【解決手段】制御装置1は、制御対象量に影響を与える環境変数の値を検出する環境変数検出センサ152から出力される環境変数データと、前記制御対象量を求めるための関係式と、目標値とから、前記制御対象量が前記目標値になるように、前記複数の操作量を求める操作量演算部14を備える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、特許文献1に開示されている自動種子消毒装置の制御部は、温度センサの測定結果をもとに温風機の温風の温度を所定の設定温度未満に制御する。すなわち、前記制御部は、制御対象である温風機の一つの操作量である温風の温度を制御する。
【0007】
このように制御対象を一つの操作量で制御する場合は、制御対象量が目標値になるような操作量を、比較的容易に求めることができる。
【0008】
しかしながら、制御対象を複数の操作量で制御する場合、各操作量の値に応じて前記制御対象量が変化するため、前記制御対象量が目標値になるように前記複数の操作量を求めることは難しい。
【0009】
また、環境変数によって制御対象量が変化する場合、各操作量を決めても、前記環境変数の変動によって、前記制御対象量が目標値から外れる可能性がある。そのため、複数の操作量を、環境変数が変動する毎に、求める必要がある。
【0010】
本発明の目的は、環境変数によって変化する制御対象量が目標値になるように、制御対象に対する複数の操作量を容易に設定可能な制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態に係る制御装置は、制御対象量が目標値になるように、制御対象に対する複数の操作量を制御する制御装置である。この制御装置は、前記制御対象量に影響を与える環境変数の値を検出する環境変数検出センサから出力される環境変数データと、前記制御対象量を求めるための関係式と、前記目標値とから、前記制御対象量が前記目標
値になるように、前記複数の操作量を求める操作量演算部を備える(第1の構成)。
【0012】
制御対象における制御対象量が、複数の操作量に応じて変化するとともに環境変数によって変化する場合でも、環境変数データと、関係式と、目標値とから、前記制御対象量が目標値になるような前記複数の操作量を求めることが可能になる。
【0013】
一般的に、前記制御対象量が、前記環境変数及び前記複数の操作量を含む複数の変数によって変化する場合、前記制御対象量が前記目標値になるような前記複数の操作量の組み合わせは無数にある。そのため、前記複数の操作量の最適値を一義的に求めることは難しい。
【0014】
これに対し、上述の構成のように、前記制御対象量が目標値となるような前記複数の操作量を求める際に、前記環境変数データ、前記関係式及び前記目標値を用いることにより、前記制御対象量が前記目標値になるような前記複数の操作量の最適値を容易に求めることができる。
【0015】
したがって、前記制御対象量が前記目標値になるように、前記制御対象に対する前記複数の操作量を容易に設定することができる。
【0016】
前記第1の構成において、前記操作量演算部は、前記複数の操作量のうち少なくとも一つの操作量の重みづけを行う評価関数を用いて、前記制御対象量が前記目標値になるように、前記複数の操作量を収束計算により求める(第2の構成)。
【0017】
これにより、評価関数を用いて、複数の操作量のうち少なくとも一つの操作量の重みづけを行いつつ、前記複数の操作量を求めることができる。よって、上述の構成により、制御対象量が目標値になる前記複数の操作量の最適値を容易に求めることができる。
【0018】
前記第1または第2の構成において、前記制御対象における前記制御対象量の出力値を、前記制御対象の制御にフィードバックするフィードバック部をさらに備える(第3の構成)。
【0019】
このように制御対象の制御においてフィードバック制御を行うことにより、制御対象量を精度良く目標値に近づけることができる。
【0020】
前記第3の構成において、前記フィードバック部は、前記出力値に基づいて演算された値を、前記複数の操作量のうち前記制御対象量に最も影響する操作量に、フィードバックする(第4の構成)。
【0021】
これにより、複数の操作量のうち制御対象量に対して最も影響を与える操作量を、制御対象における前記制御対象量の出力値に基づいて補正できるため、前記制御対象量をより精度良く目標値に近づけることができる。
【0022】
