特開2021-181607(P2021-181607A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2021181607-高炉用羽口 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-181607(P2021-181607A)
(43)【公開日】2021年11月25日
(54)【発明の名称】高炉用羽口
(51)【国際特許分類】
   C21B 7/16 20060101AFI20211029BHJP
   F27B 1/16 20060101ALI20211029BHJP
【FI】
   C21B7/16 304
   F27B1/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2020-88385(P2020-88385)
(22)【出願日】2020年5月20日
(71)【出願人】
【識別番号】591168644
【氏名又は名称】後藤合金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067091
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100198797
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 裕
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 宏樹
【テーマコード(参考)】
4K015
4K045
【Fターム(参考)】
4K015FB02
4K045AA02
4K045BA02
4K045GA17
(57)【要約】      (修正有)
【課題】耐磨耗性と耐溶損性に優れた高炉用の羽口の提供。
【解決手段】高炉用羽口本体1において、羽口本体1の先端部2の内周面5及び外周面4並びにこの内周面5と外周面4を継ぐ凸曲面6に高融点耐久性材料層を形成する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉用羽口において、
羽口本体の先端部の内周面及び外周面並びにこの内周面と外周面を継ぐ凸曲面に高融点耐久性材料層を形成して成る高炉用羽口。
【請求項2】
請求項1の高融点耐久性材料層は、Al−Ni系金属間化合物で高融点金属間化合物で高融点1550℃、高硬度415HVで高い耐溶損性を示し、施工は溶接肉盛及びAl拡散法にて形成されていること、を特徴とする高炉用羽口。
【請求項3】
請求項2の高融点耐久性材料層は、純Niを肉盛した状態でカロライズ処理を行い、表層に50μmのAlの浸透層が形成されていること、を特徴とする高炉用羽口。
【請求項4】
請求項2の高融点耐久性材料層は、Ni−Ti系金属間化合物から成ること、を特徴とする高炉用羽口。
【請求項5】
請求項1の高炉用羽口には、キューポラ炉等の溶解炉を含むこと、を特徴とする高炉用羽口。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉用羽口に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高炉の操業は、その集約化と共に、高温、高圧操業、酸素富化、補助燃料の羽口からの吹きこみなどの操業技術に飛躍的進展が見られる。
【0003】
一方、これらの操業技術の高度化および高生産化時に発生する羽口の溶損や摩耗は安定操業を阻害する最大の要因あり、羽口の長寿命化は生産性向上の最重要課題である。
【0004】
主に羽口の溶損は多量の溶銑接触により発生するが、その発生機構も溶銑の接触により硬化肉盛部が融点を超えて溶損するものと、バーンアウト現象によるものがある。
バーンアウト現象とは、羽口本体を冷却する為の冷却水が加熱される事で沸騰熱伝達となり、冷却性能が低下し、瞬間的に溶損することである。
【0005】
また、羽口の摩耗とは、レースウェイ旋回コークス及び炉内挿入物質のアタックによる摩耗と、微粉炭吹込装置(PCI)による羽口内面摩耗が生じることである。
【0006】
そこで、従来から、送風羽口長寿命化の為の耐摩耗・溶損対策としては、硬化肉盛材の肉盛溶接や、セラミック溶射、耐火物キャスタブルの施工などが施されてきた。
その他、硬化肉盛材として Niの金属マトリックス中に炭化物及びホウ化物を添加する複合材料なども提案されている。
【0007】
また、特開平11−217610号公報には、羽口本体の先端部の外周面には肉盛部を形成した例が開示されているが、口部内周面には被覆がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−217610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、耐磨耗性と耐溶損性に優れた高炉用の羽口であって、特に羽口先端内において炉内挿入物質のアタックによる羽口先端部磨耗を防止する羽口を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、高炉用羽口において、羽口本体の先端部の内周面及び外周面並びにこの内周面と外周面を継ぐ凸曲面に高融点耐久性材料層を形成して成ることを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の高炉用羽口において、請求項1の高融点耐久性材料層は、Al−Ni系金属間化合物で高融点金属間化合物で高融点1550℃、高硬度415HVで高い耐溶損性を示し、施工は溶接肉盛及びAl拡散法にて形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の高炉用羽口において、請求項2の高融点耐久性材料層は、純Niを肉盛した状態でカロライズ処理を行い、表層に50μmのAlの浸透層が形成されていることを特徴とするものである。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の高炉用羽口において、請求項2の高融点耐久性材料層は、Ni−Ti系金属間化合物から成ることを特徴とするものである。
【0014】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の高炉用羽口において、請求項1の高炉用羽口には、キューポラ炉等の溶解炉を含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高炉用羽口において、羽口本体の先端の内周面と外周面及びこの内周面と外周面を凸曲面で継ぐように高融点耐久性材料層を形成したことで、投入材料による磨耗及び先端部の溶銑接触によるバーンアウトを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】高炉用羽口の説明図である。
図2】高炉用羽口の要部の拡大断面図である。
図3】Al−Ni2元素状態図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0017】
以下、図1−3を用いて本発明の実施例を詳細に説明する。
【0018】
図1は高炉用羽口の断面、図2は高炉用羽口の要部を拡大した断面を示すものであり、符号の1は羽口本体、2は羽口本体1の先端部、3は墳出口部、4は先端部2の外周面、5は先端部(口部)2の内周面、6は内周面5と外周面4とを結ぶ凸曲面である。
【0019】
符号の7は先端部2の外周面4と内周面5とを結ぶバインダー層、8はバインダー層7の上に溶接したAl−Niの肉盛層である。
【0020】
図3はAl−Niの2元素状態図である。
【0021】
Al−Niの2元素状態図の金属間加工物中でもAlNiは高融点を示す。
Ni中にAlが44〜60(原子%)・23〜36(重量%)の組成で高融点の金属間化合物を得る事ができる。
金属間化合物AlNiは常温での延性は低い値を示すものの、高温においては延性が改善される。
AlNiは構造材料ではなく、高温下で使用される硬化肉盛やカロライズ皮膜でその特性を活かす事ができる。
【0022】
この溶接により、銅が硬化肉盛の中に混入すると、金属間化合物の融点及び硬度に悪影響を及ぼす為、注意しなければならない。
【0023】
その為、1層目には、バインダー層7となる材料を溶接し、その上にNi−Al肉盛材を溶接する。
1層目のバインダー層7となる材料としては、純Ni及びNi−Cr系材料が望ましい。これらの材料は銅との溶接性も良い。
Ni−Cr系材料のCrは多少混入しても悪影響は無く、硬度を向上させる効果もある。
【0024】
2層目の金属間化合物材料の溶接方法としては、TIG溶接、MIG溶接、粉体プラズマアーク溶接が選択される。
【0025】
以上の性能の他、より肉盛材の性能を発揮する為、2層以上の多層盛を選択する事ができる。
【0026】
以上の構成により、羽口本体において、その先端部2の内周面5と外周面4において、操業による磨耗及び溶損を防ぐことができる。
【0027】
因に、本発明における肉盛材(肉盛層)の肉盛は、Ni70%Al30%である。
また、本発明における肉盛層と従来の肉盛層との熱伝導率を比較すると次表1のとおりである。
【表1】
【符号の説明】
【0028】
1 羽口本体
2 先端部
3 墳出口部
4 外周面
5 内周面
6 凸曲面
7 バインダー層
8 Al−Niの肉盛層
図1
図2
図3