【解決手段】内容物の供給口部を有する水不溶性の容器10を、前記供給口部を下向きに設置し、前記供給口部へ水が噴射されて内容物を溶かしながら供給する方式の自動洗浄機用のカートリッジ洗浄剤であって、前記容器は、容器本体と中蓋体32と外蓋体とからなり、前記容器本体には、塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の一方が偏在している部分21を有する固形洗浄剤組成物20が収容されており、前記中蓋体には、塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の他方が収容されており、前記容器本体と前記中蓋体との間には、前記容器本体に収容されている固形洗浄剤組成物、又は、前記中蓋体に収容されている塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の他方の移動を防止する仕切りが設けられていることを特徴とするカートリッジ洗浄剤。
前記洗浄システムは、前記固形洗浄剤組成物中の塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の一方を含む洗浄液を供給する前に、前記塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の他方を含む洗浄液を供給するように構成されている請求項1に記載の洗浄システム。
洗浄助剤(B)は、酵素、キレート剤、酸素系漂白剤、漂白活性化剤、除菌剤、ペルオキソ一硫酸水素カリウム製剤、高分子分散剤、及び、界面活性剤からなる群より選択された少なくとも1種の化合物を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の洗浄システム。
内容物の供給口部を有する水不溶性の容器を、前記供給口部を下向きに設置し、前記供給口部へ水が噴射されて内容物を溶かしながら供給する方式の自動洗浄機用のカートリッジ洗浄剤であって、
前記容器は、容器本体と中蓋体と外蓋体とからなり、
前記容器本体には、塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の一方が偏在している部分を有する固形洗浄剤組成物が収容されており、
前記中蓋体には、塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の他方が収容されており、前記容器本体と前記中蓋体との間には、前記容器本体に収容されている固形洗浄剤組成物、又は、前記中蓋体に収容されている塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の他方の移動を防止する仕切りが設けられていることを特徴とするカートリッジ洗浄剤。
前記中蓋体は、噴射水を通過させるための貫通孔が形成されるとともに、前記塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の他方を載置するための載置部を備え、前記戴置部には、洗浄液を容器外へ排水する開口部が形成されるとともに、前記塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の他方を前記中蓋体の内部に保持するための前記載置部を覆うカバー部を備えており、
前記外蓋体は、使用時まで容器内外の空間を遮断し、使用時に取り外すように構成され、フィルム状部材又は硬質部材からなる請求項7に記載のカートリッジ洗浄剤。
請求項1〜6のいずれかに記載の洗浄システム又は請求項7〜11のいずれかに記載のカートリッジ洗浄剤を使用して自動洗浄機内の菌や菌叢を除去することを特徴とする微生物の除菌方法又は菌叢凝塊の除去方法。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の洗浄システムは、固形洗浄剤組成物を含む洗浄システムであって、該固形洗浄剤組成物は、塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の一方が偏在している部分を有し、該洗浄システムは、固形洗浄剤組成物とは別に塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の他方を含むことを特徴とする。
本発明の洗浄システムは、通常、自動洗浄機に洗浄液を供給するために使用される。
本発明の洗浄システムが使用される自動洗浄機は特に限定されないが、例えば、スプレー式自動洗浄機等が挙げられる。スプレー式自動洗浄機として、例えば、自動食器洗浄機、コンテナ洗浄機等が挙げられる。中でも、本発明の洗浄システムは、自動食器洗浄機用に好適に使用される。
【0037】
以下、本発明の洗浄システムについて説明する。
本明細書中、本発明の洗浄システムにおける固形洗浄剤組成物等の各成分の含量(質量%)は、特に断らない場合には固形洗浄剤組成物中の純分(固形分)の含量である。
【0038】
本発明の洗浄システムが含む固形洗浄剤組成物は、塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の一方が偏在している部分を有する。塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の一方が偏在している部分を有するとは、塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の一方の質量割合が固形洗浄剤組成物中の塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の一方の平均含有割合よりも高い部分を有することを言う。例えば、本発明の固形洗浄剤組成物に、塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の一方が偏在している部分が埋め込まれていてもよい。
塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の一方が偏在している部分を有する上記固形洗浄剤組成物であれば、洗浄液中の塩素剤(A)又は洗浄助剤(B)の濃度に極大が生じることになり、塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の一方が高い濃度の洗浄液で1回以上は洗浄することになるので、塩素剤(A)による高い洗浄、除菌、漂白効果を発揮したり、洗浄助剤(B)固有の効果を発揮したりすることができる。このような固形洗浄剤組成物を、本発明の洗浄システム(有効成分として塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の両方を含む洗浄システム)に適用すると、洗浄助剤(B)を塩素剤(A)から隔離して配し、相性の悪い両成分の活性をそれぞれ維持したまま洗浄機に供給でき、塩素剤(A)による高い洗浄、除菌、漂白効果と、洗浄助剤(B)固有の効果とを両立できる。
【0039】
上記固形洗浄剤組成物において、塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の一方が偏在している部分は、1つだけであってもよく、複数あってもよい。
上記固形洗浄剤組成物において、塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の一方が偏在している部分は、当該部分中、塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の一方の含有割合が、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが更に好ましく、50質量%以上であることが特に好ましい。該含有割合は、100質量%であってもよい。
なお、塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の一方が2種以上含まれる場合、塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の一方の含有割合は、各塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の一方の含有量の合計として定める。
【0040】
上記固形洗浄剤組成物において、塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の一方が偏在していない部分は、当該部分中、塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の一方の含有割合が、3質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが更に好ましく、実質的に0質量%であることが特に好ましい。
【0041】
上記固形洗浄剤組成物において、塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の一方が偏在している部分は、その他の部分(塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の一方が偏在していない部分)に対して、塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の一方の含有割合の差が10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが更に好ましく、50質量%以上であることが特に好ましい。
