【課題】リサイクルポリエステル原料を高比率で含有する再生ポリエステル樹脂からなる極細のポリエステル繊維であって、バージンポリエステル樹脂のみを使用したときと同様に生産性よく得ることができ、かつ機械的特性値にも優れる再生ポリエステル繊維を提供する。
【解決手段】a)使用済ポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステルの少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料に由来する成分を含む再生ポリエステル樹脂からなるポリエステル繊維であって、単繊維繊度が0.2〜0.9dtex、フィラメント数が40〜320本、かつ総繊度20〜200dtexであり、強度が1.5cN/dtex以上である再生ポリエステル繊維。
a)使用済ポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステルの少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料から由来する成分を含む再生ポリエステル樹脂からなるポリエステル繊維であって、単繊維繊度が0.2〜0.9dtex、フィラメント数が40〜320本、かつ総繊度20〜200dtexであり、強度が1.5cN/dtex以上であることを特徴とする再生ポリエステル繊維。
前記再生ポリエステル樹脂が、全グリコール成分の合計量を100モル%とするとき、ジエチレングリコールの含有量が4モル%以下であり、カルボキシル末端基濃度が30当量/t以下である、請求項1記載の再生ポリエステル繊維。
請求項1又は2に記載の再生ポリエステル繊維と単繊維繊度が1.0〜5.0dtexのポリエステル繊維とから構成され、総繊度が40〜300dtexの範囲にある混繊交絡糸であって、前記混繊交絡糸は、全体として仮撚捲縮を有し、前記混繊交絡糸の表面部分において、再生ポリエステル繊維による突出部が形成されている、混繊交絡糸。
単繊維繊度が1.0〜5.0dtexのポリエステル繊維が、a)使用済ポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステルの少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料から由来する成分を含む再生ポリエステル樹脂からなるポリエステル繊維である、請求項3記載の混繊交絡糸。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の再生ポリエステル繊維は、a)使用済ポリエステル製品及びb)ポリエステル樹脂又はポリエステル製品を製造する工程で発生するポリエステル屑の少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料から由来する成分を含む再生ポリエステル樹脂からなるものである。
【0015】
本発明の再生ポリエステル繊維を構成する再生ポリエステル樹脂(以下、「本発明樹脂」と表記することがある)は、a)使用済ポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステルの少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料から由来する成分を含む。
上記a)の使用済みポリエステル製品としては、例えば一度市場に出回り、使用後に回収されたポリエステル成形品(繊維を含む。)等が挙げられる。その代表例としては、PETボトル等のような容器又は包装材料が挙げられる。
【0016】
上記b)のポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステルは、製品化に至らなかったポリエステルであり、例えば規格を外れた樹脂ペレット、成形時に不要になった材料、成形時に切断された断片、成形時、加工時等に発生した屑、銘柄変更時に発生する移行品の裁断物、試作品・不良品の裁断物等が挙げられる。
上記a)及びb)は、その形態等は限定されず、必要に応じてさらに粉砕、切断等の加工を行うことによりペレット化されていても良いし、あるいは溶融してペレット化されていても良い。
【0017】
また、上記a)及びb)のリサイクルポリエステル原料としては、結晶質又は非晶質のいずれのものであっても良い。従って、例えば熱処理を行っていない非晶質のポリエステル屑のペレット、熱処理を施した結晶質ペレット、結晶質ペレットと非晶質ペレットとの混合品等を使用することができる。本発明では、特に缶内への投入や解重合反応時にペレット同士の融着を防止する目的で結晶性のリサイクルポリエステル原料を用いることが好ましい。従って、上記a)又はb)の材料を熱処理により結晶化したもの(結晶化ペレット等)を好適に用いることができる。
【0018】
本発明樹脂としては、前記リサイクルポリエステル原料を40質量%以上含有することが好ましく、中でも50質量%以上含有することが好ましい。リサイクルポリエステル原料の含有量が40質量%未満であると、環境問題に配慮するという目的を果たすことができないものとなる。リサイクルポリエステル原料の含有量の上限については、特に限定するものではないが、後述する再生ポリエステル樹脂の製造方法によれば、リサイクルポリエステル原料の含有量が40〜80質量%の再生ポリエステル樹脂まで容易に得ることが可能である。
【0019】
本発明樹脂は、下記に示す(1)、(2)の特性値を同時に満足するものであり、かつ(3)の特性値を満足することが好ましい。つまり、本発明樹脂は、後述する製造方法を採用することにより、このような特性値を満足することが可能であり、バージンポリエステル樹脂と同等の特性を有するものを得ることができたものである。
(1)全グリコール成分の合計量を100モル%とするとき、ジエチレングリコールの含有量が4モル%以下。
(2)カルボキシル末端基濃度が30当量/t以下。
(3)平均昇圧速度が0.6MPa/h以下である。ただし、平均昇圧速度は、下記の手順によって算出される値である。エクストルーダー及び圧力センサを含む昇圧試験機を用い、エクストルーダーの先端にステンレス鋼製フィルター(呼び寸法メッシュ:1400メッシュ、織り方:綾畳織、縦メッシュ:165メッシュ、横メッシュ:1400メッシュ、縦線径:0.07mm、横線径:0.04mm、濾過粒度:12μm)をセットし、ポリエステル樹脂をエクストルーダーにて300℃で溶融し、前記フィルターからの吐出量29.0g/分で当該溶融物を押し出した時の前記フィルターにかかる圧力値として、押し出し開始時の圧力値を「初期圧力値(MPa)」とし、その後連続して12時間押し出しをした時点の圧力値を「最終圧力値(MPa)」とした場合、それらの圧力値に基づいて下記計算式Aにより上記平均昇圧速度を算出する。
平均昇圧速度(MPa/h)=(最終圧力値−初期圧力値)/12)・・・A)
【0020】
本発明樹脂は、全グリコール成分の合計量を100モル%とするとき、ジエチレングリコールの含有量が4モル%以下であり、その中でも3.5モル%以下であることが好ましい。特に、後述する製造方法により得られる本発明樹脂においては、エチレングリコールを原料の一つとして用いるが、その際の副生成物としてジエチレングリコールが生じ得る。本発明樹脂は、その副生するジエチレングリコールの量が少ないものであり、ジエチレングリコールの含有量が4モル%以下であることにより、結晶性にすぐれた性能を有している。このため、バージンポリエステルと同様に生産性よく溶融紡糸を行うことができ、強度、伸度等の機械的特性値に優れた繊維を得ることが可能となる。なお、ジエチレングリコールの含有量の下限値は、例えば0.5モル%程度とすることができるが、これに限定されない。
【0021】
