80〜180μmの鱗片状黒鉛であり、
前記熱伝導性樹脂組成物がさらに、非熱伝導性繊維状強化材(C)を含有し、
前記熱可塑性樹脂(A)および前記熱伝導性充填材(B)の合計と前記非熱伝導性繊維状強化材(C)との質量比率が100/0〜75/25である、請求項1〜7のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物からなる成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂と熱伝導性充填材を含有し、耐フォギング性に優れかつ流動方向の熱伝導率が2W/(m・K)以上の成形体を製造することができる熱伝導性樹脂組成物およびそれからなる成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、部品および製品の高性能化により発熱量が大きくなっているが、部品および製品の小型化および軽量化に伴い放熱スペースは減少している。そのため、発生する熱を効果的に外部へ放散させる熱対策が非常に重要な課題になっており、その構成材料である樹脂成形材料(例えば樹脂組成物)の放熱性改良を求める声が大きくなってきている。例えばLEDは高寿命化のために効率よく放熱することが必要となっており、さらにランプを長時間点灯した際にレンズが曇らないことも重要になっている。そのため、使用される部材の良好な耐フォギング性も求められるようになっている。LEDの高寿命化につながる放熱量を考えた場合、流動方向の熱伝導率として、一般的な樹脂組成物の熱伝導率0.2W/(m・K)の10倍となる2W/(m・K)は必要となる。このため、成形体の流動方向の熱伝導率が2W/(m・K)以上であり、かつ良好な耐フォギング性の材料が求められている。
【0003】
これまで、樹脂材料に熱伝導性の高い熱伝導性充填材(例えば、黒鉛、銅、アルミニウム、酸化アルミニウム等)を高充填することによって、高熱伝導化された樹脂組成物が得られることが知られている。このような樹脂組成物を用いて製造された成形体は電気・電子部品の製造用部材として検討されている(例えば、特許文献1〜4)。
【0004】
一方、熱伝導性樹脂組成物の分野では、曲げ強度および曲げ弾性率など機械強度に優れた成形体を流動性よく製造できることも求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−100577号公報
【特許文献2】特開平4−178421号公報
【特許文献3】特開平5−86246号公報
【特許文献4】特開平2011−116842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の発明者等は、熱伝導性充填材が多量に配合された樹脂組成物を従来の製造方法で製造した場合、製造時のガス引きが不十分となり、当該樹脂組成物を用いて得られた成形体の耐フォギング性が悪化する問題が生じることを見出した。詳しくは、樹脂組成物を製造する際のガス引きは、従来の方法では、押出機における押出方向で最下流の近傍に設けられたベント口から単に真空引きすることにより行われる。このとき、樹脂組成物に熱伝導性充填材が多量に配合されていると、内圧が高くなり、ベント口から溶融物が溢出したり、かつ/またはベント口が閉塞したりする傾向があるため、ガス引きを十分に行うことはできなかった。このため、樹脂組成物から、熱可塑性樹脂中の残留モノマー成分および熱による分解物成分等を十分に除去することができず、成形体の耐フォギング性が悪化するものと考えられる。
【0007】
本発明は、流動方向の熱伝導率が2W/(m・K)以上でありながら、耐フォギング性に優れた成形体を製造することができる樹脂組成物およびそれより得られる成形体を提供することを目的とする。
【0008】
本発明はまた、流動方向の熱伝導率が2W/(m・K)以上でありながら、耐フォギング性、曲げ特性および成形流動性に優れた成形体を製造することができる樹脂組成物およびそれより得られる成形体を提供することを目的とする。
【0009】
本明細書中、熱伝導性は、熱伝導性樹脂組成物を用いて製造された成形体において、熱が伝導し易い特性のことである。熱伝導性は、例えば、成形体製造時(例えば射出成形時)の流動方向の熱伝導率が2W/(m・K)以上である特性であってもよい。
耐フォギング性は、熱伝導性樹脂組成物を用いて製造された成形体が100℃以上(例えば125℃)の高温環境下でも曇り難い特性のことである。
曲げ特性は、熱伝導性樹脂組成物を用いて製造された成形体の曲げ強度および曲げ弾性率が十分に高い特性のことである。
成形流動性は、熱伝導性樹脂組成物を用いて成形体を製造するとき、当該樹脂組成物が十分に流動し得る特性のことである。
【0010】
熱伝導性および耐フォギング性は、本発明の熱伝導性樹脂組成物が有する特性である。
曲げ特性および成形流動性は、本発明の熱伝導性樹脂組成物が有さなければならない特性というわけではなく、本発明の熱伝導性樹脂組成物が通常、有する特性、または有することが好ましい特性である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、熱可塑性樹脂と熱伝導性充填材をコンパウンドする際に、真空ポンプによるガス引きを強化することで前記課題が解決されることを見出し、本発明に到達した。
【0012】
本発明の要旨は、下記の通りである。
<1> 熱可塑性樹脂(A)および熱伝導性充填材(B)を含有する熱伝導性樹脂組成物であって、
前記熱可塑性樹脂(A)と前記熱伝導性充填材(B)との質量比率が38/62〜85/15であり、
125℃で200時間のフォギング試験後のガラス板のヘイズ値が8以下であり、
前記熱伝導性樹脂組成物を成形してなる成形体の流動方向の熱伝導率が2W/(m・K)以上である、熱伝導性樹脂組成物。
<2> 前記熱伝導性充填材(B)が、タルク、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボン、黒鉛、銀、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、錫、鉄、およびステンレスからなる群から選択される1種以上の材料である、<1>に記載の熱伝導性樹脂組成物。
<3> 前記熱伝導性樹脂組成物がさらに、非熱伝導性繊維状強化材(C)を含有し、前記熱可塑性樹脂(A)および前記熱伝導性充填材(B)の合計と前記非熱伝導性繊維状強化材(C)との質量比率が100/0〜50/50である、<1>または<2>に記載の熱伝導性樹脂組成物。
<4> 前記非熱伝導性繊維状強化材(C)が、ガラス繊維である、<3>に記載の熱伝導性樹脂組成物。
<5> 前記熱可塑性樹脂(A)がポリアミドである、<1>〜<4>のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
