【解決手段】風防部材12の製造方法は、時計の外装ケースの前面に取付けられる風防部材12の製造方法であって、平板状に形成された透明板の、時計の文字板に対向する一方の面に設けられた印刷領域に、透光性の紫外線硬化樹脂である複数の液滴を付着させ、付着された液滴に紫外線を照射して硬化させることにより、表面が複数の不定形の突出部によって覆われている透光性の樹脂構造体123を形成する、ことを含む。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の様々な実施形態について説明する。ただし、本発明の範囲はかかる実施形態には限定されず、特許請求の範囲に記載された発明及びその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0018】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る時計1の正面図であり、
図2は、時計1の断面図である。
図2は、
図1のII−II断面の断面図である。なお、
図2では、断面から奥に見える部材の図示が省略されており、以降の断面図も同様とする。また、以降では、
図2における上方を前方といい、
図2における下方を後方ということがある。また、時計1の、前方を向く面を前面といい、後方を向く面を背面ということがある。時計1は、外装ケース11、風防部材12、文字板13、ムーブメント14、時針141、分針142、秒針143、竜頭15等を有する。
【0019】
外装ケース11は、扁平な略円板形状に形成され、時計の文字板13及びムーブメント14等を内蔵する部材である。外装ケース11は、前面に設けられた環状のベゼル111、背面に設けられた裏蓋113及びベゼル111と裏蓋113とが接合される側面112から形成される。
【0020】
ベゼル111は、接着剤である接着部材114により、側面112の上部と接着される。側面112は、その下部において、接着剤である接着部材115により、裏蓋113と接着される。側面112の一部には、ベルトを把持するための把持部116が形成される。また、側面112の一部には、竜頭15が挿通される竜頭孔が形成される。
【0021】
ベゼル111、側面112及び裏蓋113は、ステンレス鋼により形成される。ベゼル111、側面112及び裏蓋113は、チタン、チタン合金および金等の他の金属又は樹脂等により形成されてもよい。
【0022】
風防部材12は、外装ケース11の前面に、ベゼル111に囲まれるようにして取付けられる。風防部材12は、円板状に形成された透明板121と、透明板121の文字板13に対向する対向面122に設けられた透光性の樹脂構造体123とを有する。透明板121は、サファイアガラスやポリカーボネート(透明樹脂)により形成される。透明板121は、ミネラルガラス等の他のガラスにより形成されてもよい。透明板121は、側面112の前部と接着剤である接着部材124により接着され、文字板13、時針141、分針142及び秒針143を覆うことにより、これらを前方から視認可能にしながら保護する。対向面122には二酸化ケイ素やフッ化マグネシウム等によって形成される反射防止膜が設けられ、反射防止膜に樹脂構造体123が設けられてもよい。
【0023】
図3は、風防部材12の正面図であり、
図4及び
図5は、風防部材12の断面図である。
図4は、
図3のIV−IV断面の断面図であり、
図5は、
図4の樹脂構造体123の近傍を拡大した一部拡大断面図である。
【0024】
樹脂構造体123は、対向面122の外縁に沿った外縁領域A1に設けられた複数の印刷領域に液滴状に配置される。外縁領域A1は、対向面122の中心Cからの距離R2が、対向面122の半径R1の85パーセント以上となる領域である。
図3に示すように、90個の印刷領域が対向面122に設けられ、各印刷領域は、対向面122の外縁に沿って円形に等間隔に配列される。各印刷領域は、直径(幅)が450μmの円形状に形成される。なお、印刷領域及び樹脂構造体123の数は90個に限られず、任意の個数であってよい。
【0025】
各樹脂構造体123は、文字板13側の表面が、複数の不定形の突出部123−1、123−2、123−3等によって覆われている。各樹脂構造体123は、透光性を有し、アクリル酸エステルを主成分とする紫外線硬化樹脂により無色透明に形成される。各樹脂構造体123は、硬化されたときに無色透明となるような任意の成分の紫外線硬化樹脂により形成されてもよい。なお、
