【解決手段】駆動機構は、運動体に対して動力を伝達可能に連結される板状の回転体と、回転体を回転させる静電力を発生させる電極と、を有する静電モータと、運動体に対して動力を伝達可能に連結される回転子30と、コイル31と、コイルによって発生した磁界を回転子に誘導する固定子32と、を有し、回転子と固定子との間の電磁抵抗の値が回転子の回転方向A1に沿って一様であるように構成されている電磁モータ3と、静電モータおよび電磁モータを制御する制御部と、を備える。
前記制御部は、前記静電モータによって前記回転子を連れ回しながら前記運動体を運動させる第一駆動制御、および前記電磁モータによって前記回転体を連れ回しながら前記運動体を運動させる第二駆動制御を実行するように構成されており、
前記第二駆動制御における前記運動体の運動速度が前記第一駆動制御における前記運動体の運動速度よりも高速である
請求項1から5の何れか1項に記載の駆動機構。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態に係る駆動機構および時計につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0011】
[第1実施形態]
図1から
図21を参照して、第1実施形態について説明する。本実施形態は、駆動機構および時計に関する。
図1は、第1実施形態の時計および駆動機構の概略構成を示す図、
図2は、第1実施形態の時計および駆動機構のブロック図、
図3は、第1実施形態に係る静電モータの構成を説明する図、
図4は、第1実施形態に係る第一駆動回路の図、
図5は、第1実施形態に係る電磁モータを示す平面図、
図6は、第1実施形態の第一磁極および第二磁極を示す図、
図7は、第1実施形態に係る第二駆動回路および電圧検出部の図、
図8は、コイルに発生する誘起電圧を示す図、
図9は、0°の回転位置にある回転子を示す図、
図10は、90°の回転位置にある回転子を示す図である。
【0012】
図11は、静電モータの駆動パルスを示す図、
図12は、静電モータの周期における第一期間から第三期間を示す図、
図13は、静電モータの周期における第四期間から第六期間を示す図、
図14は、180°の回転位置にある回転子を示す図、
図15は、誘起電圧の0クロスを説明する図、
図16は、電磁モータの駆動パルスを説明する図、
図17は、電磁モータにおける駆動パルスの印加時間を示す図、
図18は、電磁モータにおける駆動パルスの印加時間の推移を示す図、
図19は、電磁モータを停止させる駆動パルスを示す図、
図20は、電磁モータを停止させる駆動パルスを説明する図、
図21は、第1実施形態の駆動機構の動作を示すフローチャートである。
【0013】
図1に示すように、本実施形態の時計100は、駆動機構1および秒針101を有する。時計100は、例えば、秒針101を含む指針を有するアナログ電子時計である。秒針101は、駆動機構1によって与えられる力により運動する運動体の一例である。
【0014】
図1および
図2に示すように、駆動機構1は、静電モータ2、電磁モータ3、制御回路4、電圧検出部5、第一輪列11、第二輪列12、第一駆動回路13、第二駆動回路14、および針位置検出回路15を有する。
【0015】
図3に示すように、静電モータ2は、板状の回転体20と、帯電膜26と、基板28と、電極21,22,23と、回転軸25と、を有する。本実施形態の静電モータ2では、一つの回転体20に対して、二つの基板28が配置される。二つの基板28は、回転体20に対して軸方向の両側に一つずつ配置される。例示された回転体20の形状は、円盤形状である。回転体20は、シリコン基板、帯電用の電極面が設けられたガラスエポキシ基板、あるいはアルミ板などの基板材料により形成された円盤形状の部材である。回転軸25は、回転体20の中心部に挿入されており、かつ回転体20に対して固定されている。回転軸25は、例えば、時計100の筐体によって回転可能に支持されている。回転軸25は、第二輪列12を介して秒針101に連結されている。
【0016】
回転体20において、電極21,22,23と対向する面には、複数の帯電膜26が形成されている。帯電膜26は、回転軸25を中心とする回転方向に沿って等間隔で配置されている。例示された回転体20には、各面に8箇所の帯電膜26が配置されている。実施形態の帯電膜26は、エレクトレット材料で形成されている薄膜である。帯電膜26は、例えば、負の電位に帯電している。回転体20には、隣接する帯電膜26の間に貫通孔27が形成されている。
【0017】
基板28は、回転体20と対向する位置に固定されている。例示された基板28の形状は、円盤形状である。基板28の中央部には、回転軸25が挿通される貫通孔が形成されている。基板28において、帯電膜26と対向する面には、第一電極21、第二電極22、および第三電極23が配置されている。第一電極21は、U相に対応する電極であり、第二電極22は、V相に対応する電極であり、第三電極23は、W相に対応する電極である。つまり、本実施形態の静電モータ2は、三相式のモータである。
【0018】
第一電極21、第二電極22、および第三電極23は、電極群24を構成している。三つの電極21,22,23は、この順序で回転体20の回転方向に沿って等間隔で並んでいる。基板28には、電極群24が複数配置されている。例示された基板28には、8個の電極群24が配置されている。
【0019】
図2に示す第一駆動回路13は、静電モータ2に対する駆動信号を出力する回路である。
図4に示すように、第一駆動回路13は、第一駆動部13a、第二駆動部13b、および第三駆動部13cを有する。第一駆動部13aは、トランジスタP1およびトランジスタN1を有する。トランジスタP1は、接地電位VDDと第一電極21との間に介在している。トランジスタP1は、ゲート端子Gに供給される制御信号に応じて第一電極21と接地電位VDDとを接続し、あるいは第一電極21と接地電位VDDとを遮断する。
【0020】
トランジスタN1は、電源VSSと第一電極21との間に介在している。電源VSSの電位は、例えば、接地電位VDDよりも低い負の電位である。トランジスタN1は、ゲート端子Gに供給される制御信号に応じて第一電極21と電源VSSとを接続し、あるいは第一電極21と電源VSSとを遮断する。第一駆動部13aは、第一電極21の状態を接地電位VDDと接続された接地状態、電源VSSと接続された印加状態、または接地電位VDDおよび電源VSSの何れとも遮断されたオープン状態、の何れかに切り替える。
【0021】
第二駆動部13bは、接地電位VDDと第二電極22との間に介在するトランジスタP2、および電源VSSと第二電極22との間に介在するトランジスタN2を有する。第二駆動部13bは、第二電極22の状態を接地状態、印加状態、またはオープン状態、の何れかに切り替える。
【0022】
第三駆動部13cは、接地電位VDDと第三電極23との間に介在するトランジスタP3、および電源VSSと第三電極23との間に介在するトランジスタN3を有する。第三駆動部13cは、第三電極23の状態を接地状態、印加状態、またはオープン状態、の何れかに切り替える。
【0023】
第一駆動回路13は、制御回路4によって制御される。第一駆動回路13は、制御回路4の指令に従って静電モータ2に対して駆動パルスを出力する。
【0024】
図5に示すように、電磁モータ3は、回転子30と、コイル31と、固定子32と、を有する。例示された回転子30は、2極磁化された回転体である。例示された回転子30の形状は、円柱形状または円盤形状である。回転子30は、中心軸線C1に対して径方向の一方側にN極30nが位置し、径方向の他方側にS極30sが位置するように着磁されている。
【0025】
コイル31は、固定子32に対して螺旋状に巻かれている。固定子32は、コイル31によって発生した磁界を回転子30に誘導する部材である。固定子32は、磁性材料によって環状に形成されている。固定子32は、芯部33と、誘導部34と、を有する。芯部33は、コイル31によって囲まれる部分である。コイル31は、芯部33の周りに巻かれている。
【0026】
誘導部34は、コイル31によって発生した磁界を回転子30に誘導する部分である。誘導部34の形状は、例えば、角柱状または板状である。誘導部34には、回転子30が挿入される貫通孔34aが形成されている。貫通孔34aは、誘導部34の軸方向X1と直交する方向に沿って誘導部34を貫通している。貫通孔34aの断面形状は、例えば、円形である。貫通孔34aは、例えば、誘導部34における軸方向X1の中央に配置される。
【0027】
本実施形態の電磁モータ3では、回転子30の外周面30aと、貫通孔34aの内周面34bとの隙間G1の大きさが一定である。貫通孔34aは、内周面34bに凹凸を有していない。つまり、回転子30の回転方向A1に沿って、回転子30の中心軸線C1から内周面34bまでの距離が一定である。従って、回転子30と固定子32との間の電磁抵抗の値が回転子30の回転方向A1に沿って一様である。その結果、本実施形態の電磁モータ3では、回転子30の静的安定点が存在していない。よって、回転子30が静電モータ2によって連れ回されるときに、回転子30に対してコギングトルクが作用しない。