<6> 前記熱可塑性樹脂(A)が、結晶性ポリアミドと非晶性ポリアミドとからなり、前記結晶性ポリアミドと前記非晶性ポリアミドとの質量比率が100/0〜40/60である、<1>〜<5>のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
<7> 前記熱可塑性樹脂(A)と前記熱伝導性充填材(B)との質量比率が38/62〜75/25であり、
前記熱伝導性充填材(B)が黒鉛である、<1>〜<6>のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
<8> 前記熱可塑性樹脂(A)と前記熱伝導性充填材(B)との質量比率が45/55〜70/30であり、
前記熱伝導性充填材(B)が平均粒径80〜180μmの鱗片状黒鉛であり、
前記熱伝導性樹脂組成物がさらに、非熱伝導性繊維状強化材(C)を含有し、
前記熱可塑性樹脂(A)および前記熱伝導性充填材(B)の合計と前記非熱伝導性繊維状強化材(C)との質量比率が100/0〜75/25である、<1>〜<7>のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
<9> <1>〜<8>のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物からなる成形体。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、流動方向の熱伝導率が2W/(m・K)以上でありながら、耐フォギング性に優れた成形体を製造することができる樹脂組成物およびそれにより得られる成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の樹脂組成物を製造するための押出機の模式的断面図を示す。
図2A】本発明の樹脂組成物を規定するヘイズ値の測定方法を説明するための模式図を示す。
図2B】本発明の樹脂組成物を規定するヘイズ値の測定方法で使用される集気瓶の模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[熱伝導性樹脂組成物]
本発明の熱伝導性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)と熱伝導性充填材(B)を含有する。
【0016】
本発明に用いる熱可塑性樹脂(A)としては特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体(例えばエチレン−プロピレン共重合体等)等のオレフィン系樹脂;ポリメチルペンテン;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリ酢酸ビニル;エチレン−酢酸ビニル共重合体;ポリビニルアルコール;ポリビニルアセタール;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル樹脂;ポリスチレン;ポリアクリロニトリル;スチレン−アクリロニトリル共重合体;ABS樹脂;ポリフェニレンエーテル(PPE);変性PPE;ポリイミド;ポリアミド、ポリアミドイミド等のアミド結合含有ポリマー;ポリエーテルイミド;ポリメタクリル酸メチル等のポリメタクリル酸エステル;ポリアクリル酸;ポリカーボネート;ポリアリレート;ポリフェニレンスルフィド;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリエーテルニトリル;ポリエーテルケトン;ポリケトン;液晶ポリマーが挙げられる。中でも、成形加工性に優れ、熱伝導性充填材(B)を配合した場合に熱伝導性が発現しやすいことから、アミド結合含有ポリマー、特にポリアミド樹脂が好ましい。
【0017】
本発明に用いるポリアミド樹脂は、アミド結合を有するホモポリアミドもしくはコポリアミド、またはこれらの混合物である。アミド結合を有するホモポリアミドおよびコポリアミドは、ラクタム、アミノカルボン酸、ジアミン、ジカルボン酸等を重合することによって得ることができる。ホモポリアミドおよびコポリアミドを構成するラクタム、アミノカルボン酸およびジアミン、ジカルボン酸としては、それぞれ、後述する結晶性ポリアミドおよび非晶性ポリアミドを構成し得るラクタム、アミノカルボン酸、ジアミンおよびジカルボン酸が挙げられる。
【0018】
ポリアミド樹脂の結晶性(または非晶性)は特に限定されず、ポリアミド樹脂は、例えば、結晶性ポリアミド(A−1−1)単独または結晶性ポリアミド(A−1−1)と非晶性ポリアミド(A−1−2)の混合物いずれであってもよい。
【0019】
結晶性ポリアミド(A−1−1)とは、示差走査熱量計(DSC)を用いて窒素雰囲気下で16℃/分の昇温速度により測定した融解熱量の値が、1cal/g以上であるポリアミド樹脂を意味する。
非晶性ポリアミド(A−1−2)とは、示差走査熱量計(DSC)を用いて窒素雰囲気下で16℃/分の昇温速度により測定した融解熱量の値が、1cal/g未満であるポリアミド樹脂を意味する。
【0020】
結晶性ポリアミド(A−1−1)としては、例えば、ポリテトラメチレンイソフタルアミド(ポリアミド4I)、ポリテトラメチレンテレフタルアミド(ポリアミド4T)、ポリカプラミド(ポリアミド6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリカプラミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ポリアミド6/66)、ポリウンデカミド(ポリアミド11)、ポリカプラミド/ポリウンデカミドコポリマー(ポリアミド6/11)、ポリドデカミド(ポリアミド12)、ポリカプラミド/ポリドデカミドコポリマー(ポリアミド6/12)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ポリアミド116)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミド6T)、ポリカプラミド/ポリテトラメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド6/4T)、ポリカプラミド/ポリテトラメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド6/4I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリテトラメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/4T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリテトラメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/4I