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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-182154(P2021-182154A)
(43)【公開日】2021年11月25日
(54)【発明の名称】光トランシーバ
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/42 20060101AFI20211029BHJP
   H05K 5/03 20060101ALI20211029BHJP
【FI】
   G02B6/42
   H05K5/03 D
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2021-126751(P2021-126751)
(22)【出願日】2021年8月2日
(62)【分割の表示】特願2017-131419(P2017-131419)の分割
【原出願日】2017年7月4日
(71)【出願人】
【識別番号】000154325
【氏名又は名称】住友電工デバイス・イノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】日野 正登
【テーマコード(参考)】
2H137
4E360
【Fターム(参考)】
2H137AA01
2H137AB05
2H137AB06
2H137AC02
2H137BA02
2H137BA12
2H137CA35
2H137CD32
2H137DA12
2H137DA13
2H137DA39
2H137GA07
2H137HA05
4E360BA08
4E360BB22
4E360BC03
4E360BC06
4E360BC07
4E360BD03
4E360BD05
4E360CA02
4E360EA12
4E360EA18
4E360ED02
4E360GA60
4E360GB99
4E360GC02
4E360GC08
(57)【要約】
【課題】蓋部による封止を確実に行うことができる光トランシーバを提供する。
【解決手段】実施形態に係る光トランシーバは、側壁及び底壁を有するハウジング2と、側壁に支持され、ハウジング2と内部空間を形成する蓋部3と、ハウジング2に蓋部3を固定するシールドフィンガ20と、を備え、蓋部3は、シールドフィンガ20が入り込んでシールドフィンガ20が係合する係合穴15を有し、係合穴15の内側面は、係合穴15の開口側から係合穴15の底面15b側に向かうに従って係合穴15が広がる方向に延びる傾斜面15dを含む。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁及び底壁を有するハウジングと、
前記側壁に支持され、前記ハウジングと内部空間を形成する蓋部と、
前記ハウジングに前記蓋部を固定する固定具と、
を備え、
前記固定具は、前記ハウジングを取り囲む胴体部と、前記胴体部から前記ハウジングに沿って延びる複数のフィンガ部と、を有し、
前記複数のフィンガ部の間には、スリットが形成されており、
複数の前記スリットは、前記フィンガ部の先端から前記フィンガ部の曲げ開始位置に向かって延びる第1スリットと、前記先端から前記曲げ開始位置に向かって延びると共に前記第1スリットよりも長く延びる第2スリットと、を含み、
前記フィンガ部の先端から前記第1スリットにおける前記曲げ開始位置までの距離、および前記フィンガ部の先端から前記第2スリットにおける前記曲げ開始位置までの距離は互いに同一である、光トランシーバ。
【請求項2】
前記蓋部は、前記固定具が入り込んで前記固定具が係合する係合穴を有し、
前記係合穴の内側面は、前記係合穴の開口側から前記係合穴の奥側に向かうに従って前記係合穴が広がる方向に延びる傾斜面を含む、
請求項1に記載の光トランシーバ。
【請求項3】
前記固定具は、前記係合穴に入り込む係合部を有し、
前記係合部は、前記傾斜面の形状に沿って前記係合穴の奥側に向かって広がる形状を有する、
請求項2に記載の光トランシーバ。
【請求項4】