【0042】
上記固形洗浄剤組成物は、洗浄対象物に与えるダメージをより少なくしたり、コストを削減したりする観点からは、本発明の洗浄システムが含む全洗浄成分100質量%中、塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の一方の含有割合(平均含有割合)が20質量%以下であることが好ましく、12質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましく、5質量%以下であることが特に好ましい。
また上記塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の一方の含有割合(平均含有割合)は、塩素剤(A)により洗浄対象物に蓄積した汚れや雑菌をより充分に除去したり、洗浄助剤(B)固有の効果をより充分に発揮したりする観点からは、本発明の洗浄システムが含む全洗浄成分100質量%中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましく、0.3質量%以上であることが更に好ましい。
なお、本発明の洗浄システムが含む全洗浄成分とは、通常、本発明の洗浄システムが洗浄成分として含む、上記固形洗浄剤組成物、及び、当該固形洗浄剤組成物とは別の上記塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の他方をいう。上述した塩素剤(A)の含有割合は、塩素含有化合物の含有割合をいい、上述した洗浄助剤(B)の含有割合は、酵素等の有効成分の含有割合をいう。
【0043】
上記固形洗浄剤組成物は、本発明の洗浄システムが含む全洗浄成分100質量%中、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましい。また、上記固形洗浄剤組成物は、本発明の洗浄システムが含む全洗浄成分100質量%中、99.9質量%以下であることが好ましく、99.8質量%以下であることがより好ましく、99.7質量%以下であることが更に好ましい。
【0044】
上記固形洗浄剤組成物では、塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の一方が偏在している部分の形状は、特に限定されず、層状であってもよく、ブロック状であってもよく、柱状であってもよく、球状であってもよく、その他の形状であってもよい。
【0045】
塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の一方が偏在している部分と、その他の部分との境界線の形状は、特に限定されず、例えば直線状であってもよく、アーチ状等の曲線状であってもよく、ジグザグ状であってもよい。また、境界線付近において、これら2部分の成分同士が部分的に混ざり合っていても構わない。境界線の形状や境界線付近の組成に関わらず、塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の一方が偏在している部分を有する上記固形洗浄剤組成物であれば、洗浄液中の塩素濃度又は洗浄助剤濃度に極大・極小が生じることになり、その結果、上述した本発明の効果を発揮できる。
【0046】
本発明の洗浄システムは、上述したように、固形洗浄剤組成物とは別に塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の他方を含む。
本発明の洗浄システムにおいて固形洗浄剤組成物とは別に含まれる塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の他方中の有効成分(塩素含有化合物や、酵素、キレート剤、酸素系漂白剤、漂白活性化剤、除菌剤、ペルオキソ一硫酸水素カリウム製剤、高分子分散剤、及び、界面活性剤からなる群より選択された少なくとも1種の化合物)は、本発明の洗浄システムが含む全洗浄成分100質量%に対して、0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、0.2質量%以上であることが更に好ましい。また、当該塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の他方中の有効成分は、本発明の洗浄システムが含む全洗浄成分100質量%に対して、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが更に好ましく、2質量%以下であることが特に好ましい。
【0047】
本発明の洗浄システムにおいて固形洗浄剤組成物とは別に含まれる剤中の有効成分は、10質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが更に好ましい。
該有効成分は、その上限値は特に限定されず、100質量%であってもよい。
【0048】
上記塩素剤(A)としては、ジクロロイソシアヌル酸(塩素化イソシアヌル酸)塩(ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム(塩素化イソシアヌル酸ナトリウム)、ジクロロイソシアヌル酸カリウム(塩素化イソシアヌル酸カリウム)等)、トリクロロイソシアヌル酸、次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸カルシウム等)等が挙げられる。これらの塩素剤(A)は、水和物であってもよい。中でも、塩素剤(A)として、ジクロロイソシアヌル酸塩、トリクロロイソシアヌル酸、次亜塩素酸塩が好ましい。ジクロロイソシアヌル酸塩として、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムが好ましい。塩素剤(A)は、1種の塩素剤(A)であってもよく、2種以上の塩素剤(A)の組合せであってもよい。なお、後記する除菌剤として例示される化合物は、本発明における塩素剤(A)には含まれない。
【0049】
上記塩素剤(A)は、上記の塩素剤に結合剤等を加えて、打錠又は造粒すること等により錠剤化されたものであってもよく、粉末であってもよく、上記の塩素剤が被覆剤によって被覆された被覆塩素剤であってもよい。
被覆剤としては、例えばカルボン酸塩、ケイ酸塩が挙げられる。
カルボン酸塩としては、芳香族カルボン酸塩、非環状ジカルボン酸塩、炭素数1〜7の非環状モノカルボン酸塩等が挙げられる。
芳香族カルボン酸塩としては、例えば、安息香酸、サリチル酸、3−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸、ケイ皮酸、o−トルイル酸、m−トルイル酸、p−トルイル酸、o−フタル酸、m−フタル酸、p−フタル酸、フェニル酢酸、2−フェニルプロピオン酸、フェノキシ酢酸、フェニルピルビン酸、o−t−ブチル安息香酸、m−t−ブチル安息香酸、p−t−ブチル安息香酸、3,5−ジ−t−ブチル安息香酸、3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸、o−ベンゾイル安息香酸、m−ベンゾイル安息香酸、p−ベンゾイル安息香酸、アントラニル酸、1−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸、1,2−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2−ヒドロキシフェニル酢酸、3−ヒドロキシフェニル酢酸、4−ヒドロキシフェニル酢酸、D−マンデル酸、L−マンデル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、2−メトキシフェニル酢酸、3−メトキシフェニル酢酸、4−メトキシフェニル酢酸等の芳香族カルボン酸の塩が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0050】
非環状ジカルボン酸塩としては、コハク酸塩、グルタル酸塩、アジピン酸塩、スベリン酸塩、アゼライン酸塩、セバシン酸塩、ウンデカン二酸塩、ドデカン二酸塩、テトラデカン二酸塩等が挙げられる。
炭素数1〜7の非環状モノカルボン酸塩としては、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、吉草酸塩、ヘキサン酸塩、ヘプタン酸塩等が挙げられる。
【0051】
ケイ酸塩としては、オルソケイ酸塩、メタケイ酸塩、メタ二ケイ酸塩等が挙げられる。
【0052】
中でも、安全性、塩素剤との非反応性、被覆剤として成形のしやすさ等から、安息香酸塩、o−フタル酸塩、m−フタル酸塩、p−フタル酸塩、トリメリット酸塩、p−t−ブチル安息香酸塩、及び、メタケイ酸塩からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、安息香酸塩がより好ましい。安息香酸塩は、塩素剤に対する安定性が良好であるため、安息香酸塩を含む被覆剤で被覆された被覆塩素剤を使用すると、固形洗浄剤組成物を保管中等に上記塩素剤等の分解を効果的に防止することができ、有効塩素量の低下や、洗浄力や除菌力の低下を抑制することができる。また、安息香酸塩は速溶性に優れることから、固形洗浄剤組成物を使用して洗浄する際に、良好な洗浄力及び除菌力を発揮することができる。更に、安息香酸塩は、泡立ちが少なく、例えば自動洗浄機で使用する際に洗浄効率を低下させにくい。
安息香酸塩として、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸カルシウム、安息香酸マグネシウム等が挙げられ、溶解性の観点から、好ましくは安息香酸ナトリウムである。