図4及び
図5では、不定形の突出部123−1等は、球面状であるものとして図示されており、
図7を除く他の図面においても同様とするが、形状は球面状に限られない。
【0026】
風防部材12の対向面122は、文字板13と平行する平面状に形成される。風防部材12の前面126は、
図4に示すように前方に凸となるように形成される。
【0027】
文字板13は、時針141、分針142及び秒針143によって指示される時刻が表示され、風防部材12の対向面122に平行するように外装ケース11に内蔵された平板状の部材である。文字板13は、樹脂または金属により形成される。文字板13の前面には、文字板13の外縁を覆うように、円環形状の第1見返し131が配置される。また、第1見返し131の一部及び外装ケース11の側面112の内周を覆うように、円筒形状の第2見返し132が配置される。
【0028】
時針141、分針142及び秒針143は、文字板13の前面に設けられ、文字板13の背面側に設けられたムーブメント14によって、文字板13に表示された時刻を指示するように駆動する。時針141、分針142及び秒針143の回転軸は、同軸の時針パイプ144、分針パイプ145及び秒針パイプ146にそれぞれ挿通されてムーブメント14に接続される。時針141、分針142及び秒針143は、回転軸を介してムーブメント14から回転力を伝達されることにより駆動する。ムーブメント14は、機械式ムーブメントであるが、クォーツ式ムーブメントでもよい。なお、
図2では、ムーブメント14を構成する各部材の図示が省略されている。また、時針141、分針142及び秒針143は、指針の一例である。
【0029】
竜頭15は、外装ケース11の側面112に設けられた竜頭孔に挿通されてムーブメント14に接続される、回転可能な軸状の部材である。竜頭15の回転力は、機械式時計の場合、時針141、分針142及び秒針143を駆動するためのムーブメント14の動力ぜんまいに伝達され、動力ぜんまいを巻上げる。また、竜頭15の回転力は、時刻合わせのため、ムーブメント14を介して時針141、分針142及び秒針143に伝達され、時針141、分針142及び秒針143を回転させる。
【0030】
図6は、風防部材12の製造方法の流れの一例を示すフロー図である。まず、透明板121の対向面122に設けられた印刷領域に透光性の紫外線硬化樹脂である複数の液滴を付着させる(S101)。液滴は、例えば、紫外線硬化型インクジェットプリンタにより射出されることにより付着される。この場合、印刷領域の位置は、あらかじめデータとしてプリンタに記憶される。プリンタの解像度が1200dpiであり、各印刷領域が直径(幅)450μmの円形状である場合、プリンタは、各印刷領域について、20滴〜30滴程度の液滴を付着させる。
【0031】
続いて、液滴が付着されてから0.5秒以内に、付着された液滴に200nm〜400nmの波長帯の紫外線を照射して液滴を硬化させる(S102)。これにより、表面が複数の不定形の突出部123−1等によって覆われている樹脂構造体123が形成される。
【0032】
すなわち、紫外線硬化樹脂の液滴は、プリンタから射出されてから対向面122に付着される前は、それぞれが略球体状の形状を有する。したがって、これらの液滴が対向面122の印刷領域に付着した直後は、複数の略球体状の液滴が結合することにより、表面が球面状を含む不定形の突出部によって覆われた液滴となる。他方、液滴が付着してから時間が経過すると、液滴の表面張力により、表面が滑らかになる。プリンタが紫外線硬化樹脂の複数の液滴を付着させてから0.5秒以内に紫外線を照射して液滴を硬化させることにより、液滴の表面が滑らかになる前に硬化されるため、表面が不定形の突出部123−1等によって覆われている樹脂構造体123が形成される。
【0033】
図7は、樹脂構造体123の形状の一例を示す図である。
図7(a)は、液滴が印刷領域に付着してから0.5秒以内に紫外線を照射した場合の形状を示す図である。
図7(b)は、比較のために、液滴が印刷領域に付着してから0.5秒経過後に紫外線を照射した場合の形状を示す図である。
【0034】