前記フィンガ部と前記ハウジングとの間に挟み込まれた弾性体を備える、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光トランシーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光トランシーバに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、受光素子及び発光素子を備えた光モジュールが記載されている。光モジュールは、ハウジングと、ハウジングの内部に収容される回路基板とを備える。ハウジングは、側壁及び底壁を有する下筐体と、蓋部を構成する上筐体とを備える。この光モジュールでは、上筐体の前端を下筐体の前端に引っ掛けて、引っ掛けた部分を支点として上筐体を後方且つ下方に倒すことにより、下筐体が封止される。このとき、上筐体の後端が下筐体の後端に係合することにより、上筐体が下筐体を封止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−29539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光トランシーバでは、ハウジングを確実に封止するため、ネジによって蓋部を係合させることがある。この係合を確実なものとするためには、複数のネジを用いることが必要である。また、光トランシーバの業界標準規格を定めたMSA(Multi Source Agreement)は、光トランシーバの外形について厳格に規定している。このため、複数のネジを効率よく配置するスペースを光トランシーバの内部に確保できないことがある。従って、蓋部による封止を確実に行えなくなることが懸念される。
【0005】
本発明は、蓋部による封止を確実に行うことができる光トランシーバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る光トランシーバは、側壁及び底壁を有するハウジングと、側壁に支持され、ハウジングと内部空間を形成する蓋部と、ハウジングに蓋部を固定する固定具と、を備え、蓋部は、固定具が入り込んで固定具が係合する係合穴を有し、係合穴の内側面は、係合穴の開口側から係合穴の奥側に向かうに従って係合穴が広がる方向に延びる傾斜面を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一形態では、蓋部による封止を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る光トランシーバを示す斜視図である。
図2図2は、光トランシーバの内部構造を示す斜視図である。
図3図3は、光トランシーバを示す断面図である。
図4図4は、光トランシーバの蓋部の前端を示す斜視図である。
図5図5は、図4の蓋部の前端を拡大した斜視図である。
図6図6は、蓋部の係合穴に固定具の係合部が係合している状態を示す図である。
図7図7は、蓋部、固定具及び光レセプタクルを示す平面図である。
図8図8は、ハウジングと固定具のフィンガ部との間に挟まれた弾性体を示す側面図である。
図9図9は、ハウジング、蓋部及び固定具を示す断面図である。
図10図10は、固定具を示す平面図である。
図11図11は、フィンガ部とハウジングを示す側面図である。
図12図12は、ハウジングにシートを挿入する状態を示す斜視図である。
図13図13は、ハウジングに中間アセンブリを挿入する状態を示す斜視図である。
図14図14は、ハウジングにホルダを挿入する状態を示す斜視図である。
図15図15は、ハウジングに内蓋を組み付ける状態を示す斜視図である。
図16図16は、変形例に係る蓋部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本願発明の実施形態の説明]
最初に、本願発明の実施形態の内容を列記して説明する。実施形態に係る光トランシーバは、側壁及び底壁を有するハウジングと、側壁に支持され、ハウジングと内部空間を形成する蓋部と、ハウジングに蓋部を固定する固定具と、を備え、蓋部は、固定具が入り込んで固定具が係合する係合穴を有し、係合穴の内側面は、係合穴の開口側から係合穴の奥側に向かうに従って係合穴が広がる方向に延びる傾斜面を含む。
【0010】
この光トランシーバでは、ハウジングと内部空間を形成する蓋部は、固定具が入り込んで当該固定具が係合する係合穴を有する。係合穴は、開口側から奥側に向かうに従って広がる傾斜面を備える。よって、固定具が係合穴に係合しているときに固定具が傾斜面に当接することにより、係合穴から固定具を抜けにくくすることができる。従って、蓋部から固定具が抜けにくくなることにより、ハウジングから蓋部を外れにくくすることができるので、蓋部によるハウジングの封止を確実に行うことができる。