本発明の実施形態に係る振動搬送装置は、搬送物を搬送するための振動を発生する振動発生部と、前記搬送物を乾燥させる乾燥部と、第1の構成から第4の構成のうちいずれか一つの構成を有する制御装置と、を備える。前記操作量は、前記振動発生部及び前記乾燥部に関する操作量の少なくとも一つを含む。前記制御対象量は、前記搬送物の水分量である(第5の構成)。
【0023】
これにより、搬送物を、乾燥させながら振動によって搬送する振動搬送装置において、制御対象量である搬送物の水分量が目標値になるように、振動発生部及び乾燥部に関する
操作量の少なくとも一つを含む操作量を、容易に設定することができる。
【0024】
特に、前記振動搬送装置は、搬送物の搬送速度、すなわち振動発生部で生じる振動周波数を一定にすることが要求されるため、前記振動周波数を重みづけしつつ複数の操作量を設定することにより、振動搬送装置に適した駆動制御を行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一実施形態に係る制御装置によれば、制御対象量と、該制御対象量に影響を与える環境変数データと、前記制御対象量を求めるための関係式と、前記目標値とから、前記制御対象量が目標値になるように、前記複数の操作量を求める操作量演算部を備える。これにより、前記複数の操作量を容易に設定することができる。したがって、環境変数によって変化する制御対象量が目標値になるように、制御対象に対する複数の操作量を容易に設定可能な制御装置が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中の同一または相当部分については同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
【0028】
[実施形態1]
図1は、本発明の実施形態1に係る制御装置1の概略構成を機能ブロックで示す図である。この制御装置1は、例えば、制御対象である振動搬送装置100の駆動を制御する装置である。具体的には、制御装置1は、振動搬送装置100の操作量を決定し、決定した操作量を用いて振動搬送装置100の駆動を制御する。
【0029】
本実施形態では、前記操作量は、振動搬送装置100において、振動発生部105のモータ143を駆動させるインバータの駆動周波数、熱風給気部106の加熱装置の加熱温度、熱風給気部106の送風装置の回転数である。なお、前記操作量は、振動搬送装置100の駆動を制御する他の操作量であってもよい。
【0030】
(振動搬送装置)
まず、前記制御対象としての振動搬送装置100について、以下で簡単に説明する。
図2は、振動搬送装置100の概略構成を示す図である。
【0031】
振動搬送装置100は、振動によって搬送物を搬送しつつ、前記搬送物を乾燥させる。具体的には、振動搬送装置100は、ホッパ101と、供給側フィーダ102と、装置本体103と、排出側フィーダ104と、振動発生部105と、熱風給気部106と、冷風給気部107と、を備える。前記搬送物は、例えば、食品、肥料、飼料、ゴムなどの材料等である。
【0032】
ホッパ101は、内部に搬送物を貯留する。供給側フィーダ102は、ホッパ101内に貯留された搬送物を、装置本体103の搬送方向上流側に供給する。ホッパ101及び
供給側フィーダ102は、装置本体103よりも上方に位置する。よって、搬送物は、供給側フィーダ102によって、装置本体103に対して上方から供給される。
【0033】
排出側フィーダ104は、装置本体103の搬送方向下流側に搬送される搬送物を、振動搬送装置100の外に搬送する。排出側フィーダ104は、装置本体103の下方に位置する。よって、装置本体103によって搬送された搬送物は、排出側フィーダ104に対して上方から排出される。
【0034】
ホッパ101、供給側フィーダ102及び排出側フィーダ104は、特に図示しないが、例えば、振動によって搬送物を搬送する。この場合、ホッパ101、供給側フィーダ102及び排出側フィーダ104は、それぞれ、振動発生部を有する。
【0035】
装置本体103は、トラフ111と、整流板121と、フードカバー131とを有する。
【0036】
トラフ111は、搬送方向に延びる一対の側壁112,113と、該一対の側壁を搬送方向の両端部でそれぞれ接続する一対の端壁114,115と、底壁116とを有する。すなわち、トラフ111は、搬送方向に延びる樋状である。トラフ111は、内部に給気室111aを有する。給気室111aは、一対の側壁112,113と一対の端壁114,115と底壁116とによって形成されている。
【0037】