【0028】
誘導部34には、一対の狭窄部34c,34dが形成されている。一対の狭窄部34c,34dは、第一狭窄部34cおよび第二狭窄部34dを有する。第一狭窄部34cおよび第二狭窄部34dは、軸方向X1と直交する断面における断面積が狭くなっている部分である。一対の狭窄部34c,34dは、貫通孔34aを挟んで配置されている。第一狭窄部34cは、貫通孔34aに対して幅方向Y1の一方側に位置している。第二狭窄部34dは、貫通孔34aに対して幅方向Y1の他方側に位置している。なお、幅方向Y1は、軸方向X1および中心軸線C1の何れとも直交する方向である。
【0029】
誘導部34には、第一狭窄部34cを形成する第一凹部35a、および第二狭窄部34dを形成する第二凹部35bが設けられている。第一凹部35aは、誘導部34の第一側面34eに形成されており、第二凹部35bは、誘導部34の第二側面34fに形成されている。第一凹部35aおよび第二凹部35bは、回転子30の側に向けて略円弧形状に凹んでいる。第一狭窄部34cおよび第二狭窄部34dは、中心軸線C1に関して線対称となるように形成されている。
【0030】
固定子32は、コイル31に通電されると、コイル31によって発生した磁界を回転子30に誘導する。このときに、第一狭窄部34cおよび第二狭窄部34dにおいて磁束が飽和することで、
図6に示すように、誘導部34に第一磁極36aおよび第二磁極36bが生じる。第一磁極36aおよび第二磁極36bは、誘導部34の軸方向X1において互いに対向している。第一磁極36aは、貫通孔34aに対して軸方向X1の一方側に位置し、第二磁極36bは、貫通孔34aに対して軸方向X1の他方側に位置する。コイル31に流れる電流の向きに応じて、第一磁極36aおよび第二磁極36bの一方がN極となり、他方がS極となる。第一磁極36aおよび第二磁極36bは、回転子30に対して電磁力による回転トルクを与え、回転子30を回転させる。
【0031】
図7に示すように、第二駆動回路14は、第一駆動部14aおよび第二駆動部14bを有する。第一駆動部14aは、コイル31の第一端部31aに接続されている。第二駆動部14bは、コイル31の第二端部31bに接続されている。
【0032】
第一駆動部14aは、トランジスタDP1およびトランジスタDN1を有する。トランジスタDP1は、接地電位VDDと第一端部31aとの間に介在している。トランジスタDP1は、ゲート端子Gに供給される制御信号に応じて第一端部31aと接地電位VDDとを接続し、あるいは第一端部31aと接地電位VDDとを遮断する。トランジスタDN1は、電源VSSと第一端部31aとの間に介在している。トランジスタDN1は、ゲート端子Gに供給される制御信号に応じて第一端部31aと電源VSSとを接続し、あるいは第一端部31aと電源VSSとを遮断する。第一駆動部14aは、トランジスタDP1,DN1により、コイル31の第一端部31aに駆動パルスを印加する。
【0033】
第二駆動部14bは、トランジスタDP2およびトランジスタDN2を有する。トランジスタDP2は、接地電位VDDと第二端部31bとの間に介在している。トランジスタDN2は、電源VSSと第二端部31bとの間に介在している。トランジスタDP2,DN2の構成は、トランジスタDP1,DN1の構成と同様である。第二駆動部14bは、トランジスタDP2,DN2により、コイル31の第二端部31bに駆動パルスを印加する。
【0034】
第二駆動回路14は、制御回路4によって制御される。第二駆動回路14は、制御回路4から出力される制御信号に応じてコイル31に駆動パルスを出力する。
【0035】
図7に示すように、電圧検出部5は、検出抵抗R1,R2、トランジスタTP1,TP2、0クロス検出手段51、および衝撃検知回路52を有する。トランジスタTP1のソース端子は接地電位VDDに接続され、トランジスタTP1のドレイン端子は検出抵抗R1を介してコイル31の第一端部31aに接続されている。トランジスタTP2のソース端子は接地電位VDDに接続され、トランジスタTP2のドレイン端子は検出抵抗R2を介してコイル31の第二端部31bに接続されている。
【0036】
0クロス検出手段51および衝撃検知回路52は、コイル31の第一端部31aおよび第二端部31bに接続されている。0クロス検出手段51および衝撃検知回路52は、例えば、コンパレータを含む回路である。0クロス検出手段51は、コイル31に生じる誘起電圧Viの正負が反転したことを検出する回路である。
【0037】
図8には、コイル31に発生する誘起電圧Viの推移が示されている。誘起電圧Viは、回転子30の回転によってコイル31に発生する起電力である。誘起電圧Viは、コイル31の誘起電流(逆起電流)に対応する。つまり、誘起電圧Viを検出することは、逆起電流を検出することに対応する。
図8において、横軸は時間、縦軸は電圧[V]を示す。
図8には、各時間における回転子30の位相を示す回転角度[°]が示されている。
図9には、回転角度が0°の回転子30が示されている。
図9に示す回転子30では、回転子30のN極30nおよびS極30sがそれぞれ誘導部34の軸方向X1を向いている。言い換えると、N極30nおよびS極30sが軸方向X1に沿った直線上に位置している。
【0038】
図10には、回転角度が90°の回転子30が示されている。
図10に示す回転子30では、回転子30のN極30nおよびS極30sがそれぞれ誘導部34の幅方向Y1を向いている。言い換えると、N極30nおよびS極30sが幅方向Y1に沿った直線上に位置している。N極30nは、第二狭窄部34dと対向し、S極30sは、第一狭窄部34cと対向する。
【0039】
回転子30が回転すると、
図8に示すように誘起電圧Viが変化する。回転子30が等速で回転する場合、例えば、誘起電圧Viの波形が正弦波の波形となる。回転子30の回転角度が0°および180°のときに、誘起電圧Viの正負が切り替わる0クロスが発生する。例えば、回転子30の回転角度が0°となるときには、誘起電圧Viの値が正の値から負の値に切り替わる。一方、回転子30の回転角度が180°となるときには、誘起電圧Viが負の値から正の値に切り替わる。なお、回転子30が逆回転している場合には、上記とは極性が逆の0クロスが発生する。
【0040】
0クロス検出手段51は、誘起電圧Viにおける0クロスを検出するように構成された回路である。0クロス検出手段51は、誘起電圧Viの正から負への0クロスと、誘起電圧Viの負から正への0クロスと、を区別できるように構成されていてもよい。0クロス検出手段51は、誘起電圧Viの0クロスを検出すると、所定の信号を制御回路4に出力する。
【0041】
本実施形態の衝撃検知回路52は、誘起電圧Viに基づいて衝撃を検知する。時計100に衝撃が加わると、秒針101に回転力が加わることなどにより、誘起電圧Viが変化する。衝撃検知回路52は、例えば、誘起電圧Viの絶対値と閾値Vthとの比較結果により衝撃を検知する。閾値Vthは、例えば、静電モータ2または電磁モータ3によって秒針101を運動させるときの誘起電圧Viの最大値よりも大きな値である。衝撃検知回路52は、誘起電圧Viの絶対値が閾値Vth以上となると、衝撃検知信号を出力する。
【0042】
図1に示すように、第一輪列11は、電磁モータ3と静電モータ2との間に介在している。電磁モータ3の回転子30は、第一輪列11を介して静電モータ2の回転体20に連結されている。第一輪列11は、電磁モータ3の回転を減速して静電モータ2に伝達する減速輪列である。第一輪列11の減速比は、例えば、1/24である。つまり静電モータ2が15°回転すると電磁モータ3は360°回転する。また第一輪列11の減速比は、例えば、1/12などであってもかまわない。この場合、静電モータ2が15°回転すると電磁モータ3は180°回転する。なお、第一輪列11は、静電モータ2の回転を増速して電磁モータ3に伝達する増速輪列として機能することもできる。
【0043】
第二輪列12は、静電モータ2と秒針101との間に介在している。秒針101は、
図2に示す表示車102に固定されており、表示車102と一体に回転する。静電モータ2の回転体20は、第二輪列12を介して表示車102に連結されている。第二輪列12は、静電モータ2の回転を減速して秒針101に伝達する減速輪列である。第二輪列12の減速比は、例えば、1/30である。すなわち、静電モータ2の回転体20が1秒間で180°回転すると、秒針101が1秒間で6°回転する。ちなみにこの時、電磁モータ3は1秒間で4320°回転する。後述する
図11から
図13に示す静電モータ2の駆動パルスは6期間で1周期が構成されている。この静電モータの駆動パルス1周期で動作する静電モータ2の回転角度が15°とすると、この秒針101は静電モータの駆動パルス1周期で0.5°、電磁モータ3は静電モータの駆動パルス1周期で360°回転する。
【0044】
図11から
