特開2021-181614(P2021-181614A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2021181614-鋼材の使用 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-181614(P2021-181614A)
(43)【公開日】2021年11月25日
(54)【発明の名称】鋼材の使用
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20211029BHJP
   C22C 38/38 20060101ALI20211029BHJP
   C22C 38/60 20060101ALI20211029BHJP
   C21D 8/00 20060101ALI20211029BHJP
【FI】
   C22C38/00 302Z
   C22C38/38
   C22C38/60
   C21D8/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2021-76210(P2021-76210)
(22)【出願日】2021年4月28日
(31)【優先権主張番号】10 2020 113 495.9
(32)【優先日】2020年5月19日
(33)【優先権主張国】DE
(71)【出願人】
【識別番号】521100106
【氏名又は名称】ビルシュタイン・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディトゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】セイエド・アミーン・ムーサヴィー・リズィ
【テーマコード(参考)】
4K032
【Fターム(参考)】
4K032AA04
4K032AA05
4K032AA13
4K032AA18
4K032AA19
4K032AA20
4K032AA21
4K032AA22
4K032AA23
4K032AA24
4K032AA27
4K032AA29
4K032AA31
4K032AA35
4K032AA36
4K032BA01
4K032BA03
4K032CG00
4K032CH03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】新しい使用分野に使用可能とする、低廉なオーステナイト鋼を提供する。
【解決手段】エネルギー生産のための耐サワーガス性部品、パイプ、タンクの、ガスまたは他の流体のためのパイプラインの、水と接触する部材、燃料電池のバイポーラプレートの、及び熱交換器の製造のための鋼材の使用であって、前記鋼材が以下の構成分、すなわち:以下を含む(重量%で表示)高マンガン含有オーステナイト鋼:
・0.02〜0.12%の炭素、
・0.05〜0.5%の窒素、
・10〜20%のマンガン、
・10〜20%のクロム、
・通常の不純物も含めて残部の鉄。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー生産のための耐サワーガス性部品、パイプ、タンクの、ガスまたは他の流体のためのパイプラインの、水と接触する部材、燃料電池のバイポーラプレートの及び熱交換器の製造のための鋼材の使用であって、前記鋼材が以下の構成分、すなわち:
以下を含む(重量%で表示)高マンガン含有オーステナイト鋼:
・0.02〜0.12%の炭素、
・0.05〜0.5%の窒素、
・10〜20%のマンガン、
・10〜20%のクロム、
・通常の不純物も含めて残部の鉄、
を含む、前記使用。
【請求項2】
前記鋼材が、次の更なる構成分のうちの少なくとも一つを含む、請求項1に記載の使用。
・0.8%までのケイ素、
・4%までのニッケル、
・2%までのモリブデン、
・最大で0.05%のリン、
・最大で0.05%の硫黄、
・0.5%までのチタン、
・0.5%までのニオブ、
・0.5%までのバナジウム。
【請求項3】
前記鋼材が、以下の機械技術的特性を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の使用。
引張強度R=500〜800MPa、
降伏点Rp0.2=200〜500MPa、
破断伸びA80=少なくとも42%。
【請求項4】
TWIP機序のみを使用した冷間変形の場合に、該材料に含まれる変形誘起マルテンサイトの割合が5%未満であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つに記載の使用。
【請求項5】