【0053】
上記塩素剤及び被覆剤における塩としては、例えば、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属の塩、マグネシウム塩や、カルシウム等のアルカリ土類金属の塩を挙げることができる。中でも、アルカリ金属の塩が好ましく、ナトリウム塩、カリウム塩がより好ましい。
【0054】
塩素剤/被覆剤の重量比は、例えば、1〜9が好ましく、1.5〜4がより好ましい。塩素剤を被覆する方法は特に限定されない。例えば、固体の塩素剤に、安息香酸塩を水、メタノール、エタノール、エーテル等の溶媒に溶解又は懸濁させた液を噴霧し、乾燥させて被覆する方法;固体の塩素剤に安息香酸塩微粉末を混ぜ水等の結合剤を噴霧し被覆する方法等が挙げられる。塩素剤を打錠する方法、造粒する方法は特に限定されない。例えば、塩素剤に結合剤等を加えて、打錠又は造粒することができる。
【0055】
上記塩素剤(A)の比重は、特に限定されないが、例えば1.0〜2.0g/cm
3であることが好ましい。
【0056】
上記洗浄助剤(B)は、一般的に洗浄工程の初期段階において供給されることによって効果を発揮する成分であり、洗浄工程の初期段階に供給されることが好ましいが、例えば、上記固形洗浄剤組成物中に含まれることにより、洗浄工程の後半に供給されても構わない。
洗浄助剤(B)に含まれる成分(有効成分)の例としては、酵素、キレート剤、酸素系漂白剤、漂白活性化剤、除菌剤、ペルオキソ一硫酸水素カリウム製剤、高分子分散剤、及び、界面活性剤が挙げられる。
以下、各洗浄助剤(B)の更なる具体例及び各洗浄助剤(B)を使用することにより得られる効果について説明する。
【0057】
洗浄助剤(B)に含まれる成分が酵素である場合、酵素の例としては、アミラーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ等が好ましい。これらの酵素のうち1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
洗浄助剤(B)として酵素を使用すると、食器特有の有機物汚れに対する洗浄液の洗浄力を更に高め、食器から取り除くことができる。また、自動洗浄機の内面に付着した有機物を分解除去することができる。更に、洗浄液中の有機物を分解することができる。
【0058】
洗浄助剤(B)に含まれる成分がキレート剤である場合、キレート剤の例としては、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸(HEDTA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、エチレンジアミンコハク酸(EDDS)、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIDA)、グルタミン酸二酢酸(GLDA)、メチルグリシン二酢酸(MGDA)、アスパラギン酸二酢酸(ASDA)、トリポリリン酸、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸,グルコン酸及びこれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)等が好ましい。これらのキレート剤のうち1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
洗浄助剤(B)としてキレート剤を使用すると、自動洗浄機の内面に付着したスケールを除去することができる。また、洗浄液の洗浄力を更に高め、洗浄工程の初期段階でミネラル汚れや乳成分汚れ、口紅汚れを食器から取り除くことができる。
【0059】
洗浄助剤(B)に含まれる成分が酸素系漂白剤である場合、酸素系漂白剤の例としては、過炭酸ナトリウムが挙げられる。
洗浄助剤(B)として酸素系漂白剤を使用すると、自動洗浄機の内面に付着した有機物を分解除去することができる。また、洗浄液の洗浄力を更に高め、色素汚れ、有機物汚れを食器から取り除くことができる。
【0060】
洗浄助剤(B)に含まれる成分が漂白活性化剤である場合、漂白活性化剤の例としては、テトラアセチルエチレンジアミン(TAED)、ノナノイルオキシベンゼンスルホン酸(NOBS)、デカノイルオキシ安息香酸(DOBA)、ペンタアセチルグルコース(PAG)が挙げられる。
洗浄助剤(B)として漂白活性化剤を使用すると、特に酸素系漂白剤を含む洗浄剤と組み合わせた場合に、自動洗浄機の内面に付着した有機物を分解除去することができる。また、洗浄液の洗浄力を更に高め、洗浄工程の初期段階で色素汚れ、有機物汚れを食器から取り除くことができる。
【0061】
洗浄助剤(B)に含まれる成分が除菌剤である場合、除菌剤の例としては、アルキルイミダゾリン、ビグアナイド誘導体(ポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩等)、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、アルキルジアミノエチルグリシン塩酸塩、アルキルジアミノエチルグリシンナトリウム、ベンズイソチアゾロン、2−(チオシアノメチルチオ)ベンズチアゾール、パラベン等が挙げられる。これらの除菌剤のうち1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
洗浄助剤(B)として除菌剤を使用すると、自動洗浄機の内面に付着した微生物を除菌し、増殖を抑えることができる。また、洗浄液中の微生物を除菌し、増殖を抑えることができる。
【0062】
ペルオキソ一硫酸水素カリウム製剤は、ペルオキソ一硫酸水素カリウムと塩化ナトリウムの混合物であり、水があるとペルオキソ一硫酸水素カリウムと塩化ナトリウムが反応して次亜塩素酸を発生し、次亜塩素酸による除菌、漂白作用が発揮される。
洗浄助剤(B)としてペルオキソ一硫酸水素カリウム製剤を使用すると、自動洗浄機の内面に付着した有機物を分解除去することができる。また、洗浄液の洗浄力を更に高め、洗浄工程の初期段階において色素汚れ、有機物汚れを食器から取り除くことができる。
【0063】
洗浄助剤(B)に含まれる成分が高分子分散剤である場合、高分子分散剤の例としては、ポリアクリル酸、ポリアコニット酸、ポリイタコン酸、ポリシトラコン酸、ポリフマル酸、ポリマレイン酸、ポリメタコン酸、ポリ−α−ヒドロキシアクリル酸、ポリビニルホスホン酸、スルホン化ポリマレイン酸、無水マレイン酸ジイソブチレン共重合体、無水マレイン酸スチレン共重合体、無水マレイン酸メチルビニルエーテル共重合体、無水マレイン酸エチレン共重合体、無水マレイン酸エチレンクロスリンク共重合体、無水マレイン酸アクリル酸共重合体、無水マレイン酸酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸アクリロニトリル共重合体、無水マレイン酸アクリル酸エステル共重合体、無水マレイン酸ブタジエン共重合体、無水マレイン酸イソプレン共重合体、無水マレイン酸と一酸化炭素から誘導されるポリ−β−ケトカルボン酸、イタコン酸、エチレン共重合体、イタコン酸アコニット酸共重合体、イタコン酸マレイン酸共重合体、イタコン酸アクリル酸共重合体、マロン酸メチレン共重合体、イタコン酸フマール酸共重合体、エチレングリコールエチレンテレフタレート共重合体、ビニルピロリドン酢酸ビニル共重合体、これらの金属塩等があげられる。これらの高分子分散剤のうち1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
洗浄助剤(B)として高分子分散剤を使用すると、自動洗浄機の内面にスケールが生じるのを抑制することができる。また、洗浄液の洗浄力を更に高め、微粒子汚れを食器から取り除くことができる。更に、汚れを洗浄液中にとりこみやすくし、洗浄液中に移行した汚れが食器に再付着するのを防ぐことができる。
【0064】
洗浄助剤(B)に含まれる成分が界面活性剤である場合、界面活性剤としては、特に限定されず、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤を使用できる。
カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチル塩化ベンザルコニウム等が挙げられる。ハロゲン化物、とくに塩化物、臭化物が好ましい。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、プルロニック型ブロックポリマー、リバースプルロニック型ブロックポリマー、テトロニック型ブロックポリマー、リバーステトロニック型ブロックポリマー、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシアルキレン脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルポリグリコシド、ポリオキシエチレンメチルエーテル脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルアミン等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルカンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホメチルエステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルコハク酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、アルキルアミノベタイン、アルキルアミドベタイン、アルキルアミノスルホベタイン等が挙げられる。