【0011】
また、固定具は、係合穴に入り込む係合部を有し、係合部は、傾斜面に沿った状態で係合穴に係合してもよい。この場合、固定具の係合部が傾斜面に沿った状態で係合穴に係合する。よって、係合穴の傾斜面に係合部を沿わせて係合部を蓋部に強固に係合することができるので、固定具により一層強固に蓋部を固定することができる。従って、蓋部を強固に固定することにより、蓋部による封止をより確実に行うことができる。
【0012】
また、固定具は、ハウジングを取り囲む胴体部と、胴体部からハウジングに沿って延びる複数のフィンガ部と、を有し、複数のフィンガ部の間には、スリットが形成されており、複数のスリットが、複数のフィンガ部の配列方向に沿って配列されており、複数のスリットは、フィンガ部の端面からフィンガ部の曲げ開始位置に延びる第1スリットと、端面から曲げ開始位置に向かって延びると共に第1スリットよりも長く延びる第2スリットと、を含んでもよい。この場合、第1スリットが曲げ開始位置に延びることにより、第1スリットに隣接するフィンガ部の先端側の部分に確実に弾性力を発揮させることができる。よって、当該フィンガ部によるバネ力を確実に発揮することができる。更に、第2スリットが曲げ開始位置よりも奥側まで長く延びることにより、第2スリットに隣接するフィンガ部によって応力を緩和することができるので、フィンガ部のへたりを抑制することができる。このように、互いに長さが異なる第1スリットと第2スリットを備えることにより、バネ力を発揮する効果と、へたりを抑制する効果の両方を得ることができる。
【0013】
また、前述の光トランシーバは、フィンガ部とハウジングとの間に挟み込まれた弾性体を備えてもよい。この場合、フィンガ部とハウジングとの間に弾性体が介在することにより、フィンガ部をホストシステムのケージ側に押し上げることができる。従って、フィンガ部とケージとの接触を確保することができる。
【0014】
また、固定具は、係合穴から延びると共に蓋部の上面に接触する第1部分と、第1部分から側壁に沿って曲がる第2部分と、第2部分の第1部分との反対側の端部から底壁に沿って曲がる第3部分と、を有し、第2部分と第3部分との成す角の角度は、第1部分と第2部分との成す角の角度よりも大きくてもよい。この場合、係合穴から延びる第1部分と第2部分の角度は、第2部分と第3部分との角度よりも小さい。よって、第1部分と第2部分の角度が相対的に小さいことによって、係合穴への固定部の係合をより強固に行うことができる。また、第2部分と第3部分との角度が相対的に大きいことによって、係合穴の反対側では固定具にかかる応力を緩和することができる。
【0015】
[本願発明の実施形態の詳細]
本願発明の実施形態に係る光トランシーバの具体例を、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、以下の例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の範囲内における全ての変更が含まれることが意図される。以下では、図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し重複する説明を適宜省略する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る光トランシーバ1を示す斜視図である。図2は、光トランシーバ1の内部構造を示す斜視図である。光トランシーバ1は、光通信に用いられる機器であり光信号と電気信号の相互変換を行う。光トランシーバ1は、その長手方向D1に沿って、ホストシステムに用意されたケージに挿入される。光トランシーバ1は、ハウジング2、蓋部3、内蓋4、光レセプタクル5、回路基板6及びシールドフィンガ20(固定具)を備える。以下の説明では、光トランシーバ1の前方を光レセプタクル5が形成されている側、後方をその反対側とする。
【0017】
図3は、光トランシーバ1の封止構造を示す断面図である。図2及び図3に示されるように、ハウジング2は、光トランシーバ1の光部品及び電気部品を収容する。ハウジング2は、底壁2aと、底壁2aの両端から立ち上がる2つの側壁2bを有する。側壁2bの外面の前側(光レセプタクル5側)には、第1凹部2c、及び第1凹部2cの下方に位置する第2凹部2dが設けられる。
【0018】