トラフ111は、一方の側壁112に、搬送方向に並ぶ複数の給気口111b,111cを有する。給気口111bには、熱風給気部106(乾燥部)から熱風気体が供給される。給気口111cには、冷風給気部107から冷風気体が供給される。給気口111cは、トラフ111の側壁112における搬送方向下流側に位置する。また、トラフ111は、底壁116の搬送方向下流側に、搬送物を排出するための排出口111dを有する。トラフ111において、給気室111aと給気口111b,111cと排出口111dとは、連通している。
【0038】
整流板121は、多数の開口を有する平板状のパンチングメタルである。整流板121は、トラフ111の上側を覆う。整流板121におけるパンチングメタルの開口は、気体が下方から上方に通過可能である。整流板121は、搬送物の搬送路を構成する。
【0039】
フードカバー131は、整流板121の上側を覆う。フードカバー131は、図示しない部材を介して、トラフ111と接続されている。フードカバー131は、上面の搬送方向上流側に、供給側フィーダ102から搬送物が供給される供給口131aを有する。また、フードカバー131は、上面に、複数の排気口131bを有する。
【0040】
熱風給気部106は、ヒータ等の加熱装置によって温度が調節された熱風気体を、ファン等の送風装置によって吹き出す装置である。熱風給気部106から吹き出す熱風の温度は、搬送物の種類や量、外気温などに応じて、調節される。冷風給気部107は、ファン等の送風装置によって気体を吹き出す装置である。
【0041】
以上の構成により、熱風給気部106から給気口111bを介してトラフ111の給気室111a内に供給された熱風気体は、整流板121を下方から上方に通過して、整流板121上を搬送される搬送物を乾燥させる。一方、冷風給気部107から給気口111cを介してトラフ111の給気室111a内に供給された冷風気体は、整流板121を下方から上方に通過して、整流板121上を搬送される搬送物を冷却する。
【0042】
熱風気体及び冷風気体は、整流板121を通過した後、排気口131bからフードカバ
ー131の外に流れて、集塵機108に集まる。この集塵機108では、熱風気体及び冷風気体に含まれる粉塵が取り除かれる。
【0043】
振動発生部105は、複数のバネ141と、カウンタウェイト142と、モータ143と、クランク機構144とを備える。
【0044】
カウンタウェイト142は、搬送方向に延びる直方体状の部材である。カウンタウェイト142は、バネ141及び図示しない連結部材によって、トラフ111に懸架されている。
【0045】
クランク機構144は、カウンタウェイト142上に位置するモータ143の回転に応じて回転することにより、トラフ111を搬送方向の斜め上方に往復運動させる。クランク機構144の構成は従来の構成と同様なので、クランク機構144に関する詳しい説明は省略する。
【0046】
以上の構成により、振動発生部105は、トラフ111に振動を与えることができる。これにより、整流板121にも振動が加わるため、整流板121上で搬送物を搬送方向に搬送することができる。
【0047】
なお、
図2には特に図示しないが、振動搬送装置100には、搬送方向下流側に、乾燥後の搬送物の水分量を検出するための水分量検出センサ151(
図1参照)が設けられている。水分量検出センサ151は、例えば赤外線を利用した非接触式の水分計である。なお、水分量検出センサ151は、赤外線を利用した非接触式の水分計に限らず、乾燥後の搬送物の水分量を検出可能な構成を有するセンサであれば、どのようなセンサであってもよい。ここで、水分量検出センサ151が出力検出センサに対応し、水分量検出センサ151から出力される水分量のデータが出力データに対応する。
【0048】
また、特に図示しないが、振動搬送装置100には、熱風給気部106から吹き出す熱風気体の温度を検出する温度センサ、前記熱風気体の風速を検出する風速センサ、及び、振動発生部105によって発生する振動を検出する変位センサも設けられている。
【0049】
また、振動搬送装置100には、環境温度、環境湿度、前記搬送物の処理量、前記搬送物の種類、振動搬送装置100に供給する前の前記搬送物の温度及び水分量など、振動搬送装置100が前記搬送物を処理する際の環境変数に関するデータ(以下、環境変数データという)を検出する環境変数検出センサ152(
図1参照)も設けられている。環境変数検出センサ152は、前記環境変数データの一つを検出可能なセンサであれば、どのようなセンサであってもよい。
【0050】
(制御装置)
次に、上述の構成を有する振動搬送装置100の駆動を制御する制御装置1の構成を、
図1に基づいて説明する。
【0051】