本発明樹脂は、カルボキシル末端基濃度が30当量/t以下であり、特に25当量/t以下であることが好ましく、その中でも20当量/t以下であることが最も好ましい。カルボキシル末端基濃度が30当量/t以下とすることにより、耐熱性に優れた性能を有しており、バージンポリエステルと同様に生産性よく溶融紡糸を行うことができ、強度、伸度等の機械的特性値に優れた繊維を得ることが可能となる。なお、カルボキシル末端基濃度の下限値は、例えば5当量/t程度とすることができるが、これに限定されない。
【0022】
本発明樹脂は、次の方法により測定される平均昇圧速度が0.6MPa/h以下であることが好ましく、中でも0.5MPa/h以下であることが好ましく、さらには0.4MPa/h以下であることが好ましい。本発明における平均昇圧速度は、各種無機物に由来する異物や非ポリエステル樹脂に由来する異物の混入量の多さの指標となるものであり、平均昇圧速度が小さいほど異物の混入量が少ないことを示すものである。平均昇圧速度が0.6MPa/h以下であることにより、バージンポリエステルと同様に生産性よく溶融紡糸を行うことができ、強度、伸度等の機械的特性値に優れた繊維を製造することも可能となる。なお、平均昇圧速度の下限値は、例えば0.01MPa/h程度とすることができるが、これに限定されない。
【0023】
平均昇圧速度の測定方法は、エクストルーダー及び圧力センサを含む昇圧試験機を用い、エクストルーダーの先端に濾過粒度12μmのステンレス鋼製綾畳織フィルターをセットし、ポリエステル樹脂をエクストルーダーにて300℃で溶融し、前記フィルターからの吐出量29.0g/分で当該溶融物を押し出した時の前記フィルターにかかる圧力値として、押し出し開始時の圧力値を「初期圧力値(MPa)」とし、その後連続して12時間押し出しをした時点の圧力値を「最終圧力値(MPa)」とした場合、それらの圧力値に基づいて下記計算式Aにより上記平均昇圧速度を算出する:
平均昇圧速度(MPa/h)=(最終圧力値−初期圧力値)/12)・・・A)
という方法によるものである。
【0024】
本発明樹脂は、特に種類は限定されないが、その中でもポリエチレンテレフタレート(PET)を主体とするものであることが好ましい。本発明のポリエステル樹脂中におけるPETの含有量は70質量%以上であることが好ましく、中でも80質量%以上であることが好ましく、さらには90〜100質量%であることが好ましい。従って、例えばPET含有量95〜99質量%の再生ポリエステル樹脂も、本発明に包含される。
【0025】
特に、後記の本発明樹脂の製造方法においては、通常はエチレングリコールとテレフタル酸の重縮合物であるPETを得ることができるが、リサイクルポリエステル原料において、エチレングリコールとテレフタル酸以外の成分が存在する際には、PET以外のポリエステル樹脂が重縮合反応により生成する場合もある。このため、本発明樹脂としては、主体となるPET以外に、酸成分又はグリコール成分として、以下に示す成分が共重合されていても良い。これらの成分は2種以上含まれていても良い。
【0026】
酸成分としては、例えばイソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、1、4−シクロヘキサンジカルボン酸、ドデカン二酸等、ダイマー酸、更には無水トリメリット酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、1、4−シクロヘキサンジカルボン酸、セバシン酸、ダイマー酸等が挙げられる。グリコール成分としては、例えばネオペンチルグリコール、1、4−ブタンジオール、1、2−プロピレングリコール、1、5−ペンタンジオール、1、3−プロパンジオール、1、6−ヘキサメチレンジオール、ジエチレングリコール、1、4−シクロヘキサンジメタノール、ダイマージオール、ブチルエチルプロパンジオール、(2−メチル1、3−プロパンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノールA又はビスフェノールSのエチレンオキシド付加体等を挙げることができる。
【0027】
本発明の再生ポリエステル繊維は、単繊維繊度が0.2〜0.9dtex、フィラメント数が40〜320本、かつ総繊度20〜200dtexのマルチフィラメントである。
中でも、単繊維繊度は0.6dtex以下であることが好ましく、特に0.2〜0.6dtexであることが好ましい。フィラメント数は、中でも50〜300本であることが好ましく、特に50〜180本であることが好ましい。総繊度は、中でも30〜150dtexであることが好ましく、特に40〜120dtexであることが好ましい。
【0028】
本発明の再生ポリエステル繊維は、前記したような特性値を有する本発明樹脂を用いることにより、異物が少なく、かつ耐熱性(熱安定性)に優れた特性を有するため、バージンポリエステル樹脂を用いたときと同様の単繊維繊度が小さいポリエステル繊維を得ることができる。
さらには、本発明の再生ポリエステル繊維は、本発明樹脂を用いることにより、単繊維繊度が小さいながらも、強度が1.5cN/dtex以上、伸度が10〜300%のものとすることができる。本発明の再生ポリエステル繊維は、延伸糸、未延伸糸のいずれであってもよく、延伸糸の場合は、強度が2cN/dtex以上、伸度が20〜60%であることが好ましく、未延伸糸の場合は、強度が1.5cN/dtex以上、伸度が50〜200%であることが好ましい。
【0029】
次に、本発明の混繊交絡糸について説明する。本発明の混繊交絡糸は、本発明の再生ポリエステル繊維(以下、再生ポリエステル繊維(A)と表記することがある)と単繊維繊度が1.0〜5.0dtexのポリエステル繊維(B)とから構成され、総繊度が40〜300dtexの範囲にあるものであり、より好ましくは50〜180dtexである。
【0030】
本発明の混繊交絡糸においては、再生ポリエステル繊維(A)及びポリエステル繊維(B)の単繊維繊度を、それぞれ上記のような特定の範囲に設定することにより、再生ポリエステル繊維(A)とポリエステル繊維(B)とを十分に絡めさせることができる。この絡まりにより、本発明の混繊交絡糸の表面部分において、相対的に細い再生ポリエステル繊維(A)による突出部が形成されやすくなる。なお、本発明において、再生ポリエステル繊維(A)による突出部とは、混繊交絡糸の表面部分において、再生ポリエステル繊維(A)のループ、たるみなどによって、再生ポリエステル繊維(A)が外側に突出した部分をいう。
【0031】
ポリエステル繊維(B)については、単繊維繊度が1.0〜5.0dtexであり、中でも1.5〜3.0dtexであることが好ましい。また、総繊度は、20〜70dtexであることが好ましく、中でも20〜50dtexであることが好ましい。単繊維繊度が1.0dtex未満になると、再生ポリエステル繊維(A)によって形成された上記の微細な突出部を混繊交絡糸の表面部分において保持することが困難となる。また、再生ポリエステル繊維(A)とポリエステル繊維(B)の単繊維繊度とが同程度になると、混繊交絡糸を織編物とした際に、織編物が柔らかくなり過ぎ、張りコシのない織編物になりやすくなる。
【0032】
一方、ポリエステル繊維(B)の単繊維繊度が5.0dtexを超えると、上記範囲の単繊維繊度を有する再生ポリエステル繊維(A)と混繊した場合にも、織編物全体として硬い風合いのものとなる。さらに、交絡状態が悪くなって、織編物の表面に、上記のような微細な突出部を形成し難くなる。ポリエステル繊維(B)の総繊度が20dtex未満であると、再生ポリエステル繊維(A)によって形成された微細な突出部を混繊交絡糸の表面部分において保持することが困難になるという問題があり、一方、70dtexを超えると、再生ポリエステル繊維(A)と混繊した場合にも織物全体として風合いが固くなるという問題がある。
【0033】