第1凹部2c及び第2凹部2dは、共に、光トランシーバ1の幅方向D2に一対に設けられる。側壁2bの後端には、蓋部3の後端を受容する一対の凹部2eが設けられており、側壁2bの前後方向の中央付近には、内蓋4の円弧状の突起4bを受容する溝2fが設けられている。
【0019】
ハウジング2及び蓋部3は内部空間Sを形成する。蓋部3の前端には、蓋部3の裏面3aから裏面3aの面外方向に突出する一対の突出部3bと、突出部3bの先端において幅方向D2の内側に突出する凸部3cとが設けられる。凸部3c及び突出部3bが第1凹部2c及び第2凹部2dに入り込み、凸部3cが第2凹部2dに係合することにより、ハウジング2に蓋部3が係合する。
【0020】
ハウジング2、蓋部3及び内蓋4は、内部空間Sにおいて誘起される電磁放射ノイズの外部への漏洩を防止する。ハウジング2と蓋部3の間には、弾性体から成るガスケット7が挿入される。蓋部3の裏面3aにおいて、ガスケット7は、蓋部3の後側から前方に延びると共に後方に折り返されるU字状を成すように配置される。内蓋4は、樹脂製又は金属製である。金属製の内蓋4は、回路基板6上に搭載された回路素子から蓋部3までの放熱パスを確保する。
【0021】
内蓋4は、その中央にネジ孔4aを有し、蓋部3は、その中央にネジNの挿通孔3dを有する。ネジ孔4a及び挿通孔3dは、内蓋4に蓋部3を重ねるときに整合する。蓋部3の上側からネジNを挿通孔3dに挿通すると共に、ネジNをネジ孔4aに挿入してネジ止めすることにより、蓋部3と内蓋4をハウジング2に固定する。ネジNの長さは、その先端N1が回路基板6から離間する長さとされている。
【0022】
光レセプタクル5は、光トランシーバ1の一端に設けられており、外部の光コネクタを受容する。光レセプタクル5は、ハウジング2の前端においてハウジング2に接続されている。回路基板6は、その後端に電気プラグ6aを備える。電気プラグ6aがケージの内部の電気コネクタに係合することによって、光トランシーバ1とホストシステムとの間の通信が確立する。
【0023】
内部空間Sには、前述した回路基板6に加えて、TOSA(Transmitter Optical Sub-Assembly)8、ROSA(Receiver Optical Sub-Assembly)9、及び2枚のFPC(FlexiblePrinted Circuit)基板10,11が収容される。回路基板6、TOSA8、ROSA9及び2枚のFPC基板10,11は、中間アセンブリM(図13参照)を構成する。TOSA8及びROSA9は、光トランシーバ1の幅方向D2に並置される。FPC基板10はTOSA8と回路基板6を接続し、FPC基板11はROSA9と回路基板6を接続する。
【0024】
ROSA9は、光トランシーバ1の外部から受信した光信号を電気信号に変換する。ROSA9が変換した電気信号はFPC基板11を介して回路基板6に伝送される。回路基板6が搭載する回路は、この電気信号に信号処理を施し、当該電気信号はホストシステムに向けて出力される。
【0025】
一方、ホストシステムから回路基板6には送信用の電気信号が入力する。当該電気信号は、回路基板6が搭載する回路によって処理された後、FPC基板10を介してTOSA8に伝送される。TOSA8は、この電気信号を光信号に変換した後、当該光信号を光トランシーバ1の外部に出力する。
【0026】
図4は、蓋部3の前側を示す斜視図である。図4に示されるように、蓋部3は、前述した挿通孔3dが設けられる上面3eを有する。上面3eの前端には、シールドフィンガ20が入り込む凹部3fが設けられる。凹部3fは、蓋部3の幅方向D2に一対に設けられており、各凹部3fは、蓋部3の幅方向D2の両端側に向かうに従って後方に広がっている。
【0027】
図5は、蓋部3の前側を拡大した斜視図である。図4及び図5に示されるように、凹部3fの後端には、凹部3fから更に窪むと共に凹部3fに沿って延びる溝部3gが設けられている。一対の溝部3gの間には、前方に突出する凸部3hが設けられる。蓋部3の端面3jにおける蓋部3の幅方向D2の中央には、端面3jから前方に突出する突出部3kが設けられている。突出部3kは、ハウジング2の凹部2j(図2参照)に係合する部位であり、突出部3k及びハウジング2の凹部2jはシールドフィンガ20によって被覆される。
【0028】
蓋部3は、シールドフィンガ20が入り込んでシールドフィンガ20が係合する係合穴15を有する。係合穴15は、凸部3hの前端から突出部3kの前端にまで延びている。係合穴15は、一対の内側面15a及び底面15bを有する。例えば、内側面15a及び底面15bは、共に、平坦状とされているが、内側面15a及び底面15bの少なくとも一部が平坦状以外の形状とされていてもよい。