図13を参照して、静電モータ2における運針制御について説明する。
図11には、三つの電極21,22,23に供給される駆動パルスが示されている。
図12には、後述する第一期間K1から第三期間K3までの各電極21,22,23の電位が示されている。
図13には、後述する第四期間K4から第六期間K6までの各電極21,22,23の電位が示されている。
【0045】
針位置検出回路15は、秒針101の位置を検出する回路である。針位置検出回路15は、例えば、LEDおよび受光素子を有する。LEDおよび受光素子は、例えば、表示車102の近傍に配置される。この場合、表示車102には、LEDの光を通過させる孔が設けられる。表示車102の回転位置が所定の位置であるときに、LEDの光が表示車102の孔を通過し、受光素子に到達する。針位置検出回路15は、受光素子の検出結果に基づいて秒針101の位置を検出することができる。
【0046】
図11から
図13を参照して、静電モータ2における運針制御について説明する。
図11には、三つの電極21,22,23に供給される駆動パルスが示されている。
図12には、後述する第一期間K1から第三期間K3までの各電極21,22,23の電位が示されている。
図13には、後述する第四期間K4から第六期間K6までの各電極21,22,23の電位が示されている。
【0047】
図11の第一パルスS1は、第一駆動回路13から第一電極21に対して出力される駆動パルスである。第二パルスS2は、第一駆動回路13から第二電極22に対して出力される駆動パルスである。第三パルスS3は第一駆動回路13から第三電極23に対して出力される駆動パルスである。周期CYは、駆動パルスの周期である。
【0048】
周期CYには、第一期間K1、第二期間K2、第三期間K3、第四期間K4、第五期間K5、および第六期間K6が設けられている。六つの期間K1,K2,K3,K4,K5,K6では、駆動パルスのON/OFFの組み合わせが互いに異なる。第一期間K1において、第一駆動回路13は、第一パルスS1をOFFとし、第二パルスS2および第三パルスS3をONとする。電極21,22,23のうち、駆動パルスがONとされた電極の電位は、帯電膜26に対して静電引力を作用させる電位、すなわち正の電位となる。
【0049】
図12の(a)には、第一期間K1の各電極21,22,23が示されている。第二電極22および第三電極23が正電位となっている。従って、回転体20は、第二電極22および第三電極23から受ける静電引力により、帯電膜26が第二電極22および第三電極23と対向する位置へ向けて移動する。
【0050】
第二期間K2において、第一駆動回路13は、第一パルスS1および第二パルスS2をOFFとし、第三パルスS3をONとする。
図12の(b)には、第二期間K2の各電極21,22,23が示されている。第二期間K2では、第三電極23が正電位となっている。従って、回転体20は、第三電極23から受ける静電引力により、帯電膜26が第三電極23と対向する位置へ向けて回転する。
【0051】
第三期間K3において、第一駆動回路13は、第一パルスS1および第三パルスS3をONとし、第二パルスS2をOFFとする。
図12の(c)には、第三期間K3の各電極21,22,23が示されている。第三期間K3では、第一電極21および第三電極23が正電位となっている。従って、回転体20は、第一電極21および第三電極23から受ける静電引力により、帯電膜26が第一電極21および第三電極23と対向する位置へ向けて回転する。
【0052】
第四期間K4において、第一駆動回路13は、第一パルスS1をONとし、第二パルスS2および第三パルスS3をOFFとする。
図13の(d)には、第四期間K4の各電極21,22,23が示されている。第四期間K4では、第一電極21が正電位となっている。従って、回転体20は、第一電極21から受ける静電引力により、帯電膜26が第一電極21と対向する位置へ向けて回転する。
【0053】
第五期間K5において、第一駆動回路13は、第一パルスS1および第二パルスS2をONとし、第三パルスS3をOFFとする。
図13の(e)には、第五期間K5の各電極21,22,23が示されている。第五期間K5では、第一電極21および第二電極22が正電位となっている。従って、回転体20は、第一電極21および第二電極22から受ける静電引力により、帯電膜26が第一電極21および第二電極22と対向する位置へ向けて回転する。
【0054】
第六期間K6において、第一駆動回路13は、第一パルスS1および第三パルスS3をOFFとし、第二パルスS2をONとする。
図13の(f)には、第六期間K6の各電極21,22,23が示されている。第六期間K6では、第二電極22が正電位となっている。従って、回転体20は、第二電極22から受ける静電引力により、帯電膜26が第二電極22と対向する位置へ向けて回転する。第六期間K6が終了すると、次の周期CYの第一期間K1へ移行する。
【0055】
第一駆動回路13は、上記のような駆動パルスを出力することにより、秒針101を連続的に駆動する。第一駆動回路13による運針は、秒針101を等速で回転させる、所謂スイープ運針である。第一駆動回路13は、秒針101を時計100の内部時刻に応じて運針させる場合、静電モータ2の回転体20を1秒間に180°回転させるように駆動パルスを出力する。第一駆動回路13による駆動パルスの生成は、制御回路4によって制御される。より詳しくは、制御回路4は、第一駆動回路13の各トランジスタP1,P2,P3,N1,N2,N3に対する制御信号によって第一駆動回路13による駆動パルスの生成を制御する。
【0056】
制御回路4は、静電モータ2によって秒針101を運針させる場合、電磁モータ3のコイル31に対して高抵抗を接続し、電磁モータ3による負荷抵抗を軽減する。コイル31の第一端部31aおよび第二端部31bのうち少なくとも一方に対して高抵抗が接続される。これにより、コイル31に電流が流れることが規制され、電磁モータ3による負荷抵抗が軽減される。このように電磁モータ3はもともとコギングトルクが作用しないように構成されているだけでなく、静電モータ2で駆動する際に、電流の流れを規制することで、電磁モータ3の負荷抵抗を極力低く抑えるようにしている。電磁モータ3は体積で力を稼ぐ磁力による駆動原理上、静電モータ2の慣性量とは桁違いに慣性量も小さく構成できる。このため、第1輪列11を1/24として静電モータ2の回転に対して、24倍の速度で電磁モータ3を回転させる影響がでるとしても、静電モータ2で十分駆動可能なレベルに抑えることができる。
【0057】
制御回路4は、例えば、第一端部31aと接地電位VDDおよび電源VSSとの間をオープンにしてもよい。これにより、第一端部31aに対して高抵抗を接続した状態が実現される。また、制御回路4は、第二端部31bと接地電位VDDおよび電源VSSとの間をオープンにしてもよい。これにより、第二端部31bに対して高抵抗を接続した状態が実現される。
【0058】
制御回路4は、トランジスタDP1,DN1をOFFとし、トランジスタTP1をONとしてもよい。これにより、第一端部31aは、検出抵抗R1を介して接地電位VDDと接続される。検出抵抗R1の抵抗値は、コイル31の抵抗値と比較して十分に大きい。従って、第一端部31aに対して高抵抗を接続した状態が実現される。検出抵抗R1の抵抗値は、コイル31の抵抗値に対して10倍以上とされてもよく、例えば、コイル31の抵抗値に対して100倍以上の大きさであってもよい。
【0059】
制御回路4は、トランジスタDP2,DN2をOFFとし、トランジスタTP2をONとしてもよい。これにより、第二端部31bは、検出抵抗R2を介して接地電位VDDと接続される。検出抵抗R2の抵抗値は、コイル31の抵抗値と比較して十分に大きい。従って、第二端部31bに対して高抵抗を接続した状態が実現される。検出抵抗R2の抵抗値は、コイル31の抵抗値に対して10倍以上とされてもよく、例えば、コイル31の抵抗値に対して100倍以上の大きさであってもよい。
【0060】
本実施形態の駆動機構1は、電磁モータ3によって秒針101を回転させることができる。駆動機構1は、例えば、秒針101を高速で回転させるときに、電磁モータ3によって秒針101を移動させる。駆動機構1は、以下に説明するように、電磁モータ3の駆動を開始するときに、誘起電圧Viに基づいて電磁モータ3に対する駆動タイミングを決定する。より詳しくは、制御回路4は、0クロス検出手段51によって検出された0クロスの発生タイミングに基づいて駆動タイミングを決定する。
【0061】
図14には、180°の回転位置にある回転子30が示されている。この場合、
図15に矢印Ar1で示すように、誘起電圧Viが0クロスする。誘起電圧Viの値は、負の値から正の値へと変化する。つまり、誘起電圧Viが負の値から正の値へと変化するタイミングは、回転子30が180°の回転位置を通過するタイミングを示している。
【0062】
制御回路4は、0クロスが検出されると、第二駆動回路14によって駆動パルスを発生させる。
