【解決手段】携帯用情報機器は、第1筐体と第2筐体との間に亘って延在し、隣接端部を跨ぐ位置に折曲領域を有するディスプレイと、ディスプレイの外周縁部と隣接する第1筐体及び第2筐体の筐体枠部とに跨るように設けられ、折曲領域と重なる部分に折曲部を有するベゼル部材18と、を備える。ベゼル部材の折曲部34は、ディスプレイの外周縁部と、第1筐体及び第2筐体の筐体枠部とに跨る幅方向で、第1側部が外周縁部の表面に固定され、第2側部が筐体枠部に対して相対移動可能に配置された第1部材38と、第1部材の表面に積層して固定され、第1部材よりも柔軟な材質で形成された第2部材39と、を有する。第1部材は、幅方向に貫通するスリット38a、38a1、38a2が第1筐体と第2筐体の並び方向に複数並んで設けられる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る携帯用情報機器について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
図1は、一実施形態に係る携帯用情報機器10を閉じて積層形態とした状態での斜視図である。
図2は、
図1に示す携帯用情報機器10を開いて平板形態とした状態での模式的な平面図である。
図3は、
図2に示す携帯用情報機器10の内部構造を模式的に示す平面図である。
【0019】
図1〜
図3に示すように、携帯用情報機器10は、第1筐体12Aと、第2筐体12Bと、ヒンジ14と、ディスプレイ16と、ベゼル部材18と、を備える。本実施形態の携帯用情報機器10は、本のように二つ折りに折り畳み可能なタブレット型PCである。携帯用情報機器10は、携帯電話、スマートフォン、電子手帳、携帯用ゲーム機等であってもよい。
【0020】
各筐体12A,12Bは、互いに隣接して配置されている。各筐体12A,12Bは、互いに対向する辺(隣接端部12Aa,12Ba)以外の3辺に筐体枠部19を起立形成した矩形の板状部材で形成されている。各筐体12A,12Bは、例えばステンレスやマグネシウム、アルミニウム等の金属板、又は、炭素繊維等の強化繊維を含む繊維強化樹脂板で構成される。
【0021】
以下、
図1〜
図3に示すように、携帯用情報機器10について、筐体12A,12Bの並び方向をX方向と呼び、X方向と直交する隣接端部12Aa,12Baに沿った方向をY方向と呼ぶ。
【0022】
筐体12A,12Bは、互いの隣接端部12Aa,12Baが一対のヒンジ14を介して連結されている。筐体12A,12B間は、ヒンジ14により、
図1に示す積層形態と
図2に示す平板形態との間で相対的に回動可能である。ヒンジ14は、例えば筐体12A,12Bの隣接端部12Aa,12BaのY方向両端部にそれぞれに配置され、ディスプレイ16の外周縁部16bの外側に位置している。本実施形態の携帯用情報機器10は、ヒンジ14による筐体12A,12B間の回動中心がディスプレイ16の表面16aと一致する。
【0023】
筐体12A,12Bは、平板形態時に互いの隣接端部12Aa,12Ba同士が当接する(
図2参照)。筐体12A,12Bは、積層形態時には互いの隣接端部12Aa,12Ba間が離間して大きな隙間を形成する(
図1参照)。この隙間は、筐体12A,12Bの内面12Ab,12Bb上で隣接端部12Aa,12Baを跨ぐ背表紙部材20によって覆われる(
図1及び
図3参照)。
【0024】
図2に示すように、ディスプレイ16は、筐体12A,12B間に亘って延在している。ディスプレイ16は、例えばタッチパネル式の液晶ディスプレイである。ディスプレイ16は、柔軟性の高いペーパー構造を持った有機EL等のフレキシブルディスプレイである。ディスプレイ16は、筐体12A,12Bのディスプレイ面(上部開口)を連続して覆い、筐体12A,12Bの開閉動作に伴って開閉する。
図3に示すように、ディスプレイ16は、第1プレート22A及び第2プレート22Bで支持され、プレート22A,22B間に亘っている。
【0025】