これらの界面活性剤のうち1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
洗浄助剤(B)として界面活性剤を使用すると、自動洗浄機の内面に付着した汚れを除去することができる。また、洗浄液の洗浄力を更に高め、微粒子汚れや油脂汚れを食器から取り除くことができる。
界面活性剤は、例えば、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤が好ましい。これにより、洗浄液の洗浄力を一層高めることができる。
また界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤もまた好ましい。これにより、優れた除菌効果も発揮することができる。
【0065】
上記固形洗浄剤組成物は、更に、層(a)及び層(b)を含んで構成され、該層(b)内に前記塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の一方が偏在している部分を有することが好ましい。
なお、上記層(b)内において、塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の一方が均一に分散していてもよい。
内容物の供給口部を下向きに設置し、当該供給口部へ水が噴射されて内容物を溶かしながら供給する方式の自動洗浄機用のカートリッジ洗浄剤において、このような固形洗浄剤組成物を、層(a)側が下向きとなるように設置することで、層(b)内の上記塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の一方を洗浄工程の後半で供給することになる。これにより、塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)が洗浄液中で混ざり合って失活することを充分に防止することができ、塩素剤(A)による高い洗浄、除菌、漂白効果と、洗浄助剤(B)固有の効果とをより一層両立できる。
【0066】
上記固形洗浄剤組成物において、上記層(a)は、平均厚みが5mm以上、300mm以下であることが好ましく、10mm以上、200mm以下であることがより好ましく、20mm以上、150mm以下であることが更に好ましく、40mm以上、120mm以下であることが特に好ましい。
また上記固形洗浄剤組成物において、上記層(b)は、平均厚みが3mm以上、300mm以下であることが好ましく、5mm以上、200mm以下であることがより好ましく、10mm以上、150mm以下であることが更に好ましく、20mm以上、120mm以下であることが特に好ましい。
上記固形洗浄剤組成物における底面積(平均底面積)は、特に限定されないが、例えば10000〜1000000mm
2の範囲内とすることができる。
なお、上記固形洗浄剤組成物における各層の平均厚みに関しては、上記底面積の大きさに応じて適宜調整することができる。
上記固形洗浄剤組成物の形状は、特に限定されないが、円柱形状、直方体形状等の底面積が一定の形状とすることが簡便である。
【0067】
層(a)と、層(b)の、塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の一方が偏在している部分以外の組成は、同じであってもよく、異なっていてもよいが、異なっていることが好ましい。例えば、溶解して酵素と共に供給されることになる層の組成は、溶解した際に中性ないしアルカリ性又は酵素の活性が高まるようなpHとなる組成とし、溶解して塩素剤(A)とともに供給されることになる層の組成は、溶解した際にpH12を超えるアルカリ性となる組成とすることができる。
【0068】
上記固形洗浄剤組成物において、上記固形洗浄剤組成物の層(a)を洗浄剤組成物の濃度が0.10質量%となるように水に溶解した際のpHが、5以上、14以下であることが好ましい。当該pHは、6以上であることがより好ましい。
【0069】
上記固形洗浄剤組成物において、上記層(b)内に上記塩素剤(A)が偏在している部分を含有し、上記層(b)を洗浄剤組成物の濃度が0.10質量%となるように水に溶解した際のpHが、9以上であることが好ましい。当該pHは、10以上、14以下であることがより好ましく、10以上、13以下であることが特に好ましい。
上記pHは、堀場製作所製、D−21型のpHメーターを用いて測定することができる。
【0070】
本発明の洗浄システムは、上記塩素剤(A)、上記洗浄助剤(B)におけるその他の成分として、また、塩素剤(A)、洗浄助剤(B)以外の固形洗浄剤組成物部分において、例えば、アルカリ剤、防食剤等を含んでいてもよい。また、塩素剤(A)、洗浄助剤(B)以外の固形洗浄剤組成物部分において、上述した塩素剤(A)、洗浄助剤(B)の構成成分を一部含んでいてもよい。
【0071】
本発明の洗浄システムがアルカリ剤を含有すると、油汚れ等に対する洗浄力が向上するため好ましい。
アルカリ剤としては、水溶性のアルカリ剤であればよく、例えば、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を用いることができる。アルカリ金属塩としては、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属のリン酸塩、アルカリ金属の炭酸塩及びケイ酸のアルカリ金属塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物が好ましく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;リン酸三ナトリウム等のアルカリ金属のリン酸塩;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;ケイ酸ナトリウム(メタケイ酸ナトリウム、セスキケイ酸ナトリウム、オルソケイ酸ナトリウム、ケイ酸ソーダ1号、ケイ酸ソーダ2号、ケイ酸ソーダ3号、ケイ酸ソーダ4号)、ケイ酸カリウム(メタケイ酸カリウム、セスキケイ酸カリウム、オルソケイ酸カリウム)等のケイ酸のアルカリ金属塩が好ましい。これらのアルカリ剤は、水和物となっていてもよい。中でも、アルカリ金属の水酸化物、ケイ酸のアルカリ金属塩がより好ましく、ケイ酸のアルカリ金属塩が更に好ましい。
なお、本明細書中、炭酸塩を、賦形剤ともいう。
【0072】
本発明の洗浄システムにおける固形洗浄剤組成物がアルカリ剤を含有する場合、アルカリ剤の含有量は、固形洗浄剤組成物全体に対して5〜85質量%であることが好ましい。アルカリ剤の含有量が上記範囲であると、洗浄力がより高くなる。上記アルカリ剤の含有量は、好ましくは10〜70質量%である。アルカリ剤が2種以上含まれる場合、上記含有量は、各アルカリ剤の含有量の合計として定める。また、アルカリ剤が水和物となっている場合、上記含有量は、水和物に含まれる水成分を含む。
【0073】
本発明の洗浄システムが防食剤を含有すると、本発明の洗浄システム中の洗浄剤組成物の腐食防止作用(防食作用)が向上する。
防食剤としては、アルミニウム、銅又は銅合金に対する防食剤を用いることが好ましい。このような防食剤として、例えば、ベンゾトリアゾール又はその誘導体(例えば、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、5−ドデシルベンゾトリアゾール、5−オクチルベンゾトリアゾール、5−ヘキシルベンゾトリアゾール、5−ブチルベンゾトリアゾール、5−メチルベンゾトリアゾール、4−カルボキシベンゾトリアゾール、5−カルボキシベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾールメチルエステル、カルボキシベンゾトリアゾールブチルエステル、カルボキシベンゾトリアゾールヘキシルエステル、ベンゾトリアゾールオクチルエステル、ジカルボキシプロピルベンゾトリアゾール等)、ベンゾイミダゾール又はその誘導体(例えば、ベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、チアゾリルベンゾイミダゾール、チアベンダゾール等)、ベンゾチアゾール又はその誘導体(例えば、ベンゾチアゾール、2−メチルベンゾチアゾール、2−アミノベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール等)を好適に使用することができる。中でも、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾールが好ましい。
【0074】
本発明の洗浄システムにおける固形洗浄剤組成物が防食剤を含有する場合、防食剤の含有量は、固形洗浄剤組成物全体に対して0.001〜5質量%が好ましい。防食剤が0.001質量%未満であると、充分な腐食防止作用を発揮できない場合がある。防食剤が5質量%を超えると、防食剤特有の臭いの影響が強くなる場合がある。上記防食剤の含有量は、好ましくは0.1〜2質量%である。防食剤が2種以上含まれる場合、上記含有量は、各防食剤の含有量の合計として定める。
【0075】