図1に示すように、制御装置1は、操作量演算部14と、フィードバック部20とを有する。操作量演算部14は、関係式と評価関数とを用いて、振動搬送装置100の操作量を求める。フィードバック部20は、振動搬送装置100の制御対象量の出力値を所定の演算処理した後、前記制御対象量の目標値にフィードバックする。
【0052】
なお、前記制御対象量は、例えば、振動搬送装置100によって乾燥された後の搬送物の水分量である。前記環境変数は、振動搬送装置100によって乾燥される搬送物の水分量に影響を与える環境温度、環境湿度、前記搬送物の処理量、前記搬送物の種類、振動搬
送装置100に供給する前の前記搬送物の温度及び水分量等である。前記操作量は、振動搬送装置100における振動発生部105のモータを駆動させるインバータの駆動周波数、熱風給気部106の加熱装置の加熱温度、及び、熱風給気部106の送風装置の回転数等である。前記制御対象量、前記環境変数及び前記操作量は、それぞれ、上述以外の物理量であってもよい。
【0053】
操作量演算部14は、サンプル保持部31を介して、環境変数検出センサ152の値を受け取る。サンプル保持部31は、環境変数検出センサ152の出力値を所定の時間間隔でサンプリングして、その値を保持する。前記サンプリングの間隔は、例えば1秒である。
【0054】
操作量演算部14は、前記関係式の中の操作量を、評価関数を用いて収束計算するための収束演算部15を有する。前記関係式は、振動搬送装置100の操作量及び環境変数と、制御対象量との関係を表す。前記関係式は、例えば、線形回帰、ガウス過程回帰、SVM(Support Vector Machine)等を用いた関係式である。本実施形態では、前記関係式として線形回帰を用いた場合について説明するが、前記関係式は、線形回帰以外の他の手法を用いた関係式であってもよい。
【0055】
線形回帰を用いた関係式は、以下の(1)式で表される。
【0056】
w=a×F
fan+b×F
vib+c×T
air+E (1)
【0057】
ここで、wは、振動搬送装置100における乾燥後の搬送物の水分量(制御対象量)である。F
fan、F
vib、T
airは、それぞれ、操作量である。すなわち、F
fanは、熱風給気部106の送風装置の回転数であり、F
vibは、振動発生部105のモータを駆動させる
インバータの駆動周波数であり、T
airは、熱風給気部106の加熱装置の加熱温度であ
る。a,b,cが求める係数である。また、Eは、環境変数の項である。複数の環境変数が存在する場合、前記関係式は、各環境変数の項の積和の形で表される。
【0058】
なお、本実施形態では、前記環境変数として、搬送物の処理量、及び、振動搬送装置100に供給する前の前記搬送物の水分量に関するデータが含まれることが好ましい。これにより、前記搬送物の処理量、及び、振動搬送装置100に供給する前の前記搬送物の水分量が変化した場合でも、制御対象量である乾燥後の搬送物の水分量が目標水分量から大きく外れることを防止できる。
【0059】
(1)式の係数a、b、c、及び環境変数の項Eに含まれる係数は、あらかじめ求められた値に設定される。
【0060】
これらの各係数を求める方法として、例えば公知の機械学習(回帰分析)が用いられる。前記機械学習には多数のデータを必要とする。そのため、前記データとして、振動搬送装置100の操作量について条件を変えた実験を数多く実施することにより取得されたデータが用いられる。
【0061】
機械学習を用いて得られた(1)式の係数a、b、cは、例えば、a=−0.162、b=4.19、c=−0.0417である。これらの値を(1)式に代入することにより、関係式として、以下の(2)式が得られる。なお、(2)式において、Eの係数は表記しないが、(1)式と同様に積和の形で表される。
【0062】
w=−0.162×F
fan+4.19×F
vib−0.0417×T
air+E (2)
【0063】
(2)式ではF
fan、F
vib、T
airを求める必要があるが、F
fan、F
vib、T
airの組み合わせは無数にある。そこで、装置として望ましい結果が得られるように、評価関数を用いて、各操作量を求める。
【0064】
本実施形態の場合、振動搬送装置100における搬送物の搬送速度を一定に保つことが望ましいため、操作量のうち、振動発生部105のモータを駆動させるインバータの駆動周波数ができるだけ一定になるように重みづけを行う。この場合の評価関数の一例を、(3)式に示す。
【0065】
R=(W1×|w−w
*|/wr+W2|F
vib−F
vib*|/vr)/(W1+W2)
(3)
【0066】
ここで、Rは、収束の判定に用いられる。また、w