第1プレート22Aは、第1筐体12Aの上面開口を覆うように配置される。第2プレート22Bは、第2筐体12Bの上面開口を覆うように配置される。プレート22A,22Bは、互いに隣接して配置され、その表面でディスプレイ16を支持している。ディスプレイ16は、その裏面が両面テープ等の粘着剤を用いてプレート22A,22Bの表面に貼り付けられる。プレート22A,22Bは、薄く且つ硬質のプレート状部材であり、例えば炭素繊維を含む繊維強化樹脂板やステンレス等の金属板等で形成されている。
【0026】
プレート22A,22Bは、互いの隣接端面を除く3辺の外周端面に複数の取付片23が突設されている。各取付片23は、例えば筐体12A,12Bの内面12Ab,12Bbから起立したボス部(図示せず)にねじ止めされる。一部の取付片23は、ヒンジ14にねじ止めされることで、筐体12A,12Bに相対的に固定される。ディスプレイ16は、プレート22A,22Bを介して筐体12A,12Bに相対的に固定される。これによりプレート22A,22Bは、筐体12A,12Bと一体となって回動し、これに伴ってディスプレイ16が開閉する。プレート22A,22Bは、取付片23の一部又は全部に代えて、例えば裏面をボス部等に直接的にねじ止めして固定してもよい。
【0027】
図2に示すように、ディスプレイ16は、隣接端部12Aa,12Baを跨ぐ範囲に折曲領域Rを有する。折曲領域Rは、X方向に短く且つY方向に長い帯状の領域である。折曲領域Rは、筐体12A,12B間が平板形態から積層形態に変化する際に折り曲げられる部分である。ディスプレイ16は、折曲領域Rのみが柔軟な構造でもよい。折曲領域Rは、プレート22A,22Bに固定されず、プレート22A,22Bの表面に対して相対移動可能である(
図5参照)。
【0028】
図2に示すように、ベゼル部材18は、ディスプレイ16の外周縁部16bと、筐体12a,12Bの筐体枠部19との間に跨るように設けられている。本実施形態では、ベゼル部材18は、ディスプレイ16と、筐体12A,12Bの外壁である筐体枠部19とに跨るが、この筐体枠部19は、必ずしも筐体12A,12Bの外壁でなくてもよく、例えば外壁の内側面や外側面に別途配置された枠状部材等で構成されてもよい。ベゼル部材18は、ディスプレイ16の表面16aの表示領域(アクティブ領域)の外周にある非表示領域(非アクティブ領域)を覆っている。ベゼル部材18の詳細な構成は後述する。
【0029】
図3に示すように、各筐体12A,12B内には、例えば各種半導体チップ等を実装したマザーボード24、バッテリ装置25、アンテナ装置26の他、各種電子部品、冷却装置等が収容されている。これらの電子部品等は、筐体12A,12Bの内面12Ab,12Bbとプレート22A,22Bの裏面との間に形成された空間に収容されている。
【0030】
図4は、ヒンジ14及びその周辺部を拡大した斜視図である。
図4は、ヒンジ14の上部に配置されるベゼル部材18を透過させて図示し、また筐体12A,12B等の図示を省略している。
図5は、筐体12A,12B間を使用形態から平板形態に向かって所定角度(例えば50度程度)回動させた状態でのヒンジ14及びその周辺部を拡大して模式的な斜視図である。
【0031】
図2〜
図5に示すように、ヒンジ14は、ディスプレイ16の外周縁部16bの外側であって、ベゼル部材18の下方となる位置に配置されている。ヒンジ14は、ディスプレイ16の表面16aを予め設定された開閉軌跡に沿って常に移動させることができるように、筐体12A,12B間を回動させる。各ヒンジ14の外側部は、カバー部材28によって覆われている。ヒンジ14は、第1ブラケット30と、第2ブラケット31と、回動プレート部32と、ヒンジ軸33と、を有する。
【0032】
第1ブラケット30は、ヒンジ14の第1筐体12Aに対する取付ブラケットであり、ブロック状の金属で形成されている。第1ブラケット30は、例えば各所に形成された複数の締結孔30aを介して第1筐体12Aの内面12Abにねじ止めされる。第2ブラケット31は、ヒンジ14の第2筐体12Bに対する取付ブラケットであり、ブロック状の金属や樹脂で形成されている。第2ブラケット31は、例えば各所に形成された複数の締結孔31aを介して内面12Bbにねじ止めされる。一部の締結孔30a,31aは、プレート22A,22Bの取付片23のねじ止めにも兼用される(