図7(a)に示すように、0.5秒以内に紫外線を照射した場合、樹脂構造体123は、表面に多数の球面状を含む不定形の突出部123−1、123−2、123−3等を有する。これにより、樹脂構造体123の表面は多数の光の反射面を有する。樹脂構造体123は透光性であるため、風防部材12の前面から見た場合、樹脂構造体123の表面で反射された光により樹脂構造体123が光り輝いて見え、多面カットされた宝石のような美観を起こさせる。
【0035】
他方、
図7(b)に示すように、0.5秒経過後に紫外線を照射した場合、樹脂構造体123は、滑らかな表面を有する。樹脂構造体123は透光性であるため、風防部材12の前面から見た場合、樹脂構造体123の表面には光沢が表現される。
【0036】
以上説明したように、時計1において、風防部材12は、文字板13と対向する対向面122に、光透過性の樹脂構造体123を有する。樹脂構造体123は、対向面122に設けられた印刷領域に紫外線硬化樹脂の複数の液滴を付着させてから0.5秒以内に紫外線を照射して硬化させることにより、表面が複数の不定形の突出部により覆われて形成される。これにより、風防部材12は、対向面122に施されたデザインにより、新たな美観を起こさせることを可能とする。すなわち、風防部材12は、対向面122に設けられた樹脂構造体123が風防部材12の前面から見たときに光り輝いて見えることにより、多面カットされた宝石のような新たな美観を起こさせる。
【0037】
また、樹脂構造体123は、対向面122の外縁に沿った外縁領域A1に設けられる。これにより、風防部材12は、文字板13の視認性を損なうことなく新たな美観を起こさせることを可能とする。
【0038】
上述した実施形態では、各印刷領域は直径(幅)が450μmであるものとしたが、このような例に限られない。例えば、各印刷領域は、任意の大きさを有してもよい。ただし、印刷領域の径が大きい場合、印刷領域に形成された樹脂構造体123が平板形状を有するように視認されるため、多面カットされた宝石のような美観を起こさせにくくなる。したがって、印刷領域は、差渡しの径(幅)が3.0mm以下であることが好ましい。また、印刷領域の径が小さい場合、樹脂構造体123が視認されにくくなる。したがって、印刷領域は、差渡しの径(幅)が0.2mm以上であることが好ましい。
【0039】
上述した実施形態では、対向面122には円形状の印刷領域が等間隔に配列されるものとしたが、このような例に限られない。
【0040】
図8は、他の例に係る風防部材12の正面図である。
図8に示すように、対向面122には90個の印刷領域が設けられ、各印刷領域は、対向面122の外縁に沿って円形に等間隔に配列される。各印刷領域は、対向面122の径方向に延伸する矩形状に形成される。樹脂構造体123は、各印刷領域にそれぞれ矩形状に形成される。なお、印刷領域及び樹脂構造体123の数は90個に限られず、任意の個数であってよい。
【0041】
図9は、他の例に係る風防部材12の正面図である。
図9に示すように、対向面122には、相互に直径が異なり、対向面122の外縁に沿った2個の円環形状の印刷領域が設けられ、各印刷領域は、同心に配列される。樹脂構造体123は、各印刷領域にそれぞれ円環形状に形成される。なお、印刷領域及び樹脂構造体123の個数は2個に限られず、1個でもよく、3個以上でもよい。
【0042】
また、印刷領域の形状は、上述した実施形態に限られず、任意の形状に形成されてもよい。例えば、対向面122には、矩形状又は多角形状の複数の印刷領域が配列されて設けられてもよい。また、印刷領域の配列は、上述した実施形態に限られず、任意の形状の配列でもよい。また、複数の印刷領域は、隣接する印刷領域との間隔が相互に異なるように配列されてもよい。ただし、印刷領域の幅が大きい場合、印刷領域に形成された樹脂構造体123が平板形状を有するように視認されるため、多面カットされた宝石のような美観を起こさせにくくなる。したがって、印刷領域は、短手方向の幅が3.0mm以下であることが好ましい。また、印刷領域の短手方向の幅が小さい場合、樹脂構造体123が視認されにくくなる。したがって、印刷領域は、短手方向の幅が0.2mm以上であることが好ましい。
【0043】