本発明の洗浄システムは、上記塩素剤(A)、上記洗浄助剤(B)におけるその他の成分として、また、塩素剤(A)、洗浄助剤(B)以外の固形洗浄剤組成物部分において、その他、滑剤、可溶化剤、増量剤、消泡剤、溶媒(例えば、水)等のその他の成分を含んでいてもよい。なお、固形洗浄剤組成物を構成する成分の一部が液状であっても、他の構成成分中に含浸されるなど洗浄剤組成物全体として固形であればよい。
【0076】
(本発明のカートリッジ洗浄剤)
本発明の洗浄システムは、カートリッジ洗浄剤であることが好ましい。
本発明のカートリッジ洗浄剤は、内容物の供給口部を有する水不溶性の容器を、上記供給口部を下向きに設置し、上記供給口部へ水が噴射されて内容物を溶かしながら供給する方式の自動洗浄機用のカートリッジ洗浄剤であって、上記容器は、容器本体と中蓋体と外蓋体とからなり、上記容器本体には、塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の一方が偏在している部分を有する固形洗浄剤組成物が収容されており、上記中蓋体には、塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の他方が収容されており、上記容器本体と上記中蓋体との間には、上記容器本体に収容されている固形洗浄剤組成物、又は、上記中蓋体に収容されている塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の他方の移動を防止する仕切りが設けられていることを特徴とする。
【0077】
上記中蓋体に収容されている塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の他方は、圧縮成型錠剤等の錠剤であってもよく、カプセル錠であってもよく、ジェルボールタイプであってもよく、粉末そのものであってもよい。
【0078】
上記中蓋体に収容されている塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の他方中の有効成分(塩素含有化合物や酵素等の有効成分)は、時間差で有効成分を供給する観点からは、本発明のカートリッジ洗浄剤が含む全洗浄成分100質量%に対して、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが更に好ましく、2質量%以下であることが特に好ましい。
また上記中蓋体に収容されている塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の他方中の有効成分は、塩素剤(A)により洗浄対象物に蓄積した汚れや雑菌をより充分に除去したり、洗浄助剤(B)固有の効果をより充分に発揮したりする観点からは、本発明のカートリッジ洗浄剤が含む全洗浄成分100質量%に対して、0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、0.2質量%以上であることが更に好ましい。
本発明のカートリッジ洗浄剤が含む全洗浄成分とは、通常、本発明のカートリッジ洗浄剤が洗浄成分として含む、容器本体に収容されている固形洗浄剤組成物、及び、中蓋体に収容されている塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の他方をいう。
【0079】
本発明のカートリッジ洗浄剤において、上記中蓋体は、噴射水を通過させるための貫通孔が形成されるとともに、上記塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の他方を載置するための載置部を備え、上記戴置部には、洗浄液を容器外へ排水する開口部が形成されるとともに、上記塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の他方を上記中蓋体の内部に保持するための上記載置部を覆うカバー部を備えており、上記外蓋体は、使用時まで容器内外の空間を遮断し、使用時に取り外すように構成され、フィルム状部材又は硬質部材からなることが好ましい。
【0080】
本発明のカートリッジ洗浄剤において、上記固形洗浄剤組成物は、更に、層(a)及び層(b)を含んで構成され、層(b)に対して層(a)側が下向きに設置されており、該層(b)内に上記塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の一方を含有することが好ましい。例えば、層(a)内では、上記塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の一方が偏在していないことがより好ましい。
【0081】
本発明のカートリッジ洗浄剤において、上記固形洗浄剤組成物は、上記層(a)を洗浄剤組成物の濃度が0.10質量%となるように水に溶解した際のpHが、6以上、12以下であり、上記層(b)内に上記塩素剤(A)を含有し、該層(b)を洗浄剤組成物の濃度が0.10質量%となるように水に溶解した際のpHが、9以上であり、上記中蓋体に洗浄助剤(B)(より好ましくは、酵素)が収容されていることが好ましい。
【0082】
上記層(a)を洗浄剤組成物の濃度が0.10質量%となるように水に溶解した際のpHは、7以上、12以下であることが好ましい。
また上記層(b)を洗浄剤組成物の濃度が0.10質量%となるように水に溶解した際のpHは、10以上、14以下であることがより好ましく、10以上、13以下であることが特に好ましい。
このような構成により、酵素の活性化により好適なpH範囲の洗浄液と、より優れた洗浄効果又は洗浄機内の除菌効果を発揮できる、塩素剤(A)を含むアルカリ性の洗浄液とを、時間差で洗浄機に供給することができる。
【0083】
上述した他、上記固形洗浄剤組成物における層(a)及び層(b)の平均厚み、組成・特性、中蓋体に収容されている塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の他方の組成・特性、これらそれぞれの含有割合等の好ましい形態は、本発明の洗浄システムにおける上記固形洗浄剤組成物における層(a)及び層(b)の平均厚み、組成・特性、固形洗浄剤組成物とは別に含まれる塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の他方の組成・特性、これらそれぞれの含有割合等の好ましい形態と同様である。
【0084】
図1は、カートリッジ洗浄剤の一実施形態を模式的に示す断面図である。
図1に示すカートリッジ洗浄剤では、水不溶性の容器10に、その内容物としての固形洗浄剤組成物20が収容されてなる。
この例では、固形洗浄剤組成物20は、容器10の形状で固化したものであり、塩素剤(A)又は洗浄助剤(B)が偏在している部分21と、層(a)22aと層(b)22bとを
図1に示すように充填したものである。層(a)22aと、塩素剤(A)又は洗浄助剤(B)が偏在している部分21以外の層(b)22bは、塩素剤(A)の含有割合が0質量%の例である。
容器10は、供給口部11を有している。供給口部11は容器10の中に水が噴射される入口となり、固形洗浄剤組成物20が溶けて生じた洗浄剤溶解液が容器10から出る出口となる部位である。固形洗浄剤組成物20の、塩素剤(A)又は洗浄助剤(B)が偏在している部分21には、塩素剤(A)又は洗浄助剤(B)が含まれている。
供給口部11へ水が噴射されて内容物である固形洗浄剤組成物20を溶かしながら洗浄剤溶解液を自動洗浄機に供給する。
【0085】
図2(a)、
図2(b)及び
図2(c)は、カートリッジ洗浄剤の供給口部に水が噴射され、固形洗浄剤組成物を水に溶かして洗浄剤溶解液を得る様子の一部を模式的に示す断面図である。
図2(a)に示すように、カートリッジ洗浄剤を使用する際には、噴射水60が供給口部を通過して、容器10に収容された固形洗浄剤組成物20に到達し、固形洗浄剤組成物20が溶解した、層(a)22aの洗浄剤溶解液61が生成する。
この層(a)22aの洗浄剤溶解液61が供給口部から下に落ちて自動洗浄機の洗浄タンク内へ流れて、自動洗浄機に導入される。
図2(a)はカートリッジ洗浄剤の使用開始時(層(a)22aの使用開始時)、
図2(b)は、カートリッジ洗浄剤における層(b)22bの使用開始時、
図2(c)は、カートリッジ洗浄剤における塩素剤(A)又は洗浄助剤(B)が偏在している部分21の使用開始時を示している。各図面において、洗浄剤溶解液(層(a)22aの洗浄剤溶解液61、層(b)22bの洗浄剤溶解液62、塩素剤(A)又は洗浄助剤(B)が偏在している部分21の洗浄剤溶解液63)の矢印に含まれる塩素剤(A)又は洗浄助剤(B)の密度が異なることを模式的に示している。この結果、カートリッジ洗浄剤の使用開始から使用終了までにわたって洗浄液中の有効塩素濃度は極大・極小が生じる。
なお、塩素剤(A)又は洗浄助剤(B)が偏在している部分21を、タブレット状塩素剤が数個配置されて構成される層としてもよい。このような層を含む3層以上の固形洗浄剤組成物は、例えば、固形洗浄剤の層の上にタブレット状塩素剤を数個載せ、その上に固形洗浄剤の層を置くことで得ることができる。
【0086】
本発明のカートリッジ洗浄剤は、自動洗浄機用のカートリッジ洗浄剤である。
本発明のカートリッジ洗浄剤が使用される自動洗浄機は特に限定されないが、例えば、スプレー式自動洗浄機等が挙げられる。スプレー式自動洗浄機として、例えば、自動食器洗浄機、コンテナ洗浄機等が挙げられる。中でも、本発明のカートリッジ洗浄剤は、自動食器洗浄機用に好適に使用される。
また、本発明のカートリッジ洗浄剤は、業務用又は家庭用の自動洗浄機用として好適に使用されるが、業務用自動洗浄機用としてより好適であり、業務用の自動食器洗浄機用の除菌洗浄剤組成物として特に好適である。