そして、ポリエステル繊維(B)は、PETを主体とするポリエステル樹脂からなるものであることが好ましいが、環境問題を配慮すると、a)使用済ポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステルの少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料から由来する成分を含む再生ポリエステル樹脂からなるものであることが好ましい。中でも、再生ポリエステル樹脂が、本発明樹脂であることが好ましい。
【0034】
本発明の混繊交絡糸は、全体として仮撚捲縮を有する。本発明の混繊交絡糸において、仮撚捲縮の度合い、すなわち捲縮率としては10〜45%が好ましく、より好ましくは20〜40%である。混繊交絡糸が適度な捲縮率を有していることにより、混繊交絡糸の表面部分に上記のような微細な突出部を形成し易くなる。なお、混繊交絡糸の捲縮率が10%未満となる場合、捲縮率が低いため、混繊交絡糸の表面部分に上記のような突出部を形成することが難しく、織編物としたときに撥水性能を十分に発揮できなくなる。また、混繊交絡糸の捲縮率が45%を超えると、混繊交絡糸のストレッチ性能が強過ぎるため、高撥水性の織編物には適さない。すなわち、混繊交絡糸が伸びたときに平坦な構造となるため、上記のような突出部が維持されにくくなり、撥水性能が低下する。
【0035】
本発明において、混繊交絡糸の捲縮率は、以下の方法により測定して得られた値である。まず、枠周1.125mの検尺機を用いて巻き数5回で混繊交絡糸をカセ取りした後、カセを室温下フリー状態でスタンドに一昼夜吊り下げる。次に、カセに0.000147cN/dtexの荷重を掛けたまま沸水中に投入し30分間湿熱処理する。その後、カセを取り出し、水分を濾紙で軽く取り、室温下フリー状態で30分間放置する。そして、カセに0.000147cN/dtexの荷重及び0.00177cN/dtex(軽重荷)を掛け、長さXを測定する。続いて、0.000147cN/dtexの荷重は掛けたまま、軽重荷に代えて0.044cN/dtexの荷重(重荷重)を掛け、長さYを測定する。その後、捲縮率(%)=(Y−X)/Y×100なる式に基づき、算出する。捲縮率の測定は、混繊交絡糸の5本について行い、その平均値(n=5)をその糸の捲縮率とする。
【0036】
本発明の混繊交絡糸において、再生ポリエステル繊維(A)とポリエステル繊維(B)との質量比率(A/B)は、45/55〜80/20の範囲であることが好ましく、中でも50/50〜75/25の範囲であることが好ましい。再生ポリエステル繊維(A)の質量比率(混率)が45%未満の場合、上記のような突出部を混繊交絡糸の表面部分に形成することが困難となり、織編物に十分な撥水性能を付与することが難しくなる。また、混繊交絡糸中の再生ポリエステル樹脂の使用割合が少なくなるため、環境に配慮した繊維とすることができなくなる。
一方、再生ポリエステル繊維(A)の混率が80%を超えると、ポリエステル繊維Bの割合が少なすぎて、上記の突出部を表面部分に保持することが難しくなる。このため、微細な突出部が潰れ易くなり、織編物に対して十分な撥水性能を付与することが困難となる。
【0037】
本発明の混繊交絡糸は、糸全体として混繊交絡されている。混繊交絡糸の交絡数としては、好ましくは150〜200個/m、好ましくは160〜190個/mである。交絡数が150個/m未満である場合、交絡状態が解け易くなり、混繊交絡糸の表面部分において上記のような微細な突出部を形成することが難しくなる場合がある。また、交絡状態が解け易くなると、織編物の製造工程において必然的に受けるガイド摩耗によって、糸条内にズレが発生し、織編物の欠点を誘発しやすくなる場合がある。
一方、交絡数が200個/mを超えると、再生ポリエステル繊維(A)とポリエステル繊維(B)とが絡まり過ぎて、捲縮が消失し、上記の突出部も形成されにくくなるため、織編物に十分な撥水性能を付与し難くなる。なお、本発明において、混繊交絡糸の交絡数は、JIS L1013 8.15フック法に基づいて測定して得られた値である。
【0038】
本発明の混繊交絡糸は、本発明の再生ポリエステル繊維を用いているため、バージンポリエステル樹脂を用いた場合と同様の強伸度を有するものとすることができ、強度は2.5cN/dtex以上であることが好ましく、伸度は20〜60%であることが好ましい。
【0039】
次に、本発明樹脂の製造方法について説明する。本発明樹脂の製造方法においては、(1)〜(5)に示す工程を順に行うことが重要である。
(1)エチレングリコールとテレフタル酸のスラリーを添加し、エチレンテレフタレートオリゴマーを得る。
(2)(1)で得られたオリゴマーに対して、エチレングリコールを添加する。
(3)(2)で得られたエチレングリコールを添加したオリゴマー中に、常圧下、撹拌しながらリサイクルポリエステル原料を、全グリコール成分/全酸成分のモル比が1.08〜1.35となるように投入し、245〜280℃の熱処理条件下で解重合を行う。
(4)(3)で得られた解重合体を濾過粒度10〜25μmの金属製のフィルターを通過させて異物を濾過する。
(5)(4)で得られた異物濾過後の解重合体に、重合触媒を添加し、温度260℃以上、1.0hPa以下の減圧下で重縮合反応を行う。
【0040】
まず、(1)の工程においては、リサイクルポリエステル原料〔a)使用済ポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステルの少なくとも1種〕を解重合する前段階として、エチレングリコールとテレフタル酸のスラリーを添加し、エステル化反応物(エチレンテレフタレートオリゴマー)を得る。エチレンテレフタレートオリゴマーの量は、最終的に得られる再生ポリエステル樹脂100質量%中の0.20〜0.80質量%とすることが好ましく、0.30〜0.70質量%とすることがより好ましい。
【0041】
エチレンテレフタレートオリゴマーの量が上記より少ない場合(3)の工程においてリサイクルポリエステル原料を投入した際に、リサイクルポリエステル原料同士がブロッキングを起こしやすくなり、攪拌機に過大な負荷がかかるため好ましくない。
一方、エチレンテレフタレートオリゴマーの量が上記範囲より多い場合は解重合反応に特に問題は起きないが、最終的に得られる再生ポリエステル樹脂のリサイクル率が低くなり好ましくない。
【0042】
(2)の工程においては、(1)で得られたエチレンテレフタレートオリゴマーに対して、エチレングリコールを添加する。
このときのエチレングリコールの添加量は、(3)の工程における解重合反応を十分に進行させるため、エチレンテレフタレートオリゴマーを100質量%に対して、5〜15質量%とすることが好ましく、中でも10〜15質量%とすることがより好ましい。エチレングリコールの添加量が15質量%を超えると、反応器内でエチレンテレフタレートオリゴマーが固化しやすくなり、以後の反応が継続できなくなる場合があり、好ましくない。
エチレンテレフタレートオリゴマー中にエチレングリコールを投入する際は、オリゴマーの固化を防ぐ目的で、攪拌機を回しながら内容物の温度を均一にし、投入することが好ましい。
【0043】
(3)の工程においては、(2)で得られたエチレングリコールを添加したオリゴマー中に、撹拌しながらリサイクルポリエステル原料を投入する。このとき、全グリコール成分/全酸成分のモル比が1.08〜1.35となるように投入し、245〜280℃の熱処理条件下で解重合を行う。
本発明の製造方法においては、この工程が重要である。つまり、リサイクルポリエステル原料を利用した従来の方法においては、リサイクルポリエステル原料のみを用いて解重合を行っているが、本発明においては、エチレンテレフタレートオリゴマーとエチレングリコールの存在下でリサイクルポリエステル原料の解重合を行い、かつオリゴマー、エチレングリコール、リサイクルポリエステル原料の全ての成分を、全グリコール成分/全酸成分のモル比が1.08〜1.35となるようにしてリサイクルポリエステル原料を投入し、解重合を行うものである。全グリコール成分/全酸成分のモル比は、中でも1.10〜1.33であることが好ましく、さらには、1.12〜1.30であることが好ましい。