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド6T/6I)、ポリカプラミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド6/6T)、ポリカプラミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド6/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6I)、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミドTMDT)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドPACM12)、ポリビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドジメチルPACM12)、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリオクタメチレンテレフタルアミド(ポリアミド8T)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ポリアミド9T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド10T)、ポリウンデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド11T)およびこれらの混合物が挙げられる。中でも、熱伝導性および耐フォギング性のさらなる向上ならびに曲げ特性および成形流動性の向上の観点から、ポリアミド6、および/またはポリアミド66がより好ましい。結晶性ポリアミド樹脂は、上記のうち1種を単独で用いてもよいし、併用してもよい。
【0021】
非晶性ポリアミド(A−1−2)としては、例えば、イソフタル酸/テレフタル酸/1,6−ヘキサンジアミン/ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン共重合体、テレフタル酸/2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン/2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン共重合体、イソフタル酸/ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン/ω−ラウロラクタム共重合体、イソフタル酸/テレフタル酸/1,6−ヘキサンジアミン共重合体、イソフタル酸/2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン/2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン共重合体、イソフタル酸/テレフタル酸/2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン/2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン共重合体、イソフタル酸/ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン/ω−ラウロラクタム共重合体、イソフタル酸/テレフタル酸/その他ジアミン成分の共重合体が挙げられる。中でも、熱伝導性および耐フォギング性のさらなる向上ならびに曲げ特性および成形流動性の向上の観点から、イソフタル酸/テレフタル酸/1,6−ヘキサンジアミン/ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン共重合体、テレフタル酸/2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン/2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン共重合体、イソフタル酸/テレフタル酸/1,6−ヘキサンジアミン/ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン共重合体とテレフタル酸/2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン/2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン共重合体との混合物、イソフタル酸/テレフタル酸/1,6−ヘキサンジアミン共重合体が好ましく、イソフタル酸/テレフタル酸/1,6−ヘキサンジアミン/ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン共重合体、イソフタル酸/テレフタル酸/1,6−ヘキサンジアミン共重合体がより好ましい。非晶性ポリアミド樹脂は、上記のうち1種を単独で用いてもよいし、併用してもよい。
【0022】
結晶性ポリアミド(A−1−1)と非晶性ポリアミド(A−1−2)を併用することで、耐フォギング性のさらなる向上を達成することができ、例えばフォギング試験後のヘイズ値をさらに小さくすることが可能である。
【0023】
結晶性ポリアミド(A−1−1)と非晶性ポリアミド(A−1−2)の質量比率は特に限定されず、熱伝導性および耐フォギング性のさらなる向上ならびに曲げ特性および成形流動性の向上の観点から、好ましくは100/0〜40/60、より好ましくは100/0〜55/45、より好ましくは100/0〜70/30、さらに好ましくは100/0〜80/20である。結晶性ポリアミド(A−1−1)と非晶性ポリアミド(A−1−2)を上記の比率とすることで、特に耐フォギング性がより向上し、機械物性(特に曲げ特性)も維持することが可能である。
【0024】
熱可塑性樹脂(A)(特にポリアミド樹脂)の相対粘度は特に限定されないが、機械的特性(特に曲げ特性)および耐熱性の向上の観点から、溶媒として96質量%濃硫酸を用いて温度が25℃で濃度が1g/dLの条件で測定した相対粘度が、1.6以上(特に1.85以上)であることが好ましい。当該相対粘度は通常、3.5以下、特に3.2以下である。
【0025】
本発明に用いる熱可塑性樹脂組成物には、上記熱可塑性樹脂(A)とともに、熱伝導性充填材(B)を含有させることが必要である。熱伝導性充填材(B)としては、例えば、タルク(5〜10)、酸化アルミニウム(36)、酸化マグネシウム(60)、酸化亜鉛(25)、炭酸マグネシウム(15)、炭化ケイ素(160)、窒化アルミニウム(170)、窒化ホウ素(210)、窒化ケイ素(40)、カーボン(10〜数百)、黒鉛(10〜数百)等の無機系充填材、銀(427)、銅(398)、アルミニウム(237)、チタン(22)、ニッケル(90)、錫(68)、鉄(84)、ステンレス(15)等の金属系充填材が挙げられる(括弧内の数値は、熱伝導率の代表値(単位:W/(m・K)を表す。)。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、熱伝導性のさらなる向上と経済性の向上の観点から、無機系充填材、特に黒鉛および/またはタルクが好ましい。熱可塑性樹脂(A)に配合した際の熱伝導率がより高いことから、黒鉛(B−1)を用いることがより好ましい。また、経済性の点では、タルク(B−2)を用いることがより好ましい。