図3参照)。
【0033】
回動プレート部32は、第1ベースプレート群32aと、第2ベースプレート群32bと、第1リンクプレート群32cと、第2リンクプレート群32dと、連結プレート群32eと、を有する。各プレート群32a〜32eは、それぞれ所定形状の金属プレートをY方向に積層した構造である。第1ベースプレート群32aは、第1筐体12Aと回動可能に連結される。第2ベースプレート群32bは、第2筐体12Aと回動可能に連結される。連結プレート群32eは、隣接端部12Aa,12Baを跨ぐように配置される。第1リンクプレート群32cは、第1ベースプレート群32aと連結プレート群32eとの間を相対的に回動可能に連結する。第2リンクプレート群32dは、第2ベースプレート群32bと連結プレート群32eとの間を相対的に回動可能に連結する。
図4中の参照符号32fは、各プレート群32a〜32eを連結するヒンジ軸である。
図5では、回動プレート部32の各プレート群32a〜32eをボックス状に簡素化して図示している。
【0034】
ヒンジ14は、中央の連結プレート群32eに対して、第1筐体12A側の第1ベースプレート群32a及び第1リンクプレート群32cが相対的に回動し、これと同期して第2筐体12B側の第2ベースプレート群32b及び第2リンクプレート群32dが相対的に回動する。この際、連結プレート群32eは、ディスプレイ16の折曲領域Rに対して接離する方向に移動する。これによりヒンジ14は、筐体12A,12B間を相対的に回動させることができる。ヒンジ14の構成は限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【0035】
カバー部材28は、平板形態以外の角度姿勢で互いに離間する筐体12A,12Bの隣接端部12Aa,12Ba間の隙間を覆い、この隙間からの異物の侵入を抑制する。また、カバー部材28は、隣接端部12Aa,12Ba間の隙間からヒンジ14やプレート22A,22B等の内部部品が外観上に露呈することを抑制する。カバー部材28は、省略してもよい。
【0036】
次に、ベゼル部材18の具体的な構成を説明する。
図6は、ベゼル部材18の模式的な底面図である。
【0037】
図2及び
図6に示すように、ベゼル部材18は、一対の折曲部34,34と、折曲部34の左右に連接した第1枠部35及び第2枠部36と、を有する。ベゼル部材18は、矩形枠状に構成され、ディスプレイ16と筐体枠部19との間の隙間を覆い隠す。ベゼル部材18は、ディスプレイ16の外周縁部16bの表面16aと、これと隣接する筐体12A,12Bの筐体枠部19の上端部とに跨がっている。本実施形態のベゼル部材18は、全体として薄い可撓性を持ったシート状部材で形成され、折曲部34と枠部35,36とで構造や厚みが異なる。
【0038】
ベゼル部材18は、幅方向で内周側の領域である第1側部18aが、ディスプレイ16の外周縁部16bの表面16aに両面テープで固定される。ベゼル部材18は、幅方向で外周側の領域である第2側部18bが、筐体枠部19の上端面の内側部分を一段低くした段差部19a(
図3及び
図5参照)の上面に両面テープで固定される。ベゼル部材18は、側部18a,18b間の領域である中央部18cは、その下方に部材(例えばヒンジ14のブラケット30,31)がある場合は、この部材に両面テープで固定される。ここで、ベゼル部材18の幅方向とは、互いに隣接する外周縁部16bと筐体枠部19とに跨る方向、つまりベゼル部材の周方向に直交する方向を言う。
【0039】
図7は、折曲部34及びその周辺部を拡大した底面図である。
図8Aは、
図7中のVIII−VIII線に沿う模式的な断面図である。
図8Bは、
図8Aに示す折曲部34を所定角度折り曲げた状態で一部拡大断面図である。
図9は、折曲部34及びその周辺部に両面テープA1〜A3を設けた状態での底面図である。
図10は、
図5中のX−X線に沿う模式的な断面図である。
【0040】
図2及び