上述した実施形態では、透明板121の前面126は前方に凸となるように形成されるものとしたが、このような例に限られず、前面126は平面状に形成されてもよい。また、対向面122は文字板13に平行する平面状に形成されるものとしたが、前方又は後方に凸となるように形成されてもよい。一般に、対向面122が平面状でない場合、紫外線硬化樹脂の液滴が付着してから硬化されるまでの間に重力によって液滴が移動し、樹脂構造体123を印刷領域に適切に形成できなくなるため、製造効率が低下するおそれがある。しかしながら、上述した実施形態では、液滴が付着してから0.5秒以内に紫外線硬化樹脂に紫外線を照射して硬化させるため、重力によって液滴が移動する前に樹脂構造体123を形成することができ、製造効率の低下が抑えられる。
【0044】
(第2の実施形態)
図10は、第2の実施形態に係る風防部材12aの正面図であり、
図11は、風防部材12aの断面図であり、
図12は、風防部材12aの斜視図である。
図11は、
図10のXI−XI断面の断面図において、樹脂構造体123aの近傍を拡大した一部拡大断面図である。
図12は、樹脂構造体123aの近傍の一部拡大斜視図である。なお、第2の実施形態は、第1の実施形態と風防部材の構成においてのみ相違するため、以降では、風防部材についてのみ説明し、時計についての説明を省略する。また、上述した実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0045】
風防部材12aは、透明板121の対向面122に設けられた、透光性の樹脂構造体123aと、透光性の第2樹脂構造体125aとを有する。第2樹脂構造体125aは、対向面122の外縁に沿った外縁領域に設けられた90個の第2印刷領域に液滴状に配置され、樹脂構造体123aは、外縁領域に設けられた90個の印刷領域に液滴状に配置される。
図10に示すように、第2印刷領域は、対向面122の外縁に沿って円形に等間隔に配列される。各第2印刷領域は、円形状に形成される。また、印刷領域は、円環形状に形成され、各第2印刷領域を囲むように各第2印刷領域と同心に設けられる。なお、印刷領域、第2印刷領域、樹脂構造体123a及び第2樹脂構造体125aの数は90個に限られず、任意の個数であってよい。
【0046】
各第2樹脂構造体125aは、滑らかな表面を有して形成される。各第2樹脂構造体125aは、アクリル酸エステルを主成分とする紫外線硬化樹脂に顔料を添加したものにより有色透明に形成される。複数の樹脂構造体123aは、各第2樹脂構造体125aを囲むように形成される。各樹脂構造体123aは、表面が複数の不定形の突出部123a−1、123a−2、123a−3等によって覆われて形成される。各樹脂構造体123aは、無色透明に形成される。
【0047】
図13は、風防部材の製造方法の一例を示すフロー図である。まず、透明板121の対向面に設けられた第2印刷領域に透光性の紫外線硬化樹脂である複数の第2液滴を付着させる(S201)。第2液滴は、例えば、紫外線硬化型インクジェットプリンタにより射出されることにより付着される。
【0048】
続いて、第2液滴が付着されてから0.5秒経過後且つ5秒以内に、付着された第2液滴に紫外線を照射して第2液滴を硬化させる(S202)。これにより、第2液滴が付着してから紫外線が照射されるまでに時間が経過することにより液滴の表面が滑らかになるため、滑らかな表面を有する第2樹脂構造体125aが形成される。なお、第2液滴が付着されてから長時間が経過すると、第2液滴が第2印刷領域の外に広がってしまうことがあるため、紫外線は第2液滴が付着されてから5秒以内に照射される。
【0049】
続いて、透明板121の対向面122に設けられた印刷領域に透光性の紫外線硬化樹脂である複数の液滴を付着させる(S203)。続いて、液滴が付着されてから0.5秒以内に、付着された液滴に紫外線を照射して液滴を硬化させる(S204)。これにより、表面に複数の球面状の突出部123a−1等を有する樹脂構造体123aが形成される。なお、S203及びS204が実行された後にS201及びS202が実行されてもよい。
【0050】
以上説明したように、風防部材12aは、文字板13と対向する対向面122に、所定のパターンに形成された、透光性の樹脂構造体123aと第2樹脂構造体125aとを有する。樹脂構造体123aは、対向面122に設けられた印刷領域に紫外線硬化樹脂の複数の液滴を付着させてから0.5秒以内に紫外線を照射して硬化させることにより、表面が複数の不定形の突出部123a−1等によって覆われて形成される。第2樹脂構造体125aは、対向面122に設けられた第2印刷領域に紫外線硬化樹脂の複数の第2液滴を付着させてから0.5秒が経過して且つ5秒以内に紫外線を照射して硬化させることにより、滑らかな表面を有して形成される。印刷領域は、第2印刷領域を囲むように設けられ、樹脂構造体123aは、対向面122において第2樹脂構造体125aを囲むように形成される。これにより、風防部材12aにおいて、光沢を有する第2樹脂部材125aが、光り輝く樹脂構造体123aに囲まれるため、新たな美観を起こさせることが可能となる。