【0026】
熱伝導性充填材(B)の平均粒径は特に限定されず、例えば1μm以上、特に1〜200μmであってもよい。熱伝導性充填材(B)の平均粒径は、顕微鏡観察に基づく、任意の100個の熱伝導性充填材(B)の最大長に関する平均値を用いている。
【0027】
黒鉛の形態としては、球状、粉状、繊維状、針状、鱗片状、ウィスカ状、マイクロコイル状、ナノチューブ状等が挙げられる。これらの中でも、鱗片状黒鉛は、熱可塑性樹脂(A)に配合した際に熱伝導効率をより高くすることができるため、より好ましい。鱗片状黒鉛は、平均粒径が大きいほど熱伝導性が高くなるが、機械的物性が低下する傾向にあり、分散不良による凝集塊を生じさせずに、機械的物性や熱伝導性が均一な成形体を、良好な加工性で成形するためには、鱗片状黒鉛の平均粒径は、1μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることがさらに好ましく、30〜200μmであることが特に好ましく、80〜180μmが最も好ましい。
【0028】
タルクの形態としては、板状、鱗状、鱗片状、薄片状等が挙げられる。これらの中でも、鱗片状タルク、薄片状タルクは、成形体としたときに、面方向に配向しやすく、その結果、熱伝導率を高めることができるため、より好ましい。鱗片状タルクの平均粒径は、上述の鱗片状黒鉛の好ましい平均粒径に関する理由と同様の理由から、1μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、15μm以上であることがさらに好ましく、15〜70μmであることが特に好ましい。
【0029】
本発明に用いる熱伝導性充填材(B)は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、熱可塑性樹脂(A)との密着性を向上させるため、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤で表面処理を施してもよい。シラン系カップリング剤としては、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルジメトキシメチルシラン等のアミノシラン系カップリング剤や、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン系カップリング剤が挙げられる。チタン系カップリング剤としては、イソプロピルトリステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
本発明に用いる熱可塑性樹脂組成物において、熱可塑性樹脂(A)と熱伝導性充填材(B)との質量比(A/B)は、38/62〜85/15であることが必要であり、熱的特性(特に熱伝導性)および耐フォギング性のさらなる向上ならびに機械的特性(特に曲げ特性)および成形加工性(特に成形流動性)の向上の観点から、好ましくは38/62〜75/25、より好ましくは45/55〜70/30、さらに好ましくは48/52〜65/35である。熱伝導性充填材(B)の量が多すぎると、耐フォギング性が低下し、曲げ特性が低下する。熱伝導性充填材(B)の量が少なすぎると、十分な熱伝導性が得られない場合がある。
【0031】
本発明に用いる樹脂組成物には熱伝導性充填材とは異なる繊維状強化材(C)を含有させることができる。詳しくは繊維状強化材(C)は非熱伝導性を有する繊維状強化材である。繊維状強化材(C)が非熱伝導性を有するとは、繊維状強化材(C)を構成する物質が5W/(m・K)未満、特に4W/(m・K)以下の熱伝導率を有するという意味である。
【0032】
非熱伝導性繊維状強化材としては、例えば、無機繊維、有機繊維またはそれらの混合からなる繊維が挙げられる。無機繊維としては、例えばガラス繊維等が挙げられる。有機繊維としては、例えば、アラミド繊維、高密度ポリエチレン繊維、その他一般のポリアミド、ポリエステル等の有機繊維が挙げられる。本発明においては、熱可塑性樹脂(A)および熱伝導性充填材(B)の複合樹脂組成物に配合した際、より効果的に、曲げ特性を向上させ得る観点から、ガラス繊維が好ましい。
【0033】
熱可塑性樹脂(A))と熱伝導性充填材(B)の合計と繊維状強化材(C)の質量比は通常、100/0〜50/50質量部であり、熱伝導性および耐フォギング性のさらなる向上ならびに曲げ特性および成形流動性の向上の観点から、100/0〜75/25質量部であることが好ましく、90/10〜75/25質量部であることがより好ましい。繊維状強化剤(C)を、上記範囲とすることで成形性を損なわずに効率よく機械強度、衝撃強度を向上させることができる。熱可塑性樹脂(A)と熱伝導性充填材(B)の合計と繊維状強化材(C)の質量比が100/0であることは、繊維状強化材(C)は含有されないことを意味する。換言すると、本発明の樹脂組成物は繊維状強化材(C)を含有してもよいし、または含有しなくてもよい。本発明の樹脂組成物が繊維状強化材(C)を含有する場合、ポリアミド樹脂(A)と熱伝導性充填材(B)の合計と繊維状強化材(C)の質量比は、99/1〜50/50質量部、特に98/2〜75/25質量部であってもよい。
【0034】
ガラス繊維は、マトリックス樹脂との密着性や均一分散性の向上のため、シランカップリング剤、チタン系カップリング剤、またはジルコニア系カップリング剤等により表面処理されていてもよい。通常、ガラス繊維は、チョップドストランドの形態で用いられる。ガラス繊維の断面は、丸型、偏平型、ひょうたん型、まゆ型、長円型、楕円型、矩形またはこれらの類似品等いずれの形状であってもよい。
【0035】
ガラス繊維の平均繊維長は、1〜10mmであることが好ましく、1.5〜6mmであることがより好ましい。ガラス繊維の繊維径は4〜18μmであることが好ましく、7〜15μmであることがより好ましい。繊維断面が、丸型以外で、例えば、偏平型、ひょうたん型、まゆ型、長円型、楕円型、矩形である場合は、断面形状における長辺(例えば最大長)と短辺(例えば最大長に対して垂直方向の長さ)との比(すなわちアスペクト比)は、1.5〜10であることが好ましく、2〜8であることがより好ましい。
【0036】
本発明に用いる樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない限りにおいて、難燃剤、結晶核剤、相溶化剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、酸化防止剤、耐候剤等の添加剤を加えてもよい。