*は、乾燥後の搬送物の目標水分量
であり、F
vib*は、振動発生部105のモータを駆動させるインバータの目標駆動周波数である。wrは、乾燥後の搬送物の水分量が変化可能な範囲(レンジ)であり、vrは、前記インバータの駆動周波数が変化可能な範囲(レンジ)である。前記レンジの一例を、
図3に示す。
【0067】
また、W1及びW2は、前記水分量と前記インバータの駆動周波数とを重みづけするためのウェイトである。例えば、W1は1、W2は0.5に設定される。このようにW1>W2とすることで、搬送物の搬送速度をできるだけ一定にしつつ、乾燥後の搬送物の水分量が目標値になるような操作量を求めることができる。
【0068】
収束演算部15は、上述の(3)式のような評価関数を用いて、複数の操作量の最適値を求める。収束演算部15は、(3)式において、Rが最小値となる複数の操作量を求める。
【0069】
具体的には、収束演算部15は、(3)式から1つの操作量についてRが最小値となる値を求めた後、(3)式において、前記1つの操作量をその値に固定した状態で、他の操作量についてRが最小値となる値を求める。収束演算部15は、このような演算を、(3)式において複数の操作量で順に行うことにより、Rが最小値となる各操作量の値を求める。
【0070】
その後、収束演算部15は、求めた各操作量の値を用いて(3)式から得られたRが、収束判定の条件を満たしているかどうかを判定する。収束演算部15は、(3)式から得られたRが十分小さくなって前記収束条件を満たしている場合には、そのときの各操作量の値を式(2)にセットする。一方、収束演算部15は、(3)式から得られたRが前記収束条件を満たしていない場合には、上述の各操作量の演算を再度行う。
【0071】
なお、前記収束条件は、Rがゼロに近い場合、または、Rの演算をやり直してもRの値があまり変化しない場合である。具体的には、前記収束条件は、例えば、Rが所定値以下である場合、または、前回のRの演算値と今回のRの演算値との差が規定値以下である場合である。前記所定値及び前記規定値は、それぞれ、ゼロに近く且つ計算が収束したと判断されるような値に設定される。
【0072】
収束演算部15による(3)式におけるRの収束計算は、公知の二分法、ニュートン法、最急降下法などのアルゴリズムを用いて行われる。
【0073】
図3は、(3)式を用いて収束計算した場合の演算結果の一例を示すグラフである。この
図3は、3つの操作量を、振動搬送装置100における振動発生部105のモータを駆
動させるインバータの駆動周波数、熱風給気部106の加熱装置の加熱温度、及び、熱風給気部106の送風装置の回転数とした場合において、乾燥後の搬送物の目標水分量に応じて、各操作量を演算した結果である。
図3に示すように、(2)式に示す関係式と、(3)式に示す評価関数とを用いて、前記目標水分量ごとに、各操作量の最適値を求めることができる。
【0074】
フィードバック部20は、振動搬送装置100の制御対象量の出力値(水分量検出センサ151の出力値)に所定の演算処理を行って、前記制御対象量の目標値にフィードバックを行う。すなわち、フィードバック部20は、水分量検出センサ151から出力される出力データを、振動搬送装置100の制御にフィードバックする。具体的には、フィードバック部20は、平均演算部21と、減算部22と、サンプル保持部23と、積分器24と、加算器25とを有する。
【0075】
平均演算部21は、振動搬送装置100の水分量検出センサ151から出力された乾燥後の搬送物の水分量データ(出力データ)を、平均化処理する。具体的には、平均演算部21は、得られたデータの値と過去の平均値とを用いた逐次平均を行う。なお、平均演算部21は、相加平均、移動平均、加重平均などの方法によって、水分量検出センサ151から出力された水分量データの平均化処理を行ってもよい。
【0076】
減算部22は、平均演算部21によって得られた平均値を、目標水分量w
*に加算する
。サンプル保持部23は、減算部22によって得られた値のうち、一定の時間間隔で得られた値のみを出力する。サンプル保持部23は、例えば、4分に一度、サンプリングを行い、その値を保持する。
【0077】
なお、サンプル保持部23の時間間隔は、制御装置1及び振動搬送装置100によって構成されるシステム全体の遅れ時間に基づいて設定される。この遅れ時間は、遅れの時定数と無駄時間との合計である。前記遅れの時定数は、制御装置1から振動搬送装置100に対して操作量を出力してから、振動搬送装置100で前記操作量に対応した処理が行われた搬送物が得られるまでの時間と、平均演算部21による水分量データの平均化処理の時間とを含む。前記無駄時間は、振動搬送装置100において、搬送物を供給した後、前記搬送物が乾燥されて、水分量検出センサ151によって前記搬送物の水分量データが出力されるまでの時間である。