図6に示すように、折曲部34は、ディスプレイ16の折曲領域Rと重なる位置に設けられ、筐体12A,12B間の回動動作に伴って折曲領域Rと共に折れ曲がる部分である(
図5及び
図8B参照)。折曲部34は、Y方向で一対設けられ、それぞれヒンジ14の上方に位置している。折曲部34は、X方向の長さ寸法が折曲領域Rの長さ寸法よりも多少長く形成されている。折曲部34と折曲領域RのX方向寸法は同一でもよい。折曲部34の第2側部18bには、カバー部材28を逃げるための切欠状の凹部37が設けられている。カバー部材28を設けない構成の場合、凹部37は省略される。
【0041】
図7〜
図8Bに示すように、折曲部34は、第1部材38と、第2部材39とを積層した積層構造である。
【0042】
第1部材38は、折曲部34の下層であり、ディスプレイ16や筐体枠部19に対する取付面を形成する。第1部材38は、PET(ポリエチレンテレフタレート)やPC(ポリカーボネート)等の樹脂材料で形成された薄いシート状部材である。第1部材38は、幅方向に貫通するスリット38aがX方向に複数並んで設けられている。スリット38aは、第1部材38のX方向全長で少なくとも折曲領域Rと重なる部分に設けられている。これにより第1部材38は、少なくとも折曲領域Rと重なる部分では、幅方向に延びた複数本の短冊状部材38bがX方向に並んでいる。各短冊状部材38bは、相互間にスリット38aのX方向幅分の隙間をあけて櫛歯状に並ぶことで、全体として波形状部38cを構成している。
【0043】
図8Aに示すように、スリット38aは、第1部材38を幅方向及び厚み方向に切除した構成である。一部又は全部のスリット38aは、厚み方向で第1部材38の一部が残留した凹部として形成されてもよい(
図8中のスリット38a1参照)。また、一部又は全部のスリット38aは、厚み方向が第1部材38よりも大きく、第2部材39の一部まで切除した構成でもよい(
図8中のスリット38a2参照)。スリット38aのX方向幅は、例えば0.2mmである。短冊状部材38bのX方向幅は、例えば1mmである。各スリット38a及び各短冊状部材38bのX方向幅は、均等でもよいし、異なってもよい。
【0044】
図9に示すように、第1部材38の裏面38dは、第1側部18aがディスプレイ16の外周縁部16bの表面16aに両面テープA1で固定される。裏面38dは、第2側部18b及び中央部18cの一部が、筐体12A,12Bの段差部19aと、ヒンジ14の上面(ブラケット30,31及び回動プレート部32の上面)に両面テープA2,A3で固定される。裏面38dは、第2側部18b及び中央部18cの両面テープA1〜A3が設けられない矩形状の折曲領域R1を跨ぐ部分が非接着領域NAとなる。非接着領域NAは、ヒンジ14の上部や筐体枠部19の段差部19aに固定されず、これらと相対移動可能な状態で配置される。
【0045】
第2部材39は、折曲部34の上層であり、ベゼル部材18の表面(外観面)を形成する。第2部材39は、その裏面39aが第1部材38の表面38eに熱溶着や接着剤で固定されている。第2部材39は、シリコーンゴム等のゴム材料で形成された薄いシート状部材である。第2部材39は、柔軟で伸縮可能な材質であればゴム製ではなく樹脂製でもよい。第1部材38の短冊状部材38bは、第2部材39の裏面39aに固定されているため、各短冊状部材38bが位置ずれしたり、裏面39aから脱落したりすることはない。
【0046】
本実施形態の第2部材39は、枠部35,36との境界部の近傍に、X方向で中心に向かって次第に厚さが小さくなるテーパ部39bが形成されている。後述するように、本実施形態の折曲部34は、枠部35,36よりも薄いため、テーパ部39bでベゼル部材18の表面での段差を吸収している。折曲部34及び枠部35,36が同一の厚みである場合、テーパ部39bは省略される。
【0047】
本実施形態の第2部材39は、隣接する枠部35、36との境界部に、折曲部34の厚み方向に延在する壁部39cを有する。つまり折曲部34は、第1部材38の表面38e及びX方向両側面を第2部材39の裏面39a及び壁部39cで包含した構造となっている。壁部39cは、後述するベゼル部材18の製造方法に起因して形成される部分であり、異なるせ製造方法では省略してもよい。