【0029】
内側面15aは、係合穴15の開口15c側から係合穴15の底面15b側(奥側)に向かうに従って係合穴15が広がる方向に延びる傾斜面15dを含む。図4及び図5では、内側面15aの全体が傾斜面15dである例を示しているが、内側面15aの一部が傾斜面15dであってもよい。蓋部3の上方から見て、係合穴15の開口15cは、前後方向に直線状に延びている。蓋部3の長手方向D1から見て、係合穴15は、台形状を成している。
【0030】
図6は、前述した係合穴15、及び係合穴15に係合するシールドフィンガ20の係合部21を示している。図7は、ハウジング2及び蓋部3に固定されたシールドフィンガ20を示している。シールドフィンガ20は、バネ要素を有する導電性機構部品として用いられる。
【0031】
シールドフィンガ20は、ハウジング2及び蓋部3の光レセプタクル5との接続部分を取り囲むように装着され、ホストシステムのケージと電気的及び物理的に接触する。シールドフィンガ20は、前述した係合部21と、ハウジング2及び蓋部3を取り囲む胴体部22と、胴体部22からハウジング2に沿って延びる複数のフィンガ部23とを備える。
【0032】
係合部21は、係合穴15の傾斜面15dに沿った状態で係合穴15に係合する。係合部21は、光トランシーバ1の幅方向D2に一対に設けられる。係合部21は、光トランシーバ1の幅方向D2の中央において下側に曲げられる部位とされている。係合部21は、傾斜面15dに対向する内面21aと、内面21aの反対側を向く外面21bと、係合穴15の底面15bに対向する端面21cとを有する。内面21aは、例えば、平坦状を成している。外面21bは、係合部21の上端から蓋部3の幅方向D2の中央側且つ底面15bに向かって湾曲している。
【0033】
前方から見た状態において、内面21aと、シールドフィンガ20の下面20aとの成す角度θ1は、例えば、鋭角とされている。これにより、蓋部3からシールドフィンガ20が外れようとしても傾斜面15dに内面21aが当接し、係合穴15において係合部21が引っ掛かるため、シールドフィンガ20の脱落が抑制される。
【0034】
シールドフィンガ20は、その後端に、長手方向D1及び幅方向D2に対して傾斜する一対の折り曲げ部26を有する。折り曲げ部26は、下方に折り曲げられる部位であり、蓋部3の溝部3gに入り込む。各折り曲げ部26が各溝部3gに入り込むことにより、シールドフィンガ20の長手方向D1及び幅方向D2への移動が規制される。
【0035】
図8は、シールドフィンガ20のフィンガ部23、ハウジング2及び蓋部3を示す図である。図8に示されるように、フィンガ部23は、胴体部22からハウジング2の外方に傾斜して延びる第1部分23aと、第1部分23aの先端(胴体部22との反対側の端部)からハウジング2に向かって湾曲する第2部分23bと、第2部分23bの先端からハウジング2の外方に湾曲する第3部分23cとを有する。
【0036】
フィンガ部23とハウジング2の間には弾性体24が設けられている。弾性体24は、例えば、高弾性材料によって構成されており、弾力チューブ、スポンジ又は不織布であってもよい。弾性体24は、第1部分23a及び第2部分23bとハウジング2の表面との間に介在する。弾性体24は、導電性材料によって構成されていてもよいし、絶縁性材料によって構成されていてもよい。弾性体24が導電性材料によって構成されている場合、シールド効果を高め、EMIの遮蔽性を高めることが可能となる。
【0037】
図9は、シールドフィンガ20、蓋部3及びハウジング2を示す断面図である。図9に示されるように、シールドフィンガ20は、ハウジング2と蓋部3の係合部、具体的には、第1凹部2c及び第2凹部2dに入り込んだ凸部3c及び突出部3bを覆う。これにより、シールドフィンガ20は、ハウジング2と蓋部3の係合部を取り囲む。
【0038】
シールドフィンガ20は、係合穴15から延びると共に蓋部3の上面3eに接触する第1部分20Aと、第1部分20Aから側壁2bに沿って曲がる第2部分20Bと、第2部分20Bの第1部分20Aとの反対側(下側)の端部から底壁2aに沿って曲がる第3部分20Cとを有する。
【0039】