また、自動洗浄機として、洗浄液又はすすぎ水に直径が100μm以下の微細気泡を付与する微細気泡付与機構を備える自動洗浄機を使用することもできる。上記微細気泡付与機構を備える自動洗浄機は、例えば、特開2017−209302号公報に記載されている。
【0087】
また、本発明のカートリッジ洗浄剤は、上記容器は、容器本体と中蓋体と外蓋体とからなり、上記容器本体と上記中蓋体との間には、上記容器本体に収容されている固形洗浄剤組成物、又は、上記中蓋体に収容されている塩素剤(A)又は洗浄助剤(B)の移動を防止する仕切りが設けられている。
【0088】
図3は、本発明の実施形態に係るカートリッジ洗浄剤を構成する容器の一実施例を模式的に示す説明図である。
図4は、本発明のカートリッジ洗浄剤の実施形態を模式的に示す断面図である。
図5(a)、
図5(b)及び
図5(c)は、カートリッジ洗浄剤の供給口部に水が噴射され、固形洗浄剤組成物を水に溶かして洗浄剤溶解液を得る様子を模式的に示す断面図である。
図6(a)、
図6(b)及び
図6(c)は、
図3に示すカートリッジ洗浄剤を構成する中蓋体及び外蓋体の一実施例を模式的に示す概念図である。
【0089】
図3及び
図4に示すように、本実施形態に係るカートリッジ洗浄剤1を構成する容器10は、容器本体(円筒容器)と中蓋体32と外蓋体33とからなる。
容器本体は、円筒容器の下部が次第に縮径していく、所謂、ロート形状となっている。下部には筒部材12がある。
筒部材12には、中蓋体32をねじ込むためのねじ12aが形成されている。図示はしていないが、筒部材は、ねじ込みでなく爪構造によるはめ込み式で中蓋体を固定するようになっていてもよい。
中蓋体32には、塩素剤(A)又は洗浄助剤(B)が収容されている。すなわち、中蓋体32には、固形洗浄剤組成物20が塩素剤(A)を含む場合は洗浄助剤(B)が収容されており、固形洗浄剤組成物20が洗浄助剤(B)を含む場合は塩素剤(A)が収容されている。上述したように、中蓋体32に収容されている塩素剤(A)又は洗浄助剤(B)は、圧縮成型錠剤等の錠剤であってもよく、カプセル錠又は粉末そのものでもよいが、以下では、固形洗浄剤組成物20が塩素剤(A)を含み、中蓋体32に、固形の洗浄助剤23が収容されている場合について説明する。
【0090】
図5(a)に示すように、カートリッジ洗浄剤を使用する際には、噴射水60が供給口部を通過して、容器10に収容された固形洗浄剤組成物20に到達し、固形洗浄剤組成物20が溶解した、層(a)22aの洗浄剤溶解液が生成する。
洗浄工程の初期段階では、噴射水60は、層(b)22bに埋め込まれている塩素剤(A)にはあたらず、当該塩素剤(A)は溶出していない。この層(a)22aの洗浄剤溶解液61が供給口部から下に落ちて、中蓋体32に収容されている固形の洗浄助剤23を溶解して洗浄剤溶解液61aが生成し、自動洗浄機の洗浄タンク内へ流れて、自動洗浄機に導入される。
図5(a)は、カートリッジ洗浄剤の使用開始時(層(a)22aの使用開始時)、
図5(b)は、カートリッジ洗浄剤における層(b)22bの使用開始時、
図5(c)は、カートリッジ洗浄剤における塩素剤(A)が偏在している部分21の使用開始時を示している。
図5(a)及び
図5(b)では、固形洗浄剤組成物20が溶解した、層(a)22aの洗浄剤溶解液又は層(b)22bの洗浄剤溶解液が生成し、この洗浄剤溶解液が供給口部から下に落ちて、中蓋体32に収容されている固形の洗浄助剤23を溶解して洗浄剤溶解液61a、62bが生成し、自動洗浄機の洗浄タンク内へ流れて、自動洗浄機に導入される。
図5(c)では、塩素剤(A)が偏在している部分21の洗浄剤溶解液が生成し、この洗浄剤溶解液が供給口部から下に落ちるところ、中蓋体32に収容されている固形の洗浄助剤23はこの段階では殆ど溶解して消失しているため、洗浄助剤(B)と実質的に混合することなく、塩素剤(A)を含む洗浄剤溶解液63が自動洗浄機の洗浄タンク内へ流れて、自動洗浄機に導入される。
各図面において、洗浄剤溶解液(洗浄剤溶解液61a、洗浄剤溶解液62b、塩素剤(A)が偏在している部分21の洗浄剤溶解液63)の矢印に含まれる塩素剤(A)又は洗浄助剤(B)の密度が異なることを模式的に示している。このように、塩素剤(A)を含む洗浄液と、洗浄助剤(B)を含む洗浄液とを時間差で洗浄機に供給することができ、塩素剤(A)による高い洗浄、除菌、漂白効果と、洗浄助剤(B)固有の効果とを両立することができる。
【0091】
図6(a)に示す中蓋体32は、有底円筒形状であり、底部32bには、噴射水を通過させるための円筒部材32dと、固形洗浄剤組成物、及び、固形の洗浄助剤23(
図6(b)参照)が溶解した洗浄剤溶解液を通過させるための開口部32aが設けられており、中蓋体32の円筒部分32cの内壁には、筒部材12にねじ込むためのねじ320aが設けられている。
開口部32a及び底部32bを含む、固形の洗浄助剤23を載置するための部分が中蓋体32における載置部である。
底部32bは網目形状となっており、多数の開口部32aが形成されている。底部32bが網目形状であり多数の開口部32aが形成されていると、洗浄剤溶解液が中蓋体の底部を通過しやすく、均一に排出されるという利点がある。
【0092】
また、この中蓋体32には、更に内筒32eが設けられており、内筒32eの内部に固形の洗浄助剤23を収容できるように構成されている(
図6(b)参照)。
この中蓋体32に収容する固形の洗浄助剤23としては、底部32bの網目形状の開口部32aから落下することのない大きさの固形体であることが望ましい。
また、中蓋体32の内筒32e内には、固形の洗浄助剤23の移動を規制するための区画部材32fが複数箇所に設けられていて、内筒32e内の空間が区画されている。区画部材32fの間隔は、区画部材32fの間に固形の洗浄助剤23が入るように定めることが望ましい。このように固形の洗浄助剤23の移動を規制することにより、各固形塩素剤を均一に溶解させることができる。
【0093】
また、区画部材32fによる区画は、内筒32e内の空間を完全に区画するのではなく、緩く区画することが望ましい。「緩く」というのは、区画部材32fにより固形の洗浄助剤23の移動が規制される程度に内筒32e内の空間が区画されている一方、区画部材32fと内筒32eの内壁の間、及び/又は、区画部材32fと円筒部材32dの外壁の間に空間を設けて、水や洗浄剤溶解液等の液体が内筒32eの間で自由に移動できる状態のことを意味する。このような状態であると、水、洗浄剤溶解液等の液体が特定の部位に噴射されたとしても、液体が内筒32eの中で偏ることがないので、特定の固形の洗浄助剤23のみが溶解することが防止される。
【0094】
また、
図6(b)に示すように、固形の洗浄助剤23を内筒32eの内部に収容した状態で保持するために円環形状のカバー部34が設けられている。
カバー部は、容器本体と中蓋体の間に設けられ、固形の洗浄助剤23又は固形洗浄剤組成物20(
図4等参照)の移動を防止する仕切りである。
【0095】
図6(c)には、
図6(a)に示す中蓋体32の裏面に外蓋体としてのフィルム部材33を接着した状態を示している。
フィルム部材33は、カートリッジ洗浄剤の使用時に剥がすことが可能な接着剤により中蓋体32に接着されていてもよい。フィルム部材33は、接着剤が塗布されていない突出部33aを手で掴んで剥がすことができる。また、フィルム部材を水溶性フィルムとしておき、水が触れることによってフィルム部材が溶解してなくなるようにしておいてもよい。
【0096】
このようなカートリッジ洗浄剤を使用する場合、外蓋体であるフィルム部材33を中蓋体32から剥がす。
噴射水が円筒部材32dの間の空間を通過して、容器本体に収容された固形洗浄剤組成物に到達し、固形洗浄剤組成物が溶解した洗浄剤溶解液が生成する。
洗浄剤溶解液はカバー部34の開口部34aから中蓋体32の中に入り、固形の洗浄助剤23を溶解させて、固形洗浄剤組成物と固形塩素剤とを含む洗浄剤溶解液が生成する。
この洗浄剤溶解液が中蓋体32底部の開口部32aから下に落ちて自動洗浄機の洗浄タンク内へ流れ、固形洗浄剤組成物及び固形塩素剤由来の塩素剤を含む洗浄剤溶解液が自動洗浄機に導入される。
この形態のカートリッジ洗浄剤において、円筒部材32dと、中蓋体32底部の開口部32aは、供給口部11(
図1参照)にあたる。
【0097】
上述したように中蓋体32に洗浄助剤(B)を収容する場合、中蓋体32に収容される洗浄助剤(B)としては、本発明の固形洗浄剤組成物において洗浄助剤(B)として挙げた洗浄助剤を使用できる。
また中蓋体32に塩素剤(A)を収容する場合、中蓋体32に収容される塩素剤(A)としては、本発明の固形洗浄剤組成物において塩素剤(A)として挙げた塩素剤を使用できる。
中蓋体32に収容する塩素剤(A)又は洗浄助剤(B)としては、上述したように、錠剤、カプセル錠、粉末等を使用できるが、例えば、塩素剤(A)又は洗浄助剤(B)に結合補助剤を加えて固形化したものを使用することができる。
【0098】
(本発明の洗浄方法)
本発明の洗浄方法は、本発明の洗浄システム又は本発明のカートリッジ洗浄剤を使用して洗浄対象物の洗浄を行うことを特徴とする。
上記方法であると、塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の一方が高い濃度の洗浄液で1回以上は洗浄することになるので、塩素剤(A)による高い洗浄、除菌、漂白効果を発揮したり、洗浄助剤(B)固有の効果を発揮したりすることができる。また、洗浄助剤(B)を塩素剤(A)から隔離して配し、相性の悪い両成分の活性をそれぞれ維持したまま洗浄機に供給でき、塩素剤(A)による高い洗浄、除菌、漂白効果と、洗浄助剤(B)固有の効果とを両立することができる。