【0048】
図2及び
図6に示すように、第1枠部35は、第1筐体12Aの隣接端部12Aaを除く3辺の筐体枠部19に沿って延在する略U字状の部分である。第2枠部36は、第2筐体12Aの隣接端部12Baを除く3辺の筐体枠部19に沿って延在する略U字状の部分である。第1枠部35及び第2枠部36は、左右対称形状である以外は同一構造であるため、以下では枠部35,36をまとめて説明する。
【0049】
図6及び
図8Aに示すように、枠部35,36は、第3部材40と、第4部材41とを積層した積層構造である。
【0050】
第3部材40は、枠部35,36の下層である。第3部材40は、PET(ポリエチレンテレフタレート)やPC(ポリカーボネート)等の樹脂材料で形成された薄いシート状部材である。本実施形態の第3部材40は、折曲部34の第1部材38と同一の材質で形成されている。第3部材40は、第1部材38と異なる材質で形成されてもよい。第3部材40の裏面は、第1側部18aがディスプレイ16の外周縁部16bの表面16aに両面テープA1で固定される。第3部材40の裏面は、第2側部18b及び中央部18cが、筐体12A,12Bの段差部19aと、ヒンジ14の上面等に両面テープA2,A3で固定される。第3部材40の第2側部18b及び中央部18cは、筐体12A,12Bに対して相対的に固定されていればよい。
【0051】
第4部材41は、枠部35,36の上層であり、第2部材39と共にベゼル部材18の表面を形成する。第4部材41は、その裏面が第3部材40の表面に熱溶着や接着剤で固定されている。第4部材41は、シリコーンゴム等のゴム材料で形成された薄いシート状部材である。第4部材41は、折曲部34の第2部材39と一体化されている(
図8A参照)。本実施形態の第4部材41は、折曲部34の第2部材39と同一の材質で形成されている。第4部材41は、第2部材39と異なる材質で形成されてもよい。第4部材41は、ゴム製ではなく樹脂製でもよい。
【0052】
図8に示すように、ベゼル部材18は、折曲部34と枠部35,36とで厚みが異なる。具体的には、第1部材38の厚みは、例えば0.19mmであり、第2部材39の厚みは、例えば0.21mmである。よって、折曲部34の厚みt1は、例えば0.4mmである。一方、第3部材40の厚みは、例えば0.4mmであり、第4部材41の厚みは、例えば0.2mmである。よって、枠部35,36の厚みt2は、例えば0.6mmである。
【0053】
図6中の参照符号44は、ベゼル部材18を厚み方向に貫通した開口である。開口44は、携帯用情報機器10に搭載される図示しないカメラ等を外観に露出させるための孔部である。
【0054】
次に、このようなベゼル部材18の製造方法の一例を説明する。
図11A〜
図11Dは、ベゼル部材18の製造途中の状態を示す模式図である。
【0055】
ベゼル部材18を製造する際は、先ず、
図11Aに示すように、枠部素材シート46を形成する。枠部素材シート46は、上記した枠部35,36と同一の積層構造を有する。つまり枠部素材シート46は、第3部材40と第4部材41とを積層したシートであり、その外形はベゼル部材18の外形よりも大きい。枠部素材シート46は、例えば厚み0.4mmのPETシート(第3部材40)と、厚み0.2mmのシリコーンゴムシート(第4部材41)と、を積層した構造である。なお、枠部素材シート46には、折曲部34を設ける部分に切欠部46aを形成しておく。
【0056】
次に、
図11Bに示すように、枠部素材シート46の切欠部46aに折曲部素材シート48を取り付ける。折曲部素材シート48は、上記した折曲部34と同一の積層構造を有する。つまり折曲部素材シート48は、
図11Cに示すように、第1部材38と第2部材39とを積層したシートである。なお、折曲部素材シート48は、