【0051】
上述した実施形態では、印刷領域は円環形状を有し、第2印刷領域は円形状を有するものとしたが、このような例に限られない。印刷領域及び第2印刷領域は、それぞれ任意の形状に形成されてもよい。例えば、第2印刷領域が矩形状を有し、印刷領域が第2印刷領域を囲むような多角形環形状を有してもよい。
【0052】
上述した実施形態では、印刷領域は第2印刷領域を囲むように設けられるものとしたが、このような例に限られない。例えば、印刷領域と第2印刷領域とは重複して設けられてもよい。
【0053】
図14は、印刷領域と第2印刷領域とが重複して設けられる場合の風防部材12aの断面図である。
図14(a)〜(c)は、樹脂構造体123a及び第2樹脂構造体125aの近傍を拡大した一部拡大断面図である。例えば、印刷領域と第2印刷領域とは一致してもよい。この場合、
図14(a)に示すように、第2樹脂構造体125aは、樹脂構造体123aの全部を被覆するように形成される。
【0054】
図15は、
図14(a)に示す風防部材12aの製造方法の流れの一例を示すフロー図である。まず、透明板121の対向面122に設けられた印刷領域に光透過性の紫外線硬化樹脂である複数の液滴を付着させる(S301)。続いて、液滴が付着されてから0.5秒以内に、付着された液滴に紫外線を照射して液滴を硬化させ(S302)、樹脂構造体123aを形成する。続いて、樹脂構造体123aが形成された第2印刷領域に光透過性の紫外線硬化樹脂である複数の第2液滴を付着させる(S303)。続いて、第2液滴が付着されてから0.5秒経過後且つ5秒以内に、付着された第2液滴に紫外線を照射して第2液滴を硬化させ(S304)、第2樹脂構造体125aを形成する。すなわち、風防部材12aは、樹脂構造体123aが形成された後に第2液滴を付着させることにより形成される。
【0055】
印刷領域と第2印刷領域との関係は、上述した例に限られない。例えば、第2印刷領域は、印刷領域を包含するように設けられてもよい。この場合、
図14(b)に示すように、第2樹脂構造体125aは、樹脂構造体123aの全部と、対向面122の、樹脂構造体123aを囲む領域とを一体として被覆するように形成される。また、第2印刷領域は、印刷領域に包含されるように設けられてもよい。この場合、
図14(c)に示すように、第2樹脂構造体125aは、樹脂構造体123aを、外縁に沿った部分を除いて被覆するように形成される。
【0056】
図16は、印刷領域と第2印刷領域とが重複して設けられる場合の風防部材12aの断面図である。印刷領域と第2印刷領域が一致する場合において、
図16(a)に示すように、樹脂構造体123aが第2樹脂構造体125aの全部を被覆するように形成されてもよい。
【0057】
図17は、
図16(a)に示す風防部材12aの製造方法の一例を示すフロー図である。まず、透明板121の対向面122に設けられた第2印刷領域に光透過性の紫外線硬化樹脂である複数の第2液滴を付着させる(S401)。続いて、第2液滴が付着されてから0.5秒経過後且つ5秒以内に、付着された第2液滴に紫外線を照射して第2液滴を硬化させ(S402)、第2樹脂構造体125aを形成する。続いて、第2樹脂構造体125aが形成された印刷領域に光透過性の紫外線硬化樹脂である複数の液滴を付着させる(S403)。続いて、液滴が付着されてから0.5秒以内に、付着された液滴に紫外線を照射して液滴を硬化させ(S404)、樹脂構造体123aを形成する。すなわち、風防部材12aは、第2樹脂構造体125aが形成された後に液滴を付着させることにより形成される。
【0058】
樹脂構造体123aが第2樹脂構造体125aを被覆する場合においても、印刷領域と第2印刷領域との関係は、上述した例に限られない。例えば、第2印刷領域は、印刷領域を包含するように設けられてもよい。この場合、