難燃剤としては、例えば、ハロゲン系難燃剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン等の無機系難燃剤、ホスフィン酸塩およびジホスフィン酸塩並びにそれらの重合体、ポリリン酸メラミン、シアヌル酸メラミン、赤リン、リン酸エステル、縮合リン酸エステル、ホスファゼン化合物が挙げられる。
結晶核剤としては、例えば、ソルビトール化合物、安息香酸およびその化合物の金属塩、燐酸エステル金属塩が挙げられる。
相溶化剤としては、例えば、アイオノマー系相溶化剤、オキサゾリン系相溶化剤、エラストマー系相溶化剤、反応性相溶化剤、共重合体系相溶化剤が挙げられる。
顔料としては、例えば、有機系、無機系のいずれも用いることができる。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系、ホスファイト系、チオエーテル系等の酸化防止剤が挙げられる。
耐候剤は、紫外線を吸収、遮断して樹脂の光劣化を防ぐものであったり、あるいは紫外線又は熱により発生するラジカルを捕捉してポリマー分解を抑制したりするものである。耐候剤としては、例えば、紫外線遮断剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤が挙げられる。
これらの添加剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、本発明においてこれらの添加剤を混合する方法は特に限定されない。
【0037】
[熱伝導性樹脂組成物の製造方法および成形体]
本発明の熱伝導性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)と、熱伝導性充填材(B)、さらには必要に応じて各種添加物を、一般的な押出機、例えば、一軸押出機、二軸押出機、ロール混錬機、ブラベンダーを用いて溶融および混練することにより製造することができる。溶融および混練後は通常、溶融物をストランド状に押出して冷却固化した後、ペレタイザーでカッティングして、本発明の熱伝導性樹脂組成物をペレット形態で得ることができる。溶融および混練前において、スタティックミキサーやダイナミックミキサーを併用することが効果的である。混練状態をよくするためには二軸押出機を用いることが好ましい。
【0038】
押出機10は、例えば図1に示すように、シリンダー1および当該シリンダー1内に配置されるスクリュー2を有する。押出機10の主ホッパー3から添加された材料はスクリュー2の回転によりシリンダー1内を搬送されつつ、溶融および混練され、吐出口4から吐出される。押出機10は通常、当該押出機10の押出方向の途中において、サイドフィーダー11をさらに有する。このような押出機10において、少なくとも熱可塑性樹脂(A)は通常、主ホッパー3から添加される。熱伝導性充填材(B)および繊維状強化材(C)の添加方法としては特に限定されないが、熱伝導性充填材(B)および繊維状強化材(C)はそれぞれ独立して、ホッパー(特に主ホッパー3)から添加されてもよいし、またはサイドフィーダー11から添加されてもよい。熱伝導性および耐フォギング性のさらなる向上ならびに曲げ特性および成形流動性の向上の観点から好ましい実施態様においては、熱伝導性充填材(B)は主ホッパー3またはサイドフィーダー11(より好ましくはサイドフィーダー11)から添加され、繊維状強化材(C)を添加する場合、繊維状強化材(C)はサイドフィーダー11から添加される。
【0039】
本発明の熱伝導性樹脂組成物の製造には、押出機による溶融および混練の際に、サイド真空装置を用いる。サイド真空装置は、例えば特許第5645480号に示されるような二軸押出機用サイドベント装置のことである。サイド真空装置は、詳しくは、図1に示すように、押出機10のサイド部の穴から真空引きするための装置12である。サイド真空装置12は、より詳しくは、シリンダー(図示せず)および当該シリンダー内部に配置されたスクリュー(図示せず)を有し、当該スクリューが回転することで、押出機10からの溶融物の逆流を防ぎながら、押出機10内部の減圧化を行うことができる。サイド真空装置12のスクリューはスクリュー本体部(すなわちスクリュー軸)および当該スクリュー本体部の表面に螺旋状に形成されたブレード部(すなわち山部)を有する。サイド真空装置12においては、スクリュー軸に対して垂直な断面視において、ブレード部がその先端でシリンダー内壁と密に接触している。このため、サイド真空装置12は、スクリューを回転させつつ、ブレード部間の減圧を行うことにより、押出機10からの溶融物の逆流を防ぎながらも、押出機10内部の減圧化を行うことができるようになっている。本発明においては、このようなサイド真空装置12を用いて溶融および混練を行うため、熱伝導性充填材(B)が高充填されていても、熱伝導性充填材(B)の溢出および溶融物の逆流を防ぎつつ、押出機内部の減圧化が十分に達成される。これらの結果、押出機10のシリンダー1内のガスが十分に除去され、溶融物から熱可塑性樹脂(A)中の残留モノマー成分および熱分解物成分を十分に除去することができるため、熱伝導性と耐フォギング性とを十分に高いレベルで両立できるものと考えられる。サイド真空装置12を使用する代わりに、スクリューを有さない一般的な標準装備の真空装置をベント口5に設置して使用すると、本発明の樹脂組成物のように熱伝導性充填材の配合量が多い場合、ベント部分が閉塞してしまい効率的にガスを吸引できない。このため、得られた樹脂組成物の耐フォギング性が悪化する。
【0040】
サイド真空装置12の設置位置X12図1参照)は、押出機10における主ホッパー3から吐出口4までの押出方向距離をY(mm)としたとき、通常、0.5×Y〜0.9×Yの位置であり、耐フォギング性のさらなる向上の観点から、好ましくは0.6×Y〜0.85×Yの位置、より好ましくは0.65×Y〜0.80×Yの位置、さらに好ましくは0.65×Y〜0.75×Yの位置である。
【0041】
押出機10がサイドフィーダー11を有する場合、サイド真空装置12の設置位置は通常、押出方向について、当該サイドフィーダー11の設置位置の下流側である。
【0042】
サイドフィーダー11の設置位置X11図1参照)は、押出機10における主ホッパー3から吐出口4までの押出方向距離をY(mm)としたとき、通常、0.3×Y〜0.7×Yの位置であり、耐フォギング性のさらなる向上の観点から、好ましくは0.35×Y〜0.6×Yの位置、より好ましくは0.40×Y〜0.55×Yの位置、さらに好ましくは0.40×Y〜0.50×Yの位置である。
【0043】
押出機10において、主ホッパー3から吐出口4までの押出方向距離Yは特に限定されず、例えば、500〜50000mm、特に1000〜10000mmであってもよく、好ましくは1000〜5000mmである。