該鋼材の技術的特性が、適切な圧延度で材料を圧延し及び/または適切なアニール温度で該材料をアニールすることによって調節されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つに記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2016年6月8日付けのドイツ・エデルシュタールヴェルケ社の材料データシートによるステンレスオーステナイト鋼St1.4404に基づくものである。
【背景技術】
【0002】
このような特殊鋼は、多くの使用分野で使用可能であるべきである。この鋼の本質的な欠点は、合金元素としてニッケルが高い割合で含まれること、詳しくは10〜13重量%のオーダーで含まれる点にある。これは、ニッケルの価格が高いために、製品のかなりの値上げに繋がり、その結果、数多くの用途分野のためのこの材料の使用は、高コストが原因で考慮されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、これらの鋼の品質を新しい使用分野に使用可能なものとする低廉なオーステナイト鋼を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
従って、本発明は、エネルギー生産のための耐サワーガス性部品、パイプ、タンク;ガスまたは他の流体のためのパイプライン;水と接触する部材、燃料電池のバイポーラプレート;及び熱交換器の製造のための鋼材の新規使用を提供するものであり、ここで該鋼材は以下の構成分を有する:
以下を含む(重量%で表示)高マンガン含有オーステナイト鋼:
・0.02〜0.12%の炭素、
・0.05〜0.5%の窒素、
・10〜20%のマンガン、
・10〜20%のクロム、
・通常の不純物も含めて残部の鉄。
【0005】
本発明によれば、上記の用途に優れて使用可能であり、それ故該材料を新しい用途分野にも使用可能なものとするニッケル不含で高マンガン含有のオーステナイト鋼が提供される。
【0006】
このようないわゆる高マンガンオーステナイトは、十分な耐食性を持ち、そして良好に変形可能、特に冷間変形可能であり、この際、この鋼は、その低廉な組成の故に新しい用途分野に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1はシェフラー−ディロング図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
該鋼材は、上記の構成分の他に、更に少なくとも一種の更に別の構成分、すなわち
・0.8%までのケイ素、
・4%までの銅、
・4%までのニッケル、
・2%までのモリブデン、
・最大で0.05%のリン、
・最大で0.05%の硫黄、
・0.5%までのチタン、
・0.5%までのニオブ、
・0.5%までのバナジウム、
を有することができる。
【0009】
全ての表記は、基本的に重量%である。
【0010】
ニッケルの添加は、延性特性を最適化しかつ耐食性を向上するために、例外的にかつ少量でのみ企図される。耐食性の向上は無くてもよい場合は、ニッケルの割合はゼロのままでもよい。
【0011】
以下に記載のような合金元素の構成分が好ましい。
・0.05〜0.08%の炭素、
・0.08〜0.15%の窒素、
・13〜17%のマンガン、
・13〜17%のクロム、
・1〜2%のニッケル、
並びに好ましくは
・0.1〜0.2のケイ素、
・1〜2%の銅、
・最大で0.2%のモリブデン、
及び許容し得る不純物として
・最大で0.005%の硫黄、
・最大で0.02%のリン、
・最大で0.5%のチタン、
・最大で0.5%のニオブ、
・最大で0.5%のバナジウム、
・通常の不純物も場合により含んで残部の鉄。
(表記は重量%)
【0012】
上記の鋼材は、好ましくは以下の機械技術的特性を持つ:
引張強度R=500〜800MPa、
降伏点Rp0.2=200〜500MPa、
破断伸びA80=少なくとも42%。
【0013】
この際、特に好ましくは、TWIP機序を主に使用した冷間変形の場合、該材料は、変形誘起マルテンサイトの割合が5%未満であることが企図される。
【0014】
鋼材の技術的特性を適切な圧延度で材料を圧延し及び/または適切なアニール温度で材料をアニールすることによって調節する点に更なる特徴が見られる。
【0015】
元素の影響:
合金元素は、原則的に、それらが炭化物形成体、オーステナイト形成体またはフェライト形成体であるかあるいはそれらが何の目的で鋼に合金化されるかに応じて区別されるべきである。
【0016】