前方からシールドフィンガ20を見たときにおける第1部分20Aの寸法Aの精度は、第2部分20Bの寸法Bの精度よりも高い。これにより、係合部21を係合穴15に安定してかしめることができ、シールドフィンガ20による安定したかしめ強度が得られる。また、第1部分20Aと第2部分20Bとの成す角度θ2は、第2部分20Bと第3部分20Cとの成す角度θ3よりも僅かに小さい。これにより、第2部分20B及び第3部分20Cにおいて、シールドフィンガ20に余裕を持たせることが可能となる。
【0040】
図10は、シールドフィンガ20の平面図である。図11は、フィンガ部23とハウジング2を示す図である。前述したように、シールドフィンガ20は、胴体部22及び複数のフィンガ部23を備えており、複数のフィンガ部23の間にはスリット25が形成されている。
【0041】
スリット25は、複数設けられている。複数のスリット25は、複数のフィンガ部23の配列方向(例えば幅方向D2)に沿って配列される。複数のスリット25は、フィンガ部23の端面23f(第3部分23cの先端)からフィンガ部23の曲げ開始位置Lに延びる第1スリット25aと、端面23fから曲げ開始位置Lに向かって延びると共に第1スリット25aよりも長く延びる第2スリット25bとを含む。
【0042】
各スリット25は、フィンガ部23の端面23fから直線状に延びる直線部25cと、スリット25の奥側の端部において直線部25cから拡がる拡張部25dとを有する。拡張部25dは、例えば、円形状に拡張している。各スリット25によってフィンガ部23が弾性変形可能になっていると共に、拡張部25dによってフィンガ部23の弾性力が適宜調整されている。
【0043】
次に、光トランシーバ1を組み立てる手順について説明する。図12は、ハウジング2、光レセプタクル5及びシート31を示す斜視図である。シート31は、例えば、導電性ラバーによって構成されており、TOSA8のスリーブ、及びROSA9のスリーブのそれぞれが貫通する2つの孔31aを有する。
【0044】
まず、ハウジング2の側壁2bの内面に形成された溝にシート31を挿入する。また、図13に示されるように、ハウジング2の外部において、予め回路基板6上に回路素子をソルダリングにより搭載し、光学調芯を済ませたTOSA8及びROSA9をFPC基板10,11により回路基板6に接続して中間アセンブリMを作製する。
【0045】
ここで、光学調芯とは、TOSA8及びROSA9それぞれに搭載されている半導体光デバイス(LD,PD等)と、TOSA8及びROSA9それぞれのスリーブに挿入された光ファイバとの間の光学調芯をいう。光学調芯を済ませた中間アセンブリMの回路基板6をハウジング2に収容し、TOSA8及びROSA9それぞれのスリーブをシート31の孔31aに後方から挿入し、中間アセンブリMをハウジング2の内部に搭載する。このとき、回路基板6は、側壁2bの内面に形成された段差2g上に載置する。
【0046】
次に、図14に示されるように、ホルダ32をハウジング2の内部に収容する。ホルダ32は、導電性材料によって構成されており、例えば、SUS304製、又はSUS301製である。ホルダ32は、TOSA8及びROSA9それぞれのスリーブをハウジング2に対して固定する。ホルダ32は、TOSA8及びROSA9それぞれのフランジの後部に位置し、当該フランジを光レセプタクル5の後壁に押し付けることにより、TOSA8及びROSA9をハウジング2の内部において固定する。
【0047】
続いて、図15に示されるように、内蓋4をハウジング2に搭載する。このとき、例えば、回路基板6の回路素子上に放熱グリースを塗布する。また、内蓋4の突起4bをハウジング2の溝2fの直上に位置させ、突起4bの円弧部4cを後方に向けた状態で突起4bを溝2fに挿入する。そして、突起4bを溝2fの奥端まで挿入し、突起4bの円弧部4cが後方から下方に移動するように、突起4bを中心として内蓋4を後方に回転する。
【0048】
その後、図2に示されるように、蓋部3をハウジング2に固定する。具体的には、蓋部3の後端の両側に設けられた凸部3mを、ハウジング2の側壁2bの後端に位置する凹部2eに挿入し、蓋部3をハウジング2の側壁2bに支持する。そして、凸部3mを中心として蓋部3を前方に回転して蓋部3を内蓋4の上に配置する。
【0049】