【0044】
サイド真空装置12を使用する場合の減圧度は、耐フォギング性のさらなる向上の観点から、減圧ゲージの数値で、好ましくは−0.06MPa以下であり、さらに好ましくは−0.08MPa以下である。
【0045】
本発明の樹脂組成物の熱伝導率は2.0W/(m・K)以上である必要があり、熱伝導性のさらなる向上の観点から、好ましくは5.0W/(m・K)以上、より好ましくは10.0W/(m・K)以上である。熱伝導率が2W/(m・K)未満の場合、成形体にしたときに十分な放熱効果が得られない場合がある。当該熱伝導率の上限値は特に限定されず、当該熱伝導率は通常、50W/(m・K)以下、特に45W/(m・K)以下である。
【0046】
樹脂組成物の熱伝導率は、当該樹脂組成物を用いて製造された成形体の熱伝導率のことである。詳しくは、樹脂組成物の熱伝導率は、ASTM D790に準拠して、射出成形法により製造された試験片における流動方向(すなわち射出方向)の熱拡散率α、密度ρおよび比熱Cpから算出される、「α×ρ×Cp」に相当する値を用いている。
熱拡散率αは、成形体の流動方向の熱拡散率を測定できる装置であれば、あらゆる装置を用いて測定されてよく、例えば、レーザーフラッシュ法(特に熱定数測定装置TC−7000(アルバック理工社製))を用いて測定することができる。
密度ρは、成形体の密度を測定できる装置であれば、あらゆる装置を用いて測定されてよく、例えば、電子比重計ED−120T(ミラージュ貿易社製)を用いて測定することができる。
比熱Cpは、成形体の比熱を測定できる装置であれば、あらゆる装置を用いて測定されてよく、例えば、示差走査熱量分析法(例えば、DSC―7(パーキンエルマー社製))を用い、昇温速度10℃/分の条件で測定することができる。
【0047】
本発明の樹脂組成物のヘイズ値は8.0以下である必要があり、熱伝導性のさらなる向上の観点から、好ましくは7.5以下、より好ましくは6.5以下である。ヘイズ値が8.0超の場合、成形体にしたときに十分な耐フォギング性が得られない。当該熱ヘイズ値の下限値は特に限定されず、当該ヘイズ値は通常、0.1以上、特に0.5以上である。
【0048】
樹脂組成物のヘイズ値は、当該樹脂組成物を用いて製造された成形体をフォギング試験に供したときのガラス板のヘイズ値のことである。詳しくは、樹脂組成物のヘイズ値は、射出成形法により製造された50mm×15mm×2mm寸法の試験片12個を、ガラス板で蓋をした集気瓶中、125℃の高温環境下で200時間保持するフォギング試験に供したときの、ガラス板におけるヘイズ値の増加分を用いている。
ヘイズ値は、ガラス板のヘイズ値を測定できる装置であれば、あらゆる装置を用いて測定されてよく、例えば、ヘイズメーター(日本電色工業株式会社製Haze Meter NDH2000)を用いて測定することができる。
【0049】
本発明の樹脂組成物は、射出成形、圧縮成形、押出し成形、トランスファー成形、シート成形等の通常公知の溶融成形法を用いて所望の形状に成形して成形体とすることができる。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。実施例および比較例の樹脂組成物の評価に用いた測定法は次のとおりである。
【0051】
A.評価方法
(1)相対粘度
96%硫酸に溶解し、濃度1g/dLの試料溶液を作製した。続いて、ウベローデ型粘度計を用い、25℃の温度で試料溶液および溶媒の落下時間を測定し、以下の式を用いて相対粘度を求めた。
相対粘度=(試料溶液の落下時間)/(溶媒のみの落下時間)
【0052】
(2)密度
電子比重計(京都電子工業社製)を用いて、温度20℃で測定した。
【0053】
(3)流動長
十分に乾燥した樹脂組成物を、幅20mm、厚さ1mmのバーフロー試験金型(スパイラル状)を取り付けた射出成形機(日精樹脂工業社製:NEX110−12E)を用いて10回射出成形して、その平均をバーフロー流動長とした。シリンダー温度、金型温度は、表に記載の温度とし、射出圧力は150MPaとした。樹脂温度が同一条件の下、流動長が長いほど成形流動性がよいことを示す。流動長の評価基準は以下の通りである。
◎:115mm以上(最良);
○:55mm以上115mm未満(良好);
×:55mm未満(実用上問題あり)。
【0054】
(4)曲げ強度、曲げ弾性率
ISO規格178に準拠して測定した。曲げ強度および曲げ弾性率の評価基準は以下の通りである。
・曲げ強度
◎:85MPa以上(最良);
○:75MPa以上85MPa未満(良好);
×:75MPa未満(実用上問題あり)。
・曲げ弾性率
◎:8GPa以上(最良);
○:5.5GPa以上8GPa未満(良好);
×:5.5GPa未満(実用上問題あり)。
【0055】
(5)熱伝導性(成形体の熱伝導率)
熱伝導率λは、熱拡散率α、密度ρおよび比熱Cpを下記方法により求め、その積として次式で算出した。
λ=αρCp
λ:熱伝導率(W/m・K)
α:熱拡散率(m/sec)
ρ:密度(g/m
Cp:比熱(J/g・K)
熱拡散率αは、詳しくは、以下の方法により測定した。ASTM D790に準じて作製した曲げ試験片4本を、当該曲げ試験片と同じ幅および長さ(長手方向長さ)のキャビティを有する専用金型を用いて、樹脂の融点以上の温度で熱プレスにより張り合わせた。この張り合わせたものを、得られる試験片の幅(厚み)方向が射出成形時の流動方向と平行になるように、かつ得られる試験片の幅が1mm〜1.5mmとなるように、切り出した。得られた試験片を用いて樹脂流動方向について、レーザーフラッシュ法に基づく熱定数測定装置TC−7000(アルバック理工社製)にて測定した。ASTM D790では、試験片を射出成形法により作製する。
密度ρは電子比重計ED−120T(ミラージュ貿易社製)およびASTM D790に準拠して作製した曲げ試験片を用いて測定した。
比熱Cpは示差走査熱量計DSC―7(パーキンエルマー社製)およびASTM D790に準拠して作製した曲げ試験片を用い、昇温速度10℃/分の条件で測定した。
以上の方法により流動方向の熱伝導率を算出した。なお、α、ρおよびCpの各々は、10個の試験片の測定値に基づく平均値を用いた。
厚み方向についてはASTM D790に準拠して作製した曲げ試験片を用いて厚み1mm〜1.5mmになるようにサンプルを作製したこと以外、上記の流動方向の熱伝導率の算出方法と同様の方法により、厚み方向の熱伝導率を算出した。
流動方向の熱伝導率を以下の基準に基づいて評価した。
◎:10.0以上(最良);
○:5.0以上10.0未満(良好);
△:2.0以上5.0未満(実用上問題なし);
×:2.0未満(実用上問題あり)。
【0056】
(6)耐フォギング性