【0044】
上記したような(1)〜(3)の工程を行うことにより、各種の無機物のみならず、非ポリエステル樹脂由来の異物の析出が効率よく行われるため、(4)の工程において、これらの異物をもれなく濾過することができる。そして、(5)の工程の重縮合反応において、本発明の特性値として、ジエチレングリコールの含有量やカルボキシル末端基濃度が特定量以下のものであり、かつ異物の混入量が少ない再生ポリエステル樹脂を得ることが可能となる。
なお、上記の解重合反応により、リサイクルポリエステル原料をモノマーにまで分解されずに、繰り返し単位が5〜20程度のオリゴマーまで分解されることが望ましい。このように制御することにより、各種の無機物のみならず、非ポリエステル樹脂由来の異物の析出が効率良く行われる結果、より多くの異物を取り除くことが可能となる。
【0045】
解重合反応を行う際の全グリコール成分/全酸成分のモル比が上記範囲外であると、得られる再生ポリエステル樹脂は、本発明で規定する、カルボキシル末端基濃度、ジエチレングリコールの含有量の少なくとも一方を満足しないものとなり、また、平均昇圧速度が高いものとなる。これは、解重合反応を行う際の全グリコール成分/全酸成分のモル比が上記範囲外である場合、各種の無機物や非ポリエステル樹脂由来の異物の析出が効率よく行われないため、(4)の工程において、これらの異物をもれなく濾過することができず、(5)の工程の重縮合反応後に異物が析出し、その結果、平均昇圧速度が高い再生ポリエステル樹脂となる。
【0046】
本発明の製造方法で用いる反応器は、容量や攪拌翼の形状は、一般的に使用されているエステル化反応器で特に問題ないが、解重合反応を効率的に進めるため、エチレングリコールを系外に溜出させない蒸留塔を併設している構造となっていることが好ましい。
リサイクルポリエステル原料を投入する際には、常圧下で撹拌しながら行うことが好ましく、少量の不活性ガス(一般的には窒素ガスを使用)でパージした状態で投入することがより好ましい。
【0047】
(3)の工程で行う解重合時の反応温度は、反応器の内温を245〜280℃の範囲に設定して行うことが好ましく、中でも内温を255〜280℃の範囲に設定して行うことがより好ましい。解重合時の反応温度が245℃未満になる場合には、反応物が固化し、操業性が悪化するとともに、再生ポリエステル樹脂が得られたとしても、ジエチレングリコールの含有量やカルボキシル末端基濃度が高くなりすぎる。反応温度が280℃を超える場合は、得られる再生ポリエステル樹脂のジエチレングリコールの含有量やカルボキシル末端基濃度が高くなりすぎる。
また、解重合の反応時間(リサイクルポリエステル原料の投入終了後からの反応時間)は、4時間以内が好ましく、ジエチレングリコールの副性量を抑えること、ポリエステルの色調悪化を抑える観点から、2時間以内とすることがより好ましい。
【0048】
(4)の工程においては、(3)の工程で解重合反応を行った解重合体を、濾過粒度10〜25μmの金属製のフィルターを通過させて異物を濾過する。上記したように、(3)の工程の条件で解重合反応を行うことにより、各種の無機物のみならず、非ポリエステル樹脂由来の異物の析出が効率よく行われるため、濾過粒度10〜25μmの金属製のフィルターを通過させることにより、析出した異物を濾過し、異物の混入量の少ない解重合体を得ることができる。
【0049】
濾過粒度が25μmより大きい金属製のフィルターを使用すると、ポリマー中の異物を十分に除去できず、得られる再生ポリエステル樹脂中の異物が多くなる。このため、このような樹脂を用いて紡糸を行うと、ノズルパックの昇圧や切糸が生じる。一方、濾過粒度が10μmよりも小さい金属フィルターを使用すると、異物による目詰まりが生じやすく、フィルターライフが短くなることにより、コスト的に不利となり、また、操業性も悪化する。
【0050】
また、本発明の(4)の工程で使用できる金属製のフィルターとしては、一般的なもので特に問題ないが、スクリーンチェンジャー式のフィルターやリーフディスクフィルターやキャンドル型焼結フィルターなどが挙げられる。
【0051】
そして、本発明の製造方法においては、上記の工程(4)を経て得られた異物濾過後の解重合体に、重合触媒を添加し、温度260℃以上、1.0hPa以下の減圧下で重縮合反応を行う。重合触媒としては、例えば、ゲルマニウム、アンチモン、チタンおよびコバルト化合物などの1種以上を用いることができるが、好ましくはゲルマニウムまたはアンチモン化合物を使用する。さらに、得られる再生ポリエステル樹脂の透明性を重視する場合においては、ゲルマニウム化合物を使用することが好ましい。ゲルマニウムまたはアンチモンの化合物としては、それらの酸化物、無機酸塩、有機酸塩、ハロゲン化物、硫化物などが例示される。これらの重縮合触媒は、生成するポリエステル樹脂の酸成分1モルに対し5×10
−5モル/unit以上とすることが好ましいが、中でも6×10
−5モル/unit以上とすることがより好ましい。
なお、リサイクルポリエステル原料中に含まれる重合触媒も重縮合反応時に触媒として作用する場合もあるため、(4)の工程で重合触媒を添加する際には、リサイクルポリエステル原料中に含まれる重合触媒の量や種類を考慮することが好ましい。
【0052】
また、重縮合反応時には、上記の重合触媒と併せて、脂肪酸エステルやヒンダードフェノール系抗酸化剤やリン化合物を添加して、重縮合反応を行うこともできる。
脂肪酸エステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート等が挙げられる。中でも、グリセリンモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレートが好ましい。
【0053】
ヒンダードフェノール系抗酸化剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート〕、3,9−ビス{2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕−1,1’−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン等が用いられるが、効果とコストの点で、テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタンが好ましい。
【0054】
リン化合物としては、亜リン酸、リン酸、トリメチルフォスファイト、トリフェニルフォスファイト、トリデシルフォスファイト、トリメチルフォスフェート、トリデシルフォスフェート、トリフェニルフォスフォート等のリン化合物を用いることができる。
【0055】
そして、重縮合反応槽において、温度260℃以上、1.0hPa以下の減圧下で重縮合反応を行う。重縮合反応温度が260℃未満であったり、重縮合反応時の圧力が1.0hPaを超えると、重縮合反応時間が長くなるため、生産性に劣るものとなる。
重縮合反応温度は、中でも270℃以上とすることがより好ましい。ただし、重縮合反応温度が高過ぎると熱分解によりポリマーが着色し、色調が悪化すること、同じく熱分解により末端基量(COOH)が高くなるため、本発明においては、重縮合反応温度の上限は、285℃以下とすることが好ましい。
【0056】
上記の重縮合反応により得られる本発明樹脂の極限粘度は、溶融紡糸を行うことを考慮し、0.5〜1.0であることが好ましい。
【0057】
次に、本発明の再生ポリエステル繊維、混繊交絡糸および織編物の製造方法を説明する。
まず、本発明の再生ポリエステル繊維は、エクストルーダー型溶融紡糸機を用い、本発明樹脂を温度280〜310℃の温度範囲で溶融し、紡糸ノズルより紡出し、500〜4000m/分の紡糸速度で巻き取る。得られた未延伸糸を延伸装置にて延伸温度20〜200℃、延伸倍率1.1〜5.0倍で延伸し、巻き取ることにより得ることができる(延伸糸の場合)。