【0078】
このように、サンプル保持部23によって、一定の時間間隔で得られた値のみを出力することにより、制御装置1において各操作量を決定する際に、振動搬送装置100の水分量検出センサ151から出力される水分量データを適切なタイミングで反映することができる。
【0079】
積分器24は、サンプル保持部23から出力された値xを積分処理して、その結果を値yとして出力する。加算器25は、積分器24で得られた値yを、目標水分量w
*に加算
する。加算器25で得られた結果は、操作量演算部14に入力される。
【0080】
これにより、振動搬送装置100の水分量検出センサ151で検出された乾燥後の搬送物の水分量を、操作量演算部14に入力される目標水分量w
*にフィードバックすること
ができる。よって、制御装置1は、操作量演算部14のみで振動搬送装置100を駆動制御する場合に比べて、振動搬送装置100を精度良く駆動制御することができる。
【0081】
(制御装置の動作)
次に、上述の構成を有する制御装置1の動作について説明する。
図4及び
図5は、制御装置1の動作を示すフローである。
【0082】
図4に示すように、まず、制御装置1は、環境変数データを取得する(ステップSA1)。前記環境変数データは、環境変数検出センサ152から取得される。
【0083】
次に、制御装置1は、操作パネルなどの入力部から、制御対象量である水分量の目標値(目標水分量)を取得する(ステップSA2)。
【0084】
その後、操作量演算部14は、関係式と、目標水分量とを用いて、複数の操作量の最適値を求める(ステップSA3)。
【0085】
操作量演算部14による操作量の演算は、
図5に示すフローに従って行われる。
【0086】
図5は操作量演算部14の収束演算部15の計算のフローを示す。この計算では、望ましい収束結果を得るために式(3)で示した評価関数が利用される。まず、収束演算部15は、3つの操作量のうち一つの操作量(操作量1)において前記評価関数のRが最小になる値(操作量1設定値)を求める(ステップSB1)。そして、収束演算部15は、前記操作量1を前記操作量1設定値に設定した場合に、他の操作量(操作量2)において、前記評価関数のRが最小になる値(操作量2設定値)を求める(ステップSB2)。また、収束演算部15は、前記操作量1を前記操作量1設定値に設定するとともに前記操作量2を前記操作量2設定値に設定した場合に、他の操作量(操作量3)において、前記評価関数のRが最小になる値(操作量3設定値)を求める(ステップSB3)。
【0087】
収束演算部15は、次に、操作量1を操作量1設定値に設定し、操作量2を操作量2設定値に設定し、操作量3を操作量3設定値に設定した場合に、求められる前記評価関数のRの値が、収束条件を満たしているかどうかを判定する(ステップSB4)。
【0088】
前記収束条件は、Rがゼロに近い場合、または、Rの演算をやり直してもRの値があまり変化しない場合である。具体的には、前記収束条件は、例えば、Rが所定値以下の場合、または、前回のRの演算値と今回のRの演算値との差が規定値以下の場合である。収束演算部15によるRの収束計算は、公知の二分法、ニュートン法、最急降下法などのアルゴリズムを用いて行われる。
【0089】
収束演算部15は、求めたRが前記収束条件を満たしている場合(YESの場合)には、
図5のフローを終了して(END)、そのときの各操作量を振動搬送装置100に出力する(ステップSA4)。一方、収束演算部15は、求めたRが前記収束条件を満たしていない場合(NOの場合)には、算出した操作量2設定値及び操作量3設定値を用いて、再び操作量1設定値を求める(ステップSB1)。その後、収束演算部15は、ステップSB2,SB3の動作を行う。すなわち、収束演算部15は、ステップSB4でRの値が前記収束条件を満たしていると判定されるまで、ステップSB1〜SB3の動作を繰り返す。
【0090】
これにより、操作量演算部14は、評価関数を満たす各操作量を求めて、振動搬送装置100に出力することができる。したがって、制御装置1は、環境変数データを考慮しつつ、目標水分量になるような各操作量を容易に求めて、その操作量によって、振動搬送装置100の駆動を制御することができる。
【0091】
[実施形態2]