図16(b)に示すように、樹脂構造体123aは、第2樹脂構造体125aの全部と、対向面122の、第2樹脂構造体125aを囲む領域とを一体として被覆するように形成される。また、第2印刷領域は、印刷領域に包含されるように設けられてもよい。この場合、
図16(c)に示すように、樹脂構造体123aは、第2樹脂構造体125aを、外縁に沿った部分を除いて被覆するように形成される。
【0059】
このようにすることで、風防部材12aにおいて、表面が光沢を有する有色透明の第2樹脂構造体125aと、表面が光り輝く無色透明の樹脂構造体123aとが重ねられるため、新たな美観が起こされる。
【0060】
(第3の実施形態)
図18は、第3の実施形態に係る時計1bの正面図である。時計1bは、外装ケース11、風防部材12b、文字板13b、ムーブメント14、時針141、分針142、秒針143、小針147b、ボタン148b、竜頭15等を有する。
【0061】
文字板13bは、時針141、分針142及び秒針143によって指示される時刻が表示され、風防部材12bの対向面122に平行するように外装ケース11に内蔵された平板状の部材である。文字板13bの前面には、文字板13bの外縁を覆うように、円環形状の第1見返し131が配置される。また、第1見返し131の一部及び外装ケース11の側面112の内周を覆うように、円筒形状の第2見返し132が配置される。
【0062】
文字板13bの前面には、円形の小表示領域133bが設けられる。小表示領域133bには、小表示領域133bの中心を回転軸とする小針147bが設けられる。小針147bは、ボタン148bが押下されたことに応じて回転又は停止することにより計時を行うクロノグラフ針である。小針147bは、秒を指示する小秒針(スモールセコンド)でもよい。
【0063】
図19は、風防部材12bの正面図であり、
図20は、風防部材12bの断面図である。
図20は、
図19のXX−XX断面の断面図である。
【0064】
風防部材12bは、透明板121と、透明板121の文字板13bに対向する対向面122に設けられた透光性の樹脂構造体123bを有する。樹脂構造体123bは、対向面122の外縁に沿った外縁領域に等間隔に設けられた60個の円形状の印刷領域に液滴状に配置される。また、樹脂構造体123bは、風防部材12bが時計1bに取付けられたときに小表示領域133bに対向する小領域A2の外縁に沿って等間隔に設けられた24個の円形状の印刷領域のそれぞれに液滴状に配置される。なお、外縁領域及び小領域に設けられる印刷領域の個数は、任意の個数であってよい。
【0065】
各樹脂構造体123bは、文字板13b側の表面が、複数の不定形の突出部によって覆われている。各樹脂構造体123bは、透光性を有し、アクリル酸エステルを主成分とする紫外線硬化樹脂により無色透明に形成される。各樹脂構造体123bは、硬化されたときに無色透明となるような任意の成分の紫外線硬化樹脂により形成されてもよい。樹脂構造体123bの一部又は全部は、有色透明に形成されてもよい。例えば、小領域A2に設けられた樹脂構造体123bのみが有色透明に形成されてもよい。
【0066】
樹脂構造体123bは、対向面122の小領域A2に透光性の紫外線硬化樹脂である複数の液滴を付着させ、液滴が付着されてから0.5秒以内に付着された液滴に紫外線を照射して液滴を硬化させることにより形成される。このようにすることで、風防部材12bは、前面から見たときに小表示領域133bを囲むように樹脂構造体123bを有することにより、小表示領域133bの周囲において多面カットされた宝石のような新たな美観を起こさせることを可能とする。
【0067】
上述した説明では、樹脂構造体123bは外縁領域及び小領域に設けられるものとしたが、このような例に限られず、樹脂構造体123bは小領域にのみ設けられてもよい。また、文字板13bは一つの小表示領域133bを有するものとしたが、複数の小表示領域133bを有してもよい。この場合、樹脂構造体123bは、複数の小表示領域133bに対向する複数の小領域のそれぞれに設けられてもよく、一部の小領域のみに設けられてもよい。
【0068】
当業者は、本発明の精神及び範囲から外れることなく、様々な変更、置換及び修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。上述した実施形態及び変形例は、本発明の範囲において、適宜に組み合わせて実施されてもよい。