また、本発明の再生ポリエステル繊維に延伸を行わない場合には、本発明樹脂を温度280〜310℃の温度範囲で溶融し、紡糸ノズルより紡出し、4000〜8000m/分の紡糸速度で巻き取ることにより得ることができる(未延伸糸の場合)。
さらには、上記のように延伸を行わずに巻き取った繊維に対して、加工速度100〜700m/分、延伸倍率1.10〜1.30倍の条件で仮撚加工を行ったものであってもよい(仮撚加工糸の場合)。
【0058】
次に、本発明の混繊交絡糸を製造する際には、上記のようにして得られた再生ポリエステル繊維(A)とポリエステル繊維(B)を用意するが、両繊維ともに未延伸のものを用い、混繊交絡する段階において延伸を施すことが好ましい。
本発明の混繊交絡糸の製造方法を、
図1の模式図を参照しながら詳述する。まず、再生ポリエステル繊維(A)、ポリエステル繊維(B)のパッケージYA、YBをそれぞれクリールに仕掛ける。次にポリエステル繊維(B)を第1供給ローラ1へ導入する。そして、第1供給ローラ1と第2供給ローラ2との間で、ポリエステル繊維(B)を延伸倍率1.1〜1.4倍で延伸する延伸工程を行う。ここで、延伸工程における延伸倍率とは、第1供給ローラ1の表面速度と第2供給ローラ2の表面速度との比(延伸倍率=第2供給ローラ2の表面速度/第1供給ローラ1の表面速度)をいう。伸度の高い方が、後の複合仮撚り工程で糸長が長くなり、後に糸長の長い繊維が混繊交絡糸の外側(表面側)へ配され易くなる。その結果、上述の通り、再生ポリエステル繊維(A)による突出部を混繊交絡糸の表面に形成しやすくなる。また、当該突出部は、混繊交絡糸の表面部分に形成された再生ポリエステル繊維(A)が緩く絡み合った部分から突出する。
【0059】
ポリエステル繊維(B)の延伸は、室温中で行ってもよい。または、
図2に示すように、第1供給ローラ1と第2供給ローラ2との間に第2ヒーター10などを設置して、熱を与えながら行ってもよい。これにより、ポリエステル繊維(B)の物性が安定するとともに、染色が施された場合に再生ポリエステル繊維(A)とポリエステル繊維(B)との染着差(色差)が低減し、織編物とした場合にイラツキのないものとなる。第2ヒーター10による熱延伸温度は、例えば、150〜190℃程度である。
【0060】
次に、延伸後の再生ポリエステル繊維(A)とポリエステル繊維(B)とを、所定条件下で複合仮撚りする複合仮撚り工程を行う。加工速度100〜700m/分、延伸倍率1.10〜1.30倍の条件で複合仮撚りする。具体的には、
図1に示すように、上記で延伸された2種類の繊維を第2供給ローラ2へ同時に導入し、第1ヒーター3、仮撚具4を経て、第1引取ローラ5から引き出すことで、複合仮撚糸(C)を得る。
【0061】
複合仮撚糸(C)において、再生ポリエステル繊維(A)の糸長をポリエステル繊維(B)の糸長よりも、5%以下程度長くすることが好ましく、1〜4%程度長くすることがより好ましい。5%を超えて再生ポリエステル繊維(A)がポリエステル繊維(B)よりも長くなると、複合仮撚糸の嵩高性が増し、ひいては突出部が大きくなり、撥水性能が低下するので好ましくない。
【0062】
複合仮撚り工程においては、両繊維を、所定加工速度及び所定延伸倍率の下、適宜の仮撚具により複合仮撚りすることが好ましい。仮撚りの方式は、一般に、スピンドル方式とフリクション方式とに大別される。本発明では、これらのいずれの方式も採用できる。
【0063】
複合仮撚り工程の後、複合仮撚糸(C)は、第1引取ローラ5によって流体ノズル6へ導かれ、流体ノズル6を用いて混繊交絡する。すなわち、複合仮撚り工程で得られた複合仮撚糸を、例えば、流体ノズルを用いて、エアー圧0.1〜0.6Mpa、オーバーフィード率4〜5%の条件で混繊交絡する。流体ノズルとしては、特に限定されないが、一般にインターレースノズルが好適である。
【0064】
混繊交絡糸は、第2引取ローラ7を通過した後、巻取ローラ8によりパッケージ9に捲き取られる。本発明の混繊交絡糸においては、交絡数が150〜200個/m程度の範囲にあると、適度な混繊交絡を有しているといえる。
【0065】
次に、本発明の織編物について説明する。
〔織編物1〕
本発明の織編物(以下、織編物1という)は、上記した本発明の再生ポリエステル繊維を少なくとも一部に含有する織物又は編物である。織編物1中の本発明の再生ポリエステル繊維の含有量は80質量%以上であることが好ましく、中でも85質量%以上であることが好ましい。これにより、得られる織編物1は、極細ポリエステル繊維が高密度に配されたものとなり、ソフトな風合いと撥水性を有するものとすることができる。特に織物は、ノンコーティングでありながら防水性と撥水性に優れるものとなる。そして、本発明の再生ポリエステル繊維の含有量が80質量%以上であることにより、地球環境に配慮した織編物を得ることができる。
【0066】
本発明の織編物に使用する本発明の再生ポリエステル繊維としては、トータル繊度が20〜200dtexであるものが好ましく、中でも30〜200dtexであるものが好ましい。
なお、織編物1中には、本発明の再生ポリエステル繊維以外のものが含まれていてもよいが、ポリエステル繊維であることが好ましい。
【0067】
織編物1を織物とする場合は、本発明の再生ポリエステル繊維を経糸、緯糸に用い、平織、ツイル、二重織、引裂強力を考慮してリップストップ組織にすることが挙げられる。中でも平織が好ましい。
織編物1を編物とする場合は、シングルニット(天竺)、ダブルニット(スムース、ポンチ、タックリバーシブル)、トリコットのいずれでもよいが、凹凸感が少ない、表面が平滑な組織とすることが好ましい。
【0068】
そして、織編物1は、目付が30〜300g/m2であることが好ましく、中でも40〜250g/m2であることが好ましい。カバーファクターは1000〜3000であることが好ましく、中でも1300〜2800であることが好ましい。
【0069】
なお、カバーファクターは、次のようにして算出する値である。
カバーファクター(CF)とは、織物の場合は下記計算式(B)によって算出され、編物の場合は下記計算式(C)によって算出されるものである。
【0070】
DT:マルチフィラメントの繊度(dtex)WAD:経糸密度(本/2.54cm) WED:緯糸密度(本/2.54cm) CD:コース密度(本/2.54cm) WD:ウェール密度(本/2.54cm)
なお、マルチフィラメントの繊度は、織物の場合はJIS L 1096:2010 8 .9.9.1.aのA法、編物の場合はJIS L 1096:2010 8.9.9.1 .bに従い測定、算出するものとする。
経糸密度及び緯糸密度は、JIS L 1096 :2010 8.6.1A法、コース密度、ウェール密度はJIS L 1096:20 10 8.6.2に従い測定、算出するものとする。
【0071】
また、本発明の織編物1には、撥水性を付与するために撥水剤を使用することが好ましい。撥水剤としては、市販のものを用いることができるが、例えば、フッ素系撥水剤として旭硝子株式会社製「アサヒガード(商品名)」、日華化学株式会社製「NKガード(商品名)」などが挙げられる。フッ素系撥水剤としては、特に、環境保護の点からパーフルオロアルキル酸を含まないフッ素系撥水剤が好適である。フッ素系撥水剤は、水性エマルジョンの形態で使用することが好ましい。
【0072】
また、撥水剤としては、環境配慮の面から、フッ素を含まない撥水剤(即ち、非フッ素系撥水剤)を使用してもよい。非フッ素系撥水剤としては、例えば炭化水素系、シリコーン系、ワックス系などが挙げられる。非フッ素系撥水剤としては市販品を用いることができ、炭化水素系であれば例えば日華化学株式会社製「ネオシード(商品名)」、大原パラジウム製「パラジウムECO(商品名)」;シリコーン系であれば例えば日華化学株式会社製「ドライポン600E(商品名)」、信越化学工業株式会社製「ポロン(商品名)」;ワックス系であれば例えば日華化学株式会社製「TH−44(商品名)」、高松油脂製「ネオラックス(商品名)」などが挙げられる。特に、他の薬剤との併用で洗濯耐久性が高くしやすい炭化水素系が好適である。