図8Aに示す折曲部34にスリット38a(短冊状部材38b)を形成する前の状態である。折曲部素材シート48は、例えば厚み0.19mmのPETシート(第1部材38)と、厚み0.21mmのシリコーンゴムシート(第2部材39)と、を積層した構造である。
【0057】
図11Cに示すように、折曲部素材シート48は、第1部材38及び壁部39cを枠部素材シート46の切欠部46aに挿入する。この際、折曲部素材シート48は、第2部材39の外側に設けたフランジ部39dを枠部素材シート46の第4部材41をオフセットさせた段差部46bに配置する。そして、折曲部素材シート48及び枠部素材シート46を加熱しつつ厚み方向に圧縮する。これにより折曲部素材シート48の第2部材39が、枠部素材シート46の第3部材40及び第4部材41と熱溶着される。その結果、折曲部素材シート48と枠部素材シート46とが一体化されたベゼル素材シート50が形成される(
図11D参照)。
【0058】
次いで、
図11Dに示すように、ベゼル素材シート50をベゼル部材18と同一の枠形状に切り抜く。また、この切り抜き工程と前後して、所定のレーザー加工機のレーザーLを折曲部素材シート48の第1部材38に照射し(
図11C参照)、第1部材38にスリット38a(短冊状部材38b)を形成する。スリット38aは、レーザー加工機ではなく、切削機械等で形成してもよい。
【0059】
以上でベゼル部材18の製造が完了する。このように枠部素材シート46と折曲部素材シート48とは、熱溶着で接合すると、ベゼル部材18の表面にシート46,48の境界線が目立たず、高い外観品質が得られる。なお、枠部素材シート46と折曲部素材シート48とは、例えば接着剤等で接合してもよい。
【0060】
折曲部素材シート48は、
図11Cに示すように予めテーパ部39bを設けた構成でなくてもよい。この場合は、第1部材38と第2部材39を積層した平板にフランジ39dのみを設けておき、これを熱溶着工程で潰す際にテーパ部39bを形成するとよい。勿論、折曲部34と枠部35,36を同一厚さで形成する場合、テーパ部39bは不要である。また、折曲部素材シート48は、予めスリット38a(短冊状部材38b)を形成しておいたものを枠部素材シート46に接合してもよい。
【0061】
以上のように、本実施形態の携帯用情報機器10は、ディスプレイ16の外周縁部16bと、筐体12A,12Bの筐体枠部19とに跨るように設けられ、折曲領域Rと重なる部分に折曲部34を有するベゼル部材を備える。この折曲部34は、幅方向で第1側部が外周縁部16bの表面16aに固定され、第2側部が筐体枠部19に対して相対移動可能に配置された第1部材38と、第1部材38の表面38eに積層して固定され、第1部材38よりも柔軟な材質で形成された第2部材39と、を有する。そして、この第1部材38は、幅方向に貫通するスリット38aがX方向に複数並んで設けられることで、幅方向に延びた短冊状部材38bがX方向に複数本並んだ波形状部38cを有する。
【0062】
従って、当該携帯用情報機器10は、例えば筐体12A,12B間を平板形態から多少折り曲げた角度姿勢(例えば130度程度。
図5及び
図10参照)で使用する際、ディスプレイ16の折曲領域Rと共に折れ曲がったベゼル部材18の折曲部34は、第1側部18aのみがディスプレイ16の外周縁部16bで支持された片持ち状態となる(
図5及び
図10参照)。このため、仮に、折曲部34がシリコーンゴム等で形成された柔軟な第2部材39のみで形成されていると、折曲部34がえくぼ状の凹みを生じ、携帯用情報機器10の外観品質を低下させる。この点、当該ベゼル部材18の折曲部34は、第2部材39よりも硬質の第1部材38が、幅方向に延びた短冊状部材38bを複数本並べた波形状部38cを有する。このため、硬質の短冊状部材38bは、ディスプレイ16の外周縁部16bから外周側に突出した柔軟な第2部材39を支持する梁材として機能する。
【0063】
その結果、ベゼル部材18は、折曲部34がえくぼ状の凹みを生じることが抑制され、外観品質の低下を抑制することができる。この際、折曲部34では、短冊状部材38bのX方向幅が、スリット38aのX方向幅よりも大きいため、短冊状部材38bは梁材として高い剛性を担保できる。