図16には、0クロスが発生した直後の回転子30が示されている。回転子30の回転位置は、例えば、240°である。このときに、回転子30のS極30sは、第一磁極36aと対向し、回転子30のN極30nは、第二磁極36bと対向している。
【0063】
制御回路4は、
図16に示すように、第一磁極36aをS極とし、第二磁極36bをN極とするように、第二駆動回路14によって駆動パルスを出力させる。言い換えると、制御回路4は、第二駆動回路14により、誘起電圧Viを打ち消す向きの駆動パルスをコイル31に印加する。第一磁極36aおよび第二磁極36bは、磁力により回転子30に対して正回転方向の回転トルクを与える。駆動パルスの幅、言い換えると駆動パルスの出力時間は、例えば、回転子30を60°回転させるように設定される。
図17には、駆動パルスの印加時間Toの一例が示されている。
【0064】
制御回路4は、駆動パルスの出力が完了すると、0クロス検出手段51の出力をモニタする。制御回路4は、0クロスの検出を示す信号を受け取ると、第二駆動回路14に駆動パルスを発生させる。発生させる駆動パルスは、誘起電圧Viの極性とは逆極性のパルスである。制御回路4は、駆動パルスの出力と0クロスの検出を繰り返し、回転子30の回転速度を加速させていく。また、制御回路4は、駆動パルスを出力してから0クロスが検出されるまでの経過時間をタイマによってカウントする。制御回路4は、経過時間に基づいて、回転子30が安定して回転しているか否かを判定する。
【0065】
制御回路4は、
図18に示すように、回転子30の回転速度の増加に応じて、駆動パルスの印加時間を徐々に短くしていく。
図18では、時刻t0まで静電モータ2による運針が行なわれている。電磁モータ3が静電モータ2によって連れ回されることで、誘起電圧Viが発生している。時刻t0に誘起電圧Viの0クロスが検出され、静電モータ2に対する駆動が停止される。制御回路4は、時刻t0に第一パルスS1、第二パルスS2、および第三パルスS3を全てOFFとして静電モータ2による運針を終了する。
【0066】
制御回路4は、極性が互いに異なる駆動パルスMp,Mnによって電磁モータ3を駆動する。駆動パルスMpは、誘起電圧Viが負の値から正の値に切り替わったときに出力される。駆動パルスMnは、誘起電圧Viが正の値から負の値に切り替わったときに出力される。駆動パルスMp,Mnの印加時間は、徐々に短くされる。例えば、誘起電圧Viの周期が長いときの印加時間To1に対して、誘起電圧Viの周期が短くなったときの印加時間To2が短くされる。誘起電圧Viの周期が更に短くなると、印加時間To3も更に短くされる。なお、
図18では簡略化して誘起電圧Viの振幅を同じに図示しているが、電磁モータ3の回転速度が上昇するにつれて、振幅も増加していく。駆動パルスMpの電圧は、誘起電圧Viの振幅の増加に対しても十分余裕のある電圧に設定する。駆動パルスMpの電圧が高いほど、誘起電圧Viを打ち消すことができるため、高速化が可能となる。そのため、電磁モータ3の駆動パルスMp,Mnの駆動電圧を高速化に従って、上げるなどしても構わない。
【0067】
制御回路4は、例えば、回転子30の回転速度を所定の回転速度V1まで加速させる。この場合、制御回路4は、回転子30の加速が完了した後は、回転子30を定速で回転させてもよい。上記の所定の回転速度V1は、例えば、秒針101を時計100の内部時刻に応じて回転させる場合の回転子30の回転速度V0よりも高速である。所定の回転速度V1は、回転速度V0の4倍から5倍の速度であってもよい。制御回路4は、回転子30を所定の回転速度V1で回転させ、秒針101を目標位置へ向けて移動させる。
【0068】
制御回路4は、電磁モータ3の駆動を開始すると、静電モータ2の各電極21,22,23を等電位とし、静電モータ2による負荷抵抗を軽減する。例えば、制御回路4は、最初に0クロスを検出して電磁モータ3に駆動パルスを出力するときに、静電モータ2の各電極21,22,23を等電位にする。各電極21,22,23の電位が等電位となることで、静電モータ2におけるコギングの発生が抑制される。その結果、静電モータ2において、コギングによる負荷抵抗が軽減される。このように電磁モータ3で駆動する際に、静電モータ2によるコギングによる負荷抵抗を低減するだけでなく、もともと第1輪列11を1/24などと設定しているために、表面積で力を稼ぐ静電気による駆動原理上、必然的に大きくなってしまう静電モータ2の慣性量の影響を1/(24×24)に抑えることができるため、慣性量の小さな電磁モータ3でも十分駆動可能なレベルにすることができる。
【0069】
制御回路4は、例えば、第一電極21、第二電極22、および第三電極23を接地電位VDDに接続することで各電極21,22,23を等電位としてもよい。制御回路4は、第一電極21、第二電極22、および第三電極23を相互に電気的に接続することで各電極21,22,23を等電位としてもよい。
【0070】
制御回路4は、秒針101が目標位置まで移動すると、電磁モータ3を停止させる。制御回路4は、例えば、
図19に示すように、誘起電圧Viの極性と同方向の駆動パルスを印加する。
図19では、誘起電圧Viが正の値から負の値へと0クロスした時刻t0に駆動パルスの出力が開始される。この駆動パルスにより、
図20に示すように、回転子30のS極30sと対向する第一磁極36aがN極とされ、かつ回転子30のN極30nと対向する第二磁極36bがS極とされる。
【0071】
制御回路4は、電磁モータ3を停止させる場合、十分長い幅の駆動パルスをコイル31に印加する。これにより、回転子30の回転が停止する。制御回路4は、例えば、誘起電圧Viに基づいて回転子30の回転が停止したか否かを確認することができる。制御回路4は、駆動パルスを停止すると、電磁モータ3のコイル31に対して高抵抗を接続する。これにより、電磁モータ3による負荷抵抗が軽減される。制御回路4は、例えば、コイル31をオープンの状態とすることで、コイル31に対して高抵抗が接続された状態を実現する。
【0072】
図21のフローチャートを参照して、本実施形態に係る駆動機構1の動作の一例について説明する。ここでは、通常の時刻表示している秒針を、ユーザの指令等々により秒針を0位置にまで修正、送る際などに電磁モータ3で高速駆動する例を示す。ステップS10において、制御回路4は、入力処理を実行する。制御回路4は、例えば、時計100の操作部に対する操作入力についての情報を取得する。操作部は、例えば、プッシュボタンやスイッチ等である。制御回路4は、入力処理において、無線通信によって受信した指令の情報を取得してもよい。ステップS10が実行されると、ステップS20に進む。
【0073】
ステップS20において、制御回路4は、0位置修正するか否かを判定する。0位置修正は、秒針101の回転位置を正時の位置とする動作である。0位置修正は、例えば、ユーザによる操作入力や無線通信によって受信した指令等に応じて実行される。0位置修正は、時計100の内部処理に基づいて実行されてもよい。ステップS20の判定の結果、0位置修正すると肯定判定された場合にはステップS30に進み、否定判定された場合にはステップS60に進む。
【0074】
ステップS30において、制御回路4は、電磁モータ3により秒針101を0位置へ移動させる。制御回路4は、静電モータ2が秒針101を運針させている状態から0位置修正を開始する場合、誘起電圧Viに基づいて電磁モータ3に対する駆動タイミングを決定する。制御回路4は、
図18を参照して説明したように、0クロスを検出した直後に電磁モータ3に対する駆動パルスMp,Mnを出力する。制御回路4は、所定の回転速度V1で回転子30を回転させて秒針101を0位置まで移動させる。
【0075】
制御回路4は、秒針101が停止している状態から0位置修正を開始する場合、まず、静電モータ2によって電磁モータ3の回転子30および秒針101を回転させる。制御回路4は、静電モータ2によって回転子30を回転させながら、誘起電圧Viに基づいて電磁モータ3に対する駆動タイミングを決定する。制御回路4は、決定した駆動タイミングで電磁モータ3に駆動パルスを出力し、回転子30を回転させる。制御回路4は、所定の回転速度V1で回転子30を回転させて秒針101を0位置まで移動させる。ステップS30が実行されると、ステップS40に進む。
【0076】
ステップS40において、制御回路4は、復帰動作を実行するか否かを判定する。復帰動作は、秒針101の運針を再開する動作である。ステップS40の判定の結果、復帰動作を実行すると肯定判定された場合にはステップS50に進み、否定判定された場合にはステップS40の判定を繰り返す。制御回路4は、ステップS40で否定判定された場合、秒針101を0位置で停止させる制御を実行してもよい。制御回路4は、例えば、第二駆動回路14に駆動パルスを出力させて秒針101を停止させることができる。
【0077】