十分に乾燥された樹脂組成物を、射出成形機(日精樹脂工業社製:NEX110−12E)を用いて50mm×90mm×2mm厚みの寸法のプレート成形体を成形した。得られた成形体2枚をそれぞれ6等分(15mm幅)に切断し、試料片を得た。図2Aに示すように、試料片21を集気瓶22の中に入れ、これを、125℃に加熱されたシリコーンオイル23を収容したオイルバス24の中に、集気瓶の高さ方向の8割ほどの高さまでつかるように設置し、厚み2mmのガラス板25で集気瓶の口部分に蓋をした。ガラス板は80mm×80mm×2mm厚みの寸法を有していた。集気瓶は、図2Bに示すように、底面直径85mm、高さ150mm、口部分内径50mmの寸法を有していた。ガラス板は集気瓶の口部分が完全に覆われるサイズであれば特に限定されない。また、密着性を上げるために集気瓶の口部分にグリースを塗布してもよい。
この状態で200時間放置したあと、ガラス板を集気瓶から外し十分に冷却した。十分に冷却ができたら、ガラス板の集気瓶を蓋していた部分における任意の10点のヘイズ値をヘイズメーター(日本電色工業株式会社製Haze Meter NDH2000)で測定した。これらの測定値の平均値をヘイズ値Aとした。蓋として使用する前のガラス板における任意の10点のヘイズ値の平均値は0.1であり、この平均値をヘイズ値Bとした。「ヘイズ値A−ヘイズ値B」の値を以下の基準に基づいて評価した。
◎:6.5以下(最良);
○:6.5超7.5以下(良好);
△:7.5超8.0以下(実用上問題なし);
×:8.0超(実用上問題あり)。
【0057】
B.原料
本発明の実施例と比較例で用いた原料を以下に示す。
(1)熱可塑性樹脂(A)
・PA6:ポリアミド6(相対粘度2.6、密度1.13g/cm
・PA66:ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の重合によって得られるポリアミド66樹脂(相対粘度2.8、密度1.14g/cm
・非晶PA:非晶ポリアミド(イソフタル酸/テレフタル酸/1,6−ヘキサメチレンジアミン共縮合体 、EMS社製 G21、密度1.18g/cm
【0058】
(2)熱伝導性充填材(B)
・GrA:鱗片状黒鉛(平均粒径130μm、熱伝導率100W/m・K、密度2.25g/cm
・GrB:鱗片状黒鉛(平均粒径40μm、熱伝導率100W/m・K、密度2.25g/cm
・TC:鱗片状タルク(平均粒子径25μm、熱伝導率5〜10W/(m・K)、密度2.70g/cm
【0059】
(3)繊維状充填材(C)
・GF:ガラス繊維(日本電気硝子社製T−262H、平均繊維径11μm、平均繊維長3mm)
【0060】
実施例1
ポリアミド6樹脂(PA6)60質量部と鱗片状黒鉛(GrA)40質量部を、図1に示すように、軸押出機(東芝機械製:TEM26SS、スクリュー径26mm、主ホッパー3から吐出口4までの押出方向距離Y=1380mm)10の主ホッパー3に供給し、260℃で溶融および混練した。その際、サイド真空装置12を1ヶ所で用いた。サイド真空装置12は、上記したように、内部に有するスクリューが回転することで、押出機10からの溶融物の逆流を防ぎながら、押出機10内の減圧化を達成する装置である。サイド真空装置12における減圧度は減圧ゲージの数値で−0.07MPaであった。サイド真空装置12の設置位置X12図1参照)は、押出機10における主ホッパー3から吐出口4までの押出方向距離をY(mm)としたとき、0.70×Yの位置であった。溶融物を十分に溶融および混練しストランド状に押出して冷却固化した後、それをペレタイザーでカッティングして樹脂組成物のペレットを得た。
曲げ強度、熱伝導性および耐フォギング性の評価のために、得られたペレットを、日精樹脂社製の成形機(NEX110−12E)により、上記した所定の形状に成形した。
他の評価および測定のためには、樹脂組成物のペレットを用いた。
【0061】
実施例2〜14および比較例1〜6
樹脂組成、混練条件、成形条件およびサイド真空装置(有無)を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様の操作をおこなって、樹脂組成物のペレットを得た。
繊維状強化材(C)を供給する場合、繊維状強化材(C)は、溶融および混練の途中のサイドフィーダー(図1中、「11」)により供給した。サイドフィーダー11の設置位置X11図1参照)は、押出機10における主ホッパー3から吐出口4までの押出方向距離をY(mm)としたとき、0.45×Yの位置であった。
繊維状強化材(C)を供給する場合、サイド真空装置12の設置位置X12図1参照)は、押出機10の押出方向において、サイドフィーダーの設置位置X11より下流側であり、詳しくは、押出機10における主ホッパー3から吐出口4までの押出方向距離をY(mm)としたとき、0.70×Yの位置であった。
サイド真空装置を使用しない場合は、スクリューを有さない一般的な標準装備の真空装置をベント口5に設置して使用した。
【0062】
実施例1から14の樹脂組成物は本発明の要件を満たしているため、熱伝導率が2W/(m・K)以上であり、かつ、耐フォギング性に優れた成形体を得ることができた。実施例4から6、実施例8から10および実施例13は繊維状補強材であるガラス繊維を含有しており配合量が適切なため、曲げ特性に優れていた。
【0063】
実施例8から10は非晶性ポリアミドを配合しているため、非晶性ポリアミドを含まない実施例4と比較してフォギング試験によるヘイズ値が小さかった。
【0064】
実施例8から9と実施例10を比較すると、実施例10は非晶性ポリアミドの質量比が多いため成形流動性が低下していることが分かる。
【0065】
実施例14は繊維状補強材が多く含有されているため、曲げ特性は高くなったが、成形流動性は低下した。
【0066】
比較例1および比較例4〜6はサイド真空装置を使用していなかったため、フォギング試験後のヘイズ値が高かった。
【0067】
比較例2は熱伝導性充填材の質量比が本発明の範囲より大きいため、フォギング試験後のヘイズ値が高く、成形流動性も低下した。
比較例3は熱伝導性充填材の質量比が本発明の範囲より小さかったため十分な熱伝導率が得られなかった。
【0068】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の樹脂組成物を成形してなる成形体の具体例としては、例えば、ソケット、リレー部品、コイルボビン、光ピックアップ、発振子、コンピュータ関連部品等の電気・電子部品;VTR、テレビ、アイロン、エアコン、ステレオ、掃除機、冷蔵庫、炊飯器、照明器具等の家庭電気製品部品;放熱シートやヒートシンク、ファン等の電子部品からの熱を外部に逃すための放熱部材;ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング等の照明器具部品;コンパクトディスク、レーザーディスク(登録商標)、スピーカー等の音響製品部品;光ケーブル用フェルール、携帯電話機、固定電話機、ファクシミリ、モデム等の通信機器部品;分離爪、ヒータホルダー等の複写機・印刷機の関連部品;インペラー、ファン歯車、ギヤ、軸受け、モーター部品及びケース等の機械部品・自動車用機構部品;エンジン部品、エンジンルーム内部品、電装部品、内装部品等の自動車部品;マイクロ波調理用鍋、耐熱食器等の調理用器具;航空機・宇宙機における宇宙機器用部品・センサー類部品が挙げられる。