それぞれの個々の元素は、その割合に応じて決定される特定の特性を鋼に与える。複数の元素が存在する場合は、その作用は増大され得る。しかし、個々の元素が、特定の挙動に関してそれらの作用を同じ方向で発揮するのではなく、むしろ互いに打ち消し得るようなタイプの合金がある。
【0017】
鋼中の合金元素の存在は、所望の特性のための前提条件に過ぎず;加工及び熱処理して初めてこのような特性が達成され得る。
【0018】
炭素(C)
全般的情報:
炭素は、鋼中で最も重要でかつ影響が最も大きい合金元素である。合金化されていない鋼は、いずれの場合も、炭素の他に、製造時に意図せず加わるケイ素、マンガン、リン及び硫黄を含む。特別な作用を達成するための更に別の合金元素の添加、並びにマンガン及びケイ素含有率の意図的な増大は、合金化鋼をもたらす。C含有率を高めると鋼の強度及び焼入れ性が向上し、これに対して、それの延び、可鍛性、溶接性及び(切削工具による)加工性は低下する。水、酸及び高温のガスに対する耐食性は、実用上、炭素による影響は受けない。
【0019】
本発明によるコンセプトでは、炭素の割合は比較的小さく抑えられ、その結果、強度と延びとの間の最適な関係が得られる。目的は、最大の変形性を達成することである。更に、炭素はオーステナイト形成体である。
【0020】
マンガン(Mn)
全般的情報:
−Mnは、臨界冷却速度を非常に強く低め、それによって焼入れ性を高める。
−降伏点及び強度は、Mnの添加によって向上する。
−4%を超える含有率は、ゆっくりとした冷却においても、脆いマルテンサイト組織の形成をもたらす。
−Mn含有率が12%を超える鋼は、Cの割合が同時に高い場合ではオーステナイト系である、なぜならば、Mnはγ領域を大きく拡大するからである。
【0021】
Mnはオーステナイト形成体であり、そして本発明では主としてNiのためのより有利な代替品として使用される。それ故、このコンセプトでは、10〜20%の割合でも使用される。
【0022】
クロム(Cr)
全般的情報:
−マルテンサイトの形成に必要な臨界冷却速度を低める。
−焼入れ性を向上し、焼戻し性を改善する。
−Crは、スケーリング抵抗性を高める。
−Crは、γ領域を縮小し、それによってフェライト領域を拡大するが、オーステナイト系Cr−Mn鋼またはCr−Ni鋼におけるオーステナイトを安定化する。
−クロムは、10.5%質量%を超えると、酸化クロム層を形成し、それによって更なる酸化が防がれる。この酸化物層がダメージを受けると、裸の金属が大気と接触し、そして新しい不動態化層が自動的に形成される。すなわち、層は自己修復性である。
【0023】
本発明によれば、Crの主たる役割は、腐食に対する保護である。このコンセプトでは製品は腐食性媒体中で使用されるために、ここでは、高められた腐食保護を得るために、14〜16%のCr含有率が使用される。
【0024】
ニッケル(Ni)
全般的情報:
ニッケルは、安定な鉄−炭素系に従って凝固を促進する合金元素の一つである。臨界冷却速度を低めることによって、ニッケルは、無心焼入れ・焼戻しを増進する。また、ニッケルはとりわけ靱性を高め、特に低温領域では結晶粒微細化効果があり、そして過熱に対する敏感さを低減させる。18/10クロム−ニッケル鋼(1.4301)は、耐食性オーステナイト鋼の主要な代表物の一つである。
【0025】
既に述べたように、ニッケルは、比較的高価な合金元素であり、そして本発明によれば、ここではその割合はマンガンによって置き換えられる。しかし、或る一定の割合によって靱性は高めることができ、そしてそれによって、オーステナイトの安定性も有利に影響を受け得る。更に、ニッケルは、耐食性に対しても有利な効果を持つ。
【0026】
窒素(N)
全般的情報:
窒素は、炭素と類似してオーステナイト形成体として作用する。しかし、窒素に対する鉄の比較的低い最大溶解度は、炭素に対するよりも明らかに高い。他の元素の合金化または加圧窒化によって、鋼中の窒素含有率を大きく高めることができ、オーステナイト鋼中のニッケルの一部が炭素の作用を置き換え、そして炭素含有率を減少することができる。
【0027】
本発明によれば、窒素は炭素の代替物として役立ち、そして耐食性を向上する。更に、窒素は、オーステナイト形成体であるニッケルの代替として作用する。
【0028】
オーステナイト形成体:
オーステナイト領域を拡大しかつオーステナイトを安定化させる合金元素。Ni、Co、Mn、N及びCは最も重要な代表物である。シェフラー−ディロング図を用いて、生じる高合金化鋼の組織を、化学組成に基づいて決定することができる。この図では、オーステナイト形成体は、図面に示されるようにフェライト形成体とは反対側にある。
図1
【外国語明細書】
2021181614000001.pdf