ステップS50において、制御回路4は、電磁モータ3により秒針101を内部時刻の位置へ移動させる。制御回路4は、静電モータ2によって電磁モータ3の回転子30および秒針101を回転させる。制御回路4は、静電モータ2によって回転子30を回転させながら、誘起電圧Viに基づいて電磁モータ3に対する駆動タイミングを決定する。制御回路4は、決定した駆動タイミングで電磁モータ3に駆動パルスを出力し、回転子30を回転させる。制御回路4は、所定の回転速度V1で回転子30を回転させて秒針101を内部時刻の位置まで移動させる。ステップS50が実行されると、ステップS10に移行する。
【0078】
ステップS60において、制御回路4は、運針タイミングであるか否かを判定する。制御回路4は、例えば、第一パルスS1、第二パルスS2、および第三パルスS3のON/OFFを切り替えるタイミングである場合に肯定判定する。ステップS60の判定の結果、運針タイミングであると肯定判定された場合にはステップS70に進み、否定判定された場合にはステップS10に移行する。
【0079】
ステップS70において、制御回路4は、静電モータ2の駆動制御を実行する。制御回路4は、第一駆動回路13に対する指令信号により、第一パルスS1、第二パルスS2、および第三パルスS3のON/OFFを制御する。ステップS70が実行されると、ステップS10へ移行する。
【0080】
なお、電磁モータ3によって秒針101を移動させる場面は、0位置修正には限定されない。駆動機構1は、例えば、時刻修正のときや、節電モードから復帰して秒針101の運針を再開するときや、アラーム時刻を表示するときに電磁モータ3によって秒針101を移動させてもよい。
【0081】
本実施形態の駆動機構1は、検知した衝撃に対して、針位置のずれを抑制する機能、および針位置を修正する機能を有する。秒針101を停止させているときに衝撃が加わると、秒針101の動きが、第1輪列11及び第2輪列12を介して、この実施例の場合、24×30倍に増速されて、電磁モータ3の回転子30を回転させる。この動きにより誘起電圧Viが発生するが、非常に早く動くため、秒針101が通常運針している場合よりも、より大きい振幅の誘起電圧Viが発生する。このため、衝撃検知回路52は、感度よく衝撃を検知することが可能となる。制御回路4は、衝撃を検知すると、針位置のずれを抑制する制御を実行する。制御回路4は、回転子30の回転を制動するロックパルスを第二駆動回路14によってコイル31に印加させる。ロックパルスでは、第一磁極36aおよび第二磁極36bの極性が一定に維持される。ロックパルスは、回転子30の回転位置がずれないように回転子30の回転位置を保持する。なお、ロックパルスを積極的に印加しなくても、制御回路4は、コイル31の第一端部31aと第二端部31bとをショートすることにより、電磁ブレーキ、つまり積極的に負荷抵抗を作用させることで、回転子30を制動することもできる。
【0082】
制御回路4は、検知した衝撃に対して、静電モータ2によって回転体20を制動する静電力を発生させて秒針101の位置ずれを抑制してもよい。例えば、制御回路4は、第一パルスS1をONに維持し、かつ第二パルスS2および第三パルスS3をOFFに維持して回転体20に対して制動力を作用させてもよい。ただし、第一パルスS1、第二パルスS2、および第三パルスS3のうち、何れのパルスをONとし、何れのパルスをOFFとするかは任意である。
【0083】
制御回路4は、秒針101を運針させているときに衝撃検知回路52が衝撃を検知すると、針位置の検出を行なう。制御回路4は、例えば、静電モータ2によって通常の運針を実行しながら秒針101の針位置を検出する。制御回路4は、針位置検出回路15の検出結果により秒針101の実際の回転位置を取得する。制御回路4は、検出された針位置が内部時刻に対応する針位置と異なる場合、針位置を修正する。制御回路4は、静電モータ2の初期位相に合わせるパルスを第一駆動回路13から出力して位相を合わせてもよい。制御回路4は、電極21,22,23に発生する電圧に基づいて回転体20の位相を求めてもよい。なお、秒針101を運針させているときに衝撃検知回路52が衝撃を検知した場合に、まず秒針101を停止させているときのように、電磁モータ3にロックパルスを印加して回転子30の動きを停止させたり、コイル31の第一端部31aと第二端部31bとをショートさせて、負荷抵抗が大きくなるように作用させたりしてもよい。このようにすることで、秒針101のずれ量を少なくすることが可能となる。ただ、回転子30の動きを停止させた場合には、針位置の検出を行い、内部時刻との位置合わせを行うようにするとよい。
【0084】
以上説明したように、本実施形態に係る駆動機構1は、静電モータ2と、電磁モータ3と、制御回路4と、を有する。静電モータ2は、秒針101に対して動力を伝達可能に連結される板状の回転体20と、回転体20を回転させる静電力を発生させる電極21,22,23と、を有する。電磁モータ3は、秒針101に対して動力を伝達可能に連結される回転子30と、コイル31と、コイル31によって発生した磁界を回転子30に誘導する固定子32と、を有する。つまり、
図1に図示したように構成した場合は、電磁モータ3の回転子30は、秒針101と静電モータ2の回転体20に対して動力を伝達可能に連結されている。電磁モータ3は、回転子30と固定子32との間の電磁抵抗の値が回転子30の回転方向A1に沿って一様であるように構成されている。
【0085】
制御回路4は、静電モータ2および電磁モータ3を制御する制御部の一例である。制御回路4は、基板上に形成された回路であってもよく、集積回路として構成されていてもよい。本実施形態の駆動機構1は、駆動機構1における消費電力を抑制することができる。また、本実施形態の駆動機構1は、時計100に搭載された場合、時計100の消費電力を抑制することができる。
【0086】
本実施形態の駆動機構1では、静電モータ2によって秒針101を運動させるときに、コイル31に対して高抵抗が接続される。よって、電磁モータ3による負荷抵抗が軽減される。
【0087】
本実施形態の静電モータ2は、複数の電極21,22,23を有する。電磁モータ3によって秒針101を運動させるときに、複数の電極21,22,23が等電位とされる。よって、静電モータ2による負荷抵抗が軽減される。
【0088】
制御回路4は、静電モータ2によって回転子30を連れ回しながら秒針を運動させる第一駆動回路を制御する第一駆動制御、および電磁モータ3によって回転体20を連れ回しながら秒針101を運動させる第二駆動回路を制御する第二駆動制御を実行するように構成されている。第二駆動制御における秒針の運動速度(回転速度V1)は、第一駆動制御における秒針の運動速度(回転速度V0)よりも高速である。よって、制御回路4は、静電モータ2および電磁モータ3の特性に応じた駆動制御を実行することができる。
【0089】
本実施形態の駆動機構1は、コイル31に発生する誘起電圧Viを検出する電圧検出部5を有する。制御回路4は、電圧検出部5によって検出された誘起電圧Viに基づいて電磁モータ3に対する駆動タイミングを決定する。よって、適切な駆動タイミングを決定することができる。
【0090】
本実施形態の駆動機構1は、衝撃を検知する衝撃検知回路52を有する。衝撃検知回路52は、衝撃を検知する衝撃検知部の一例である。制御回路4は、衝撃検知回路52によって検知された衝撃に応じて秒針101の位置ずれを抑制する制御を実行する。よって、駆動機構1は、秒針101の位置ずれを抑制して表示精度を向上させることができる。
【0091】
本実施形態の衝撃検知回路52は、コイル31に発生する誘起電圧Viに基づいて衝撃を検知する。よって、構成の複雑化を抑制しつつ衝撃を検知する機能を実現できる。
【0092】
本実施形態の制御回路4は、コイル31を短絡することにより、またはコイル31に電圧を印加することにより、秒針101の位置ずれを抑制する。よって、回路構成の複雑化を抑制しつつ位置ずれを抑制することができる。
【0093】
本実施形態の制御回路4は、電極21,22,23によって回転体20を制動する制動力を発生させることにより、秒針101の位置ずれを抑制することができる。よって、回路構成の複雑化を抑制しつつ位置ずれを抑制することができる。なお、制御回路4は、電磁モータ3による秒針101に対する制動と、静電モータ2による秒針101に対する制動と、を合わせて実行してもよい。
【0094】
本実施形態の駆動機構1は、秒針101の位置を検出する針位置検出回路15を有する。針位置検出回路15は、運動体の位置を検出する位置検出部の一例である。制御回路4は、衝撃検知回路52によって衝撃が検知されると、針位置検出回路15によって検出された秒針101の位置に基づく位置補正を実行する。よって、駆動機構1は、秒針101の位置ずれを抑制して表示精度を向上させることができる。
【0095】
[第2実施形態]
図22から
図44を参照して、第2実施形態について説明する。第2実施形態については、上記第1実施形態で説明したものと同様の機能を有する構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図22は、第2実施形態に係る時計および駆動機構の概略構成図、
図23は、第2実施形態に係る静電モータの構成を説明する図、