【0073】
〔織編物2〕
本発明の織編物(以下、織編物2という)は、本発明の混繊交絡糸を少なくとも一部に含有する織物又は編物である。本発明の織編物2中に含まれる本発明の混繊交絡糸の含有量は、20質量%以上であることが好ましく、中でも30質量%以上であることが好ましく、さらには55質量%以上であることが好ましい。
【0074】
本発明の織編物2においては、織編物を構成する混繊交絡糸の表面構造を上記特定のものとすることにより、織編物の撥水性能を高めることを特徴としている。織編物2を織物とする場合は、織物のカバーファクター(CF)が1500〜3000であることが好ましく、2200〜2800であることがより好ましい。CFが1500を下回ると、組織点の粗い織物となり、織物内に空隙が増える。そのため、その空隙に水滴が落ちる傾向となり、撥水性能の向上が期待できなくなることがある。一方、CFが3000を上回ると、組織点による拘束が強まり、織物としての引裂強力や破裂強力が低下することがある。
【0075】
また、本発明の織編物2を編物とする場合、撥水性織編物の表面の密度が、55〜150コース/2.54cmかつ45〜100ウェール/2.54cmであることが好ましく、50〜100コース/
2.54cmかつ45〜85ウェール/2.54cmであることがより好ましい。コース密度、ウェール密度のそれぞれの範囲を下回ると組織点の粗い編物となり、編物内に空隙が増える傾向が現れる。そのため、その空隙に水滴が落ちる傾向となり、撥水性能の十分な向上が期待できなくなることがある。一方、コース密度、ウェール密度のそれぞれの範囲を上回ると組織点による拘束が強まり、編物としての引裂強力や破裂強力が低下することがある。
【0076】
また、本発明の織編物2の目付けは、200g/m2以下であることが好ましく、150g/m2以下であることがより好ましい。目付けの下限値は、特に限定されないが、例えば、80g/m2である。具体的には、目付としては、好ましくは80〜200g/m2、より好ましくは80〜150g/m2である。
【0077】
また、本発明の織編物2において、織物であれば平織、綾織、朱子織、必要に応じて多重組織とすることが好ましい。編物であれば丸編の天竺、スムース、経編のトリコット、必要に応じて多重組織とすることが好ましい。編物の方が織物に比べて生地表面の凹凸が適切に維持されるため、混繊交絡糸の突出部との相乗効果で水滴転がり性に顕著に優れるものとなる。
本発明の織編物2には、撥水性を付与するために撥水剤を使用することが好ましい。撥水剤としては、市販のものを用いることができ、織編物1で示したようなフッ素系撥水剤や非フッ素系撥水剤を使用することができる。
【0078】
次に、本発明の織編物1の製造方法について説明する。
〔織編物1の製造方法〕
本発明の織編物1は、上記の再生ポリエステル繊維を製織編して生機を得た後、染色加工及び撥水加工することにより得ることができる。製織編は、公知の織機、編機を用いて行えばよく、製織編に先立つ準備工程も公知の設備を使用すればよい。
また、染色加工では、まず、生機を精練・リラックスする。精練・リラックスは、80〜130℃の温度下で連続方式またはバッチ方式により行えばよい。通常は、100℃以下で行うのが好ましく、ジェットノズルを備えた高圧液流染色機や拡布精練機を用いて行うのが好ましい。
【0079】
精練・リラックスした後、織編物をプレセットすることが好ましい。プレセットは、通常、ピンテンターを用いて、170〜200℃で30〜120秒間乾熱処理する。プレセットを行うことによって目ヨレを防止することができ、耐水圧を高くすることに効果的である。生地の設計によっては、精練・リラックスの前にプレセットをしても構わない。プレセット後は常に基づいて染色、脱水、乾燥を行う。
【0080】
染色加工した後は、織編物を撥水加工する。撥水加工では、まず、撥水剤を含む水溶液を調製する。次に、パディング法、スプレー法、キスロールコータ法、スリットコータ法などに基づき、上記後加工後の織編物に上記水溶液を付与し、105〜190℃で30〜150秒間乾熱処理すればよい。上記水溶液には、必要に応じて架橋剤、柔軟剤、帯電防止剤などを併せて含ませてもよい。撥水加工後は、撥水性能(耐水圧)のさらなる向上のため、織編物をカレンダー加工することが好ましい。
【0081】
本発明の織編物2の製造方法について説明する。
〔織編物2の製造方法〕
本発明の織編物2は、上記の混繊交絡糸を製織編して生機を得た後、これを染色加工及び撥水加工することにより得ることができる。製織編は、公知の織機、編機を用いて行えばよく、製織編に先立つ準備工程も公知の設備を使用すればよい。
【0082】
また、染色加工では、まず、生機を精練・リラックスする。精練・リラックスは、80〜130℃の温度下で連続方式またはバッチ方式により行えばよい。通常は、100℃以下でバッチ方式により行うのが好ましく、特にジェットノズルを備えた高圧液流染色機を用いて行うのが好ましい。
【0083】
精練・リラックスした後は、織編物をプレセットしても構わない。プレセットは、通常、ピンテンターを用いて、170〜200℃で30〜120秒間乾熱処理する。プレセット後は、常に基づいて染色し、脱水、乾燥を行う。
【0084】
染色加工した後は、織編物を撥水加工する。撥水加工では、まず、撥水剤を含む水溶液を調製する。次に、パディング法、スプレー法、キスロールコータ法、スリットコータ法などに基づき、上記後加工後の織編物に上記水溶液を付与し、105〜190℃で30〜150秒間乾熱処理すればよい。上記水溶液には、必要に応じて架橋剤、柔軟剤、帯電防止剤などを併せて含ませてもよい。撥水加工後は、撥水性能のさらなる向上のため、織編物をカレンダー加工してもよい。
【実施例】
【0085】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例中の各種の特性値等の測定、評価方法は次の通りである。
〔再生ポリエステル樹脂の特性〕
(a)極限粘度
フェノールと四塩化エタンとの等質量混合物を溶媒として、温度20℃で測定するものである。
(b)ポリエステル樹脂の組成
重水素化ヘキサフルオロイソプロパノールと重水素化クロロホルムとの容量比が1/20の混合溶媒に溶解させ、日本電子社製LA−400型NMR装置にて1H−NMRを測定し、得られたチャートの各成分のプロトンのピークの積分強度から、共重合成分の種類と含有量を求めた。
(c)カルボキシル末端基濃度
得られた再生ポリエステル樹脂0.1gをベンジルアルコール10mlに溶解し、この溶液にクロロホルム10mlを加えた後、1/10規定の水酸化カリウムベンジルアルコール溶液で滴定して求めた。
(d)平均昇圧速度
前記の方法で測定した。
【0086】
〔再生ポリエステル繊維の特性〕
(e)強伸度
テンシロンRTC−1210(オリエンテック社製)を用いてJIS L 1013に基づいて測定した。
(f)毛羽数
高配向未延伸糸を用いて、整経機を用いて毛羽数(個/10
8 m)を測定した。測定は繊維長3×10
8mで行った。
(g)紡糸性
高配向未延伸糸を得る際の、溶融紡糸時の糸切れの状況を、24時間連続して溶融紡糸を行った際の1錘あたりの糸切れ回数により、以下のように3段階で評価した。
○・・糸切れ回数が0回であった。
△・・糸切れ回数が1〜2回であった。
×・・糸切れ回数が3回以上であった。
(h)延伸性
高配向未延伸糸を延伸する際の糸切れの状況を、10時間連続して100錘で延伸を行った際の切断回数(合計回数)により、以下のように3段階で評価した。