図1
図2A
図2B
【手続補正書】
【提出日】2020年11月4日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂(A)および熱伝導性充填材(B)を含有する熱伝導性樹脂組成物であって、
前記熱可塑性樹脂(A)と前記熱伝導性充填材(B)との質量比率が38/62〜85/15であり、
125℃で200時間のフォギング試験後のガラス板のヘイズ値が8以下であり、
前記熱伝導性樹脂組成物を成形してなる成形体の流動方向の熱伝導率が2W/(m・K)以上である、熱伝導性樹脂組成物。
【請求項2】
前記熱伝導性充填材(B)が、タルク、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボン、黒鉛、銀、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、錫、鉄、およびステンレスからなる群から選択される1種以上の材料である、請求項1に記載の熱伝導性樹脂組成物。
【請求項3】
前記熱伝導性樹脂組成物がさらに、非熱伝導性繊維状強化材(C)を含有するか、または含有せず、前記熱可塑性樹脂(A)および前記熱伝導性充填材(B)の合計と前記非熱伝導性繊維状強化材(C)との質量比率が100/0〜50/50である、請求項1または2に記載の熱伝導性樹脂組成物。
【請求項4】
前記非熱伝導性繊維状強化材(C)が、ガラス繊維である、請求項3に記載の熱伝導性樹脂組成物。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂(A)がポリアミドである、請求項1〜4のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂(A)が、結晶性ポリアミド単独または結晶性ポリアミドと非晶性ポリアミドの混合物からなり、前記結晶性ポリアミドと前記非晶性ポリアミドとの質量比率が100/0〜40/60である、請求項1〜5のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂(A)と前記熱伝導性充填材(B)との質量比率が38/62〜75/25であり、
前記熱伝導性充填材(B)が黒鉛である、請求項1〜6のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂(A)と前記熱伝導性充填材(B)との質量比率が45/55〜70/30であり、
前記熱伝導性充填材(B)が平均粒径80〜180μmの鱗片状黒鉛であり、
前記熱伝導性樹脂組成物がさらに、非熱伝導性繊維状強化材(C)を含有するか、または含有せず
前記熱可塑性樹脂(A)および前記熱伝導性充填材(B)の合計と前記非熱伝導性繊維状強化材(C)との質量比率が100/0〜75/25である、請求項1〜7のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
【請求項9】
前記熱可塑性樹脂(A)および前記熱伝導性充填材(B)を押出機により溶融および混練する際に、サイド真空装置を用いて、前記押出機内部を真空引きすることにより製造される、請求項1〜8のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
【請求項10】
前記サイド真空装置はシリンダーおよび該シリンダー内部に配置されたスクリューを有し、該スクリューが回転することで、前記押出機からの溶融物の逆流を防ぎながら、前記押出機内部の減圧化を行う、請求項9に記載の熱伝導性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物からなる成形体。
【手続補正書】
【提出日】2021年3月17日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂(A)および熱伝導性充填材(B)を含有する熱伝導性樹脂組成物であって、
前記熱可塑性樹脂(A)がポリアミドであり、
前記熱可塑性樹脂(A)と前記熱伝導性充填材(B)との質量比率が38/62〜85/15であり、
125℃で200時間のフォギング試験後のガラス板のヘイズ値が8以下であり、
前記熱伝導性樹脂組成物を成形してなる成形体の流動方向の熱伝導率が2W/(m・K)以上である、熱伝導性樹脂組成物。
【請求項2】
前記熱伝導性充填材(B)が、タルク、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボン、黒鉛、銀、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、錫、鉄、およびステンレスからなる群から選択される1種以上の材料である、請求項1に記載の熱伝導性樹脂組成物。
【請求項3】
前記熱伝導性樹脂組成物がさらに、非熱伝導性繊維状強化材(C)を含有するか、または含有せず、前記熱可塑性樹脂(A)および前記熱伝導性充填材(B)の合計と前記非熱伝導性繊維状強化材(C)との質量比率が100/0〜50/50である、請求項1または2に記載の熱伝導性樹脂組成物。
【請求項4】
前記非熱伝導性繊維状強化材(C)が、ガラス繊維である、請求項3に記載の熱伝導性樹脂組成物。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂(A)が、結晶性ポリアミド単独または結晶性ポリアミドと非晶性ポリアミドの混合物からなり、前記結晶性ポリアミドと前記非晶性ポリアミドとの質量比率が100/0〜40/60である、請求項1〜のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂(A)と前記熱伝導性充填材(B)との質量比率が38/62〜75/25であり、
前記熱伝導性充填材(B)が黒鉛である、請求項1〜のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂(A)と前記熱伝導性充填材(B)との質量比率が45/55〜70/30であり、
前記熱伝導性充填材(B)が平均粒径80〜180μmの鱗片状黒鉛であり、
前記熱伝導性樹脂組成物がさらに、非熱伝導性繊維状強化材(C)を含有するか、または含有せず、
前記熱可塑性樹脂(A)および前記熱伝導性充填材(B)の合計と前記非熱伝導性繊維状強化材(C)との質量比率が100/0〜75/25である、請求項1〜のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物からなる成形体