図24は、回転体を基準位置で停止させた状態を示す側面図、
図25は、回転体を基準位置で停止させた状態を示す平面図、
図26は、着磁された回転子を示す図である。第2実施形態に係る駆動機構1において、上記第1実施形態の駆動機構1と異なる点は、例えば、回転子30の位相における基準位置が回転体20の位相の基準位置に合わせられている点である。
【0096】
図22に示すように、第2実施形態の電磁モータ3は、静電モータ2と秒針101との間に介在している。つまり、
図22では、静電モータ2の回転体20は、秒針101と電磁モータ3の回転子30に対して動力を伝達可能に連結されている。第一輪列16は、静電モータ2の回転体20と電磁モータ3の回転子30とを連結する減速輪列である。第二輪列17は、電磁モータ3の回転子30と秒針101とを連結する減速輪列である。第一輪列16の減速比は、例えば、2/1である。第二輪列17の減速比は、例えば、1/30である。この場合、電磁モータ3は、2秒間に一回転し、静電モータ2は、4秒間に一回転する。つまり、秒針101が1秒間で6°回転するときに、電磁モータ3が1秒間で180°回転し、静電モータ2は1秒間で90°回転する。
図11から
図13に示した静電モータ2の駆動パルス1周期で動作する静電モータ2の回転角度が30°とすると、秒針101は静電モータの駆動パルス1周期で2°、電磁モータ3は静電モータの駆動パルス1周期で60°回転する。
【0097】
図23に示すように、第2実施形態の回転体20には、片面に4箇所の帯電膜26が配置されている。また、基板28には、第一電極群24A、第二電極群24B、第三電極群24C、および第四電極群24Dがこの順番で配置されている。電極群24A,24B,24C,24Dは、それぞれ第一電極21、第二電極22、および第三電極23を一つずつ有している。第2実施形態では、第一電極群24Aの第二電極22、および第三電極群24Cの第二電極22が位相の基準位置Aとされている。
【0098】
以下に説明するように、第2実施形態の回転子30は、静電モータ2の回転体20を基準位置Aに位置合わせした状態で着磁される。例えば、制御回路4は、
図24に示すように、第二電極22を正の電位とし、第一電極21および第三電極23を負の電位とする。これにより、
図24および
図25に示すように、回転体20は、帯電膜26が第二電極22と対向する回転位置(基準位置A)で停止する。
【0099】
回転体20を基準位置Aで停止させた状態で、回転子30が着磁される。第2実施形態の回転子30は、等方性磁石である。回転子30は、静電モータ2と連結された状態で着磁される。例えば、コイル31に通電されることで回転子30が着磁される。回転子30は、
図26に示すように、回転体20が基準位置Aに停止した状態で、回転子30の回転角度が0°となるように着磁される。
【0100】
なお、以下の説明では、基準位置Aにおいて、第一電極群24Aの第二電極22と対向する帯電膜26を「第一帯電膜26A」と称する。
図27には、回転体20の第一帯電膜26Aが第一電極群24Aの第三電極23と対向した状態が示されている。このときに、電磁モータ3の回転子30の回転角度は、60°である。
【0101】
図28には、回転体20の第一帯電膜26Aが第二電極群24Bの第一電極21と対向した状態が示されている。このときに、電磁モータ3の回転子30の回転角度は、120°である。
【0102】
図29には、回転体20の第一帯電膜26Aが第二電極群24Bの第二電極22と対向した状態が示されている。このときに、電磁モータ3の回転子30の回転角度は、180°である。このように、第2実施形態の駆動機構1は、静電モータ2の回転体20が90°回転すると、電磁モータ3の回転子30が180°回転するように構成されている。
【0103】
図30には、回転体20の第一帯電膜26Aが第三電極群24Cの第二電極22と対向した状態が示されている。このときに、電磁モータ3の回転子30の回転角度は、360°である。
図31には、回転体20の第一帯電膜26Aが第四電極群24Dの第二電極22と対向した状態が示されている。このときに、電磁モータ3の回転子30の回転角度は、540°である。
【0104】
上記のように構成された駆動機構1では、静電モータ2の駆動パルスの立ち上がり又は立ち下がりのタイミングが0クロスのタイミングと同期する。例えば、
図26に示す0°の位置では、第一電極21に対する第一パルスS1がONからOFFへと立ち下がる。よって、0クロスの検出によって静電モータ2の回転体20の回転位置や位相を取得することができる。
【0105】
[正転駆動]
図32から
図38を参照して、秒針101が停止した状態から電磁モータ3による正転駆動を実行する手順について説明する。
図32には、電磁モータ3による駆動を開始する前の回転体20の初期位置および回転子30の初期位置が示されている。制御回路4は、静電モータ2によって回転体20および回転子30をそれぞれの初期位置に位置付ける。
【0106】
より詳しくは、制御回路4は、回転子30の回転位置を0°の位置とするように、静電モータ2を制御する。制御回路4は、第二電極22の電位を正の電位とし、第一電極21および第三電極23の電位を負の電位とする。これにより、第一帯電膜26Aが第二電極22と対向し、回転子30が0°の回転位置に位置付けられる。なお、制御回路4は、誘起電圧Viに基づいて回転子30の回転位置を確認するために、事前に静電モータ2によって回転子30を回転させておいてもよい。
【0107】
次に、制御回路4は、
図33に示すように、静電モータ2によって回転子30をわずかに回転させる。
図33では、静電モータ2の第二電極22および第三電極23の電位が正電位とされ、第一電極21の電位が負の電位とされる。これにより、回転子30は、30°の位置まで回転する。
【0108】
次に、制御回路4は、
図34に示すように、電磁モータ3に駆動パルスを出力する。このときに出力される駆動パルスは、回転子30のN極30nと対向する第一磁極36aをN極とし、S極30sと対向する第二磁極36bをS極とするパルスである。制御回路4は、駆動パルスによって回転子30に対して正転方向の回転トルクを付与する。制御回路4は、駆動パルスを出力するときに、静電モータ2の全ての電極21,22,23を等電位とする。これにより、静電モータ2による負荷抵抗が軽減される。
【0109】
制御回路4は、例えば、回転子30の回転位置が
図35に示す位置となるまで駆動パルスを出力させる。
図35に示す回転位置は、180°の回転位置である。このときに、回転子30のS極30sが第一磁極36aと対向し、かつN極30nが第二磁極36bと対向する。静電モータ2の第一帯電膜26Aは、第二電極群24Bの第二電極22と対向する。
【0110】
次に、制御回路4は、
図36に示すように、電磁モータ3の駆動パルスをOFFとし、静電モータ2の回転体20に対して正転方向の回転トルクを付与する。制御回路4は、静電モータ2の第二電極22および第三電極23の電位を正の電位とし、かつ第一電極21の電位を負の電位とする。これにより、回転体20に対して、正転方向の静電引力が付与される。また、制御回路4は、0クロス検出手段51により、電磁モータ3において0クロスが発生したタイミングを取得する。制御回路4は、0クロスのタイミングに基づいて電磁モータ3の駆動タイミングを決定する。
【0111】
図37に示すように、制御回路4は、決定した駆動タイミングにおいて電磁モータ3に駆動パルスを出力する。
図37において、回転子30の回転位置は、210°の位置である。制御回路4は、回転子30のS極30sと対向する第一磁極36aをS極とし、かつN極30nと対向する第二磁極36bをN極とする駆動パルスを出力させる。制御回路4は、駆動パルスによって回転子30に対して正転方向の回転トルクを付与する。制御回路4は、駆動パルスを出力するときに、静電モータ2の全ての電極21,22,23を等電位とする。
【0112】
制御回路4は、例えば、回転子30の回転位置が
図38に示す位置となるまで駆動パルスを出力させる。
図38に示す回転位置は、360°の回転位置である。このときに、回転子30のS極30sが第二磁極36bと対向し、かつN極30nが第一磁極36aと対向する。静電モータ2の第一帯電膜26Aは、第三電極群24Cの第二電極22と対向する。制御回路4は、同様の手順を繰り返して電磁モータ3を正転方向に回転させる。なお、制御回路4は、電磁モータ3が安定して回転するようになった後は、静電モータ2に対する駆動パルスの出力を停止してもよい。この場合、静電モータ2の各電極21,22,23は、等電位とされることが好ましい。
【0113】
[逆転駆動]
次に、
図39から
図44を参照して、電磁モータ3を逆転方向に駆動するときの手順について説明する。逆転駆動は、例えば、
図32に示すように回転体20および回転子30を初期位置に位置付けた状態で開始される。
【0114】
図39に示すように、制御回路4は、静電モータ2によって回転子30をわずかに逆転方向に回転させる。