○・・切断回数が0〜1回であった。
△・・切断回数が2〜4回であった。
×・・切断回数が5回以上であった。
【0087】
〔混繊交絡糸の特性〕
(i)捲縮率
枠周1.125mの検尺機を用いて巻き数5回で試料をカセ取りした後、カセを室温下フリー状態でスタンドに一昼夜吊り下げた。次に、カセに0.000147cN/dtexの荷重を掛けたまま沸水中に投入し30分間湿熱処理した。その後、カセを取り出し、水分を濾紙で軽く取り、室温下フリー状態で30分間放置した。そして、カセに0.000147cN/dtexの荷重及び0.00177cN/dex(軽重荷)を掛け、長さXを測定した。続いて、0.000147cN/dtexの荷重は掛けたまま、軽重荷に代えて0.044cN/dtexの荷重(重荷重)を掛け、長さYを測定した。その後、捲縮率(%)=(Y−X)/Y×100なる式に基づき、算出した。捲縮率の測定は、試料のそれぞれ5ずつについて行い、それぞれの平均をその試料の捲縮率とした。
(j)交絡数
混繊交絡糸の交絡数(個/m)は、JIS L1013 8.15フック法に基づいて測定した。
【0088】
〔織物の特性〕
(k)撥水性能(水滴転がり角度)
水滴転がり角度は、水平版上に取り付けた水平状の試料(織物)に、0.02mLの水を静かに滴下し、その後水平版を静かに傾斜させ、水滴が転がり始めるときの角度を測定した。
(m)風合い
得られた織編物に対し、触感により、以下の基準で判断した。
○:適度なハリコシ、柔らかさがあり、しなやかで良い
△:普通
×:硬すぎる、又はハリコシ感が無く、悪い
【0089】
〔再生ポリエステル樹脂の製造〕
再生ポリエステル樹脂A
エステル化反応器に、テレフタル酸(TPA)とエチレングリコール(EG)のスラリー(TPA/EGモル比=1/1.6)を供給し、温度250℃及び圧力50hPaの条件で反応させ、エステル化反応率95%のエチレンテレフタレートオリゴマー(数平均重合度:5)を得た。
エチレンテレフタレートオリゴマー45.0質量部をエステル化反応器に仕込み、続いてエステル化反応器の撹拌機を回した状態でエチレングリコールを10.0質量部投入した。エステル化反応器(以後「ES缶」と表記する。)の内温降下が止まったところより、55.0質量部のリサイクルポリエステル原料(ポリエステル樹脂を製造する工程で発生するポリエステル屑のペレット状のもの)をロータリーバルブを介して約2時間かけて定量投入した。
このとき、リサイクルポリエステル原料を、全グリコール成分/全酸成分のモル比(以下「G/A」と表記することがある。)が1.20となるように投入した。その後、270℃の熱処理条件下で1時間解重合反応を行った。そして、得られた解重合体を、エステル化反応器と重縮合反応器との間に目開き20μmのキャンドルフィルターをセットして重縮合反応器(以後PC缶と表記)へ圧送した後、重合触媒として三酸化アンチモンを1.0×10
−4mol/unit、二酸化チタンのEGスラリーを0.20質量%となるよう加え、PC缶を減圧にして60分後に最終圧力0.5hPa及び温度275℃で4時間、溶融重合反応を行い、再生ポリエステル樹脂A(極限粘度:0.64)を得た。
【0090】
再生ポリエステル樹脂B
再生ポリエステル樹脂Aと同様にして、エステル化反応率95%のエチレンテレフタレートオリゴマー(数平均重合度:5)を得た。
エチレンテレフタレートオリゴマー30.0質量部をES缶に仕込み、続いてES缶の撹拌機を回した状態でエチレングリコールを7.0質量部投入した。ES缶の内温降下が止まったところより、70.0質量部のリサイクルポリエステル原料(実施例1と同様のもの)をロータリーバルブを介し約2時間かけて定量投入した。
このとき、リサイクルポリエステル原料をG/Aが1.10となるように投入した。その後、270℃の熱処理条件下で1時間解重合反応を行った。そして、得られた解重合体を、ES缶とPC缶との間に目開き20μmのキャンドルフィルターをセットしてPC缶へ圧送した後、重合触媒として三酸化アンチモンを1.0×10
−4mol/unitとなるよう加え、PC缶を減圧にして60分後に最終圧力0.5hPa、温度275℃で5時間、溶融重合反応を行い、再生ポリエステル樹脂B(極限粘度:0.65)を得た。
【0091】
再生ポリエステル樹脂C
実施例1と同様にして、エステル化反応率95%のエチレンテレフタレートオリゴマー(数平均重合度:5)を得た。エチレンテレフタレートオリゴマー45.0質量部をES缶に仕込み、続いてES缶の撹拌機を回した状態でエチレングリコールを7.0質量部投入した。ES缶の内温降下が止まったところより、55.0質量部のリサイクルポリエステル原料(PETボトルを粉砕又は再溶融してペレット化したもの)をロータリーバルブを介して約2時間かけて定量投入した。
このとき、リサイクルポリエステル原料を、G/Aが1.16となるように投入した。その後、270℃の熱処理条件下で1時間解重合反応を行った。そして、得られた解重合体を、ES缶とPC缶との間に目開き20μmのキャンドルフィルターをセットしてPC缶へ圧送した後、重合触媒として三酸化アンチモンを1.0×10
−4mol/unit、二酸化チタンのEGスラリーを0.40質量%となるよう加え、PC缶を減圧にして60分後に最終圧力0.5hPa、温度275℃で4時間、溶融重合反応を行い、再生ポリエステル樹脂(極限粘度:0.64)を得た。
【0092】
再生ポリエステル樹脂D
実施例1と同様にして、エステル化反応率95%のエチレンテレフタレートオリゴマー(数平均重合度:5)を得た。
エチレンテレフタレートオリゴマー45.0質量部をES缶に仕込み、続いてES缶の撹拌機を回した状態でエチレングリコールを10.0質量部投入した。ES缶の内温降下が止まったところより、55.0質量部のリサイクルポリエステルをロータリーバルブを介して約2時間かけて定量投入した。このとき、リサイクルポリエステル原料(実施例1と同様のもの)をG/Aが1.20となるように投入した。
その後、270℃の熱処理条件下で1時間解重合反応を行った。そして、得られた解重合体を、ES缶とPC缶との間に目開き25μmのキャンドルフィルターをセットしてPC缶へ圧送した後、重合触媒として三酸化アンチモンを1.0×10
−4mol/unit、酢酸コバルトを0.5×10
−4mol/unit、二酸化チタンのEGスラリーを0.05質量%となるよう加え、PC缶を減圧にして60分後に最終圧力0.5hPa、温度280℃で3時間、溶融重合反応を行い、再生ポリエステル樹脂(極限粘度:0.56)を得た。
【0093】
再生ポリエステル樹脂E
再生ポリエステル樹脂Aと同様にして、エステル化反応率95%のエチレンテレフタレートオリゴマー(数平均重合度:5)を得た。
エチレンテレフタレートオリゴマー30.0質量部をES缶に仕込み、続いてES缶の撹拌機を回した状態でエチレングリコール2.5質量部を投入した。ES缶の内温降下が止まったところより、70.0質量部のリサイクルポリエステルをロータリーバルブを介して約2時間かけて定量投入した。このとき、リサイクルポリエステル原料(実施例1と同様のもの)をG/Aが1.06となるように投入した。
その後、270℃の熱処理条件下で1時間解重合反応を行った。そして、得られた解重合体を、ES缶とPC缶との間に目開き20μmのキャンドルフィルターをセットしてPC缶へ圧送した後、重合触媒として三酸化アンチモンを1.0×10
−4mol/unit、酢酸コバルトを0.5×10
−4mol/unit、二酸化チタンのEGスラリーを0.40質量%となるよう加え、PC缶を減圧にして60分後に最終圧力0.5hPa、温度275℃で4時間、溶融重合反応を行い、再生ポリエステル樹脂(極限粘度:0.64)を得た。
【0094】
再生ポリエステル樹脂F
再生ポリエステル樹脂Aと同様にして、エステル化反応率95%のエチレンテレフタレートオリゴマー(数平均重合度:5)を得た。