図6は、実施形態2に係る制御装置200の概略構成を機能ブロックで示す図である。この実施形態の制御装置200は、フィードバック部220の構成が実施形態1の制御装置1のフィードバック部20の構成とは異なる。以下では、実施形態1と同様の構成には
同一の符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる部分についてのみ説明する。
【0092】
図6に示すように、制御装置200のフィードバック部220は、振動搬送装置100の制御対象量の出力値に所定の演算処理を行って、操作量演算部14から出力される複数の操作量のうち前記制御対象量に最も影響の大きい操作量にフィードバックを行う。すなわち、フィードバック部220は、実施形態1のフィードバック部20と同様、水分量検出センサ151から出力される出力データを、振動搬送装置100の制御にフィードバックする。
【0093】
具体的には、フィードバック部220は、サンプル保持部23から出力される値を、積分しつつ前記最も影響の大きい操作量に換算する積分器224と、積分器224から出力される値を、前記最も影響の大きい操作量に加算する加算器225とを有する。
【0094】
積分器224は、サンプル保持部23から出力される値を、前記制御対象量と前記最も影響の大きい操作量との変換係数で除することにより、上述の換算を行う。積分器224は、換算後の値を用いて積分を行う。
【0095】
なお、本実施形態では、前記最も影響の大きい操作量は、振動発生部105のモータを駆動させるインバータの駆動周波数であり、前記変換係数は、(2)式より、4.19である。
【0096】
加算器225は、積分器224から出力される値を、振動発生部105のモータを駆動させるインバータの駆動周波数に対してフィードバックする。
【0097】
なお、フィードバック部220が制御対象量をフィードバックする操作量は、(2)式におけるa,b,cの各係数のうち最も大きい係数を有する操作量である。
【0098】
このように、制御対象量に最も影響の大きい操作量にフィードバックを行うことにより、振動搬送装置100の制御対象量をより精度良く目標値に近づけることができる。
【0099】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0100】
前記各実施形態では、制御装置1によって駆動制御される制御対象の一例として、振動搬送装置100を挙げている。しかしながら、制御装置の制御対象は、環境変数によって変化する制御対象量を、複数の操作量によって制御可能な構成を有する装置またはシステムであれば、どのような装置またはシステムであってもよい。制御装置の制御対象は、例えば、植物プラントなどであってもよい。制御装置の制御対象が植物プラントの場合、プラント内の温度、風速及び日射量が操作量に対応し、植物の収穫量が制御対象量に対応する。
【0101】
前記各実施形態では、制御装置1,200は、フィードバック部20,220を有する。しかしながら、制御装置は、フィードバック部を有していなくてもよい。すなわち、制御装置は、操作量演算部から出力される操作量に基づいて振動搬送装置を駆動するように構成されていてもよい。
【0102】
前記各実施形態では、制御装置1,200は、複数の装置を含んでいてもよいし、一体の装置によって構成されていてもよい。すなわち、データ取得部、操作量演算部、サンプ
ル保持部及びフィードバック部のうち一部は、別の装置によって構成されていてもよい。また、データ取得部、操作量演算部、サンプル保持部及びフィードバック部は、一つの装置に設けられていてもよい。
【0103】
前記各実施形態では、制御装置1,200は、操作量演算部14を有する。しかしながら、制御装置は、搬送物の水分量に対して事前に計算された収束結果(操作量)がテーブルデータとして記憶された記憶部を有していて、該記憶部から水分量に応じた操作量を求めて振動搬送装置に出力してもよい。また、制御装置は、搬送物の水分量と操作量との関係を示す1次関数などの関係式が記憶された記憶部を有していて、該記憶部に記憶された関係式を用いて水分量に応じた操作量を求めて振動搬送装置に出力してもよい。
【0104】
前記実施形態1では、制御装置1の操作量演算部14は、振動発生部105のモータを駆動させるインバータの駆動周波数を一定にするように重みづけを行いつつ、複数の操作量を求めている。しかしながら、操作量演算部は、複数の操作量において、他の操作量の重みづけを行いつつ、複数の操作量を求めてもよい。例えば、振動搬送装置100において、省エネが望まれる場合がある。この場合、熱風給気部106の加熱装置の加熱温度であるT
airを最小にするように重みづけを行いつつ、複数の操作量を求めればよい。