このとき、蓋部3の前端に位置する凸部3c及び突出部3bがハウジング2の第1凹部2c及び第2凹部2dに入り込む。そして、凸部3cが第2凹部2dに係合することにより、ハウジング2に蓋部3が係合し、ネジNを蓋部3の挿通孔3d及び内蓋4のネジ孔4aに挿入してネジ孔4aにネジ止めする。これにより、蓋部3が内蓋4に密に接触した状態で蓋部3を内蓋4に固定し、光トランシーバ1の組み立てが完了する。
【0050】
次に、本実施形態に係る光トランシーバ1の作用効果について説明する。光トランシーバ1では、ハウジング2と内部空間Sを形成する蓋部3は、シールドフィンガ20が入り込んでシールドフィンガ20が係合する係合穴15を有する。係合穴15は、開口15c側から底面15b側に向かうに従って広がる傾斜面15dを備える。よって、シールドフィンガ20が係合穴15に係合しているときに、シールドフィンガ20が傾斜面15dに当接することにより、係合穴15からシールドフィンガ20を抜けにくくすることができる。従って、蓋部3からシールドフィンガ20が抜けにくくなることにより、ハウジング2から蓋部3を外れにくくすることができるので、蓋部3によるハウジング2の封止を確実に行うことができる。
【0051】
また、シールドフィンガ20は、係合穴15に入り込む係合部21を有し、係合部21は、傾斜面15dに沿った状態で係合穴15に係合する。シールドフィンガ20の係合部21が傾斜面15dに沿った状態で係合穴15に係合する。よって、係合穴15の傾斜面15dに係合部21を沿わせて係合部21を蓋部3に強固に係合することができるので、シールドフィンガ20により一層強固に蓋部3を固定することができる。従って、蓋部3を強固に固定することにより、蓋部3による封止をより確実に行うことができる。
【0052】
また、シールドフィンガ20は、ハウジング2を取り囲む胴体部22と、胴体部22からハウジング2に沿って延びる複数のフィンガ部23と、を有し、複数のフィンガ部23の間には、スリット25が形成されている。複数のスリット25は、複数のフィンガ部23の配列方向に配列されており、複数のスリット25は、フィンガ部23の端面23fからフィンガ部23の曲げ開始位置Lに延びる第1スリット25aと、端面23fから曲げ開始位置Lに向かって延びると共に第1スリット25aよりも長く延びる第2スリット25bとを含む。第1スリット25aが曲げ開始位置Lに延びることにより、第1スリット25aに隣接するフィンガ部23の先端側の部分に確実に弾性力を発揮させることができる。よって、フィンガ部23によるバネ力を確実に発揮することができる。
【0053】
更に、第2スリット25bが曲げ開始位置Lよりも奥側まで長く延びることにより、第2スリット25bに隣接するフィンガ部23によって応力を緩和することができるので、フィンガ部23のへたりを抑制することができる。このように、互いに長さが異なる第1スリット25aと第2スリット25bを備えることにより、バネ力を発揮する効果と、へたりを抑制する効果の両方を得ることができる。
【0054】
また、光トランシーバ1は、フィンガ部23とハウジング2との間に挟み込まれた弾性体24を備える。フィンガ部23とハウジング2との間に弾性体24が介在することにより、フィンガ部23をホストシステムのケージ側に押し上げることができる。従って、フィンガ部23とケージとの接触を確保することができる。
【0055】
また、シールドフィンガ20は、係合穴15から延びると共に蓋部3の上面3eに接触する第1部分20Aと、第1部分20Aから側壁2bに沿って曲がる第2部分20Bと、第2部分20Bの第1部分20Aとの反対側の端部から底壁2aに沿って曲がる第3部分20Cと、を有し、第2部分20Bと第3部分20Cとの成す角の角度θ3は、第1部分20Aと第2部分20Bとの成す角の角度θ2よりも大きい。すなわち、係合穴15から延びる第1部分20Aと第2部分20Bの角度θ2は、第2部分20Bと第3部分20Cとの角度θ3よりも小さい。
【0056】
よって、第1部分20Aと第2部分20Bの角度θ2が相対的に小さいことによって、係合穴15へのシールドフィンガ20の係合をより強固に行うことができる。また、第2部分20Bと第3部分20Cとの角度θ3が相対的に大きいことによって、係合穴15の反対側(底壁2a側)ではシールドフィンガ20による締め付け力を緩和することができる。
【0057】