図39では、静電モータ2の第一電極21および第二電極22の電位が正の電位とされ、第三電極23の電位が負の電位とされる。これにより、回転子30は、−30°の位置まで回転する。
【0115】
次に、制御回路4は、
図40に示すように、電磁モータ3に駆動パルスを出力する。このときに出力される駆動パルスは、回転子30のN極30nと対向する第一磁極36aをN極とし、S極30sと対向する第二磁極36bをS極とするパルスである。制御回路4は、駆動パルスによって回転子30に対して逆転方向の回転トルクを付与する。制御回路4は、駆動パルスを出力するときに、静電モータ2の全ての電極21,22,23を等電位とする。
【0116】
制御回路4は、例えば、回転子30の回転位置が
図41に示す位置となるまで駆動パルスを出力させる。
図41に示す回転位置は、−180°の回転位置である。このときに、回転子30のS極30sが第一磁極36aと対向し、かつN極30nが第二磁極36bと対向する。静電モータ2の第一帯電膜26Aは、第四電極群24Dの第二電極22と対向する。
【0117】
次に、制御回路4は、
図42に示すように、電磁モータ3の駆動パルスをOFFとして、静電モータ2の回転体20に対して逆転方向の回転トルクを付与する。制御回路4は、静電モータ2の第一電極21および第二電極22の電位を正の電位とし、かつ第三電極23の電位を負の電位とする。これにより、回転体20に対して、逆転方向の回転トルクが付与される。また、制御回路4は、0クロス検出手段51により、電磁モータ3において0クロスが発生したタイミングを取得する。制御回路4は、0クロスのタイミングに基づいて電磁モータ3の駆動タイミングを決定する。
【0118】
図43に示すように、制御回路4は、決定した駆動タイミングにおいて電磁モータ3に駆動パルスを出力する。
図43において、回転子30の回転位置は、−210°の位置である。制御回路4は、回転子30のS極30sと対向する第一磁極36aをS極とし、かつN極30nと対向する第二磁極36bをN極とする駆動パルスを出力させる。制御回路4は、駆動パルスによって回転子30に対して逆転方向の回転トルクを付与する。制御回路4は、駆動パルスを出力するときに、静電モータ2の全ての電極21,22,23を等電位とする。
【0119】
制御回路4は、例えば、回転子30の回転位置が
図44に示す位置となるまで駆動パルスを出力させる。
図44に示す回転位置は、−360°の回転位置である。このときに、回転子30のS極30sが第二磁極36bと対向し、かつN極30nが第一磁極36aと対向する。静電モータ2の第一帯電膜26Aは、第三電極群24Cの第二電極22と対向する。制御回路4は、同様の手順を繰り返して電磁モータ3を逆転方向に回転させる。なお、制御回路4は、電磁モータ3が安定して回転するようになった後は、静電モータ2に対する駆動パルスの出力を停止してもよい。この場合、静電モータ2の各電極21,22,23は、等電位とされることが好ましい。
【0120】
以上説明したように、本実施形態の制御回路4は、電磁モータ3の駆動を開始するときに、静電モータ2によって回転子30の位置を位置決めした後に、コイル31に対する駆動パルスの印加を開始する。よって、静的安定点を有していない電磁モータ3の駆動を精度よく実行することができる。
【0121】
本実施形態の回転子30の磁石は、等方性磁石である。よって、回転体20の基準位置と、回転子30の基準位置との位置合わせが容易である。
【0122】
[実施形態の第1変形例]
上記第1実施形態および第2実施形態の第1変形例について説明する。
図45は、実施形態の第1変形例に係る時計および駆動機構の概略構成を示す図である。第1変形例において、上記第1実施形態および第2実施形態と異なる点は、例えば、静電モータ2および電磁モータ3が秒針101を介して連結されている点である。
【0123】
図45に示すように、第一輪列18は、静電モータ2と秒針101との間に介在している。静電モータ2の回転体20は、第一輪列18を介して秒針101に連結されている。第一輪列18は、静電モータ2の回転を減速して秒針101に伝達する減速輪列である。第二輪列19は、電磁モータ3と秒針101との間に介在している。電磁モータ3の回転子30は、第二輪列19を介して秒針101に連結されている。第二輪列19は、電磁モータ3の回転を減速して秒針101に伝達する減速輪列である。
【0124】
[実施形態の第2変形例]
上記第1実施形態および第2実施形態の第2変形例について説明する。
図46は、実施形態の第2変形例に係る駆動パルスを示す図である。第2変形例に係る駆動機構1は、電磁モータ3によって、静電モータ2による駆動をアシストさせる。例えば、日板を回転させる場合など、カレンダ負荷により、静電モータ2の負荷が重くなることがある。この場合に、第2変形例に係る駆動機構1は、電磁モータ3に駆動アシストを実行させる。
【0125】
図46において、期間KCは、カレンダ負荷が発生する期間である。制御回路4は、期間KCにおいて、第二駆動回路14から電磁モータ3に駆動パルスMp,Mnを出力させる。電磁モータ3の出力トルクにより、静電モータ2による駆動がアシストされる。制御回路4は、期間KCにおいて0クロスの検出に失敗した場合、針位置の検出を実行する。ここで、期間KCでは、針位置を検出する間も負荷が重い可能性がある。このため、制御回路4は、針位置を検出する際にも静電モータ2および電磁モータ3を同期駆動してもよい。
【0126】
なお、制御回路4は、電磁モータ3によって秒針101を回転させるときに、静電モータ2に駆動アシストを実行させてもよい。例えば、制御回路4は、電磁モータ3によって秒針101の回転を開始させるときに、静電モータ2の駆動アシストにより秒針101を加速させてもよい。
【0127】
[実施形態の第3変形例]
上記第1実施形態および第2実施形態の第3変形例について説明する。
図47は、実施形態の第3変形例に係る電磁モータを示す図、
図48は、スリットを有する固定子を示す図、
図49は、スリットを有する固定子による保持トルクを示す図、
図50は、ノッチを有する固定子を示す図、
図51は、ノッチを有する固定子による保持トルクを示す図、
図52は、第3変形例の固定子による保持トルクを示す図、
図53は、第3変形例に係る電磁モータの他の例を示す図である。
【0128】
図47に示すように、第3変形例の固定子32は、スリット37a,37b、およびノッチ38a,38bを有する。スリット37a,37bおよびノッチ38a,38bは、誘導部34に設けられている。スリット37a,37bは、幅方向Y1に沿って延在しており、貫通孔34aにつながっている。一方のスリット37aは、90°の位置に配置されており、貫通孔34aと誘導部34の外部空間とを連通している。他方のスリット37bは、270°の位置に配置されており、貫通孔34aと誘導部34の外部空間とを連通している。つまり、誘導部34は、スリット37a,37bによって二分されている。
【0129】
スリット37a,37bの空間部は、空気層であってもよく、非磁性体によって充填されていてもよい。スリット37a,37bに充填される非磁性体は、ニッケルクロム(NiCr)等の合金であってもよい。非磁性体の合金は、例えば、誘導部34に対してレーザ溶接されてもよい。
【0130】
ノッチ38a,38bは、貫通孔34aの内周面34bに形成された凹部である。ノッチ38a,38bは、回転子30の中心軸線C1の方向に沿って延在している。一方のノッチ38aは、180°の位置に配置されている。他方のノッチ38bは、0°の位置に配置されている。つまり、ノッチ38a、38bは、軸方向X1において互いに対向している。
【0131】
図48には、スリット37a,37bを有し、かつノッチ38a,38bを有していない固定子32が示されている。
図48の固定子32は、回転子30に対して
図49に示す保持トルクTq1を作用させる。保持トルクTq1の波形は、例えば、正弦波の波形である。保持トルクTq1の周期は、180°である。
【0132】
図50には、ノッチ38a,38bを有し、かつスリット37a,37bを有していない固定子32が示されている。
図50の固定子32は、回転子30に対して
図51に示す保持トルクTq2を作用させる。保持トルクTq2の波形は、保持トルクTq1の波形と同様であり、例えば、正弦波の波形である。保持トルクTq2の位相は、保持トルクTq1の位相に対して90°ずれている。ノッチ38a,38bの形状は、保持トルクTq2の振幅が保持トルクTq1の振幅と同じとなるように設計されている。
【0133】
図52には、
図47に示す第3変形例の固定子32が回転子30に作用させる保持トルクTq3が示されている。保持トルクTq3は、保持トルクTq1および保持トルクTq2を合わせた合成トルクである。第3変形例の固定子32は、保持トルクTq1と保持トルクTq2とが打ち消し合うように構成されている。従って、保持トルクTq3は、
図52に示すように、大きさが0となる。言い換えると、
図47に示す固定子32によれば、回転子30と固定子32との間の電磁抵抗の値が回転子30の回転方向に沿って一様となる。