また本発明の洗浄方法において、固形洗浄剤組成物が、層(a)及び層(b)を含んで構成され、該層(b)内に前記塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の一方を含有する場合は、塩素剤(A)を含む洗浄液と、洗浄助剤(B)を含む洗浄液とを時間差で洗浄機に供給し、それぞれを食器等の洗浄対象物に作用させることができ、塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)が洗浄液中で混ざり合って失活することを充分に防止しながら、塩素剤(A)による高い洗浄、除菌、漂白効果と、洗浄助剤(B)固有の効果とをより一層両立することができ、例えば、洗浄対象物に蓄積した汚れを充分に除去することができる。
【0099】
蓄積汚れは、洗浄対象物(被洗物)に蓄積した汚れであり、一例として、油脂、タンパク質、デンプンなどの成分が混合した複合汚れなどが挙げられる。洗浄対象物として、食器、カトラリー、調理器具、金具、治具、コンテナ、トレー等が挙げられる。
【0100】
本発明のカートリッジ洗浄剤を用いて自動洗浄機により食器等の洗浄対象物を洗浄する場合には、自動洗浄機中で、上記カートリッジ洗浄剤から得られた洗浄液と食器等とを接触させればよい。
【0101】
(本発明の微生物の除菌方法又は菌叢凝塊の除去方法)
本発明の微生物の除菌方法又は菌叢凝塊の除去方法は、本発明の洗浄システム又は本発明のカートリッジ洗浄剤を使用して自動洗浄機内の菌や菌叢を除去することを特徴とする。
【0102】
本発明の微生物の除菌方法又は菌叢凝塊の除去方法は、塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の一方が高い濃度の洗浄液で1回以上は洗浄することになるので、自動洗浄機内の菌や菌叢の除去効果に優れる。また、洗浄助剤(B)を塩素剤(A)から隔離して配し、相性の悪い両成分の活性をそれぞれ維持したまま洗浄機に供給でき、塩素剤(A)による洗浄、除菌、漂白効果と、洗浄助剤(B)固有の効果とを両立することができる。
また本発明の微生物の除菌方法又は菌叢凝塊の除去方法において、固形洗浄剤組成物が、層(a)及び層(b)を含んで構成され、該層(b)内に前記塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)の一方を含有する場合は、塩素剤(A)を含む洗浄液と、洗浄助剤(B)を含む洗浄液とを時間差で自動洗浄機に供給し、塩素剤(A)及び洗浄助剤(B)が洗浄液中で混ざり合って失活することを充分に防止しながら、自動洗浄機内の菌や菌叢に作用させることができる。
例えば、本発明のカートリッジ洗浄剤を自動洗浄機に付帯の供給装置に設置して、塩素剤(A)を含む洗浄液と、洗浄助剤(B)を含む洗浄液とを、自動洗浄機内の菌や菌叢に作用させてもよい。
なお、本発明の洗浄システムもまた、微生物の除菌方法又は菌叢凝塊の除去方法に好適に使用できる。
また本発明の洗浄システム又は本発明のカートリッジ洗浄剤は、漂白用の洗浄剤組成物としても好適に使用される。
【0103】
本発明の微生物の除菌方法又は菌叢凝塊の除去方法で除去する上記菌叢凝塊は、赤色系統又は橙色系統の菌叢凝塊であることが好ましい。本発明の洗浄システム又はカートリッジ洗浄剤は、赤色系統又は橙色系統の菌叢凝塊の発生防止又は除菌に有用である。
菌叢凝塊の一例として、メイオサーマス属及びテピジモナス属からなる群より選択される少なくとも1種の微生物を含む菌叢凝塊が挙げられる。メイオサーマス属及びテピジモナス属からなる群より選択される少なくとも1種の微生物を含む菌叢凝塊は、赤色系統又は橙色系統のものが多い傾向がある。本発明の洗浄システム又はカートリッジ洗浄剤は、メイオサーマス属及びテピジモナス属の微生物に対して除菌力を有し、メイオサーマス属及びテピジモナス属からなる群より選択される少なくとも1種の微生物を含む菌叢凝塊の発生防止又は除菌に好適に使用される。
一態様において、本発明の洗浄システム又はカートリッジ洗浄剤は、メイオサーマス属及びテピジモナス属からなる群より選択される少なくとも1種の微生物を含む菌叢凝塊が存在する洗浄機に使用され、高い洗浄力及び該菌叢凝塊に対する除菌力を発揮する。
【0104】
メイオサーマス属の微生物として、メイオサーマス・ルーバー、メイオサーマス・タイワネンシス、メイオサーマス・シルバヌス、メイオサーマス・チラロフィルス、メイオサーマス・セルベレウス、メイオサーマス・グラナチシウス、メイオサーマス・ロザセウス、メイオサーマス・ルフス、メイオサーマス・チミドゥス等が挙げられる。
テピジモナス属の微生物として、テピジモナス・タイワネンシス、テピジモナス・フォンティカルディ、テピジモナス・アクアティカ、テピジモナス・イグナヴァ、テピジモナス・サーマルム等が挙げられる。
メイオサーマス属の微生物及びテピジモナス属の微生物は、それぞれ1種であってもよく、2種以上であってもよい。メイオサーマス属の微生物として、メイオサーマス・ルーバー、メイオサーマス・タイワネンシス、メイオサーマス・シルバヌスが好ましく、テピジモナス属の微生物として、テピジモナス・タイワネンシス、テピジモナス・フォンティカルディが好ましい。一態様において、本発明の洗浄システム又はカートリッジ洗浄剤は、メイオサーマス・ルーバー、メイオサーマス・タイワネンシス、メイオサーマス・シルバヌス、テピジモナス・タイワネンシス及びテピジモナス・フォンティカルディからなる群より選択される少なくとも1種の微生物の除菌に好適である。
【0105】
本発明の洗浄システム又はカートリッジ洗浄剤は、バシラス・セレウス種(バシラス・セレウス)、テピジフィルス属、リシニバシラス属及びディフェリソマ属の微生物の除菌にも有用である。本発明の洗浄システム又はカートリッジ洗浄剤は、更に、バシラス・セレウス種、テピジフィルス属、リシニバシラス属及びディフェリソマ属からなる群より選択される少なくとも1種の微生物の除菌に使用され得る。
バシラス・セレウス種、テピジフィルス属、リシニバシラス属及びディフェリソマ属の微生物は、それぞれ1種であってもよく、2種以上であってもよい。
テピジフィルス属の微生物として、テピジフィルス・サクシナチマンデンス、テピジフィルス・サーモフィルス等が挙げられる。リシニバシラス属の微生物として、リシニバシラス・フシフォルミス、リシニバシラス・ボロニトエランス、リシニバシラス・グレソリヴォランス、リシニバシラス・マクロイデス、リシニバシラス・マシリエンシス、リシニバシラス・オディッセイ、リシニバシラス・パルビボロニカピエンス、リシニバシラス・シンデュリエンシス、リシニバシラス・スフェリクス、リシニバシラス・シラニリティクス等が挙げられる。ディフェリソマ属の微生物として、ディフェリソマ・キャミニ、ディフェリソマ・パレオコリエンス等が挙げられる。
【0106】
上記菌叢凝塊は、バシラス・セレウス種、テピジフィルス属、リシニバシラス属及びディフェリソマ属からなる群より選択される少なくとも1種の微生物を含むものであってよい。本発明の洗浄システム又はカートリッジ洗浄剤は、これらの微生物にも除菌力を有する。
本発明の洗浄システム又はカートリッジ洗浄剤は、メイオサーマス属及びテピジモナス属からなる群より選択される少なくとも1種、並びに、バシラス・セレウス種、テピジフィルス属、リシニバシラス属及びディフェリソマ属からなる群より選択される少なくとも1種の微生物を含む菌叢凝塊の発生防止又は除菌に好適に使用される。
メイオサーマス属、テピジモナス属、バシラス・セレウス種、テピジフィルス属、リシニバシラス属、ディフェリソマ属の微生物として、上述した微生物が挙げられる。
菌叢凝塊に上記微生物が存在することは、例えば、菌叢凝塊を形成する微生物群の16SrDNAのDNA配列解析により確認することができる。
一態様において、本発明の洗浄システム又はカートリッジ洗浄剤は、上記の微生物に加えて、エシェリヒア属の種の細菌等の微生物の除菌にも有用である。
【0107】
洗浄液を微生物、又は、これを含む菌叢凝塊に作用させる方法は特に限定されず、洗浄液を、該微生物又はこれを含む菌叢凝塊に接触させる方法、洗浄液をミスト状にして該ミスト状の洗浄液を、該微生物又はこれを含む菌叢凝塊に接触させる方法などが挙げられる。
また、本発明の洗浄システム又はカートリッジ洗浄剤を用いて自動洗浄機内の菌叢凝塊を除去する場合には、上記洗浄システム又はカートリッジ洗浄剤から得られた洗浄液を、菌叢凝塊に作用させればよい。また、微生物を含む菌叢凝塊が存在する自動洗浄機において、微生物の除菌を行う場合は、自動洗浄機内で上記洗浄液を循環させてもよい。
【0108】
図7〜
図9は、本発明のカートリッジ洗浄剤の別の実施形態を模式的に示す断面図である。
図7に示すように、塩素剤(A)又は洗浄助剤(B)が偏在している部分121は、1つだけであってもよく、複数あってもよい。
図8に示すように、本発明のカートリッジ洗浄剤は、塩素剤(A)又は洗浄助剤(B)が偏在している部分221が、容器本体に覆われている固形洗浄剤組成物の上面側や側面側に露出していても構わない。
図9に示すように、本発明のカートリッジ洗浄剤は、塩素剤(A)又は洗浄助剤(B)が偏在している部分321以外は、単層であってもよい。
【実施例】
【0109】