また、内蓋4は、その前側に設けられる突起4bを中心として後方に回転し、蓋部3は、その後側に設けられる凸部3mを中心として前方に回転する。このように、蓋部3を前方に回転させて内蓋4を後方に回転させることにより、長手方向D1の複数の箇所が固定されることになる。よって、蓋部3と内蓋4を強固に固定することができ、固定後の蓋部3及び内蓋4のがたつきを確実に抑えることができる。また、蓋部3は、光トランシーバ1の前側においてハウジング2と係合するため、光トランシーバ1の前側を確実に固定することができる。従って、光トランシーバ1の前側において蓋部3を開きにくくすることができる。
【0058】
また、ハウジング2に対する蓋部3の係合部(突出部3b及び凸部3c)は、幅方向D2の内側に突出するフック形状とされている。蓋部3の係合部がフック形状とされていることにより、蓋部3を成形する金型を簡易にすることができるため製造性を向上させることができる。更に、金型の微調整及びメンテナンスを容易に行うことができる。
【0059】
また、フィンガ部23は、ハウジング2の外方に傾斜する第1部分23aと、ハウジング2に向かって湾曲する第2部分23bと、第2部分23bの先端からハウジング2の外方に湾曲する第3部分23cとを有する。フィンガ部23が第1部分23a及び第2部分23bを備えることにより、ケージとフィンガ部23との接触点、及びハウジング2とフィンガ部23との接触点を近づけることができので、シールド性を向上させることができる。
【0060】
以上、本発明に係る光トランシーバの好適な実施形態について説明したが、本発明は、前述した実施形態に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形及び変更が可能であることは、当業者によって容易に認識される。
【0061】
例えば、前述の実施形態では、一対の突出部3bと凸部3cとを備え、凸部3c及び突出部3bがハウジング2の第1凹部2c及び第2凹部2dに入り込み、凸部3cが第2凹部2dに係合することにより、ハウジング2に蓋部3が係合する例について説明した。しかしながら、ハウジング2に係合する蓋部3の構造は適宜変更可能である。例えば、図16に示されるように、凸部3cを有する蓋部3に代えて、孔部43cを有する蓋部43を備えていてもよい。この場合、孔部43cを有する突出部43bがハウジング2の凹部2cに入り込み、凹部2cに形成された凸部が孔部43cに係合することにより、ハウジング2に蓋部43が係合する。
【0062】
前述の実施形態では、円弧状である突起4bを備えた内蓋4、及び半円状の溝2fを備えたハウジング2について説明したが、内蓋の突起、及びハウジングの溝の形状は前述の例に限定されない。例えば、内蓋の突起の形状は、円形状、長円形状又は多角形状であってもよく、溝に係合可能な形状であれば適宜変更可能である。更に、突起4bを有する内蓋4、及び溝2fを有するハウジング2に代えて、溝を有する内蓋、及び突起を有するハウジングを備えていてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1…光トランシーバ、2…ハウジング、2a…底壁、2b…側壁、2c…第1凹部、2d…第2凹部、2e…凹部、2f…溝、2g…段差、3,43…蓋部、3a…裏面、3b,43b…突出部、3c…凸部、3d…挿通孔、3e…上面、3f…凹部、3g…溝部、3h…凸部、3j…端面、3k…突出部、3m…凸部、4…内蓋、4a…ネジ孔、4b…突起、4c…円弧部、5…光レセプタクル、6…回路基板、6a…電気プラグ、7…ガスケット、10,11…FPC基板、15…係合穴、15a…内側面、15b…底面、15c…開口、15d…傾斜面、20…シールドフィンガ(固定具)、20A…第1部分、20B…第2部分、20C…第3部分、20a…下面、21…係合部,21a…内面、21b…外面、21c…端面、22…胴体部、23…フィンガ部、23a…第1部分、23b…第2部分、23c…第3部分、23f…端面、24…弾性体、25…スリット、25a…第1スリット、25b…第2スリット、25c…直線部、25d…拡張部、31…シート、31a…孔、32…ホルダ、43c…孔部、A,B…寸法、D1…長手方向、D2…幅方向、L…曲げ開始位置、M…中間アセンブリ、N…ネジ、N1…先端、S…内部空間、θ1,θ2,θ3…角度。
図1
図2
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図4
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図11
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図16