【0134】
なお、
図53に示すように、複数対のノッチが誘導部34に設けられてもよい。
図53に示す誘導部34には、ノッチ39a,39bと、ノッチ39c,39dと、が設けられている。ノッチ39a,39bは、対をなしており、軸方向X1において互いに対向している。一方のノッチ39aは、180°の位置に配置されている。他方のノッチ39bは、0°の位置に配置されている。ノッチ39a,39bによる保持トルクは、
図51に示す保持トルクTq2と同様である。
【0135】
ノッチ39c,39dは、対をなしており、幅方向Y1において互いに対向している。一方のノッチ39cは、90°の位置に配置されている。他方のノッチ39dは、270°の位置に配置されている。ノッチ39c,39dによる保持トルクは、
図49に示す保持トルクTq1と同様である。従って、
図53に示す電磁モータ3によれば、回転子30の回転位置にかかわらず回転子30に対する保持トルクを0とすることができる。
【0136】
[実施形態の第4変形例]
上記第1実施形態および第2実施形態の第4変形例について説明する。
図54は、実施形態の第4変形例に係る電磁モータを示す図、
図55は、スリットを有する固定子を示す図、
図56は、スリットを有する固定子による保持トルクを示す図、
図57は、第一ノッチ対を有する固定子を示す図、
図58は、第一ノッチ対を有する固定子による保持トルクを示す図、
図59は、第二ノッチ対を有する固定子を示す図、
図60は、第二ノッチ対を有する固定子による保持トルクを示す図である。
【0137】
図54に示すように、第4変形例に係る誘導部34は、スリット40a,40b、およびノッチ41a,41b,41c,41dを有する。スリット40a,40bの構成は、上記第3変形例のスリット37a,37bの構成と同様である。
【0138】
ノッチ41a,41bは、第一ノッチ対を構成している。一方のノッチ41aは、210°の位置に配置されている。他方のノッチ41bは、30°の位置に配置されている。ノッチ41c,41dは、第二ノッチ対を構成している。一方のノッチ41cは、150°の位置に配置されている。他方のノッチ41dは、330°の位置に配置されている。つまり、第一ノッチ対の位相および第二ノッチ対の位相は、それぞれスリット40a,40bの位相に対して60°ずれている。
【0139】
図55には、スリット40a,40bを有し、かつノッチ41a,41b,41c,41dを有していない固定子32が示されている。
図55の固定子32は、回転子30に対して
図56に示す保持トルクTq4を作用させる。
【0140】
図57には、第一ノッチ対を有し、かつスリット40a,40bおよび第二ノッチ対を有していない固定子32が示されている。
図57の固定子32は、回転子30に対して
図58に示す保持トルクTq5を作用させる。
【0141】
図59には、第二ノッチ対を有し、かつスリット40a,40bおよび第一ノッチ対を有していない固定子32が示されている。
図59の固定子32は、回転子30に対して
図60に示す保持トルクTq6を作用させる。
【0142】
保持トルクTq5,Tq6の波形は、保持トルクTq4の波形と同様であり、例えば、正弦波の波形である。ノッチ41a,41b,41c,41dの形状は、保持トルクTq5,Tq6の振幅が保持トルクTq4の振幅と同じとなるように設計されている。保持トルクTq5の位相は、保持トルクTq4の位相に対して60°ずれている。保持トルクTq6の位相は、保持トルクTq4の位相および保持トルクTq5の位相の何れに対しても60°ずれている。従って、
図54に示す固定子32による合成保持トルクは0となる。つまり、
図54に示す固定子32によれば、回転子30と固定子32との間の電磁抵抗の値が回転子30の回転方向に沿って一様となる。
【0143】
[実施形態の第5変形例]
上記第1実施形態および第2実施形態の第5変形例について説明する。
図61は、実施形態の第5変形例に係る電磁モータを示す図、
図62は、実施形態の第5変形例に係る他の電磁モータを示す図である。
【0144】
図61に示す誘導部34は、三つのノッチ42a,42b,42cを有する。ノッチ42a,42b,42cの位相は、相互に120°ずれている。具体的には、ノッチ42aは、90°の位置に配置されている。ノッチ42bは、210°の位置に配置されている。ノッチ42cは、330°の位置に配置されている。三つのノッチ42a,42b,42cの形状は、例えば、同一である。
図61に示す固定子32によれば、回転子30の回転位置にかかわらず回転子30に作用する保持トルクを0とすることができる。
【0145】
図62に示す誘導部34は、スリット43a,43bおよびノッチ44a,44bを有する。スリット43a,43bの構成は、上記第3変形例のスリット37a,37bの構成と同様である。ノッチ44a,44bは、スリット43a,43bを通る仮想線に関して線対称である。固定子32は、スリット43a,43bによる保持トルクをノッチ44a,44bによる保持トルクで打ち消すように構成されている。よって、
図62に示す固定子32によれば、回転子30に対する保持トルクを0とすることができる。
【0146】
[実施形態の第6変形例]
上記第1実施形態および第2実施形態の第6変形例について説明する。駆動機構1は、電磁モータ3の第二駆動回路14を用いて外部機器との無線通信を行なうように構成されてもよい。例えば、駆動機構1は、外部の歩度測定器との間で非接触式の通信を行ってもよい。歩度測定は、例えば、駆動機構1のモードを歩度測定モードに設定し、かつ時計100を歩度測定器に載置した状態で実行される。歩度測定モードにおいて、第二駆動回路14は、コイル31に対して周期的に歩度パルスを出力する。歩度測定器は、コイル31に発生した磁界の変化を検出する内蔵コイルを有している。歩度測定器は、検出した磁界の変化に基づいて駆動機構1の歩度を測定する。
【0147】
歩度測定器は、内蔵コイルに電圧を印加して磁界を変化させることにより駆動機構1に対して信号を送ることができる。駆動機構1は、歩度測定器から送られた信号をコイル31によって受信する。歩度測定器から送られる信号は、例えば、電圧検出部5の信号検出回路によって検出される。制御回路4は、信号検出回路によって検出された信号を取得して各種の処理を行なう。例えば、制御回路4は、歩度測定器から送られる開始信号に応じて歩度パルスの出力を開始させてもよい。
【0148】
駆動機構1が実行する非接触通信は、歩度測定のための通信には限定されない。例えば、駆動機構1は、調整モードにおいて外部機器から歩度調整の指令信号を受信してもよい。制御回路4は、歩度調整の指令信号に応じて歩度を調整する。駆動機構1は、テストモードにおいて外部機器から動作テストの指令信号を受信してもよい。制御回路4は、動作テストの指令信号に応じて静電モータ2、電磁モータ3、または他の駆動部を動作させる。
【0149】
駆動機構1は、電磁モータ3を有しており、第二駆動回路14によって外部機器と非接触通信を行なうことができる。よって、時計100の裏蓋を開けることなく歩度測定、歩度調整、動作テスト等を行なうことができる。これにより、製造時の検査/調整や、修理点検における作業効率が向上する。また、裏蓋を開けることなく点検や調整を行なうことができるため、湿気等が流入することによる静電モータ2への悪影響を未然に抑制することができる。
【0150】
[実施形態の第7変形例]
上記第1実施形態および第2実施形態の第7変形例について説明する。制御回路4は、電磁モータ3によって秒針101を回転させている際に、静電モータ2によって回転位置の検出を行なってもよい。例えば、制御回路4は、静電モータ2の各電極21,22,23をオープンとして、各電極21,22,23の電位に基づいて回転体20の回転位置を検出する。制御回路4は、回転体20の回転位置に基づいて、回転子30の回転位置を取得することができる。
【0151】
衝撃を検知する方法は、誘起電圧Viを利用する方法には限定されない。制御回路4は、例えば、傾斜スイッチや加速度センサの検出結果に基づいて衝撃検知を行なってもよい。
【0152】
静電モータ2および電磁モータ3に連結される運動体は、秒針101には限定されない。秒針101は、静電モータ2および電磁モータ3によって駆動される表示針の一例である。駆動される運動体は、表示針とは異なるものであってもよい。駆動機構1は、静電モータ2および電磁モータ3によって時計100の全ての指針を運針させてもよい。この場合、指針は、秒針101に加えて、分針および時針を有していてもよい。時計100が有する指針は、分針および時針の二針であってもよい。
【0153】
静電モータ2において、電極21,22,23が回転体20に配置され、帯電膜26が時計100の筐体の側に固定されてもよい。
【0154】
上記第1実施形態、第2実施形態、および変形例に係る駆動機構1は、時計100とは異なる装置に適用されてもよい。
【0155】
上記の各実施形態および変形例に開示された内容は、適宜組み合わせて実行することができる。