【0064】
ところで、ベゼル部材18は、ディスプレイ16の表面16a上に設けられているため、筐体12A,12Bの内面12Ab,12Bbに対してヒンジ14の回動中心よりも遠位側(上方)に配置されている。つまりベゼル部材18は、筐体12A,12B間を平板形態から積層形態に変化させる際、ヒンジ14の軸心の内側に位置する。このため、筐体12A,12B間を閉じた際、ベゼル部材18は、折曲部34が内輪差現象による圧縮力P(
図8B参照)を受ける。その結果、ベゼル部材18は、折曲部34がしわや弛みを生じる懸念がある。この点、当該ベゼル部材18は、上記のように梁材として機能する第1部材38が短冊状部材38bを並べた構造であり、その上に柔軟な第2部材39が設けられている。このため、
図8Bに示すように、折曲部34を折り曲げると、圧縮力Pによって隣接する短冊状部材38b,38b間のスリット38aに対応する部分で第2部材39が潰されて収縮する。その結果、ベゼル部材18は、折曲部34が上記のような凹みだけでなく、しわや浮き上がり等を生じることも抑制できる。つまり折曲部34が、積層方向で構造的な強弱を有することで、弱である第2部材39が強である第1部材38よりも選択的に圧縮され、回動時の盛り上がりが抑制される。また、折曲部34は、圧縮力Pがかかった際、この圧縮力Pが当該折曲部34とディスプレイ16や筐体枠部19との接着部(例えば両面テープ)に対する剥がれ向の力として逃げる際、短冊状部材38b,38b間のスリット38aに対応する部分で第2部材39が潰されることで、前記接着部が剥がれを生じることも抑制できる。
【0065】
当該ベゼル部材18は、折曲動作する折曲部34よりも、折曲動作をしない枠部35,36の厚みが大きい。つまり折曲部34は、より薄いシートで形成されることで、円滑な折曲動作が可能となり、しわや浮き上がりの発生を一層抑制できる。一方、枠部35,36は、折曲動作をしない部位であるため、ある程度厚みがあっても折曲動作に対する影響はない。そこで、これら枠部35,36は、十分な厚みを有することで、ヒンジ14やプレート22A,22Bを筐体12A,12Bに締結するねじの頭部の輪郭が枠部35,36の表面に浮き出ることを抑制できる。しかも枠部35,36は、十分な厚みを有するため、
図11Aに示す枠部素材シート46の成形時に生じる反りや撓みの発生が可及的に抑制される。このため、枠部35,36は、両面テープA1〜A3でディスプレイ16や筐体枠部19に固定した際、平面度が高く、両面テープA1〜A3が剥がれ難いという利点もある。このように折曲部34よりも枠部35,36の厚みを大きくする構成は、折曲部34がスリット38a(短冊状部材38b)を持たない構成のベゼル部材に対しても有効に利用できる。なお、折曲部34は、少なくともその最小厚み部分が枠部35,36よりも薄ければよく、
図8Aに示すようにテーパ部39bを備える構成では、テーパ部39b以外の部分の厚みを枠部35,36よりも薄くするとよい。
【0066】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0067】
上記では、短冊状部材38bによる波形状部38cは、折曲部34のみに設けた構成を例示した。しかしながら、波形状部38cは、ベゼル部材18の全周に亘って設けられていてもよい。
【0068】
上記では、本のように二つ折りに折り畳み可能な携帯用情報機器10を例示したが、本発明は、同形の筐体同士を二つ折りに折り畳む構成以外、例えば大形の筐体の左右縁部にそれぞれ小形の筐体を折り畳み可能に連結した観音開きの構成、1つの筐体の左右縁部にそれぞれ折り畳み方向の異なる筐体を連結したS型の折り畳み構成、大形の筐体の左右一方の縁部に小形の筐体を折り畳み可能に連結したJ型の折り畳み構成等、各種構成に適用可能であり、筐体の連結数は4以上としてもよい。また、筐体の連結数を3以上とした場合、ディスプレイは少なくとも2つの筐体間で折り畳み可能に設けられ、ベゼル部材はこのディスプレイの外周縁部を覆うように設けられればよく、他の筐体には別のディスプレイを搭載した構成としてもよい。