以下に本発明をより具体的に説明する実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0110】
(カートリッジ洗浄剤の調製)
実施例1〜11のカートリッジ洗浄剤を調製した。
各実施例のカートリッジ洗浄剤の、全体の処方(組成)を表1−1、表1−2に示した。表1−1、表1−2には、各成分の割合を質量%で示している。
また塩素剤(A)の処方を表2に示し、中蓋体に載置した洗浄助剤(B)の処方を表3に示し、固形洗浄剤組成物における塩素剤(A)以外の層(a)及び層(b)の組成を表4−1、表4−2に示した。
なお、固形洗浄剤組成物における層(a)、層(b)それぞれの厚みは、表1−1、表1−2に示した通りである。また、各実施例における固形洗浄剤組成物の底面積は、147000mm
2である。
【0111】
(有効塩素濃度の測定)
各実施例のカートリッジ洗浄剤を自動食器洗浄機に付帯の供給装置に設置して、固形洗浄剤組成物の濃度が0.10質量%となる洗浄液が得られるように噴射する水の量を調整して洗浄液を得た。噴射水の温度は35℃とし、有効塩素濃度の測定は25℃水溶液で行った。
なお、後述する酵素、酸素系漂白剤の効果確認も同様の試験で実施した。
下記(1)〜(5)の手順により、カートリッジ洗浄剤の使用開始時から使用終了時にまでわたって30分おきに繰り返し行った。
(1)洗浄槽の水溶液100gを秤量し、硫酸アルミニウム5g、ヨウ化カリウムを5g加え、充分に撹拌した。
(2)上記水溶液に氷酢酸を10mL添加した。
(3)均一に混合した後、N/100チオ硫酸ナトリウム水溶液で滴定した。
(4)溶液の色が淡黄色から無色になった点を終点とした。
(5)終点のチオ硫酸ナトリウム水溶液の滴下量から、下記式(1)により有効塩素濃度を計算した。
有効塩素濃度(ppm)=N/100チオ硫酸ナトリウム水溶液の滴下量(mL)×3.546 …式(1)
【0112】
下記表1−1、表1−2中、評価基準は以下の通りである。
[1]有効塩素濃度が最大値となるピークの検出時期
[1−1]洗浄助剤が中蓋体に収容されている場合(実施例1〜8):
○:洗浄助剤の大部分が溶解した後の時期に検出される
×:洗浄助剤の大部分が溶解せず、残留している時期に検出される
[1−2]固形洗浄剤組成物が層(b)内に洗浄助剤を含有する場合(実施例9〜11):
○:洗浄助剤がまだ実質的に溶解し始めていない時期に検出される
×:洗浄助剤が実質的に溶解している時期に検出される
なお、上記のいずれの場合も、洗浄助剤の溶解具合は目視で確認した。
[2]有効塩素濃度が最大値となるピークの最大値
○:10ppm以上
×:10ppm未満
【0113】
[3]効果確認方法
方法1
(酵素活性の測定)
「日本薬局方 一般試験法 消化力試験法 たん白消化力試験法」に基づいて、タンパク分解酵素活性を測定した。なお、カートリッジ洗浄剤の使用開始時から使用終了時にまでわたって30分おきに繰り返し測定を行った。
方法2
(酸素系漂白剤活性の測定)
下記(1)〜(3)の手順を、カートリッジ洗浄剤の使用開始時から使用終了時にまでわたって30分おきに繰り返し行った。
(1)洗浄槽の水溶液10gを秤量し、希硫酸水溶液70mLを加え均一に混合した。
(2)N/10(0.02mol/L)過マンガン酸カリウム水溶液で滴定した。
(3)終点の過マンガン酸カリウム水溶液の滴下量から、下記式(2)により有効酸素濃度を計算した。
有効酸素濃度(ppm)=滴定量(mL)×800/(1)の秤量値 …式(2)
<滴定>
反応式:2KMnO
4+5H
2O
2+3H
2SO
4
→K
2SO
4+2MnSO
4+5O
2+8H
2O
滴定試薬1mLと反応するH
2O
2(g)
=0.02×1/1000(mol/mL)×5/2×34(g/mol)
=0.0017(g/mL)
試料のH
2O
2含有率(%)
=0.0017(g/mL)×滴定量(mL)/(1)の秤量値(g)×100
有効酸素濃度(ppm)
=10000×H
2O
2含有率(%)×16/34
【0114】
[4]洗浄助剤の有効濃度が最大値となるピークの検出時期
○:有効塩素濃度を測定したとき、検出される有効塩素濃度が1ppm未満
×:有効塩素濃度が1ppm以上検出される
【0115】
[5]効果
方法1
○:タンパク消化力が認められる
×:タンパク消化力が認められない
方法2
○:有効酸素濃度が1ppm以上である
×:有効酸素濃度が1ppm未満である
【0116】
【表1-1】
【0117】
【表1-2】
【0118】
塩素剤(A−1)〜(A−7)の調製方法
塩素剤(A−1)
ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム2水和物60質量%、炭酸ナトリウム24.5質量%、安息香酸5質量%、ステアリン酸マグネシウム0.5質量%、ポリエチレングリコール5質量%、シリカ1質量%、ヒドロキシプロピルメチルセルロース4質量%を混合した後、20トン門型油圧プレス機によって4トン10秒の圧縮打錠をすることにより、重量5gの円柱形状(直径20mm×高さ10mm)に成形されたタブレット状塩素剤である固形成形物(活性塩素剤)を調製した。
【0119】
塩素剤(A−2)〜(A−5)
活性塩素剤として、下記表2に示したように組成を変更した以外は、A-1と同様に活性塩素剤を調製した。
【0120】
塩素剤(A−6)、(A−7)
特に加工を行わず、容器に入れた。
塩素剤(A−7)で用いた被覆塩素剤:ネオクロールST(四国化成工業株式会社)
【0121】
【表2】
【0122】
洗浄助剤(B−1)〜(B−8’)の調製方法
洗浄助剤(B−1)
特に加工を行わず、下記表3に記載のとおり酵素を混合し、中蓋体に載置した。
洗浄助剤(B−2)
下記表3に記載のとおり洗浄助剤を混合した後、20トン門型油圧プレス機によって4トン10秒の圧縮打錠をすることにより、重量5gの円柱形状(直径20mm×高さ10mm)に成形されたタブレット状塩素剤である固形成形物(活性塩素剤)を調製し、中蓋体に載置した。
【0123】
洗浄助剤(B−3)
下記表3に記載のとおり液体酵素を混合し、開口部を有する3.0cm×3.0cmの水溶性ポリビニルアルコール系樹脂フィルム(厚み40μm)からなる袋体に充填した後、開口部をヒートシールにより閉口して得た洗浄剤組成物包装体を得た中蓋体に載置した。
【0124】
洗浄助剤(B−4)
下記表3に記載のとおり固体酵素を混合し、55℃で撹拌、溶解し型に流し込み得た錠剤を中蓋体に載置した。
【0125】
洗浄助剤(B−5)
00号ゼラチンカプセルに下記表3に記載の洗浄助剤1.0gを封入し、中蓋体に載置した。
【0126】
洗浄助剤(B−6)
下記表3に記載の洗浄助剤の各成分を配合した組成物をブリケットマシンにて成形加工することで得たブリケット上固形物を中蓋体に載置した。このブリケットマシンとは、同速で互いに反対方向に回転する2本のロール間で原料粉体を圧縮し成形する乾式圧縮造粒機の一つであり、ロールの表面には、ブリケットの母型であるポケットが刻まれている。そのポケットの形状や大きさによって、種々の形状や大きさのブリケットを得ることが可能となる(参考:特開2018−070549号公報)。
【0127】
洗浄助剤(B−7)
特に加工を行わず、下記表3に記載の洗浄助剤を中蓋体に載置した。
【0128】
洗浄助剤(B−8、B−8’)
洗浄助剤(B−2)と同様、下記表3に記載のとおり洗浄助剤を混合した後、圧縮打錠をすることにより、重量5gの円柱形状(直径20mm×高さ10mm)に成形されたタブレット状である固形成形物を調製し、中蓋体に載置した。
【0129】
【表3】
【0130】
固形洗浄剤組成物の調製方法
固形洗浄剤組成物の層(a)および層(b)の製造にあたっては、各成分を温水中で混合して混合液を作製し、水不溶性の容器に混合液を入れて、容器中で混合液を冷却させて固化させることにより、固形洗浄剤組成物を製造した。混合液を冷却させて固化させる際には、供給口部を上に向けて静置した。
層(b)に塩素剤又は洗浄助剤を配置する操作は以下のように行った。
例えば上記表1−1、表1−2に記載の「層(b)の上面付近」に塩素剤又は洗浄助剤を配置する場合、容器に塩素剤又は洗浄助剤を入れ、その上に固形洗浄剤組成物の層(b)を構成する成分の混合液(下記表4−1、表4−2に示した組成物(D−1)〜(D−4)、
(D−9)〜(D−11)で示される組成物)を、容器底の塩素剤又は洗浄助剤の位置があまり動かないように入れるようにして、容器底に塩素剤又は洗浄助剤が配置されるようにした。
【0131】
上記表1−1に記載の「層(b)の上面から2分の1の高さ」に塩素剤を配置する場合、容器に固形洗浄剤組成物の層(b)を構成する成分の混合液(下記表4−1に示した組成物(D−5)〜(D−8)で示される組成物)を入れ、その上に塩素剤の粉末を撒き、続いて固形洗浄剤組成物の層(b)を構成する成分の混合液を、塩素剤の位置があまり動かないように入れるようにした。初めに入れた固形洗浄剤組成物の層(b)を構成する成分の混合液の深さを調節して塩素剤が「層(b)の上面から2分の1の高さ」に配置されるように調節した。
なお、「層(b)の上面から2分の1の高さ」は、層(b)の上面から層(b)の厚みの2分の1の高さを意味する。
また、一部の実施例では塩素剤の粉末に代えて固形塩素剤の錠剤を配置した。
【0132】
【表4-1】
【0133】
【表4-2】
【0134】
実施例1〜11のカートリッジ洗浄剤は、上記表1−1、表1−2に示される結果より、洗浄助剤(B)固有の効果と、塩素剤(A)による高い洗浄、除菌、漂白効果とを両立できるものであることが分かった。