エチレンテレフタレートオリゴマー50.0質量部をES缶に仕込み、続いてES缶の撹拌機を回した状態でエチレングリコール19.0質量部を投入した。ES缶の内温降下が止まったところより、50.0質量部のリサイクルポリエステルをロータリーバルブを介して約2時間かけて定量投入した。このとき、リサイクルポリエステル原料(実施例1と同様のもの)をG/Aが1.36となるように投入した。
その後、270℃の熱処理条件下で1時間解重合反応を行った。そして、得られた解重合体を、ES缶とPC缶との間に目開き20μmのキャンドルフィルターをセットしてPC缶へ圧送した後、重合触媒として三酸化アンチモンを1.0×10
−4mol/unit、酢酸コバルトを0.5×10
−4mol/unit、二酸化チタンのEGスラリーを0.40質量%となるよう加え、PC缶を減圧にして60分後に最終圧力0.5hPa、温度275℃で4時間、溶融重合反応を行い、再生ポリエステル樹脂(極限粘度:0.64)を得た。
【0095】
得られた再生ポリエステル樹脂A〜F、参考としてバージンポリエステル樹脂の特性値を表1に示す。
【0096】
【表1】
【0097】
〔再生ポリエステル繊維(A)の製造〕
実施例1
再生ポリエステル樹脂Aをエクストルーダー型溶融紡糸機によって、樹脂温度295℃、濾過粒度20μmのフィルターを備えた紡糸ノズル(孔径0.15mm、孔数84ホール)より紡出し、2900m/分の紡糸速度で巻き取り、繊度45dtexのマルチフィラメント糸A(高配向未延伸糸)を得た。
【0098】
実施例2
再生ポリエステル樹脂Bを用いた以外は、実施例1と同様にして溶融紡糸、巻取りを行い、繊度45dtexのマルチフィラメント糸Bを得た。
【0099】
実施例3
再生ポリエステル樹脂Cを用いた以外は、実施例1と同様にして溶融紡糸、巻取りを行い、繊度45dtexのマルチフィラメント糸Cを得た。
【0100】
実施例4
再生ポリエステル樹脂Dを用いた以外は、実施例1と同様にして溶融紡糸、巻取りを行い、繊度45dtexのマルチフィラメント糸Dを得た。
【0101】
比較例1
再生ポリエステル樹脂Eを用いた以外は、実施例1と同様にして溶融紡糸を行おうとしたが、紡糸時の昇圧が激しく、切糸が多発したためにマルチフィラメントを得ることができなかった。
【0102】
比較例2
再生ポリエステル樹脂Fを用いた以外は、実施例1と同様にして溶融紡糸、巻取りを行い、繊度45dtexのマルチフィラメント糸Fを得た。
【0103】
実施例1〜4、比較例2で得られたマルチフィラメント糸の強度、伸度、毛羽数、操業性(切糸、昇圧)を調べた。その結果を表2に示す。
【0104】
【表2】
【0105】
表2から明らかなように、実施例1〜4のマルチフィラメント糸は、カルボキシル末端基濃度、ジエチレングリコールの含有量が特定範囲の再生ポリエステル樹脂からなるものであったため、単繊維繊度が0.5デシテックスの極細繊維を操業性(紡糸性、延伸性)よく得ることができ、かつ、強度、伸度ともに優れ、毛羽のないマルチフィラメント糸であった。
一方、比較例1では、カルボキシル末端基濃度が高い再生ポリエステル樹脂を用いたために、紡糸時の昇圧が激しく、切糸が多発したためにマルチフィラメント糸を得ることができなかった。比較例2では、ジエチレングリコールの含有量が高い再生ポリエステル樹脂を用いたために、マルチフィラメント糸を得ることはできたものの、強度が低く、毛羽の発生が多く、実用上問題のあるものであった。
【0106】
〔再生ポリエステル繊維(B)の製造方法〕
〔マルチフィラメント糸Gの製造〕
再生ポリエステル樹脂Aをエクストルーダー型溶融紡糸機によって、樹脂温度295℃、濾過粒度20μmのフィルターを備えた紡糸ノズル(孔径0.3mm、孔数12ホール)より紡出し、3000m/分の紡糸速度で巻き取り、繊度40dtexのマルチフィラメント糸G(高配向未延伸糸)を得た。
【0107】
実施例5
〔混繊交絡糸の製造〕
実施例1で得られたマルチフィラメント糸Aを用意した。一方、マルチフィラメント糸G(強度2.85cN/dtex、伸度131%、総繊度40dtex12フィラメント)を用意した。そして、マルチフィラメント糸A及びGを
図2に示すような混繊交絡糸の製造工程に供した。仮撚具5としてディスクタイプのものを使用し、複合仮撚条件及び混繊交絡条件は下記の通りとし、伸度26.6%の混繊交絡糸Aを得た。
【0108】
<複合仮撚条件>
供給ローラ1の表面速度:330.5m/分
ポリエステル高配向未延伸糸Bの延伸倍率:1.235倍
第一引取ローラ2の表面速度:408.2m/分
ヒーター3の温度:(接触式ヒーター)160℃
撚り方向:Z方向
ディスクの構造:1−6−1
ディスクの厚さ:9mm
K値:1.0
仮撚時の延伸倍率:1.225倍
第二引取ローラ5の表面速度:500m/分
【0109】
<混繊交絡条件>
流体ノズル6:インターレースノズル
エアー圧力:0.1275MPa
オーバーフィード率:4.4%
第三引取ローラ7の表面速度:478.9m/分
【0110】
〔織物の製造〕
次に、ウォータージェット織機(津田駒工業株式会社製)を使用し、経糸、緯糸ともに実施例5で得られた混繊交絡糸Aを無撚状態でそれぞれ配して、経糸密度145本/2.54cm、緯糸密度115本/2.54cmの平組織の生機を製織した。
そして、BOILOFF精練機(福伸工業株式会社製)を用いて生機を80℃で精練した。次に、下記処方1に示す組成の染液を調製した後、この染液を用いて織物を135℃で30分間染色した。その後、シュリンクサーファー型乾燥機(株式会社ヒラノテクシード製)を用いて140℃で乾燥した。
<処方1>
染料:ダイスタージャパン株式会社製、分散染料「Dianix Blue UN−SE(商品名)」 2%omf
分散剤:日華化学株式会社製「ニッカサンソルトSN−250E(商品名)」 0.5g/L酢酸(98%) 0.1mL/L
さらに、下記処方2に示す組成の水溶液を調製した後、パッター加工機を用いて絞り率80%にて水溶液を織物に付与し、120℃で120秒間乾熱処理を行った。そして、180℃で30秒間ファイナルセットし、撥水性織編物(経糸密度169本/2.54cm、緯糸密度126本/2.54cm、カバーファクター(CF)2233)を得た。
<処方2>
フッ素系撥水剤:日華化学株式会社製「NKガードS−07(商品名)(Rf基の炭素数が6個)固形分20質量%」 50g/L
架橋剤:DIC株式会社製、メラミン樹脂「ベッカミンM−3(商品名)」 3g/L触媒:DIC株式会社製「キャタリストACX(商品名)固形分35質量%」 3g/L
【0111】
実施例6
実施例5において、マルチフィラメント糸Aに代えて、マルチフィラメント糸Bを用いた以外は、実施例5と同様にして、混繊交絡糸Bを得た。
得られた混繊交絡糸Bを経糸、緯糸ともに用いた以外は、実施例5と同様にして織物を製造した。
【0112】
実施例7
マルチフィラメント糸Gに代えて、表1に示すバージンポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート)からなるマルチフィラメント糸H(強度2.79cN/dtex、伸度133%、総繊度40dtex/12フィラメント)を用いた以外は、実施例5と同様にして混繊交絡糸Cを得た。
得られた混繊交絡糸Cを経糸、緯糸ともに用いた以外は、実施例5と同様にして織物を製造した。
【0113】
実施例5〜7で得られた混繊交絡糸、織物の特性値を表3に示す。
【0114】
【表3】
【0115】
表3から明らかなように、実施例5〜7で得られた混繊交絡糸は、極細繊維として、実施例1〜3で得られた再生ポリエステル繊維を用いたものであったため、バージンポリエステル樹脂からなる極細繊維を用いた場合と同様に、操業性に何らの問題もなく、所望の捲縮率と交絡数を満足する混繊交絡糸を得ることができた。そして、これらの混繊交絡糸を用いて得られた織物は、撥水性に優れており、ソフトな風合いを有するものであった。